総括所見:バチカン(OPSC・2014年)


CRC/C/OPSC/VAT/CO/1(2014年2月25日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1853回(CRC/C/SR.1853参照)において法王聖座(Holy See)の第1回報告書(CRC/C/OPSC/VAT/1)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、法王聖座による第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/VAT/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書が6年遅れで提出されたこと、および、法王聖座が、その法的権威のもとで活動する個人および機関による選択議定書の実施に関連した質問に回答しなかったことを、遺憾に思うものである。委員会は、法王聖座の多部門型代表団との対話を歓迎する。
3.司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、選択議定書を批准するにあたり、法王聖座は、選択議定書を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その至高の権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。
4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、子どもの権利条約に基づいて法王聖座が提出した第2回定期報告書についての総括所見(CRC/C/VAT/CO/2)および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で法王聖座がとった、以下のものを含む措置を歓迎する。
  • (a) 刑事事案におけるバチカン市国司法当局の管轄権に関するローマ法王の自発教令(2013年7月11日)。
  • (b) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。
  • (c) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。
  • (d) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。
  • (e) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。
6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)にも評価の意図ともに留意する。

III.データ

7.委員会は、委員会が要請した、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事案であって報告対象期間中に法王聖座が扱ったものおよび教理省が2001年以降扱ってきたものについてのデータが法王聖座から提供されなかったことを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、選択議定書で対象とされている犯罪に関連したすべての事案を記録し、付託しかつフォローアップすることならびに選択議定書の実施における進展を分析しかつ評価することを目的とした包括的なデータ収集システムを設置していないことも、懸念するものである。
8.委員会は、法王聖座が、選択議定書が対象とするすべての分野でデータの収集および分析ならびに事件の影響の監視および評価を行なうための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきであり、かつ、これらの事件について行なわれたフォローアップに関する情報も含まれるべきである。そのようなデータ収集システムが設置され、かつ犯罪実行地国との情報共有のために効果的に活用されるようになるまでの間、委員会は、法王聖座に対し、法王聖座および教理省が2001年以降収集してきた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件に関するすべての情報が、適切なフォローアップを目的として、権限のある国内司法機関に全面的にかつ直ちに開示されることを確保するよう促す。

