総括所見:フランス(第1回・1994年)


CRC/C/15/Add.20(1994年4月25日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1994年4月11日および12日に開かれた第139回~第141回会合(CRC/C/SR.139-141)においてフランスの第1回報告書(CRC/C/3/Add.15)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1994年4月22日に開かれた第156回会合において。

A.序

2.委員会は、締約国が条約を迅速に批准したこと、および、第1回報告書がきわめて包括的でありかつ委員会のガイドラインに忠実に従って作成されたことに、満足感とともに留意する。
3.委員会は、条約の実施に直接携わっている省庁の職員も含む高級レベルの代表団が締約国から出席したことに、評価の意を表したい。委員会は、締約国の代表団との意見交換、および、第1回報告書を広く入手できるようにするという政府の決定が、子どもの権利に関する全国レベルの開かれた議論に貢献することを希望するものである。

B.積極的な要因

4.委員会は、締約国が、条約の規定および原則を実施するためにとられた措置およびそのために選択された政策を、子どもの現状の変化を踏まえて振り返りかつ見直す決意を表明していることを、とくに心強く思う。
5.委員会は、国際連合総会において子どもの権利条約が採択された記念日に、公的機関と非政府組織との間で毎年会合が持たれていることの重要性を認識する。委員会は、政府と「市民社会」との間で実りのある対話を開始し、かつ子どもの権利の促進および保護のためにとられた政府の政策の真剣な評価を確保するにあたってこのような会合が持つ価値を強調するものである。
6.委員会はまた、条約の実施状況および世界の子どもの状況に関する政策についての報告書を毎年議会に提出するという政府の決定を歓迎する。このような手続は、子どもの最善の利益の原則の重要性を強調することに貢献するであろう。この原則は、立法機関によって行なわれるものを含む子どもに関わるあらゆる活動において、第一義的に考慮されなければならないものである。
7.委員会は、子どもに影響を与える手続において子どもが意見を聴かれかつ考慮される権利を認めるために締約国がとった措置を歓迎する。子どもに自己の権利について知らせ、かつ、学校内および地域共同体に設置された特別評議会を通じて子どもが意見を表明するよう奨励するための、さまざまな取り組みについても留意されるところである。
8.委員会はさらに、子どもの権利に関して一部の専門家グループを研修するための措置がとられたことも心強く思う。委員会はまた、少年司法の分野で子どもに法的情報および援助を提供するシステムを確立するために法曹界が行なった取り組みも賞賛するものである。
9.委員会は、フランスが、開発援助の分野におけるものも含む国際協力活動に積極的に参加してきたことに留意する。
10.委員会はまた、対人地雷が民間人、とくに子どもに対して与える危険な影響の問題に取り組む国際的キャンペーンに対して、締約国が行なってきた重要な貢献にも留意する。

C.主要な懸念事項

11.委員会は、条約第30条に対して締約国が付した留保に懸念とともに留意する。委員会は、子どもの権利条約がマイノリティに属する子どもの権利を含む子どもの個人的権利を保護しかつ保障しようとしていることを強調したい。
12.締約国が人権条約機構に提出したコア・ドキュメントで言及されている憲法第55条は、国際人権文書の規範はフランスにおいて自動執行的であり、かつ国内裁判所において援用できると規定している。このことに鑑み、委員会は、国内法の枠組みにおける子どもの権利条約の地位に関して、とくにこの点に関して破棄院が最近行なった決定に照らし、不明瞭さを感ずるものである。
13.委員会は、地方分権化によって生ずる可能性のある社会的悪影響に対して十分な保護措置をとる必要があることを懸念する。このような措置は、たとえば、生活水準に関して地域間格差が悪化する危険を避けるため、かつ、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもによる経済的および社会的権利の享受に悪影響が生ずる可能性を最低限に抑えるために、必要である。
14.母が出産および出生宣言の最中に自己の素性を秘密のままにするよう要請した場合、養子縁組の場合および医学的援助による出産の場合も含めて自己の出自を知る子どもの権利に関して、委員会は、締約国によってとられた立法措置は条約の規定、とくに一般原則を全面的に反映していないのではないかと懸念する。
15.委員会は、「難民資格を得るために前触れなくフランスに」(締約国報告書書 389項)到着した、保護者のいない子どもの状況を懸念する。委員会はまた、このような子どもが締約国の管轄下にある間および出身国に帰国する過程でこのような子どもに適用される、社会機関および(または)司法機関が関与する包括的な保護システムが存在しないことも懸念するものである。
16.委員会はまた、少年司法の運営の制度における逮捕、拘禁、刑の言渡しおよび収監に関わる立法および実務が、条約の規定および原則ならびにとくに第37条および第40条に全面的に一致していないのではないかと懸念する。

