501 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:15:42.94 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「完治したお」
言って、左足の包帯を外して見せるブーン。
そこには大きめのかさぶたのような物がある程度で、傷はもうほとんど見えない。
('A`)「何だかんだ言っても、二日余りで完治したな」
( ^ω^)「お」
(主^ω^)「じゃあ……行くかお」
('A`)「そういや聞いてないが、ジョン。お前、“力”扱えるようになったのか?」
(主^ω^)「任せて欲しいお。ちょっと良い練習相手がいて、その人のおかげで自信持てたお」
('A`)「良い練習相手?」
(主^ω^)「公園で練習してたらいきなり喧嘩売って来たんだお。ハインさんって人で……」
(;^ω^)「……お?ドクオ。もしかして……」
(;'A`)「あー、あいつだ。間違いねぇ」
503 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:17:10.61 ID:e5U/hMe20
(主;^ω^)「?……お?」
( ^ω^)「いや、何でもないお。気にしないで良いお」
('A`)「さて……じゃあ、案内してもらおうか。その廃ビルってとこに」
(主^ω^)「おっ!」
それから家を出て、二十分弱。
彼らは件の廃ビルの前に立った。
周りに人は誰もいない。不自然なほどに。
だがそれは都合の良い事だった。
三人はそれぞれ“力”を解放する。
まもなく、ブーンの足は白銀の異形へ。
ドクオの左腕は闇色の異形へ。
ジョンの左腕は白銀の異形へ、姿を変える。
506 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:19:19.55 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「クリテロと、再戦だお」
ジョンが、左腕の刃でひゅっと風を切る。
('A`)「っは……どの程度のもんなのかね。楽しみだ」
ドクオが、悪魔のようなその腕をぎゅっと握り込む。
そして―――
( ^ω^)「行くおっ!!」
ブーンが、その白銀の足でたんっと地面を蹴った。
続いて、ドクオ、ジョンも走り出す。
階段を駆け上がる。五階以外は眼中にない。
すぐに三人は五階に辿り着く。
どこかのDQNがやったのであろう、どこかの曲がったドアが無理に嵌め込まれていた。
( ^ω^)「邪魔だおっ!」
ブーンはそれを思いきり飛び蹴り。
ドアは勢いよく吹っ飛び、そのドアはやはり地面に落ちる前に粉砕される。
507 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:21:13.84 ID:e5U/hMe20
そこには―――
( ゚ ゚)「やっと来たかお」
―――紫の右腕をブーン達に向けるクリテロがいた。
( ^ω^)「来てやったお」
( ゚ ゚)「わざわざ殺されに来るとは。よほど死にたいのかお、ブーン。
それに……新たな死にたがりもいるみたいだお」
('A`)「あぁん?俺の事か?」
( ゚ ゚)「その通りだお」
('A`)「死にたがりなんて名前じゃねぇ。俺はドクオだ。
暇を潰しに来た。よろしく……あー、何だっけ。クリトリスだっけ?」
( ゚ ゚)「クリテロだお。なめるなお。殺すお?」
('A`)「っは。殺れるものなら?」
( ゚ ゚)「……良い度胸だお」
眼に邪悪な光を灯らせながら、クリテロは首を鳴らす。
510 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:22:40.32 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「……クリテロ」
( ゚ ゚)「気安く呼ぶなお」
(主^ω^)「もうすぐ呼べなくなる名前だお。ちょっとくらい呼ばせろお」
( ゚ ゚)「死ぬって事を分かってるのかお」
(主^ω^)「いや」
( ゚ ゚)「?」
(主^ω^)「死ぬのは君だお。死人の名前はそうそう呼べるものじゃなくなるお?」
( ゚ ゚)「……ふざけた事を。まぁ、どちらが死ぬかは……これからの戦いが決めるお」
その言葉を合図としたかのように。
ブーン。ドクオ。ジョン。そしてクリテロ。
四人が同時に動き出した。
513 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:24:00.00 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「先発、ブーン!行くおっ!!」
