総括所見:イタリア(OPSC・2006年)


CRC/C/OPSC/ITA/CO/1(2006年6月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2006年5月16日に開かれた第1125回および第1127回会合(CRC/C/SR.1125およびCRC/C/SR.1127参照)においてイタリアの第1回報告書(CRC/C/OPSA/ITA/1)を検討し、2006年6月2日に開かれた第1157回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の包括的な第1回報告書の提出、および、事前質問事項(CRC/C/OPSA/ITA/Q/1)に対する回答の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国報告書が報告ガイドラインに緊密にしたがっていないことに、遺憾の意とともに留意するものである。
3.委員会は、ハイレベルな代表団の出席に留意するとともに、率直かつ建設的な対話を評価する。
4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年1月31日に採択され、CRC/C/15/Add.198に掲げられた委員会の前回の総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

5.委員会は、選択議定書に掲げられた権利を実施し、かつその保護を強化するために締約国がとったさまざまな措置、とくに以下の措置に、評価の意とともに留意する。
  • (a) 子どもの性的搾取および小児性虐待ポルノ(インターネットを通じてのものを含む)に関する法律第38/2006号の採択。
  • (b) 人身取引対策に関する法律第228号の採択(2003年)。
  • (c) 首相府における人身取引対策基金の設置。
  • (d) ペドフィリア(小児性虐待)との闘いの調整のための省庁間委員会(Comitato Interministeriale di Coordinamento per la Lotta alla Paedofilia、CICLOPE)の設置(2002年)。
  • (e) 〔性的搾取の〕現象ならびに防止および抑制のための政策に関する監視機関の設置(2003年)。
6.委員会は、代表団から提供された、イタリアが国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約およびその諸選択議定書〔ママ〕を最近批准した旨の情報を歓迎する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

選択議定書の実施の調整および評価
7.委員会は、さまざまな省庁の代表が参加する、ペドフィリアとの闘いの調整のための省庁間委員会(CICLOPE)が設置されたこと、および、同委員会がこの部門における諸団体、非政府組織(NGO)および専門家と緊密に協力していることを、歓迎する。委員会はまた、インターネット上の児童ポルノと闘うための全国センターが設置されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、この分野における多数の取り組みがばらばらに進められており、選択議定書に掲げられた規定の全面的実施が阻害される可能性があることを懸念する。
8.委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての分野における調整を中央および地方のいずれの段階でも向上させるとともに、選択議定書の実施に関する定期的評価のための機構を強化するよう、奨励する。
国家的行動計画
9.委員会は、ペドフィリアとの闘いおよびその防止のための行動計画が2002年に採択されたことに留意する。委員会はまた、締約国が、子どもに関する特別会期(2002年5月)で総会が採択した成果文書「子どもにふさわしい世界」で要請されているとおり、子どものための国家的行動計画を完成させかつ採択する過程にあることにも留意するものである。
10.委員会は、締約国が、市民社会を含む関係者との協議および協力に基づき、子どものための国家的行動計画を完成させ、採択しかつ実施するための努力を強化するとともに、その全面的実施のために具体的な予算配分を行ない、かつ十分なフォローアップ機構を整備するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの商業的性的搾取に反対する第1回および第2回世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントを考慮しながら、国家的行動計画において選択議定書のすべての分野を網羅することに特段の注意を払うことも、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、選択議定書に関連する特別行動計画が全面的に実施されることを確保する努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。
普及および研修
11.委員会は、公衆(とくに教員、学校管理者、ソーシャルワーカーならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家)および子どもたち自身の間で選択議定書の規定に関する意識啓発を図るために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、性的搾取、児童ポルノおよび子どもの売買に関する情報の普及が体系的に行なわれていないことを懸念するものである。
12.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関与するすべての関連の専門家(警察官、検察官、裁判官、ソーシャルワーカー、養護職員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く他の専門家を含む)の間で選択議定書の規定を普及するための措置を、引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、意識啓発キャンペーン、および、子どもにふさわしい資料の使用に特段の注意を払うよう、勧告するものである。
データ収集
13.性的搾取の現象ならびに防止および抑制のための政策に関する監視機関が2003年に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国が記しているとおり、関連のデータの集中および分析のための中央システムが存在しないことに、懸念とともに留意する。
14.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野についての量的および質的データを体系的なやり方で収集する努力を強化するよう、勧告する。このようなデータは、進展を評価するために、かつ、選択議定書をさらに実施するためのプログラムおよび政策を立案するために、活用されるべきである。
予算配分
15.人身取引および搾取の被害者のための基金を含む特定の社会的保護プログラムに財源が配分されているにも関わらず、委員会は、選択議定書に掲げられた規定の包括的実施のために行なわれている予算配分について提供された情報が限られていることを遺憾に思う。
16.委員会は、締約国が、選択議定書の包括的実施のための予算配分に関するさらなる情報を、次回の定期報告書で提供するよう勧告する。
独立の監視機構
17.委員会は、締約国の8地域にオンブズマン事務所が設置されたことに加え、子どもの権利の保護についての権限を有する独立の国家機関を設置しようとする努力が行なわれていることも、歓迎する。委員会は、締約国が、このような努力を完了させるとともに、当該国家機関が、子どもにとって容易にアクセス可能でありかつ利用者にやさしいものとなることを確保するよう、勧告するものである。委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(CRC/GC/2002/2参照)に対して締約国の注意を喚起する。

