224 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:05:31.53 ID:E2RE4V3X0
第4章 歩く花
( ;^ω^)『僕の聞き間違いかお…?今、クーさんを殺すって聞こえちゃったお』
(;*゚∀゚)『あ、あたしもさっ!! 耳がおかしくなっちゃったかなぁwww』
( ,,゚Д゚)『聞き間違いじゃねぇよ。俺はクーを殺すって言ったんだ』
( ゚ω゚)『そ、そんな!! ギコさんはクーさんが生き返って嬉しくないのかおっ!!』
( ,,゚Д゚)『嬉しくねぇぞゴルァ』
ギコさんは落ち着いた態度を崩さず言った。
( ,,゚Д゚)『人生ってのはたった一度しかねぇから美しいんだ。
たった一度しかねぇから後悔しないように生きるんだ。
バットだか【欠片】だか知らねぇが、突然生き返った挙句腐って死んじまうんなら
この俺の手で引導を渡してやるぞゴルァ』
ギコさんの意見は正論かもしれない。
それでも…それでも…。
( ゚ω゚)『僕は納得いかないですおっ!!』
( ,,゚Д゚)『好きにしろ。俺も納得いってねぇんだ』
僕らは睨みあう。そして、同時に扉を飛び出しクーさんを探して駆け出した。
226 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:09:19.87 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(;*゚∀゚)『あ~ぁ、行っちゃったよ…』
('A`)『ったく、しょーがねぇなぁ。あいつクーさんが行きそうな場所なんて分からねぇだろうに』
(主^ω^)『間違いなく、この街のどこかだと思いますお』
( ゚∀゚)『ほぉ。根拠は?』
(主^ω^)『この世界が【欠片】と相性がいいっていうのは先ほどお話しましたけど、
特にこの街が、ずば抜けて相性がいいんだと思いますお。
だから【欠片】も引き付けられる様にこの街に落ちたんだろうし、
この街を出ようとするとなんらかの制御がかかって出られないと思いますお』
(´・ω・`)『ふむふむ。つまり、秋葉原・原宿・乙女ロードといった
クーのお気に入りスポットは削除できるわけだね。ずいぶん絞られてきたぞ』
(*゚∀゚)『で、候補としては?』
(´・ω・`)『この店の他には、母校の【難杉高】・お気に入りの公園・事故にあった現場。
こんなもんだと思う』
ショボン達が顔をつき合わせる様にして話し合っていると
ξ#゚⊿゚)ξ『…納得行かないわっ!!!!!!!』
突然ツンが大声をあげた。
231 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:12:08.61 ID:E2RE4V3X0
(;*゚∀゚)『うわっ!! びっくりしたっ!!』
('A`)『ななななななななななんだ、突然っ!!』
その場にいた全員が一斉に彼女を見る。
ξ#゚⊿゚)ξ『さっきからクーさんクーさんクーさんクーさんクーさん…!!!!!
あたしに喧嘩売ってるとしか思えないわっ!!
5・6発殴ってやんなきゃ気がすまないっ!!』
( ゚∀゚)『…気の毒としか言えねぇな』
ゴスッ!!
ξ#゚⊿゚)ξ『そこのブタっ!!』
(主^ω^)『……』
(^ω^主≡主^ω^)
σ(^ω^;主)『?』
ξ#゚⊿゚)ξ『あんたの他にブタがどこにいるのよっ!! あんた、クーさんがどの辺にいるか分かるんでしょっ!!』
(主;^ω^)『いや…この街は僕の【欠片】と相性が悪いらしくて』
ξ#゚⊿゚)ξ『殺されたくなかったら死ぬ気で探しなさいっ!!
