423 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:43:10.13 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーξ゚⊿゚)ξsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ξ#゚⊿゚)ξ『全く!! あのバカ本当にどこ行ったのかしら!!』
あたしは腹立たしさを紛らわせるように手にしたコーヒーのスチール缶を握りつぶす。
それをそばにあったゴミ箱に叩き込んだ。
(主^ω^)『…そんな事僕に言われても知りませんお』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
ムカつく。本っっっっっ当にムカつく。
何度も頭を冷やそうと思ったけど、目の前をこれから殴りに行こうとしている男と
瓜二つな顔をしたのにウロウロされて、冷静になんてなれるわけがない。
(主゚ω゚)『ギアス!!』
気がつくとあたしはそいつの尻を蹴り上げていた。
その、あのバカと全く同じリアクションが一層怒りに火を注ぐ。
それにしても、コイツ何なのかしら!!
この世界の事は全く知らないと言いながら、フィギアや同人誌には異常な興味を示すし…。
ξ゚⊿゚)ξ『あら? 蹴りやすそうなお尻があるから、つい蹴っちゃったわ。
とにかくあのバカはここにはいないみたいね。
それにしても頭くるわ!! こんなに頭くるのは2ch閉鎖騒動以来ねっ!!』
あたしはそう一人ごちて内藤の散らかりまくった部屋を出る。
(主;^ω^)『(…僕の肛門も閉鎖されそうですお)』
426 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:44:19.28 ID:E2RE4V3X0
ξ゚⊿゚)ξ『さて、次はどこに行こうかしらね』
あたしはアパートの階段を下りながら、すぐ後ろの役立たずに聞いた。
(主^ω^)『そ、そんな事僕に聞かれても分かりませんお!!
何度も言うように僕はこの世界は全く無知なんですお!!』
ξ゚⊿゚)ξ『じゃあ、なんであんなにオタク関係に詳しいのよ!!』
(主^ω^)『それもさっき行った筈だお!!
僕は前に秋葉原っていうパラダイスで【欠片】を探した事があって…』
秋葉原なんかあたしだって知ってるわよ!!
あのバカにデートと称して何度も連れ回されたんだから!!
こいつ、本当に異世界の住人なのかしら…!?
もう一度蹴り飛ばそうとして、そいつが真剣な表情で空を見上げているのに気付いた。
(主゚ω゚)『来た…来たお!!』
430 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:45:44.23 ID:E2RE4V3X0
ξ゚⊿゚)ξ『はぁ? 何が来たって言うのよ!?
言っておくけど、情報統合思念体からのメッセージとか言ったら半殺しじゃ済まさないわよ!!』
そいつはあたしを無視して続けた。
(主゚ω゚)『【欠片】…【欠片】がすぐそばに来てるお!!』
【欠片】=クーさん=すぐそばにあのバカがいる可能性大。
そんな方程式が瞬時に脳裏に浮かび、あたしも空を見上げた。
そこには真っ白いメイド服を身に包んだ女性の姿。
彼女はあたし達の姿を確認すると、ゆっくりと地上に降りてきた。
川 ゚ -゚)『ツンか。探したぞ。どうにも力が落ちてきているようで困る』
ξ#゚⊿゚)ξ『探したのはあたしの方よ!! あのバカはどこにいるの!?』
あたしは八つ当たりと分かりつつも、怒りを隠さず言う。
川 ゚ -゚)『あのバカ? 内藤なら君の後ろに…いや、似ているようだが…』
クーさんは何かを考え込むように唇に人差し指をあてていたが、すぐに納得がいった様にポンと手を叩いた。
川 ゚ -゚)『そうか。君がこの【欠片】を探しているというブタ君か』
(主^ω^)『ブ、ブタとは失礼な!!』
黙りなさい、あんたなんかブタでも勿体無いくらいよ。
あたしはそう言って問答無用でそいつの後頭部を張りとばす。
(主;ω;)『(…なんか僕の扱いあんまりだお)』
433 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:47:24.15 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『漫才はそのへんにしてくれないか。あまり時間がないんだ』
そう言えば、あたしを探してたみたいな事言ってたわね。
あたしは大きく深呼吸して思考をジェノサイドモードから通常モードに切り替える。
うん、大丈夫。
あたしは冷静よ。
ξ ^ー^)ξ『あ、ごめんなさい。話ってなにかしら?』
川 ゚ -゚)『うむ。他でもない、内藤の事なのだが…』
ξ#^ー^)ξ プチン
あたしの中で何か決定的なモノが切れた音がする。
ξ#゚⊿゚)ξ『ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
気付いた時にはあたしは出来る限りの大声をあげていた。
川;゚ -゚)『な、なんだ?』
ξ#゚⊿゚)ξ『言っておきますけどっ!! あのバカの彼女はあたしなんですよっ!!
