総括所見:ドイツ(第2回・2004年)


CRC/C/15/Add.226(2004年2月26日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2004年1月16日に開かれた第926回および第927回会合(CRC/C/SR.926 and 927参照)においてドイツの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.7)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第2回報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/DEU/2)に対する文書回答の提出にも留意するものである。委員会は、条約に実施に直接携わっているハイレベルな代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の実施に関する理解を向上させることができたことに謝意を表する。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の法律の採択等を歓迎する。
  • (a) 外国籍の子どもがよりよい形で統合されることを可能にする、1999年7月15日に採択された国籍および市民権法。
  • (b) 監護権および面接交渉権に関する婚内子と婚外子関の差別を抑止する、1997年12月16日(1998年7月1日施行)の家族法改正(Reform zum Kindschaftsrecht)。
  • (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准(2001年)。
  • (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の批准(2002年)。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

4.委員会は、ドイツの再統一およびそれにともなう結果が、締約国全域における条約の実施に引き続き影響を与えていることに留意する。

D.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
5.委員会は、締約国が、委員会のさまざまな勧告を実施しないと報告書のいくつかの箇所で述べていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.43)の一部、とくにパラ21~26および29~35に掲げられたもの(独立の監視機構の設置など)への対応が不十分であることを遺憾に思うものである。これらの懸念および勧告はこの文書にもあらためて掲げられている。
6.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見で表明された懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
留保/宣言
7.委員会は、とくに最近の立法により、締約国が批准時に行なった留保および宣言は不必要になった旨の情報(CRC/C/83/Add.7のパラ84および844ならびに文書回答の46~47ページ)を認知する。しかしながら委員会は、これらの留保および宣言の撤回を受託することについて過半数の州が前向きでないことを、依然として懸念するものである。
8.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/43、パラ22)にしたがい、委員会は、締約国が、同国が行なった留保および解釈宣言を次回の定期報告書の提出までに撤回する手続を迅速に進め、かつ、とくに当該撤回の必要性について州を納得させるための努力を強化するよう、勧告する。
立法
9.委員会は、第1回報告書の検討以降、子どもの権利に関わる多数の法律が採択されたことを認識しつつも、条約が、第1回報告書の時点で予期されていたとおり基本法に編入されていないことを、依然として懸念する。
10.前回の勧告(パラ21)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 基本法への条約の編入をあらためて検討すること。
  • (b) 適切な機構を通じ、国および州のすべての法律が条約に全面的に一致することを確保すること。
  • (c) 予算配分等も通じ、これらの勧告の効果的実施のために十分な対応が行なわれることを確保すること。
調整
11.委員会は、家族問題・高齢市民・女性・青少年省が条約の実施の調整を担当しており、かつ、州の間に、各州最高青少年当局協議会および各州青少年大臣会議のような調整機関が存在することに留意する。しかしながら、条約の実施が多くの省を横断する課題であることを考慮し、委員会は、国ならびに州および地方のレベルで締約国における条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ首尾一貫した子どもの権利政策を実現することが困難になっていることを、依然として懸念するものである。
12.委員会は、締約国が、連邦レベル、連邦レベルおよび州レベルの間ならびに州の間で条約の実施を調整するための、十分なかつ常設の国家的機構を確立するよう、勧告する。
国家的行動計画
13.委員会は、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」にしたがった国家的行動計画の起草作業が現在進められていることに満足感とともに留意しつつも、この国家的行動計画で条約のすべての分野が対象とされない可能性があることを依然として懸念する。
14.委員会は、締約国が、国家的行動計画の採択を迅速に進めるよう勧告する。当該計画は、条約のすべての分野を網羅し、包括的かつ分野横断型であり、かつ調整および監視のための機構について定めたものであるべきである。委員会はさらに、この行動計画の採択および実施が、開かれた、協議を基調とする、かつ参加型のプロセスで進められるべきことを勧告する。
独立の監視体制
15.委員会は、子どもの権利も対象とするさまざまな人権機関、ならびに、州レベルの子どもコミッショナー、ドイツ連邦議会子ども委員会、および、子ども・若者の状況に関する定期的報告を担当する独立委員会(Kinder-und Jugendbericht)が存在することに留意する。しかしながら委員会は、州および連邦のレベルで子どもの個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の包括的監視のための独立した中央機関が存在しないことを、懸念するものである。
16.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、総会決議48/134付属文書)にしたがって、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮しながら、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関を設置することを検討するよう、奨励する。加えて、委員会は、当該機関に十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されること、ならびに、子どもに配慮したやり方で子どもの権利侵害の苦情を受理し、調査しかつ効果的に対応する権限がその任務に含まれることを勧告するものである。
データ収集
17.委員会は、締約国報告書の付属文書で提供された豊富な統計データに評価の意とともに留意するものの、条約が対象としている一部分野についてデータが不十分であることを依然として懸念する。
18.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢ならびに都市部および農村部の別に細分化されたデータ収集システムおよび指標を発展させるよう、勧告する。当該システムは、外国人の子どものようにとくに脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視しつつ、18歳未満のすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施のための政策およびプログラムを立案するにあたってこれらの指標およびデータを活用するよう奨励する。
研修および普及
19.委員会は、条約の規定および原則を普及するために締約国が行なっているさまざまな活動に留意するものの、最近の研究によれば、ほとんどの子どもおよびおとな(とくに脆弱な集団に属する者)が条約に掲げられた権利について認識していないことを、依然としてとりわけ懸念する。したがって委員会は、締約国が、条約に関する普及、意識啓発および研修のための十分な活動を、体系的かつ対象を明確にするやり方で行なっていないことを懸念するものである。
20.前回の勧告(パラ26、27および36)ならびに条約第42条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 庇護希望者、難民および民族的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団に確実に情報を届けるための取り組みも含め、子どもおよび親の間、市民社会の間ならびに政府のあらゆる部門およびレベルにおける、条約およびその実施に関する情報の普及を相当に拡大すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、施設で働く職員、教員および保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。
国際協力
21.委員会は、「貧困削減行動計画2015」の承認、および国際協力・援助の分野で行なわれている他の多くの活動に留意するものの、締約国が国内総所得の0.27%しか政府開発援助に充てていないこと、および、2006年に予定されている0.33%への増加が遅々としていることを、依然として懸念する。
22.前回の勧告(パラ25)に照らし、委員会は、締約国に対し、国内総生産の0.7%を海外開発援助に配分するという国際連合の目標を可能なかぎり早期に実施するよう奨励するとともに、〔1995年社会開発サミットで確認された〕コペンハーゲン20/20イニシアティブの目標を達成するための基礎的社会サービスに関する委員会の懸念を強調する。

