総括所見:オーストラリア(OPSC・2012年)


CRC/C/OPSC/AUS/CO/1 and Corr.1(2012年9月24日/2012年10月12日)
原文:英語(平野裕二仮訳)※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。

1.委員会は、2012年6月5日に開かれた第1709回会合(CRC/C/SR.1709参照)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/OPSC/AUS/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/AUS/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/AUS/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことに、懸念とともに留意するものである。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で進められているいくつかの積極的取り組み、とくに以下の取り組みを歓迎する。
  • (a) 「人身取引と闘うための国家行動計画」。
  • (b) 「明日の子どもたち:子どもの商業的性的搾取に反対するオーストラリア国家行動計画」。
  • (c) 「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略(2011~2013年)」。
5.委員会はさらに、締約国が、開発協力および政府間協力を通じ、アジア太平洋地域で選択議定書上の犯罪を根絶するために行なっている支援を歓迎する。

III.データ

6.委員会は、選択議定書が対象とする子どもの売買、児童買春または児童ポルノのあらゆる側面に関するデータを収集するための体系的機構が存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、選択議定書に関わる犯罪についての包括的データが連邦レベルで存在しないことに、懸念とともに留意するものである。
7.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野を網羅したデータの収集、分析、監視および影響評価のための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。データは、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとりわけ注意を払いながら、とくにジェンダー、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、さまざまな州および準州を対象とした、データを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告する。

IV.実施に関する一般的措置

立法
8.委員会は、国内法が、選択議定書上のすべての犯罪を全面的に編入しているわけではなく、かつこれらの犯罪の禁止および犯罪化について調和化されていないことを懸念する。
9.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書と調和させるための努力を継続するよう促す。とくに委員会は、締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく自国の義務にしたがい、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのあらゆる事案を定義しかつ禁止するよう、勧告するものである。
国家的行動計画
10.「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略」は歓迎しながらも、委員会は、このような国家的政策で、選択議定書を実施し、かつこれらの計画の成果を測定するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置が定められていないことを懸念する。委員会はまた、これらの計画間の調整に関する情報がないことも遺憾に思うものである。
11.委員会は、締約国が、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」に、選択議定書で取り上げられているすべての問題をとくに対象とする別個の包括的行動計画が含まれることを確保するとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、国家的行動計画を通じて選択議定書を実施するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置を定めることも、勧告するものである。
調整および評価
12.委員会は、選択議定書の実施に関する調整機関が存在しないことに、懸念とともに留意する。ニューサウルウェールズ州およびビクトリア州では、警察署のみが実施機関に挙げられている。このことは、防止および保護のための努力(意識啓発活動、研修、カウンセリングおよび再統合のための努力を含む)の効果的な全般的調整に関する懸念を生じさせるものである。
13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施の調整を担当する調整機関または調整機構を国および州/準州の双方のレベルで設置するとともに、これらの機関または機構に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。
普及および意識啓発
14.委員会は、公教育制度において、子どもの権利の問題に関する教員および生徒の意識を高めるために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において選択議定書が体系的かつ包括的に普及されていないことにより、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを、懸念するものである。
15.委員会は、選択議定書第9条2項にしたがい、締約国が、公衆、とくに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家の間で選択議定書の規定を広く知らせるため、適切な媒体、教育キャンペーンおよび専門家研修キャンペーン等も通じてあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。
研修
16.委員会は、法執行官を対象として行なわれている、人身取引被害者の発見および捜査実務に関するさまざまな研修プログラムに、積極的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害者のカウンセリングおよびリハビリテーションの分野で、適切なスタッフの養成および研修が行なわれてないことを懸念するものである。
17.委員会は、コミュニティおよびその他の関係者の関与を得た参加型のプロセスを通じて開発された、選択議定書で対象とされているすべての分野に関する学際的な研修プログラムに対し、締約国が、使途が指定された十分な資源を配分するよう勧告する。このような研修は、子どもとともにおよび子どものために働く、連邦および州/準州段階のすべての関連の専門家集団、省庁および機関を対象として行なわれるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、研修プログラムの効果および関連性を高める目的で、選択議定書に関するすべての研修プログラムについて組織的評価が行なわれることを確保するよう、促す。
資源配分
18.委員会は、連邦、州および準州の段階で選択議定書を実施するための活動に割り当てられた、明確に特定可能な予算配分額についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。
19.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のために特定可能な予算配分を行なうよう勧告する。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
20.国際人身取引と闘うための締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書上の具体的犯罪に関わる防止措置が依然として不十分であることを遺憾に思う。とくに委員会は、子どもの商業的性的搾取を防止するための措置がとられておらず、かつ、アボリジナルの女子およびホームレスの子どものような脆弱な立場に置かれた集団を保護するための措置が不十分であることを、懸念するものである。さらに委員会は、貧困など、選択議定書上の犯罪の基底にある根本的原因に対する十分な対応が行なわれていないことを懸念する。
21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 第9条1項で求められているとおり、選択議定書上の犯罪のいずれかの被害者にとくになりやすい子どもの保護に特段の注意を払うため、あらゆる可能な措置をとること。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくにそのような脆弱な立場に置かれた集団を対象とする意識啓発プログラムを実施するよう、勧告する。
  • (b) 根本的原因、問題の規模ならびに保護措置および防止措置の存在を明らかにする目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模に関する調査研究を実施するとともに、目的および対象の明確な措置をとること。
児童セックス・ツーリズム
22.委員会は、児童セックス・ツーリズムに対応するために締約国が行なっている取り組みを歓迎するものの、さらなる努力がなお必要であることに留意する。とくに委員会は、旅行〔・観光〕業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範に署名した締約国の企業がほとんどないことを懸念するものである。
23.委員会は、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムと闘うための努力を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でUNWTO〔国連世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、勧告するものである。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~7条)