それなのに、あのバカは事ある毎にクーさんクーさんって…!!
挙句の果てには【ハルヒとスキヤキどっちが好きみたいな事考えるな】とか
ふざけた事言い出す始末!!
いいかげんにしてほしいわっ!!』
川;゚ -゚)『そ、そのようだな…』
436 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:49:03.44 ID:E2RE4V3X0
物知り顔で否定しないクーさんを見て、あたしの怒りは更に高まる。
ξ#゚⊿゚)ξ『そのようだな…って!! 知ってるような言い方しないでもらえませんか!!』
川;゚ -゚)『え…あの…その…』
困惑した表情を浮かべるクーさんに代わってそいつが口を開いた。
(主;^ω^)『…口を挟むようで申し訳ありませんが、あの人は【欠片】の力で全部知ってるんだと思いますお』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
(主^ω^)『……』
川 ゚ -゚)『……』
ξ゚⊿゚)ξ『…mjd?』
(主^ω^)川 ゚ -゚)『mjd』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
(主゚ω゚)『ギアス!!(2回目)』
そいつは鳩尾を押さえてその場にへたり込む。
あたしはそいつに渾身のボディブローを喰らわせる事でこの場の空気を変える事に成功した。
川 ゚ -゚)『…それは痛いだろう…常識的に考えて…』
438 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:50:32.77 ID:E2RE4V3X0
ξ゚⊿゚)ξ『と・に・か・く!! 正直あまりいい気分はしないわよねっ!!
内藤は…あたしよりもクーさんの影を追っているみたいなんだもん!!
ううん!! 付き合いだしてから…クーさんが死んじゃってからは一層それが顕著になったわ!!』
それは醜い嫉妬心。
絶対に言ってはいけない言葉。
でも、あたしがこの先ずっと内藤を好きでいる為には避けて通れない決着。
川 ゚ -゚)『……ツン』
ξ;⊿;)ξ『お願い…あいつの心を連れて行かないで…。
あいつにとってクーさんが道標【みちしるべ】であるように…光であるように…
あたしにとってはあいつが道標【みちしるべ】なの…!!
あいつがいてくれないと…あたしがダメになっちゃうのよ…!!』
川 ゚ -゚)『そうか…』
あたしは決して器用な人間じゃない。
ツーやしぃのように可愛く振舞うなんてマネは絶対に出来ない。
甘えたいと思うことは何度もあった。
でも、それが出来ない。
気持ちを押し潰すように、くだらない事で声を荒げる。
今、一番のライバルであるクーさんから内藤の心を取り戻せば
ようやく素直な自分を内藤に見せられる。
あたしはそう感じていた。
川 ゚ -゚)『だが断る』
441 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:52:00.66 ID:E2RE4V3X0
ξ;⊿;)ξ『!!』
あたしは一瞬自分の耳を疑った。
やっぱり今でも。死んでからもクーさんは内藤の事を…。
そう考えると、絶対に勝ち目がない勝負に目の前が暗転する。
川;゚ -゚)『あ…いや、勘違いするなよ』
クーさんは呆然とするあたしの前で慌てて否定するように両手を振った。
川*゚ -゚)『こ、こんな事を言うのはなんだ…このわたしでも照れくさいと思うのだが…』
躊躇う様に一呼吸置いて続ける。
川*゚ -゚)『た、確かにわたしは今でも内藤を愛しているというか…
愛していないのかと言われれば、それは嘘をつく事になるのだが…』
ξ;⊿;)ξ『…はい』
川;゚ -゚)『だが…残念な事に内藤の心はわたしには向いていないのは確実らしいし…』
ξ;⊿;)ξ『嘘です!! あいつは何時だってクーさんを見ています!!』
川;゚ -゚)『あう…まぁ…確かに内藤に嫌われていないという事も事実であって、
むしろ好かれているというか…その事に対してはわたしとしてもやぶさかではないのだが…』
クーさんの声はだんだんとトーンを落とし、
最後の方になるとなんとか聞き取れるか聞き取れないかというレベルまで下がっていた。
447 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:53:03.09 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『そ、そんな事はどうでもいいんだ!!