あいつは絶対にクーさんを探し出すはずだわっ!! 先回りするわよっ!!』
そう言うとツンは哀れな異邦人の顔面を鷲掴みにし、外に飛び出した。
234 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:13:57.29 ID:E2RE4V3X0
(*゚∀゚)『…似たもの同士だねぇ』
(メ)∀゚)『で、お前らはどうするんだよ?』
右頬を腫らしたジョルジュが尋ねた。
(*゚ー゚)『ごめん…あたしはどうすればいいのか分からない…。
ギコ君が言う事ももっともだけど
でも、全面的に賛成できない気持ちなの
だからギコ君を探して…もっとギコ君の気持ちを話してもらおうと思う』
それを聞いたショボンは納得したかのように頷く。
(´・ω・`)『いや、その方がいいよ。ギコが言う事は正論かもしれないけど、
正論が全て正しいわけじゃないし、ギコはとにかく口下手で誤解されやすいからね。
ギコの事を頼むよ』
('A`)『途中で内藤やクーさんに会ったら連絡してくれ』
しぃは俯いていた顔を上げ、もう一度『ごめんね』と呟くと扉の外へ駆け出した。
236 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:15:33.21 ID:E2RE4V3X0
(´・ω・`)『さてと。それじゃ僕も行こうかな』
ショボンは寄りかかっていた壁から、腰に勢いをつけて身を離す。
(*゚∀゚)『…? 一緒に探してくれないのかいっ?』
(´・ω・`)『すまない。彼女とは2人で話をしたくってね』
('A`)『ショボンさんが一緒に行ってくれれば力強かったのになぁ』
口ではそう言いつつもツーとドクオが無理には誘おうとしないのは、
ショボンの表情に決意めいたものを見出したからだろう。
(´・ω・`)『…ジョルジュはどうするんだい?』
( ゚∀゚)『あぁ。俺様には俺様の考えってヤツがあるんでな』
(´・ω・`)『分かった。それじゃ、また後でね』
3人はジョルジュに別れを告げると扉の外に出る。
それを見届けたジョルジュは一人バースペースに向かうと、
冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
( ゚∀゚)『さて…俺様はどうするかね』
プルトップを空けながら呟く。
誰よりも確実にクーを見つけるためにはどうするべきか?
ジョルジュはソファに体を埋めると、思考を開始した。
239 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:17:09.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー('A`)(*゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーー
ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。
そうとしか形容できない不気味な音を立てながら俺はスクーターを走らせる。
最近ツーがイヨゥから安く買い上げた代物だが、
随分と長く乗ってきたものなのか、走らせる度に『壊れるんじゃないだろうか?』
と俺を不安にさせる昨日が初期設定されていたのには閉口した。
イヨゥはかなり頑張って稼いでいるから、スクーターなんてすぐに買い換えられると思うのだが…
借金でもあるのだろうか?
そんな意味のない事を考えてしまう。
(*゚∀゚)『ほら!! もっと急いで!!
今何キロ出てるの!? …って20キロ!?
何やってんだい!! 日が暮れちまうよっ!!』
(;'A`)『いや、元々コレ一人乗りだから。2人乗りってのが無理があるんじゃないか?
そもそもコレ、法律違反だから』
俺は荷台に無理矢理座ってヘルメットをペシペシ叩いているツーに答えた。
(*゚∀゚)『何言ってんだい!! 男なら法律に縛られるより、法律を作る立場になることを考えなっ!!
あ、そのボタンなんだい!? もしかして押したら翼がにょろ~んって出るとか…?』
('A`)『どっかのドクスペと一緒にするな。
これは只のクラクションだ』
(*゚∀゚)『…あ、そーなんだ』
246 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:19:16.90 ID:E2RE4V3X0
('A`)『…それにしてもツンも可哀相になぁ』
俺は誰かに聞かせようとするでもなく口にする。
(*゚∀゚)『ん? 何がだい?』
当然耳ざとくそれを聞いたツーが尋ねてきた。
('A`)『…内藤の事だよ。
あいつ、クーさんが生きてる時も死んじまってからもクーさんにベッタリだっただろ?
俺、ツンとは幼馴染だったからさ。
分かるんだよなぁ…表面じゃただキレてるようにしか見えないけど、
誰にも見せない部分で悲しんでる。
それが見てて可哀相でなぁ』
言いながら俺は更にスピードを落とし、フラフラしながらカーブを曲がる。
(*゚∀゚)『そんな事わたしだって気付いてたさっ!!
それにドッ君とブーちゃんは親友なんだろっ!!
だったら何で言ってやらないのさっ!!』
カーブを曲がりきった俺はゆっくりと速度をあげる。
('A`)『…んな事はとっくに言ってやったよ』
(*゚∀゚)『……そしたら何だって?』
249 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:20:36.74 ID:E2RE4V3X0
('A`)『………』
言ってもいいのだろうか?
