総括所見:バチカン(第1回・1995年)


CRC/C/15/Add.46(1995年11月27日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1995年11月14日に開かれた第255回および第256回会合においてバチカンの第1回報告書を検討し、下記の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。

A.序

2.委員会は、バチカンの第1回報告書について、締約国特有の事情により当該報告書は委員会のガイドラインにしたがっていないものの、評価の意を表する。委員会はまた、ハイレベルな代表団との間で交わされた、率直なかつ開かれた対話についても評価の意を表するものである。委員会は、委員が提起した質問に対する回答および議論の過程で委員会に提供された資料に留意する。これにより、委員会は、条約の実施においてバチカンが果たしている役割をいっそう深く評価することができた。

B.積極的な要因

3.委員会は、すべての国による条約の批准を奨励する目的で締約国が行なっている取組みを歓迎する。
4.委員会は、条約の目的および趣旨を達成するためにバチカンおよびその構成機関が世界中で果たしうる重要な役割を締約国が認識していることを、歓迎する。委員会は、子どもの福祉のために、バチカンによって「家族のための司教会議」、「カトリック教育聖省」、「ヘルスワーカーに対する聖職者の援助のための司教会議」および「聖なる子ども時代に関する司教伝道会」のような諸機関および諸体制のネットワークが設置されたことに留意するものである。
5.委員会は、条約の普及および翻訳のために締約国が世界中で積極的な取組みを行なっていることに留意するとともに、締約国が、この点について他の締約国とも積極的に協力しかつ進んで援助を提供するつもりがあることを歓迎する。
6.委員会は、「家族のための司教会議」が国際家族年に対する具体的な貢献として行なった、ブラジル、フィリピンおよびルワンダにおいてストリートチルドレンのためのシェルターを設置するという決定を歓迎する。

C.主要な懸念事項

7.委員会は、バチカンが子どもの権利条約に対して付した留保、とくに子どもを権利の主体として全面的に認める点に関する留保について懸念を覚える。
8.委員会は、カトリックの学校および施設において、とくにジェンダーとの関連で子どもたちの間に差別が生ずる可能性があることを懸念する。
9.委員会は、条約の規定に照らし、子どもの健康教育の促進、予防保健の発展、親に対する指導ならびに家族計画のための教育およびサービスに対して十分な注意が払われていないことを懸念する。

D.提案および勧告

10.世界人権会議の最終文書の精神にのっとり、委員会は、締約国に対し、条約に付した留保を撤回の方向で見直すよう奨励したい。
11.バチカンおよび各国のカトリック教会が及ぼしている道徳的な影響力に照らし、委員会は、条約に掲げられている権利の促進および保護のための努力が継続されかつ強化されるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会は、条約の原則の広範な普及および世界中で話されている言語への条約の翻訳の重要性を強調するとともに、締約国に対し、その目的に向けて今後も積極的な役割を果たすよう勧告するものである。
12.委員会は、子どもの教育および保護に携わっている専門家およびボランティアワーカーが、条約に規定された原則を考慮に入れた、十分な研修および教育を受ける必要があることを強調する。委員会はまた、カトリック学校のカリキュラムに条約を導入するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、学校で用いられる教授法は条約の精神および理念ならびに第28条および第29条に掲げられた教育の目的を反映したものであるべきであるという見解に立つ。
13.委員会は、条約第5条および第12条の関係に関するバチカンの立場について明らかにされるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会は、親の権利および特権が、条約で認められた子どもの権利、とくに自己の意見を表明する子どもの権利およびその意見を正当に重視される権利を阻害してはならないという委員会の見解を想起したい。
14.委員会はまた、条約の精神およびそこに掲げられた諸原則、とくに差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重の原則が、バチカンならびに子どもの権利の問題に関わっているさまざまな教会機関および教会組織のすべての活動を行なうにあたって全面的に考慮に入れられるべきことも勧告する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年5月28日)。
最終更新:2012年05月28日 15:36