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67 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 21:57:44.53 ID:eAqpFNCs0 屋上。 本来、空戦隊以外はあまり使わない場所だ。 ヘリの発着場も兼ねているので、障害物にあたる物はほとんどない。 夕日が落ち、夜が闇を引っ張ってくる時間が近付く。 中央部に、一人の人間が立っていた。 ( ・∀・)「……やれやれ」 モララーだ。 正面から来る風をものともせず、彼は自身の中で思考を続ける。 今回の件の原因は明確だ。 DATの欠片という妙な力を持つ物質が、ジェイルを中途半端に暴走させている。 それは部下も仲間も知って、更には納得しているはずだ。 しかし。 怪我人が出た。 建物が壊された。 階下で暴れている襲撃者は、DATを求めているらしい。 だから、これから死人が出る可能性もある。 それらの要素が出ているというのに、ジェイルを止めて終わり、などと出来るのだろうか? ( ・∀・)「……出来ないだろう、ね」 暴走状態だったとはいえ、ジェイルという個体が被害を生み出したのは事実。 今回の原因はDATだったが、また違う理由で暴走しないという保証は何処にもない。 71 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 21:59:10.59 ID:eAqpFNCs0 廃棄処分、という言葉が頭に浮かぶ。 ( ・∀・)「……せっかく『御主人様』を憶えてもらったというのに、勿体ない」 背後へ振り向く。 ( ・∀・)「そうは思わないかね?」 屋上の東側出入り口。 そのドアの傍らに、一人の大男が立っていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「……はて、何の話か解らんなぁ」 ( ・∀・)「あぁ、マジレスの必要は無い。      どうせ解るまいと思っていたからね」 両者、静かに睨み合う。 ノ(!i† ゝ゚ノ「DATの欠片を持つ女……お前を狙っていると聞いたが」 ( ・∀・)「間違いない」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふぅむ……では、漁夫の利を狙おうか」 その視線はモララーを見ていなかった。 彼がいる空間を通り過ぎ 爪゚ -゚)「……ここにいましたか」 77 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:01:12.74 ID:eAqpFNCs0 ジェイルだ。 屋上の西側出入り口から現れた彼女は、そのまま立ち尽くすようにこちらを見ている。 ( ・∀・)「遅かったね」 東側には巨躯の男、西側にはジェイル。 出入り口は東西二つしか存在しない。 どうするか。 思った瞬間、モララー以外の二人が同時に足を踏み出した。 ノ(!i† ゝ゚ノ「漁夫の利も良い……が、我は待つことを好まぬ」 爪゚ -゚)「御主人様ピンチ」 ( ・∀・)「言動が噛み合っていないということが、どれだけ怖面白いか解ったよ」 言いながら考える。 男はジェイルを、ジェイルはモララーを狙っているはずだ。 ならば、自分はどうするべきか。 ( ・∀・)「流れ的にあの男、か……だが男を狙うのは性的に面白くない……うぅむ」 直後、風が動いた。 巨躯の男が地を蹴り飛ばし、こちらに接近を仕掛けてきたのだ。 ノ(!i† ゝ゚ノ「遅延も好かんなぁ! さっさと殺させてもらうぞ!」 80 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:02:49.78 ID:eAqpFNCs0 狙いはジェイルではなくモララーだった。 彼を殺した後で、悠々とDATを回収するつもりらしい。 それに気付いたモララーが、指輪を取り出しながら構える。 目の前に、金の色が広がった。 爪゚ -゚)「危険と判断します」 色の正体はジェイルの後姿。 まるでモララーを護ろうとしているかの如く、大男の前に立ちはだかった。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぅぅん!!」 強烈かつ豪胆な気合の声。 それはジェイルによって視界が阻まれたモララーでさえ、一つの汗を浮かべるほど。 一瞬、彼女の背中が震えた。 爪゚ -゚)「――ッ!!」 それは本当に一瞬だった。 直後、ジェイルの背中から男の拳が突き出される。 数々の小さな部品を、モララーに向かって飛び散らせた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「脆い、な」 拳を収める。 支えを失ったジェイルは、そのまま崩れ落ちるように伏す。 85 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:04:11.57 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ジェイル君……?」 爪゚ -゚)「暴走していたとはいえ、システムは正常に動いておりました」 火花を散らす身体。 しかし、彼女の声はまったく濁っていない。 爪゚ -゚)「おそらく、敵接近による『主人防衛』という最優先行動が――」 ガクン、と彼女の身が跳ねた。 そのまま動かなくなる。 ( ・∀・)「……これは」 貫かれた腹部。 内部から、光る物体が見えた。 DATの欠片。 思っていたよりも小さな石だ。 それを右手に握りながら、モララーは少しだけ目を瞑る。 ( ・∀・)「……案外、呆気ない御別れになったね」 騒ぎが終われば、彼女は廃棄されることだろう。 せっかく、FCの技術レベルでは作れない貴重な機械を手に入れたと思っていたのだが。 しかしこうなってしまったのだから、今更何を言っても仕方ない。 とりあえず、目の前でニヤニヤしている男をどうにかせねば。 89 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:05:47.86 ID:eAqpFNCs0 そこまで思った時だ。 「あぁ!?」 西側出入り口から、幾つのも悲鳴ともいえる叫びが聞こえる。 視線を向ければ、唖然と口を広げているFCの部下達。 彼らはジェイルの姿を見るや、すぐさま駆け出してきた。 「ジジジ、ジェイルさんがぁぁぁぁ!!」 「とりあえず運べ運べ! 部品も全部だ!」 「地下の爺さん達に連絡入れろ! エレベーター動かせ! 速攻で運ぶぞ!」 巨躯の男やモララーが見えていないかのように、彼らはジェイルの身体を抱きかかえる。 