総括所見:スペイン(第2回・2002年)


CRC/C/15/Add.185(2002年6月13日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2002年6月4日に開かれた第798回および第799回会合(CRC/C/SR.798 and 799参照)において、1998年10月12日に提出されたスペインの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.9)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎するものの、事前質問事項(CRC/C/Q/SPA/2)に対する文書回答の提出が遅れたことは遺憾に思う。さらに委員会は、さまざまな省庁および部門を代表する大規模なかつ高位の代表団が締約国によって派遣されたこと、ならびに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対して前向きな反応があったことを、歓迎する。

B.積極的側面

3.委員会は、委員会に提出された第1回報告書の審査(1994年)以降に締約国によって行なわれた大いなる進展および達成を歓迎する。委員会は、締約国が、子どもの権利の保護および促進を社会における一般的原則としたことに、評価の意とともに留意するものである。
4.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.28(1994年10月24日)、パラ18)にしたがい、国内法が条約の規定にいっそう一致することを確保するために国および自治州のレベルで採択された新法を歓迎する。とくに委員会は、未成年者の法的保護に関する1月15日の組織法第1/1996号、民法および民事訴訟法の部分改正(未成年者保護法)、未成年者の刑事責任に関する1月12日の組織法第5/2000号、ならびに、性的不可侵性に対する犯罪(法律第11/1999号)および不当な取扱いの被害者の保護(法律第14/1999号)に関わる刑法改正に留意するものである。
5.委員会は、調整機構に関する前回の勧告(前掲パラ12)にしたがい、締約国が1999年に子どものための監視機関を設置したことに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、いくつかの自治州が子どもについてとくに責任を負う機関またはサービスを設置し(とくに、アンダルシア州の子ども問題評議会、バレアレス諸島の子どもの権利擁護事務所、カスティーリャ=ラ・マンチャ州の州子どものケア調整委員会およびマドリード州の子ども家族機関)、かつ、子どもの権利のための自治体ネットワークが1996年に設置されたことに、留意するものである。
6.委員会は、国および自治州のレベルで実施されている子どものためのさまざまな社会プログラムおよび社会政策、社会サービスの提供および貧困根絶のためのプログラムおよび政策、特別な状況に置かれた家族を支援するためのプログラム、ならびに、前回の勧告(前掲パラ21)にしたがって策定された国家社会的包摂行動計画(2001年)および包括的家族支援計画(2001~2004年)に留意する。
7.委員会は、子どもに関連する問題を担当し、かつ苦情を受理する子どもできる、護民官(オンブズマン)補佐の職が設置されたことを歓迎する。委員会はさらに、子どもの権利侵害に対応するさまざまな独立機関が自治州レベルで設置されていることにも留意するものである。
8.前回の勧告(前掲パラ20)にしたがい、委員会は、法律第1/1996号に掲げられた国際養子縁組事案における保護措置が改善されたこと、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)が批准されたことを歓迎する。
9.委員会は、締約国が、前回の勧告(前掲パラ15)にしたがい、子どもの分野における開発途上国への援助を増額したことに満足感とともに留意し、かつ、とくに、2000~2001年の期間、スペインが国際児童労働撤廃計画(IPEC)への第3位拠出国であったことに留意するものである。
10.委員会は、スペインが欧州諸国では初めて子どもの権利条約の選択議定書を双方とも批准したことに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、スペインが最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を批准したことに留意するものである。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
11.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.6)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告の一部、とくにパラ12(調整)、18(立法)、22(子どもの庇護希望者および保護者のいない子ども)および23(すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されているところである。
12.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