ブーンが地面を蹴り、クリテロとの距離を一瞬でゼロにする。
( ゚ ゚)「先発?特攻の間違いだお?」
クリテロはあくまでも冷静に右腕を繰り出す。だが、その右腕は空を殴るのみ。
ブーンはクリテロの拳が繰り出される前に、既に後ろに大きく下がっていた。
( ^ω^)「接近はフェイクだおっ!」
( ゚ ゚)「ふん、小賢しいお」
離れたブーンに杭を放とうと、右腕を向ける。
一瞬。ブーンに集中していたクリテロの右足に、衝撃が走る。
クリテロが驚いてそちらを見ると、そこには足を突き出しているドクオがいた。
('A`)「あの馬鹿に気ぃ取られてる暇はないんじゃねぇのー?」
(;゚ ゚)「くっ!?」
ドクオは左腕だけで驚くほどの早さのラッシュをかける。
クリテロはそれを何とか避け、受け、いなす。
517 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:25:22.81 ID:e5U/hMe20
('A`)「お、流石は戦闘のプロ。やるねぇ。いつまで攻撃に耐えられるかな?」
( ゚ ゚)「不意を突いたってだけで調子に乗るなお!」
そして、反撃。
クリテロの杭が、ドクオの頭蓋目掛けて超至近距離で発射された。
だが。
('A`)「はい予想通りー。撃つ軌道が丸見えだってんだ」
ドクオはそれを頭を横にずらすだけで避ける。
同時に、クリテロの脇腹に肘を撃ち込んだ。
(;゚ ゚)「っぐ!!」
だがクリテロは苦痛に耐え、隙だらけのドクオを蹴り飛ばす。
(;'A`)「おぉっ!?」
ドクオは吹き飛ぶ。
しかし、その体を受け止める者がいた。
(主^ω^)「よいしょーっ!」
ジョンだ。
522 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:26:51.18 ID:e5U/hMe20
('A`)「お、ナイスキャッチ」
すとん、と地面に降り立ってドクオは首を鳴らす。
('A`)「あの攻撃に耐えるとは、お宅、中々に我慢強いじゃねぇか」
だがな、とドクオは続ける。
('A`)「俺一人をどうにかしたからって、油断はいけねぇな。
俺とジョンだけじゃなく、ここには三人いるんだぞ」
(;゚ ゚)「……もしやっ!?」
後ろから殺気を感じて、クリテロは明らかに焦って頭を防御する。
次の瞬間、大きく鳴り響く金属音。
いつのまにか彼の後ろに回ったブーンのハイキックを、彼はギリギリの所でガードしていた。
( ^ω^)「おっ!ガード出来たかお!運が良いお!」
(;゚ ゚)「ぐっ!」
ブーンの足を弾き、無理矢理隙を作る。
隙が出来た所で、クリテロはブーンを殴り飛ばした。
526 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:28:25.39 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「おぶうぇっ!」
妙な呻き声を出して、ブーンは転げ回る。
その方向はドクオとジョンのいる方向で、またも三人は固まる事になった。
('A`)「お疲れさん」
(;^ω^)「っつつ……さっすがに強いおー」
('A`)「つっても、全然行けるぞこれは」
(主^ω^)「……終わらせるお!」
三人の視線の先には、肩で息をするクリテロ。
(;゚ ゚)「はぁっ……はぁ……。何だお、あいつら……。意味が分からんお」
531 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:30:31.61 ID:e5U/hMe20
クリテロは焦っていた。
己の攻撃が思った通りに当たらない。
敵の攻撃も防いでいるとはいえ、かなり際どい物だ。
その焦りが身体を思うように動けなくし、更に焦らせる。
彼の中で最悪の悪循環が起こっていた。
だが彼の眼には、未だ邪悪に輝く光。
右手にだって“力”がこもっている。
彼は諦めていなかった。
(;゚ ゚)「さすがに三人相手てのはキツイお……」
ぎゅっ、と、クリテロは強く右腕を握り込む。
( ゚ ゚)「だけど、負ける訳にはいかないお。僕は“影”じゃないって事を証明するんだお!
僕は僕だお!誰かの影じゃない!僕はクリテロという一つの存在なんだお!それを―――証明するんだお!!」
533 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:32:08.07 ID:e5U/hMe20
叫んで、彼は右腕を掲げる。
その右腕は強く紫色に輝いて―――
( ゚ ゚)「DATの欠片よ!僕に更なる“力”を与えろお!奴らを葬り去れる“力”を!