少なくとも内藤は俺が誰にも言わないと信じて俺に話してきたはずだ。
(*゚∀゚)『ちょっと、ドッ君!! 聞いてるのかいっ!!』
いや。
俺はツーに話したかった。
聞いて欲しかった。
話すべきだと思ったからこそ、こんな事を言い出したのだろう。
俺は再びボロスクーターを減速させ、コンビニの駐車場に駐車した。
完全に駐車したのを見計らってツーが荷台から飛び降りる。
俺はヘルメットの風除けを上げると、煙草をくわえ火をつけた。
(*゚∀゚)『…そんなにマジメな話なのかい?』
俺は答える代わりに肺に溜め込んだ煙を吐き出す。
('A`)『…あいつにとって俺達は本当の家族だったんだよ』
そう言って俺は再び煙草をくわえた。
250 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:21:48.55 ID:E2RE4V3X0
(*゚∀゚)『…なんだい、それ?』
('A`)『うん。本当はあまり人に話すべき話じゃないんだけどさ』
俺はそう前置きして続ける。
('A`)『…あいつがバーボンに入社する前。
すげー駄目人間だったのは知ってるだろ?』
(*゚∀゚)『うん。なんとなく聞いた記憶があるさ』
('A`)『あいつ、すげー甘やかされて育ったらしいんだわ。
で、自分だけが特別…つーか、世界は自分を中心に回ってる。
自分の考えどおりに物事が進まないのは間違ってるくらいの思考の持ち主だったらしい』
(*゚∀゚)『…そりゃ…まぁ…なんつーか…捻じ曲がってるねぇ』
ツーは小さなリュックをガサゴソと漁ると、小分けのチョコレートを取り出し口に放り込んだ。
('A`)『そんな性格だから、どこに行っても心の底を打ち明けられる友達なんか出来ない。
同じ様な負け犬だけが集まる場所に逃げ込んで…
誰かと話しながらずっと孤独を感じてたって…あいつは言ってたよ』
(*゚∀゚)『ご両親は…何も言わなかったのかねぇ』
('A`)『…甘やかされてたって言っただろ。
いつか内藤が自分から立ち上がるまで見守るつもりだったんだろうな』
251 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:22:52.32 ID:E2RE4V3X0
俺は備え付けの灰皿に煙草を放り込むと、すぐ2本目の煙草をくしゃくしゃの箱から取り出した。
ツーはチョコレートをかじりながら苦々しい顔をしている。
(*゚∀゚)『…あたしなら嫌だなぁ、そんなぬるま湯みたいな生活。
生きてる実感がないって言うか…
もっと【めがっさ!!】【にょろ~ん】って生きたいと思うさっ!!』
俺は頷く。
('A`)『うん。あいつも心の底ではそれを望んでいたんだと思う。
でも、そんな環境でも居心地が良ければ居ついちまうもんなのかもな。
なにせ周りには自分の味方しかいないんだ。
表面上じゃ居心地良かっただろうぜ』
俺が黙って手を差し出すと、その上に包装紙の解かれたチョコレートが乗せられる。
('A`)『丁度いい湯加減の底なし沼ってあいつは表現してたよ』
チョコを口に放り込み、言いながら俺は顔をしかめた。
その顔がよほどの物だったのか、ツーが心配そうに言う。
(*゚∀゚)『…ドッ君、大丈夫? 無理して話さなくてもいいんだよ』
違う。
違うんだ。
確かに話していて気持ちのいい話じゃない。
でも、話さなくてはいけない。
それより、むしろ…。
256 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:24:18.00 ID:E2RE4V3X0
(;'A`)『苦いよ、コレ!! 人間の食べるもんじゃないよ!!
