総括所見:バチカン(第2回・2014年)


CRC/C/VAT/CO/2(2014年2月25日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1852回(CRC/C/SR.1852参照)において法王聖座(Holy See)の第2回定期報告書(CRC/C/VAT/2)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、法王聖座の第2回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VAT/Q/2/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことにより、委員会が、法王聖座による条約の実施を14年間審査できなかったことを遺憾に思うものである。
3.委員会は、法王聖座の他部門型代表団との間に持たれた、開かれた、かつ建設的な対話、および、多数の分野について代表団が行なった積極的な誓約を歓迎する。とくに委員会は、態度および慣行を変革することについて法王聖座の代表団が表明した前向きな姿勢に、積極的側面として留意するものである。委員会は、これらの誓約を具体的に実施するために迅速なかつ確固たる措置がとられることを期待する。
4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて法王聖座が提出した第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく法王聖座の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

5.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。
  • (a) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。
  • (b) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。
6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)も歓迎する。
7.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。
  • (a) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。
  • (b) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。

III.条約の実施における特殊性

8.委員会は、法王聖座による子どもの権利条約の批准が、バチカン市国政府としての行為であるとともに、いかなる領域的権力または司法権力からも独立した原有的かつ非派生的法人格を有する国際法の主権的主体としての行為でもあるという、二重の性質を有するものであることを承知する。司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、条約を批准するにあたり、法王聖座は、条約を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。

IV.主要な懸念領域および勧告

A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項))

