総括所見:フィジー(第1回・1998年)


CRC/C/15/Add.89(1998年6月24日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1998年5月25日に開かれた第461回および第462回会合(CRC/C/SR.461-462)においてフィジーの第1回報告書(CRC/C/28/Add.27)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1998年6月5日に開かれた第477回会合において。

A.序

2.委員会は、委員会が設定したガイドラインに従った締約国の第1回報告書、および事前質問リスト(CRC/C/Q/FIJ/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。これにより、委員会は締約国における子どもの権利の状況を評価することが可能になった。委員会はまた、締約国の代表団との率直な、自己批判的なかつ協力的な対話も歓迎するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は、締約国において、子ども調整委員会(CCC)、保健社会福祉省の子ども部、および警察庁の児童虐待部のような、子どもの権利に関するいくつかの行政機構、監視機構および保護機構が最近設置されたことを評価する。
4.委員会は、CCCおよび締約国報告書の作成への非政府組織の参加に、評価の意とともに留意する。
5.委員会は、子どもポルノグラフィーの防止に関する1997年の子ども法改正に留意する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

6.委員会は、締約国が特別な性格を有していること、330の島々から構成されている地形であること、人口が比較的少なく、かつそれが多様なかつ点在する共同体によって構成されていること、および経済構造が最近変化したことに留意する。

D.主要な懸念事項

7.法改正の分野で締約国が構想している措置には留意しながらも、委員会は、締約国の立法と条約の原則および規定とを調和させる必要があることに懸念を表明する。これとの関連で、委員会はまた、子ども青少年法の制定プロセスのペースが遅いことも懸念するものである。
8.既存の調整機構および監視機構のことは承知しながらも、委員会は、とくにマイノリティ・グループに属する子ども、施設ケアのもとで暮らす子ども、女子、および農村部で暮らす子どもを含む最も傷つきやすいグループの子どもたちに対応した、条約が対象とするすべての領域に関する体系的な、包括的なかつ細分化された質的および量的データの収集機構が存在しないことを懸念する。
9.委員会は、子どものためのオンブズパーソンまたはコミッショナーのような、子どものための独立した苦情申立ておよび監視の機構が存在しないことを懸念する。
10.委員会は、子どもの利益のために用いられる資源の予算配分に関する優先領域を特定するにあたって締約国が行なっている努力にも関わらず、条約の規定の全面的実施のための人的および財政的資源の配分が不充分であることを懸念する。
11.条約を普及し、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家に対して条約の規定および原則に関する研修を行ない、かつ条約をフィジー語およびヒンズー語に翻訳するための締約国の努力は認めながらも、委員会は、これらの措置は不充分であるとの見解に立つものである。委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに対する充分なかつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。
12.委員会は、締約国が、立法、行政上のおよび司法上の決定、ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて、条約第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に掲げられた一般原則を全面的に考慮に入れていないように思えることを、懸念する。
13.委員会は、女子16歳・男子18歳に設定されている最低婚姻年齢が差別的でありかつ条約の原則に反することに対し、懸念を表明する。
