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  番外
  内藤ほらいずんへん



  7月某日、外は降りしきる雨、四葉に呆れたドクオを追いかけた内藤は、追いつきざまに声を掛ける。
( ^ω^)「ドクオ君かっこよかったおっ」
('A`)「俺っぽくないことやっちまったな……マンドクセ」
( ^ω^)「もしかして、ドクオ君は彼女のこ……なんでもないおっ睨まないで欲しいおっ」
('A`)「………」
( ^ω^)「………どうしたんだおっ?」
('A`)「………お前、俺のことかっこいいって言ったよな」
( ^ω^)「言ったおっ、かっこよかったおっ」
('A`)「………ちょっとこい」
( ^ω^)「おっ?」


( ^ω^)「あんあんあん…ドクオ君、やめて欲しいおっ」
('A`)「うるせぇ!てめぇが誘ったんだろうが」
( ^ω^)「らめぇえええ!飛んじゃうおっ!!!」
('A`)「………っく、でるっ」
( ^ω^)「らめぇえええ!中に出しちゃらめぇええぇ!」
  今日の豪雨が内藤の悲鳴をかき消してくれていた。そのすべてを見ていたのは、蛙だけだった。
  ………内藤は後にこう述懐する

( ^ω^)「ドクオ君かっこよかったおっ」









  12月23日深夜



「ふははははっ今日はクリスマス・イブ! 四葉っ!! こい、デートするぞ!」
  高らかに宣言された言葉は、髪を横に集めて束ねミニスカートの真っ赤な衣装に身を包み、束ねた髪とは反対側に三角帽子をかぶった蜜柑から発せられた。
  彼女は、寝ている俺の真横に仁王立ちし、片手に大きな白い袋を担ぎながら高らかに笑う。つーか鍵のかかった部屋にどうやって入ったんだよ……



  5話
  師走 蜜柑編



  俺の部屋への進入経路が判明するのはすぐだった。何しろ、彼女の頭上にぽっかりと大穴があいているのだから…
  どうやら自分の部屋の天井板を外して、俺の真上に来たものの、ボロい安アパートの天井板は彼女の自重に耐え切れず決壊。運動神経のいい彼女はギリギリで天井にぶら下がってなんを逃れ、そのまま俺に向かって宣言。という流れらしい。
うんまあ、とりあえず…
「帰れ」
「まあまあ、そこは怒らずに冷静になって話し合おうではないか!」
  ……彼女の辞書に反省の二文字は存在しないようだ。
「だいたいなぁ、イブって普通夜を指すだろ、常識的に考えて…」
  カチカチと時を刻む時計を見ると、なるほどあと1・2分で夜の12時、つまりイブになるわけだ
「せっかく年に一度しかないクリスマス&クリスマス・イブをだな、全力で楽しむために、この師走蜜柑様がわざわざこんな格好までして夜這いをかけてやったのだぞ? 感動の末号泣しながらひれ伏すのが、常識というものだろうがっ!」
「んな常識は生憎持ち合わせてねぇんだよ、明日相手してやるから、帰れ」
  そういうと、暗闇の中の彼女は少しだけ悲しそうな顔をしてこちらを見つめると、こう言った。
「……夜這いの部分には反応してくれないのか?」
「うるせぇ! 襲うぞ?」
  この女ぁ……外には、今やしんしんと雪が降り始めてるっつうのに……雪ぃ!? 道理で寒いわけだ。そんな日に勝手に天井←→天井裏間を突貫工事しがって…
「お、襲う? よ、よし、ドンとこい」
  こらこらこら…冗談だって、ちょっと胸元はだけんなっ!
「……うぅ、いつ襲われてもいいように下は穿かない出来たのに…」
「はうぁ! な、な、な、…」
「冗談だ。ほら、目が醒めたろう? 行くぞ」
  そうして、8月のときと並びえる暴虐無人な女王様は、俺の手を引き夜の町をひた走る。


