総括所見:シンガポール(第2~3回・2011年)


CRC/C/SGP/CO/2-3(2011年5月2日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年1月20日に開かれた第1590回および第1591回会合(CRC/C/SR.1590 and 1591参照)においてシンガポールの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/SGP/2-3)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/SGP/Q/2-3)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国の状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、ハイレベルなかつ多部門から構成された代表団との前向きな対話も評価するものである。

II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、2003年に締約国の第1回報告書を検討して以来の、多くの前向きな発展を歓迎する。これには、以下のもののような、立法上その他の措置の採択も含まれる。
  • (a) シンガポールおよび他国における子どもの性的搾取を犯罪化した、2007年10月の刑法改正。
  • (b) 子どもがシンガポール籍の母を通じて市民権を取得することを可能にした、憲法第122条の改正(2004年4月)。
  • (c) 中央青少年指導庁(CYGO)および公的後見人庁の設置(2010年)。
  • (d) 国家家族評議会(NFC)の設置(2008年5月)。
  • (e) 地域裁判所(2006年6月)および子ども養護裁判所(2008年5月)の設置。
  • (f) 専門の裁判手続であるCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)の導入(2008年7月)。
  • (g) 就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)の批准(2005年)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
4.締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.220、2003年)を実施しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに懸念を表明する。
5.委員会は、締約国に対し、締約国の第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(独立の監視、子どもの定義、差別の禁止、子どもの意見の尊重、親の責任、障害のある子どもおよび少年司法等の問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。これとの関連で、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年、CRC/GC/2003/5)に対して締約国の注意を喚起するものである。
宣言および留保
6.委員会は、前回の総括所見における勧告(CRC/C/15/Add.220、パラ7)にも関わらず、締約国が、条約第12条、第13条、第14条、第15条、第16条、第17条、第19条および第37条に関する多数の宣言ならびに第7条、第9条、第10条、第22条、第28条および第32条に対する留保をいまなお維持していることを、深く遺憾に思う。委員会は、条約のこれほど多くの条項(子どもの意見の尊重の原則も含む)に関する宣言および留保が継続していることについて重大な懸念を表明するものである。これらの宣言および留保は、条約に基づく締約国の義務の全面的および効果的実施を妨げる障壁となるからである。
7.1993年世界人権会議のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ締約国によってすでに相当の措置がとられていることに鑑み、委員会は、締約国に対し、条約に関する宣言および留保をこれ以上の遅滞なく撤回するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。
立法
8.委員会は、子どもの生活条件および発達の向上に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(刑法および子ども・若者法を含む))の改正が行なわれたことを歓迎する。しかしながら委員会は、最近の立法上の進展にも関わらず、条約が国内法に全面的には編入されておらず、かつ締約国において直接適用可能とされていないことに、懸念とともに留意するものである。
9.委員会は、締約国に対し、条約のすべての原則および規定が国内法体系に全面的に編入されることを確保するよう、促す。
調整
10.委員会は、締約国による条約の実施の調整および監視において子どもの権利条約に関する省庁間委員会(IMC-CRC)が果たしている積極的役割に留意する。しかしながら委員会は、省庁間委員会の所掌事項に、子どものためのすべての政策およびプログラムの調整がいまなお含まれていないことを懸念するものである。
11.委員会は、締約国が、条約に関する省庁間委員会の所掌事項、職務および能力を拡大して子どものためのすべての政策およびプログラムの調整を含めるよう、勧告する。委員会はまた、省庁間委員会が条約の実施の監視および評価について定期的に報告を行なうこと、および、その報告書が社会のあらゆるレベル(子どもを含む)で広く普及されるべきことも、勧告するものである。
国家的行動計画
12.委員会は、子どもに関わるさまざまな部門別戦略が策定されてきたことについて、積極的な対応として留意する。しかしながら委員会は、これらの戦略にともない、実施のための具体的な行動計画が策定されることはほとんどないことを懸念するものである。委員会は、締約国が条約実施のための包括的な国家的行動計画(NPA)を策定していないことを、依然として懸念する。
13.委員会は、締約国が、子どもおよび家族に関するさまざまな戦略を、条約の全面的実施を確保することを目的とした子どものための包括的な国家的行動計画に基づいて調和させるよう、勧告する。国家的行動計画は、権利を基盤とし、かつ条約のすべての原則および規定を網羅したものであるべきである。NPAは、国レベルの開発計画、戦略および予算と連携し、かつ、すべての子どもによるすべての権利の享受に関わる進展を効果的に測定するための、具体的な、期限の定められたかつ測定可能な目標を掲げることが求められる。
