子どもの権利委員会・一般的意見12号:意見を聴かれる子どもの権利(2)


A.法的分析(続き)

3.締約国の義務
(a)締約国の中核的義務
48.意見を聴かれる子どもの権利は、適切な情報、必要な場合の十分な支援、意見がどの程度重視されたかに関するフィードバック、および、苦情申立て、救済措置または是正措置の手続へのアクセスを子どもたちに提供する機構を導入するために国内法を再検討しまたは改正する義務を、締約国に対して課すものである。
49.これらの義務を履行するため、締約国は以下の戦略をとるべきである。
  • 第12条に関する制限的な宣言および留保を再検討しかつ撤回すること。
  • 子どもの権利に関する幅広い権限を有する子どもオンブズマンまたは子どもコミッショナーのような、独立の人権機関を設置すること [8]。
  • 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象として、第12条および実践におけるその適用についての研修を行なうこと。このような専門家には、弁護士、裁判官、警察官、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、ケアワーカー、居住型施設および刑務所の職員、あらゆる段階の教育制度の教員、医師、看護師その他の保健専門職、公務員および公的職員、庇護担当官ならびに伝統的指導者が含まれる。
  • 規則および体制を整えることにより、子どもの意見表明を支援および奨励するための適切な条件を確保し、かつ子どもの意見が正当に重視されるのを確実にすること。このような規則および体制は、法律および機関内規則にしっかりと根ざしており、かつその効果に関して定期的評価が行なわれるようなものでなければならない。
  • 広く蔓延している慣習的子ども観を変革するための公的キャンペーン(オピニオンリーダーおよびメディアによるものも含む)を通じ、意見を聴かれる子どもの権利の全面的実現を妨げる否定的態度と闘うこと。
[8] 独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)参照。
(b)司法的および行政的手続に関わる具体的義務
(i) 民事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利
50.子どもの意見が聴かれなければならない主な問題について以下に詳述する。
〈離婚および別居〉
51.別居および離婚の事案において、当該関係のもとにある子どもが裁判所の決定の影響を受けることは明白である。子どもの養育費ならびに監護権および面接交渉の問題は、審判において、または裁判所が主導する調停を通じて、いずれにせよ裁判官によって決定される。多くの法域では、その法律に、関係の解消と関わって、裁判官は「子どもの最善の利益」を至高の考慮事項としなければならない旨の規定を置くようになっている。
52.このような理由から、別居および離婚に関するあらゆる立法には、子どもが意思決定担当者によっておよび調停手続において意見を聴かれる権利が含まれていなければならない。法域によっては、政策上または立法上の問題として、子どもに自己の意見を表明する力があると見なされるいずれかの年齢を定めることが望ましいとされている場合もある。しかし委員会は、この問題が個別事案ごとに決定されることを期待するものである。これは年齢および成熟度に関わる問題であり、そのため子どもの能力を個別に評価することが必要だからである。
〈親からの分離および代替的養護〉
53.家庭内で虐待またはネグレクトの被害を受けているという理由で子どもを家族から分離するという決定が行なわれるときは常に、子どもの最善の利益を判断するためその子どもの意見が考慮されなければならない。このような介入は、子ども、他の家族構成員または虐待もしくはネグレクトを訴えるコミュニティの構成員からの苦情申立てによって開始されることが考えられる。
54.委員会の経験では、意見を聴かれる子どもの権利は締約国によって常に考慮されているとはかぎらない。委員会は、締約国が、立法、規則および政令を通じ、里親養護または施設への措置、ケアプランの策定および見直しならびに親および家族の訪問に関わるものを含む決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するよう勧告する。
〈養子縁組およびイスラム法のカファラ〉
55.子どもが養子縁組またはイスラム法のカファラのために措置され、かつ最終的に養子となりまたはカファラの措置が行なわれる見込みのときは、子どもの意見を聴くことがきわめて重要である。このようなプロセスは、継親または里親家族が子どもを養子とするときにも、子どもと養親になろうとする者がすでに一定期間ともに生活していた可能性もあるとはいえ、必要となる。
56.条約第21条は、子どもの最善の利益が最高の考慮事項であると述べている。養子縁組、カファラその他の措置に関する決定においては、子どもの意見を考慮することなく子どもの「最善の利益」を定義することはできない。委員会は、すべての締約国に対し、可能であれば養子縁組、カファラその他の措置の効果について子どもに情報を提供し、かつ子どもの意見が聴かれることを立法によって確保するよう促すものである。