委員会の前回の勧告
9.委員会は、法王聖座の第1回報告書に関する1995年の総括所見(CRC/C/15/Add.46)に掲げられた勧告のほとんどについて十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。
10.委員会は、法王聖座に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに差別の禁止、自己の意見を表明する子どもの権利および家族問題に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
留保
11.委員会は、条約に付した留保を撤回する可能性について現在検討中である旨の、法王聖座の代表団による発言を歓迎する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.46、パラ10)に照らし、委員会は、権利の主体としての子どもの全面的承認を妨げ、かつ、条約の適用についてバチカン市国の法源との両立性を条件としている、法王聖座が条約に付した留保についての懸念をあらためて表明するものである。
12.委員会は、法王聖座が、条約に付したすべての留保を撤回し、かつ条約が国内法令に優越することを確保するために必要な措置をとるよう勧告する。
立法
13.バチカン市国の法律が条約に一致することを確保することに対する法王聖座のアプローチは歓迎しながらも、委員会は、カノン法を含む内部法との関係で同じアプローチがとられていないことを遺憾に思う。委員会はまた、カノン法の一部の規定が条約の規定、とくに差別、暴力ならびにあらゆる形態の性的搾取および性的虐待から保護される子どもの権利に関連する規定と一致していないことも懸念するものである。
14.委員会は、締約国が、条約との全面的一致を確保する目的でその規範的枠組み、とくにカノン法の包括的再検討を行なうよう勧告する。
調整
15.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた機構の設置を法王聖座として検討する旨の代表団の発言に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、そのような機構がまだ設けられていないことを遺憾に思うものである。
16.委員会は、法王聖座が、すべての評議会および司教会議を横断して、かつ法王聖座の権威のもとに活動している個人および宗教的性格を有する施設との関連で子どもの権利の実施を調整する任務および能力を有する機構を、高いレベルに設置するよう勧告する。この機構に対しては、その任務を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源が提供されるべきである。
資源配分
17.委員会は、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援しおよび保護し、ならびに、このような子どもに対し、とくに教育の機会、保健ケア、社会的ケアおよびその他の家族支援サービスを提供する目的で、草の根レベルで行なわれ、かつ世界中のカトリックの教会、財団および団体によって資金が拠出されている多数の活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもを支援するための資源配分について包括的な子どもの権利基盤アプローチがとられておらず、かつ、法王聖座ならびに法王聖座が勢力および影響力を有している締約国の教会関連団体・施設が行なっている子どもに関する支出を追跡するシステムが存在しないことに、留意するものである。
18.子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) バチカン市国における子どもの権利の実施ならびに他の締約国においてカトリックの団体および施設が行なう子どもの権利の促進および保護のために必要な資源の包括的評価を実施すること。
  • (b) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、子どもの最善の利益に奉仕するために配分された資源の効果を評価するシステムを確立すること。
独立の監視
19.委員会は、バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局が2013年8月に設置されたこと、および、2013年12月に創設された委員会に、性的虐待に関する子どもの苦情を受理する権限が与えられる予定であることに留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとに世界中で活動している個人および施設(すべてのカトリック学校を含む)による、かつバチカン市国における、子どもの権利の遵守および尊重を監視するための機構を設置していないことを懸念するものである。
20.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、法王聖座が、子どもの苦情を、子どもに配慮したやり方で、かつ被害者のプライバシーおよび保護を正当に尊重しながら受理しかつ調査する明確な任務を与えられた、子どもの権利を監視するための独立機構を設置するよう勧告する。法王聖座はまた、カトリック教会が提供する学校、サービスおよび施設に出席しまたは関係しているすべての子どもが当該機構にアクセスできることも確保するべきである。法王聖座の特別な性質に鑑み、この機構と国内法執行機関との関係および連携に関する指針も定められ、かつ広く普及されるべきである。
普及および意識啓発
21.委員会は、法王聖座の報告書で説明されている意識啓発の取り組み、とくにインドのカトリック学校で設けられている人権についての教育講座を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、報告対象期間中に、1995年に委員会が勧告したとおり(CRC/C/15/Add.46、パラ11参照)、条約の幅広い普及および世界中で話されている言語への条約の翻訳を促進するための十分な措置をとっていないことを懸念するものである。
22.委員会は、法王聖座が、とくに具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを策定しかつ実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、あらゆる段階のカトリック教育制度の学校カリキュラムに条約の規定を含めることを通じ、条約のすべての規定を、とくに子どもおよびその親に対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。
研修
23.カトリック学校の教員を対象として子どもの権利についての研修を行なう、オーストリアで2007年以降実施されている取り組み等のプロジェクトが進められていること、および、法王聖座が、研修は子どもの根本的保護のための望ましい実践であると認めていることは歓迎しながらも、委員会は、法王聖座が、その権威のもとに活動しており、かつ子どもとともにおよび子どものために働いている個人および施設(カトリック学校の教員および神学校の聖職者を含む)を対象として条約に関する研修を組織的に行なうための措置をとっていないことを、依然として懸念する。
24.委員会は、法王聖座に対し、すべての聖職者ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働いているカトリック修道会およびカトリック施設の構成員を対象として条約の規定に関する組織的研修を実施し、かつ、教員養成プログラムおよび神学校に子どもの権利についての必修単位を含めるよう、促す。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
25.委員会は、法王聖座が、カノン法(とくに第1139条)に掲げられた「非嫡出子」という差別的表現を撤回する目的で法律の見直しを開始した旨の、双方向的対話の際に法王聖座の代表団から提供された情報を歓迎する。2013年に法王が行なった進歩的発言にも積極的対応として留意しながらも、委員会は、同性愛に関して法王聖座がこれまで行なってきた発言および宣言が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの青少年ならびに同性カップルによって育てられている子どもへの社会的スティグマおよび暴力を助長していることを懸念するものである。
26.委員会は、法王聖座が、すべての法律および規則ならびに政策および実践を条約第2条に一致させるとともに、婚外子を非嫡出子として差別的に分類することを速やかに廃止するよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの性的指向またはその親の性的指向に基づく子どもへのあらゆる形態のいやがらせ、差別または暴力を非難するためにその道徳的権威を全面的に活用し、かつ、同性愛の非犯罪化のために国際的に行なわれている努力を支持することも促すものである。
27.ジェンダーの基づく差別についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.46、パラ8)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が引き続き、補完性および尊厳の平等の促進を重視していることを遺憾に思う。この2つの概念は、条約第2条で定められた法律における平等および慣行とは異なるものであり、かつ、差別的な立法および政策を正当化するのに利用されることが多い。委員会はまた、法王聖座が、委員会から1995年に要請されたように、女子と男子の平等を促進し、かつカトリック学校で使用されている教科書からジェンダー上のステレオタイプを取り除くためにとられた措置に関する正確な情報を提供しなかったことも遺憾に思うものである。
28.委員会は、法王聖座に対し、女子と男子の間にある差別に対応し、かつ、女子と男子の平等に異議を唱えることになりうる用語の使用を行なわないため、権利基盤アプローチをとるよう促す。委員会はまた、法王聖座に対し、カトリック学校で使用される教科書で、男子および女子の才能および能力の発達を制限し、かつその教育上の機会および人生の危害を阻害しかねないジェンダー上のステレオタイプ化が行なわれないことを確保するために積極的措置をとることも促すものである。
子どもの最善の利益
29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての法王聖座の対応が、立法上、行政上および司法上の手続において、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて不十分であることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待の訴えに対応するにあたり、法王聖座が、いくつかの国内調査委員会から指摘されているように、教会の信用の維持および加害者の保護を子どもの最善の利益よりも一貫して優先させてきたことを、とりわけ懸念するものである。
30.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利に関する委員会の一般的意見14号(2013年)に対して法王聖座の注意を喚起するとともに、法王聖座が、この権利が立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合され、かつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、法王聖座は、子どもの最善の利益があらゆる分野で(子どもの性的虐待の事案に対応する場合を含む)第一次的に考慮されることを確保するため、あらゆる関連の権威者に指針を示すよう奨励されるところである。委員会はまた、法王聖座に対し、そのような指針を世界中のあらゆるカトリック系の教会、団体および施設に配布することも促す。
子どもの意見の尊重
31.委員会は、法王聖座が、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を表明する子どもの権利ならびに表現、結社および宗教の自由に対する子どもの権利について制限的解釈を行なっていることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が引き続き、条約第12条に掲げられた権利は親の権利および義務を損なうものであると考えていることも、懸念するものである。
32.委員会は、法王聖座に対し、自己の意見を自由に表明する子どもの権利は子どもの尊厳のもっとも本質的な要素のひとつであり、かつ、この権利を確保することは条約に基づく法的義務であって締約国の裁量は認められていないことを想起するよう、求める。委員会はまた、子どもが自己の意見を自由に表明でき、かつ子どもの意見がもっとも幼いころから正当に重視される家庭は重要なモデルであって、子どもがいっそう幅広い社会で意見を聴かれる権利を行使するための準備につながることも強調するものである。意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 意見を聴かれるすべての子どもの権利の実現に対する否定的態度と闘い、かつ、子どもが権利の保有者として認められることを促進すること。
  • (b) 関連の法的手続において、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律が効果的に実施されることを確保するための措置をとること。
  • (c) 親および子どもの保護者が子どもに耳を傾け、かつ子どもに関係する事柄について子どもの意見を正当に重視する機会を、立法および政策を通じて奨励するとともに、すでに存在する積極的な行動および態度をもとにした親教育プログラムを促進すること。
  • (d) カトリック系の団体および施設が家族および子どもに対して提供しているすべてのサービス、ならびに、カリキュラムおよび学校プログラムの計画における子どもの積極的役割を促進するとともに、意見を聴かれる子どもの権利が規律に関わる事柄において全面的に尊重されることを確保すること。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条)

