総括所見:ウクライナ(第3~4回・2011年)


CRC/C/UKR/CO/3-4(2011年4月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年1月28日に開かれた第1602回および第1603回会合(CRC/C/SR.1602 and 1603参照)においてウクライナの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)を検討し、2011年2月3日に開かれた第1611回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)および委員会の事前質問事項(CRC/C/UKR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、報告書の自己批判的性格によって締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことを称賛する。委員会は、締約国の部門横断型の代表団との建設的かつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/UKR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、以下の立法上その他の措置を積極的な対応として歓迎する。
  • (a) 後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律(2010年12月)。
  • (b) 児童ポルノ対策法(2010年1月)。
  • (c) 両親を失った子どもおよび親のケアを奪われた子どもの社会的保護に関する法律(2005年)。
  • (d) 子どものための国家行動計画法を通じた、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の策定。
  • (e) HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画(2010年5月)。
  • (f) 子どものホームレス化およびネグレクトの防止のための国家プログラム(2006~2010年)。
5.委員会はまた、以下の文書について批准または加入が行なわれたことにも、評価の意とともに留意する。
  • (a) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年2月)。
  • (b) 死刑の廃止を目指す、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(2007年7月)。
  • (c) 扶養義務に関する判決の承認および執行に関する条約(2007年4月)。
  • (d) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約(2007年4月)。
  • (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(2006年)。
  • (f) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2010年9月)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
6.委員会は、前回の締約国報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.191)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1)を実施するために締約国が行ない、前向きな成果をもたらしてきた努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の懸念表明および勧告の多くについて不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。
7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(資源配分、データ収集、条約およびその議定書との国内法の調和、拷問および不当な取扱い、少年司法の運営、家庭環境を奪われた子ども、性的搾取および虐待ならびにマイノリティ集団の子どもに関わるものを含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
立法
8.条約その他の国際条約と国内法との間に矛盾がある場合は前者が優越することを歓迎し、かつ子ども保護法(2001年)および児童養護の施設、サービスおよび専門施設に関する法律の改正(2007年)に留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する国内法が依然として不十分であり、条約およびその選択議定書を立法面でさらに実施する余地が相当あることを懸念する。
9.委員会は、締約国に対し、すべての国内法の包括的見直しを行なって条約の全面的一致を確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な子どもの権利法の採択を検討するよう、勧告するものである。
調整
10.委員会は、2010年12月に開始された行政改革(大統領令第1085/2010号)を背景として、子どもに関わる締約国の政策およびプログラムの持続可能性に課題が生じていることを懸念する。行政の改革および合理化の必要性は認めながらも、委員会は、家族・青少年・スポーツ省が解散し、その職務が教育科学・青少年・スポーツ省の下に置かれた国家青少年・スポーツ局に移管されたことおよび解散した省と結びついていた中央政府諸機構が解体されたことにより、子どもの保護の分野における既存の専門的および技術的能力が脅かされていることを、とりわけ懸念するものである。加えて委員会は、当該改革に先んじて、子どものケアおよび保護に関わる責任および職務の移譲についての明確な計画が策定されなかったことに、懸念とともに留意する。
11.委員会は、行政改革により、子どものための政策の効果的な調整および実施がさらに阻害され、かつもっとも危険な状況に置かれた子どもの支援、保護および防止のためのサービスが悪化する可能性があることを、懸念する。これとの関連で、委員会はさらに、子ども関連の国の政策の立案および実施に関わる行動を調整する省庁間子ども期保護委員会の役割が、特定の問題に関する情報交換に限定されているという報告があることを懸念するものである。委員会はさらに、同省庁間委員会が常設機関ではないことを遺憾に思う。
12.現在進行中の行政改革との関係で、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの権利について責任を負う中央および地方の政府機関についてその機能を包括的に見直すとともに、新体制において諸責任が適切に移譲されかつ明確に定義されることを確保すること。
  • (b) 政府の子ども政策の主要な優先事項、とくに児童養護改革の実施における継続性を確保すること。
  • (c) 改革にしたがって教育科学・青少年・スポーツ省による子ども政策の効果的調整を確保するとともに、これとの関連で省庁間子ども期保護委員会の役割および権限を見直すこと(高級レベルの国家機関を委員会の議長に指定することを検討し、かつ、省庁を横断した効果的調整を確保するために同委員会を常設機関とすること等の手段をとることも含む)。
  • (d) 前掲勧告の検討に際して国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めること。
国家的行動計画
13.委員会は、子どものための国家行動計画法を通じ、締約国が2009年に子どものための国家行動計画(2010~2016年)を採択したことを歓迎する。同法を実施するための2010年度国家プログラムが支持されたことには留意しながらも、委員会は、2010年に当該国家プログラムに配分された資金が限られていること(承認されたプログラム予算の0.3%)、および、実施面で限られた進展しか見られなかったことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、2011年については同法の実施のための資金拠出が保障されており、かつ、中央および地方のレベルで実施状況を監視するための一連の指標がユニセフの協力を得て開発された旨の、締約国代表団から提供された情報に満足感とともに留意する。
14.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の効果的実施を確保するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 国家行動計画を実施するための年次国家プログラムに対し、2016年まで十分な資金を配分するとともに、各年次の予算法で、同計画に対する資金拠出を独立の予算項目として確保すること。
  • (b) 省庁間子ども期保護委員会による諸活動の調整を確保すること等の手段により、子どものための国家行動計画の実施が効果的に監視されることを確保すること。
独立の監視
15.委員会は、議会の人権コミッショナーによって子どもの保護、平等および差別の禁止に関する特別代表が任命されたこと、および、コミッショナー事務所に子どもの保護およびジェンダーの平等担当部局が設置されたことに、積極的措置として留意する。委員会は、同コミッショナーが子ども・女性に対する暴力ならびに子ども・女性の人身取引を優先分野としたことを歓迎するとともに、ウクライナにおける子どもの権利の国による遵守および保護に関する同事務所の特別報告書(2010年)を称賛するものである。さらに、コミッショナー事務所が子どもの苦情を受理しかつ検討する権限を有しており、かつ同事務所のすべての部局にそのような苦情の審査を担当する専門家が1名ずつ配置されていることには留意しながらも、委員会は、条約およびその選択議定書の実施を審査するための具体的任務および十分な資源を与えられた独立の機構が存在しないことについての懸念(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ27)をあらためて表明する。
16.委員会は、子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関に地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがった個別独立の国家的機構を設置するために必要な措置をとるよう、強く勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が、ウクライナにおける子どもオンブズマンの導入に関する法律の採択を検討するよう、勧告するものである。委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがい、締約国が、この国家的国内機構に対してその独立性および有効性を確保するための十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。
資源配分
17.委員会は、官民の制度または組織を通じて子どもに用いられている国家予算の額および割合を体系的に明らかにするよう求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ18(d))が実施されていないことを懸念する。貧困削減・防止プログラム(2010~2015年)草案には留意しながらも、委員会は、子どもおよび子どものいる家族が当該草案で目立った扱いを受けていないことを懸念するものである。加えて委員会は、必要な社会サービスの資金拠出が個々の行政圏の財政力に基づいて行なわれていること、および、締約国もこの制度が適切に実施されていないと認めていることを、懸念する。
18.委員会は、締約国に対し、子どものための資源配分に関する政策および分析を向上させ、かつ、中央および地方のレベルにおける予算配分が実際のニーズおよび実施の有効性に相関して行なわれることを確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、貧困削減改革において、低所得家庭への社会的援助および手当ならびに子どもの保護に焦点が当てられることを確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、その際、子どものいる家族の貧困に対する具体的対応が貧困削減・予防プログラム(2010~2015年)で行なわれることを確保するよう、促す。
データ収集
19.委員会は、国家行動計画の実施を監督する開発情報(DevInfo)システムの設置等を通じ、子どもの保護政策を監視しかつ評価することを目的とする効果的なデータ収集システムを確立するために締約国が現在行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもに関する包括的なかつ細分化されたデータを備えた国レベルのデータベースが引き続き存在しないことを、依然として懸念するものである。とくに委員会は、拷問、ドメスティックバイオレンスその他の形態の虐待および不当な取扱いを受けるおそれがある子ども、性的搾取および虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団の子どもならびに子どもの難民および庇護希望者に関する統計が存在しないことを、懸念する。
20.委員会は、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身によって細分化された、子どもの権利の遵守に関する包括的データを備えた国レベルのデータベースを創設するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。とくに、当該システムにおいては、権利を侵害されやすい状況にあって特別な保護措置が必要な可能性のある子どもに十分な注意が向けられるべきである。
普及、研修および意識啓発
21.委員会は、条約に関する広報資料の現在の量が少なくかつ質も悪いこと、および、子どもに対応する専門家集団の研修が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表を対象とした子どもの権利に関する研修が限られていることを、懸念するものである。
22.委員会は、締約国が、公に配布するための条約に関する広報資料の量および質をさらに高めるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表に焦点を当てながら、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修を強化することも、奨励するものである。
市民社会との協力
23.子どもNGO連合が設置されたことおよび国家行動計画の策定に市民社会組織の積極的参加を求めたことなど、子どもの権利の保護における市民社会の役割の強化を目的とした措置は評価しながらも、委員会は、市民社会の代表との締約国の協力が、相当程度、国際機関または民間部門の団体との協力を通じて間接的に行なわれていることを、懸念する。
24.委員会は、締約国が市民社会との直接の協力を強化するよう勧告するとともに、締約国が、市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)が子どもの権利の促進および実施に積極的かつ体系的に関与することを求めかつ奨励するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ24)をあらためて繰り返す。これには、政策およびプロジェクトの計画段階ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成に市民社会が参加することも含まれる。