(ii) 刑事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利
57.刑事上の手続において、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利は、少年司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に尊重されかつ実施されなければならない [9]。
[9] 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年、CRC/C/GC/10)参照。
〈罪を犯した子ども〉
58.条約第12条第2項は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された子どもが、意見を聴かれる権利を有すべきことを求めている。この権利は、子どもが黙秘権を有する審判前の段階から、警察、検察官および予審判事によって意見を聴かれる権利まで、司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に遵守されなければならない。この権利はまた、判決および処分の段階ならびに科された措置の実施の段階全体においても適用される。
59.調停を含むダイバージョンの場合、子どもは自由なかつ自発的な同意を与える機会を認められなければならず、かつ、提案されているダイバージョンの適切さおよび望ましさについて判断するにあたり法的その他の助言および援助を得る機会が与えられなければならない。
60.手続に実効的に参加するため、すべての子どもは、自己に対する被疑事実について迅速かつ直接にならびにその子どもが理解する言語で知らされなければならず、かつ、少年司法手続および裁判所がとる可能性のある措置についての情報も提供されなければならない。手続は、子どもの参加および自由な意見表明を可能にするような雰囲気のなかで行なわれるべきである。
61.法律に抵触した子どもの裁判その他の聴聞は非公開で行なわれるべきである。この原則に対する例外はきわめて限定されたものであるべきであり、国内法で明確に定められ、かつ子どもの最善の利益を指針とすることが求められる。
〈子どもの被害者および子どもの証人〉
62.犯罪の被害を受けた子どもおよび犯罪の証人である子どもに対しては、国際連合経済社会理事会決議2005/20「子どもの犯罪被害者および証人が関与する事案における司法についての国連指針」[10] にしたがって、自己の見解を自由に表明する権利を全面的に行使する機会が与えられなければならない。
[10] 国際連合経済社会理事会決議2005/20、とくに8、19および20条参照。下記URLで入手可:www.un.org/ecosoc/docs/2005/Resolution%202005-20.pdf
63.このことはとくに、子どもの被害者または(および)証人が、審査中の事案への関与に関わる関連の事柄について協議の対象とされ、かつ、司法手続への関与に関する意見および懸念を自由にかつその子どもなりの方法で表明できることを確保するために、あらゆる努力が行なわれなければならないということを意味する。
64.子どもの被害者および証人が有するこの権利は、保健サービス、心理サービスおよび社会サービスの利用可能性、子どもの被害者および(または)証人の役割、「尋問」が行なわれる方法、苦情を申し立てたり捜査および裁判手続に参加したりする際に子どものために用意されている支援のしくみ、聴聞が行なわれる具体的場所および時間、保護措置の利用可能性、補償を受けられる可能性、ならびに、上訴に関する規定について情報を知らされる権利とも関連している。
(iii) 行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利
65.すべての締約国は、第12条の要件を反映した行政手続を立法で策定し、かつ、意見を聴かれる子どもの権利を他の手続的権利(関連する記録の開示、聴聞の告知および親その他の者による代理に対する権利を含む)とともに確保するべきである。
66.子どもは裁判手続よりも行政手続に関与することになる可能性のほうが高い。行政手続はそれほど形式的なものではなく、より柔軟であり、かつ法令を通じて確立することが相対的に容易だからである。手続は、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいものでなければならない。
67.子どもたちに関連する行政上の手続の具体例としては、学校における規律上の問題(たとえば停退学等)、学校証明書の発給拒否および成績関連の問題、少年拘禁所における規律上の措置および特権を認めることの拒否、保護者のいない子どもによる庇護申請、ならびに、運転免許の申請に対応するためのしくみなどがある。これらの事案において、子どもは意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ「国内法の手続規則と一致する」その他の権利を享受できるべきである。