独立の監視
14.子どもが権限のある部門別機関に苦情を申し立てられることには留意しながらも、委員会は、締約国が、条約上の子どもの権利の充足を恒常的に監視すること、ならびに、子どもの権利の侵害に関する苦情を受理しおよび独立の立場から調査することを目的とした独立機構を設置していないことを、依然として懸念する。
15.委員会は、前回の総括所見に掲げられた勧告(パラ13)をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を全面的に考慮に入れながら、パリ原則(総会決議48/134)にしたがった独立機構を設置するよう、促す。このような機関に対しては、条約が対象とするすべての分野について、子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる苦情を受理しかつ調査する明確な権限が与えられるべきである。このような機関に対しては、すべての子どもがアクセスでき、かつ、職務を十分に果たすために必要な人的資源、財源および技術的資源を提供されることが求められる。
データ収集
16.委員会は、締約国の報告書および事前質問事項に対する回答で提供された詳細な統計データに留意する。しかしながら委員会は、とくに子どもに対する暴力、人身取引の被害を受けた子どもおよび子どもの性的搾取に関するデータが不十分であることを懸念するものである。
17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起し、委員会は、条約が対象とするすべての分野、とりわけ暴力、人身取引および子どもの性的搾取について、とくに年齢(18歳未満の者)、性別、民族的および社会経済的背景ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されたデータが収集されることを確保する目的で、締約国が、子どもに関する国レベルの中央データベースを設置し、かつ条約に一致した指標を開発することによってデータ収集機構を強化するよう、勧告する。
普及および意識啓発
18.委員会は、条約に関する子どもおよび公衆一般の意識を高めるために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもおよび公衆一般を対象とする教育および意識啓発には継続的に注意を向けることが必要であると考えるものである。したがって委員会は、締約国に対し、子ども、その親およびより幅広い公衆に対して条約(子どもを対象としてとくに立案した適切な資料を含む)を引き続き普及するよう、奨励する。
研修
19.子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として条約の原則および規定に関する研修を行なおうとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する専門家集団の研修活動が依然として不十分であることを懸念する。
20.委員会は、社会福祉の現場ならびに法律上および行政上の手続において条約の原則および規定が広く適用されることを確保する目的で、締約国が、専門家に対して研修を行なう努力を強化するよう勧告する。
市民社会との協力
21.ボランティア福祉団体を含む市民社会との協働に対する「たくさんの支援の手」アプローチには留意しながらも、委員会は、役割について明瞭さが欠けていること、および、政策決定レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られていることを、懸念する。
22.委員会は、締約国が、条約の実施のあらゆる段階(政策立案も含む)および今後の定期報告書の作成において、いっそう制度的なかつ調整のとれたやり方で非政府組織(NGO)の関与を得るよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」に関する一般的討議(2002年)の勧告を考慮し、かつ、サービスを提供している民間団体の監督を、当該サービスが権利を基盤としたものであることを確保する目的で改善することも、勧告するものである。
国際協力
23.条約第4条に関して、委員会は、国際協力の取り組み、とくに国連平和維持活動ならびに二国間および多国間の人道上の行動に対して締約国が行なっている貢献に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国の経済が相対的に安定しているにも関わらず、国際的に合意された目標、とくに子どもを特別に重視したミレニアム開発目標に向けられた政府開発援助(ODA)についての情報が存在しないことに、留意するものである。
24.委員会は、締約国に対し、ODAに関する情報を透明化するとともに、対国内総生産比0.7%というODAについての国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めおよび二国間協力において子どもの権利の実現が優先課題となることを確保することも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、締約国の提携国に関して委員会が採択した総括所見および勧告に特段の注意を払うよう、促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の勧告を考慮するよう、慫慂するものである。
子どもの権利と企業セクター
25.委員会は、締約国が、その管轄下にある国内企業および多国籍企業を対象とし、かつ、人権理事会が2008年に採択した国連・ビジネスと人権枠組みにしたがった、子どもの権利に関わる企業の社会的責任(CSR)指標を採択していないことを懸念する。国連・ビジネスと人権枠組みは、人権を保護する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際の、効果的救済措置に対する被害者のアクセスという3つの原則から構成されるものである。
26.委員会は、締約国が、シンガポール企業(シンガポールに本社を置く多国籍企業も含む)が子どもの権利について報告するための枠組みを定めるよう勧告する。その際、委員会は、締約国が条約の関連規定を適用するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連・ビジネスと人権枠組みをとりわけ子どもの権利との関連で民間企業および公共企業体の活動に適用することについての世界中の経験を、正当に考慮するよう奨励する。