僕の存在をこの世界に誇れるだけの“力”を、僕に与えろお!!」
―――『ゴキリ』
はっきりとした音が、灰ビル内に不気味に響き渡る。
DATは己を行使する者の想いの力を糧に、その者の想いに答える。
クリテロは“力”を非望し、切望し、渇望した。DATがそれに答えるほどに。
クリテロの右腕が、更なる異形へと変貌する。
“力”が更に“力”を呼び、その形を更に邪悪に、更に醜悪に、更に凶悪に。
ブーン達三人はそれを見ているしかなかった。
止めなければならないと分かっていても動けない。体が恐怖に似た何かで動いてくれない。
そして―――
(;゚ω゚)「な……何だお、あれ」
―――わずか二十秒後。
クリテロの右腕は異形の極みに姿を変えていた。
540 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:34:00.31 ID:e5U/hMe20
変化する部位は肩まで伸び、その肩からは二対の巨大な突起物。
右腕全体が異様なほどに筋肉質になり、身体に不相応なほど巨大になる。
腕全体に針のような突起物が無数に生え揃い、肘からは肩と同じようなサイズの突起物。
爪は更に太く鋭く。手は巨大になり、掌の穴も巨大になっていた。
その見た目は―――化け物、そのものであった。
('A`)「“力”の解放……ねぇ。っは。ろくなもんじゃねぇな。モンスターめ」
(主;゚ω゚)「クリテロ……お前……」
三人は、戦慄する。
その眼はクリテロの右腕のみに集中しきっていた。
クリテロはぶぅん、と、異形の腕を軽々しく振るう。
そして満足気に頷いた。
( ゚ ゚)「……これが“力”、かお」
541 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:35:09.04 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「……これが“力”、かお」
そこで彼は突然、三人に掌を向ける。
(;゚ω゚)「っ!?」
くくくっ、と掌の中央の穴が少しだけ広がり―――
( ゚ ゚)「お、お、お、おぉぉっ!!」
―――巨大な杭が、音速を超えて発射された。
(;'A`)「!? お前等、伏せろぉぉっ!!」
聴覚、視覚が強化されているドクオが杭を感知。必死の形相で叫ぶ。
二人はそれに応じる。
一瞬。
耳が痛くなるほどの轟音が三人の近くで鳴り響き、杭が壁に刺さった。
三人はすぐに立ち上がり―――そして、驚愕。
彼らの背後にあった壁には、紫色の巨大な杭。
人の頭ほどの太さで、肩から指先ほどまでありそうな長さ。
当たればただでは済まない、という事が一瞬で分かる代物だった。
546 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:36:19.55 ID:e5U/hMe20
(;゚ω゚)「お……お、お?」
(主;゚ω゚)「こ、こんな……」
呆然とする二人。
(;'A`)「気ぃ抜くな!来るぞ!!」
ドクオの叫び。それからすぐに響く、重く鈍い金属音。
二人の目の前で、ドクオの左腕とクリテロの右腕が対峙していた。
( ゚ ゚)「ふん……この腕にぶつかって来れるとは。やっぱりお前、良い度胸してるお」
力任せに右腕を横薙ぎに振るう。
ドクオはそれをすれすれの所でしゃがんで回避。
(;'A`)「っち。攻撃の速度まで上がってんのか」
言いつつ、再び襲い来る攻撃をいなす。
だがクリテロの攻撃は、いなしてもかわしても絶える事はなかった。
550 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:38:29.07 ID:e5U/hMe20
(;'A`)「これはヤバイかも分からんね。……おい、お前等。さっさと俺の後ろから退きやがれ」
(主;^ω^)「お?」
(;^ω^)「な、何を……」
(;'A`)「てめぇらが後ろにいると、攻撃を避け辛いんだよ!良いからさっさと退きやがれ!!」
そこで、二人は気付く。
ドクオが、さっきから二人を護るようにして戦っていた事を。
(主;^ω^)「ど、ドクオ君……」
呟くジョンの腕を、ブーンが無理矢理に引っ張る。
(;^ω^)「ドクオの言う通り、僕達は退くお!じゃないとドクオが……!」
(主;^ω^)「おっ!」
二人はドクオとクリテロから離れる。
ブーンもジョンも加勢したかったが、あの戦いに自分達は入れないであろうという事を二人は自覚していた。
ドクオという人間があの“力”を持っているからこそ、怪物と化したクリテロと対等に戦えるのだ。
二人はそれを分かっていた。
554 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:40:07.75 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「逃がした所で、何も変わらないお」
言いつつ、再度腕を横薙ぎに振るう。
腕は異速で風を切るが、ドクオはそれに対して慌てなかった。
('A`)「そうでもねぇぜ?」
クリテロの腕を、左腕で軽くいなす。
そしてすぐさま接近。空いている右腕で、クリテロの顎を殴り上げた。
