総括所見:ベラルーシ(第1回・1994年)


CRC/C/15/Add.17(1994年2月7日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1994年1月25日および26日に開かれた第124回~第126回会合(CRC/C/SR.124-126) においてベラルーシの第1回報告書(CRC/C/3/Add.14) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1994年1月28日に開かれた第130回会合において。

A.序

2.委員会は、ベラルーシ政府による条約の批准を歓迎する。委員会は、締約国との対話に携わる機会が持てたこと、および、条約に基づいて提出された第1回報告書に記載されたもの以上の情報を提供しようと締約国が努力したことを評価するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は、ベラルーシがすべての主要な国際人権文書の締約国であることを認める。また、締約国が、子どもが直面する問題に対応する努力のなかで「子どもの権利法」を最近採択し、かつその他の他の立法上および行政上の措置をとったことも留意されるところである。このことは、条約にもとづく義務を締約国が重視していることを示している。
4.委員会はまた、締約国が、子どもの権利を実施するための適切な機構を発展させるうえで助言および技術的援助を求めることに前向きな姿勢を見せていることにも留意する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

5.委員会は、条約の規定を実施するうえで締約国が深刻な障害に直面していることを認識する。委員会は、重大な政治的変化が法体系および社会一般に影響を与えてきたことに留意するものである。委員会はさらに、移行期の経済に関わる問題、および、貧困の拡大および失業の増加の結果による子どもの状況の悪化に留意する。委員会はまた、チェルノブイリ原発事故が環境および子どもも含む住民の健康に与えた悪影響に対抗するうえで、締約国が大きな困難を経験していることも認識するものである。

D.主要な懸念事項

6.委員会は、国内法、措置およびプログラムが、とくに権利の主体としての子ども観、家族教育および親の平等責任のような問題に関して、条約の規定および原則と全面的に両立しているかどうかについて懸念を表明する。さらに、委員会は、義務教育の修了年齢(15歳)と最低労働年齢(16歳)との間に乖離が存在するように思えることを懸念するものである。
7.委員会は、社会でもっとも不利な立場に置かれているグループの子どもが特定され、かつ、このような子どもが条約にもとづいて保障されている権利の後退を防止するための充分なセーフティ・ネットが存在することを確保するためのプログラムがそのような子どもを対象として行なわれているかどうかを懸念する。非都市部の子どもの状況も一般的な懸念の対象である。
8.委員会は、子どもの施設措置の慣行が、正反対の政策が採用されたにも関わらず続いていること、および、国際養子縁組の数が、まだ比較的少ないとはいえ増加していることを懸念する。
9.委員会は、とくにチェルノブイリ原発事故以降の子どもの健康状態、地方分権化された予防保健よりも治療保健のほうが優先されているように思えること、母乳育児の普及率が低いこと、および、中絶が多数行なわれていることに懸念を表明する。
10.特別な保護措置を必要とする子どもに関しては、少年司法の運営に関わる状況が委員会の一般的な懸念の対象である。委員会はまた、労働を通じての搾取から子どもを保護するための充分な措置がとられていないこと、子どもの性的搾取の問題が現れてきていること、および薬物濫用の問題について懸念を表明する。

E.提案および勧告

11.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施および監視を調整する常設機関を設置する可能性を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が子どものための国内行動計画を優先事項として作成するよう勧告するものである。委員会は、条約の規定および原則、とくに第2条、第3条、第4条、第6条および第12条がこの計画に全面的に統合されることを望む。
12.委員会はまた、子どもの権利を保護しかつ促進する活動に非政府組織が現在よりも相当に強力に関与するよう望むものである。
13.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)および国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の加盟国となるよう、希望を表明する。同様に、委員会は、家族婚姻法を早期に制定すること、および、締約国における家族の崩壊という深刻な問題に対応するために適切な措置をとる必要性が同法で考慮にいれられるべきことを勧告するものである。
14.委員会は、プライマリーヘルスケアの活動がいっそう重視されるよう望む。この活動には、家族教育、家族計画、性教育および母乳育児の利点といった問題を対象とする教育プログラムの発展も含まれることになろう。同様に、委員会は、子どもも含む公衆一般のあいだでこのような問題に関する意識を発展させるため、コミュニティ・ヘルスケアワーカーの研修を訓練する。加えて、委員会は、情緒障害の子どもおよび外的心傷を負った子どものためにリハビリテーションおよび再統合のプログラムを発展させるよう勧告するものである。
15.委員会は、締約国が、子どものための社会保障を提供するためにとった措置が充分かどうか評価するよう勧告する。委員会はまた、プログラムを行なうさいには非都市部の子どもおよび都市部の子ども双方のニーズに注意深く対応したものにすること、および、もっとも不利な立場に置かれたグループの子どものために充分な社会的セーフティ・ネットを整備することを提案するものである。
16.労働を通じた子どもの搾取の危険が相当に存在していることにかんがみ、とくに最近国内法が改訂されたことに照らして、委員会は、この問題に緊急に対応し、かつ条約およびとくに子どもの最善の利益に関する第3条に沿って必要な措置をとるよう提案する。
17.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に関する公衆一般の意識を発展させる努力において、締約国の報告書、議事要録および委員会の総括所見を入手可能とするよう勧告する。
18.委員会は、国際社会に対し、とくに、国内法および措置を子どもの権利条約と調和させ、子どもの権利に関する調整機関を発展させ、かつ、子どもの権利のためのプログラムの対象設定、政策の主要な方向性および資源の動員についての判断を行なうための締約国の努力に関して、技術的援助および助言を提供するよう奨励する。ユニセフ、WHO、〔国際連合〕人権センターその他の関心ある機関の技術的援助を求めることが提案されるところである。委員会はまた、チェルノブイリ原発事故の結果に対処するための措置に対する国際的支援も奨励する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。
最終更新:2011年12月26日 07:33