「結局…おまえなんだったんだ?」
「いや…雪が綺麗だったから、つい」
  東京の12月に雪が降るのは珍しい。どうやら、彼女は今日以外に一度しか雪を見たことがないらしい。
  今や雪はかなり弱々しくなり、最早ところどころ星が見えるほどに雲の薄くなっているところもあった。だが、あいも変わらず、空気は凍てつくように寒かった。
「浮かれて、とりあえず適当なこと言って俺を引きずり出したと……お前は子供か?」
  俺たちは、何とか歩いてきた大きな楓のある公園まで歩いてきた。公園の奥にある小さな森は、今や葉を落とし裸で寒そうだった。俺たちは、錆びてボロボロなブランコの周りの手すりへ並んで腰掛ける。
「たはは、私はまだ子供だよっ……へくちっ」
「まったく、風邪引いたらどうすんだ?」
  俺はさっとコートを脱ぐと、ミニスカートに肩が大きく露出したとても冬着るものとは思えない衣装の蜜柑の肩へかけてやる。
  彼女は、コートの端をぎゅっと掴んで引き寄せた。
「覚えてるかな? …君はいろんな私たちを見てるけど、私はね、小さい頃一度しか会ってないんだよ?」
  ……また昔話か…彼女たちは、あまり長い時間を生きていない。人生を12等分してるんだ、当たり前だ。だから、俺といると必ず1度は昔の話をしたがった。
「ああ、覚えてるぜ。一度だけ、俺が除夜の鐘が聞きたいって無茶なことを言い出て、毎年よりも早くこっち着たんだよな?」
  彼女は、やはり寒いのかちょっとだけ震えながら雪を眺めている。
「そうそう、君と私は寝ないで聞こうねって言い合って…」
  そう、彼女は小学生にしてはありえないくらい真剣だったのを覚えている。それは今思うと自分がいなくなる最後の日だったからだろう。
  除夜の鐘は、彼女にとってちょっとしたカウントダウンに聞こえたのかもしれない。
「俺は寝るなっ、って言われ続けてるうちに、お前とどこか歩いていけば寝ないって考えて…」
「そうそれで、二人で手をつないで駄菓子屋行ったんだよね? 君の奢りで行くことになってたっけ?」
  ………それ以上は言えなかった。その駄菓子屋にたどり着く前に、彼女は牡丹になっていたからだ。
「すまん、あの時はお前に奢れてなかったな」
「覚えててくれたんだ……じゃあ、今奢ってよ」
その格好で行くのかと小一時間問い詰めたいところだが、どうにも本人はやる気らしい。
  二人だけでカラオケに行って朝まで追い出されるんじゃないかってくらい散々騒いで、その夜は過ぎた。


  結局目覚めは、午後一時を回っていた。まあ、徹夜で騒いだんだ、当たり前か……
  酒飲んだ記憶もないが、痛む頭をさすり、そうだ、騒いでるとき唐突に肩組まれてそのまま引き倒されたんだ…と、思い出す。
  けど、なんだかんだで楽しかった。笑いながら歌うたってる地点で、音程もクソもなかったと思うが、最後にバラードを熱唱する蜜柑は、本当に歌がうまかった。
  自分しか知らない、彼女の一面を見れた気がしてちょっと笑みがこみ上げる。
  だけどまあ、よく考えればこの時すでに気がつくべきだった。
  クリスマス・イブは、今日だったのだ。


「うひゃぁ!」
  夜の10時ごろだっただろうか? 何かがさごそと音が聞こえていたのはわかっていたが、それがまさか俺の真上から落下してくる蜜柑だとは気がつかなかった。
「重い……」
  哀れにも俺は下敷きにされ、落下地点の真下……間抜けに穴の下で待機していたわけではない。この馬鹿が、新しい穴を突貫工事しただけだ。
「失敬なっ私はコレでも、女性の平均体重以下だ…流石にこれ以上痩せると胸が……」
「違えよ! どけって言うことだ」
  人の上に圧し掛かり、ぎゃーぎゃー喚く彼女は、幾度かの説得の後、せっかくの天国をフイにするのか? とかブツブツ言い続けたが、彼女にしては物分りよく俺の上から退いてくれた。
「で? なんだ今度は?」
「うむ、ちょっと窓を見ろ!」
  窓を見れば、また粉雪が裏庭へとちらちらと落ちて行くのが見えた。だが、その雪は昨日よりももっと弱い。
「また公園へ行かないか? なあに、今夜はミニスカサンタなんて奇妙な格好ではないぞ」
  クリスマスに着ないでいつ着るんだよ、家で着てればいいじゃないか…そんな俺の思いも空しく、彼女に引きずられるような形で、雪の降る聖夜へと俺たちは繰り出した。