(;゚ ゚)「ごっ……!」
上半身を半ばのけぞらせて、そのまま倒れる。
ドクオはそれを見て、「はん」と笑ってみせた。
('A`)「精神的に余裕が出来ると、自然と穴ってのは見付かるもんだ」
( ゚ ゚)「は、ははは……」
笑いながら、クリテロは立ち上がる。
ドクオはすぐにクリテロから距離を取って戦闘の態勢を取った。
( ゚ ゚)「だったら、その余裕とやら……なくしてやるお!!」
叫んで、走り出す。
その右腕を乱雑に振り回しながら。まるで狂った魔神のように。
555 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:40:58.84 ID:e5U/hMe20
(;'A`)「おっ!?」
襲い来る重圧に、ドクオは一瞬たじろぐ。
クリテロにとってはその一瞬だけで十分だった。
( ゚ ゚)「おおぉ!!」
叩きつけるように、右腕をドクオに振るう。
ドクオはたじろいでしまったが為に、それを避ける事もいなす事も出来ない。
仕方なく防御した。
ずしり、と左腕に重圧がかかる。
(;'A`)「ぐっ……重ぇ!!」
( ゚ ゚)「そういえばお前、さっき僕に言ったお。殺せるものなら殺してみろって、お?」
クリテロが右腕を大きく振るう。まるで目の前の虫をはたき落とすかのように。
それだけの動作で、ドクオの腕はいとも簡単に弾かれた。
(;'A`)「―――ッ!?」
( ゚ ゚)「だったらお望み通り……殺ってやるお!!」
クリテロの腕が、再度振るわれる。
それは残像が残るほどの速度で、ドクオの首を跳ね飛ばさんとして。
557 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:42:16.43 ID:e5U/hMe20
だが―――
(#゚ω゚)「そんな簡単に友達を殺らせるかお!!」
―――その腕を越える速度で、ブーンがドクオを救い出した。
ブーンは背中の皮が少し切り裂かれたのを感じた。ギリギリだったのだ。
( ゚ ゚)「っち。厄介な速さだお」
溜め息と共に言う。
その彼の背後にはジョンが迫っていた。
(主;゚ω゚)「おおぉぉおぉっ!!」
左腕の刃を振り上げる。
対するクリテロは後ろを見もせずに、その刃を右腕で防いだ。
( ゚ ゚)「遅いお」
(主;゚ω゚)「ぐ、おっ!?」
隙の出来たジョンの腹に、肘が入る。
クリテロは連続して攻撃を加えようとするが、その前にジョンは後ろに退く。
そこにブーンとドクオが駆け寄った。
558 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:43:41.82 ID:e5U/hMe20
(主;゚ω゚)「はぁー……はぁー……!!」
彼は腹を抑えて、肩で呼吸をする。
(;゚ω゚)「ジョン!大丈夫かお!?」
(主;゚ω゚)「僕は大丈夫だお!それよりも気を抜くなお!」
叫ぶジョンの視線の先にはクリテロ。
クリテロは右腕を見せ付けるように軽く開きながら言う。
( ゚ ゚)「もう終わりだお。諦めろお」
右掌を、三人に向ける。中央の穴があらわになった。
(主;゚ω゚)「……どうするかお」
戦慄するジョン。
563 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:45:01.97 ID:e5U/hMe20
(;゚ω゚)「僕が行くお!僕が走り寄って、あいつの脳天吹き飛ばs」
('A`)「いや……俺が行く」
呟いて、ドクオが一歩前に出る。
(;゚ω゚)「ど、ドクオ?」
(主;゚ω゚)「な、何を?」
('A`)「俺に任せろ。ここをどうにか出来るのは……この中じゃ俺だけだ」
( ゚ ゚)「……ふん。相変わらず良い度胸だお。気に入らないお」
('A`)「結構だ」
ドクオは走り出す。その悪魔のような左腕を振り上げて。
ただ、それだけ。何の小細工も、何のおかしな動作もない。
ただ、腕を振り上げて走り寄っているだけ。
('A`)「うるぁぁっ!!」
565 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:45:44.71 ID:e5U/hMe20
対するクリテロは呆れたように口を開いて―――
( ゚ ゚)「ふん、何をするかと思えば。……つまらない。死ねお」
―――杭を、撃ち放った。
走り寄るドクオの額を確実にぶちまけるコース。
ドクオは、高速で飛び来る杭を見詰めて―――
('A`)「見えたっ!」
―――杭を回避し、なおかつ慣性で飛び行こうとする杭を左腕で掴んだ。
(;゚ ゚)「なっ!?」
('A`)「お前には言ってなかったがな、俺は眼と耳にも“力”があるんだよ。
全力出せば、その杭だって見えない事はない」
ドクオは足を止めない。むしろ加速する。
クリテロは困惑から動けない。右掌を突き出した格好のまま。
そう。右掌の穴を晒け出した格好のまま。
567 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:47:04.24 ID:e5U/hMe20
('A`)「お返しするぜ」
呟いて、ドクオはその手に握った杭を掌の穴に捻じ込んだ。