13.委員会は、子ども法の分野における今後の進展は、法的文書で宣明された権利の行使の真の保障の分野で見られなければならない(条約が実体法の一部であることをより明示的に承認すること、および、法的手続における条約の引用がさらに広がることを含む)という、締約国が表明した懸念(CRC/C/70/Add.9、パラ103)を共有する。
14.委員会は、締約国に対し、権利基盤アプローチを用いながら、かつ条約に一致する形で、法律を全面的に実施するよう奨励する。
調整および包括的戦略
15.委員会は、子どものための監視機関の活動等を通じて調整を向上させるために締約国が行なった努力は認めながらも、国および自治州の双方のレベルで統合的な行動を確保するために、子どもに関する部門横断型の政策を策定し、かつ調整を向上させる必要があるという、締約国が提起した懸念(前掲パラ128-129)を共有する。委員会はさらに、子どもに関する包括的政策が定められていないことにも、懸念とともに留意するものである。
16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 前回勧告されたとおり(CRC/C/15/Add.28、パラ12)、子どもの〔権利の〕促進および保護のための政策の実施における、国、広域行政圏および地方のレベルの政府機関内およびこれらの政府機関間の効果的調整を強化すること。
  • (b) 条約の原則および規定に基づき、子どもに関する包括的政策を立案すること。
  • (c) 子どもに関する部門横断型の政策を策定しかつ執行すること。
子どものための資源
17.委員会は、均衡のとれた資源の再配分が中央、広域行政圏および地方のレベルにおいてまだ行なわれていないこと、ならびに、社会でもっとも周縁化された集団(とくに貧困家庭、ひとり親家庭、ロマの子どもおよび移民家族の子ども)に対し、すべての自治州が同一水準の社会政策および社会サービスを提供しているわけではないことに、懸念とともに留意する。委員会は、保護者のいない子どもの移民との関連でセウタおよびメリリャの両自治市に影響を与えている予算上の問題に、特段の懸念とともに留意するものである。
18.条約第4条に照らし、かつ前回の勧告(前掲パラ14)にしたがって、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) とくに保健、教育およびその他の社会福祉サービスの分野において、条約の規定の実施に関する全国的な最低基準および当該実施への資源配分を確立することにより、すべての子どもが、たとえばその居住地に関わらず同一の水準のサービスに平等にアクセスできることの保障が可能となる方法を検討すること。
  • (b) とくに社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを対象として、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実施のために、利用可能な資源を最大限に用いて資金が配分されることを確保する目的で、子どもの権利に関わる問題についての優先的課題を明確に特定すること。
  • (c) 子どもに関する支出の影響および効果を評価する目的で、国、広域行政圏および地方のレベルで子どもに支出されている予算の額および割合を明らかにすること。
データ収集
19.委員会は、子どもの保護に関する基礎統計および子どもに関するデータベースの創設、ならびに、システムを自治州と調和させるために子どものための監視機関が行なっている努力は歓迎しながらも、各自治州でさまざまなシステムおよび指標が用いられていることもあって情報が断片化していることを、依然として懸念する。
20.前回の勧告(前掲パラ13)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(ロマの子ども、移民家族に属する子ども、保護者のいない子どもの移民ならびに経済的および社会的に不利な立場に置かれた世帯の子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析する機構を強化すること。
  • (b) 条約の実施および監視を目的とする政策およびプログラムの立案および評価のために、これらの指標およびデータを効果的に活用すること。
普及
21.NGOおよびメディアの間で条約を普及するための努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに条約の法的義務に関する理解を向上させるため、子どもの権利に関する、子どもおよび公衆一般を対象とした教育ならびに専門家集団を対象とした研修活動に対して継続的注意を払う必要があると考える。
22.前回の勧告(前掲パラ16)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) スペインで話されているさまざまな言語(移民の子どもの言語を含む)に翻訳された、とくに子どもを対象とする適切な資料を含め、子どもおよびより広範な公衆の双方に対して条約を普及するための努力を継続しかつ強化すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、保健従事者およびソーシャルワーカーなど)を対象とした、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修プログラムを実施すること。