IV.一般的実施措置

子どもの権利条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)
9.委員会は、法王聖座が、聖職者が関与した児童ポルノ事件に対応するにあたり、自己の意見を表明しかつ正当に重視される子どもの権利を確保せず、かつ、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利よりも教会の信用の維持を優先させてきたことを懸念する。委員会は、そのような対応をとった法王聖座が、選択議定書上の犯罪の防止および被害を受けた子どもの犯罪通報能力を阻害し、したがって加害者の不処罰および被害を受けた子どものさらなるトラウマを助長してきたことを懸念するものである。
10.委員会は、法王聖座が選択議定書第8条第1項(b)および(c)ならびに第3項に基づく義務を想起するよう求めるとともに、法王聖座が、売買、買春およびポルノの被害者である子どもの意見表明権および自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利が保護されかつ尊重されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
立法
11.選択議定書上の犯罪を処罰するバチカン市国法第8号および第9号の採択は歓迎しながらも、委員会は、これらの法律の適用がバチカン市国の領域に限定されており、かつ、法王聖座の至高の権威のもとで活動するすべての個人および機関にこれらの法律が適用されるわけではないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書に違反するカノン法の規定(とくにこれらの犯罪を法的に犯罪として定義することに関わるもの)およびこれらの犯罪に対応するための手続をいまなお改正せずに適用し続けていることも懸念するものである。
12.委員会は、法王聖座に対し、カノン法を含むすべての規範および規則を選択議定書に一致させ、かつ、バチカン市国ならびに法王聖座の至高の権威のもとで活動する個人および機関に対して同一の法律が適用されることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、選択議定書と矛盾するすべてのカノン法の規定、とくに1962年の「勧誘の罪」(Crimen Sollicitationis)および2011年の「秘跡の神聖性の保護」(Sacramentorum Sanctitatis Tutela)を遅滞なく改正することも促すものである。
調整および評価
13.委員会は、法王聖座が、選択議定書を実施するための活動の監視および評価について指導力を発揮し、かつ効果的な全般的監督を行なう調整期間を設けていないことを懸念する。
14.委員会は、法王聖座が、選択議定書の実施のための活動を監視しかつ評価する能力を備えた調整期間を創設するよう勧告する。
普及および意識啓発
15.カトリックの専門機関により子どもの権利および選択議定書に関する資料が刊行されかつ教育者に配布されていることは歓迎しながらも、委員会は、選択議定書に関する子ども、その家族および公衆一般の意識を高め、かつ、とくに子どもに対して身の守り方および犯罪の通報の方法を知らせるための同様の措置が法王聖座によってとられていないことを懸念する。
16.委員会は、法王聖座が、その道徳的権威を全面的に活用し、子ども、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に選択議定書を広く知らせることに対して包括的なアプローチをとるとともに、そのために、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたち自身と緊密に協力しながら、選択議定書で取り上げられているあらゆる問題についての意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させるよう、勧告する。法王聖座はまた、選択議定書を地元の言語に翻訳し、かつ子どもにやさしい形式で普及することを含めて、世界中で法王聖座の権威のもとに活動している個人および機関(カトリック学校を含む)がこの点に関して積極的な役割を果たすことも確保するべきである。
研修
17.委員会は、子どもが虐待および搾取の危険にさらされる状況を発見しかつそれに対応するための訓練をカトリック学校の教員に対して行なうためにケニアで開発された「カトリック司牧意識啓発プログラム」など、国レベルでカトリック機関が開発したプログラムに、積極的に留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとで活動するすべての個人および機関を対象とした同様のプログラムの開発および普及を行なっておらず、かつ、聖職者によって行なわれた未成年者の性的虐待事件に対応するための指針を策定するにあたって司教協議会を援助する目的で、もっぱら2011年の回勅を参照するよう求め続けていることを、懸念するものである。当該回勅は、子どもを保護し、かつ、これらの犯罪に対処する方法についての適切な指針を個人および機関に対して示すうえで有効性を欠くことが明らかになっている。
18.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪の防止、発見および適切な取扱いについての適切な指針および研修資料を、その権威のもとで活動するすべての個人および機関に提供するよう促す。法王聖座は、カトリック系の学校および施設の教職員がそのような研修を受けることを確保するとともに、そのような研修を実施するために必要な資源を使途指定方式により用意するべきである。
資源配分
19.委員会は、法王聖座が、選択議定書上の犯罪を防止し、子どもを保護し、かつ、その権威のもとにある個人が行なった犯罪の被害を受けた子どもに対してその身体的および心理的回復ならびに社会的統合のための支援を提供することを目的としたプログラムの開発および実施に、何らの資源配分も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、国際的に選択議定書を促進することを目的とした活動のための具体的資源配分を行なっていないことも懸念するものである。
20.委員会は、法王聖座が、選択議定書が対象とする犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの保護およびリハビリテーションを目的としたプログラムの開発および実施に十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することに対して、高い優先順位を付与するよう勧告する。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(第1項~2項))