2.一般原則

差別の禁止に対する権利
23.基本法(第3条)で差別が禁じられていることは認知しながらも、委員会は、外国人の子どもが事実上差別されており、かつ人種的憎悪および外国人排斥の事件が子どもの発達に悪影響を及ぼしていることを懸念する。委員会はまた、実務および提供されるサービスならびに子どもによる権利の享受に関する諸州間の格差の一部が差別に相当する可能性があることも、懸念するものである。
24.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外国人の子どもまたはマイノリティに属する子どもに対する事実上の差別を防止しかつ撤廃するための行政上および司法上の措置を強化することも、勧告するものである。
25.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
26.委員会は、子どもの最善の利益の原則(第3条)を考慮するために発展させられてきたさまざまな取り組みに留意するものの、この一般原則が、締約国の政策およびプログラムの実施においても、行政上および司法上の原則においても全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを、依然として懸念する。
27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、すべての立法および予算ならびに子どもに影響を与える司法上および行政上の決定ならびにプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう、勧告する。
子どもの意見の尊重
28.委員会は、自己の意見を表明する子どもの権利を認めたさまざまな法規定により、条約第12条の実施に関して達成された進展に留意するものの、同条に掲げられた一般原則が、締約国全域の政策およびプログラムの実施において、実際上、全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを依然として懸念する。
29.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するため、さらなる努力が行なわれるべきことを勧告する。これとの関係で、脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般に参加するすべての子どもの権利がとりわけ重視されるべきである。この一般原則は、子どもに関わるすべての政策およびプログラムにも反映することが求められる。この原則の実施に関する公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきである。

