総括所見:スイス(OPAC・2006年)


CRC/C/OPAC/CHE/CO/1(2006年3月17日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2006年1月9日に開かれた第1082回会合(CRC/C/SR.1082参照)においてスイスの第1回報告書(CRC/C/OPAC/CHE/1)を検討し、2006年1月27日に開かれた第1120回会合(CRC/C/SR.1120参照)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書で保障されている権利に関してスイスで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する詳細な情報を与えてくれた、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、締約国代表団との有益かつ双方向的な対話も評価するものである。

B.積極的側面

3.委員会は、スイス連邦法において18歳未満の者の徴兵が明確に禁じられていることに評価の意とともに留意し、かつ、選択議定書の批准のための法令において志願入隊年齢を18歳に引き上げる旨の、全会一致による議会の決定(2002年)を歓迎する。加えて委員会は、締約国において、例外的事情がある場合に義務的徴募または志願入隊に関する年齢を引き下げることが認められていないことを歓迎するものである。
4.委員会は、刑法第129条において18歳未満の者による敵対行為への直接参加が対象とされていること、ならびに、刑法第180条以下において、子どもの意思に反する徴募および武力紛争における子どもの使用が禁じられていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、刑法第299条および第300条が、国外の武力紛争のためにスイスで子どもを徴集する集団に適用されることにも、留意するものである。
5.委員会は、軍需資材の外国貿易に関する締約国の認可が一定の基準(軍需資材に関する1998年2月25日の政令(2002年3月12日現在))にしたがって行なわれており、かつ、その際、受領国における、兵士としての子どもの使用に特段の注意が払われていることに、評価の意とともに留意する。
6.委員会はまた、武力紛争における子どもの問題に対応するために活動している国連専門機関ならびに多数の国際機関および非政府組織に対する、締約国の財政支援も称賛する。さらに委員会は、締約国の文民平和促進プログラムに子ども兵士に関わる問題が統合されていることに、評価の意とともに留意するものである。

C.主要な懸念領域および勧告

実施措置
7.委員会は、2003年12月23日の軍刑法第9条改正(2004年6月1日施行)に、遺憾の意とともに留意する。これにより、スイスと緊密なつながりを有する者に対して戦争犯罪を行なったとされる者の訴追についての締約国の域外裁判権が制限されるためである。委員会は、締約国の法律で、スイスと緊密なつながりを有する被害者の事案についての裁判権が設定されていないことを、とりわけ遺憾に思う。
8.選択議定書第4条2項および第6条1項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 戦争犯罪(15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することなど)についての全面的な裁判権を回復する目的で、最近行なわれた軍刑法第9条の改正を見直すこと。
  • (b) スイスと緊密なつながりを有する被害者の事案についての裁判権を設定すること。
  • (c) 国外における軍事的活動のためにスイスで15歳、16歳または17歳の子どもを徴募した者の訴追についての国内裁判権を設定すること。
身体的および心理的回復のための援助
9.委員会は、締約国が、戦争で荒廃した国からやってくる子どもの庇護希望者および移民の目的地国であることに留意する。これらの子どもの多くがトラウマ性の経験の被害者である可能性があることに照らし、委員会は、庇護を申請する子どもの事情聴取を行なう公的機関が、軍事的活動および武力紛争の影響を受けた子どもに適切に対応するための特別訓練を受けていないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、武力紛争に関与した18歳未満の庇護希望者に関する体系的なデータ収集が行なわれていないことを遺憾に思う。さらに委員会は、元子ども兵士をとくに対象とした統合プログラムまたは活動が実施されていないことも懸念するものである。
10.委員会は、締約国が、スイスに入国する子どもの庇護希望者、難民および移民であって武力紛争に関与した可能性がある者に特段の注意を払うとともに、これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的配慮のある、かつ学際的な援助を提供するよう、勧告する。委員会はまた、これらの子どもに対し、未成年者のために設けられた特別収容施設が提供されるべきことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、戦争で荒廃した国からやってくる子どもの庇護希望者および移民のためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関を対象として体系的な研修を実施するとともに、自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって母国で敵対行為に関与した可能性がある者についてのデータを収集するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)を考慮するよう勧告するものである。
国際的な援助および協力
11.武力紛争における子どもの問題に対応するために活動している国連専門機関ならびに多数の国際機関および非政府組織に対する締約国の財政支援を認知していることに言及しつつ、委員会は、締約国が、二国間および多国間の活動を継続するとともに、より多くの防止プログラムを対象とするためにこのような支援を拡大するよう、勧告する。
研修/選択議定書の普及
12.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団を対象として、すべての国内言語による、選択議定書の規定に関する継続的かつ体系的な教育および研修を引き続き発展させるよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、すべての国内言語により、選択議定書を公衆一般ならびにとくに子どもおよび親に対して広く知らせるよう勧告するものである。加えて委員会は、16歳になって軍役に服すべきとされる者を対象とした予備的軍役オリエンテーションに、選択議定書の規定に関する規定を含めるよう勧告する。
文書の普及
13.締約国が第1回報告書をフランス語、ドイツ語およびイタリア語で入手可能にしようとしていることには留意しながらも、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。
次回報告書
14.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第2回・第3回統合定期報告書(提出期限・2007年9月25日)に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年12月26日)。
最終更新:2012年12月26日 19:55