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
21.委員会は、被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援するためにカトリック系の修道会および団体が世界中で発展させてきたさまざまな取り組み、および、選択議定書上の犯罪を助長する諸要因に対処するために法王聖座が世界中で道徳的指導力を発揮してきたことを示す複数の証拠を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとにある個人に対しては同様のアプローチをとっておらず、かつ、司祭および修道女が選択議定書で対象とされている犯罪を行なうことを防止するために時宜を得た、かつ適切な措置をとってきていないことを懸念するものである。委員会は、児童ポルノを制作し、所持しかつ配布していながら、そのことを承知のうえで子どもと接触する立場に置かれていた司祭の事案について、とりわけ懸念する。
22.委員会は、法王聖座に対し、児童ポルノおよび選択議定書上のその他の犯罪への関与が疑われているすべての司祭が直ちに聖職から解任されることを確保するとともに、子どもが選択議定書上の犯罪の被害者となることを効果的に防止するための規則、指針および機構を遅滞なく採択するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、2013年12月に創設された未成年者保護司牧委員会が、法王聖座の権威のもとにある個人が関与した児童ポルノ事件について法王聖座が適用する方針および実践の包括的評価を実施することを確保するとともに、当該評価の結果が公にされ、かつすべての者、とくに被害者がこれにアクセスできることを確保するよう、促すものである。
子どもの売買および養子縁組
23.委員会は、スペインの産科病棟で数千人の赤ん坊が母親から引き離され、かつ、医師、司祭および修道女のネットワークによって、親としてより適切だとみなされた子どものいないカップルに売られていたことが2011年に発覚したことに、深い懸念を表明する。委員会はまた、マグダレン洗濯所に収容されていた女子および女性から赤ん坊が組織的に引き離されていたアイルランドのように、他国でも同様の慣行が行なわれていたことを懸念するものである。
24.委員会は、法王聖座に対し、その権威のもとに活動する個人および機関であって、母親から赤ん坊を取り上げ、かつ報酬または他の何らかの見返りと引き換えに子どものいないカップル、個人または機関に譲渡する行為を組織し、これに参加しまたはこれを援助した個人および機関が責任を問われることを確保するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、被害者が自己の生物学的血縁関係についての情報にアクセスできることを容易にする目的で、これらの犯罪に関与した機関および個人が収集したすべての情報が全面的に開示されることを確保するよう、促すものである。
25.委員会は、カトリック系の多くの機関および団体が国際養子縁組に関与しているにもかかわらず、法王聖座が、カトリック系の期間が不法な養子縁組に従事しないことを確保するために必要な措置をとっていないことを懸念する。
26.選択議定書第5条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、その権威のもとにあり、かつ子どもの養子縁組に関与しているすべての個人および機関が適用可能な国際法文書にしたがって行動することを確保するための適切な法律上および行政上の措置を、優先的課題としてとるよう促す。委員会は、法王聖座が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を検討するよう勧告するものである。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項および3項)、第5条、第6条および第7条)

現行刑事法令
27.「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げたバチカン市国法第8号ならびに刑法および刑事訴訟法の改正を掲げたバチカン市国法第9号が2013年7月に採択されたことは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 法第8号および第9号がバチカン市国にしか適用されず、法王聖座の権威のもとにある個人および機関が行なった犯罪(これらの犯罪は引き続きカノン法の規定に服する)については取り上げていないこと。
  • (b) 聖職者によって行なわれた未成年者の性的虐待事件に対応するための指針を策定するにあたって司教協議会を援助することを目的とする2011年の回勅が、選択議定書上の犯罪への対応について国内刑事手続よりもカノン法上の手続を優先させていること。
28.委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての個人および機関に対しても、法第8号および第9号の適用範囲を拡大すること。
  • (b) 選択議定書上の犯罪の疑いがあるすべての案件を、たとえ国内法でそのような犯罪の通報が義務とされていない場合でも、直ちに国内法執行機関に付託するための明確な規則を採択すること。
訴追および不処罰
29.委員会は、児童ポルノに関連する行為を行なった聖職者の圧倒的多数ならびにそのような犯罪を隠蔽した者が不処罰の利益を享受していることを深く懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 被害者に沈黙の義務を課すことによって加害者が司法による裁きを免れることを可能にし、児童ポルノ関連の事件を国内法執行機関に通報することを妨げ、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしくない処罰を言い渡してきたカノン法の規定および手続が、いまなお有効でありかつ適用されていること。
  • (b) 法王聖座が、多くの機会に、法執行機関との協力、ならびに、検察官および国内調査委員会によって要請された情報の開示を拒否してきたこと。
  • (c) 法王聖座が、いくつかの国(とくにイタリア)と、一部領域におけるバチカン官吏(選択議定書上の犯罪について罪を問われている司祭および聖職者を含む)の免訴を保障する条約を締結していること。
30.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪を行なった者の不処罰を奨励する環境を生み出してきたすべてのカノン法の規定を遅滞なく廃止するよう促す。法王聖座はまた、内部指針を改正し、国内法執行機関との透明かつ効果的な協力も確保するべきである。委員会はさらに、法王聖座に対し、各国と締結した条約のうち、子どもの性的虐待の加害者が処罰されないことを助長する部分を無効にするよう促す。
犯罪人引渡し
31.委員会は、法王聖座が、起訴を目的とする犯罪人引渡しを求めることはない一方、ラテラノ条約第22条にしたがい、双方可罰性原則に基づいてイタリア当局に犯罪人の引渡しを行なっていることに留意する。委員会は、法王聖座が、2014年1月、児童ポルノの容疑を含む犯罪容疑について取り調べるためある大司教をバチカンからポーランドに引き渡すよう求めたポーランドの検察官の請求を拒否したことを、とりわけ懸念するものである。
32.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書第3条第1項上のすべての犯罪が引渡しの対象の犯罪とされ、かつ、犯罪人引渡しおよび(または)国外で行なわれた犯罪の訴追に関する双方可罰性要件が廃止されることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、必要なときは選択議定書第5条にしたがって選択議定書を犯罪人引渡しのための法的根拠として用い、かつ、国外で子どもの性的虐待について告発されているいかなる聖職者についても引渡しを続けることも促すものである。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条および第9条(第3項および4項))

