子どもの権利委員会・一般的意見12号:意見を聴かれる子どもの権利(3)


C.さまざまな場面および状況における意見を聴かれる権利の実施(続き)

6.労働現場における実施
116.法律ならびに国際労働機関第138号条約(1973年)および第182号条約(1999年)が認める年齢未満で働いている子どもたちは、当該状況および自分の最善の利益に関するその意見を理解するため、子どもに配慮した環境で意見を聴かれなければならない。このような子どもたちは、経済的および社会構造的制約ならびにこれらの子どもたちが働く文化的文脈を尊重する解決策の追求に包摂されるべきである。子どもたちはまた、児童労働の根本的原因を解消する目的で政策、とくに教育に関わる政策が立案されるときにも、意見を聴かれるべきである。
117.働く子どもたちは法律によって搾取から保護される権利を有しているのであり、労働法の実施状況を調査する査察官が就業場所および労働条件を検査するときに意見を聴かれるべきである。子どもたち、および存在するのであれば働く子どもたちの団体の代表は、労働法が起草される際または法律の執行状況が検討および評価される際にも意見を聴かれるべきである。

7.暴力の状況下における実施
118.条約は、あらゆる形態の暴力から保護される子どもの権利、および、この権利をいかなる差別もなくすべての子どもに対して確保する締約国の責任を定めている。委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の暴力に対処することを目的とする立法上、政策上、教育上その他の措置の立案および実施において、子どもたちと協議するよう奨励するものである。搾取されている子どもたち、ストリートチルドレンまたは難民である子どもたちのような周縁化されかつ不利な立場に置かれた子どもたちが、関連の立法および政策プロセスに関する意見を募るための協議プロセスから排除されないことを確保することに対し、特段の注意が払われなければならない。
119.これとの関連で、委員会は「子どもに対する暴力に関する事務総長研究」の知見を歓迎し、締約国に対し、その勧告を全面的に実施するよう促す(子どもに対する暴力の防止、報告および監視のあらゆる側面について、子どもたちがその意見を自由に表明できる場を提供し、かつ表明された意見を正当に重視するよう求める勧告を含む)。 [18]
[18] 「子どもに対する暴力に関する国際連合研究」のための独立専門家の報告書(A/61/229)。
120.子どもたちに対して振るわれる暴力の多くは異議申し立てを受けることがない。これは、一部の形態の虐待的行動は受け入れられた慣行であると子どもたちから理解されているためでも、子どもにやさしい通報機構が存在しないためでもある。たとえば、体罰、女性器切除または早期婚のような不当な取扱いを経験してもそれを秘密にかつ安全に通報できる相手がおらず、また子どもの権利を実施する責任者に全般的見方を伝える回路もない。そのため、子どもたちを効果的に保護措置の対象とするためには、子どもたちが、意見を聴かれる自分たちの権利およびあらゆる形態の身体的・心理的暴力を受けずに成長する権利について十分な情報を得ていることが必要とされる。締約国は、あらゆる子ども施設に対し、子どもたちが秘密にかつ安全に通報できる個人または組織に容易にアクセスできるようにすること(電話のヘルプラインを通じてのアクセスも含む)、および、子どもに対する暴力との闘いについて子どもたちが自分の経験および意見を寄せられる場を提供することを、義務づけるべきである。
121.委員会はまた、子どもたちが自分自身の保護に関して中心的役割を果たせるよう、暴力に対応するための子どもたちの団体および子どもが主導する取り組みを支援および奨励し、かつ暴力に対抗するためのプログラムおよび措置の立案、確立および評価にこれらの団体を包摂するべきであるという、「子どもに対する暴力に関する事務総長研究」に掲げられた勧告に対しても、締約国の注意を喚起するものである。

8.防止戦略の策定における実施
122.委員会は、子どもの権利侵害の防止において子どもたちの声がますます力を増していることに留意する。望ましい実践例は、とくに学校における暴力防止、危険かつ厳しい労働を通じた搾取との闘い、ストリートチルドレンへの保健サービスおよび教育の提供ならびに少年司法制度の分野で見出すことができる。子どもたちは、これらの問題その他の問題領域に関する立法および政策の立案に際して協議の対象とされるべきであり、かつ、関連する計画およびプログラムの起案、策定および実施への参加を促されるべきである。