とにかく、あいつを支えてやれるのはツンじゃなきゃダメなんだ!!』
ξ;⊿;)ξ『信じられませんっ!!』
頑固に意志を曲げないあたしを見てクーさんは軽く眉をしかめた。
川 ゚ -゚)『…内藤はそんなにわたしを追い求めていてくれているのか?』
ξ;⊿;)ξ『…うん』
川 ゚ -゚)『まぁ…確かにそうかもしれんな』
ξ;⊿;)ξ『え?』
突然あっけなく持論を180度転換させたクーさんにあたしはつい戸惑った。
クーさんはそれを見て『作戦成功』とばかりにニヤリと笑う。
川 ゚ ー゚)『人生が夜道を進む旅だとすれば、旅人は光を追い求めるものだ。
そうだろう?』
そう言って今度は急に真剣な顔になった。
川 ゚ -゚)『旅人は光を追い求め、光は照らすべき旅人を求める。
だが、それだけだ。どんなに強く求め合っても両者の間には決して埋まらない距離がある。
実際に旅人を支えてやれるのは、その旅人のそばにいる者…
つまりツン。お前だけなんだよ』
その真剣な表情はどことなく寂しげだった。
448 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:54:00.57 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『ここで1つ、面白い謎かけをしようか。
母親と内藤が同時に崖から落ちようとしている。どちらか一人しか助けられない。君ならどちらを助ける?』
またしてもコロッと話を変えられる。
ξ゚⊿゚)ξ『…心理テストですか?』
川 ゚ -゚)『単なるお遊びだ』
その回答に安心してあたしは状況を頭に思い浮かべる。
あたしなら…まず、どちらがより危険な状況にあるかを判断した上で…。
川 ゚ -゚)『残念。時間切れだ。母親も内藤も崖下にまっ逆さまのゲームオーバーだな』
ξ゚⊿゚)ξ『ちょ…早すぎ!!』
あたしはクーさんに軽いブーイングをあげる。
川 ゚ -゚)『いいんだ。この場合【悩んだ】と言うのが君の答えだからな
では、もし内藤だったらどうしていただろう?』
その言葉であたしはクーさんの真意を理解した。
ξ゚⊿゚)ξ『何も考えずに崖に突撃して、勝手に足滑らせて一人でまっ逆さま…ってとこかしら?』
川 ゚ -゚)『わたしも同意見だ。どちらかを選ぶなんて出来ないだろうとわたしも思う。
夜空の月を見上げるだけで、足元の落とし穴には気付かない。
そんなドジだけど愛しい旅人君を頼むぞ、ツン』
あたしたちはその光景を想像して顔を見合わせて笑った。醜い嫉妬心はいつの間にか氷解してしまっていた。
449 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:55:39.63 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーー(主^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(主^ω^)『…お話の途中ですいませんですがお…』
僕は楽しそうに笑いあう2人に遠慮しがちに声をかける。
ξ゚⊿゚)ξ『何よ?』
(主^ω^)『…いえ…あのですね…』
僕はどうもこの子が苦手だ。
寄らば噛む。むしろ、噛み殺される気がしてならない。
それでも僕は【欠片】を回収しなくてはいけない。
FOXを倒し、僕の世界を取り戻さなくては今までの旅が全て無駄になってしまうからだ。
ξ゚⊿゚)ξ『玉ついてんならはっきり言いなさいよっ!!』
(主;^ω^)『あう…』
どうしよう。
【欠片】を回収しても殺されては意味がない。
力づくで奪い取る…いや、無理だ。
衰えたとは言えこの超強力な【欠片】所有者に勝てる見込みはない。
そもそも今までの旅だって僕はその世界の住人に助けてもらう事の方が多かったんだ。
川 ゚ -゚)『まぁ待て、ツン』
間誤付く僕とキレかけの暴力女の間に、黒髪の【欠片】所有者…確か、クーさんって人が入り込んできた。
川 ゚ -゚)『君の話は分かる。この【欠片】の事だろう?』
452 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:57:21.49 ID:E2RE4V3X0
(主^ω^)『そ、そうなんですお!! それがないと僕困るんですお!!』
所有者が話が分かる人で一安心の僕を、暴力女が睨みつける!!