B.子どもの定義(条約第1条)

27.委員会は、イスラム法運用法(AMLA)の改正により、イスラム教徒の女子の最低婚姻年齢が16歳から18歳に引き上げられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見における勧告(パラ22)にも関わらず、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)がいまなお16~18歳の子どもを対象としていないことを遺憾に思うものである。
28.委員会は、締約国が、国内法における子どもの定義を条約にしたがって調和させるためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が子ども・若者法の適用を拡大し、18歳未満のすべての者を対象とするよう勧告するものである。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
29.委員会は、差別の禁止の原則が市民に限定されており、条約第2条で定められているように、親の地位に関わりなく締約国の管轄内にあるすべての子どもに対して適用されていない旨の、前回の総括所見(パラ24)で指摘した懸念をあらためて表明する。さらに委員会は、女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する差別がいまなお根強く残っている旨の報告について懸念を覚えるものである。
30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 自国の管轄内にあるすべての子ども、とくに女子、障害のある子どもおよび外国系の子どもに対し、条約に定められた権利をいかなる種類の差別もなく尊重しかつ確保するため、法律を改正すること。
  • (b) あらゆる形態の差別(被害を受けやすい状況に置かれたあらゆる集団の子どもに対する複合的形態の差別を含む)に対応し、かつ差別的な社会的態度と闘う包括的な戦略を採択しかつ実施すること。
  • (c) 広範な関係者との調整を図り、かつ社会のあらゆる部門の関与を得ながら、社会的および文化的変革、ならびに、子どもの平等の支えとなる、誰もがその可能性を発揮できる環境づくりを促進するような努力を行なうこと。
  • (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とするため、ジェンダー、人種、民族的出身または社会的背景および障害の別に細分化されたデータを収集すること。
  • (e) そのような努力を監視し、かつ設定目標の達成に向けた進展を定期的に評価するとともに、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載すること。
子どもの最善の利益
31.委員会は、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)に指導的原則としての子どもの最善の利益が含まれていること、ならびに、子どもの最善の利益の原則を促進するための各種プログラム、とくにCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)およびIMPACTプログラムが設けられていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに関わる法律のほとんど、ならびに、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて子どもの最善の利益の原則への言及が見られないことを、懸念するものである。
32.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがって第一次的に考慮され、かつ、自国の法律、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼす政策、プログラムおよびサービスに全面的に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。
子どもの意見の尊重
33.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、施設、司法制度および社会一般において自己に影響を与える広範な問題についての子どもの意見表明が制限され、かつしばしば妨げられていることを依然として懸念する。委員会はまた、自己に影響を与える司法上および行政上の手続において子どもに意見を表明するよう制度的に促す正式な手続が設けられていないことも、遺憾に思うものである。
34.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭その他の場面において意見を聴かれる子どもの権利を積極的に促進するとともに、あらゆる文脈(学校その他の子ども施設、裁判所および行政機関ならびに政策立案プロセスにおけるものも含む)において、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもが意見を表明できるようにする正式な手続を設けること。
  • (b) 子ども・若者法を含む法律を改正し、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明する子どもの権利を含めること。
  • (c) 条約第12条に関する宣言の撤回を検討すること。