B.子どもの定義(条約第1条)

25.委員会は、前回の勧告にも関わらず、婚姻に関する法定最低年齢について男女間に差別があること(男子18歳・女子17歳)を懸念する。委員会はさらに、子どもの最善の利益にかなう場合には14~18歳の子どもの婚姻を登録することが民法で認められていることを懸念するものである。委員会はまた、性的同意に関する明確な法定最低年齢がまだ定められていない旨の懸念(CRC/C/15/Add.191、パラ25)も、あらためて表明する。
26.委員会は、締約国に対し、国内法で女子および男子双方について18歳が最低婚姻年齢とされることを確保するため、民法を改正するよう促す。委員会はさらに、締約国が、例外として認められている最低婚姻年齢を16歳に引き上げる目的で法律を見直すとともに、そのような例外的事情とは何なのかについて法律で明確に規定するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、性的同意に関する明確な法定最低年齢を確立するよう求める。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
27.委員会は、締約国で人種的動機に基づく犯罪の件数の増加が報告されていること、とくに過激な若者グループおよびスキンヘッズによる排外主義的および人種主義的活動の報告があることを懸念する。この流れで、委員会は、子ども団体および若者団体を支援する国の資金の配分において「愛国教育」が優先事項に挙げられるのが一般的であることを懸念するものである。委員会はさらに、差別の禁止の原則が、障害のある子ども、マイノリティ集団の子ども(とくにロマの子ども)、路上の状況にある子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもならびに子どもの庇護希望者および難民との関係で、実際上、全面的には実施されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの権利の保護との関連における差別の禁止の原則への明示的言及が国内法にないことを懸念するものである。
28.委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが、いかなる事由による差別もなく条約上の権利を享受することを確保するよう、促す。委員会はさらに、同国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 異文化間の対話、寛容および多様性の尊重を促進するプログラムを、子ども団体および若者団体を支援する国の資金拠出の優先的プログラムに挙げることなどにより、若者の人種主義的および排外主義的活動と闘うための効果的措置をとること。
  • (b) 前掲の集団に属する子どもの状況の監視を強化するとともに、これに基づき、これらの子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の集団の子どもに対するあらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。
  • (c) 差別の禁止の原則、および、条約第2条に掲げられたあらゆる事由に基づく子どもに対する差別の禁止を国内法に編入すること。
子どもの最善の利益
29.委員会は、国の政策およびプログラムが子どもの最善の利益の観点から体系的に分析されていないことを懸念する。とくに委員会は、親のケアを奪われた子どもおよび法に触れた子どもに関わる法律および政策への同原則の統合が不十分であることを懸念するものである。
30.委員会は、国の政策の計画およびプログラム立案の際、子どもの最善の利益が十分に考慮されることを確保するためのシステムおよび手続を確立するよう、勧告する。委員会はとくに、少年司法および児童養護制度に関わる法律、政策およびプログラムについて、そこに子どもの最善の利益が全面的に統合されることを確保する目的で見直しを行なうよう、勧告するものである。
生命、生存および発達に対する権利
31.委員会は、締約国の乳幼児死亡率、子どもの死亡率および妊産婦死亡率が依然として高いことを懸念する。産前ケアおよび分娩直後のケアを向上させるために現在行なわれている努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、2003年以降、乳幼児死亡率が上昇していることに懸念を表明するものである。加えて委員会は、赤ちゃんにやさしい妊産婦施設の数が限られており、農村部の保健施設の8%にしか達していないことを懸念する。
32.委員会は、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに関わる保健ケアサービスを強化することにより、乳幼児、子どもおよび妊産婦の死亡に対処するための努力を増強するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに従事する有資格の保健専門家を増員するとともに、これらの専門家が、子どもに敏感に対応する子育ておよび健康的なライフスタイルについての研修を受けることを確保し、かつこのような子育ておよびライフスタイルを促進するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、プライマリーヘルスケアにおける「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブの拡大を促進するよう勧告する。締約国は、このような取り組みにおいて農村部を優先するよう促されるところである。
子どもの意見の尊重
33.養子縁組との関係で子どもの意見を聴くことを認めた家族法の修正には積極的対応として留意しながらも、委員会は、民事上および行政上の手続ならびに少年司法の運営との関係では子どもの意見が依然として聴かれていないことを、懸念する。この流れで、委員会は、立法上、行政上および司法上の決定ならびに家庭および学校において子どもの意見の尊重がどのように保障されているかに関する情報がないことを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、2007年の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ6)を想起しつつ、コミュニティおよび公的生活への子どもの真正な参加が行なわれていないこと、および、締約国が、意思決定プロセスへの子どもの参加は依然として原則ではなく例外であると認めていることに、懸念とともに留意する。
34.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 司法上および行政上の手続の影響を受ける可能性がある子どもに意見を表明しかつ聴かれる権利を認めるため、民事訴訟法の改正を検討すること。
  • (b) 新たな「少年に関わる刑事司法の発展の概念」に、意見を表明しかつ聴かれる子どもの権利が公式に含まれることを確保すること。
  • (c) 意見を聴かれかつ表明する権利が教育法で明示的に規定されることおよび教育法が生徒評議会の設置について定めることを確保するため、教育法を見直すこと。
  • (d) 家庭、学校およびコミュニティにおいて意見を聴かれる子どもの権利の尊重の原則を促進し、その便宜を図りかつ実施するとともに、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を確保すること。