何これ!? 俺に何食べさせたの!?』
(*゚∀゚)『…カカオ120%』
(;'A`)『やばいよコレ!! 毒だよ!!』
(*゚∀゚)『…はまると癖になる味なんだけどなぁ』
俺は口直しに煙草を思い切り吸い込む。
うん。
口の中で苦味が倍増して痺れる感じで最悪だ。
('A`)『…まぁ、でもここまで聞けばあいつにとって俺達が本当の家族だって理由がわかっただろ?』
ツーはそれを聞いて頭の上に大きな電球が輝いたような顔をした。
(*゚∀゚)『あ…そうか…』
そう。
内藤にとって俺達は本当の家族だった。
自分のエゴをぶつけ合い、
喧嘩し、
心の底から相手の事を思いやれる。
あいつが求めながらも手に入れられなかった絆で結ばれていたんだ。
259 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:26:55.69 ID:E2RE4V3X0
('A`)『あの時は偶然クーさんが死んじまったけど、
俺達の誰が死んでもあいつは同じ位悲しんだと思う。
ただ、ずっと自分を見守ってくれていた人が死んだショックは大きかったんだろうぜ』
(*゚∀゚)『…だからあの時あんなに取り乱したのかねぇ…』
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
真相はあいつにしか分からないけど、俺はきっとそうだろうと思う。
(*゚∀゚)『……あたしらは、ブーちゃんにとってそこまで大切な再会を駄目にしちゃったのかね』
ツーが珍しく肩を落とす。
俺は答える代わりにスクーターにまたがり、エンジンキーをひねった。
('A`)『あぁ。だからってここで立ち止まるわけにはいかねぇ。
俺達が出来る罪滅ぼしは1分でも早くクーさんを見つけ出してやる事だけだ』
ツーは顔を上げると俺の背に体を押し付けるように荷台にまたがる。
ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。
不気味な振動音と共にスクーターは加速を始めた。
目指すはクーさんが好きだったという公園。
速く。1分1秒でも速く。
俺は運転に全神経を集中させる。
だから、俺はコンビニの側の電柱の上に翼を持った女性が立っていた事も
彼女が俺達のはるか上空を飛び去っていった事も気がつかなかった。
261 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:27:57.19 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(*゚ー゚)『はぁ…はぁ…はぁ…』
わたしは今、全力で走っている。
腕が。足が。なにより胸が重い。
ツン姉みたいにぺたんこだったら走りやすいんだろうなぁ…と、
本人が聞いたら激怒しそうな嫉妬が頭をよぎる。
走ってる時ってどうして余計な事が頭に浮かぶんだろう。
そんな余計な考えがまた頭に浮かぶ。
今は少しでも速く足を動かさなきゃいけないのに…。
(*゚ー゚)『はぁ…もぉ…駄目…限界…』
わたしの足はそんな考えが浮かんだ瞬間、ついに止まってしまった。
(*゚ー゚)『…何やってんだろ、わたし…目的地も決まってないのに…』
わたしはブロック塀に寄りかかると、大きく酸素を吸い込み呼吸を整えようとする。
わたしがこっちに走っている理由は1つ。
この方向にはクーさんが住んでいたマンション、好きだったという公園、事故現場が集中している。
別の方向に走るよりギコ君を見つけ出せる可能性が高いと思ったからだ。
(*゚ー゚)『…でも…こんなにあちこちマンションだらけで…見つかるわけないよ』
口の中が粘りつく唾液で気持ち悪い。
わたしは更に酸素を取り入れやすくしようと顔を空に向け・・・・・・
それを見つけた。
265 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:29:29.69 ID:E2RE4V3X0
(*゚ー゚)『…鳥?』
青い空を気持ちよさげに駆ける真っ白い一羽の鳥…。
違う!!
あれは鳥なんかじゃない!!
ワンピースを着た鳥なんかいるはずがない!!
(*゚ー゚)『…クーさん…本当に生き返ったんだ…』
わたしは溢れそうになる涙を堪え、動かない両足に気合を入れる。
(*゚ー゚)『大丈夫…まだ走れる…』
クーさんが向かう先にギコ君がいるかどうかはまだ分からない。
でも、クーさんと合流する事は決して無意味じゃない。
(*゚ー゚)『クーさん…待って…』
わたしは声にならない声をあげながら大空を羽ばたく天使を追う。
不思議と、みんなに連絡する事を忘れてしまっていた。
266 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:30:32.46 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