親を知り、かつ親によって養育される権利
33.委員会は、カトリック司祭が父親である子ども(多くの場合は父親の身元を知らない)の状況について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが経済的に自立するまで教会から定期的給付を受ける計画を母親が獲得できるのは、子どもの父親または当該計画についていかなる情報も公にしない旨の秘密保持契約に母親が署名した場合のみであることも、懸念するものである。
34.委員会は、法王聖座が、カトリック司祭が父親である子どもの人数を評価し、それが誰であるのかを調べるとともに、父親を知り、かつ父親によって養育されるこれらの子どもの権利が適宜尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座が、今後、子どもを扶養するための金銭支給計画を母親に付与する条件として教会が秘密保持契約を課さないことを確保するようにも勧告するものである。
アイデンティティに対する権利
35.法王聖座が、親とともに暮らし、かつ自己の身元を知る子どもの権利を重視していることは歓迎しながらも、委員会は、いわゆる「赤ちゃんボックス」の利用を通じていくつかの国でカトリック団体が行なっている、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行が続いていることを懸念する。
36.条約第6条、第7条、第8条および第19条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行の根本的原因を明らかにするための研究に協力するとともに、条約第7条で定められているとおり、自己の生物学的な親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に考慮に入れながら、これに代わる手段を速やかに強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの遺棄および(または)死亡を防止する最後の手段として病院で秘密に出産する可能性を導入しながらも、家族計画、リプロダクティブヘルスケア、ならびに、計画外の妊娠を防止し、かつ困窮している家族を援助するための十分なカウンセリングおよび社会的支援を提供することにより、赤ん坊の遺棄への対応に貢献するよう促すものである。

D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条(第3項)、第28条(第2項)、第34条、第37条(a)および第39条)

拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
37.委員会は、4つのカトリック女子修道会が1996年まで運営していたアイルランドのマグダレン洗濯所に家族、国家機関および教会によって恣意的に措置された女子を保護し、かつこれらの女子に対して正義を確保するために必要な措置を、法王聖座がとってこなかったことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) これらの施設に措置された女子が、奴隷のような条件下で働くことを強制され、かつ、非人道的な、残虐なおよび品位を傷つける取扱いならびに身体的および性的虐待をしばしば受けていたこと。
  • (b) 女子が、そのアイデンティティ、教育、ならびに、しばしば食料および必須医薬品を剥奪され、沈黙の義務を課され、かつ、外界との接触を禁じられていたこと。
  • (c) 洗濯所への入所前または洗濯所での監禁中に出産した未婚の女子が赤ん坊を強制的に取り上げられていたこと。
  • (d) 関係する4つのカトリック修道会は法王聖座の権威のもとで活動していたのに、洗濯所を運営する修道女らの行為を調査するための措置、または当該人権侵害の責任者、および、女子の無償労働を組織し、かつ事情を承知のうえでそこから利益を得ていた者の責任を問うにあたって法執行機関に協力するための措置がなんらとられていないこと。
38.加害者を訴追し、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰するとともに、すべての被害者が救済措置の対象とされ、かつ補償を受ける執行可能な権利を有することを確保するべきである旨の、拷問禁止委員会が2011年にアイルランドに対して行なった勧告(CAT/C/IRL/CO/1、パラ21)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう促す。
  • (a) アイルランドのマグダレン洗濯所およびこのような制度が存在していたすべての国で活動していた宗教関係者の行為について内部調査を実施するとともに、このような犯罪について責任を負うすべての者が制裁の対象とされ、かつ訴追のために国内司法当局に通報されることを確保すること。
  • (b) 被害者およびその家族に対し、修道会自身を通じて、または教会の最高権機関であってその権威のもとにあるカトリック修道会の構成員について法的責任を負う法王聖座を通じて、完全な補償が行なわれることを確保すること。
  • (c) これらの犯罪の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するためにあらゆる適当な措置をとること。
  • (d) このような慣行をもたらした事情および理由についての評価を実施するとともに、今後、いかなる理由があっても女性および子どもがカトリック施設に恣意的に監禁されないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
体罰
39.あらゆる場面における子どもの体罰の禁止について検討するよう法王聖座に提言する旨の代表団の発言は歓迎しながらも、委員会は、子どもの儀式的殴打を含む体罰が一部のカトリック系施設で広く行なわれてきており、かつ依然として広く行なわれていること、および、とくにアイルランドのライアン委員会によって明らかにされたように、一部の国々ではこのような体罰がエンデミックの水準に達していることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、体罰が条約によって禁じられているとは考えておらず、したがって、カトリック学校または子どもとともにおよび子どものために活動しているカトリック系施設ならびに家庭における子どもの体罰を明確に禁じた指針および規則を定めていないことも、懸念するものである。
40.委員会は、法王聖座に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力はいかに軽いものであっても受け入れられないこと、および、条約は子どもに対していかなる水準の暴力を振るう余地も残していないことを想起するよう求める。委員会はまた、法王聖座に対し、あらゆる形態の身体的または精神的暴力から子どもを保護するためにあらゆる適当な措置をとる、条約第19条に基づく自国の義務を想起することも求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰に反対するのと同様に、子どもに対する体罰に明示的に反対すること。
  • (b) カノン法およびバチカン市国法を改正し、子どもに対するあらゆる体罰(家庭におけるものを含む)を明示的に禁止すること。
  • (c) カトリック系のすべての学校ならびに子どもとともにおよび子どものために活動している施設(バチカン市国の領域内の学校および施設を含む)でこの禁止規定を実効的に執行するための機構を設置するとともに、子どもに対する暴力について責任が問われることを確保すること。
  • (d) その権威を活用して積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進するとともに、聖書は体罰を容認していないという解釈が、教会の教育その他の活動に反映され、かつあらゆる神学教育および神学研修に編入されることを確保すること。
虐待およびネグレクト
41.委員会は、法王聖座が、世俗の公的機関について、親の義務および権利に干渉しないよう、虐待が行なわれたことが証明された場合以外は過程の現場に介入するべきではないという立場をとっていることを懸念する。このような立場は、子どもの虐待およびネグレクトを防止するための国際的な努力および措置を深刻に阻害するものである。委員会はまた、法王聖座が、カトリックの家族に相当の影響力を有しているにもかかわらず、家庭における虐待およびネグレクトを防止するための包括的戦略をまだ採択していないことも懸念する。
42.委員会は、子どもの保護はあらゆる形態の暴力の積極的防止から開始されなければならないこと、ならびに、虐待およびネグレクトから保護される子どもの権利が親の特権によって損なわれることはけっしてあるべきではないことを強調する。したがって委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもの虐待およびネグレクトを防止し、かつこれと闘うための包括的な戦略を策定するとともに、子どもの関与を得ながら、意識啓発および教育のためのプログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。
  • (b) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの者を訓練する等の手段も用いながら、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに取り組むことを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。
  • (c) 子ども、その代理人その他の者が子どもに対する暴力を通報できるようにするため、これらのものを対象とした、安全な、十分に広報された、秘密が守られ、かつアクセスしやすい支援機構を発展させること。
  • (d) 虐待およびネグレクトの事案をいつ、どのように捜査機関に付託すべきかについての明確な指針および研修を発展させること。
性的搾取および性的虐待