D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
35.子どもの登録を義務化した家族法改正は心強く思いながらも、委員会は、1か月以内に子どもを登録しなかった場合に非課税最低賃金の1~3〔か月〕分のの過料が科されることを懸念する。さらに、ロマの子どもが登録されないことは稀であるという締約国からの情報には留意しながらも、委員会は、教育、保健サービスおよび雇用にアクセスするために必要な身分証明書類を持たないロマが多いことに関する人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/UKR/CO/18、パラ11)をあらためて繰り返すものである。
36.委員会は、締約国に対し、民族および社会的背景に関わらずすべての子どもが無償のかつ義務的な出生登録を効果的に利用できることを確保するため、積極的誘引策をとるよう促す。委員会は、締約国がその際、親が子どもを登録しないことに対するいかなる懲罰的過料も廃止するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、ロマのすべての子どもの登録を奨励しかつ確保するための意識啓発キャンペーンを強化するよう、求める。
名前および国籍
37.委員会は、締約国報告書(CRC/C/UKR/3-4)パラ58で述べられているように、以下の事情があるときは子どもが締約国によって市民権を離脱させられる可能性があることに、懸念を表明する。(a) 子どもおよび少なくとも一方の親が国外永住のために出国し、かつ少なくとも一方の親がウクライナ市民権を放棄するとき。(b) 子どもが出生時にウクライナ市民権を取得し、かつ出生時に少なくともいずれかの親が外国人または無国籍者であった場合、当該市民権は、子どもの居所に関わらず、いずれかの親の申請によって離脱することができる。
38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国籍に対する子どもの権利、および、いかなる事由によってもかつ親の地位に関わらず国籍を剥奪されない子どもの権利を法律上も実務上も保障するため、法律を改正すること。
  • (b) 無国籍者の地位に関する1954年の条約および無国籍の削減に関する1961年の条約を批准すること。
表現ならびに結社および平和的集会の自由
39.委員会は、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保障されていない旨の締約国の情報に、遺憾の意とともに留意する。結社および平和的集会の自由に関して、委員会は、若者および子どもの公的団体に関する法律で、政治的な集会およびデモへの子どもの参加ならびに政治的および宗教的主義にのっとった子どもの結社(CRC/C/UKR/3-4、パラ62)が禁じられていること、および、このような規定は条約第15条2項に掲げられた制限の範囲と両立しない可能性があることを、懸念するものである。
40.条約第13条に照らし、委員会は、締約国に対し、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保護されることを確保するよう、求める。委員会はさらに、締約国に対し、条約第15条で保障された結社および集会の自由に対する子どもの権利との両立性を確保するため、若者および子どもの公的団体に関する法律の包括的見直しを行なうよう、促すものである。
拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰
41.委員会は、とくに地区警察署における最初の尋問の際に、子どもを含む被拘禁者が不当な身体的取扱いを受けているという訴えが相当数にのぼることを、深く懸念する。とくに委員会は、民警隊員が自白を引き出す目的で少年に対して行なう拷問および不当な取扱い、ならびに、ウクライナ国境警備隊による収容中に移住者の子どもに対して行なわれる拷問および不当な取扱いの訴えがあることに、重大な懸念を覚えるものである。委員会はさらに、家庭、学校、刑事制度および代替的養護の現場における体罰が禁じられているにも関わらず、家庭で体罰が広範に用いられているという報告があることを懸念する。この文脈において、子どもの権利に関するおよびこのような行為が禁じられていることに関する子どもおよび公衆の意識および理解の水準が低いことは、委員会にとって深刻な懸念の対象である。
42.委員会は、締約国に対し、子どもに対する拷問およびあらゆる形態の不当な取扱いを禁止しかつ撤廃するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 民警およびウクライナ国境警備隊の隊員を対象とした、拷問および不当な取扱いの禁止ならびに少年司法に関わる国際基準についての包括的研修を開始すること。
  • (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書に基づき、締約国が国レベルの防止機構を公式に設置するまでの間、「移動グループ/チーム」(CCPR/C/UKR/CO/6/Add.1、パラ11およびCAT/C/UKR/CO/5、パラ12参照)等による、自由を奪われた子どもに関する独立した監視を強化すること。
  • (c) 子どもに対する拷問または不当な取扱いが訴えられているすべての事件について迅速な、独立のかつ効果的な調査が行なわれることを確保するとともに、適当なときは犯罪者を訴追すること。
  • (d) 拷問および不当な取扱いを防止する法的保護措置の尊重を向上させる目的で、自由を奪われた子どもによる司法へのアクセスに関する研究を行なうこと。
  • (e) 前向きかつ非暴力的な子育てを促進する意識啓発キャンペーンおよび公衆の教育等を通じ、現行法の禁止規定の効果的実施を確保することにより、家庭その他の場におけるあらゆる形態の体罰を終わらせること。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
43.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299参照)に関して、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力し、かつその技術的援助を求めるとともに、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくに国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助も求めること。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
44.委員会は、出生時および子ども時代のその後の段階で家庭環境を奪われる子どもの割合が高いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家族法(第143条3項)が、重度の身体的または精神的障害をもって生まれた子どもおよびその他の「重要な事情」がある子どもの遺棄を許容していることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どものいる家族の保護および援助を目的とする国の機関の数が不十分でありかつ質が劣悪であること、ならびに、このような機関を監視しかつ評価するシステムが存在しないことを、深く懸念する。親の権利を停止する裁判所の判決がこの3年は減少していることに留意しながらも、委員会は、親の権利の剥奪が依然として多数行なわれており、家庭環境を奪われる子どもの人数が容認しえないほど多数にのぼっていることを憂慮するものである。