( ,,゚Д゚)『ここで降ろしてくれ』
運転手『わかりやしたwwwwww1020円になりやすwwwサーセンwww』
( ,,゚Д゚)『…高いな。遠回りしたんじゃねぇだろうな?』
運転手『んな事ないっすwwwでもお客さん物好きッスねwwwこんな空き地に向かってくれなんてwww』
( ,,゚Д゚)『黙れ』
運転手『サーセンwww』
俺はお喋りな運転手のタクシーを降りると、その空き地の片隅に向かった。
元々マンション建設予定地だったそこは、死亡事故現場という縁起の悪い場所のせいか建設は見送り。
今ではただの空き地になっている。
無法者によってゴミが投げ捨てられ近隣住民は随分迷惑しているそうだが、
その一角だけは今でも綺麗に掃除され
ポツンと立った石の前に花や酒のミニボトルが供えられていた。
俺は手にした花をそっと置くと膝をつき、その事故の犠牲になった唯一の人物の冥福を祈る。
どれほどの時間そうしていただろうか。
背後に誰かが立つのが分かった。
『不思議な物だな。自分の死亡現場に花を供えてもらうシーンを見るというのは』
俺は自分の直感が正しかった事を確信した。
267 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:31:59.97 ID:E2RE4V3X0
( ,,゚Д゚)『…本当に生き返りやがったんだな』
俺はゆっくりと立ち上がり振り向く。
黒すぎて緑がかった長い髪。
光を反射して紫色に輝く瞳。
御丁寧に服装まであの頃と同じやたらヒラヒラしたの着てやがる。
あの頃と違う事といえば、背中につけた羽が玩具じゃなくて本物だって事くらいか。
懐かしい。
全く懐かしすぎて反吐が出そうだ。
川 ゚ -゚)『…全然驚かないんだな』
俺は反吐の代わりに唾を吐き出す。
( ,,゚Д゚)『内藤達から話は聞いていたからな。
それより、内藤からはクソガキになっちまったと聞いたが?』
川 ゚ ー゚)『あの時のわたしは何も分かっていなかったからな。混乱もしていた』
クーはふふ…と笑い、言葉を続ける。
川 ゚ ー゚)『内藤の部屋を飛び出て…何度も自分に問いかけたよ。
何故、わたしは生き返ったのか…とね。
そうしたら【欠片】は答えてくれた。
夢中になって【欠片】と語り合ったよ。
今では【欠片】の力の全てを知っているし、使いこなす事が出来る』
270 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:35:07.71 ID:E2RE4V3X0
( ,,゚Д゚)『【欠片】と語った…だと?』
答えつつ身構える。
アドレナリンが全身から噴出すのが分かった。
川 ゚ ー゚)『そう。今のわたしはいわゆるOVER ZENITH状態というわけだ』
( ,,゚Д゚)『…なら、俺が何をしようとしているか…分かるよな?』
クーの顔が真剣なそれに変わった。
川 ゚ -゚)『あぁ。だが、わたしはまだ死にたくはない』
その言葉が終わるか終わらないかのうちに俺は跳びかかった。
クーは大きくバックステップして身をかわす。
川 ゚ -゚)『…何故、お前はそこまでわたしの死を望む?』
( ,,゚Д゚)『……お前なら分かるんじゃねぇか?』
川 ゚ -゚)『分かる。だが、ギコ。お前の口から聞かせて欲しい』
…ちっ。
どの道ここからではクーの所まで一跳びでは届きそうにない。
俺は構えを解くと、クーに向き直った。
( ,,゚Д゚)『…死んだ人間が生き返る。そんな事はあってはいけねぇんだ』
273 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:37:05.74 ID:E2RE4V3X0
( ,,゚Д゚)『人生ってのはな…一度っきりだから意味があるんだよ』
俺はついさっき内藤に言った言葉をもう一度口にする。
( ,,゚Д゚)『…人はいつか必ず死ぬ。それは避けられねぇ。
だからこそ人はその人生を輝かせる為に必死になる。
一期一会…人との絆を大切にする。
二度と会えない人との思い出を守り、
自分がくたばっても誰かの心に自分が残るように…命がけで生きようとする』
川 ゚ -゚)『……』
いつしか目の前が滲んできた。俺はそれを無視して続ける。
( ,,;Д;)『…そうやって…肉体は滅んでも心の中の真実の絆は永遠に続いていく…
それこそが生きる意味…生きる全てだゴルァ』
頬をつたう涙が地面に落ち、染みを作った。
( ,,;Д;)『…お前が死んじまった時、悲しかったぞゴルァ…辛かったぞゴルァ…生き返ったと聞いて嬉しかったぞゴルァ…』
川 ゚ -゚)『……』
( ,,;Д;)『…でも…お前はすぐにまた消えちまう運命なんだゴルァ。
そうしたら…残された俺達はどうやって生きればいい?
また奇跡を待って…二度と起きない奇跡を信じて…
心の中の本当のお前を否定して…妄想の中のお前を信じて…そんな人生に何の意味がある!!
