総括所見:ミクロネシア(第1回・1998年)


CRC/C/15/Add.86(1998年2月4日))
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1998年1月14日に開かれた第440回~第441回会合 (CRC/C/SR.440-441) においてミクロネシア連邦の第1回報告書(CRC/C/28/Add.25)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1998年1月23日に開かれた第453回会合において)。

A.序

2.委員会は、締約国に対し、第1回報告書および事前質問リストへの文書回答の提出に関して謝意を表する。委員会は、報告書および対話が率直な、自己批判的なかつ協力的な基調であったことに心強い思いを感ずるものである。しかしながら委員会は、報告書のデータが最新のものでなかったことに遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、回答されなかった質問があったことも遺憾に感ずるものである。委員会は、これらの質問に文書で回答するという代表団の約束を歓迎する。

B.積極的な側面

3.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」(PNACC)が、州レベルの「子ども諮問評議会」とともに1995年に設置されたことに留意する。
4.委員会は、子どもの性的な虐待および搾取に関する法案が現在議会に提出されていることに留意する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

5.委員会は、連邦が特有の性格を有していること、地形が607の島々から構成されていること、人口が比較的少数であり、かつ多様なかつ点在する多くの共同体から構成されていること、および経済構造が変化していることに留意する。

D.主要な懸念事項

6.委員会は、国内法が条約の規定および原則に全面的に一致していないことを懸念する。とくに委員会は、最低雇用年齢を規定することにより児童労働を規制する立法が存在しないこと、刑事責任に関する最低年齢の明確な定義が存在しないこと、性的同意に関する最低年齢が低いこと、4つの州の間で異なる性的同意年齢が調和させられていないこと、および、放任、虐待および性的搾取に関する立法が存在しないことを、懸念するものである。委員会はまた、とくに婚姻および養子縁組に関して、慣習法と制定法が衝突する可能性があることも懸念する。
7.委員会は、「子どものための国家行動計画」(1995年~2004年)がまだ草案段階であることを懸念する。
8.委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みの中で」予算配分を行なうことに関する条約第4条の規定に対して充分な注意が払われていないことを懸念する。
9.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」の運営予算が存在しないこと、その人的資源が欠けていること、および、条約が対象とするあらゆる領域をあらゆるグループの子どもとの関わりで監視することについてその役割が不明瞭であることを、懸念する。
10.委員会は、さまざまな州の立法および実務に格差が存在することを懸念する。委員会はまた、中央レベルおよび4つの連邦州との間の調整が不充分であることも懸念するものである。
11.委員会は、体系的な、包括的なかつ細分化された質的および量的データを全国、州および地方のレベルにおいて収集することに対して、および、条約が対象とするあらゆる領域、とくに子どもの虐待または不当な取扱いのような最も目に見えにくい領域に関して、かつ女子も含むあらゆるグループの子どもとの関わりで、採択された政策および措置の進展および影響を評価するための適切な指標および機構を特定することに対して、充分な注意が払われていないことを懸念する。
12.条約を普及するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、大人および子どものいずれも対象として条約の原則および規定に関する幅広い意識を促進するためにとられた措置は不充分であるとの見解に立つものである。委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として充分なかつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。
13.委員会は、出生登録制度が条約第7条と一致していないこと、および死亡登録制度が信頼できるものではないことを懸念する。
14.委員会は、締約国が、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に掲げられた一般原則を、立法、行政上のおよび司法上の決定、および子どもに関わる政策およびプログラムにおいて全面的に考慮に入れていないように思えることを、懸念する。
15.条約第2条の実施に関して、委員会は、条約で認められた権利を女子が全面的に享受することを確保するためにとられた措置が不充分であることを、とくに懸念する。委員会は、最低婚姻年齢に関して男女格差が存在すること、および女子が16歳未満で婚姻する可能性があることを、懸念するものである。委員会はまた、とくにヤップ州においてカースト制度が存在すること、およびそれが条約第2条と両立しないことも、懸念する。
16.条約第17条に照らし、委員会は、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアの有害な影響、とくに暴力およびポルノグラフィーから子どもを保護するための適切な措置がとられていないことを、懸念する。
17.児童虐待・放任プログラム(CAN)のような締約国による努力には留意しながらも、委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待も含む)に関する意識が不充分でありかつそれに関する情報が存在しないこと、すべての州に具体的な法律が存在せずかつ適切な資源が財政面でも人材面でも存在しないこと、および、そのような虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された職員が存在しないことを、懸念する。そのような子どものためのリハビリテーションの措置が存在しないこと、および司法へのそのアクセスが限られていることも、懸念の対象である。
18.委員会は、慣習法および制定法のいずれに基づく養子縁組(国際養子縁組も含む)も、条約の原則および規定、とくに第21条と全面的に一致していないことを懸念する。
19.ビタミンA欠乏症および寄生虫に関するチューク州とユニセフの共同プログラム(VADV)が肯定的な結果をもたらしたことには留意しながらも、委員会は、締約国において栄養不良およびビタミンA欠乏症が蔓延していること、および、安全な水および充分な衛生手段へのアクセスが限られていることを、懸念する。委員会はまた、青少年の健康上の問題、とくに若年妊娠の発生率が高くかつ増加していること、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびサービスへの10代によるアクセスが限られていること、HIV/エイズの予防措置が不充分であること、および学校における性教育が不充分であることも、懸念するものである。4州に電話ホットラインが存在することなど締約国の努力は留意されるものの、10代の自殺率が高いこと、およびその防止のための財源および人的資源が不充分であることは、とくに懸念される。学校および地域を基盤とした教育プログラムのような締約国の努力には留意しながらも、委員会は、若者の間で薬物およびアルコールの濫用が生じていること、および、このような問題に対応するための法的枠組みが不充分であることおよび社会的および医学的プログラムが不充分であることを、懸念するものである。
20.条約第29条1項に照らし、委員会は、学校カリキュラムに子どもの権利に関する教育が含まれていないことを懸念する。余暇の機会が不充分であることも、懸念の対象である。
21.少年司法の運営に関わる状況、および、それが条約第37条、第39条および第40条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のような他の関連の基準と両立するかどうかは、委員会にとって懸念の対象である。とくに委員会は、刑事責任に関する最低年齢の定義が不明瞭であること、および、罪を犯した少年のための特別な法的手続が存在しないように思えることを、懸念するものである。

