総括所見:ウクライナ(OPSC・2007年)


CRC/C/OPSC/UKR/CO/1(2007年6月28日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2007年6月4日に開かれた第1247回会合(CRC/C/SR.1247参照)においてウクライナの第1回報告書(CRC/C/OPSC/UKR/1)を検討し、2007年6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、委員会の事前質問事項(CRC/C/OPSC/UKR/Q/1/Add.1)に対する文書回答および多部門型の代表団との建設的対話も評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2002年10月4日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.191)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書の批准(2006年)。
  • (b) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ第28号条約の批准(2006年)。
  • (c) 内務省における人身取引関連犯罪対策部局の創設(2005年)。
  • (d) 両親を失った子どもおよび親のケアを奪われた子どもの社会的保護のための組織的および法的条件(実施)法の施行(2005年)。
  • (e) 国際組織犯罪防止条約、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書および陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の批准(2004年)。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

子どもの権利条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)
5.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて締約国がとった措置の立案および実施において、子どもの権利条約の一般原則が考慮されていないことを懸念する。委員会はとくに、子どもに影響を与えるすべての事柄(政策およびプログラムを含む)について子どもの意見が正当に考慮されていないこと、および、このような状態が、意見を表明しかつその意見を正当に重視される子どもの権利の原則が十分に適用されていないことの結果である可能性があることを、懸念するものである。
6.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の規定を実施するために締約国がとるすべての措置(司法上または行政上の手続を含む)に、子どもの権利条約の一般原則、とくに意見を表明しかつ聴かれる子どもの権利が含まれるべきことを、勧告する。
国家的行動計画
7.委員会は、子どもの権利条約の規定の実施に関する国家行動計画(2006~2016年)草案に留意する。しかしながら委員会は、選択議定書に関わる分野を網羅した特別行動計画が存在しないことを遺憾に思うものである。
8.委員会は、締約国が、国家行動計画を速やかに採択するとともに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの犯罪を防止しかつ抑止するために必要な措置に関する特別行動計画を策定するよう、勧告する。その際、締約国は、第1回および第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム・1996年および横浜・2001年)で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントを考慮しながら、選択議定書のすべての規定を実施することに特段の注意を払うべきである。
調整
9.委員会は、選択議定書の実施の支援に関して、人身売買または人身取引との闘いに関する調整評議会およびさまざまな省庁その他の中央行政機関が行なっている心強い貢献に留意する。しかしながら委員会は、同調整評議会が全面的に稼働していないこと、および、さまざまな関係省庁間で選択議定書の実施が十分に調整されていないことを、懸念するものである。
10.委員会は、締約国が、人身売買または人身取引との闘いに関する調整評議会に対し、子どもの権利に関わる政策および活動を策定し、ならびに締約国による選択議定書の実施を調整しおよび評価する権限を与えるよう、勧告する。さらに、締約国が、同評議会に対し、同評議会が全面的に稼働できるようにするための具体的かつ十分な人的資源および財源を遅滞なく提供することも、勧告されるところである。さらに委員会は、地方レベルの調整能力を支援しかつ発展させる目的で、同調整評議会が地方の公的機関と緊密に協働するよう勧告する。
普及および研修
11.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する多数の広報キャンペーン、会議、セミナーおよび研修が組織されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書に関する関連の専門家集団および公衆一般の意識を領域全体で高め、かつ選択議定書のすべての分野に関する十分な研修を行なうための努力が不十分であることを、依然として懸念するものである。
12.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団(警察官、検察官、裁判官、医療職員および選択議定書の実施に従事する他の専門家を含む)を対象とする研修資料および研修コースを全国で開発することに対し、十分な資源を使途指定のうえで配分するよう、勧告する。さらに、議定書第9条2項に照らし、委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび長期的な意識啓発キャンペーン(メディアも含む)、ならびに、防止措置および選択議定書に掲げられたすべての犯罪の有害な影響に関する研修を通じて、選択議定書の規定をとくに子どもおよびその家族に対して広く知らせるよう、勧告するものである。これとの関連で、コミュニティおよびとくに子ども(被害を受けた子どもを含む)の参加を奨励することが求められる。
データ収集
13.委員会は、子どもの権利条約の実施および選択議定書で対象とされている具体的問題に関する統計データの収集、ならびに、国内のおよび国境を越えた人身取引の広がりに関する調査研究において、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関するデータが依然として不十分であることを、遺憾に思う。
14.委員会は、締約国が、ウクライナのすべての地域(さまざまなオーブラスチ〔州〕およびクリミア自治共和国を含む)ならびにコミュニティを網羅し、かつとくに年齢および性別ならびに都市部および農村部の別によって細分化されたデータが体系的に収集され、かつ適切な行動のために分析されることを確保するため、中央集権化されたデータ収集基盤を設置するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、問題の原因および規模を明らかにするため、あらゆる形態の子どもの搾取(買春およびポルノを含む)の性質および規模についての調査研究を行なうよう、奨励するものである。さらに委員会は、締約国に対し、行なわれたプログラムおよび研修の有効性および効率性に関するデータならびにこれらの活動に関与した子どもについての情報を収集するよう、奨励する。
予算配分
15.委員会は、締約国が里親養護支援プログラムに資金を配分していることには留意しつつも、締約国が家族支援に対しては十分な予算配分を行なっておらず、かつ、子どもを施設に措置するプログラムに対して不相応な配分が行なわれていることを、遺憾に思う。委員会はさらに、締約国が、選択議定書の規定を実施するための活動に対する政府の資金拠出についての包括的データを提供できなかったことを、遺憾に思うものである。
16.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施を目的とするすべての活動(家族への支援を含む)に対して十分な資源(予算の配分を含む)を速やかに提供するよう、促す。さらに委員会は、締約国が、子どもの権利条約に基づく次回の定期報告書で、選択議定書の規定を実施するための活動に対する政府の資金拠出(さまざまな政府省庁および地方当局による数値化可能な支出を含む)についてのデータを提供するよう、勧告するものである。