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置
33.委員会は、選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもがカトリックの聖職者から受けた犯罪を通報する際に直面する多くの障壁にもかかわらず、法王聖座が、子どもが苦情を申立てるための子どもにやさしい機構を設置することについて、選択議定書第8条第1項に基づく法的要件として必要ではないといまなお考えていることを懸念する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。
  • (a) 選択議定書上の犯罪に対してこれまで適用され、かつ引き続き適用されているカノン法に、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益の保護に関するいかなる規定も掲げられていないこと。
  • (b) いくつかの国内委員会が留意しているように、多くの事案で、被害を受けた子どもおよびその家族がカトリック教会当局による再被害を受けてきたこと。
34.選択議定書第9条第3項に照らし、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、被害を受けた子どもを刑事司法制度を扱うにあたって子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 議定書上のすべての犯罪に関わる苦情申立て、救済および是正のための子どもにやさしい機構および手続を、これ以上遅延することなく設置すること。
  • (b) 法王聖座の権威のもとで活動するすべての個人および機関を対象とした子どもの保護に関する指針を策定するとともに、当該指針に関する研修が実施されることを確保すること。
  • (c) 国内法執行機関との協力のための機構を設置する等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの早期発見のための機構および手続を設置すること。
  • (d) 被害を受けた子どもが、選択議定書上の犯罪を告発した際に教会当局による被害をこれ以上受けないことを確保すること。
被害者の回復および再統合
35.法王聖座が、選択議定書の諸締約国に対し、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもに援助を提供することを示唆しようと努めていること、および、性的搾取の被害を受けた子どもに対してカトリック教会が援助を提供していることには留意しながらも、委員会は、聖職者が行なった犯罪の被害を受けた子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合との関連で援助を提供するための適切な措置が法王聖座によってとられていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) カトリックの聖職者が行なった児童ポルノ犯罪事件に対応するために用いられてきたカノン法に、被害者の回復および再統合についてのいかなる規定も掲げられていないこと。
  • (b) 委員会に対する文書回答で明らかにされているように、法王聖座が、子どもの援助に関して諸締約国と直接協力していないこと。
  • (c) 選択議定書上の人権侵害の被害を受けた子どもに対する金銭的補償の条件として、被害者およびその家族に秘密保持および沈黙が課されてきたこと。
36.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにあらゆる適切な措置をとり、かつ、これらの措置が子どもの自尊心および尊厳を醸成する環境のなかでとられることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、その権威のもとに活動する個人および機関が行なった犯罪の被害者に、被害者に対して秘密保持の義務を課すことなく補償を行なう義務を履行することも促すものである。この目的のため、法王聖座は、聖職者が行なった選択議定書上の犯罪の被害者のための補償制度を確立するよう求められる。

VIII.国際的な援助および協力(第10条)

多国間、地域間および二国間の取り決め
37.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、法王聖座に対し、法執行機関との調整を図り、かつ、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させることにより、近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力を強化するよう奨励する。この文脈において、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪を、各国と締結しているいかなる免責協定からも除外するよう促すものである。委員会はまた、法王聖座に対し、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討することも促す。

IX.フォローアップおよび普及

38.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、議会、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
39.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

40.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書およびこの総括所見に掲げられた勧告の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


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