43.委員会は、すべての子どもの尊厳および全人格を不可侵なものにする旨の、法王聖座の代表団によって表明された誓約に留意する。にもかかわらず、委員会は、法王聖座の権威のもとに活動するカトリック教会の構成員によって行なわれた子どもの性的虐待(聖職者が世界中で数万人にのぼる子どもの性的虐待に関与していた)について、深い懸念を表明するものである。委員会は、法王聖座が、行なわれた犯罪の規模を認めることも、子どもの性的虐待の事案に対応しかつ子どもを保護するために必要な措置をとることもせず、聖職者による性的虐待の継続および加害者の不処罰を可能にする政策および慣行を採用してきたことに、重大な懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 子どもの性的虐待を行なっていることをよく知られた者が、そのような犯罪を隠蔽しようとする教会の試みにより、教区から教区へまたは他の国へと転任させられてきたこと。この慣行の証拠は多数の国内調査委員会によって記録されている。加害者を移動させるというこの慣行により、多くの聖職者は子どもとの接触を維持して子どもを虐待し続けることができ、かつ、多くの国の子どもが聖職者から性的虐待を受ける危険性が高い状態に置かれている。子どもに対する性的犯罪を行なった数十名の加害者がいまなお子どもと接触しているという報告がある。
  • (b) 法王聖座が、聖職者による子どもの性的虐待事件に関する全面的裁判権を1962年に設定し、かつ2001年には教理省がこれらの事件について排他的権限を有するとしたにもかかわらず、法王聖座が、報告対象期間中に把握したすべての子どもの性的虐待事件およびこれらの事件に関する内部手続についてのデータを委員会に提供しないこと。
  • (c) 子どもの性的虐待について法王聖座による対応が行なわれた事案で、当該虐待が、懲戒措置について定めた内部手続を通じて道徳に対する重大な違背として扱われており、その結果、虐待を行なった者の圧倒的多数および子どもの性的虐待を隠蔽した者のほぼ全員が、当該虐待が行なわれた国の司法手続を免れ得てきたこと。
  • (d) 聖職者全員に、違反すれば破門という条件のもとで沈黙の掟が課されていることから、子どもの性的虐待事件について当該犯罪が行なわれた国の法執行機関に通報が行なわれた例がほとんどないこと。それどころか、委員会のもとには、沈黙の義務を尊重しなかったという理由で修道女および司祭が追放され、降格されまたは聖位を剥奪された事案が報告されている。カストリヨン・ホヨス枢機卿がピエール・ピカン司教に宛てた2001年の書簡で述べられている、子どもの虐待を行なった者の告発を拒否したという理由で司祭が祝福を受けた事案についても同様である。
  • (e) 国内法執行機関への通報が義務的とされたことは一度もなく、かつ、マヌエル・モレノ司教およびルチアーノ・ストレロ大司教がアイルランド司教協議会の構成員に宛てた公式書簡(1997年)でこのような通報が明示的に否定されたこと。多くの場合、法王聖座の最上級段階にある機関を含む教会機関は、司法機関および国内調査委員会への協力について消極的であり、かつこのような協力を拒否した例も複数ある。
  • (f) 性的虐待から身を守れるよう、カトリック系の学校および施設に登録されている子どものエンパワーメントを図るために、限られた努力しか行なわれてこなかったこと。
44.委員会は、過去に何が起きたかの真実を確実に明らかにすること、再発防止のために必要な措置をとること、正義の原則が全面的に尊重されることを確保すること、ならびに、とくに、被害者およびこれらの言語道断の犯罪の影響を受けたすべての者に癒しをもたらすことの重要性に関する法王聖座の発言を認知する。このような観点から、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう強く促すものである。
  • (a) 2013年に創設された委員会が、あらゆる子どもの性的虐待事件およびこれに対応する際のカトリック全聖職団の行為を独立の立場から調査することを確保すること。市民社会および被害者団体に対して委員会への参加を呼びかけること、および、国際人権機構に対して同委員会の活動への支援を呼びかけることを検討すること。調査の結果は公開され、かつカトリック教会の構成員による子どもの性的虐待の再発の防止に役立てられるべきである。
  • (b) 子どもに性的虐待を行なったことがわかっている者およびそのような疑いがある者全員を直ちに職務から外すとともに、捜査および訴追のために事案を関連の法執行機関に付託すること。
  • (c) 子どもに性的虐待を行なった者、ならびに、そのような犯罪を隠蔽した者および事情を承知のうえで犯罪者を子どもに接触する立場に置いた者全員の責任を問うために使用できる公文書が透明な形で共有されることを確保すること。
  • (d) 子どもの性的虐待が「道徳に対する違背」ではなく犯罪とみなされるようにし、かつ、被害者およびそのような犯罪について知るに至ったすべての者に沈黙の義務を課している可能性があるすべての規定を削除する目的で、カノン法を改正すること。
  • (e) 子どもに対する性的な虐待および搾取が疑われるすべての事案を法執行機関に義務的に通報することについて、明確な規則、機構および手続を確立すること。
  • (f) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての司祭、宗教関係者および個人が、自己の通報義務について、かつ抵触がある場合には当該義務がカノン法の規定に優越することについて、知っていることを確保すること。
  • (g) それぞれストックホルム、横浜(日本)およびリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがって、このような犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策を発展させること。
  • (h) 性的虐待に関する子どもの意識を高め、かつ自分のみを守るために必要なスキルを教えるための教育的防止プログラムを発展させること。
  • (i) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
45.委員会は、法王聖座が女性および女子の尊厳の促進にとくに注意を払っていることの表れが見られることを歓迎する。しかしながら、ドメスティックバイオレンスが大規模に行なわれており、かつ子どもに破壊的な影響を与えていること、および、ドメスティックバイオレンスにはジェンダーの要素がしばしばあることに鑑み、委員会は、2013年の女性の地位委員会の際、宗教、慣習または伝統は、国が女性および女子を暴力から保護する義務を免れるための弁明として用いられるべきではない旨を提案した最終草案に法王聖座が反対したことを深刻に懸念するものである。
46.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、法王聖座が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、法王聖座が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) あらゆる形態のドメスティックバイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力と闘うことを目的とした努力および措置(これらの形態を正当化するものとしてしばしば機能する態度、伝統、慣習および行動習慣に対応する措置を含む)を支援するため、その権威および影響力を活用すること。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための包括的な国家的戦略を策定すること。
  • (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための調整枠組みを採択すること。
  • (d) 暴力のジェンダーの側面にとくに注意を払って対応すること。
  • (e) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国連機関と協力すること。
ヘルプライン
47.委員会は、法王聖座が、諸締約国におけるヘルプラインの創設を促進し、その存在に関する意識を高め、かつ子どもにその利用を奨励するよう勧告する。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条)