B.意見を聴かれる権利および条約の他の規定との関係

68.第12条は、一般原則のひとつとして、第2条(差別の禁止に対する権利)および第6条(生命、生存および発達に対する権利)のような他の一般原則と関連しており、かつ、とくに第3条(子どもの最善の利益の第一次的考慮)と相互依存関係にある。同条はまた、市民的権利および自由に関わる条項、とくに第13条(表現の自由に対する権利)および第17条(情報に対する権利)とも密接に関連している。さらに、第12条は条約の他のすべての条項とも関係しているのであって、これらの規定は、子どもがそれぞれの条項に掲げられた権利およびその実施について自分なりの意見を有する主体として尊重されるのでなければ、全面的に実施することができない。
69.第12条と第5条(子どもの発達しつつある能力ならびに親による適切な指示および指導、この一般的意見のパラ84参照)との関係はとくに関連性を有する。親が指導を与える際には子どもの発達しつつある能力を考慮に入れることがきわめて重要だからである。

1.第12条と第3条
70.第3条の目的は、子どもに関わるすべての行動において、その行動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかに関わらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保することである。このことは、子どものためにとられるすべての行動において、その子どもの最善の利益が尊重されなければならないことを意味する。子どもの最善の利益は、締約国に対し、子どもの最善の利益が考慮されることを確保するための措置を行動プロセスに導入するよう義務づける手続的権利とそれほど変わらない。条約は、締約国に対し、これらの行動の担当者が第12条で定められているとおりに子どもの意見を聴くことを確保するよう、義務づけている。このような措置は義務的なものである。
71.子どもとの協議に基づいて確立された子どもの最善の利益は、諸機関、公的機関および行政の行動において考慮されるべき唯一の要素というわけではない。しかしそれは、子どもの意見と同様に、決定的重要性を有する要素である。
72.第3条ではもっぱら個別事案が対象とされているが、子どもに関わるあらゆる行動において集団としての子どもの最善の利益が考慮されるよう要求していることも明らかである。したがって締約国には、子どもたちの最善の利益を明らかにする際に子ども一人ひとりの個別的状況を考慮するのみならず、集団としての子どもたちの利益も考慮する義務がある。さらに、締約国は、官民諸機関、公的機関および立法機関の行動も検討しなければならない。この義務が「立法機関」に対しても拡大されていることは、子どもたちに影響を与えるすべての法令または規則は「最善の利益」基準を指針としなければならないことを明確に示すものである。
73.いずれかの定義による集団としての子どもたちの最善の利益が、個別の利益を衡量する場合と同じやり方で確立されなければならないことには疑問の余地がない。多数の子どもたちの最善の利益が問題となっているときは、諸機関、公的機関または政府機関の長は、子どもたちに直接または間接に影響する行動(立法上の決定を含む)を計画する際、具体的に定義されていないそのような集団の子どもたちのうち関係する子どもたちから意見を聴き、かつその意見を正当に重視する機会も設けるべきである。
74.第3条と第12条との間に緊張関係はなく、2つの一般原則の補完的役割が存在するのみである。一方が子どもの最善の利益を達成するという目的を定め、他方が子ども(たち)の意見を聴くという目標を達成するための方法論を用意している。実のところ、第12条の要素が尊重されなければ第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条は、自分たちの生活に影響を与えるあらゆる決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している。