14.条約第2条の実施に関しては、とくに教育および保健サービスへのアクセスとの関わりで、すべての子どもが条約で認められた権利を全面的に享受することを確保するためにとられた措置が不充分である。一部の傷つきやすい立場に置かれたグループの子ども、とりわけ女子、障害児、農村部またはスラムに暮らす子どもおよび婚外子のことがとくに懸念される。これとの関連で、委員会は、法律において「非嫡出子」(婚外子)という用語が用いられていることは、条約第2条に掲げられた差別の禁止の原則に反すると考えるものである。
15.委員会は、出生登録システムが、条約第7条のあらゆる要求に一致していないことを懸念する。
16.体罰の使用を法律により禁止するためにCCCがフィジー法改正委員会に提出した発議のことは承知しながらも、委員会は、体罰がいまだに親によって用いられていること、および、学校内部規則が、とくに条約第3条、第19条および第28条にしたがってこの有害な慣行を禁ずる明示的規定を掲げていないことを、依然として懸念する。
17.委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)に関する意識が不充分でありかつ情報が存在しないこと、法的保護措置ならびに適切な財政的資源および人的資源が不充分であること、および、このような虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された職員が存在しないことを、懸念する。
18.養子縁組に関する現行法が再検討されていることは承知しながらも、委員会は、現行法が条約の原則および規定を反映しておらず、かつ不法移送および不返還から子どもを効果的に保護していないことを、懸念する。
19.乳児死亡率および5歳未満児死亡率を削減するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、栄養不良が蔓延していること、妊産婦死亡率が高いこと、離島において保健サービスへのアクセスが限られていることを、なお懸念する。
20.青少年の健康の分野で締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、若年妊娠率が高くかつ増加していること、青少年の間で性行為感染症が発生していること、10代の自殺が生じていること、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービス(学校外におけるものも含む)への10代によるアクセスが不充分であること、およびHIV/AIDSの予防措置が不充分であることを、とくに懸念する。
21.障害児の状況に関して、委員会は、保健、教育および社会サービスに対するこのような子どもの効果的アクセスを確保し、かつ社会への彼らの全面的インクルージョンを促進するために締約国がとった措置が不充分であることに、懸念を表明する。委員会はまた、障害児とともにおよび障害児のために働く、充分に訓練された専門家の人数が少ないことも懸念するものである。
22.義務的初等教育制度が1997年に段階的に確立されたことには留意しながらも、委員会は、この制度がまだ全面的に実施されていないことを懸念する。委員会はまた、脱落率が高いこと、および質の高い教育へのアクセスが不平等であることに関して懸念を表明するものである。委員会はさらに、締約国において公的な就学前学校制度が存在しないことを懸念する。
23.委員会は、現行の最低就業年齢(12歳)が低いことを懸念する。委員会は、児童労働、および子どもの性的搾取も含む経済的搾取に関するデータが存在しないことを懸念するものである。
24.委員会は、締約国の子どもにますます影響を与えつつある薬物およびアルコールの濫用の問題に対応するための措置が不充分であることを懸念する。
25.委員会は、不当な取扱い、性的虐待および経済的搾取の対象となった子どものリハビリテーションの措置が不充分であること、および司法制度に対する彼らのアクセスが限られていることに、懸念を表明する。
26.少年司法の運営が子ども法によって規制されていることには留意しながらも、委員会は、この法律が条約第37条、第40条および第39条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のような他の関連の基準と全面的に両立しているかどうかについて懸念する。とくに委員会は、ケア・センターの子どもを対象とした法律相談が行なわれていないこと、身柄拘束が最後の手段として用いられていないこと、および拘禁センターの状態が劣悪であることを懸念するものである。最低刑事責任年齢に関して、罪を犯した10歳以上17歳未満の少年が特別な司法手続を享受することは承知しながらも、委員会は、最低刑事責任年齢が低い(10歳)ことをとくに懸念する。17歳以上18歳未満の子どもが少年司法制度のもとで審理されていないことも懸念の対象である。