家庭環境
48.近い将来、カノン法の家族関連規定の改正に歩を進める旨の、法王聖座代表団によって提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、法王聖座および教会運営施設が、多様な形態の家族の存在を認めておらず、かつ、家庭の状況を理由として子どもをしばしば差別していることを懸念する。
49.委員会は、法王聖座が、カノン法の規定が家庭環境の多様性を認め、かつ子どもが暮らしている家庭の態様を理由として子どもを差別しないことを確保するよう勧告する。
家庭環境を奪われた子ども
50.委員会は、法王聖座が、子どもの人格の全面的かつ調和のとれた発達のために家庭環境のもとで成長することの重要性を重視していることを歓迎する。しかしながら委員会は、「キリストの軍団」(Legion of Christ)および他のカトリック系の施設に勧誘され、徐々に家族から引き離されて外界から孤立させられる青少年の状況について懸念を覚えるものである。子どものために学校および神学校を選択する親の権利および義務を強調する法王聖座の回答には留意しながらも、委員会はまた、2013年11月、フランス司教協議会の会長が、カトリック系の一部の施設および修道会における個人の道義心の操作を認めたことにも留意する。
51.委員会は、法王聖座に対し、心理的操作によって家族から引き離された子どもおよび青少年に関するすべての訴えを適切に調査するとともに、青少年を操作した責任者がその責任を問われ、かつ活動をやめることを確保するよう、促す。
52.委員会は、カトリック系団体において子どもの施設措置がいまなお広く行なわれていること、および、多くの国で新たな施設が開設されていることに表れているように家庭型の代替的選択肢がいまなお優先されていないことを、懸念する。委員会はまた、法王聖座が、カトリック系の代替的養護施設における子どもの措置およびモニタリングについてのガイドラインを採択しておらず、かつ、カトリック系団体に措置された子どもの脱施設化のための政策をいまだに定めていないことも懸念するものである。
53.委員会は、法王聖座に対し、カトリック系の施設に措置されている子どもの脱施設化を図り、かつ可能なときは子どもが家族と再統合できるようにするための政策を採択するよう促す。委員会はまた、法王聖座が、3歳未満の子どもが施設に措置されないことを優先的に確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。法王聖座はまた、基準が適用されることを確保し、かつ虐待を防止する目的で、カトリック系のすべての代替的養護現場における子どもの措置、十分な定期的再審査およびモニタリングについてのガイドラインも採択するべきである。その際法王聖座は、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮に入れるよう求められる。