E.提案および勧告

22.委員会は、条約の原則および規定と立法との全面的一致を確保するための充分な法改正を行なうことを目的として、締約国が、全国および州のいずれのレベルにおいても、現行法の包括的見直しを開始するよう勧告する。委員会は、婚姻および養子縁組に関わるもののような慣習的な慣行および法律を条約の原則および規定と調和させるために、締約国が意識啓発キャンペーンも含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。慣習法と制定法が衝突した場合には、差別の禁止(第2条)および子どもの最善の利益(第3条)の原則が第一義的に考慮されるべきである。委員会はまた、締約国が、とくに子どもおよび青少年を対象とした法典または立法を採択し、かつ、特別な保護を必要とする子どもに関して独立した章を設けることを構想するようにも提案する。この目的で、とくに〔国連〕人権高等弁務官事務所およびユニセフの国際協力を求めることが可能である。
23.委員会は、国内行動計画を制定するよう勧告する。
24.委員会は、締約国に対し、他の主要な国際人権条約、とくに、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、拷問または他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁止する条約、および女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を含む子どもに関わる条約、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約に加入するよう奨励する。
25.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施にとくに注意を払い、かつあらゆるレベルで適切な資源配分を確保するよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に用いることにより、必要な場合には国際協力の枠組みにおいて、かつ、差別の禁止および子どもの最善の利益の原則(第2条および第3条)に照らして確保されるべきである。
26.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」に対してその権限を遂行するために充分な財源および人的資源を提供すること、およびその構成を拡大することを勧告する。委員会は、この機関に対し、非政府組織とのさらなる協力を発展させるよう奨励するものである。委員会はまた、あらゆるレベル間の調整を確保し、条約で認められた権利の実現に関して達成された進展および直面した困難を監視しかつ評価し、かつ、とくに経済的移行が子どもに与える影響を定期的に監視するため、同評議会の能力を強化する必要性があることも強調する。
27.委員会はさらに、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもに関するものも含めて、条約が対象とするさまざまな領域における子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を集める目的で、締約国が、細分化されたデータの収集のための包括的なシステムを発展させ始めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この目的でとくにユニセフの国際協力を求めるよう強く奨励するものである。
28.委員会は、締約国に対し、条約第42条に照らして、条約の原則および規定を大人および子どもに対して同様に広く知らせるための努力を強化するよう強く奨励する。委員会は、締約国に対し、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアを通じて子どもの権利に関する公衆の意識をさらに向上させ、かつ、条約をできるかぎり学校カリキュラムに編入するよう、奨励するものである。委員会はまた、締約国が、条約をさらに促進するための適切な資料を作成する努力を継続するようにも提案する。委員会は、締約国が、この点でとくにユニセフおよびユネスコの援助を求めるよう提案するものである。
29.委員会は、締約国に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに研修を行なう努力を継続するよう奨励する。委員会は、締約国が、この点でとくに〔国連〕人権高等弁務官事務所およびユニセフの援助を求めるよう提案するものである。
30.条約の実施にさいして市民社会のあらゆる層とのパートナーシップを強化するため、委員会は、締約国に対し、非政府組織との協力を強化するよう強く奨励する。
31.委員会は、締約国が、条約第7条に照らして出生登録を向上させ、かつ死亡登録を向上させるために、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