途中で引っかかる所があったが、無視。無理矢理にでも深く深く、出来る限り深い所まで。
(;゚ ゚)「が、あぁぁっ!!」
右腕を抑えて、苦痛に叫ぶクリテロ。
彼は怒り狂い、右掌の状態も考えずに、ドクオに右掌を向ける。
('A`)「撃ったら、多分暴発するぜ。威力が強ければ強い銃ほど、暴発も悲惨な物になる」
その言葉にクリテロは歯軋りする。
そしておもむろに、その異形な右腕を振り回し始めた。
(#゚ ゚)「小癪な!死ねお!死ねおっ!!」
('A`)「そんな攻撃くらい、余裕で避けられちゃうんだなぁ。
お前の“力”で本当に怖いのは、あの杭だけだ」
袈裟懸けに振るわれる右腕を、後ろに一歩下がって避ける。
今度は横薙ぎに振るわれるが、それもしゃがんで軽く回避。
突き出すように放たれた攻撃も最小限の動きだけで避け続ける。
まるで、舞うように。
569 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:48:51.10 ID:e5U/hMe20
(#゚ ゚)「当たれおっ!当たれおっ!!うぉぉぉおぉおぉ!!」
一際大きく振るわれた腕をバックステップで避ける。
そして、そこでドクオは叫んだ。
('A`)「ブーン!!」
その声を待っていたかのようにブーンが走り出した。
( ^ω^)「おk、把握だおっ!!」
ドクオとすれ違うように交代。
クリテロは力任せに腕を振るう。
ブーンはそれを、己の機動力の高さを活かして回避し続ける。
腕を縦に振るえば、地面を蹴ってかなりの距離を離れてまた接近。
腕を横薙ぎに振るえば天井まで飛び上がり、更には天井を蹴って反撃まで加える。
( ^ω^)「こっちだおっ!ほらほら、当たらないおーっ!?」
ドクオの対極とも言える、無駄が多すぎる動き。
だがそれは相当にトリッキーなもので、クリテロの焦りに拍車をかけた。
570 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:49:54.02 ID:e5U/hMe20
(#゚ ゚)「ぬぁぁあぁぁっ!!」
袈裟懸けに振るわれる腕を、真正面から足で止める。
(;゚ ゚)「防御っ―――!?」
( ^ω^)「かかったおっ!!」
重い紫の腕を、蹴り弾く。
そしてすぐさま逆側の足を、クリテロの左半身に叩きつけた。
(;゚ ゚)「お……」
一瞬、時が止まり―――
(;゚ ゚)「ぶっ!!」
―――動き出す。
骨の砕ける音。
クリテロは吹き飛び、壁にぶつかって動きを止めた。
(主;^ω^)「……起き上がらないでくれお」
……十秒。
…二十秒。
三十秒。
一分が経過しても、その身体は動かなかった。
572 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:52:19.16 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「……終わった、かお?」
その言葉に、クリテロの身体がピクリと動く。
そして―――
(#゚ ゚)「まだだお……!!」
―――彼は立ち上がった。
うめきながら。左半身を歪に軋ませながら。
折れた骨で内臓に傷が入ったのだろう、吐血までしながら、彼は立ち上がった。
眼には、歪んだ憎悪と意地のみ。
自分の存在を否定しかねない存在を憎悪し、自分の存在を確立させようという意地。
それだけが、彼を動かしていた。
(#゚ ゚)「終わらせないお……僕は、僕を……証明するんだお」
身体が、揺らぐ。
咳と共に、吐血。
(#゚ ゚)「殺すお……殺してやるお!」
575 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:53:52.14 ID:e5U/hMe20
重そうに右腕を持ち上げる。
未だ紫色に輝くそれは、“力”に満ちていた。
想いの力は、薄れていない。
('A`)「させねぇよ」
( ^ω^)「ジョンは僕達が護るお」
言って、二人はジョンを護るように陣取る。
だが。
(主^ω^)「……僕にやらせてくれお」
ジョンはその二人を押しのけて、前に一歩出た。
579 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:56:06.41 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「な、何を?」
(主^ω^)「……僕は、クリテロを殺す事をやっぱりどこかためらっていたお。
それは戦闘が始まってからもそうで、今までずっとそれについて考えていたお。
存在を認めてもらいたいっていうクリテロの気持ちも分かるし、僕も譲れない物があるから」
( ^ω^)「ジョン……」
(主^ω^)「どうにか分かり合えないかとも思ったけど、考えてみれば分かり合おうにもそれは無理なんだお。
どうすれば良いのか分からなかったんだお。
どうすれば一番良い結果が出せるか、ずっと考えていたんだお」
('A`)「…………………」
「―――でも今、ようやく答えが出たお」
ジョンが、左腕を掲げる。
まもなく、その左腕から眩い光が漏れ出した。