3.市民的権利および自由

宗教の自由
30.委員会は、2003年9月24日の憲法裁判所決定(2 BvR 1436/02, Case Ludin)に留意するものの、現在いくつかの州で議論されている、教職員が公立学校でヘッドスカーフを着用することの禁止を目的とした法律について懸念する。このことは、宗教の自由に対する権利についての子どもの理解、および、条約第29条の教育の目的において促進されている寛容の態度の発達に寄与しないためである。
31委員会は、締約国が、とりわけ特定の宗教的集団を選び出して異なる取り扱い方をするような措置を避けることにより、とくに宗教、良心および思想の自由の分野において理解および寛容の文化を発達させることを目的として、子ども、親その他の者を対象とした教育上その他の措置をとるよう、勧告する。
情報へのアクセス
32.有害な印刷媒体および電子通信媒体から子どもを保護するための締約国の努力(たとえば青少年保護法およびメディアにおける未成年者の保護に関する州間協定(2003年))は歓迎しながらも、委員会は、法的文書の増加によって法的状況が複雑化しているおそれがあること、および、連邦レベルと州のレベルの間における責任分担が明確でないことを、依然として懸念する。
33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 有害な情報からの子どもの保護に関して新たに採択された規則の全面的実施を確保するとともに、この点に関わる法的状況をいっそう透明なものとする方策を見出すこと。
  • (b) 子どもにとって有害となる可能性がある情報から子どもを保護するさらなる手段(親に対する助言の提供によるものも含む)を検討すること。

4.家庭環境および代替的養護

親の責任
34.委員会は、連邦児童手当法の第3次改正法(2001年1月1日施行)の採択によって双方の親が親休暇をとる可能性が向上したこと、および、親権に関する法律の改正によって、両親が離婚し、別居しておりまたは婚姻していない場合についても親権(Sorgerecht)を共有できるようになったことに評価の意とともに留意するものの、司法制度において後者の法律を全面的に実施する準備がまだ整っていないことを、依然として懸念する。
35.委員会は、締約国が、とくに判事を対象とする十分な研修を通じ、親権法に関する新たな立法の全面的実施のために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。
国際養子縁組
36.委員会は、締約国が2001年に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准したことを歓迎し、かつその実施のためにとられた措置に留意するものの、締約国報告書(パラ476)で述べられているように、これらの養子縁組事案で不正が行なわれている可能性があることを依然として懸念する。
37.委員会は、締約国が、とくに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を全面的に実施し、かつ、ドイツ人の養子とされた子の出身国のうちまだ当該条約に加入していない国による当該条約の批准を促進することにより、国際養子縁組の事案で行なわれる可能性がある不正に対処するため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
子どもの国外への不法移送および不返還
38.委員会は、ドイツが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の締約国であることに満足感とともに留意するものの、親のいずれかによる子どもの奪取の問題が増大しつつあることを依然として懸念する。
39.委員会は、締約国が、ドイツに奪取されてきたすべての子ども(1980年ハーグ条約の締約国ではない国から奪取された子どもも含む)に対して当該条約を全面的かつ効果的に適用するとともに、まだ当該条約に加盟していない国に対して批准または加入を奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子の奪取に十分に対応するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、国外への子どもの不法移送の事案の解決のため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助を提供することを勧告するものである。
暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い
40.委員会は、子どもの養育における暴力を禁じた法律(家庭における体罰も禁止)が2000年に導入され、かつドメスティック・バイオレンスと闘うための他のさまざまな法的文書(たとえば子どもの権利のいっそうの改善のための2002年法)が導入されたことを歓迎するものの、新法の影響に関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念する。委員会はさらに、締約国においてさまざまな形態の暴力(とくに性的虐待および問題として増大しつつある学校における暴力)が引き続き存在していることを懸念するものである。
41.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価するため、暴力、とくに性的虐待および学校における暴力に関する包括的研究を行なうこと。
  • (b) 児童虐待を防止しかつこれと闘うため、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを強化すること。
  • (c) 現行体制の活動を評価し、かつこれらの事案に関与する専門家の研修を行なうこと。