D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a))

名前および国籍
35.子どもが母からの継承によって市民権を取得することを可能にした2004年4月の憲法改正は歓迎しながらも、委員会は、この改正法が適用されるのは2004年5月15日移行に生まれた子どものみであることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国にいまなお多数の無国籍児が存在すること、および、特定の状況において、子どもが憲法第129条2項(a)に基づき市民権を剥奪される可能性があることを、懸念するものである。
36.委員会は、締約国に対し、子どもが市民権を剥奪されることを防止する目的で国籍法を改正するとともに、シンガポール国籍の母の子であって2004年前に生まれた子ども全員に市民権を付与することを検討するよう、勧告する。
表現、結社および平和的集会の自由
37.子どもがいくつかの場で意見を表明するよう奨励されていることには留意しながらも、委員会は、これらの場がきわめて限られており、かつ、表現の自由(公に苦情を申し立てる権利および情報を受ける権利を含む)ならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを、懸念する。委員会は、表現ならびに平和的集会および結社の自由に対する権利が憲法で保障されているにも関わらず、これらの権利が実際には厳しく制約されており、かつ、自己の意見を公に表明する自由が引き続き制限されていることを、懸念するものである。
38.委員会は、締約国が、表現、結社および平和的集会に対する子どもの権利が全面的にかつ実際に実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、条約第12条、第13条および第15条に関する宣言を、撤廃の方向で見直すことも奨励するものである。
拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰
39.体罰の使用の制限および抑制を図る教育プログラムおよび指針には留意しながらも、委員会は、笞打ちを含む体罰がいまなお家庭、学校および施設における合法的な形態のしつけおよび規律と見なされていることについての深い懸念を、あらためて表明する。
40.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰(笞打ちを含む)を、これ以上のいかなる遅滞もなく、法律で明確に禁止すること。
  • (b) 体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律について、引き続き、教員ならびに施設および少年拘禁所で働く職員を対象とした体系的研修を行うこと。
  • (c) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響についての、親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を引き続き進めるとともに、体罰の代わる手段としての、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育ておよびしつけを促進すること。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに、子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕が強調した、期限の定められた以下の優先課題を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕と協力するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
42.委員会は、家族に対して親教育および金銭的援助を提供するために締約国が努力していること、および、高度のニーズを有する家族への支援を向上させる目的で機能不全家族に関する省庁間委員会が設置されたこと(2007年)に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、このような家族が、子どもの養育責任に見合った十分な支援を受けていない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件が厳格であるため、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできないことも懸念する。
43.委員会は、子どもの養育責任を担う親および法定保護者の能力を高める目的で、締約国が、カウンセリング、親教育および安定した家庭環境を支えることにつながるその他の意識啓発プログラム等も通じ、親および法定保護者に対する支援およびサービスを強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件(母親の就労要件を含む)を見直し、かつ、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできることを保障することも、勧告するものである。
44.委員会は、外国人人材雇用法の適用により、一部の子どもが親から分離される結果が生じていることを懸念する。これは、「Sパス」および「雇用パス」カテゴリー以下の労働許可しか得ていない移住労働者は、労働許可証管理官の事前の承認がなければシンガポールの市民または永住者と婚姻することが許されておらず、かつ、妊娠を理由として就労許可が取り消され、その結果、退去強制が行なわれる場合もあることを踏まえての懸念である。
45.委員会は、締約国に対し、親からの子どもの分離を回避する目的で出入国管理に関わる法律および政策(とくに出入国管理法および外国人人材雇用法)を見直すとともに、条約第9条および第10条に付した留保の撤回をあらためて検討するよう、促す。
家庭環境を奪われた子ども
46.委員会は、親が子ども養護裁判所に対して正式な苦情を申し立てることができ、かつ8~16歳の子どもが施設(ときには非行少年と同じ施設)に措置される可能性がある「親の手に負えない子ども」制度の、締約国による扱いについて深い懸念を表明する。委員会は、この制度が子どもにスティグマを付与し、かつ、可能性を発揮させるのではなく懲罰的な措置としてとらえられる可能性があることを遺憾に思うものである。委員会はまた、「親の手に負えない子ども」制度が、子どもまたは若者の親または保護者に対し、子どもまたは若者の養育および福祉について主たる責任を負うよう奨励する2010年の子ども・若者(改正)法案に一致しないことにも留意する。
47.委員会は、締約国が、2009年の総会決議64/142に掲げられた子どもの代替的養護に関する指針を考慮し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの施設措置が最後の手段として、かつ適切な司法的監督のもとでのみ用いられることを確保する目的で、「親の手に負えない子ども」に関する政策を再検討すること。
  • (b) 子どもおよび家族の問題の根本的原因、現行制度の有効性およびそれが子どもに与える影響についての、ジェンダーに配慮した研究を行なうこと。
  • (c) 子どもおよび家族に対し、カウンセリング、子育てスキル訓練、必要な場合には適切な治療、および他のあらゆる保護措置を最優先で提供すること。
  • (d) 配慮に満ちた安全な環境で成長する子どもの情緒的ニーズに関する、親、専門家および公衆を対象とした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を行なうこと。
養子縁組
48.委員会は、子どもの養子縁組法に、国際基準にしたがった子どもの権利の保護措置の多くが欠けていることを懸念する。委員会はまた、十分な保護の保障(司法機関による許可および中欧監督機関を含む)なくして養子縁組が行なわれている事案があること、および、養子縁組目的で子どもの売買が行なわれているという報告があることも、懸念するものである。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 養子とされたすべての子どもの登録情報を保管すること。
  • (b) 養子縁組手続の対象とされた子どもの権利の保護を確保するための中央機関を設置すること。
  • (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を遅滞なく批准すること。
虐待およびネグレクト
50.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトの問題に対処するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに対して行なわれる虐待を発見し、記録しかつ分析するための包括的制度が設けられていないことを懸念するものである。委員会は、子どもとともにまたは子どものために働く専門家に対し、子どもの虐待の通報義務が課されていないことを遺憾に思う。
51.委員会は、締約国が、防止措置をとり、虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施し、かつ虐待の被害を受けた子どもに対して保護および回復のための十分なサービスを提供することにより、児童虐待の問題に対応するための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもとともに働く専門家を対象とした、子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案について通報を行ないかつ適切な行動をとる義務的要件を設けるとともに、この点に関する研修が行なわれることを確保することも奨励するものである。