『ゴキリ』。光が収まらないままに、音が響く。
ジョンの左腕が、更なる解放を始めた。
581 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:57:17.50 ID:e5U/hMe20
変化する部位は肩まで伸び、左腕全体を白銀の鋭利な鱗が覆う。
筋肉によって腕は異常なまでに膨らみ、爪は太く鋭くなる。
そして、手の甲から伸びる刃はその長さと鋭さを増し、それ自体が白銀に輝いた。
(主^ω^)「クリテロ、僕は君を全力で殺しにかかるお。だから、君も僕を全力で殺しに来いお。
大切な人達や世界の為に僕は戦うお。君は自分の存在を主張する為に戦えば良いお」
ヒュン、と、刃で風を斬る。
(主^ω^)「お互いに譲れない物があるお。どうしても譲れないから、互いに全力で殺し合うお。
仕方のない殺し合いなんだお。譲り合えないんだから、分かり合えるわけもないんだから。
これからの戦いが全てを決めてくれるお。勝者が望む物を手に入れられて、敗者は全てを失うお」
そこで、ジョンは刃をクリテロに向ける。
(主^ω^)「もう一度言うお。僕は君を全力で殺しにかかるお。君も僕を全力で殺しに来いお。
何も遠慮はいらないお。譲れない物と己の命を賭けて、存分に殺し合おうお」
にやりと、クリテロの口元が釣り上がる。
笑える状況じゃないはずなのに、心底楽しそうに。
( ゚ ゚)「……面白いお」
言って、クリテロは右掌の穴に刺さったままの杭を抜き去る。
杭を撃てる状態にしたのだ。
584 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:59:05.06 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「良いだろう。僕もお前を全力で殺しにかかるお。僕の存在を賭けて、お前と殺し合うお」
ジョンとクリテロは、同時に頷く。
互いが互い、同じ物なように。まるで、互いが互い、影の様に。
(主^ω^)「ドクオ。戦いを開始する合図を頼むお」
('A`)「……よく分かんねぇが……」
ふふっと、ドクオは鼻で笑う。
('∀`)「あんた、やっぱりおひとよしだな」
(主;^ω^)「……そうなのかお?」
('∀`)「あぁ、ブーンにそっくりだ。ジョンって名付けたのは間違いじゃなかったようだな」
(主^ω^)「……誉め言葉として受け取っておくお」
ジョンの肩に、ぽんと手が乗せられる。
( ^ω^)「頑張れお、ジョン。……死ぬなお?」
(主^ω^)「任せてくれお、ブーン」
('A`)「……じゃあ、俺達は下がるぞ、ブーン」
言って、ブーンを連れてドクオは後ろに下がる。
クリテロとジョンが、対峙する。
口元には笑みを浮かべて。互いに互い、己の“力”を向け合って。
('A`)「じゃあ、ジョン。クリテロ。 Are you ready?」
「――――――Go!!」
ドクオのそんな声に合わせて、二人は同時に走り出した。
(主゚ω゚)「おぉぉぉっ!!」
刃をきらめかし、切り上げるように振るう。
クリテロは上半身を反らしてそれを回避。すぐにジョンにカウンターの蹴りをお見舞いした。
(主;゚ω゚)「うぇっ!―――おぉっ!!」
痛みに耐え、刃を思いきり横薙ぎに振るう。
( ゚ ゚)「――――――っ!!」
クリテロはそれを右腕でガード。そして間髪入れずに、左腕でジョンの胸に正拳を撃ち込んだ。
ジョンは吹っ飛ぶ。
だがすぐに立ち上がり、にやりと笑って見せた。
590 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:02:08.76 ID:e5U/hMe20
(主゚ω゚)「落ち着いてるじゃないかお」
( ゚ ゚)「……会話など不用だお。来いお」
言って、手招き。
ジョンの言う通り、クリテロは落ち付いていた。
焦りがなくなった。左半身の痛みで無駄な事を考える余裕がなくなった。
アドレナリンの分泌で痛みを感じづらくなり、頭が戦闘に対して冷静になった。
色々な理由があるのだろうが、最もの理由はジョンの言葉で『ふっきれた』からだろう。
彼は既に、ジョンを倒す事しか頭にない。
憎しみや怒りなどが薄くなっていた。
(主゚ω゚)「おおおおぉぉおぉぉ!!」
( ゚ ゚)「―――っ!」
左腕と右腕が打ち合い、鋭い金属音が響く。
591 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:03:03.98 ID:e5U/hMe20
(主゚ω゚)「隙ありっ!」
(;゚ ゚)「おぶっ!」
ジョンの蹴りがクリテロを捕らえる。特有の鈍い音。
クリテロもすぐにやり返す。
金属音と鈍い音が連続で、不規則に響き渡る。
不思議と、それは心地良い旋律だった。
互いに致命傷は入らない。
“力”のある箇所が―――ジョンなら左腕が、クリテロなら右腕が、それぞれ完全に防ぎきられている。
だがしかし、彼らの攻撃は確実に互いの体力を削ぎ落としていった。
( ゚ ゚)「お、おぉ!!」
(主;゚ω゚)「う、ぇっ!!」
クリテロの攻撃がジョンの腹を捕らえる。
彼は倒れそうになるが―――
(主#゚ω゚)「―――おぉぉ!!」