ξ゚⊿゚)ξ『ちょっとアンタ!! それが無くなったらクーさんは消えちゃうのよ!!
それが分かって言ってるんでしょうね!!』
怖い。
それでもここだけは譲れない。
(主^ω^)『で、でもそれがないと僕の世界の消えた人は戻ってこないんですお!!』
ξ゚⊿゚)ξ『そんなの知らないわよ!! いい!?
クーさんは一回死んでるのよ!! それをあんたらの世界とやらの問題で勝手に生き返らせて、
今度は「僕困るからまた死んでください」ですって!? ふざけないで!!
せめて、力を使い切るまではこのままでいてもらうのが筋じゃないの!!』
彼女の言う事は正論だ。
(主^ω^)『でででででも、これだけ力の大きな【欠片】が力を使い切って
もし休眠状態になったら、今度はいつ目覚めるか分かりませんですお!!
その間にFOXが更に力をつけたら…本当に倒せなくなってしまいますお!!』
ξ゚⊿゚)ξ『まだ言うかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
(主゚ω゚)『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』
どう見ても本気モードで殴りかかってくる暴力女。
僕は死を覚悟した。
453 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:58:29.82 ID:E2RE4V3X0
僕は死を覚悟した。
…と、そこへ。
『いいんだ、ツン』
声がかけられ、僕らはその方向を振り向く。
そこでは【欠片】所有者が諦めたような表情で立っていた。
川 ゚ -゚)『もう…いいんだ』
ξ゚⊿゚)ξ『もういいって…何がいいんですか!!』
暴力女が今度はクーさんに掴みかかる。
…誰にでも掴みかかる女だ。
川 ゚ -゚)『全て知った時から決めていたんだ。この力を使いきる前に本来の持ち主に【欠片】を返そうとな』
(主^ω^)『……』
川 ゚ -゚)『心残りが無いわけではないが…鬼に捕まったからには鬼ごっこは終わりだろう。
元々死んでいる身なのだし、すでに残りの力もほんのわずかだ。
ここまで願いが叶ったのなら良しとしなくてはいかんだろう
ただ…最後にもう一度だけあの場所で…』
俯き、細々と声を漏らすクーさん。
前髪に隠れてその表情は見えなかった。
456 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:59:33.88 ID:E2RE4V3X0
ξ゚⊿゚)ξ『わたしは納得いかないわっ!!
誰がなんと言おうと、このわたしが許さない!!』
なおも反論している。
ξ゚⊿゚)ξ『なんでそんなに物わかりがいいんですか!!
2回も殺されるんですよっ!! なんでもっと我儘にならないんですかっ!!』
(主^ω^)『……』
僕は自分の世界を取り戻したい。
その決意に偽りはない。
でも、なんの罪も無い女性の人生を狂わせて…僕にそんな資格はあるのだろうか?
自分の理想…理想といえば聞こえはいいけど、野望・欲望の為に誰かを傷つけて。
そんな事をしたら、僕とFOXにどんな違いがあるって言うんだ?
彼女の周りの人達だって、彼女の死を悲しいながらも諦め、受け入れていた筈なんだ。
それを僕の世界の揉め事が原因で滅茶苦茶にしてしまった。
それなのに、僕だけが自分の主張だけを押し通そうとして…。
それで世界を取り戻しても…僕は笑って生きていけるのだろうか?