F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条)

健康
54.委員会は、ブラジルの9歳の女子が義父から強姦された後に緊急救命妊娠中絶手術を受けた事件(2009年)で、ペルナンブーコ(ブラジル)の大司教が女子の母親および中絶を行なった医師を処罰したことに、このうえなく深い懸念を表明する。当該処罰はその後、ローマカトリック教会司教省長官によって承認された。
55.委員会は、法王聖座に対し、妊娠した女子の生命および健康に明らかなリスクを付加している、中絶に関する法王聖座の立場を再検討するとともに、中絶サービスへのアクセスが認められうる状況を明らかにする目的で中絶に関するカノン法第1398条を改正するよう促す。
青少年の健康およびHIV/AIDS
56.委員会は、避妊手段ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する〔サービス〕および情報に対する青少年のアクセスを否定する法王聖座の立場および実践の悪影響について深刻な懸念を覚える。
57.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関する一般的意見15号(2013年)、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)およびHIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が、とくに思春期の女子の妊産婦有病率および妊産婦死亡率を高めることにつながる若年妊娠および望まない妊娠ならびに非公然の中絶の危険性、ならびに、思春期の女子および男子がHIV/AIDSを含む性感染症(STD)に感染しかつその影響を受ける特別なリスクを想起するよう求める。委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 到達可能な最高水準の健康を青少年が享受することに対して法王聖座の立場が及ぼす深刻な影響について評価を実施するとともに、性および生殖に関する情報(家族計画、避妊手段、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびにSIDの予防および治療に関する情報を含む)への青少年のアクセスを妨げている、思春期のセクシュアリティを取り巻くすべての障壁およびタブーを克服すること。
  • (b) 青少年の健康および発達意影響を与えるすべての決定(青少年の健康を左右する根底的要因に影響を与える政策および介入策の実施に関する決定を含む)の中心に青少年の最善の利益を位置づけること。
  • (c) 自己の健康および発達にとって必要不可欠な十分な情報にアクセスする青少年の権利を確保し、かつ、青少年が社会に意味のあるやり方で参加できるようにすること。これとの関連で、法王聖座は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育ならびにHIV/AIDS予防が、カトリック学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ、若年妊娠およびSTDの予防にとくに注意を払いながら思春期の女子および男子を対象として進められることを確保するべきである。
  • (d) 妊娠した10代の最善の利益を保障するとともに、リプロダクティブヘルスの分野で、妊娠した10代の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。
  • (e) 早期婚および若年妊娠が引き起こしうる害についての情報の普及に積極的に貢献し、かつ、カトリック系の団体が妊娠した子ども、思春期の母親およびその子どもの権利を保護することを確保するとともに、これらの子どもに対する差別と闘うこと。
  • (f) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任ある親のあり方および性行動についての意識を高め、かつこれを促進するための措置をとること。

G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条)