32.条約の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる司法上のおよび行政上の手続においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業、プログラムおよびサービスの発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。委員会はまた、現行法が差別を禁じていることには留意しながらも、条約第2条に掲げられている差別の禁止の原則が、女子、州の間の格差および社会的地位との関わりも含めて、全面的に実施されなければならないことも強調する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、カースト制度に関する追加的情報を送付するよう奨励するものである。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして、子どもの参加権に関する公衆の意識を向上させることに対する体系的なアプローチをさらに発展させるよう奨励したい。
33.委員会は、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアの有害な影響、とくに暴力およびポルノグラフィーから子どもを保護するために法的措置も含むあらゆる措置をとることを目的として、締約国が研究を行なうよう勧告する。
34.子どもに対して自分たちの問題を議論する環境を提供していた「拡大家族」の制度に生じている変化を考慮に入れ、委員会は、学校における青少年ピアカウンセリング・グループ、アルコールおよび自殺のような青少年の問題についての地域共同体啓発プログラム、および親教育プログラムのような、補完的取組みを奨励するよう提案する。
35.条約第19条に照らし、委員会はさらに、締約国が、とくに家庭および施設におけるものも含む子どもの不当な取扱い、および性的虐待を防止しかつそれと闘うために、法改正も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、問題の性質および規模に関する理解を向上させ、あらゆるタイプの児童虐待を防止するための社会プログラムを強化し、かつ、被害を受けた子どものリハビリテーションを行なうために、虐待、不当な取扱いおよび家族間暴力に関する包括的な研究に着手するよう提案するものである。子どもの不当な取扱いに関する苦情に対応するための充分な手続および機構が発展させられなければならない。
36.委員会は、養子縁組に関する立法および慣習的養子縁組の慣行を、条約の原則および規定、とくに第21条と一致させるよう勧告する。
37.委員会は、締約国が、栄養不良およびビタミンA欠乏症と闘うための努力を継続するよう提案する。委員会はまた、締約国が、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびサービスを強化することにより、青少年保健政策を促進するようにも提案するものである。委員会はさらに、若年妊娠および自殺のような青少年の健康上の問題に関する現象の規模を理解するため、包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。委員会はまた、青少年の健康上の問題の予防およびケアならびに被害を受けた者のリハビリテーションのために、青少年および家族の双方を対象としたカウンセリング・サービスの発展のような、財政面および人材面のいずれも含むさらなる努力を行なうようにも勧告する。
38.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、学校における文化的および芸術的活動、レクリエーション活動および余暇活動を発展させるよう勧告する。
39.委員会は、最低雇用年齢との関わりも含め、条約第32条の規定を実施するために法律の制定も含むさらなる措置をとるよう勧告する。経済的搾取、または危険となり、または子どもの教育を阻害し、もしくは子どもの健康または身体的、精神的、道徳的または社会的発達にとって有害となる恐れのあるいかなる労働をも防止しかつそれと闘うために、努力が行なわれるべきである。家族とともに働く子どもを保護するため、その環境にとくに注意が払われなければならない。委員会は、締約国が、この領域でとくにユニセフの技術的援助を求めることを構想するよう勧告する。
40.委員会は、締約国が、子どもによる薬物および有害物質の濫用を防止しかつそれと闘うための努力を強化し、かつ、学校およびその他の場所における広報キャンペーンを含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに世界保健機構の技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。
41.少年司法の運営の分野において、とくに刑事責任に関する最低年齢および罪を犯した少年のための特別手続との関わりで、委員会は、法改正にあたり、子どもの権利条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のようなこの分野の他の関連の基準を、全面的に考慮に入れるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、少年司法に関する調整委員会を通じて、とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するようにも勧告するものである。
42.委員会は、締約国に対し、締約国報告書、委員会における同報告書に関する議論の議事要録、および同報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。