9.移住および庇護に関わる手続における実施
123.仕事を求める親に連れられてまたは難民としてある国にやってきた子どもたちは、とりわけ脆弱な状況に置かれる。そのため、移住および庇護に関わる手続のあらゆる側面について自己の意見を表明するこのような子どもたちの権利を全面的に実施することが緊急に必要である。移住の場合、学校および保健サービスへの子どもの統合を図るため、教育上の期待および健康状態について子どもの意見を聴かなければならない。庇護申請の場合、これに加えて、庇護申請に至った理由を提示する機会が与えられなければならない。
124.委員会は、手続においてこれらの子どもたちの声に耳が傾けられかつ正当に重視されるようにするため、これらの子どもたちに対し、その権利、利用可能なサービス(連絡および意思疎通の手段を含む)ならびに移住・庇護手続に関するあらゆる関連の情報が子どもたち自身の言語で提供されなければならないことを強調する。後見人または助言者が無償で任命されるべきである。庇護希望者である子どもたちには、その最善の利益について判断するため、家族の効果的な追跡、および、出身国の状況に関する関連情報も必要になる場合がある。かつて武力紛争に関与していた子どもたちには、自己のニーズをはっきりと表明できるようにするため、特段の援助が必要になるかもしれない。さらに、無国籍の子どもたちが、居住領域内で進められる意思決定プロセスに包摂されることを確保するための注意も必要である。[19]
[19] 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/C/2005/6)参照。

10.緊急事態下における実施
125.委員会は、第12条に掲げられた権利は危機状況またはその直後の時期においても停止しないことを強調する。紛争状況、紛争後の解決、および緊急事態後の復興において子どもたちが重要な貢献を行なえることを示す証拠はますます蓄積されつつある [20]。そこで委員会は、2008年の一般的討議後の勧告で、緊急事態の影響を受けた子どもたちが、自分たちの状況および将来展望の分析への参加を奨励され、かつ参加できるようにされるべきことを強調した。子ども参加は、子どもたちが自分たちの生活をふたたびコントロールできるようにするうえで役立ち、立ち直りに寄与し、組織的スキルを発展させ、かつアイデンティティの感覚を強化する。しかし、トラウマにつながるまたは有害である可能性が高い状況を目の当たりにすることから子どもたちを保護するための配慮は必要である。
[20] “The participation of children and young people in emergencies: a guide for relief agencies”, UNICEF, Bangkok (2007).
126.したがって委員会は、締約国に対し、子どもたち、とくに思春期の子どもたちが、緊急事態後の復興プロセスおよび紛争後の解決プロセスの双方で積極的役割を果たせるようにする機構を支援するよう奨励する。プログラムの事前評価、立案、実施、モニタリングおよび事後評価において子どもたちの意見が募られるべきである。たとえば、難民キャンプの子どもたちに対し、子どもフォーラムの設置を通じて自分たち自身の安全およびウェルビーイングに貢献するよう奨励することが考えられよう。子どもたちがそのようなフォーラムを設置できるようにするための支援が与えられなければならない。他方、その運営が子どもたちの最善の利益および有害な経験から保護される権利と合致することを確保することも必要である。