「やっぱ寒くないか?」
  出来る限り厚着をしてきたつもりだったが、ちょっと風も出ていて、やはりちょっと肌寒かった。たぶん、サンタのコスプレではないにしろ、ミニスカートの彼女には辛いはずだ。
「いや大丈夫だ、子供は風の子というじゃあないかっ」
  本当に子供らしい表情で笑う、はぁ、しゃーない。
「まあ、そう言うだろうと思ってな」
  俺は昨日と同じ手すりに着くと、コートを膝に掛けてやる。彼女は、ちょっとだけ顔を赤くして、でも拒否はせずに飽きもせず雪を眺め始めた。
「ホワイト・クリスマス……昨日まで雪を見た事のなかった私への最高のクリスマスプレゼントだなっ」
「そうだな、だけどそれなら、もっといっぱい降ってくれてもよかったのに」
  俺の言った不満に対し、彼女は「そうだね」と返して、微笑んだ。
  錆びた鉄の手すりは、ひんやりと冷えて冷たい。だから、ちょっとでも暖かくなるように、手を握ってやる。その温もりが、雪振る聖夜には心地よかった。
「あのさっクリスマスプレゼントがあるのだよ……目つぶって」
「いーから早く」
「………」
  おい、このシュチュエーションは……駄目だ、俺にはアイツが……だけど…
「大丈夫だよ…桜も拒否したのに、私なんかが出来るわけないじゃないか」
  そう言うなら、俺はこいつを信用するしかない。手すりから降りて目の前に立った彼女は、真新しい白いマフラーに同色のコートでまるで雪の妖精みたいでいとおしく思える。
「ほら…早く……」
  視界が暗転すると、急に心臓の音がでかくなった気がする。しばらくすると、首もとにやわらかく暖かい感触があって…目をあけると俺の首元には、彼女がつけていたはずの真っ白なマフラーが掛けてあった。
「………暖かいか?」
  やばい、目を開けたって心拍数は上がる一方だった。
「ふふふ、この師走蜜柑様からのありがたい手作りマフラーだ。さあ、泣いて喜べ! 目の前に跪いて喜びを表すがいい!! ついでだから狂喜乱舞して、この雪の中を犬のように駆けずり回れ。
そして、どこぞの危ない新興宗教の信者並に思う存分崇めて、抱きしめて、ついでだから今晩のオカズにでもするがいい!!」
  照れ隠しか、急に饒舌になった彼女に対し軽くため息をつくと、目の前に本当に跪いてやった
「うわぁちょっと…」
  あまりの唐突な出来事に硬直する彼女に対し頭を垂れ、称えてる感が出るように勇ましい声で宣言してやる。
「姫! ありがたきお言葉!! この四葉感激の極みでありますっ、そして、姫のものと比べるといささか不安がありますが、姫のために一つ贈り物を用意いたしました」
「え? …ええ!?」
  俺はポケットからプレゼントを取り出すと、跪いたまま顔を上げる。いつもと違うノリに困惑し、真っ赤に染まった蜜柑の顔がそこにあった。
「失礼、手を……」
  にやける顔をどうにか堪え、慌てる彼女手を恭しくとると、その指に銀の指輪をさしてやった。
「……無理…恥ずかしい」
「いつもの俺の苦行だ。人目がないからマシだろ?」
「人目あったらしんじゃう……」
  珍しくうろたえる彼女を思う存分眺めてから、俺は口を開く。
「ほんとはな、あの大晦日のときおもちゃの指輪買ってやろうと思ってたんだよ……」
  だけど、渡す機会は今の今までずっとなかった。
「だから、遅れた何年分もまとめてちょっとリッチにな」
「ありがとう…これで君と逢えない一年も我慢できそうだよ……あっ」

  急に明るくなった気がして見上げた空では、雲が月光の冷たさを嫌ってかわずかに裂け、そこから漏れる明かりが粉雪を照らして輝き落ちる様は、それは、それはとても綺麗だったが…
「うわあぁぁ……」
  隣で歓声を上げる彼女の月光に照らされた横顔もそれに負けないくらい綺麗だった…



  5話
  師走 蜜柑編
  完



  おまけ



  あの大晦日の日…
「あれ、星霜様?如何しましたか?」
「いや、なんでもない。ちょっと、約束が果たせなかったから、何か残るようなものを買っておきたくてさ」
「そうですか……では、そこのおもちゃなど如何でしょう?」
「いやでも……あっおばちゃん、これちょーだい」
「何を買ったんですか?」
「内緒だよ、それよりさ……」
  少年の手に握られたのはおもちゃの指輪。これは泣いてる女の子へのお呪いで直接彼女の手に渡ることはなかったけれど、もっと違うものをプレゼント出来るのを少年は知らなかった。
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