E.提案および勧告

27.委員会は、締約国に対し、子ども青少年法および子どもの権利に関わる他の立法の制定プロセスを速めるためにあらゆる必要な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、憲法改正法案(1997年)において条約の原則および規定が考慮に入れられるよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、子どもの権利条約にとくに言及することを構想するようにも勧告するものである。
28.委員会は、締約国が、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁ずる条約を含む、他のすべての主要な国際人権条約の批准を構想するよう勧告する。これらはすべて、子どもの権利に影響を与えるものである。
29.委員会は、締約国が、子ども調整委員会を通じて調整の努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、条約が対象とするさまざまな領域における、傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもを含む子どもの状況に関してあらゆる必要な情報を収集するために、細分化されたデータの収集のための包括的システムを発展させるようにも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的でとくにユニセフの国際協力を求めるよう奨励する。
30.委員会は、締約国に対し、子どものためのオンブズパーソンまたはそれに相当する苦情申立ておよび監視のための独立機構の設置をさらに検討するよう奨励する。
31.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施にとくに注意を払い、かつ、地方および中央のレベルで資源の適切な配分を確保するよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に用いて、必要な場合には国際協力の枠組みにおいて、かつ差別の禁止および子どもの最善の利益(条約第2条および第3条)の原則に照らして確保されるべきである。
32.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を条約の原則および規定と調和させるよう勧告する。
33.条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる司法上のおよび行政上の手続においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業、プログラムおよびサービスの発展および実施においても、適切に反映されるべきであるというのが委員会の見解である。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして子どもの参加権に関する公衆の意識を向上させるための体系的なアプローチをさらに発展させるよう奨励したい。
34.委員会は、一部のグループ、とくに女子、障害児、施設ケアのもとに置かれている子ども、農村部に暮らす子ども、スラムで暮らしている子どものような貧しい子ども、および婚外子に対する差別を解消するために、より積極的なアプローチをとるよう勧告する。
35.委員会は、締約国が、条約第7条に照らして出生登録システムを向上させるためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、新生児を登録する両親の義務に関する意識啓発キャンペーンを開始するようにも勧告するものである。
36.委員会は、体罰を法律によって包括的に禁ずること、および、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ学校、家庭および施設ケアにおける規律の維持およびしつけが条約第28条に照らして子どもの尊厳に一致する方法で行なわれることを確保するための措置をとることを、勧告する。
37.条約第19条に照らし、委員会はさらに、家族間暴力および子どもの性的虐待を含む家庭における不当な取扱いを防止しかつそれと闘うために、締約国が、法改正も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、あらゆるタイプの子ども虐待を防止しかつ被害を受けた子どものリハビリテーションを行なうための社会プログラムを確立するよう提案するものである。このような犯罪に関する法律の執行が強化されなければならない。特別な証拠法則、および特別調査官もしくは地域共同体の窓口のような、児童虐待の苦情に対応するための充分な手続および機構が発展させられるべきである。
38.とくに条約第3条、第10条および第21条に照らし、委員会は、締約国に対し、養子縁組ならびに不法移送および不返還に関わる法改正のプロセスを速めるよう奨励する。委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約への加入を構想するよう提案するものである。
39.委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策、およびリプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスの強化を促進するよう勧告する。委員会はさらに、青少年の健康上の問題、とくに若年妊娠の規模を理解するために包括的かつ学際的な研究が行なわれるべきであると提案するものである。委員会はまた、青少年およびその家族を対象とした、子どもに優しいケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるために、財政面でも人材面でもさらなる努力が行なわれるようにも勧告する。
40.障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児に対する差別を減らすための意識啓発キャンペーンを構想し、障害児のための特別教育のプログラムおよびセンターを設置し、かつ社会へのそのインクルージョンを奨励するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の養成および研修のために技術的協力を求めるよう勧告するものである。この目的で、とくにユニセフおよび世界保健機構の国際協力を求めることができる。
41.委員会は、義務教育制度の全面的実施を速め、かつもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもの教育へのアクセスを向上させるために、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
42.委員会は、条約第32条および他の関連の国際文書の規定を全面的に実施するために、法改正もむさらなる措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約への加入を検討するよう奨励するものである。さらに、経済的搾取、または、危険があり、子どもの教育を妨げ、もしくはその健康または身体的、心理的、精神的、道徳的または社会的発達にとって有害となる恐れのあるいかなる労働をも防止しかつそれらと闘うための努力が行なわれなければならない。家庭において働いている子どもを全面的に保護するため、その状況にとくに注意が向けられるべきである。委員会は、締約国が、この領域でとくにユニセフおよびILOの技術的協力を求めることを構想するよう勧告する。
43.委員会は、締約国が、子どもによる薬物および有害物質の濫用を防止しかつそれと闘うための努力を強化し、かつ、学校内外の広報キャンペーンを含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。
44.委員会は、売買春およびポルノグラフィーにおける子どもの使用ならびに子どもの売買および誘拐を含む子どもの性的経済的搾取を防止しかつそれと闘う目的で、条約第34条の規定を全面的に実施するために法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。
45.条約第39条に照らし、委員会は、締約国が、不当な取扱い、性的虐待および経済的搾取の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・センターを設置するためにさらなる努力を行なうよう勧告する。
46.少年司法の運営に関して、委員会は、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のようなこの領域の他の関連の国際基準の規定を同国の立法、法律、政策、プログラムおよび実務に全面的に統合するため、締約国があらゆる措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、法に抵触したケア・センターの子どもを対象とした法律相談に関する規定を見直すこと、身柄拘束は最後の手段としてのみ使用すること、および拘禁センターの環境を向上させることを、勧告するものである。委員会は、締約国が最低刑事責任年齢を引き上げ、かつ、少年司法制度のもとで審理される者の年齢を18歳に引き上げるよう、強く勧告する。さらに委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言および援助に関する調整委員会を通じて、とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワークおよびユニセフの国際的援助を求めることを検討するよう勧告するものである。
47.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような幅広い配布は、政府、議会および関心のある非政府組織を含む公衆一般の間で、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。