総括所見:オーストラリア(第1回・1997年)


CRC/C/15/Add.79(1997年10月10日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1997年9月24日および25日に開かれた第403回~第405回会合(CRC/C/SR.403-405)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/8/Add.31) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1997年10月10日に開かれた第426回会合において。

A.序

2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインに全面的にしたがって作成されたきわめて詳細な報告書に関して、かつ事前質問票(CRC/C/Q/AUS/1)に対する文書回答の提出に関して、評価の意を表する。委員会は、締約国の代表団との建設的かつ開かれた対話、および、対話の過程で代表団から受け取った詳細な回答に、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、報告書の検討の過程および検討後に代表団から提供された補足的情報にも留意する。しかしながら、委員会は、締約国が、締約国により行政管理されている外部領域に関する情報をその報告書に全面的に記載していなかったことを、遺憾に感ずるものである。委員会は、条約第2条が、その管轄下にある地域において条約の実施を確保するよう締約国に求めており、したがってあらゆる領域において達成された進展について報告する義務も含んでいることに留意する。

B.積極的な側面

3.委員会は、条約で認められている子どもの権利の実施のための措置を採択することに対し、締約国が固い決意を有していることを評価する。委員会は、具体的には、子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、万人を対象とした無償教育の提供、および先進的な保健システムに留意するものである。
4.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった努力に留意する。委員会は、1975年家族法および1994年刑法(子どもセックス・ツーリズム)修正法の最近の改正を歓迎するものである。
5.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准しようという締約国の意思を歓迎する。
6.国際協力の分野で締約国が行なってきた長期間の努力に留意しながらも、委員会は、締約国に対し、発展途上国に対する国際援助をGDPの0.7%にするという目標を達成するよう奨励したい。

C.主要な懸念事項

7.子どもの権利条約が1986年人権平等機会法のもとで関連の国際文書として宣言され、そのことにより人権平等機会委員会は苦情の検討の際に条約に言及することが可能になっているとはいえ、委員会は、このことが、行政上の決定が同文書の要請にしたがって行なわれるという正当な期待を生ぜしめていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの権利条約を根拠に地方裁判所に苦情を申し立てる権利が市民にないことも懸念するものである。
8.委員会は、条約第37条(c)に付された締約国の留保に、懸念とともに留意する。委員会は、この留保が条約の全面的実施を阻害するのではないかということに留意するものである。
9.委員会は、連邦レベルで子どものための包括的政策が存在しないことを懸念する。委員会はまた、連邦および地方のレベルで監視機構が存在しないことも懸念する。そのような機構は、子どものための政策およびプログラムの発展の評価および促進にとって不可欠な重要性を有するものである。予算配分も含む各州の立法および運用に格差が存在することは、委員会の懸念するところである。
10.委員会は、権利の概念は知られているとはいえ、条約およびその原則が一般的に公衆に知られていないことに留意する。委員会は、条約の原則およびそのホリスティックかつ相互関連的なアプローチならびに条約が家族の役割を重視していることに関する十分な理解がコミュニティの一部の層の間に欠けているように思えることを、遺憾に感ずるものである。
11.委員会はまた、連邦レベルおよびすべての州における雇用法制が、子どもの雇用が許されない最低年齢を特定していないことに懸念を表明する。法律はまた、まだ義務教育期間中の子どもの雇用も禁じていない。委員会は、刑事責任年齢が、州により7歳から10歳というきわめて低い水準に一般的に設定されていることを深く懸念する。
12.委員会は、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)および子どもの意見の尊重(第12条)に関わる原則が全面的に適用されていないことを懸念する。
13.アボリジナルおよびトレス海峡諸島民の健康水準を向上させるための多くのプログラム、および2年間の反人種主義を開始しようという締約国の意思に関して締約国の代表団から提供された情報には留意しながらも、委員会は、それでもなお、同じ生活水準、およびとくに教育および健康に関する同じレベルのサービスの享受に関して、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った子どもがいまだに特別な問題に直面していることを懸念する。
14.委員会は、親のいずれかが市民権を失った状況下で子どもも市民権を奪われる場合があることを懸念する。
15.委員会は、学校、家庭および施設における体罰の使用が、たとえ軽いものであれ、地方の立法によって禁じられていないことに懸念を表明する。委員会の見解では、このことは条約の原則および規定、とくに第3条、第5条、第6条、第19条、第28条2項、第37条(a)および(c)ならびに第39条に違反するものである。委員会はまた、家庭におこる子どもの虐待および暴力が存在することも懸念する。
16.委員会はまた、地方立法により、集合している子どもおよび若者を地方警察が排除することが認められていることも懸念する。これは、集会への権利を含む子どもの市民的権利の侵害である。
17.委員会は、民間部門で働いている女性が母性休暇の権利を制度的に保障されていないことを懸念する。このことは、国の被雇用者およびその他の部門で働いている者の子どもが異なる取扱いを受けることにつながる可能性がある。
18.居住、教育および保健サービスも含めてホームレスの子どもに提供されている支援サービスには留意しながらも、委員会は、若者の間でホームレスの状況が広がっていることを依然として懸念する。委員会は、このことが、売買春、薬物濫用、ポルノグラフィー、またはその他の形態の非行および経済的搾取に関与する危険に子どもをさらすのではないかと不安に感ずるものである。若者の間で自殺が発生していることも、委員会にとってもうひとつの懸念の原因である。
19.委員会は、一部地域で女性性器切除の慣行が続いていること、およびどの州にもそれを禁ずる立法が存在しないことを、懸念する。
20.委員会は、庇護申請者および難民ならびにその子どもの扱いについて、かつ彼らが収容センターに措置されることについて、懸念する。
21.少年司法制度に関わる状況、および自由を奪われた子どもの取扱いは、とくに条約および北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の基準の原則および規定に照らして、委員会の懸念するところである。
22.委員会はまた、アボリジナルの子どもが、正当化しえない、不相応に高い割合で少年司法制度において扱われていること、および、その保釈申請が通常は拒否される傾向が存在することも、懸念する。委員会はとりわけ、アボリジナルが高い割合で住んでいる2つの州で新しい立法が制定されたことを懸念するものである。この立法は少年の全件収容および懲罰的措置を規定するものであり、したがってアボリジナルの少年が高い割合で収容されることにつながる。