2.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止

現行刑事法令
17.委員会は、選択議定書が国内法に優越することに留意するとともに、子どもの人身取引、子どもの売買に関する刑事責任、子どもに売春を強要しまたは子どもを売春に関与させることならびにポルノ的資料の製造、販売および配布に関する規定が刑法に含まれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの禁止が選択議定書第2条および第3条に全面的に一致する形で刑法に含まれていないことに、留意するものである。
18.委員会は、少なくとも、選択議定書第2条および第3条に列挙された行為および活動が、これらの行為が国内でもしくは国境を越えてまたは個人的にもしくは組織として行なわれたか否かに関わらず刑法で全面的に対象とされることを確保するため、締約国が刑法の規定を改正するための措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、国内法体系と議定書との不一致および乖離を明らかにするための法的研究を行なうとともに、国連児童基金その他の関連の国際機関の援助を求めるよう、勧告するものである。

3.刑事手続

裁判権
19.委員会は、双方可罰性に関する情報がないことを遺憾に思う。
20.委員会は、締約国が、国外で行なわれた犯罪に関する犯罪人引渡しおよび(または)訴追について国内法で双方可罰性が要求されないことを確保するよう、勧告する。

4.被害を受けた子どもの権利の保護

少年司法
21.子どもを専門に担当する裁判官制度の導入が予定されていることには留意しながらも、委員会は、選択議定書関連犯罪の被害を受けた子どもにも対応できる独立の少年司法制度が存在しないことを懸念する。
22.委員会は、締約国が子どもを専門に担当する裁判官制度を迅速に導入するよう勧告するとともに、子どもの権利条約に基づく総括所見(CRC/C/15/Add.191)をあらためて繰り返し、締約国に対し、国際基準にしたがった独立の少年司法制度を設置するよう促す。
23.委員会は、選択議定書で対象とされた犯罪の被害を受けた子どもがしばしばスティグマを付与され、社会的に周縁化されており、ならびに責任を問われ、審判および拘禁措置の対象とされる可能性がある旨の情報について懸念を覚える。
24.委員会は、締約国が、搾取および虐待の被害を受けた子どもが犯罪者としての扱いも処罰も受けないこと、および、これらの子どもに対するスティグマおよびその社会的周縁化を回避するためにあらゆる可能な措置がとられることを確保するよう、勧告する。
選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
25.委員会は、売買、買春およびポルノの被害を受けた子どもの身体的および心理的回復のためのさまざまな措置が提供されていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書第8条の規定が締約国の関連の法律およびプログラムに十分に統合されていないことを懸念するものである。とくに委員会は、被害者の地位が刑法で十分に定義されていないこと、被害を受けた子どもの尋問中の身体的および心理的圧力について明確かつ十分な制裁が定められていないことを懸念する。さらに委員会は、十分な制裁が定められている場合でさえ、当該制裁がほとんど執行されていないことを懸念するものである。
26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 選択議定書第8条1項に照らし、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)を考慮することによって、刑事司法手続のあらゆる段階で子どもの被害者および証人を保護すること。
  • (b) 選択議定書第9条3項にしたがい、被害を受けた子どもが、資格のある職員によって提供される十分なサービス(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)を利用できることを確保するため、非政府組織および国際機関と引き続き連携すること。
  • (c) 心理社会的リハビリテーションサービスを提供している施設において敬意のある環境および子どもの権利の尊重が確保されるよう、これらのサービスの質を向上させるために十分な資金を配分するとともに、リハビリテーションサービスの業績成果および質を監視すること。
  • (d) 選択議定書第9条4項にしたがい、この議定書に掲げられた犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。
  • (e) 犯罪者が処罰され、かつ被害者が賠償を受けることを確保するため、法律の規定を十分に執行すること。
子どもオンブズマン
27.委員会は、子どもの権利条約およびその選択議定書の実施状況を審査し、または子どももしくはその代理人の苦情を受理しかつ検討する権限を与えられた独立の機構が存在しないことを懸念する。
28.委員会は、締約国が、パリ原則にしたがって、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮しながら、独立した効果的な子どもオンブズマンを設置するよう勧告する。当該機関に対しては、とくに、子どもおよびその代理人の苦情申立てに子どもに配慮した迅速なやり方で対応し、かつ選択議定書上の子どもの権利の侵害に対して救済を提供する任務が与えられるべきである。これとの関連で、委員会はさらに、この機関に対し、その任務を効率的にかつ迅速に遂行するための十分な人的資源および財源を提供することを勧告する。