45.委員会は、締約国に対し、家族法第143項3項を改正して条約第9条と一致させるよう促す。委員会は、締約国に対し、とくに、親の義務の懈怠に関わる懲罰的措置から、子どもの養育責任を履行する能力の増進を目的とする、有子家庭のための支援システムおよび社会手当の強化へと移行することによって家族を強化するために必要な支援および資源を提供する努力を強化するよう、促すものである。これとの関連で、委員会は、代替的養護または施設への子どもの措置は最後の手段として、かつ子どもの最善の利益にかなう場合にのみ行なうべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ48(d))をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が、窮乏している家族(ひとり親を含む)に対する国のサービスおよび支援を効果的に監視しかつ評価するためのシステムを整備することも勧告するものである。
家庭環境を奪われた子ども
46.委員会は、貧困、失業、家族解体および労働移住によって家庭環境を奪われる子どもの人数が激増していることを、深く懸念する。子ども保護制度改革のための国家プログラムが承認されたこと(内閣決議第1242号)、および、里親家族および家庭型子どもホームのような代替的養護制度をさらに発展させるための取り組みが強化されていることには留意しながらも、委員会は、改革のための明確な戦略が存在しないため、焦点がいまなお脱施設化へと転換させられていないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、入所型養護のもとに留まっている子どもが多数にのぼること、および、家族の再統合のためのサービスが存在しないことを懸念する。委員会はさらに、とくに施設養護への子どもの措置を監視する子ども問題局の人的配置水準が不十分であることを懸念するものである。
47.委員会は、締約国に対し、子ども保護制度改革のための国家プログラム(内閣決議第1242号)にしたがって脱施設化政策を強化するとともに、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 拡大家族、里親家庭およびその他の態様の家庭型措置先への子どもの措置を拡大すること。
  • (b) 家族の再統合の促進を目的とした法令上の枠組みを強化すること。
  • (c) とくに子ども問題局の技術的資源、人的資源および財源を強化する等の手段により、子どもの養護に関わるすべての取り決め、とくに障害または特別なニーズを有する子どもの施設措置を効果的に監視すること。
  • (d) 上述の勧告の実施において、子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)〔PDF〕および「親のケアを受けていない子ども:緊急に行動する必要性」に関する欧州評議会議員会議決議1762(2010)を考慮すること。
養子縁組
48.委員会は、両親を失った子どもおよび家庭環境を奪われた子どもの国内養子縁組を奨励するための努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、実親がその同意の結果について十分な情報を提供されることを確保するための保障が存在しないこと、および、養親となろうとする者が自ら子どもを選択できることを含め、法律に乖離があることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が、委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ30)どおり、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないことを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、批准のための法案が2010年12月に提出され、議会による緊急の検討が求められた旨の情報を心強く思うものである。
49.委員会は、締約国に対し、実親が手続についておよび自己の子どもの養子縁組に対する同意の意味するところについて十分な情報の提供を受けることを確保するための法律を制定するよう、求める、委員会はさらに、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に加入するよう勧告するものである。
虐待およびネグレクト
50.2005年以降、家庭内暴力事案の統計的記録が作成されていること、および、子ども期保護法で子どもに対するあらゆる形態の暴力が禁じられたことには積極的対応として留意しながらも、委員会は、あらゆる場面で子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれており、かつ増加していることを憂慮する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの事案のうち通報および調査の対象となるものの割合が低く、かつこのような犯罪の訴追件数がきわめて限られていることも、懸念するものである。さらに委員会は、被害を受けた子どもおよび家族のすべての構成員(暴力を振るわない親または虐待もしくはネグレクトを行なう親を含む)が利用可能な心理社会的支援およびカウンセリングのプログラムを含め、親の責任の強化を目的とする保健上および社会上の防止措置が不十分であることを、懸念する。加えて委員会は、家庭外でのケア(特別教育および社会的更生のための施設を含む)で生じた虐待およびネグレクトの事案に関するものも含め、子どもの虐待に関する体系的な調査研究およびデータ収集が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はさらに、14歳以上の子どもが裁判所に直接保護を求める家族法(第18条)上の権利が周知されていない可能性があることを懸念する。
51.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう、促す。
  • (a) 子ども期保護法に関する公衆の意識を向上させ、ならびに、同法の違反を発見しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行官のスキルおよび能力を増進させる等の手段により、子ども期保護法の効果的実施を確保すること。
  • (b) カウンセリングおよび親としてのスキルの訓練のような防止措置をとり、かつ虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施すること。
  • (c) 被害を受けた子ども、虐待またはネグレクトを行なう親および他の家族構成員に対し、十分な保護、および心理社会的支援のような十分なサービスを提供すること。
  • (d) 子どもとともに働く専門家が、子どもの虐待およびネグレクトの発見ならびに子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる義務についての研修を受けることを確保すること。
  • (e) 子どもの虐待に関する包括的データを体系的に収集しかつ分析するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。委員会はさらに、虐待およびネグレクトの発生を少なくするための適切な措置を締約国が編成する際、かつ、虐待およびネグレクトが行なわれた事案に対応するための適切な責任追及の機構を設置する際、このようなデータが参考にされるべきことを勧告する。
  • (f) 子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で家族法第18条に関する意識を高めるための、焦点の明確な取り組みを促進すること。