F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
52.障害のある子どものための「特別教育」学校に対して公的機関が資金および訓練を提供していることには留意しながらも、委員会は、「特別教育」学校がボランティア福祉団体によって運営されており、かつ公的機関の管轄下にないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもがいまなお教育制度に全面的には統合されておらず、かつ、障害のある子どもおよびそのニーズに関する量的および質的データがいまだに存在しないことを、依然として深く懸念するものである。
53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 義務教育法(2003年)の適用を拡大し、障害のあるすべての子どもを対象に含めること。
  • (b) 特別なニーズを有する子どもに対し、インクルーシブ教育を提供すること。
  • (c) 障害のある子どもおよびその具体的ニーズに関する量的および質的データを収集しかつ分析するとともに、このような子どもを対象とする適切なプログラムおよび政策の策定のためにこれらのデータを活用すること。
  • (d) 教員、ソーシャルワーカー、(準)医療従事者および関連の職員のような、障害のある子どもとともに働く専門職員を対象として、子どもの権利の視点からの研修を行なうこと。
  • (e) 障害のある子どもが、早期介入サービスおよび普通学校への統合に時宜を得た形でアクセスできることを確保するため、さらに多くの資源を配分すること。
  • (f) 障害のある子どもがいる家族への支援を強化すること。
  • (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書の批准を検討すること。
  • (h) 障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。
思春期の健康
54.委員会は、保健指標が非常に優れた水準のまま維持されており、かつ締約国において質の高い保健ケア・サービスが広く利用可能とされていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、思春期保健サービスが不十分であること、性感染症に罹患する青少年の人数が増えていること、および、青少年の自殺が多数発生していることを懸念するものである。
55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 思春期の健康的なライフスタイルを促進するためのプログラムを強化すること。
  • (b) リプロダクティブヘルスを含む思春期の健康についての包括的政策を採択すること。
  • (c) 性感染症、とくに感染経路および有害な影響に関して青少年を教育すること。
  • (d) 青少年の自殺リスク要因に関する調査研究を行ない、かつ防止措置を実施すること。
  • (e) 子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。
母乳育児
56.母乳育児を奨励するために締約国が行なった努力(母性保護関連法の改善を含む)には留意しながらも、委員会は、完全母乳育児の実践率が低いことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、赤ちゃんにやさしい病院として認証された病院がゼロであること、シンガポール乳児用食品販売倫理委会(SIFECS)の国内基準に国際基準に一致しない要素が一部含まれていること、および、母性保護関連法で授乳休憩が保障されていないことも、懸念するものである。
57.委員会は、締約国が、子どもを生後6か月まで母乳のみで育てることの重要性に関する意識啓発の努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、主要な産科病院が「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブ(BFHI)に基づく基準を満たしかつ認証を受けることを確保すること、SIFECSの国内基準を見直し、強化しおよび執行しならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択しおよび実施すること、母性保護関連法に授乳休憩を含めること、ならびに、職場における母性保護に関するILO第183号条約(2000年)の批准を検討することも、求めるものである。