5.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止

養子縁組目的の売買の防止
29.委員会は、新養子縁組法および国際養子縁組の管理強化に関して行なわれている取り組みについての政府の情報に留意するとともに、締約国が、より多くの国内養子縁組を可能にする措置を導入したことに留意する。しかしながら委員会は、合法的養子縁組のための手続の透明性を妨げる汚職関連の要因がいまなお多数存在することを、遺憾に思うものである。
30.委員会は、締約国に対し、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に加入するよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約第21条、選択議定書第3条および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を考慮に入れることによって養子縁組のための子どもの売買と闘うため、汚職対策の措置を継続しかつ執行するよう勧告するものである。
選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置
31.委員会は、選択議定書に掲げられた犯罪を防止するために締約国およびとくに内務省が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの搾取(買春、ポルノ、および強制労働に子どもを関与させることを含む)に対抗する、焦点の明確な防止措置ならびに問題の原因および規模を明らかにするための措置が依然としてとられていないことを、懸念するものである。
32.委員会は、締約国に対し、さらに焦点の明確な防止措置をとるとともに、選択議定書で対象とされているすべての分野に関する意識啓発キャンペーンの実施に関して国際機関および非政府組織と協力するよう、奨励する。とくに委員会は、締約国に対し、問題の根本的原因および規模を明らかにする目的で、これまでにとられた行動の効果ならびに子どもの搾取(買春およびポルノを含む)の性質および規模に関する調査研究を行なうよう、奨励するものである。委員会はさらに、締約国が、選択議定書で対象とされている分野におけるいっそう効果的な防止のため、国連児童基金その他の国際機関の技術的援助を求めるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、インターネット上の児童ポルノに関するインターネット・サービス・プロバイダの義務についてとくに定める法律の採択を検討するよう、奨励するものである。
33.委員会は、全国で子どものためのシェルターが設置されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書に掲げられた犯罪の被害を受けるおそれがある子どもおよびその家族を対象とするヘルプラインおよび緊急の心理的援助その他の援助のような、防止のために機能しうる他のサービスが存在しないことを懸念するものである。
34.委員会は、締約国が、3ケタの番号で24時間かけることのできる、被害を受けた子どもおよびその家族を援助するためのフリーダイヤルのヘルプラインを設置するとともに、売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けることから子どもを保護するための、容易に利用可能かつ十分な心理的援助および実際的体制によって当該サービスを支援するよう、勧告する。ヘルプラインに関して、委員会は、これが国全体で利用可能とされること、および、締約国が子ども関連のプログラムにヘルプラインに関する情報を含めることを勧告するものである。

6.国際的な援助および協力

法執行
35.委員会は、締約国が、いくつかの国と二国間協定を締結していること、および、この選択議定書で禁じられた犯罪との闘いに関する国際協力を増進させる目的で国連児童基金、欧州安全保障協力機構その他の関連の国内組織および国際機関と緊密に協力していることを、歓迎する。
36.委員会は、締約国に対し、犯罪を防止しならびに犯罪者を訴追しおよび十分な制裁を科す目的で、他の国々との法律上および実務上の協力を引き続き確立するよう、奨励する。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しおよびこれと闘い、ならびに、適当なときは国外に連れ出された被害者および他国出身の子どもの補遺会社の送還およびリハビリテーションを援助する目的で、締約国が、他の国々および国際機関との地域的および国際的な司法共助、捜査共助および被害者中心の協力活動を強化することも、勧告するものである。

7.フォローアップおよび普及

フォローアップ
37.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の内閣、ヴェルホーヴナ・ラーダ(議会)、オーブラスチ(州)およびクリミア自治共和国に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
38.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

8.次回報告書

39.選択議定書第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される第3回・第4回統合定期報告書(提出期限2008年9月26日)に記載するよう要請する。


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