F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
52.委員会は、障害のある子どもおよびその家族を対象とした教育サービス、社会サービスおよび保健サービスが依然として不十分であることを懸念する。とくに委員会は、知的障害のある子どが教育に平等にアクセスすることを確保するうえで多くの障壁が残っていること、および、早期介入および特別教育が行なわれていないために障害のある多くの子どもが施設に措置されていることを、遺憾に思うものである。さらに委員会は、子どもが障害の有無に関わらず生後3年間は乳児院に措置されており、かつこのような子どもが病状を有していると認定されるために、その発達および生活の質に悪影響が生じ、かつ施設化がさらに強化されることを懸念する。
53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ非政府組織と協力しながら、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもの権利を保護し、かつ、このような子どもが自分自身の家庭環境およびコミュニティ環境で教育サービス、社会サービスその他のサービスに平等にアクセスできるようにするための、包括的政策を策定すること。委員会は、締約国が、その際、知的障害のある子どもおよび若者ならびにその家族の健康に関するWHOヨーロッパ宣言(2010年にWHOヨーロッパ地域加盟国が支持)で強調されたすべての優先事項に対応するよう、勧告する。
  • (b) 子どもの施設措置を防止するため、親の組織と協力しながら、障害のある子どものための早期介入サービスおよびその家族に対する支援を発展させかつ強化すること。
  • (c) 障害のある子どもを対象とした入所施設におけるこれらの子どもの権利の状況を緊密に検討する監視システムを設置するとともに、当該監視において市民社会組織の参加が重視され、かつ行動に関する勧告をフォローアップするための具体的措置が組みこまれることを確保すること。
健康および保健サービス
54.委員会は、保健部門への予算配分額が低いまま(国内総生産(GDP)の3.6%)であり、無償の保健ケアサービスに関する憲法上の規定が絵に描いた餅となっていることを懸念する。現在進められている保健ケア改革および保健ケアに関する義務的社会保険法案には積極的対応として留意しながらも、委員会は、プライマリーヘルスケア制度の基盤が不十分であり、かつ保健ケアサービスの費用負担が高いために、貧しい家族、とくに農村部で生活している家族による保健サービスへのアクセスに悪影響が生じていることを、懸念するものである。同国の乳児死亡率および子どもの死亡率が高いことにかんがみ、委員会は、生後6か月までの乳児に対する母乳育児が減少していること、および、母乳代替品の販売促進に関する国際基準が十分に執行されていないことを懸念する。加えて委員会は、近年、公衆が予防接種に対する不信感を抱くようになっており、2009~2010年の子どもの予防接種率が急激に減少したという報告があることを懸念するものである。
55.条約第24条に照らし、委員会は、締約国に対し、保健部門への予算配分額を増やし、かつ資金の透明性を確保するよう促す。委員会は、現在進められている保健ケア改革において、プライマリーヘルスケア制度および農村部における保健サービスの質が優先されるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、母乳育児の促進を強化し、かつ母乳代替品の販売促進に関する国際基準を執行するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの予防接種に対するコミットメントを新たにするとともに、この点に関する事実に基づいた情報を一般公衆に提供することも、促すものである。
思春期の健康
56.若者の間で健康的なライフスタイル、責任ある親のあり方およびリプロダクティブヘルスを促進するクリニックが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、思春期の健康が悪化しており、かつクラミジアのような一部の性感染症が増加しているという報告があることを懸念する。委員会は、意識水準が低いこと、サービスが存在しないことおよび思春期の健康を専門とする保健実務家の人数が限られていることが主要な助長要因であることを懸念するものである。委員会はさらに、10代の妊娠中絶件数が多く、妊産婦死亡の主たる原因となっていることを懸念する。これとの関連で、委員会は、14~18歳の子どもの妊娠中絶に関わる決定が親と共同で行なわれることに留意するものである。
57.委員会は、締約国が、思春期の健康問題に関する包括的研究を実施するとともに、これを思春期の健康政策および学校カリキュラムにおけるプログラムを立案する際の基盤として活用するよう、強く勧告する。委員会は、このようなプログラムにおいて、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、10代の妊娠、危険な妊娠中絶および性感染症の予防に焦点が当てられるべきことを、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、とくに農村部において、思春期の保健ケアのための人員、便益およびサービスに投資するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、10代の妊娠中絶に関わる妊産婦の死亡を削減するために緊急の措置をとるとともに、妊娠中絶に関わる決定において子どもの意見が常に聴かれかつ尊重されることを法律上も実務上も確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国がユニセフの技術的援助を求めるよう勧告する。
精神保健
58.2009~2010年における精神医学的援助の向上を目的とする保健省令第176号が2009年に採択され、かつ児童精神医学がその優先課題のひとつに挙げられたことは歓迎しながらも、委員会は、成人および子どもと対象とする国レベルの包括的な精神保健政策が存在しないことを懸念する。委員会はさらに、子どもの自殺の件数が多く、とくに農村部で暮らしている子どもおよび男子がその影響を受けていることを懸念するものである。
59.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、外来および入院による子どもにやさしい児童精神保健サービスを含む)を備えた、包括的かつ全国的な児童精神保健政策を策定するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、学校で利用可能な心理相談サービスおよびソーシャルワーカーを増やす等の手段により、子どもおよび若者の自殺の防止を目的とした努力を強化することも、勧告するものである。委員会は、締約国がWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。
薬物、タバコ、アルコールその他の有害物質の使用
60.委員会は、子どもの間で薬物注射が行なわれることが増えており、とくに収監されている子ども、移住労働者の親に置いていかれた子どもおよび路上の状況にある子どもがその影響を受けていること、および、薬物の使用がHIV感染の主要な理由のひとつになっていることを、深く懸念する。委員会は、危険な状況に置かれたこれらの子どもの治療およびリハビリテーションを目的とする、若者にやさしい専門のサービスが存在せず、かつ、法律上および態度上の障壁によりそのようなサービスへのアクセスが妨げられていること(2011年1月18日付内務省麻薬執行局命令第40/2/1-106号など)を、深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の麻薬戦略(2010~2015年)においてこれらの問題が十分に考慮されておらず、かつ、薬物所持者に関する新たな規則によって、危険な状況に置かれた青少年が刑事司法制度と関わりになることが増える可能性があることも、懸念する。加えて委員会は、子どもに対するタバコおよびアルコールを販売を禁じた現行法が有効でなくかつ十分に執行されていないこととも関連して、子どもによるタバコおよびアルコールの使用が高率にのぼっており、かつ使用開始年齢が低いことを深く懸念するものである。
61.委員会は、締約国が、非政府組織と連携しながら、子どもおよび若者の薬物使用に関わる憂慮すべき状況に対応するための包括的戦略を策定し、かつ、条約にしたがった、科学的知見に基づく広範な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) HIV/AIDSに関する最近の立法上の進展、および、ユニセフの主導により成果を収めている、もっとも危険な状況に置かれた青少年を対象とする試行プログラムをもとに、子どもおよび若者を対象とする、薬物依存の治療および健康被害軽減のための、若者にやさしい専門的サービスを発展させること。
  • (b) 薬物の所持または使用を理由として子どもを犯罪者として扱う法律を改正する等の手段により、刑法によってこのようなサービスへのアクセスが妨げられないことを確保すること。
  • (c) 危険な状況に置かれた子どもとともに働く保健従事者および法執行官がHIV予防について十分な研修を受けること、ならびに、危険な状況に置かれた子どもに対する法執行官による虐待が捜査されおよび処罰されることを確保すること。
  • (d) 子どもに対するアルコールおよびタバコの犯罪を禁じた規定の執行を強化するとともに、子どもおよび若者による有害物質の使用および濫用の根本的原因に対処すること。
HIV/AIDS
62.委員会は、子どものHIV感染率およびAIDSに起因する死亡率が高いこと、ならびに、予防面の進展にも関わらず、母子感染率が依然として高いことを憂慮する。国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)および最近採択された後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律は歓迎しながらも、委員会は、2006年にはHIV/AIDSとともに生きている登録済みの子どもの半数強しか抗レトロウィルス治療を受けていなかった旨の情報(CRC/C/UKR/3-4、パラ108)が示すように、HIV/AIDSとともに生きる子どもがケアおよび支援のためのサービスにアクセスできていないこと、ならびに、HIV/AIDSに関わる必須の技術、設備および治療のための資金が限られていることを、懸念するものである。HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画には留意しながらも、委員会はさらに、もっとも危険な状況に置かれた15~19歳の青少年(薬物使用者、路上の状況にある子どもおよびセックスのために搾取されている子ども)がますますHIV/AIDSに感染しやすくなっていることを懸念する。委員会はまた、学校における、HIV/AIDSとともに生きている子どもに対する事実上の差別についても懸念を覚えるものである。
63.委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号を想起しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)およびHIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画の効果的実施を、これらのプログラムに対して十分な公的資金および資源を配分することによって、確保すること。
  • (b) HIV/AIDSの影響を受けているまたはHIV/AIDSのリスクに直面している子どもおよび若者(路上の状況にある子どもおよび有害物質濫用に苦しんでいる子どもを含む)の人権の尊重にとくに焦点を当てながら、後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律を実施するためにあらゆる措置をとるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしいサービスへのアクセスを確保すること。
  • (c) 青少年および一般公衆を対象とした、HIV/AIDSその他の賤感染症に関する広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを強化すること。
生活水準
64.家族、子どもおよび若者への支援が2010年度国家経済社会開発計画の社会的優先課題に挙げられていることは歓迎しながらも、委員会は、子どものための締約国の社会保護制度が不十分であることに重大な懸念を覚える。委員会は、多子家庭または3歳未満児のいる家庭の登録貧困発生件数が最大であることに、特段の懸念とともに留意するものである。汚職対策法案には評価の意とともに留意しながらも、委員会はさらに、締約国における汚職の水準が高いことを深刻に懸念する。
65.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、国家経済社会開発計画およびその後の貧困削減プログラムの実施に際し、子どものための国家行動計画を子どもに関する戦略的政策ツールとして位置づけるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、貧困戦略および保護のための戦略において、脆弱な立場に置かれた有子家庭をとくに明確な対象とするよう促すものである。汚職と効果的に闘う目的で、委員会は、締約国に対し、ウクライナにおける汚職の防止および汚職対策の原則に関する法律を遅滞なく採択するよう、促す。