ξ゚⊿゚)ξ『クーさん!! 早く行って!! 時間がないのよ!!』
川 ゚ -゚)『分かっている。だが、ブタ君は空間移動の【欠片】を持っている。
面識の無かった先程までならまだしも、
今となってはどんなに逃げても瞬間移動されて?まるのがオチだ』
459 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:00:54.06 ID:VAWkGF9I0
僕は決意する。
左手を押さえ、膝まづいた。
ξ;゚⊿゚)ξ川;゚ -゚)『?』
(主゚ω゚)『こんな時に…邪気眼が…暴れ出しやがったお…おさまれ。おさまれぇっ(棒読み)』
言いながら金髪の方にアイコンタクトを送る。
金髪は瞬時にそれを理解したらしく、クーさんに向き直った。
ξ゚⊿゚)ξ『クーさん!! 今のうちよ!! 奴は邪気眼が暴走してる!!』
川;゚ -゚)『じゃ、邪気眼? なんだそれは?』
(主゚ω゚)『く…くそぉ。これじゃどこに逃げても捕まえられないお(棒読み)』
ξ゚⊿゚)ξ『何だっていいのよ!! 早く!! 急いで!! 聞いての通りなんだから!! 後の事は任せて!!』
川;゚ -゚)『わ、分かった!! 恩に着るぞ!!』
言うやいなや所有者は翼を広げ、地を蹴る。
しばらくして…。
ξ゚⊿゚)ξ『もう下手な芝居はやめていいわよ』
声がかけられ僕は立ち上がった。
ξ゚⊿゚)ξ『…やってる事は中二病だけど…かっこよかったわよ。やるじゃん』
中二病の意味は分からなかったけど、僕は何となく嬉しかった。
468 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:03:38.18 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【本日定休日】のプレートがかかった扉の鍵を【欠片】の力を借りて開錠する。
真っ暗な室内でも、一発でわたしは明かりのスイッチを探し当てる事に成功した。
これも何年も続けてきた習慣のおかげだろう。
川 ゚ -゚)『まさか…もう一度ココに戻ってくる事が出来るとはな』
重厚なカウンターテーブルの奥に
ずらりと酒瓶が並ぶバックバーを薄暗いブルーライトが照らしていた。
なかでもバーボンはもちろんの事、シングルモルトや2年熟成という超短年熟成のものまで。
ウィスキー系の品揃えにはちょっと自信がある。
この店がオープンした当初からわたしはここの主として何百万・何千万もの酒を注いできた。
仕事を終えたスタッフは必ずと言っていいほど、ここで仕事の疲れを癒して帰宅していった。
こう言っては何だが、私に会うために足を運んでくれた常連だって少なくないのだ。
今もカウンターにはわたしが来るのを待っていたお客様が一人。
川 ゚ -゚)『お待たせいたしました』
彼はその言葉を聞き終えると、ゆっくりとこちらを振り向いた。
( ^ω^)『…遅いお。待ちくたびれましたお』
471 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:04:57.56 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(´・ω・`)『ただいま~。あれ? もしかして僕達最後だった?』
俺がスタッフルームで名誉の負傷の手当を受けていると、
ツンとブタ面。それから少し遅れてショボンやドクオ達が帰ってきた。
(*゚∀゚)『やぁやぁ。やっぱりみんな戻ってきたんだねぇ』
まぁ、そりゃそうだろうよ。
あいつが最後に来るのはココしか考えられねぇからな。
('A`)『内藤は…?』
一人でバースペースにいる。
ツンの話じゃ、クーもこっちに向かったって言うし今頃2人で積もる話でもあるんだろうぜ。
(*゚ー゚)『…最後までお話できるといいね』
全くだ。
それより、お前ら全員目が真っ赤じゃねーか。
どいつもこいつも女子供みてぇにピーピー泣きやがって…だらしねぇ。
(´・ω・`)『あれ? ギコ、目が真っ赤だよ? もしかして泣きあと?』
うるせぇ!! 殺すぞ!!