2.子どもの定義

23.委員会は、最低婚姻年齢が低い(裁判官の許可により14歳とされる場合もある)こと、および、さまざまな自治州で身分事項に関する最低年齢がまちまちであることに、懸念を表明する。
24.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を引き上げ、かつさまざまな自治州における身分事項関連の最低年齢を調和させる目的で、法律を見直すよう勧告する。

3.一般原則

一般原則
25.委員会は、差別の禁止、子どもの最善の利益、子どもの生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの意見の尊重の原則が、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、ならびに、子どもに関連する国および地方双方のレベルの政策およびプログラムに、全面的には反映されていないことを懸念する。
26.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(前掲パラ11)をあらためて繰り返す。
  • (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関わるあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。
  • (b) 政治上、司法上および行政上のすべての決定、ならびに、すべての子どもに影響を及ぼす可能性があるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて、これらの原則を適用すること。
  • (c) あらゆるレベルの計画および政策立案、ならびに、社会保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関によるあらゆる行動において、これらの原則を適用すること。
差別の禁止
27.委員会は、差別の禁止の原則が、ロマ系の子ども、移住労働者の子ども(とくに合法的移民ではない場合)および保護者のいない外国籍の子どもを対象として、とくに十分な保健ケアおよび教育のための便益へのこれらの子どもによるアクセスとの関連で全面的には実施されていないことを、懸念する。
28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 差別にさらされている子ども、とくに脆弱な立場に置かれた前掲の集団に属する子どもの状況を監視すること。
  • (b) このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。
29.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。

4.市民的権利および自由

体罰
30.前回の勧告(前掲パラ18)に照らし、委員会は、親は「その子に対して合理的にかつ適度に罰を与えることができる」と述べた民法第154条がまだ改正されていないことを深く遺憾に思う。委員会は、事前質問事項に対する締約国の回答で提供された、第154条を改正するための法律案が現在作成されている旨の情報を認知するものである。
31.委員会は、合理的懲戒への言及を削除するために第154条を改正するべきであるという前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 条約第19条に一致する形で、子どもの養育におけるあらゆる形態の暴力(体罰を含む)を禁止すること。
  • (b) 意識啓発キャンペーンを実施し、かつ家庭における代替的形態のしつけを促進すること。

5.家庭環境および代替的養護

家庭環境を奪われた子ども
32.委員会は、17の自治州で子どもの保護に関する異なる手続が定められていること、および、これらの手続が、とくに里親家庭に措置される子どもとの関連で、子どもの最善の利益と常に両立しているわけではないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、法律に抵触していない子どもの保護を取り扱う家庭裁判所の数が不十分であること、および、司法手続への対応に時間がかかることに、留意するものである。
33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どものための保護手続が最低限の共通の水準を有し、かつ子どもの最善の利益と両立することを確保すること。
  • (b) 家庭裁判所がその業務への対応をより迅速に行なえるよう、家庭裁判所にいっそうの人的資源および財源を提供すること。
家族再統合
34.委員会は、認定難民の家族再統合手続、とくに外務省による必要な査証および旅行証明書の発給手続に遅れが見られることに懸念を表明する。
35.条約第10条に照らし、かつ前回の勧告(前掲パラ22)にしたがって、委員会は、家族の再統合のための庇護の申請が積極的、人道的かつ迅速なやり方で扱われるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。
虐待およびネグレクト
36.委員会は、「社会的に困難な状況にある子どもの社会的ケア制度」が果たしている重要な役割を認知しながらも、ドメスティックバイオレンスが大規模に発生していること、ネグレクト、不当な取扱いおよび虐待の事案の発見および通報について標準化された手続が設けられていないこと、ならびに、被害者支援のためのサービスが限定されていることを、依然として懸念する。
37.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) これらの慣行の規模および性質を評価する目的で、ドメスティックバイオレンス、子どもに対する暴力、不当な取り扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を行なうとともに、子どもに対する身体的および精神的暴力ならびにネグレクトの発生件数を記録するために創設された統計システムを実施すること。
  • (b) 十分な措置および政策(公的キャンペーンを含む)を採択して効果的に実施し、かつ態度の変革を奨励すること。
  • (c) 被害を受けた子どもの保護(プライバシーに対する権利の保護を含む)を向上させる目的で、ドメスティックバイオレンスならびに子どもの不当な取り扱いおよび虐待(家庭における性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続において効果的に調査すること。
  • (d) 条約第39条にしたがい、子どもに対し、法的手続における支援サービス、ならびに、強姦、虐待、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力の被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための支援サービスを提供するための措置をとること。
  • (e) 「家庭および学校における子どもへの暴力」(CRC/C/111参照)ならびに「子どもに対する国家の暴力」(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告を考慮すること。

