総括所見:デンマーク(第1回・1995年)


CRC/C/15/Add.33(1995年2月15日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1995年1月19日および20日に開かれた第199回~第201回会合(CRC/C/SR.199, 200 and 201) においてデンマークの第1回報告書(CRC/C/8/Add.8)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1995年1月26日に開かれた第208回会合において。

A.序

2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された報告書に関して、かつ、デンマーク政府が委員会の事前質問票に対する文書回答を提出したことに関して、謝意を表する。委員会は、代表団が補完的な情報を提供したこと、および代表団が条約に関わる問題に関与していることにより、締約国との建設的対話に携わることが可能になったことに、満足感とともに留意するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は、1991年の条約の発効以降、子どもの権利を促進しかつ保護するためにデンマーク政府がとってきた措置を歓迎する。これとの関連で、委員会は、児童ポルノの所持を違法とする法律が採択されたことを歓迎するものである。委員会はまた、共同監護権、訪問権および他の関連の問題に関する規則についての立法の修正が提案されていることも歓迎する。
4.委員会は、政府の子ども委員会、および16省庁の公務員から構成される省庁間子ども委員会が存在することに、心強い思いで留意する。委員会は、子ども委員会が、デンマークにおいて最も弱くかつ最も傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもたちが直面している問題に対応するための行動計画を1994年に作成したことを歓迎するものである。さらに、この行動計画が、各自治体における多分野にまたがる協力を通じてこれらの問題に対応するためのプロジェクトの発展を意図していることが、留意されるところである。
5.委員会はまた、1993年6月に作成され、かつ国際開発援助に関わるものである「人権および民主主義」に関する政府の政策文書が、発展途上国における子どもが直面している問題に1章を割いていることに対しても、評価の意を表する。
6.同様に、委員会は、デンマーク政府によって当初3年間の予定で子ども評議会が創設されたことに、評価の意とともに留意する。この評議会は、とくに、条約の規定および原則を実施するためにとられた措置および採択された政策を、子どもの状況の変化に照らして振り返りかつ見直すことになるものである。
7.委員会はまた、1993年6月30日の法律第466号にしたがって設置された民族的平等委員会の委員が選任されたことも歓迎する。委員会はさらに、政府の都市委員会によって、難民および移民である子どものための社会援助および法律情報のシステムを設置しようという提案が行なわれていることに、意を強くするものである。

C.主要な懸念事項

8.委員会は、締約国が条約第40条2項(b)(v)に留保を行なっていることに懸念とともに留意するが、政府がその留保を再検討する可能性があることにも留意する。
9.委員会は、条約の原則および規定を子どもおよび大人に同様に広く知らせることを確保するためにとられた措置が充分かどうかについて、懸念する。
10.委員会はまた、子どもの権利条約の一部の規定および原則、とくに第3条、第12条、第13条および第15条で保障されているものが、国内の立法および政策立案において充分に反映されていないことも懸念する。
11.自己の出自を知る子どもの権利に関して、委員会は、人工授精に関わる締約国の方針と条約の規定との間に矛盾が存在する可能性があることに留意する。
12.委員会は、ひとり親家庭の割合が高いことに懸念を表明し、かつ、そのような家族の子どもに対して必要なケアを提供するための特別なプログラムおよびサービスの必要性があることに留意する。
13.委員会はまた、とくに、保護者のいない未成年者を含む子どもの事情聴取の方法、および、家族の再統合の領域に関する目的による申請が積極的、人道的かつ迅速な方法で対応されることを確保することとの関わりで、庇護を求める子どもに関する法律および政策の適用についても懸念する。
14.委員会は、庇護申請を却下されたが同国に残っているすべての子どもが、法的にではなく事実上のものとして提供される保健および教育への権利しか有していないことに留意する。この状況は、条約第2条および第3条の原則と全面的に両立するものではないというのが委員会の見解である。
15.委員会はまた、子どもの性的搾取および児童労働の問題が生じていることについても懸念を表明したい。