売買、取引および誘拐
58.委員会は、とくにスペインにおいておよびアイルランドのマグダレン洗濯所においてそうであったように、数千人の赤ん坊が、多くの国のカトリック修道会の構成員により母親から強制的に引き離され、かつ孤児院に措置されまたは国外の養親に引き渡されてきたことを深く懸念する。委員会は、責任のある修道会が法王聖座の権威のもとに活動していたにもかかわらず、法王聖座がこれらの事件について内部調査を実施せず、かつ責任者に対する行動をとらなかったことをとくに懸念するものである。委員会はまた、法王聖座が、これらの子どもの所在を追跡し、かつ可能なときは生物学的母親と再会させるためにとられた措置についての情報を提供しなかったことも懸念する。
59.委員会は、法王聖座に対し、赤ん坊が母親から引き離されたすべての事件について内部調査を開始し、かつ、責任者の責任を問うにあたって関連の国内法執行機関と全面的に協力するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、関係のカトリック修道会が、可能なときはこれらの子どもを生物学的母親と再開させる目的で、その所在について有しているすべての情報を全面的に開示することを確保するとともに、今後同様の慣行が生じないようにするためにあらゆる必要な措置をとることも、促すものである。
犯罪の被害者および証人である子ども
60.委員会は、法王聖座が、さまざまな形態の虐待の被害を受けた子どもに対応するにあたり、被害を受けた子どもの保護よりも教会の信用の維持および加害者の保護を組織的に優先させてきたことに、深刻な懸念を表明する。委員会は、法王聖座が、文書回答においておよび双方向的な対話の際に国内司法機関の第一義的権限を認めながらも、引き続き、被害を受けた子どもの保護、支援、リハビリテーションおよび補償について定めていないカノン法上の手続を通じて虐待事件に対処していることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のこともとりわけ懸念する。
  • (a) とくにウェストチェスター郡の大陪審(アメリカ合衆国)、ライアン委員会(アイルランド)およびウィンター委員会(カナダ)が留意しているように、被害を受けた子どもおよびその家族が、宗教的権威を有する機関によってしばしば非難されかつ信用を貶められ、告発の継続を思いとどまるよう促され、かつ、場合によっては屈辱を与えられてきたこと。
  • (b) 被害を受けた子どもおよびその家族に対し、金銭的補償の前提条件として秘密保持および沈黙が課されてきたこと。
  • (c) 法王聖座が、法王聖座自らが関わる事件については時効を延長したにもかかわらず、場合により、子どもの性的虐待についての時効を延長しようとする一部の国の努力を妨害してきたこと。
61.委員会は、法王聖座が、被害者および証人である子どもの取扱いに関わる事柄について、子どもの最善の利益の尊重および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである旨、勧告する。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 性的虐待その他の形態の虐待の被害を受けた子どもを早期に発見するための包括的手続を発展させること。
  • (b) 性的虐待の被害者または証人である子どもを対象とした、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ効果的な通報のための回路を確保するとともに、性的虐待または他のあらゆる犯罪の被害を受けた子どもが、虐待を通報した際、将来の虐待および報復から保護されることを確保すること。また、親に対し、その子どもが受けた虐待について裁判所に訴えを起こす際の援助を提供すること。
  • (c) 犯罪の被害者および証人である子どもに対し、その身体的および心理的リハビリテーションならびに社会的再統合のための支援が提供されること、ならびに、このような措置について、子どもが国内法執行機関に虐待を通報することの妨げとなる秘密の和解が条件とされないことを確保すること。
  • (d) 法王聖座の権威のもとにある個人および機関によって行なわれた性的虐待の被害者に対し、いかなる秘密保持または沈黙の義務も課さずに補償を行なうとともに、これとの関連で被害者のための補償制度を確立すること。
  • (e) 子どもの性的虐待の被害者が正義および救済を求めることが時効によって阻害されている国々において、時効制度の改革を促進すること。
  • (f) 性的な搾取および虐待の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施すること。

H.国際人権文書の批准

62.委員会は、法王聖座が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約および両規約の選択議定書、ならびに、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書を批准するよう、勧告する。

I.フォローアップおよび普及

63.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
64.条約第45条(a)および(b)に照らし、委員会は、法王星座が、性的虐待および性的搾取に関連する委員会の勧告の実施にあたり、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する特別報告者に対して専門的助言を求めることを検討するよう、勧告する。
65.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

J.次回報告書

66.委員会は、法王聖座に対し、第3回~第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、法王聖座が、今後の報告書は当該ガイドラインを遵守すべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
67.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を一体となって構成するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。