5.基礎保健および福祉

42.委員会は、子どもの間で薬物、アルコールおよびタバコの濫用が広がっていること、胎児性アルコール症候群を持って生まれる新生児が多いこと、および、親のいずれかが薬物依存者である子どもの人数が300万人と推定されていることに、懸念を表明する。
43.委員会は、締約国が、とくに集中的な教育キャンペーンを行なうことおよび十分なリハビリテーション・サービスを設けることによって子どもおよび親の薬物およびアルコールの濫用と闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
思春期の健康
44.委員会は、精神疾患を有する子どもが精神医療施設の成人病棟で治療されていること、および、精神医学に関わる倫理的問題が十分に考慮されていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもおよび青少年の自殺件数が非常に多いことを深く懸念するものである。
45.委員会は、精神医療施設において子どもが成人から分離されることを確保し、かつ精神医学倫理に関する国際基準をより十全に考慮するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、思春期保健サービス、とくにカウンセリング・サービスおよび自殺予防プログラムを強化するよう、勧告するものである。
有害な伝統的慣行
46.委員会は、女性性器切除の慣行の禁止が刑法で取り上げられていることに留意するものの、締約国においてサハラ以南のアフリカ諸国出身の女子に対して女性性器切除が行なわれているという報告について懸念を表明する。
47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ドイツ在住の女子に対して締約国でまたは国外で行なわれる女性性器切除の規模および性質に関する研究を行なうこと。
  • (b) 研究の結果を考慮しながら、この慣行を防止するための広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを組織すること。
  • (c) この活動に、この分野で活動している非政府組織の関与を得ること。
  • (d) とくに、女性性器切除が行なわれている出身国であってこの慣行の撤廃のための積極的プログラムを有する国への財政的および技術的援助を拡大することにより、国際協力プログラムにおける女性性器切除の撤廃に優先的に取り組むこと。
保育サービスおよび保育施設
48.委員会は、とくに国の西部において十分な保育施設が存在しないこと(CRC/C/83/Add.7、パラ584、585および630参照)およびこれらの施設に関する全国的基準が存在しないことについての締約国の懸念を共有する。
49.条約第18条3項および第25条にしたがい、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/1/Add.68、パラ44)に照らし、委員会は、締約国が、働く親のニーズを満たす目的でいっそう多くの保育サービスを設け、かつ、すべての子どもが良質な保育を利用できることを確保する目的で全国的な基準を定めるための措置をとるよう勧告する。
十分な生活水準に対する権利
50.委員会は、資金移転から貧困家庭のための適切なインフラの構築の重視へと政策が転換されたことに留意する。委員会はまた、貧困に関する初の国家的報告書(2001年)も歓迎するとともに、ここ数年の児童手当の増額、および、子どものいる家族を援助するための措置を整備する所得税改革に留意するものの、第11次青少年白書で明らかにされているとおり、貧困が蔓延しており、そのことによって主として大家族、ひとり親家族および外国出身の家族に対する影響ならびに締約国の東部出身の家族に対する不相応な影響が生じていることを、依然として懸念する。
51.委員会は、前回の勧告(パラ31)にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに国の東部と西部間の格差を解消する目的で子どもの貧困の解消を迅速に進めるため、「利用可能な資源を最大限に用いて」あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するため、経済的に不利な立場に置かれている家族、とくにひとり親家族および外国出身の家族に対し、引き続き物的援助および支援を提供すること。
  • (c) 社会政策の転換を適切な形で評価すること。

6.教育、余暇および文化的活動

52.委員会は、教育の地方分権化により、条約第28条および第29条の実施の面で若干の格差が生じる可能性があることに留意する。加えて、委員会は、学習障害のある子どもの教育のための十分なサービスが存在しないことを懸念するものである。
53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第28条および第29条が州全域で全面的に実施されることを確保するため、とくに教育計画および研究振興に関する連邦政府・州間委員会(BLK)を通じてあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 前掲パラ23および24を参照し、かつ第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権教育をさらに発展させること。
  • (c) 学習障害のある子どものためのサービスをさらに発展させること。
  • (d) すべての学校に公民教育プログラムを導入すること。