G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
66.委員会は、学齢の子どもの人数が減少していることにより、教育施設がとくに地方で削減されており、かつ農村部にすんでいる子ども、ロマの子どもおよび障害のある子どもによる教育へのアクセスが制限されていることを懸念する。委員会はさらに、就学前教育施設の数が減少しており、子どもの61%しか就学前教育施設に就学していないことに、特段の懸念とともに留意するものである。締約国が教育に対する公的支出の水準を相対的に高いまま維持していること(GDPの6.2%)は認めながらも、委員会は、締約国において公教育制度に対する資金拠出が不十分であり、かつ教員の給与が低いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ30)をあらためて繰り返すとともに、教育インフラの質が貧弱であることについて懸念を表明する。
67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 教育部門に配分される支出の対GDP比を高めることにより、公教育制度に対して十分な資金が拠出されることを確保すること。
  • (b) 教育施設数および学校その他の教育機関に通う子どもの全般的人数が減少していることの原因およびこれに関して考えられる解決策についての分析を行なうこと。
  • (c) インクルーシブ教育を導入し、かつ特別なニーズを有する子どもの社会的統合を促進するとともに、脆弱な立場に置かれた集団の子ども(前掲の集団を含む)が教育制度において差別されないことを確保すること。
  • (d) 農村部における就学前教育および一般教育の利用可能性、アクセス可能性および質を高めること。
  • (e) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。
教育の目的
68.第9学年段階で人権教育が義務的とされていることには積極的対応として留意しながらも、委員会は、人権の尊重および促進ならびに異文化間の理解および寛容が締約国における教育の基本的原則としてとくに挙げられていないことを懸念する。委員会はさらに、学習上の困難、学校倦怠感、同じ学校の生徒との関係における心理的不安感および教員から拒絶されているという感覚を有する子どもが多数にのぼることにかんがみ、現行の教育制度が子どもの学習スキル、自尊感情および自信を十分に発達させていないことを懸念するものである。
69.委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムで勧告されているように人権教育に関する国家的行動計画を策定するよう、促す。これとの関連で、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国がユネスコ、ユニセフおよびOHCHRの援助を求めるよう勧告する。
休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動
70.委員会は、所得が不十分であること、文化的施設およびプログラムが設けられていないことおよび機会がないことを理由として、文化的生活および活動に参加できない子どもが多数にのぼることを懸念する。この流れにおいて、委員会は、子どもの間でテレビの視聴ならびにコンピュータークラブ通いおよびゲームセンター通いが増えていること、ならびに、これに応じて、効果的な監視制度が設けられていないために、そのような場所に子どもが訪れることについての規制が遵守されていないことを懸念するものである。
71.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息および余暇に対する子どもの権利、子どもがその年齢にふさわしいスポーツ、遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するよう、強く勧告する。とくに委員会は、締約国が、スポーツ、教育および文化的活動のための機関、便益およびプログラムの数を領域全体で増やすよう勧告するものである。