G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
58.委員会は、締約国の学校制度によって達成されている、学業面における高度な優秀性を認識しかつ称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 前回の総括所見の勧告(パラ43)にも関わらず、締約国の管轄内にあるすべての子ども(とくに市民でない者)が義務教育法の対象とされ、かつ無償の初等学校にアクセスできているわけではないこと。
  • (b) 教育制度の高度に競争主義的な性質によって過度なストレスが生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害される可能性があること。
  • (c) マイノリティ、とくにマレー系の生徒が教育指標面で立ち遅れていること。
  • (d) 学校カリキュラムに人権教育を含めるために十分な努力が行なわれてこなかったこと。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国の管轄内にあるすべての子ども(市民でない者も含む)を対象に含めるとともに、この目的のため、条約第28条に付した留保を見直すこと。
  • (b) すべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の高度な競争主義を軽減するために学校制度を見直すとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力をさらに強化すること。
  • (d) たとえば、すでに存在する遅れを取り戻すための特別かつ一時的な積極的差別是正措置プログラムを通じ、学業面での発達についてマイノリティ(とくにマレー系)の生徒を支援するための努力を強化しかつ加速すること。
  • (e) 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、あらゆる教育段階の公式カリキュラムに人権教育を含めるための努力を強化し、かつ子どもの教育における人権の促進について教員の研修を行なうこと。

H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第38~40条)