7.特別な保護措置

子どもの難民
54.条約第22条に関して締約国が行なった宣言についての懸念に加え、委員会は、以下のことを依然として懸念する。
  • (a) 16~18歳の子どもの難民が、青少年福祉法に掲げられた権利の利益を享受していないこと。
  • (b) ロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもが、その家族の避難元である国に強制送還される可能性があること。
  • (c) 子どもが兵士として徴募されることが、庇護手続において子どもに特有の迫害として認められていないこと。
  • (d) 難民の地位に関する条約(1951年)で定義された難民家族の家族再統合に関する国内的要件および手続が複雑であり、かつ長すぎること。
  • (e) ベルリン州における庇護希望者の子どものなかに、親が提供した書類が不完全であることを理由として出生証明書に対する権利を否定される者がいたこと。
55.条約第7条、第22条その他の規定に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 青少年福祉法の規定を、18歳未満のすべての子どもの難民に対して全面的に適用すること。
  • (b) 締約国で庇護を希望するロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもについての法律および政策を見直すこと。
  • (c) 子どもが兵士として徴募されることを、庇護手続において子どもに特有の迫害として認めることを検討すること。
  • (d) とくに1951年難民条約で対象とされている難民家族について、難民の家族再統合に関する要件および手続を緩和すること。
  • (e) 締約国の領域で生まれた難民および庇護希望者の子ども全員に出生証明書が発行されることを確保すること。
性的搾取および人身取引
56.委員会は、「性暴力および性的搾取から子どもと青少年を保護するための連邦政府行動計画」(2003年1月)が採択されたことを歓迎するものの、成人が子どもに対して行なう犯罪によってさまざまに異なる年齢が刑法で維持されていることを、依然として懸念する。
57.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 関連のすべての法律で定められている性的搾取および人身取引からの保護を、18歳未満のすべての男子および女子に拡大すること。
  • (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領(1996年)ならびにグローバル・コミットメント(2001年)にしたがって、自国の行動計画を効果的に実施することにより、子どもの性的搾取および人身取引と闘うための努力を続行すること。
ストリートチルドレン
58.この点に関して行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、締約国でストリートチルドレンの人数が増加していること、および、そのなかで外国人の子どもが占める割合が高いことに、懸念を表明する。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに外国人の子どもの保護を重視しながら、その根本的原因に対処することによってこの現象を防止しかつこれと闘うための努力を続行すること。
  • (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、これらの子どもに対して十分な食料、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。
  • (c) これらの子どもに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復およびリハビリテーションのためのサービスならびに家族と和解するためのサービスが提供されることを確保すること。
少年司法の運営
60.第40条2項(b)(ii)および(v)に対する留保に加え、委員会は、拘禁措置の対象とされる子どもの人数が増えており、かつ外国出身の子どもが不相応な影響を受けていること、および、拘禁または勾留の対象とされた子どもが25歳までの者とともに措置されていることを懸念する。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の国連基準にしたがった少年司法制度を実施するため、あらゆる適当な措置をとること。
  • (b) 自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられること、適正手続の保障が全面的に尊重されること、および18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。
  • (c) 前掲国際基準で述べられているとおり少年司法手続に代わる選択肢を発展させること。

8.条約の選択議定書

62.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に関連して締約国が〔軍隊への徴募等に関する最低年齢は例外なく18歳に定めるべきであるという〕「ストレート18」の立場を支持していること、および、締約国が条約第38条に関して宣言を行なったことを認知する。これとの関連で、委員会は、締約国で批准のためのプロセスが開始されたことに留意するとともに、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する条約の両選択議定書を批准しかつ実施するよう、奨励するものである。

9.文書の普及

63.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。委員会は、締約国がこの点に関して国際協力を要請するよう勧告する。

10.報告書の定期的提出

64.最後に、委員会が採択し、かつ第29会期(CRC/C/114)および第32会期(CRC/C/124)に関する報告書に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国が、次回の定期報告書を2009年4月4日〔まで〕に提出するよう勧告する。この報告書は、第3回および第4回定期報告書を統合したものであるべきである。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。

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