11.全国的および国際的場面における実施
127.子ども参加の機会の多くはコミュニティ・レベルで生じている。委員会は、地方若者議会、自治体子ども評議会、および、意思決定プロセスにおいて子どもたちが自分たちの意見を表明することのできる特別協議の数が増えていることを歓迎するものである。しかし、このような正式な代表制に基づく地方政府への参加体制は、地方レベルでの第12条の実施への数あるアプローチのひとつに過ぎないものと位置づけることが求められる。このような体制を通じて地域コミュニティに関与できるのは、相対的に少人数の子どもたちに留まるためである。政治家および官吏が時間を決めて協議に応じること、オープンハウスを実施することならびに学校や幼稚園を訪問することによって、コミュニケーションのための追加的機会をつくり出すことができる。
128.子どもたちは、意味のある参加および集団的表現の空間を生み出すことにつながる子ども主導型の団体および取り組みを自分たち自身で形成するよう、支援および奨励されるべきである。加えて、子どもたちは、より適切なサービスを確保する目的で、たとえば学校、遊び場、公園、余暇施設および文化施設、公共図書館、保健施設ならびに地域輸送システムの設計に関する自分たちなりの見方を提供することができる。公衆との協議を呼びかけるコミュニティ開発計画においては、子どもたちの意見が明示的に包摂されるべきである。
129.一方、このような参加の機会が、行政区、広域行政圏、連邦州および国のレベルでも設けられている国も多い。そこでは、若者の議会、評議会および会議を通じて、子どもたちが自分たちの意見を発表し、かつ関連の聴き手に知らせる場が提供されている。NGOおよび市民社会組織は、代表の選ばれ方の透明性を守り、かつ操作または形式主義の危険に対抗する子ども支援実践を発展させてきた。
130.委員会は、意見を聴かれる子どもたちの権利およびあらゆる分野における子ども参加についての意識を促進するうえでユニセフおよびNGOが重要な貢献を行なってきたことを歓迎するとともに、子どもに影響を与えるあらゆる事柄についての子ども参加を(草の根レベル、コミュニティ・レベル、国レベルまたは国際レベル等で)さらに促進し、かつ模範的実践の交流を推進するよう奨励する。集団的アドボカシーの共同学習の機会および実践の場を増やすため、子ども主導型団体のネットワーク化が積極的に奨励されるべきである。
131.国際的レベルでは、国連総会が主催した「子どものための世界サミット」(1990年および2002年)における子ども参加、ならびに、子どもの権利委員会への報告プロセスへの子どもたちの関与が特段の関連性を有する。委員会は、締約国による子どもの権利の実施状況を監視するプロセスにおいて、子ども団体および子どもたちの代表から提出される文書による報告および口頭による追加情報を歓迎し、締約国およびNGOに対し、子どもたちが委員会に意見を提供することを支援するよう奨励するものである。