子どもの庇護希望者および難民
60.委員会は、締約国が難民の処遇に関するいかなる条約にも加盟していないことを懸念する。委員会はまた、難民の処遇を規律する法律が締約国にまったく存在しないこと、および、個別事案ごとの処遇は恣意的取扱いにつながる可能性があることも懸念するものである。
61.委員会は、締約国に対し、国際基準にしたがって子どもの庇護希望者および難民(とくに保護者のいない子ども)の保護のための法的枠組みを策定するとともに、難民の地位に関する1951年条約およびその1967年議定書、無国籍者の地位に関する1954年条約ならびに無国籍の削減に関する1961年条約の批准を検討するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)を考慮するようにも勧告するものである。
経済的搾取(児童労働を含む)
62.締約国が2004年に雇用法を改正して最低就労年齢を12歳から13歳に引き上げたことには留意しながらも、委員会は、最低就労年齢が義務的就学〔修了〕年齢よりも低いことを懸念する。委員会はまた、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件の監視に関する情報が締約国報告書にまったく記載されていないことにも留意するものである。
63.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもの経済的搾取を防止するための努力を強化するとともに、とくに、最低就労年齢を引き上げて義務教育法で定められた義務的就学〔修了〕年齢(15歳)と調和させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件を調査しかつ監視するとともに、次回の報告書にその情報を記載することも勧告するものである。
性的搾取および虐待
64.委員会は、締約国の管轄下にある者が行なう商業的性的搾取からの子どもの保護を増進させた刑法改正(第224条)を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点について重大な懸念を表明するものである。
  • (a) 関連の国内法において、最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に掲げられた一連の禁止規定(とくにポルノの製造またはポルノ的な演技のために子どもを使用し、斡旋しまたは提供することの禁止)が全面的に網羅されていないこと。
  • (b) 子どもの性的搾取および虐待(子どもセックスツーリズムを含む)と闘うために締約国がとった行動が限られていること、および、そのような虐待の加害者が処罰されないままでいること。
  • (c) 締約国から提供された統計情報が示しているように、そのような事案が過少報告されている可能性があること。
  • (d) 性的搾取の被害を受けた子どもがしばしば売春犯と見なされ、かつそのように扱われていること。
  • (e) 締約国の管轄下にある者が行なった子どもの性的搾取について域外裁判権があるにも関わらず、締約国が、国民または永住者に対し、子どもセックスツーリズムを理由とする捜査、訴追または有罪判決の言い渡しをほとんど行なっていないこと。
65.委員会は、締約国に対し、条約第34条に基づく義務を履行するとともに、性的虐待および搾取の通報に対する組織的対応を優先課題として発展させるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の目的のために効果的措置をとるよう促すものである。
  • (a) 最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に法律を一致させること。
  • (b) 子どもに対する性犯罪の加害者がしかるべく裁判にかけられ、かつ適切な刑罰による制裁を受けることを確保する目的で、性的搾取および虐待の行為を犯罪化した法律を実施するための努力を強化すること。
  • (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものために、子どもがリハビリテーション、回復および社会的再統合のためのサービスを提供されるシェルターを設置すること。
  • (d) 被害者の人数および推移を確認するためのデータを収集する目的で、効果的かつ体系的な監視機構を設置すること。
  • (e) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範を策定するとともに、観光業界およびメディアのいっそう積極的な関与を推進すること。
売買、取引および誘拐
66.委員会は、国内法で子どもの売買、取引および誘拐が犯罪化されていることを歓迎するとともに、人身取引および買春の被害者のための便益およびプログラム、とくにホットライン、カウンセリング、翻訳および入所サービスの提供に関して締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、法的枠組みおよび行なわれている努力にも関わらず、締約国が人身取引の対象とされた子どもの目的地国となっており、かつ、それでも締約国報告書に記載された関連のデータでは著しく少ない事件数しか報告されていないことを、懸念するものである。さらに委員会は、締約国が、通報された人身取引事件のすべてを捜査し、または適切な刑罰によって加害者を処罰しているわけではないこと、および、一部の事案では、人身取引の被害を受けた子どもが出入国管理法違反を理由に犯罪者として扱われ、かつ逮捕されていることを、懸念する。
67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが関係するすべての人身取引事件、とくに商業的性的搾取を目的とする人身取引事件が迅速かつ徹底的に捜査されること、ならびに、加害者が訴追されおよび適切な刑罰によって処罰されることを確保すること。
  • (b) 人身取引の被害者である子どもが犯罪者として扱われることを防止するため、あらゆる必要な立法上の措置をとること。その際、とくに、このような子どもが拘禁されないこと、リハビリテーションのための適切なケアを提供されること、家族と再結合できるようにされること、および、人身取引加害者に対する司法手続に主体的に参加するのに十分な期間、締約国の領域への在留を許可されることを確保すること。
  • (c) 締約国における子どもの売買、取引および誘拐の性質および規模に関する研究を、市民社会の関与を得ながら実施すること。
  • (d) 締約国の領域内で人身取引がどの程度問題になっているか、および、子どもの人身取引が被害者にどのような有害な影響を与えるかについて公衆の意識啓発を図ること。
  • (e) 子どもの人身取引を防止する目的で、出身国、通過国および目的地国との、二国間および多国間の協定および協力プログラムを強化しかつ拡大すること。
