総括所見:イタリア(OPAC・2006年)


CRC/C/OPAC/ITA/CO/1 and CRC/C/OPAC/ITA/CO/Corr.1(2006年6月23日)
原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。

1.委員会は、2006年5月16日に開かれた第1215回および第1127回会合(CRC/C/SR.1125 and SR.1127)においてイタリアの第1回報告書(CRC/C/OPAC/ITA/1)を検討し、2006年6月2日に開かれた第1157回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書の実施に関する詳細な情報を提供してくれた、締約国の包括的な報告書の提出を歓迎する。委員会は、代表団との間に持たれた率直かつ建設的な対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年3月18日〔ママ〕に採択され、CRC/C/15/Add.198に掲げられた委員会の前回の総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、軍隊への義務的徴募に関する締約国の法律が、選択議定書の規定を反映させる目的で2001年に改正されたことに、評価の意とともに留意する。
5.委員会は、武力紛争への子どもの関与を防止し、かつ武力紛争の被害を受けた子どもおよび子どもの戦闘員の回復を援助する目的で締約国が行なっている、国際的なおよび二国間の技術的協力活動および財政援助を歓迎する。
6.委員会はまた、締約国が、欧州連合総務・対外関係理事会が2003年12月に採択した子どもと武力紛争に関する指針の実施に貢献していることにも、評価の意とともに留意する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

議定書の実施の調整および評価
7.条約に基づく締約国の第2回定期報告書に関して2003年に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.198)のパラ11を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書の実施の適切かつ効果的な調整および定期的な評価を確保するよう、勧告する。
国家的行動計画
8.委員会は、締約国が、2002年5月の国連総会子ども特別会期で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」で要請されているように、子どものための国家的行動計画を完成させかつ採択する過程にあることに留意する。
9.委員会は、締約国が、市民社会を含む関連のパートナーと協議しかつ協力しながら、子どものための国家的行動計画を策定し、採択しかつ実施するための努力を強化するとともに、当該計画の全面的実施のために具体的予算配分を行ないかつ十分なフォローアップ機構を用意するよう、勧告する。委員会は、締約国が、国家的行動計画において、武力紛争の影響を受けている子どもの保護の問題に注意を払うよう勧告するものである。
立法
10.委員会は、18歳未満の者が敵対行為に参加することを禁じた2001年1月8日の法律第2号の採択、および、武力紛争への後者〔18歳未満の者〕の「直接参加」の意味について締約国報告書に記された解釈を歓迎する。しかしながら委員会は、「直接参加」の概念およびこれにともなう諸活動の明示的定義が締約国の法律で定められていないことを懸念するものである。
11.委員会は、締約国が、武力紛争への18歳未満の者の「直接参加」の概念およびこれにともなう諸活動の定義を法律に含めるよう、勧告する。当該定義は、締約国報告書に記された幅広い解釈にしたがったものであるべきである。
12.軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 15歳未満の子どもを軍隊/武装集団に徴募すること、および、このような子どもが敵対行為に直接参加することを、法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 子どもの徴募および敵対行為への関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律で明示的に禁止すること。
  • (c) これらの犯罪について、当該犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定すること。
  • (d) 軍の要員は、選択議定書に掲げられた権利を侵害するいかなる行為も、その旨のいかなる軍令の存在にも関わらず行なうべきではない旨を、明示的に規定すること。

2.子どもの採用

志願入隊
13.委員会は、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言で、志願入隊に関する最低年齢が17歳とされていることに留意する。
14.委員会は、締約国が、志願入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げる可能性について検討するよう、勧告する。
軍学校の役割
15.委員会は、15~17歳の生徒を対象として中等教育および軍事訓練を組み合わせて提供する3つの軍学校がミラノ、ナポリおよびベネチアに設置されていることに留意する。委員会は、16歳に達した生徒が「3年間の志願入隊」を申請しなければ学業の修了を認められず、それを怠った生徒は軍学校を退学させられることを、懸念するものである。
16.委員会は、締約国に対し、次回の報告書で以下の点に関するさらなる情報を提供するよう慫慂する。
  • (a) 軍学校に通う子どもの地位(とくに、このような子どもは単に軍学校の文民生徒と見なされているのかまたはすでに軍の新隊員と見なされているのか)。
  • (b) 選択議定書第3条3項に掲げられた原則にしたがい、18歳に満たない段階での国軍への志願入隊が「真に自発的」なものであることを確保するためにとった措置。
  • (c) 軍学校に入学した18歳未満の者に関する、年齢、宗教、農村部/都市部の別および社会的背景等によって細分化されたデータ。
  • (d) 軍学校におけるカリキュラムが条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号をどの程度遵守しているか。

3.国際的な援助および協力

被害者の保護
17.新たな兵器貿易統制規則を導入した法律第185/90号には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、18歳に満たない者が敵対行為に直接参加している国への小型武器および軽兵器の犯罪を禁ずる規定が設けられていないことを懸念する。
18.委員会は、締約国が、18歳に満たない者が軍隊または国の軍隊とは異なる武装集団のいずれかの構成員として敵対行為に直接参加している国との小型武器および軽兵器の貿易を禁止する目的で、国内法を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、法律第185/90号を運用した結果として停止された販売件数を次回の報告書で明らかにするよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、18歳未満の者が敵対行為に参加している国との小型武器および軽兵器の取引を犯罪とする規定を刑法に含めるよう、勧告する。

4.武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置

回復および社会的再統合の措置
19.委員会は、元子ども兵士の統合のための具体的なプログラムまたは活動が存在せず、かつ、武力紛争の影響を受けた18歳未満の庇護希望者に関する体系的データ収集も行なわれていないことを遺憾に思う。
20.委員会は、締約国が、以下の努力を強化することにより、イタリアにいる子どもの庇護希望者、難民および移住者であって武力紛争の影響を受けた可能性がある子どもの脆弱性に注意を払うよう、勧告する。
  • (a) これらの子どもを可能なもっとも早い段階で特定すること。
  • (b) これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、文化的に配慮した学際的援助を提供すること。
  • (c) 自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移住者であって母国で敵対行為に関与した可能性のある子どもに関するデータを体系的に収集すること。
  • (d) 母国で敵対行為に関与した可能性のある子どもの庇護希望者および移住者のためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関を対象として、定期的研修を行なうこと。
21.委員会はまた、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)を考慮することも勧告するとともに、締約国に対し、社会的再統合プログラムに関する情報を次回の定期報告書で提供するよう慫慂する。

5.フォローアップおよび普及

22.委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、選択議定書を一般公衆ならびにとくに子どもおよびその親に対して広く知らせるよう、勧告するものである。
23.加えて、選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。

D.次回報告書

24.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書(提出期限2008年10月4日)に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
最終更新:2012年11月17日 17:52