それから各自が最後の思い出をかみ締めるように思いにふける。
そのまま静かに『その時』が訪れるのを待った。
475 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:06:03.14 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーー( ^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
( ^ω^)『昨日は僕がクーさんにご馳走しましたお。
だから今度はクーさんが僕にご馳走してほしいですお』
僕がそう言うとクーさんは涼やかに笑い、バックバーの前に立った。
慣れた手つきで氷をアイスピックで丸く削り、ロック・グラスにそれとスコッチ。アマレットを注ぐ。
その両手は透き通って今にも存在を失おうとしていて、
僕は溢れそうになる涙を必死に堪えた。
川 ゚ -゚)『ゴッドファーザーと言うカクテルだ。今の君に最も相応しいカクテルだと思う』
僕の前のコースターにそっと置く。
( ^ω^)『クーさんも一緒に飲むお。乾杯するお』
そう言うとクーさんは悪戯っぽくニヤリと笑った。
川 ゚ ー゚)『それではお言葉に甘えようかな。我が人生最後の1杯だ。
君が選んでくれ。わたしの後継者を彼女に持つ男のセンスを見せてもらおうか』
( ;^ω^)『責任重大だおwwwオーガズムとか、セックスオンザビーチってカクテルなら知ってるけど…。
そうだ!! カルーア・ミルクみたいな…チェリーが飾ってあるカクテルがあった筈だお!!』
それを聞いたクーさんはグラスにカカオ・リキュールを注ぎ、生クリームをフロートしてからチェリーを飾った。
川 ゚ ー゚)『おそらくお前が言っているカクテルはこれの事だろう。
それにしても、このカクテルをチョイスしてくるとは驚いたな。
なるほど、わたしの最後に相応しいカクテルかもしれん』
476 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:07:40.57 ID:VAWkGF9I0
カクテルを作り終えたクーさんはバーカウンターから出ると、僕の隣に腰を下ろした。
( ^ω^)『…なんか不思議な気分ですお』
川 ゚ -゚)『そうだな。でも、一度こうしてみたかったんだ』
本当に不思議な気分だ。
話したい事はたくさんあるはずなのに、その水のように透き通った手を見ていると何も言葉が出てこない。
ただ悪戯に何よりも貴重な時間が過ぎていく。
( ^ω^)『…あと何時間残っていますかお?』
川 ゚ -゚)『…2時間といった所か。力を残した状態でブタ君に返さなくてはいけないから、
そう考えると1時間がせいぜいだろうな』
あと1時間。
たったそれだけの時間でクーさんはまた消えてしまう。
僕はそれが悲しくて、できる限りの抵抗を試みた。
( ^ω^)『…僕は…少しでも長い時間一緒にいたいですお』
川 ゚ -゚)『…それは出来ない』
( ^ω^)『…安価で決めませんかお? ①1時間 ②2時間 で』
川 ゚ -゚)『絶対 ③おっぱいうp になるから断る』
( ;^ω^)『ですよねー』
478 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:08:49.21 ID:VAWkGF9I0
クーさんは目の前のカクテルグラスを見つめている。
その瞳にグラスの中のチェリーが写っていて、とても綺麗だった。
川 ゚ -゚)『わたしはあと一時間で死ぬ』
クーさんは妙にさっぱりした顔で言う。
なんで…なんでこの人はこんなに強いんだろう。
なんで目前に迫った死を怖れないんだろう。
川 ゚ -゚)『そんな事は無いぞ。わたしだって死ぬのは怖い』
突然答えられてびっくりしたけど、すぐに気がついた。
( ^ω^)『【欠片】かお…びっくりさせないでほしいお』
川 ゚ -゚)『あぁ。ショボンにも同じ事をしたよ。これが中々面白いんだ』
( ;^ω^)『極悪非道だお』
僕は頬杖をついて非難の言葉を口にしながらロック・グラスを口元に運ぶ。
( ;^ω^)『お?』
川 ゚ -゚)『む? どうした?』
( ^ω^)『これ…美味しいですお。杏仁豆腐の味がしますですお』
川 ゚ -゚)『当然だろう。わたしが作ったんだぞ。このゴッドファーザーこそ、わたしから君に送る最後のメッセージだ』
クーさんは曇りひとつ無い目で僕を見据えて言った。
479 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:10:00.05 ID:VAWkGF9I0
( ^ω^)『最後の…メッセージ…』
そう言われると、この金色の液体が同量の純金よりも貴重なものに思えてくる。
( ^ω^)『ゴッドファーザーってあれですおね? ぽぺぺぽぺぺぺぽぺぺぺぺ~…って』