―――無理矢理に踏ん張って、再度攻撃を繰り出す。
こんな事が繰り返されていた。
594 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:04:47.79 ID:e5U/hMe20
いつしか彼らは防御や回避を考えなくなっていた。防御も回避も、戦略もクソもない。
ただただ目の前の人間を倒そうとするだけ。
その見た目は、ただの喧嘩。
だが、彼らはそれで良かった。
互いに絶対に譲れない物がある。それだから、話し合いですんなりと済むわけはない。
このようにして殴り合うしか。殺し合うしか方法はなかったのだ。
( ゚ ゚)「っし!!」
(主;゚ω゚)「―――っ!?」
クリテロのムチのような蹴りが、ジョンを捕らえる。
ジョンは踏ん張ろうにも足が地面から離れてしまい、ただ吹き飛ぶ。
その身体は壁にぶつかって、ようやく動きを止めた。
(#゚ ゚)「おぉぉぉぉっ!!」
クリテロは雄叫びをあげて、追撃するように杭を撃ち放つ。
(主#゚ω゚)「おぉぉぉぉっ!!」
クリテロに呼応するように雄叫びをあげて、ジョンは刃を振るう。
その刃は飛び来る杭を両断。杭は二つに分かれて、ジョンの後ろの壁に突き刺さった。
595 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:06:15.90 ID:e5U/hMe20
(主゚ω゚)「お前の杭はガードしても突き刺さる。ガードしても意味がない。だから、両断しかないお。
DATをこの“力”にしておいて、間違いじゃあなかったようだお」
( ゚ ゚)「だったら両断出来ない状態で撃てば良いだけだお。
そんな事は良いから―――さっさと来いお」
頷いて、ジョンは走り出す。その刃を振り上げて。
クリテロも走り出す。その右掌をジョンに向けて。
(#゚ ゚)「死ね、おっ!!」
足を止めずに杭を撃ち放つ。
(主#゚ω゚)「お前が死ねおっ!!」
同じく、足を止めずに刃を振るう。
杭は同じように分断される。
だが―――
( ゚ ゚)「杭はあくまでも眼くらましだおっ!!」
(主;゚ω゚)「っ!?」
―――刃、つまり左腕を振り抜いてしまった状態のジョンに、クリテロの右腕が迫る。
596 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:07:41.06 ID:e5U/hMe20
(主;゚ω゚)「くっ!!」
左腕は防御に間に合わない。咄嗟に右腕を突き出す。
素手の右腕でクリテロの右腕を防いだ瞬間。
ジョンは右腕の肘近くまでが砕ける音を聞いた。
(主゚ω゚)「――――――っ」
激痛に意識が飛びそうになり、更なる激痛によって無理矢理に意識を戻される。
だが右腕を犠牲にしたおかげで、クリテロの攻撃の軌道は逸れ、何とか直撃はまぬがれた。
ジョンは慌てて少し距離を取ろうとバックステップ。
すぐ目の前をクリテロの腕が通過していった。
( ゚ ゚)「っち!運の良い奴だお!!」
クリテロは杭を撃ち放つ。ジョンはまたもそれを両断。
(主;゚ω゚)「っはぁー、っはぁー……」
右腕を抑えて、ジョンはクリテロを睨む。
その眼から光は消えていなかった。
599 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:09:08.34 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「本当にしぶといお……きっとお前の前世はゴキブリだお」
(主;゚ω゚)「前世なんて何でも構わないお。前世は前世の僕。今は今の僕。僕は『今』を生きるお」
( ゚ ゚)「『今』を生きる?刹那主義、かお?気楽なもんだお」
(主゚ω゚)「過去を見ても、何も得られないお。未来は今が創るお。
今の僕達がすべき事は、“今”に得た物を忘れずに持っていく事だお
今を生きる。それは、未来になっても後悔しない生き方をする事だお。だから―――」
「―――僕は今、全力でお前を倒すおっ!!」
叫んで、走り出す。
もはや使い物にならない右腕をぶらつかせて。左腕だけを力強く振り上げて。
( ゚ ゚)「……面白いお」
呟いて、クリテロは杭を撃ち放つ。
(主#゚ω゚)「おおぉっ!!」
叫んで、足を止めずに杭を両断。
601 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:09:55.91 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「学習しない奴だお」
刃を振り抜いたジョンに、クリテロがとびかかる。
(主゚ω゚)「来ると思ったおっ!!」
ジョンは左肩を突き出す。
クリテロの右腕は、金属製の鱗で覆われたジョンの左肩で止められた。
( ゚ ゚)「よく考えたお。だけども、これも―――予想通りだお」
クリテロはジョンの肩を押すようにして、その反動で少しだけ距離を取る。
そして―――
( ゚ ゚)「終わりだおっ!!」
―――至近距離で、杭を撃ち放った。
しかし。
ジョンはそれでもなお、クリテロに向かって足を踏み出した。