2.第12条、第2条および第6条
75.差別の禁止に対する権利は、子どもの権利条約を含むすべての人権文書で保障されている固有の権利である。条約第2条にしたがい、すべての子どもは、第12条で規定されているものも含む自己の権利の行使に関して差別されない権利を有する。委員会は、自己の意見を自由に表明しかつその意見を正当に考慮される権利を、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位を理由とするいかなる種類の差別もなくすべての子どもに対して保障するために、締約国が十分な措置をとらなければならないことを強調するものである。締約国は、子どもたちが意見を聴かれる権利を保障され、かつ、自己に影響を与えるすべての事柄に他のすべての子どもたちと平等に参加できるようにされることを確保する目的で、差別(権利を侵害されやすい立場に置かれたまたは周縁化された集団の子どもたちに対するものも含む)に対応しなければならない。
76.委員会はとりわけ、一部の社会で、慣習的態度および慣行によりこの権利の享受が阻害されかつ深刻に制限されていることに、懸念とともに留意する。締約国は、条約に基づくすべての子どもの権利の全面的実施を達成する目的で、このような態度および慣行の否定的な影響について意識啓発および社会の教育を行ない、かつ態度の変革を奨励するための十分な措置をとらなければならない。
77.委員会は、締約国に対し、意見を聴かれ、必要であれば支援を受け、自己の意見を明らかにし、かつその意見を正当に重視される女子の権利に特別な注意を払うよう促す。ジェンダーに基づくステレオタイプおよび家父長制的価値観により、第12条に掲げられた権利の女子による享受が阻害されかつ女児に深刻に制限されているからである。
78.委員会は、障害のある人の権利に関する条約第7条において、障害のある子どもが、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視されることを可能にするために必要な援助および設備を提供されることを確保する義務が、締約国に課されていることを歓迎する。
79.子どもの権利条約第6条は、すべての子どもが生命に対する固有の権利を有すること、および、締約国は子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保しなければならないことを認めている。委員会は、意見を聴かれる子どもの権利のための機会を促進することの重要性に留意するものである。子ども参加は、第6条、および、第29条に掲げられた教育の目的に一致する形で子どもの人格の全面的発達および子どもの発達しつつある能力を刺激する手段のひとつだからである。

3.第12条、第13条および第17条
80.表現の自由に対する権利に関する第13条および情報へのアクセスに関する第17条は、意見を聴かれる権利を効果的に行使するために決定的に重要な前提である。これらの条項は、子どもが権利の主体であることを確立するとともに、第12条とあわせて、子どもにはこれらの権利を自分自身で、その発達しつつある能力にしたがって行使する資格があると主張している。
81.第13条に掲げられた表現の自由に対する権利は、第12条と混同されることが多い。しかし、どちらも強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものである。表現の自由は、意見を有しかつ表明する権利ならびにいかなる媒体を通じても情報を求めかつ受け取る権利に関連している。これは、どのような意見を有しまたは表明するかについて締約国による制約を受けない子どもの権利を擁護するものである。したがって、これによって締約国に課される義務は、コミュニケーション手段および公の議論にアクセスする権利を保護しつつ、これらの意見の表明または情報へのアクセスに対する介入を行なわないことである。しかし第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、自分の生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。第12条は、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課しているのである。第13条に掲げられた表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし、第12条に一致する形で子どもの意見表明が尊重される環境をつくり出すことは、表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与するものである。
82.第17条に一致する形で情報に対する子どもの権利を充足させることは、かなりの程度、意見表明権を効果的に実現するための前提である。子どもたちは、自分たちに関係するあらゆる問題についての情報に、その年齢および能力にふさわしい形式でアクセスできる必要がある。このことは、たとえば、自分たちの権利、子どもに影響を与えるいずれかの手続、国内法令および政策、地元のサービスならびに異議申立ておよび苦情申立ての手続に関する情報について当てはまる。締約国は、第17条および第42条に一致する形で、学校カリキュラムに子どもの権利を含めるべきである。
83.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進する上でも、そのような意見を公的に表明する機会を提供する上でも重要な手段のひとつであることを、締約国が想起するよう求める。委員会は、さまざまな形態のメディアに対し、プログラムの制作に子どもたちの参加を得ること、および、子どもたちが自分たちの権利に関するメディアの取り組みを発展させかつ主導する機会を創設することにいっそうの資源を振り向けるよう、促すものである [11]。
[11] 子どもとメディアに関する一般的討議勧告(1996年):www.unhchr.ch/html/menu2/6/crc/doc/days/media.pdf