H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
72.難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案、および、保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案には留意しながらも、委員会は、医学的および心理的治療ならびに通訳のような国の援助およびサービスに対する子どもの庇護希望者および難民のアクセスとの関連で法律上および行政上の欠陥があることを、懸念する。委員会は、締約国が法定代理人を任命しないために、保護者のいない子どもおよび身分証明書類を持たない子どもの庇護希望者による庇護手続へのアクセスが制限されていることを、とりわけ懸念するものである。保護者のいない子どもの庇護希望者がときには数か月間にわたって収容され、かつ退去強制の対象とされていることは、委員会にとって特段の懸念の対象である。委員会はさらに、
15~18歳の子どもの難民数に関する公式な統計が利用可能とされていないことを懸念する。この流れにおいて、委員会はまた、締約国の出生登録手続が、条約第7条に基づく権利を子どもの庇護希望者に対して保障していない可能性があることも懸念するものである。
73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案を遅滞なく採択するとともに、当該新法において、認定難民の子どもに対して派生的に難民資格が保障されることを確保すること。
  • (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者が庇護手続ならびに援助および保護(無償の通訳へのアクセスを含む)に効果的にアクセスできるよう、このような子どもに対して迅速に法定代理人が任命されることを確保すること。
  • (c) いかなる子どもの庇護希望者または難民もその自由を奪われないことを確保すること。
  • (d) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案を採択すること。
  • (e) 難民および庇護希望者の登録に関わるデータ収集および情報保存のための効果的システムを設置し、かつ庇護希望者である子どもおよび難民に関する公式統計において18歳未満のすべての者が網羅されることを確保するため、迅速な措置をとること。
  • (f) 締約国で生まれた庇護希望者の子どもの出生登録およびこのような子どもに対する出生証明書の発行を確保するため、現行規則を改正すること。
児童労働を含む経済的搾取
74.締約国で最悪の形態の児童労働が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、インフォーマル経済および違法経済活動、とくに違法な炭鉱、セックス産業および路上物乞い組織で働く15歳未満の子どもの人数が多いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ21)をあらためて繰り返す。委員会は、対話の際に締約国代表団が認めたように、炭鉱で働く子どもの人数が多いこと、および、インフォーマル部門における児童労働の実態を明らかにするうえで課題が存在することを、依然として深く懸念するものである。委員会はさらに、子どもに関する現行労働法の違反(困難なおよび危険な条件下における子どもの雇用を含む)が大規模に行なわれていることを懸念する。ゴスナゾルトルーダ(Gosnadzortruda、国家労働法遵守監督局)が行なっている労働監察について事前質問事項に対する文書回答で提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、同局がインフォーマル経済部門、および家庭における児童労働を監視する権限を有していないことを懸念するものである。
75.委員会は、締約国に対し、とくにインフォーマル部門における搾取的児童労働を撤廃するためにすべての適当な措置をとるよう、促す。具体的には、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) ゴスナゾルトルーダが児童労働に関する法律の厳格な順守を確保する体系的かつ効果的な観察を行なえるようにするため、同局に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。
  • (b) ゴスナゾルトルーダの権限を拡大し、インフォーマル経済部門および家事領域も網羅することを検討すること。
  • (c) 児童労働撤廃国際計画が運用している児童労働モニタリングシステムの活用を通じ、インフォーマル部門における児童労働の監視を増進させること。
  • (d) とくに、ゴスナゾルトルーダおよび他の法執行機関の監察官を対象として児童労働に関する国際基準についての研修を行なうことを通じ、児童労働に関する現行法に違反した者に対して適用可能な制裁の効果的執行を確保すること。
  • (e) 違法な炭鉱で働く子どもならびに露天で石炭の分別および運搬に従事する子どもの特定に関してILO・条約勧告適用専門家委員会が行なった、最低年齢条約(1973年、第138号)に関する2010年の個別意見に掲げられた勧告を、締約国におけるこのような最悪の形態の児童労働をいかなるものであれ根絶する目的で、全面的に実施すること。
路上の状況にある子ども
76.委員会は、締約国も「深刻な」問題として認めている(CRC/C/UKR/3-4、パラ12)、路上の状況にある子どもの人数が多いことを深く懸念する。委員会は、このような子どもがHIV/AIDS、性的搾取、強制労働および警察による暴力のような、健康関連のリスク(有害物質および薬物の濫用に関わるものを含む)にさらされやすいという報告があることを、深刻に懸念するものである。これとの関連で、委員会は、路上の状況にある子どもの保護および社会的再統合のための社会サービス(衣服、宿泊所、保健ケアおよび教育の提供を含む)の利用可能性およびアクセス可能性が限定されていること、ならびに、薬物を濫用する子どもを対象とするリハビリテーションセンターの本格的ネットワークが存在しないという情報があることを、懸念する。委員会はさらに、路上の状況にある子どものためのシェルターの収容能力が著しく不十分であることを懸念するものである。加えて委員会は、路上の状況にある子どもの権利の保護およびその社会への再統合の促進に関して、非政府組織との協力が全般的に行なわれていないことを懸念する。
77.委員会は、締約国が、国際のおよび国際的な非政府組織と協力しながら以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが路上の状況に置かれることの防止、このような子どもの支援および社会的再統合のための国家的戦略を策定すること。
  • (b) 路上の状況にある子どもが利用可能なシェルターおよび心理社会的リハビリテーションセンターの数を増やし、かつその質を高めること。
  • (c) 路上の状況にある子どもの全面的発達を支援するため、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保すること。
性的搾取および虐待
78.委員会は、2010年に児童ポルノ対策法が採択されたことを、性的虐待からの子どもの保護の増進、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書との国内法の調和に向けたきわめて重要な一歩として歓迎する。さらに、刑法の改正によって売買春への関与に対する刑罰が引き上げられ、かつ被害者が青少年または若年であることが加重要素と位置づけられたこと(第303条)を歓迎しながらも、委員会は、締約国がまだ児童買春の明確な禁止を法律に編入していない旨の懸念(CRC/OPSC/UKR/CO/1、パラ17)をあらためて表明するものである。委員会は、これとの関連で、児童買春を含む売買春対策法案、および、選択議定書上のすべての犯罪に関わる地方政府の協力を強化するための訓令集に留意する。委員会はさらに、以下の点について重大な懸念を覚えるものである。
  • (a) 子どもの性的虐待、搾取ならびに売買春およびポルノ的資料への子どもの関与の事案数が増えていること。
  • (b) インターネットで児童ポルノを利用する者の人数が憂慮すべきほど多いこと(1か月あたり500万人)、および、ポルノ的ウェブサイトが締約国における全インターネット・トラフィックの70%を占めていること。
  • (c) これとの関連で刑事事件の手続が開始されることがきわめて少なく、かつ訴追の成功例に関する情報も存在しないこと。これとの関連で、委員会は、未成年者問題を担当する警察部局に十分な要員が配置されていないことの悪影響に、懸念とともに留意する。
  • (d) 性的搾取および虐待の被害を受けた子どもに援助を提供することをとくに目的とするリハビリテーションセンターの数が著しく限られていること。
  • (e) 性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもに関する、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身ごとに細分化された統計が存在しないこと。一方で委員会は、内務省がこの目的のためのデータベースを設置する計画であることに留意する。
79.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) とくに児童買春および他のあらゆる形態の子どもの性的搾取との関連で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と国内法とを調和させるための努力を引き続き増進させること。
  • (b) 開発情報(DevInfo)システムとの関連も踏まえながら、性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもに関するデータ収集のシステムを設置するとともに、この点に関わるデータベースを設置しようとする内務省の計画を進めること。
  • (c) 地方レベルで選択議定書上の犯罪を効果的に防止しかつこれと闘うための訓令集を採択するとともに、これとの関連で、性的虐待および搾取に関わるすべての防止活動および保護活動において、根本的問題である貧困に対応すること。
  • (d) 未成年者問題を担当する警察部局屁の技術的資源、人的資源および財源を増加させる等の手段により、性的搾取および虐待ならびに児童ポルノの事件を摘発しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行機関の能力を強化すること。
  • (e) 性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもへの援助の提供を専門とするリハビリテーションセンターの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。