D.意見を聴かれる子どもの権利を実施するための基本的要件

132.委員会は、締約国に対し、子どもたちの意見表明を制約し、または子どもたちが意見を聴いてもらえるようにはするものの表明された意見を正当に重視しない、形式主義的アプローチを避けるよう促す。委員会は、何を言ってもよいか告げられるような状況に子どもたちを置き、または参加を通じた危害のおそれに子どもたちをさらすような、おとなによる子どもたちの操作は、倫理的実践ではなく、かつ第12条を実施しているとは理解できないことを強調するものである。
133.参加が効果的かつ意味のあるものとなるためには、一度きりの個別的イベントではなくプロセスとして理解される必要がある。子どもの権利条約が1989年に採択されて以降の経験を通じ、第12条の効果的、倫理的かつ意味のある実施のために達成されなければならない基本的要件について幅広い合意が形成されてきた。委員会は、締約国が、第12条を実施するためのあらゆる立法上その他の措置にこれらの要件を統合するよう勧告する。
134.子どもまたは子どもたちが意見を聴かれかつ参加するあらゆるプロセスは、以下のようなものでなければならない。
  • (a) 透明かつ情報が豊かである――子どもたちは、自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利ならびにこのような参加が行なわれる方法、その範囲、目的および潜在的影響についての、十分な、アクセスしやすい、多様性に配慮した、かつ年齢にふさわしい情報を提供されなければならない。
  • (b) 任意である――子どもたちが意思に反して意見表明を強要されることはけっしてあるべきではなく、また子どもたちにはどの段階でも関与をやめてよいことが知らされるべきである。
  • (c) 尊重される――子どもたちの意見は敬意をもって扱われなければならず、また子どもたちにはアイデアおよび活動を主導する機会が提供されるべきである。子どもたちとともに活動しているおとなは、たとえば家族、学校、文化および労働環境に対する貢献における子ども参加の好例を認知し、尊重し、かつ発展させていくことが求められる。子どもたちの生活の社会経済的、環境的および文化的文脈についての理解も必要である。子どもたちのためにおよび子どもたちとともに活動している者および組織も、公的イベントへの参加に関して子どもたちの意見を尊重するべきである。
  • (d) 子どもたちの生活に関連している――子どもたちが意見表明権を有する問題は、その生活に真に関連しており、かつ子どもたちが自分の知識、スキルおよび能力を活用できるようなものでなければならない。加えて、子どもたち自身が関連性および重要性を有すると考える問題に光を当て、かつ対処できるようにする余地も設けられる必要がある。
  • (e) 子どもにやさしい――環境および作業方法は子どもたちの力量に合わせて修正されるべきである。子どもたちが十分に準備を整え、かつ意見を表明する自信および機会を持てることを確保するため、十分な時間および資源を利用可能とすることが求められる。子どもたちは、その年齢および発達しつつある能力にしたがって異なる水準の支援および関与形態を必要とすることが考慮されなければならない。
  • (f) インクルーシブである――参加はインクルーシブであり、現存する差別のパターンを避け、かつ周縁化された子どもたち(女子と男子の双方を含む)が関与する機会を奨励するようなものでなければならない(前掲パラ88も参照)。子どもたちは均質的集団ではなく、参加は、いかなる事由に基づく差別もなく、すべての子どもたちに対して均等な機会を提供するようなものである必要がある。プログラムにおいては、あらゆるコミュニティ出身の子どもたちに対して文化的配慮を行なうことも確保されなければならない。
  • (g) 訓練による支援がある――おとなには、子ども参加を効果的に促進するための、たとえば耳を傾けること、子どもたちと共同作業を行なうことおよび発達しつつある能力にしたがって効果的に子どもたちの参加を得ることに関わるスキルを身につけるための、準備、スキルおよび支援が必要である。子どもたち自身が、効果的参加を促進する方法についてのトレーナーおよびファシリテーターとして関与することもできよう。子どもたちには、たとえば効果的参加に関わるスキル〔および〕権利意識を高めるための能力構築、ならびに、会議の組織、資金集め、メディア対応、公の場での話およびアドボカシーに関する訓練が必要である。
  • (h) 安全であり、かつリスクに配慮している――一定の状況では意見表明がリスクをともなう可能性もある。おとなはともに活動する子どもたちに対して責任を負っているのであり、子どもたちに対する、暴力、搾取、または参加にともなう他のいずれかの否定的結果のリスクを最小限に留めるために、あらゆる予防措置をとらなければならない。適切な保護を提供するために必要な措置には、一部のグループの子どもたちが直面する特別なリスク、および、このような子どもたちが援助を得る際に直面する追加的障壁を認識した、明確な子ども保護戦略を策定することが含まれよう。子どもたちは、危害から保護される権利を認識し、かつ必要な場合にどこに行けば援助を得られるか承知していなければならない。参加の価値および意味合いに関する理解を構築し、かつしかるべき対応がとられない場合に子どもがさらされる可能性のあるリスクを最小限に留めるため、家族およびコミュニティとの協働に投資することが重要である。
  • (i) 説明責任が果たされる――フォローアップおよび評価に対するコミットメントが必要不可欠である。たとえば、いかなる調査研究および協議のプロセスにおいても、子どもたちは、その意見がどのように解釈および活用されるかについて情報を知らされ、かつ、必要なときは、知見の分析に異議を申し立てかつ影響を及ぼす機会を提供されなければならない。子どもたちはまた、自分たちの参加がいずれかの結果にどのような影響を及ぼしたのかについても、明確なフィードバックを提供される資格を有する。子どもたちは、適切な場合には常に、フォローアップのプロセスまたは活動に参加する機会を与えられるべきである。子ども参加のモニタリングおよび評価は、可能な場合には子どもたち自身とともに行なわれなければならない。

E.結論

135.自己にとってのあらゆる関心事について意見を聴かれ、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利の実現に投資することは、締約国が条約上負っている明確かつ即時的な法的義務である。これはいかなる差別もなくすべての子どもが有する権利である。第12条を実施するための意味のある機会を達成するには、子どもたちが意見を聴かれる機会および自己に影響を与えるすべての事柄についての参加へのアクセスを現在妨げている法的、政治的、経済的、社会的および文化的障壁を解体することが必要になろう。そのためには、子どもたちの能力に関する常識を問い直し、かつ、子どもたちが能力を構築および実証できる環境の発展を奨励するための態勢が必要である。資源および訓練に対するコミットメントも必要になる。
136.これらの義務を履行することは、締約国にとって課題を突きつけられることである。しかしそれは、この一般的意見に掲げられた戦略が体系的に実施され、かつ子どもたちおよびその意見を尊重する文化が構築されれば、達成可能な目標なのである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年5月2日)。