4.第12条と第5条
84.条約第5条は、締約国が、条約で認められた権利を子どもが行使するにあたって適当な指示および指導を行なう、親、法定保護者、または地方的慣習で定められている拡大家族もしくは共同体の構成員の責任、権利および義務を尊重しなければならないと述べている。したがって子どもは指示および指導に対する権利を有するのであるが、この指示および指導は、子どもの知識、経験および理解力の欠如を補うようなものでなければならず、かつ、同条で述べられているように、子どもの発達しつつある能力による制約を受けるものである。子ども自身の知識、経験および理解力が高まるにつれて、親、法定保護者または子どもに責任を負うその他の者は、指示および指導を、子ども自身の気づきを促すための注意喚起およびその他の形態の助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない。このような転換は、子どもの発達の固定された時点で生じるのではなく、子どもが自分の意見を表明するよう奨励されるなかで着実に進行していくものである。
85.この要件は、子どもが自己の意見をまとめる力を有しているときは常にその意見が正当に重視されなければならないと定めた条約第12条によって活性化される。換言すれば、子どもが力を獲得していくにつれて、自己に影響を与える事柄の規制に関してますます高い水準の責任を負う資格を有するようになるのである [12]。
[12] 子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)。

5.第12条と子どもの権利一般の実施
86.以上のパラグラフで論じた諸条項に加え、条約のその他の条項も、ほとんどは子どもたちに影響を与える事柄への子どもたちの関与を要求しかつ促進するものである。このような多層的な関与については、参加という概念があらゆるところで用いられている。当然のことながら、このような関与の要となるのは第12条であるが、子どもたちとの協議に基づく計画、活動および発展は条約全体で要求されている。
87.実施の実践においては保健、経済、教育または環境のような幅広い問題への対処が行なわれるのであり、このような問題は個人としての子どものみならず子どもたちの集団および子どもたち一般にとっての関心事でもある。したがって、委員会は参加を常に幅広く解釈し、個々の子どもたちおよび明確な定義に基づく集団の子どもたちのみならず、先住民族の子ども、障害のある子どものような子どもたちの集団、または、社会における社会的、経済的または文化的生活条件によって直接もしくは間接に影響を受ける子どもたち一般のための手続も定められることを目指してきた。
88.子どもたちの参加に関するこのような幅広い理解は、〔国連〕総会第27特別会期で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」に反映されている。締約国は、「家庭および学校ならびに地方および国のレベルにおけるものも含む意思決定プロセスに、思春期の青少年を含む子どもが意味のある形で参加することを促進するためのプログラムを策定および実施する」ことを約束した(パラ32(1))。委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号で、「政府が子どもたちとの直接の関係を発展させ、非政府組織(NGO)や人権機関を通じて仲介された関係に留まらないようにすることも重要である」と述べている [13]。
[13] 前掲パラ12。

C.さまざまな場面および状況における意見を聴かれる権利の実施

89.意見を聴かれる子どもの権利は、子どもが成長し、発達しかつ学習する多様な場面および状況で実施されなければならない。このような場面および状況では子どもおよびその役割についてそれぞれ異なるとらえ方が存在しており、それによって日常的事柄およびきわめて重要な決定への子どもの関与が促されたり制約されたりする場合がある。意見を聴かれる子どもの権利の実施に影響を及ぼす方法にはさまざまなものがあり、締約国は子ども参加を促進するためにそれらを活用することが可能である。