2.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止

現行刑事法令
18.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの犯罪化に関する締約国の努力に、満足感とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、選択議定書第2条にしたがった児童ポルノの明確な定義が定められていないことを、懸念するものである。
19.委員会は、締約国が、選択議定書に関連する法律および手続が全面的に実施されることを引き続き確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が国内法で児童ポルノの定義を定め、政策の明確な立案および実施が可能になるようにすることを勧告するものである。

3.被害を受けた子どもの権利の保護

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
20.委員会はまた、法律第328/2000号により、すべての社会政策を対象とする単一の基金が設置されたことにも留意する。しかしながら委員会は、収容センターおよび医療施設へのアクセスが不平等であることも含め、同国全域で人的資源および財源の不均等な配分が行なわれていることを、依然として懸念するものである。
21.委員会は、被害を受けた子どもがすべての適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)を受けることを確保する目的で、締約国が、保護サービスを具体的に定義し、かつ、さまざまな地域に共通の最低基準に基づくサービスおよび措置を保障するための指針を策定するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、これらのサービスおよび措置のために使途が具体的に指定された予算を提供するよう勧告するものである。

4.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止:選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置

22.委員会は、性的搾取の被害を受け、かつ物乞いのために使用される危険性がとりわけ高い、主として東欧諸国(とくにルーマニア)から連れて来られた子どもの人身取引被害者が多いことを、深く懸念する。
23.委員会は、締約国が、虐待および搾取を受ける危険性が高い、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもの状況にとくに注意を払うよう、勧告する。委員会は、「子どもの物乞い対策センター」(ローマ)のような優れた実践が他の都市とも共有されるべきであることを大いに勧告するものである。

5.国際的な援助および協力

防止
24.委員会は、国際的性質を有する児童買春、セックスツーリズムおよび人身取引の諸側面ならびに防止、抑止および援助のための戦略の必要性に関する討議および分析のためのフォーラムを提供してきた、締約国の取り組みに留意する。しかしながら委員会は、このようなフォーラムの成果に関する意識およびフォローアップ機構が欠けていることを依然として懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、具体的指向性が明確であり、かつ十分に組織された会議を通じての国際的な省庁間協力を醸成する努力を継続するとともに、成果の適正かつ定期的な評価をともなった、具体的なかつ期限の定められたコミットメントおよび目標を設定するよう、勧告する。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年、CRC/GC/2005/6参照)に対して、締約国の注意を喚起するものである。
被害者の保護
26.委員会は、子どもの性的搾取および小児性虐待ポルノに関する最近の法律(法律第38/2006号)により、旅行業者を対象とした、児童買春および児童ポルノに関連する犯罪はたとえ国外で行なわれた場合であっても処罰対象である旨を顧客に通知する恒常的義務が創設されたことに、評価の意とともに留意する。
27.委員会は、締約国が、顧客の需要を減少させかつ解消する目的で、旅行業者および市民社会と連携して行なう、増大しつつあるセックスツーリズムの現象についての長期的な広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを含む必要な措置をとるよう、勧告する。
法執行
28.委員会は、司法共助および治安協力の領域で締約国が調印したさまざまな二国間および多国間の協定に、評価の意とともに留意する。
29.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノをともなう行為の防止およびその責任者の摘発のため、とくに他国の法執行機関との、二国間、地域間および多国間の協力を引き続き強化するよう勧告する。
財政援助その他の援助
30.委員会は、国連機関、NGOおよび地方当局と連携して行なわれる取り組みに関係した資金の配分に関する指針が開発協力局長によって作成されたことに評価の意とともに留意するとともに、締約国が、当該指針を効果的に実施し、かつ、とくにNGOのプロジェクト遂行に対する財政的支援の提供を強化するよう、勧告する。

6.フォローアップおよび普及

フォローアップ
31.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能な場合は州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
32. 委員会は、条約〔ママ〕、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

D.次回報告書

33.選択議定書第12条2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって2008年10月4日が提出期限とされている、条約に基づく第2回定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
最終更新:2012年11月17日 17:54