  • (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。
  • (g) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。
少年司法の運営
68.締約国に独立した少年司法制度が存在することには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、前回の総括所見(パラ45)にも関わらず以下の問題があることを深く懸念する。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢が依然としてきわめて低い(7歳)こと。
  • (b) 罪を犯した少年に対する規律措置として、体罰および独居拘禁がいまなお用いられていること。
  • (c) 7~16歳の男子が、刑法その他の法律上の多くの犯罪について笞打ちその他の形態の刑罰の対象とされていること。
  • (d) 18歳に満たないときに行なった犯罪について有罪判決を受けた者に対し、終身刑が言い渡される可能性があること。
  • (e) 16~18歳の子どもが子ども・若者法(CYPA)に基づく保護の適用対象外とされており、少年裁判所における告発の対象とされない場合があるとともに、その氏名が成人犯罪者の登録簿に記載されること。また、知的障害がある16~18歳の子どもが引き続き成人裁判所における審理の対象とされていること。
69.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで緊急に引き上げること。
  • (b) 法律を改正し、罪を犯した少年を対象とするすべての拘禁施設で、体罰および独居拘禁の使用を禁止すること。
  • (c) 刑の言い渡しおよび拘禁において子どもの最善の利益が考慮されること、ならびに、自由の剥奪が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で適用され、および、撤回の方向で定期的に再審査されることを確保すること。
  • (d) 18歳未満の子どもの終身刑を廃止するとともに、当面、現在終身刑を言い渡されている子どもが、その釈放、再統合、および、社会で建設的な役割を果たすための能力の獲得のための教育、処遇およびケアを受けることを確保すること。
  • (e) 子ども・若者法に定められた特別な保護を16~18歳の子どもにも拡大するとともに、刑事司法制度において、知的障害のある若年犯罪者に対して適切な考慮が行なわれることを確保すること。
  • (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、必要に応じて少年司法の分野における技術的な助言および援助を求めること。
犯罪の被害者および証人である子ども
70.委員会は、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮に入れながら、十分な法律上の規定、手続および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび犯罪の証人であるすべての子ども(虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人など)が司法に効果的にアクセスでき、かつ条約に定められている保護を提供されることを確保するよう、勧告する。
マイノリティまたは先住民族の集団に属する子ども
71.委員会は、民族的、宗教的または言語的マイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもの、自己の文化を享受しかつ自己の宗教および言語を実践する権利の執行に向けて締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、マレー人を含む一部の民族的マイノリティ集団を周縁化させているいくつかの政策に関する、現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連の不寛容に関する特別報告者の懸念を共有するものである。
72.委員会は、締約国が、人種間の調和を確保し、かつ同時にマイノリティの子どもが平等な機会を有することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、民族的マイノリティ集団、とくにマレー人が、自己の文化を享受し、かつあらゆる生活領域で自己の宗教および言語を実践する権利を保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとることも勧告するものである。
地域機関および国際機関との協力
73.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約の実施を目的として、ASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。

I.国際人権文書の批准

74.委員会は、子どもの権利に関連し、かつとくに子どもの権利の充足を増進させる国連の中核的人権文書のうち締約国がまだ加盟していないものを批准するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。これらの文書とは、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約およびその選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、女性に対する差別の撤廃に関する条約の選択議定書である。
75.委員会は、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく報告義務を履行するよう求める。

J.フォローアップおよび普及

フォローアップ
76.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
77.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、子どもおよびメディアが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

K.次回報告書

78.委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合定期報告書を2017年11月3日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国に対し、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年3月)。/前編・後編を統合(10月20日)。