1.家庭における実施
90.子どもがもっとも幼い年齢から自由に意見を表明でき、かつそれを真剣に受けとめてもらえる家庭は重要なモデルであり、かつ、より幅広い社会において子どもが意見を聴かれる権利を行使するための準備の場である。子育てに対するこのようなアプローチは、個人の発達を促進し、家族関係を強化し、かつ子どもの社会化を支援するうえで役に立つとともに、家庭におけるあらゆる形態の暴力に対して予防的役割を果たす。
91.条約は、子どもに適当な指示および指導を行なう親その他の法定保護者の権利および責任を認めている(前掲パラ84参照)が、それは子どもがその権利を行使できるようにするためであることを強調するとともに、指示および指導が子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれることを求めている。
92.締約国は、親、保護者および保育者に対し、子どもに関わるあらゆる事柄について子どもたちの声に耳を傾け、かつその意見を正当に重視するよう、立法および政策を通じて奨励するべきである。親に対してはまた、社会のあらゆるレベルで自由に自己の意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される権利の実現に関して子どもたちを支援することが望ましいという助言も与えられるべきである。
93.意見を聴かれる子どもの権利を尊重する子育てスタイルの発展を支援するため、委員会は、締約国が、すでにある前向きな行動および態度をもとにそれらをさらに発展させ、かつ条約に掲げられた子どもおよび親の権利に関する情報を普及する親教育プログラムを推進するよう勧告する。
94.そのようなプログラムでは次のような問題を取り上げる必要がある。
  • 親子間の相互尊重関係
  • 意思決定への子どもの関与
  • 家族構成員全員の意見を正当に重視するということの意味
  • 子どもの発達しつつある能力の理解、促進および尊重
  • 家庭内で意見が食い違うときの対処方法
95.これらのプログラムは、女子と男子は平等な意見表明権を有しているという原則を強化するものでなければならない。
96.メディアは、親に対し、その子どもの参加は子ども自身、その家族および社会にとって高い価値を有するものであることを伝えるうえで強力な役割を果たすべきである。

2.代替的養護における実施
97.施設を含むあらゆる形態の代替的養護のもとにある子どもたちが、自分の措置、里親家族またはホームにおける養護の規制および日常生活に関わる事柄について自己の意見を表明でき、かつその意見が正当に重視されることを確保するための機構が導入されなければならない。このような機構には次のようなものが含まれるべきである。
  • 措置、養護および(または)処遇に関わるいかなる計画についても情報を得る権利、ならびに、意思決定プロセス全体を通じて自己の意見を表明しかつその意見を正当に重視される意味のある機会を子どもに認める立法。
  • 子どもにやさしい養護サービスの開発および設置において、意見を聴かれる子どもの権利およびその意見が正当に重視されることを確保する立法。
  • 第3条に基づく義務にしたがい、子どもの養護、保護または処遇の提供について定めた規則および規制の遵守状況を監視するための、権限のある監視機関(子どもオンブズパーソン、子どもコミッショナーまたは査察官など)の設置。このような監視機関には、居住型施設(法に抵触した子どもたちを対象とした施設も含む)に何ら妨げられることなくアクセスし、子どもの意見および懸念を直接聴き、かつ、施設自体によって子どもの意見がどの程度聴かれかつ正当に重視されているかを監視する権限が与えられるべきである。
  • 施設の方針およびあらゆる規則の策定および実施に参加する権限を有する、居住型養護施設における効果的機構の確立(たとえば女子および男子双方の代表による子ども会など)。