僕はDQNがバイクのクラクションで鳴らしているお馴染みの音楽を口にする。
川 ゚ -゚)『そうだ。だが本来、ゴッドファーザーとは【祖父】【名付け親】の意味だ。
そしてもう1つ。マフィアの【ボス】に対する敬称でもある』
そう言ってクーさんはカウンターテーブル越しに缶ビールを探し当て、引っ張り出す。
『ビールは太る』って人がいるけど、それは絶対に嘘だ。
少なくとも、僕の目の前のこの人はあんなに浴びる様に毎晩毎晩ビールを飲んでも
一切太っていなかったのだから。
( ^ω^)『僕に…【ボス】と言われるような存在になれって事ですかお?』
川 ゚ -゚)『一言で言ってしまうとそうなる。
これはわたしの解釈なのだが、はみ出し者であるマフィアにとって【ボス】とは
己の全て。護るべき光だ。
その言葉どおり、名前すら持たない浮浪少年に名前を与えた者だっていただろう。
誰もが持つ【名前】すら持たない彼にとって、
その与えられた【名前】は本当に神聖な物だったとわたしは思う。
わたしはな…内藤に全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
そんな人間になってもらいたいんだ』
481 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:11:02.54 ID:VAWkGF9I0
( ^ω^)『……』
あまりにも過ぎた要求であるように思えた。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす存在。
それは僕にとっての道標【みちしるべ】。
クーさんの存在そのものだったからだ。
( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』
川 ゚ -゚)『出来るさ』
クーさんはそう言ってビールの缶を口元で傾ける。
それを30秒ほどで空にすると、またカウンターテーブルの奥に手を伸ばした。
川 ゚ -゚)『わたしが君に伝えた全てを。君が引き継いでくれればいいだけだよ』
それが難しいんだけどなぁ。僕は苦笑する。
川 ゚ -゚)『そんな事は無いさ』
クーさんはさらりと言ってのけた。
川 ゚ -゚)『お前もバカショボンと同じで難しく考えすぎなんだ。
どれ。目を瞑ってみろ。そして、君がこの店で経験した全てを思い出すんだ』
483 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:12:35.17 ID:VAWkGF9I0
僕は言われたとおり目を閉じ、今までの事を思い出す。
ドクオの包丁をダメにしかけてしまった事。
…あの時は本当に悪い事をしたなぁ。
ギコさんに包丁の使い方を教わった事。
…厳しかったけど…今では本当に感謝している。
ツーさんと麺場で毎日のようにランチタイムを乗り切った事。
…ツーさん。本当は自分が麺場を担当したかった筈なのに…
僕に自分が知る全てのテクニックを教え込んでくれた。
ショボンさんと炒飯を作った事。
…あの頃は毎日食事が炒飯だったっけ。
そして、勿論。仕事後にこのバースペースで過ごした無駄話だらけだったけど何より貴重な時間。
それだけじゃない。
ツン。しぃ。ジョルジュさん。アルバイトのイヨゥ。味にうるさい常連のお客さん。青果業者のおじさんまで。
ここで僕の回りにいてくれたみんなの顔が瞳の奥に現れる。
( -ω-)『…本当に色々な人に会って…色々な人に助けられて…色々な事がありましたお…。
こんなに短い時間だったのに…こんなにたくさんの事があったなんて嘘みたいですお』
川 ゚ -゚)『そうだろう。しかし、それは何も特別な事じゃないんだ』
( ^ω^)『え?』
裏返った声を上げて僕は目を開いた。
488 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:14:13.39 ID:VAWkGF9I0
川 ゚ -゚)『誰かが誰かの光になる。それは何も特別な事ではない。
真剣に誰かを思いやり、時には本音をぶつけあって衝突する。
それだけでいい。そうする事で人は誰かの道を少しだけ照らす事が出来る。
それが集まればやがて大きな光になる。
なにも難しくないんだ』
( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』
僕は2度目の疑問を口にする。
川 ゚ -゚)『出来るさ』
クーさんは2度目の即答を返す。
川 ゚ -゚)『なぜならば…』
言いながらクーさんはその透き通る両手で僕の頬を包み込んだ。
その掌からはすでに存在感を感じなくなっていた。
頬に触れる感触もまるで無い。
川 ゚ -゚)『お前は…みんなからの光を全身に浴びて…こんなにも輝いているではないか。
わたしには内藤。お前が全ての人を優しく照らす太陽のように感じられる。
今だってお前はわたしを照らしてくれているんだ』