お前との思い出を…美しい思い出を壊したくねぇんだよ!!』
俺の叫びが2人きりの空き地に響きわたった。
278 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:39:46.50 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ ー゚)『…ありがとう。お前の気持ちはよく分かった』
( ,,;Д;)『ゴルァ?』
川 ゚ ー゚)『【欠片】の力で知っていたよ。どんなに暑い日も寒い日も。
どんなに疲れていてもお前はここを綺麗にしてくれていたんだな』
( ,,;Д;)『…あぁ。ここに来ればお前に会える気がして…毎日毎日話しかけてたぞゴルァ』
川 ゚ ー゚)『それも知っている。嬉しかったよ。わたしが死んでもお前は変わらないでいてくれた。
偏屈なトコも。頑固なトコも。口下手なトコも。昔どおりだ』
( ,,;Д;)『…!! だったら!!』
川 ゚ -゚)『それでもわたしにはやらねばならない事がある!!
それを成し遂げるまでは死にたくないっ!!』
俺はその言葉を聞いてコートの袖で涙を拭う。
滲んでいた視界が一気にクリアになった。
川 ゚ -゚)『わたしは死ねないっ!! 皆の心の中のわたしの…』
( ,,゚Д゚)『お前を殺すっ!! 皆の心の中のお前の…』
川 ゚ -゚)( ,,゚Д゚)『 思 い 出 を … 絆 を 守 る 為 に っ ! ! 』
一陣の風が吹く。
それが戦いの合図になった。
281 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:41:22.47 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『……接続…』
クーが呟く。同時に折りたたまれていた翼が大きく開いた。
その体が白く輝く。
光は突風となり、枯葉とともに俺を吹き飛ばそうと襲いかかってきた。
川 ゚ -゚)『……アクセス…』
その言葉と共にクーの右手に全身を包み込んでいた光が集合。
神々しい輝きの剣となった。
( ,,゚Д゚)『…これが…DATの力かゴルァ…』
初めて体験する圧倒的なプレッシャーに足が震えそうになる。
なるほど。
【欠片】とは言え、1つの世界を構成していただけの事はあるってか。
しかし俺も引くわけにはいかねぇ。
両腕を十字に組んで顔面をガードする。
暴力的なまでの風に逆らい、俺は地を蹴った。
狙いはこの事件の全ての元凶。
クーの背中で輝く翼……DATの【欠片】だ。
286 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:42:29.97 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『剣状光!!』
( ,,゚Д゚)『ゴルァ!!』
俺が駆け出すと同時にクーは光の剣を下段に構え突っ込んできた。
すれ違いざま。俺は光の剣をかわしつつ、その翼めがけて渾身の一撃を叩き込む。
クーは俺の拳を避けつつ、光の剣を切り上げる。
交差は一瞬。
俺は疾走の勢いを殺すと同時に、背後からの追撃を警戒して
二度三度地面を転がって立ち上がる。
胸元にかすかな痛み。
しかし、俺の拳も確実にその翼を捕らえていた。
純白の羽が数枚。俺の体の周りを舞い落ちる。
振り向くと、クーは俺に背を向けて大地に膝をついていた。
女に手を上げるのは好みではないが、今のクー相手に手を抜けるほどの余裕は無い。
( ,,゚Д゚)『まだまだだぞゴルァ!!』
俺は叫び、剥き出しの標的目掛けて飛びかかる。
その攻撃をバク転の要領でかわし、クーは上空に舞い上がった。
291 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:44:12.67 ID:E2RE4V3X0
( ,,゚Д゚)『降りてきやがれ!! 卑怯だぞゴルァ!!』
俺は手の届かない上空にいるクーに無駄と知りつつ叫んだ。
しかしクーは冷ややかに俺を見つめるのみ。
川 ゚ -゚)『戦いは終わった。すでに君の勝ちは無い。
いや。剣状光に目を奪われていた時から結果は決まっていた』
そう言って左手にした茶色い皮で出来た何かを見せ付ける。
あれは…? 俺はそれの正体に気付き、胸の裏ポケットをまさぐる。やっぱりない。
( ,,゚Д゚)『…俺の財布?』
何をする気だ? 全く理解できねぇ。
俺はその意表をついたクーの行動に一瞬戦意を削がれた。
川 ゚ ー゚)『ふっ…。これでわたしの勝ちは完璧なものとなる』
クーは言うやいなや、俺の財布の中身を空から撒き散らし始めた。
財布を奪い金を撒き散らす事で俺の集中力をそらす作戦か…いや、違う。
クーがそんな陳腐な策をとるわけがねぇ。