3.保健ケアにおける実施
98.条約の諸規定を実現するためには、子どもたちの健康的な発達およびウェルビーイングの促進に関する子どもの意見表明権および参加権を尊重することが必要である。このことは、保健ケアに関する個別の決定にも、保健政策の策定および保健サービスの開発への子どもたちの関与にも当てはまる。
99.委員会は、自分自身の保健ケアに関わる実務および決定への子どもの関与に関わって検討が必要な、それぞれ異なってはいるが関連しているいくつかの問題を明らかにする。
100.乳幼児を含む子どもたちは、その発達しつつある能力に一致した方法で、意思決定プロセスに包摂されるべきである。子どもたちに対しては、提案されている治療ならびにその作用および結果に関する情報(障害のある子どもにとって適切かつアクセスしやすい形式によるものも含む)が提供されるべきである。
101.締約国は、子どもたちが、子どもの安全またはウェルビーイングのために必要な場合、子どもの年齢に関わらず、親の同意を得ることなく秘密裡に医療上の相談および助言にアクセスできることを確保するための立法または規則を導入しなければならない。子どもたちは、たとえば家庭で暴力もしくは虐待を経験しているとき、リプロダクティブ・ヘルスに関わる教育もしくはサービスを必要とするとき、または保健サービスへのアクセスをめぐって親と子どもとの間に食い違いがあるときなどに、このようなアクセスを必要とする可能性がある。相談および助言に対する権利は医療上の同意を与える権利とは異なるものであり、いかなる年齢制限の対象にもされるべきではない。
102.委員会は、一部の国において、子どもが定められた年齢に達した時点で同意権が子どもに移行する制度が導入されていることを歓迎するとともに、締約国に対し、このような立法の導入を検討するよう奨励する。このようにして、当該年齢以上の子どもは、独立した有資格の専門家と協議した後に個別の専門的評価を受けなければならないという要件を課されることなく、同意を与える資格を認められるわけである。しかし委員会は、当該年齢未満の子どもが自己の治療について十分な情報に基づく意見を表明する能力を実証できるときは、この意見が正当に重視されることを締約国が確保するよう、強く勧告する。
103.医師および保健ケア施設は、子どもたちに対し、小児科学研究および臨床試験への参加に関わる権利について、明確かつアクセスしやすい情報を提供するべきである。その他の手続的保障に加えて十分な情報に基づく子どもの同意が得られるよう、子どもたちに対しては当該研究に関する情報が提供されなければならない。
104.締約国はまた、子どもの健康および発達のためのサービスの計画およびプログラム立案に関して子どもたちが自己の意見および経験を提供できるようにする措置も導入するべきである。子どもたちの意見は保健体制のあらゆる側面について求められるべきであり、これには、必要とされているサービスの種類、そのようなサービスを最善の形で提供するための方法および場所、サービスへのアクセスを妨げる差別的障壁、保健専門職の資質および態度、ならびに、自分自身の健康および発達について徐々に水準を上げながら責任を負う子どもたちの能力を促進する方法も含まれる。このような情報は、とくにサービスを利用しまたは研究に参加した子どもを対象とするフィードバック・システムおよび協議プロセスを通じて入手することが可能であり、かつ、子どもの権利を尊重する保健サービスの基準および指標を策定する目的で、地方または国の子ども評議会または子ども議会に送付することができる [14]。
[14] 委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年、パラ11および12)および思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年、パラ6)にも注意を促すものである。