6.基礎保健および福祉

思春期の健康
38.委員会は、薬物(とくに合成薬物)、アルコールおよび喫煙に依存する子どもおよび青少年の人数が多いこと、ならびに、アルコールおよびタバコの消費が社会的に容認されており、リスクとして認知されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、10代の妊娠件数が増えていることに懸念を表明するものである。
39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 防止措置ならびに合成薬物、アルコールおよびタバコの危険性に関する意識啓発に焦点を当てながら、国家薬物計画(2002~2008年)および自治州レベルのプログラムのような現行プログラムを執行すること。
  • (b) とくに性教育(コンドームの使用のような受胎調節措置を含む)を通じて、10代の妊娠および性感染症を含む思春期の健康問題に対処するための措置をとること。
  • (c) 精神保健サービスおよびカウンセリングサービスを、これらのサービスが青少年にとってアクセスしやすく、かつ青少年に配慮したものであることを確保しながら強化すること。
有害な伝統的慣行
40.委員会は、サハラ以南のアフリカ出身の女子に対し、スペインで女性性器切除が行なわれているという報告があることに懸念を表明する。
41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) スペイン在住の女子に対してスペインまたは国外で行なわれている女性性器切除の規模および性質についての研究を実施すること。
  • (b) この慣行を防止するため、当該研究の結果を考慮しながら情報提供および意識啓発のためのキャンペーンを組織すること。
  • (c) これを禁止するために必要な措置をとること。

7.教育、余暇および文化的活動

教育
42.委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。
  • (a) ロマの子ども、移民家族に属する子どもまたは劣悪な社会経済的状況に置かれた地域で暮らす子どもの怠学率および学校中退率が高く、かつこのような子どもの学校への統合が困難であること。
  • (b) 移民家族に属する一部の子ども(とくに女子)が、義務教育を修了しておらず、または通学に多大な困難を抱えていること。
  • (c) 学校でいじめがやや広範に行なわれていること。
  • (d) テロリズムが子どもの発達に悪影響を及ぼしていること。
43.委員会はさらに、良質教育法が策定中であることに留意する。
44.条約第28条および第29条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくにロマの子どもおよび移民家族に属する子どもとの関連で、学校への定期的出席ならびに怠学率および中退率の削減を確保すること。
  • (b) 「家庭および学校における子どもへの暴力」についての一般的討議の際に採択された委員会の勧告に照らし、学校におけるイジメその他の形態の暴力を防止するための措置をとること。
  • (c) 教育過程において平和および寛容の文化が促進され、かつテロリズムが子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに与える悪影響への対処が行なわれることを確保すること。
  • (d) 良質教育法の策定に際し、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮すること。

8.特別な保護措置

保護者のいない外国籍の子ども
45.委員会は、とくにセウタおよびメリリャの両自治市における、保護者のいない外国籍の子ども(ほとんどはモロッコ人)の状況について深い危惧を覚える。とくに委員会は、以下のような報告があることに懸念を表明するものである。
  • (a) 出身国への強制送還の際、警察による子どもの不当な取扱いが行なわれており、かつ、子どもが法的援助および通訳にアクセスできないまま送還される場合があること。
  • (b) 法定後見人である社会福祉局が申請を行なわないため、これらの子どもに対し、法律で権利が認められている合法的な一時滞在資格が与えられていないこと。
  • (c) 入所センターが過密であり、かつその環境が良好ではないこと、ならびに、入所センターの職員および他の子どもによる不当な取扱いの事案が生じていること。
  • (d) 法律で保障されているのに、保健ケアおよび教育へのアクセスが否定されていること。
  • (e) 子どもが出身国の家族または社会福祉機関に実質的に戻されることを確保しないまま、子どもの即決追放が行なわれていること。
46.委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置を緊急にとるよう勧告する。
  • (a) 保護者のいない外国籍の子どもに入所型ケア、教育、緊急サービスその他の保健ケアおよび一時在留許可証を与えることにより、組織法第4/2000号その他の法律の実施を確保すること。
  • (b) セウタおよびメリリャの両自治市に対し、これらの子どものケアのために必要な財源および人的資源を提供すること。
  • (c) 子どもがスペインからモロッコに送還される場合、その子どもの養育に積極的な家族構成員または適切な社会サービス機関に戻されることを確保するため、モロッコ政府との調整を図ること。
  • (d) 保護者のいない外国籍の子どもの追放における不正規な手続を防止するためにあらゆる措置をとること。
  • (e) これらの子どもの不当な取扱いが報告された事案を効果的やり方で調査すること。
  • (f) 保護者のいない外国籍の子どもに対し、スペイン法および国際法上の権利(庇護を申請する権利も含む)についての情報を提供すること。
  • (g) 入所センターの環境および安全を向上させるためにあらゆる必要な措置をとり、かつ入所センター職員に対して十分な研修を実施すること。
  • (h) ケアを受けている子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応し、ケアの水準を監視し、ならびに条約第25条に照らして措置の定期的再審査を確立するための効果的機構を設置すること。
  • (i) 前回勧告されたとおり(前掲パラ23)、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准を検討すること。
経済的搾取
47.委員会は、とくに家族事業および農業部門における児童労働の報告があることならびにこの問題に関する情報が欠けていることに、懸念を表明する。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) スペインにおける児童労働、とくに家族事業および農業部門における児童労働の性質および規模を評価するため、「スペインにおけるさまざまな態様の少年の搾取に関する診断」について社会労働・社会問題省およびユニセフ・スペイン国内委員会が実施したもののような研究を行なうこと。
  • (b) これらの研究の結果に基づき、児童労働の防止および解消を目的とする具体的なかつ十分に的を絞った措置を掲げた、包括的な戦略を策定すること。
  • (c) 意識啓発活動および原因となる要因の発見を通じた、児童労働の防止および解消を目的とするプログラムを引き続き実施すること。
性的搾取
49.委員会は、大都市郊外および行楽地において、社会の外縁で生活している脆弱な立場に置かれた子どもを巻きこんだ児童買春が行なわれているという報告があることに懸念を表明する。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) たとえ子どもが金銭もしくは脅迫による圧力のもとでまたはいわゆる「自由意思」によりそのような行為に同意した場合であっても、18歳未満のすべての者をあらゆる形態の性的搾取から保護すること。
  • (b) 性的虐待、売買春および児童ポルノからの保護のためのキャンペーンを組織すること。
  • (c) 子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画(2002~2003年)を実施すること。
マイノリティ集団に属する子ども
51.「ジプシー住民のケア、排除の防止および統合に関する包括的な社会的介入」のためのプロジェクトおよび「ジプシー開発計画」のような、ロマの具体的ニーズに焦点を絞った締約国の政策には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが困難な社会的状況に置かれており、かつこれらの子どもによる教育制度へのアクセスが不十分であることを、依然として懸念する。
52.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。
  • (a) ロマの子どもの状況に特段の注意を向けながら、マイノリティ集団のすべての子どもの権利の保障に関わる現行の法律および政策を改善し、かついっそう効果的に実施するための措置をとること。
  • (b) これらの政策の起案および実施に際し、マイノリティ出身者(子どもを含む)の参加を引き続き確保すること。
少年司法の運営
53.委員会は、未成年者の刑事責任に関する1月12日の組織法第5/2000号の採択およびその教育的性格を歓迎するものの、その効果的実施のためには追加的な人的資源および財源が必要であることに留意する。委員会はさらに、テロリズムに関する組織法第7/2000号により、テロリズムの罪に問われた子どもの警察留置期間および収監刑期(最長10年)が延長されたことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、自由の剥奪が最後の手段として用いられているわけではないこと、および、拘禁センターが過密状態である場合があることにも、懸念を表明する。
54.第37条および第40条ならびに他の関連の国際基準に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 組織法第5/2000号の全面的実施を確保するため、十分な人的資源および財源を配分すること。
  • (b) テロリズムの罪に問われた子どもの警察留置期間を同法の規定にあわせて調整するとともに、テロリズムの罪に問われた子どもの収監刑期を見直すこと。
  • (c) 少年司法の運営に責任を負う者を対象として、新たな少年司法制度に関する研修を実施すること。
  • (d) 自由の剥奪に代わる措置の利用を奨励すること。

9.文書の普及

55.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

10.報告書の定期的提出

56.委員会が採択し、かつ第29会期の報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第3回および第4回の報告書を、単一の統合報告書として、第4回報告書の提出期限である2008年1月4日までに提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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