(*( ,,゚Д゚)『てめぇ!! 何しやがる!!』
川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の××××××は108枚まであるぞ』
その途端。
背後から俺を襲う新たな殺意のオーラ。
あぁ。そういう事か。
俺はクーの目論見と自身の敗北を理解した。
297 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:46:35.48 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
涙を流しながら絶叫するギコ君。
その姿を見たわたしは、ただ2人を見守る事しか出来なかった。
突然の風を合図に話は終わり、戦いが始まる。
ギコ君がその涙を拭い、クーさんの右手に光の剣が発動した。
(*゚ー゚)『!!』
すれ違いざまに一撃を叩き込もうとする2人。
互いに身をかわし、ギコ君の続いての攻撃を避けるやクーさんは上空に飛び上がる。
(*゚ー゚)『…あれって?』
クーさんが取り出したもの。
それは確かに見覚えのある…絶対に触られせてもらえないギコ君のお財布。
クーさんはニヤリと笑うと、その中身を宙にばら撒き始めた。
(;*゚ー゚)『…何やってんだか…』
その時、風に乗って数枚の紙幣とレシート。そして【それ】がわたしの足元に舞い落ちた。
わたしは【それ】を拾い上げる。
【それ】にはこう書いてあった。
303 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:47:54.83 ID:E2RE4V3X0
【おっぱい女学園 あけみ ギコちゃんまた遊びに来てね(はぁと】
【破廉恥超特急 みどり 090-×××・・・・・・・】
【セクシーメイド喫茶 ご主人様。ちかは貴方の奴隷です】
(* ー )『……』
キレタ…キレチマッタヨ…
わたしは足を前に進める。
この戦いに終止符を打つ為に。
そして、敗者に鉄槌を下す為に。
クーさんは楽しそうに財布の中身を宙にまく。
ありがとう、クーさん。
ギコ君の不審な行動の意味がよ~く分かったわ。
大事なお話の途中で悪いけど、ちょっとギコ君借りるね。
川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の風俗嬢の名刺は108枚まであるぞ』
310 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:50:23.05 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦いは終わった。
川 ゚ -゚)『人の夢と書いて儚い…か。虚しい物だな』
し、しぃ!?いつからココに!?
どこかで聞いた台詞を口にしながら、わたしは闘いが終わった後の冷たい風を身に受ける。
ちょっと待て!! 今はそんな事言ってる場合じゃ…!!
ギコの気持ちは分からないわけではないし、少し嬉しくもあった。
だが、わたしはまだやる事がある。死ぬわけにはいかない。
うるさいうるさいうるさい!!
川 ゚ -゚)『さらばだ、ギコ。この身があるうちにもう一度会いたいな』
ありがとう。 や、やめ…落ち着け…ハニャーーーーーーーーーン!!
聞こえただろうか?
最後にそう投げかけ、騒々しいBGMを背にわたしは翼を羽ばたかせた。
(#*゚ー゚)『10回殺してやるーーーーーーーっ!!!!!!!』
316 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:52:46.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(#*゚ー゚)『…はぁ…はぁ…はぁ……』
戦いは終わった。
足元にはボロ雑巾のようになったギコ君が転がっている。
(*゚ー゚)『風俗と書いて浮気。思い知ってね…』
呟いてからわたしは空を見上げる。
そこにはもうクーさんの姿は無い。
それを確認してからわたしはその場に座り込み、ギコ君の頭を胸に抱え込んだ。
あの時。ギコ君の背後に立った瞬間。
わたしには何故かクーさんの考えが理解できた。
クーさんが残された時間で何をしようとしているのか? 心の中に流れ込んできた。
だから、こんな形だけどクーさんの味方になってギコ君を止めた。
(*゚ー゚)『…ごめんね、ギコ君』
そう呟いて愛しい人の頭を強く抱きしめる。
(*;ー;)『最初から全部聞いてたんだ…。
でも…何でも一人で抱え込んで解決しようとしないで。
2人で乗り越えよう…それも…私達の絆でしょ?』
すまなかったぞゴルァ。
胸の中でギコ君が小さな。本当に小さな声で言った。
でも…お願いだから風俗は控えてね。 コロスヨ
最終更新:2007年03月19日 23:25