D.提案および勧告

17.委員会は、締約国に対し、条約第30条に対する留保を撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励したい。
18.委員会はまた、締約国が、子どもの権利条約を実施するためにとられる政策の調整、評価およびフォローアップを目的とした常設機構の設置を構想するようにも提案したい。
19.委員会は、サービスの提供に関して地域間で生ずる可能性がある格差を最低限に抑えるために、予算問題に関するものも含め、中央政府と地方の公的機関が緊密に協力することの重要性を強調したい。委員会はまた、効果的でありかつ条約の規定および一般原則、とくに予算の財源に関わりなく適用される子どもの最善の利益および差別の禁止に一致した、子どもの権利の実施に対する包括的なアプローチをとることの価値を強調するものである。
20.最低社会所得を保障し、かつもっとも不利な立場に置かれた集団による居住へのアクセスを改善するためにとられている措置に満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国が、この経済的後退の時期にあって子どもの個人的権利の享受を注意深く監視するよう勧告する。これとの関連で、郊外生活者、移住労働者の子どもおよび社会的に周縁化された子どもも含む、社会のもっとも貧しくかつもっとも脆弱な立場に置かれた層に属する子どもの経済的および社会的権利の全面的実現を確保するため、必要な措置をとることが提案されるところである。
21.委員会は、開発援助の枠組みにおいて社会プログラムを優先させることを強調した国際連合機関および専門機関の勧告に、締約国の注意を促す。委員会は、締約国が、国際協力プログラムにおいてこのような社会的発展の促進の側面を考慮するよう提案したい。
22.法改正の枠組みにおいて、かつ条約の基本的原則、とくに第2条に照らして、委員会は締約国が最低婚姻年齢に関する現行法を見直すことを検討するよう提案する。
23.委員会は、子どもによる意見の表明を奨励する手段、および、とくに学校および地域社会において、子どもに影響を与える意思決定過程のなかでこのような意見が正当に重視される手段を、さらに検討するよう提案したい。
24.委員会はまた、児童虐待および子どもの体罰を防止するため、さらなる意識啓発措置および教育措置をとるようにも提案したい。
25.第1回報告書の提出後に、とくに国籍、外国人の入国および滞在、難民および庇護申請者ならびに家族の再統合の領域で重要な立法が採択されたことを踏まえ、委員会は、これらの領域について、および新規の立法措置が条約で認められた子どもの権利、とくに条約の一般原則を正当に考慮しながら第7条、第9条、第10条および第22条の享受にどのように影響を与える可能性があるかについて、文書による追加的情報を1994年10月1日までに受け取ることができれば感謝するものである。
26.委員会は、締約国に対し、自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するため、条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに関連の国際基準、とくに「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則に照らして少年司法の運営の領域における国内法を検討するよう奨励する。
27.子どもの最善の利益および子どもの権利条約のその他の規定ならびにフランスが締約国となっているILO第138号条約の規定に照らし、委員会は、まだ義務教育を修了していない子どもの雇用が家事労働、および農業分野を含む家内制産業の場合に法律で認められていることは、締約国による再検討の価値があると考える。委員会はまた、締約国に対し、ファッション産業における活動への子どものアクセスを、これが個別事案アプローチに基づいてかつ子どもの最善の利益に照らしてのみ行なわれることを確保するために見直すようにも奨励するものである。
28.国内レベルにおける条約の実施の監視を委員会が重視していることに照らし、委員会は、政府によって議会に提出される、条約で認められた子どもの権利の実現を確保するためにとられた政策に関する年次報告書の写しを受け取ることができれば感謝するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年11月1日)。