D.提案および勧告

23.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第37条(c)に付した留保を撤回の方向で見直すよう奨励する。委員会は、第37条(c)が、子どもの最善の利益にかなう場合には、自由を奪われた子どもを成人から分離する必要性を免除することを認めていることを強調するものである。
24.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の実施のためのプログラムおよび政策の立案およびその実施の監視に責任を持つ連邦機関を創設するよう勧告する。委員会は、子どもの権利の分野における、非政府組織およびアボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティと公的機関との間の協力もさらに強化するよう提案するものである。
25.委員会は、締約国に対し、国際協力に関するプログラムおよびスキームにおいて子どもに対して特別財源を配分するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の原則および規定を国際開発援助プログラムの枠組みとして活用するようにも奨励するものである。
26.委員会は、締約国が、私立学校および家庭における体罰を禁止するために、法的なものも含むあらゆる適切な措置をとるよう提案する。委員会はまた、代替的形態のしつけおよび規律の維持が、子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも提案するものである。委員会はまた、家庭における性的虐待も含む子どもの虐待および不当な取扱いの事案は適切に調査され、加害者に対しては制裁が課され、かつ行なわれた決定は広報されるべきであると信ずる。条約第39条にしたがい、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の犠牲者の身体的および心理的回復および社会的再統合を確保するため、さらなる措置がとられるべきである。
27.委員会は、子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンを、とくにその一般原則および条約における家族の役割の重視に力点を置いて、行なうよう勧告する。委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った者が用いる言語によっても条約を普及するよう提案するものである。委員会はまた、子どもの権利を学校カリキュラムに編入するようにも提案する。委員会はさらに、法執行官、司法関係者、教員、ソーシャルワーカー、ケアの提供者および医療従事者に対して提供される研修に条約を編入するよう勧告するものである。
28.委員会は、条約第12条にしたがい、参加しかつ意見を表明する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なう必要があると考える。委員会は、子どもの参加および親と子の対話の重要性について親を教育するため、特別な努力を行なうよう提案するものである。委員会はまた、専門家、とくにケアを提供する者および少年司法制度に携わっている者の、子どもの意見を引き出しかつ子どもが意見を表明する手助けをする能力を高めるための研修を行なうようにも勧告する。
29.委員会は、あらゆるレベルの政府において、子どもの雇用に関する具体的な最低年齢を設定するよう勧告する。委員会は、最低雇用年齢以上で働いている子どもの最長許容労働時間に関する明確なかつ一貫した規則もすべての州で必要とされていると提案するものである。委員会はまた、締約国に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するようにも奨励する。連邦政府が、刑事責任年齢を調和させかつそれをあらゆる州で10歳に引き上げようと計画していることは認めながらも、委員会は、この年齢はなお低すぎると信じるものである。
30.委員会は、庇護申請者および難民の子どもが迅速な方法でその親と再統合されることを保障されるために、立法および政策の改革を導入するよう勧告する。委員会はまた、いかなる子どもも、その親の地位に関わらず、いかなる根拠によっても市民権を奪われないようにも勧告するものである。
31.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則および条約第24条2項に照らして、立法を見直しかつ有給母性休暇をあらゆる部門の雇用者に対して義務づけるよう奨励する。
32.委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた集団、とくにアボリジナル、トレス諸島民、新移民、および農村部および遠隔地で暮らす子どもの健康および教育の水準を引き上げるためにさらなる措置をとるよう奨励する。委員会はまた、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの拘禁率が高い原因に取り組むための措置をとる必要があるという見解に立つものである。委員会はさらに、この不相応に高い割合の原因を特定するための調査を続けるよう提案する。これには、これらの子どもに対する、その民族的出身を理由とする法執行官の態度が助長要因になっている可能性を調査することも含まれる。
33.委員会は、とくに若者および子どもの間でホームレスの状況が広がっている原因を、とりわけ子どもおよびその家族の社会経済的背景も含めて特定し、かつ、性的虐待も含む虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの取引とホームレスの状況との間に存在するつながりを特定するために、さらなる調査を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、貧困緩和政策をさらに採択し、かつ、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するようにも奨励する者である。
34.委員会は、女性性器切除の慣行を禁じ、かつ立法の十分な実施を確保するために具体的な法律を制定するよう勧告する。委員会はまた、この慣行の結果として生ずる危険性および害についてコミュニティを敏感にするために、さまざまなコミュニティと協力してさらなる意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。
35.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行するよう、勧告する。そのような文書は、政府、国民議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、広く配布されるべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年1月30日)。