4.教育および学校における実施
105.教育において意見を聴かれる子どもの権利を尊重することは、教育に対する権利の実現にとって根本的に重要である。委員会は、依然として続く権威主義、差別、敬意の欠如および暴力が多くの学校および教室の現実を特徴づけていることに、懸念とともに留意する。このような環境は、子どもが意見を表明することおよびこれらの意見が正当に重視されることに資するものではない。
106.委員会は、締約国が、以下の問題に関して子どもたちが意見を表明しかつその意見が正当に重視される機会構築のための行動をとるよう勧告する。
107.乳幼児期の教育プログラムを含むあらゆる教育環境において、参加型学習環境における子どもたちの積極的役割が促進されるべきである [15]。教授および学習においては、子どもたちの生活条件および展望が考慮に入れられなければならない。そのため、教育当局はカリキュラムおよび学校プログラムの計画に子どもたちおよびその親の意見を含めなければならない。
[15] 「万人のための教育に対する人権基盤アプローチ:教育に対する子どもたちの権利と教育における権利の実現のための枠組み」ユニセフ/ユネスコ(2007年)。
108.人権教育は、子どもが他の子どもたちおよびおとなとともに学び、遊びかつ生活する施設で人権が実践されないかぎり、子どもたちの動機づけおよび行動形成にはつながりえない [16]。とくに、意見を聴かれる子どもの権利は、条約で宣言されているとおり実際に自分たちの意見が正当に重視されているかどうか目の当たりにできるこれらの施設で、子どもたちによる批判的吟味の対象とされている。
[16] 教育の目的(条約第29条1項)に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)。
109.子ども中心の双方向型学習のために必要な協力と相互支援を刺激するような人間関係的雰囲気を教室につくり出すためには、子どもたちの参加が欠かせない。子どもたちの意見を重視することは、差別の解消、いじめの防止および規律維持のための措置においてとりわけ重要である。委員会は、ピア・エデュケーションおよびピア・カウンセリングの拡大を歓迎する。
110.意思決定プロセスへの子どもたちの着実な参加は、とくに、学級会、生徒会、ならびに、学校理事会および学校委員会への生徒代表の参加を通じて達成されるべきである。このような場で、子どもたちは学校方針および行動規範の策定および実施について自由にその意見を表明できる。これらの権利は、それを実施しようという公的機関、学校および校長の善意に依拠するのではなく、立法に掲げられる必要がある。
111.締約国は、学校に留まらず、教育政策のあらゆる側面について地方および国のレベルで子どもたちと協議するべきである。これには、教育制度、子どもたちに「2度目のチャンス」を与えるインフォーマルなおよびノンフォーマルな学習上の便益、学校カリキュラム、教授法、学校の構造、基準、予算策定および子ども保護システムの子どもにやさしい特徴を強化することも含まれる。
112.委員会は、締約国に対し、独立した生徒組織の発展を支援するよう奨励する。このような組織は、子どもたちが教育制度への参加役割を適切に果たすことを援助しうる。
113.次の学校段階への移行または能力・適性別コースもしくはクラスの選択に関する決定においては、意見を聴かれる子どもの権利が確保されなければならない。これらの決定は子どもの最善の利益に深い影響を及ぼすためである。このような決定は行政上または司法上の再審査に服さなければならない。加えて、規律維持に関わる事案においては、意見を聴かれる子どもの権利が全面的に尊重されるべきである [17]。とくに、子どもを授業または学校から排除する場合には、この決定は、教育に対する子どもの権利と矛盾することから、司法審査に服さなければならない。
[17] 締約国は、体罰を解消するための参加型戦略について説明した、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)を参照することが求められる。
114.委員会は、多くの国で子どもにやさしい学校プログラムが導入されていることを歓迎する。これは、子どもたちと青少年が社会で積極的役割を果たしかつコミュニティ内で責任ある市民として行動できるよう準備させる、双方向的な、配慮と保護に満ちた参加型の環境を提供することを追求するものである。

5.遊び、レクリエーション、スポーツおよび文化的活動における実施
115.子どもたちは、発達および社会化のために遊び、レクリエーション、身体的および文化的活動を必要としている。これらの活動は、子どもの好みおよび能力を考慮に入れながら立案されるべきである。自己の意見を表明できる子どもたちは、遊びおよびレクリエーションのための設備のアクセスしやすさおよび適切さについて協議の対象とされるべきである。正式な協議プロセスに参加することができない、非常に幼い子どもたちおよび障害のある子どもたちの一部は、自分の希望を表明する特別の機会を提供されるべきである。



  • 更新履歴:ページ作成(2011年5月2日)。