…でも、僕は忘れないだろう。
この悲しいまでに優しい掌の温もりを。
492 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:16:48.39 ID:VAWkGF9I0
( ^ω^)『僕が…クーさんの光…?』
考えた事もなかった。
だって、クーさんは僕にとっての道標【みちしるべ】で…永遠に手が届かない筈の存在だったから。
川 ゚ -゚)『内藤。わたしは思うんだ』
クーさんは僕の瞳をじっと覗き込みながら言う。
川 ゚ -゚)『光とは…一方通行では決して無い。
誰かが誰かを照らす時。その彼もまた誰かの光を浴びている。
そうやって誰かと誰かが導きあって、その輝きを増していくんだ』
クーさんは真剣な表情でそう言った。
正直、僕には荷が重いと思う。
今まで僕は助けられてばっかりの存在だったし、誰かの為になんて考えた事もなかった。
でも…。
それでも、僕はやってみようと思う。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
そんな道標【みちしるべ】になってやろうと思う。
この人が僕を光だと言ってくれたから。
消えゆくその身を顧みず、僕に伝えてくれた最後のメッセージだから。
( ^ω^)『クーさん…分かりましたお。僕は…誰かの光として…これから生きていきますお』
498 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:18:09.41 ID:VAWkGF9I0
川 ゚ -゚)『分かってくれたか』
そう言ってクーさんは満足したように笑った。
まるで、全てをなし終えた…一日の仕事を終えた皆が見せるあの笑顔だった。
川 ゚ -゚)『これでようやく…全て終わったな』
それは奇跡の時間が終わる事を告げる一言。
再び、永久の別れが始まる事を告げる一言。
( ;ω;)『…行ってしまうんですかお…?』
僕の問いかけにクーさんは小さくコクリと頷く。
川 ゚ -゚)『もう…力が…残っていないんだ。これから少しの時間だけ…一人にしてくれないか?』
その言葉に僕は首をこれでもかと横に振った。
( ;ω;)『僕は…僕は最後の瞬間までクーさんと一緒にいたいですお』
そんな僕を見てクーさんはいつも見せてくれていた微笑みを浮かべ、それでも僕と同じ様に首を振った。
川 ゚ -゚)『ダメだ…もうダメなんだよ』
そう言ってクーさんは立ち上がると、スカートの裾をそっと持ち上げる。
( ;ω;)『…え?…』
504 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:19:40.37 ID:VAWkGF9I0
川 ゚ -゚)『見ろ内藤。
わたしの終わりはもうここまで進行してしまっている。
私自身全く想像していなかったのだが、
消滅の進行を制御するにはとんでもない痛みが…
そうだな。傷跡に焼けた鉄を押し当てられるような痛みを伴ってな。
正直、今こうして話しているだけでも痛みで気を失いそうなんだ』
たくし上げられたスカートの奥。
そこには、本来あるべき細い足がすでに存在していなかった。
ちょうど膝から下が完全に消滅していて、
その切断部分(?)も流れ落ちる砂時計のようにゆっくりと消え去っていく。
( ;ω;)『…これは…ひどい…あんまりだお…』
薄い灯りのせいでよく分からなかったけど、
よく見ればその顔は心なしか青ざめ、額には玉の様な汗が浮かんでいる。
川 ゚ -゚)『内藤。
死んでいる身とは言え、わたしだって女だ。
惚れた男の前で痴態は晒したくない。
どうか…わかってくれないか?』
それでもクーさんは顔をピクリとも歪めず、そこに立っていた。
506 名前: DJ(埼玉県) 投稿日: 2007/03/20(火) 00:20:44.06 ID:VAWkGF9I0
( ;ω;)『…分かりましたですお』
その確固たる決意と嘆願を織り交ぜた表情を見て、僕は席を立つ。
あぁ。
こんな時でも。
いや、こんな時だからこそなのか?
やっぱり、クーさんはクーさんだ。
どこまでも真っ直ぐで。
どこまでも凛々しくて。
どこまでも格好いい。
クーさんは向かい合って立つ僕の頬をすでに存在しない掌でそっと撫でると、
ゆっくりと顔を近づけてきた。
川 ゚ -゚)『これはカクテルの礼だ。
ツンには言ってくれるなよ』
僕の唇にクーさんの柔らかいそれが押しあてられ、
1・2・3・4・5とちょうど数え終わったところで静かに…名残を惜しむように離れた。
川 ゚ -゚)『さよならは言わないぞ、内藤ホライゾン!!
さぁ、行け!! わたしが照らした君の道をどこまでも駆けて行け!!』
その言葉を背に受けながら、僕は一人バースペースを後にした。
扉を閉じると、そこに背を預けて膝を抱えて座り込む。
そして、静かにその時が訪れるのを待った。
最終更新:2007年03月20日 00:23