  • (f) 前掲の勧告を実施するため、ユニセフその他のパートナーの援助を引き続き求めること。
売買、取引および誘拐
80.「未成年者」に関する特別規定を掲げた、人身取引に関する刑法第149条の改正には留意しながらも、委員会は、刑法がいまなお子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に一致していないことを、依然として懸念する。さらに、人身取引の分野で、人身取引対策国家プログラム(2007~2010年)の採択を含む多数の取り組みが行なわれていることは認めながらも、委員会は、ウクライナがヨーロッパにおける人身取引の最大の送り出し国のひとつであり続けていることを、依然として懸念するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの人身取引に関与した者の訴追に関する情報がないことを遺憾に思うとともに、必要不可欠な防止手段として、対象を明確にした広報およびのための意識啓発キャンペーンを行なう必要があることに留意する。
81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施のための規則を実施するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、当該措置に関して次回の定期報告書で報告すること。
  • (b) 子どもの人身取引および売買に関する国内法を選択議定書と一致させるための努力を引き続き行なうこと。
  • (c) とくに国外での仕事、モデル業、留学および美人コンテストへの参加の約束を通じて誘惑されることの危険性に焦点を当てながら、子どもの人身取引に関する広報および意識啓発のためのキャンペーンを強化すること。
  • (d) 内務省下のサイバー犯罪・人身取引対策局に対して必要な資源を配分する等の手段により、子どもの人身取引として訴えられたすべての事件の捜査を強化するとともに、責任者が裁判にかけられることを確保すること。
  • (e) ユニセフ、国際移住機関その他のパートナーの技術的援助を求めること。
ヘルプライン
82.委員会は、委員会が勧告した(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ34)ように、危険な状況に置かれた子どもまたは保護を必要とする子どものための無償のヘルプラインが設置されたこと(トラストライン、およびラ・ストラーダ・ウクライナが設置したものなど)を歓迎する。
83.委員会は、締約国が、非政府組織と協力しながら子どものためのヘルプラインをさらに強化しかつ拡大するとともに、これらのヘルプラインが、3ケタの番号であり、ヘルプラインにとっても利用者にとっても費用負担がなく、かつ24時間利用可能であることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども関連のプログラムおよび学校における情報提供により、利用可能なヘルプラインに関する子どもの意識を高めるよう勧告するものである。
少年司法の運営
84.子どものための国家行動計画(2010~2016年)に掲げられた少年司法制度体制は歓迎しながらも、委員会は、この点に関わる改革のペースが遅いことを懸念する。とくに委員会は、少年司法の発展の構想を実施するための作業部会が2010年4月に廃止され、この取り組みに代わって、ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想が導入された旨の情報に、懸念を覚えるものである。委員会は、法に触れた子どもに関わる懲罰的アプローチへの後退の危険性があることを深く懸念する。このような危険性は、子どもの未決拘禁および審判中の拘禁が頻繁に行なわれていること、収監刑を言い渡される少年の割合が高いこと、ならびに、収監者に占める子どもの割合が高いことにも表れているところである。委員会はさらに、刑法第102条1項および3項(e)に基づき、法に触れた16歳および17歳の子どもが最長15年という長期の収監刑の対象となることを懸念する。
85.加えて委員会は、刑事責任に関する最低年齢が14歳と定められているにも関わらず、締約国が、「社会的に危険な行動」をとった11~14歳の子どもを対象とする社会的更生施設を運営していることに、深刻な懸念を覚える。委員会はさらに、議会人権コミッショナーがこれらの施設を「特別少年拘置施設」と呼んでいること、および、2009年には1000人以上の子どもがこれらの施設に送致されたことに、最大の懸念とともに留意するものである。さらに、罪を犯した子どもの再非行率が高いことにかんがみ、これらの子どもの社会的再統合のためのサービスおよび支援(職員配置も含む)の水準が低いことは、委員会にとって特段の懸念の対象である。
86.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画に掲げられたとおりの少年司法制度を設置するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、新たな「ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想」およびその実施のために採択される予定の法律が、条約その他の関連の基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)に全面的にしたがったものとなることを確保するよう、促すものである。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 実際の少年司法制度が、懲罰的な制度から、可能なときは常に調停、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような自由の剥奪に代わる措置を促進する修復的な少年司法制度へと発展することを確保すること。
  • (b) 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)にしたがい、刑事責任に関する単一の年齢を法律により定め、かつ実務上も確立すること。
  • (c) 前号の勧告にしたがい、社会的に危険な行動を行なったという理由で有罪と認定された11~14歳の子どもが拘置されうる社会的更生施設の廃止を検討するとともに、ケアのための代替的措置を発展させること。
  • (d) 法律に触れた子どものための心理社会的リハビリテーションおよびプログラムを確保するため、家族、子どもおよび若者のための社会センターの専門家を対象とする研修の実施およびその増員等を通じ、社会的支援サービスを強化すること。
  • (e) 前掲の勧告の実施に際し、ユニセフを含む国連国別チームおよびOHCHRの技術的援助を求めること。
子どもの犯罪被害者および証人
87.刑事手続参加者の安全法の規定には留意しながらも、委員会は、国内法が刑事司法手続における子ども特有の保護措置について定めていないことを懸念する。たとえば、売春に関与した子どもは法執行機関および裁判所によって被害者として扱われるのが通例である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、これが法律によって義務づけられていないことを懸念するものである。
88.委員会は、締約国が、犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを法律上も実務上も確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、犯罪の被害者および証人である子どもは公的機関によってけっして犯罪者として扱われるべきではないという委員会の立場をあらためて表明するものである。
マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども
89.締約国に多数の民族的マイノリティが存在することにかんがみ、委員会は、民族的マイノリティが直面する問題を特定しかつ解決するための措置が締約国によってとられておらず、かつ、教育、雇用、住居および社会サービスへのアクセスに関わるこれらのマイノリティの状況に関するデータ収集システムが設けられていないことを、懸念する。委員会はさらに、民族的マイノリティに属する子どもに対して警察が行なう暴力を終わらせるための措置について、事前質問事項に対する文書回答に情報が記載されていないことを遺憾に思うものである。ロマの子どもを普通教育制度に統合するための努力には留意しながらも、委員会は、ロマおよびクリミア・タタールの子どもが教育、保健ケアその他の社会サービスにアクセスしようとする際の障壁が根強く残っていることを、懸念する。
90.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 人種差別撤廃委員会が勧告しているように(CERD/C/UKR/CO/18、パラ7)、反差別法案を遅滞なく採択すること。
  • (b) 締約国における民族的マイノリティの状況および当該マイノリティによる権利の享受についての包括的研究を行なうとともに、その研究の知見に基づき、自国の政策、措置および文書が差別なく適用され、かつ、その際、すべてのマイノリティに属する子どもの権利(条約上の権利を含む)の保護が目的とされることを確保するための介入策を発展させること。
  • (c) 普通教育および中等教育においてインクルーシブ教育体制を導入すること等の手段により、ロマおよびクリミア・タタールの子どもに焦点を当てながら、マイノリティに属するすべての子どもに対して教育への権利を確保するための努力を強化すること。

I.国際人権文書の批准

91.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。

J.地域機関および国際機関との協力

92.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約の実施に向けて欧州評議会と協力するよう、勧告する。

K.フォローアップおよび普及

93.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会(ヴェルホーヴナ・ラーダ)、関連省庁、最高裁判所および適用可能なときは地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
94.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

L.次回報告書

95.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年9月26日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求める。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
96.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。