現行刑事法令
24.人身取引、性的搾取およびオンラインの性的虐待について連邦、州および準州の法的枠組みで定められている規定には積極的対応として留意しながらも、委員会は、以下のことを懸念する。
  • (a) 締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条で定められたすべての犯罪を具体的に定義しかつ禁止していないこと。とくに委員会は、子どもの売買が、選択議定書で求められているように具体的犯罪として定義されかつ犯罪化されていないことを懸念する。
  • (b) 選択議定書上の犯罪に関する立法が州および準州の間で非常に異なっていること。とくに委員会は、締約国にいる16~18歳の子どもの一部が選択議定書上の犯罪から全面的に保護されているわけではないことを懸念する。委員会は、多くの州および準州において、児童買春および児童ポルノが16~18歳の子どもについて犯罪とされるのは被告人が信頼または権威を有する立場にある場合のみであることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、選択議定書上の関連の犯罪の一部について、その犯罪化が性的同意年齢(ほとんどの法域では16歳)と関連づけられていることも懸念する。
25.委員会は、締約国に対し、国内法の規定を見直し、かつこれが選択議定書の規定に全面的に一致することを確保するよう、促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。
  • (a) 選択議定書にしたがって、子どもの売買(とくに、選択議定書第3条1項(a)(i)bおよびc、1項(a)(ii)ならびに第5条にしたがい、不法な養子縁組、強制労働に子どもを従事させること、および、利得を目的とした子どもの臓器移植のための子どもの売買)を選択議定書にしたがって定義しかつ犯罪化すること。
  • (b) 18歳未満のすべての子どもが全面的に保護されるよう、選択議定書上のすべての犯罪を定義しかつ犯罪化すること。
26.児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムの加害者が訴追されかつ有罪判決を受けた事案には積極的側面として留意しながらも、委員会は、選択議定書上の他の犯罪、とくに子どもの売買および児童買春について捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。
27.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪が捜査されること、および、加害者とされた者が訴追されかつ適正な制裁を受けることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を次回の定期報告書で提供するよう、勧告するものである。
法人の責任
28.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連した作為または不作為についての法人(企業を含む)の責任を限定された形でしか問えないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、企業については奴隷制に関わる意図的なまたは無謀な行為の責任しか問えないことを懸念するものである。
29.委員会は、選択議定書第3条4項にしたがい、選択議定書に関連した犯罪について法人の責任を問えることを確保するため、締約国が国内法を改正するよう勧告する。
裁判権および犯罪人引渡し
30.委員会は、オーストラリア市民が国外で児童セックス・ツーリズムに関与した事件において、締約国が域外裁判権を行使していることに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、域外裁判権が及ぶのは、オーストラリアの市民または永住者が16歳未満の子どもとの性的活動に関与し、その便宜を図りまたはそれから利益を得た犯罪のみであって、16~18歳の子どもについては、被告人が信頼または権威を有する立場にある場合にしか域外裁判権が適用されないことに、懸念とともに留意するものである。
31.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての犯罪(被害を受けた子どもが16~18歳である場合のセックス・ツーリズムも含む)について裁判権を確保するため、国内法を改正するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約上、子どもは18歳未満のすべての者と定義されていることを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国が、1996年、2001年および2008年にそれぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書を考慮するよう勧告する。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項)

被害者の回復および再統合
32.委員会は、オーストラリア赤十字社が運営する「人身取引被害者支援プログラム」のようなプログラム、および、さまざまな州警察部隊内に設置された被害者支援部局に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の
被害者について、その回復および再統合のための措置を整備していないことを懸念するものである。とくに委員会は、締約国が、選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となりやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとっていないことを懸念する。
33.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対して適切な援助(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)を確保するための措置をさらに強化するよう、促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 締約国の領域全体で児童精神保健専門家へのアクセスおよび利用可能性を確保する等の手段により、被害を受けた子どもに対して医学的、心理社会的および心理的ケアを提供する専門のサービスを引き続き発展させること。
  • (b) 社会サービスの利用可能性を高めること。
  • (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 〔正誤表により削除〕
  • (e) これらの勧告の実施について国連児童基金(ユニセフ)および国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。
  • (f) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害をとくに受けやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとること。

VIII.国際的な援助および協力

34.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。

IX.フォローアップおよび普及

35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会、地域機関および適用可能な場合には他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
36.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

37. 第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。/正誤表(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1/Corr.1 of 12 October 2012)にしたがい、パラ33(d)を削除およびパラ35を修正(11月5日)。