D.提案および勧告

16.委員会は、締約国に対し、条約への留保の撤回の可能性を検討するよう奨励したく思い、かつ、この件に関する進展を知らされたいと思うものである。
17.報告書のパラ14~21に記載されている情報は、子どもの権利条約が、子ども委員会および省庁間子ども委員会の作業の枠組みとしてまだ確立されていないということを示しているように思える。したがって、委員会は、締約国が、この2つの委員会の作業に関して、条約に対してそのような地位を与えることを検討するよう提案したい。
18.委員会はまた、子どもの権利条約を実施するためにとられた政策および措置を調整し、評価しかつフォローアップするために設置された国内機構が、地方の公的機関および自治体との密接な協力に基づいて作業すべきであるということを提案したい。加えて、委員会は、デンマーク政府に対し、子どもの権利に関わる問題に関与している非政府組織との協力を強化することを検討するよう奨励したい。
19.条約第3条および第4条の規定に照らし、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために、とくに最も傷つきやすい立場に置かれたグループの子どものために最大限可能な範囲で資源が配分されることを確保することの重要性を強調したい。この領域における監視機構は、とくに経済的後退の時期にあっては、子どもに対するサービスの提供、および社会支出の削減が子どもに与える影響との関わりであらゆる地方における平等を確保するために、不可欠である。委員会はまた、とくに障害児および特別な保護を必要とする子どものような傷つきやすい立場に置かれたグループのために、国際協力および国際援助をさらに強化することを検討するようにも提案する。
20.委員会は、締約国に対し、子ども評議会が子どもに関わる問題について独自に研究を行なえるようにするために同評議会に財源を提供する可能性を検討するよう奨励する。
21.委員会は、デンマークにおいて若者の自殺件数が比較的多い理由、および、条約で規定されたあらゆる権利の実施を監視するための社会的およびその他の指標の発展および活用を含めて、議論の過程で提起されたさまざまな問題はさらなる研究に値するのではないかということを提案したい。
22.委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定を子どもにも大人にも同様に広く知らせるために、継続的かつ体系的なアプローチを発展させるよう奨励する。加えて、委員会は、条約の原則および目的を、デンマークに暮らすマイノリティ、難民および移民のグループの主要な言語によって広く知らせるよう勧告する。
23.条約に関する意識を高めるために締約国が継続的に行なっている努力との関係で、委員会は、教員、ソーシャルワーカー、法執行官および裁判官のような、子どもとともにおよび子どものために働くさまざまな専門家グループの再研修プログラムおよび養成プログラムに、条約の原則および規定についての教育を体系的に編入するようにも提案したい。
24.委員会は、条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条が立法および政策に明確に反映されるべきであるということを強調したい。委員会は、締約国に対し、条約の規定および原則、とくに第3条、第12条、第13条および第15条に関わるものが国内の法律および手続に盛りこまれることを確保するために、立法を見直す可能性を検討するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、学校および地域におけるものも含めて、自己に影響を与える意思決定過程において子どもが意見を表明し、かつそれを考慮してもらえることを確保するための機構の確立について、さらに検討するよう提案したい。
25.条約第2条の実施との関連で、委員会は、難民および移民である子どもおよびHIVウィルスに感染した子どもまたはエイズにかかっている子どもも含めた、傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもに対する差別を防止しかつそれと戦うため、さらなる措置をとるよう提案する。
26.委員会は、とくに条約第18条に照らし、子育てにおける親の平等責任に関する意識を強化するためさらなる措置をとるよう勧告する。また、ひとり親の状況をさらに研究し、かつその特別なニーズを満たすために関連のプログラムを確立することも、提案されるところである。
27.委員会は、政府に対し、デンマークの養親家庭に措置された外国の子どもの状況をより注意深く監視するための措置をとるよう奨励する。加えて、委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准の可能性を検討するよう勧告するものである。
28.委員会はまた、家庭におけるものも含む子どもへの暴力を効果的に終わらせるためにさらなる措置をとるよう提案したい。
29.〔国連〕総会が最近、人権教育のための国連10年を宣言する決議46/184を採択したことを踏まえ、委員会は、締約国に対し、この機会を活用して、子どもの権利条約についての教育を学校カリキュラムに盛りこむことを促進するよう奨励する。委員会はまた、子どもの権利および人権を教えるための措置は、人種主義、外国人排斥、反ユダヤ主義および非寛容と闘うための欧州青年キャンペーンおよびそれに対応する北欧キャンペーンの目的をさらに唱道する道具として活用する可能性も提案したい。また、学校において用いられる教授法で条約の精神および哲学ならびに第29条に掲げられた教育の目的が反映されることが同様に重要であるということも、委員会の見解である。
30.難民である子どもおよび庇護を求めている子どもの状況との関連で、委員会は、締約国が、家族の再統合のための申請は積極的、人道的かつ迅速なやり方で対応されるべきであると規定した条約第10条の規定も含めた条約の規定および原則との両立性に関して、外国人法の見直しを検討するよう提案する。同様に、庇護申請の状況にある子どもたちへの健康サービスおよび教育サービスの提供に関して、委員会は、とくに「締約国は、その管轄下にある子ども1人ひとりに対し、……本条約に定められた権利を尊重しかつ確保する」と述べた条約第2条の規定に注意を促したい。
31.委員会は、締約国が、18歳未満の者に対する手続が条約第40条の規定と全面的に両立することを確保するため、少年司法制度の見直しを検討するよう提案する。
32.委員会は、締約国が、経済的および性的搾取の防止、そのような搾取からの子どもの保護、およびそのような子どもの社会復帰および回復に関する条約第32条、第34条および第39条の規定を実施するため、さらなる措置をとるよう勧告する。具体的には、児童労働の問題との関わりで、委員会は、政府に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准の可能性を検討するよう奨励するものである。
33.最後に、委員会は、デンマークの第1回報告書、同報告書が審査された委員会の会合の議事要録、および同報告書に関する委員会の総括所見を刊行することに対してデンマーク政府が前向きな姿勢を見せていることを評価し、かつ、これらの文書をデンマークにおいてできるだけ広く普及するよう勧告する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。