杭が、ジョンに刺さる。ジョンの左腕―――前腕部分に。
ジョンは杭を左腕で受け止めたのだ。
603 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:11:03.32 ID:e5U/hMe20
(;゚ ゚)「防御―――!?」
(主゚ω゚)「お前は勘違いをしているお」
更にジョンが一歩踏み出す。
クリテロは動けない。
(主゚ω゚)「防御してもダメージを受けるから、あまり意味がないって事しか僕は言ってないお。
防御出来ないってわけじゃない―――痛みを我慢すれば、防御くらい出来るお」
左腕を構える。
そして―――
(主゚ω゚)「終わりだお。クリテロ」
―――クリテロの右肩。生身と紫の間の部分を狙って、刃を振り抜いた。
まるで紙を切ったかのように。
まるで画像を途中から切り抜いたかのように、クリテロの右腕が宙を舞う。
右腕は高く弧を描き―――地面に、重々しい音を立てて落下する。
その時には、ジョンはクリテロの首に刃を突きつけていた。
606 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:12:25.08 ID:e5U/hMe20
(主;゚ω゚)「はぁ、は、っは……」
( ゚ ゚)「……終わり、かお」
クリテロは右肩からおびただしい量の黒い血液を流しながらも、表情を変えずに言う。
( ゚ ゚)「……でも何だか、悔しくないお。むしろ、清々しい気分だお。
自分を取り巻いていた鎖が、外れたような」
(主゚ω゚)「……クリテロ」
( ゚ ゚)「さぁ、殺せお。僕は負けた。ここでお前に殺されなくても―――僕には、死ぬしか道はないんだお。
どうせ殺されるなら、フォックス様じゃなくお前が良いお。僕を負かしたお前。“影”として創られた僕のモデル」
ジョンは、一瞬だけ辛そうな顔をする。
だがそれはあくまでも一瞬のもの。
ジョンは力強くクリテロを見詰める。
608 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:14:05.90 ID:e5U/hMe20
(主゚ω゚)「……分かったお。ただ、クリテロ」
( ゚ ゚)「?」
(主゚ω゚)「僕はお前を認めるお。“影”じゃなく、“クリテロ”として。お前は“影”なんかじゃなくて、立派な一つの存在だと。
例えフォックスが認めなかったとしても―――僕は、お前を認めるお。クリテロ」
クリテロは少し驚いたような顔をする。
だがそれはあくまでも一瞬のもの。
( ゚ ゚)「……くだらないお。さぁ。さっさと殺せお」
(主゚ω゚)「…………………」
ただ頷いて、ジョンは刃を持ち上げる。
そして、袈裟懸けに振り抜いた。
クリテロの身体は腰の辺りで上下二つに分かれて、地面に落ちる。
609 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:15:15.69 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「……ありがとうだお」
上半身が地面に落ちてすぐに、クリテロは口を開いた。
( ゚ ゚)「嬉しかったお。認めてくれて、ありがとうだお」
咳をする。そこで吐き出されたのは痰じゃなく、おびただしい量の黒い血液。
クリテロは、それでも言葉を続ける。
死を目の前にして。それでも、ジョンに何かを伝えようとする。
( ゚ ゚)「救いのない……僕の、短い人生の中にもっ……こんなにも、嬉しい事が……あるとは。
来世があるの、ならば……ゴキブリ、でも良いから……次は、お前の友達として……」
(主;゚ω゚)「クリテロ……」
そこで、クリテロは―――
( ^ ^)「……色々と迷惑かけてごめんお。そして、本当にありがとうだお」
―――初めて、笑って見せた。
615 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:17:27.40 ID:e5U/hMe20
ジョンは、想う。
クリテロが、どのような想いで生きてきたのか。
そして、どのような想いで死んでいったのか。
そして、想う。
クリテロは、満足したのだろう、と。
それは勝手な妄想かもしれない。
想い過ごしかもしれないし、ただの自己満足の為の無理矢理な思考かもしれない。
死者は何も語らない。だからそんな事を考えていても無駄だし、答えは出るわけもない。
だがそれでも、ジョンは心のどこかで確信していた。
クリテロは、笑って逝った。満足して死んでいったのだと。
616 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 22:18:16.04 ID:e5U/hMe20
('A`)「よーぅ、お疲れ」
(主^ω^)「……ドクオ」
( ^ω^)「ご苦労様だお」
(主^ω^)「……ブーン」
「ありがとうだお」
ジョンは笑顔で、そう言った。
その笑顔は、クリテロが最期に見せた笑顔とそっくりだった。
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最終更新:2007年03月14日 22:30