「社長!」 ( ・∀・)「……何か?」 「俺、見てました! あのデカブツがジェイルさんをやっちまうとこ!  だから、絶対に絶対に絶対にアイツをブッ飛ばして下さい!」 ( ・∀・)「しかし……彼女は君達に牙を剥いていたよ?」 「それが何だって言うんですか!?  彼女は俺達の仲間だ! それを傷付けたあのデカブツは万死に値する!」 そうだそうだ、と全員が首を振る。 「だから社長! 俺達の怒りの分まで、アイツにかましてやって下さい!」 93 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:07:18.95 ID:eAqpFNCs0 真っ直ぐな瞳が幾つもモララーを見つめる。 彼は少しだけ黙った後、 ( ・∀・)「……解った」 それを聞いた彼らは安堵した様子で、しかし急ぎ足で退散していった。 ジェイルを複数人で抱え、地下の研究施設まで持っていくつもりだろう。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふン、御涙頂戴の陳腐な話にもならん……下らんな」 ( ・∀・)「あぁ、確かにそうだね……私も笑いを堪えるのが大変だったよ。      しかし私は少々、難しく考え過ぎていたようだ」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ほぅ?」 ( ・∀・)「廃棄処分は確かに必要なのかもしれない。      だが私は忘れていたよ……この私こそがFCのルールだということを」 ノ(!i† ゝ゚ノ「上に立つ人間として、その意見は最悪だと解っておるか?」 ( ・∀・)「私は元より底辺に属する最低人間だよ……『彼女』が死んだその日から、ね」 103 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:08:42.98 ID:eAqpFNCs0 懐から煙草のケースを取り出し、一本だけ指に挟む。 ( -∀-)「――――」 目を瞑り、何かの呟きを吐く。 音は吹き込む風によって掻き消されていたが、口の形は女性の名を表していた。 ( -∀-)(……もう顔さえも憶えていない君に願おう) 指先に力を流し込みながら ( -∀-)(今だけは――今だけで良いから、これからの行動を許して欲しい) 力の限りを籠めて煙草を握り潰した。 粉々になったそれを風に流しながら、もう片方の手に力を入れる。 その手の中には、DATの欠片。 ( ・∀・)(DATは想いを力に具現する、か……) ノ(!i† ゝ゚ノ「その力を以ってしても我は倒せんよ」 大男は格闘の構えをとった。 ノ(!i† ゝ゚ノ「我が名は『ラバン』。       貴様のような人間が、想いの力を得た程度で太刀打ち出来るわけがない」 殺気が発せられる。 それは如何なる鈍感を持つ者であっても、はっきりと感じ取れるほど禍々しい。 107 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:10:03.74 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ふむ」 対して、モララーは腕を軽く掲げる。 一瞬の発光後、その手には2nd-W『ロステック』が握られていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「武器を使うか……弱者には御似合いだな」 ( ・∀・)「否定はしないし、出来ない。      だが要は勝てば良いのだよ、勝てば」 ノ(!i† ゝ゚ノ「何故戦う? DATの欠片さえ渡せば、我は貴様らに手を出すことは無い」 ( ・∀・)「可愛い部下に頼まれたからね。      私の考えが無駄だった、ということを知らせてくれた礼もしなければなるまい」 モララーが突如として姿勢を低下させ、音も無く走り出す。 ( ・∀・)「ふっ!」 身を立ち上げる力を利用してロステックを叩き上げる。 豪速のそれは、的確にラバンの顎を捉えようとするが ノ(!i† ゝ゚ノ「むぅん!」 首を上げていたラバンが、いきなり頭を下げた。 それは槌頭へ向かっての頭突き。 撃音が、その場に大きく響く。 113 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:11:33.22 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ッ……」 ノ(!i† ゝ゚ノ「我に接近戦を挑むとは愚か也ッ!」 ラバンの周囲に風が収束。 腰を軽く落とし、腕を引き、体重を背後へ傾けた。 ――来る。 ゾクリ、と前方から冷気の壁を感じた。 それは錯覚ではあるが、情報として真実を伝えてくる。 今、モララーの体勢は崩れていた。 つまり、ラバンの攻撃を身に受けることは必至。 予想は現実となった。 形容し難い音が腹から響き、内部を通って脳に『直撃』を伝える。 全身の神経が麻痺したかのような感覚。 モララーの腹部を抉りこんだ拳は、そのまま勢いを止めることなく更に押し進む。 (  ∀ )「――くぁっ」 苦悶の声を残しながら背後へと弾け飛んだ。 低空飛翔し、推進力を失った身体は地を滑走する。 (  ∀ )「……げほっ、がはっ」 激痛に耐え切れず、身を折るようにして悶える。 その口の端から一筋の血液が流れ出ていた。 115 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:13:04.15 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ゚ノ「弱いのぉ」 ( -∀・)「ッ……あぁ、私は……弱いさ」 痛みが脳を揺さぶるも、しかしモララーはゆっくりと身を起こした。 ( -∀・)「強い人間なんて、この世にはいない……誰しも心の支えを必要とする。      この私も同じく……しかしその人は、もうこの世にはいないがね」 荒い息が、段々と整えられていく。 ( -∀・)「……これは、ジェイル君や部下を裏切ろうとしていた分の痛みだ。      そして『彼女』との約束を一時的に破る罰でもある……」 少しだけ足を震わせながら立ち上がった。 腹部への一撃とはいえ、その衝撃は全身に影響を与えているらしい。 それほどの力を、ラバンという男は持っていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「戯言を……今すぐに殺してやろう」 モララーにトドメを刺すため、地を蹴る。 満身創痍で迎撃するには分が悪過ぎる相手。 そんな状況下で、彼は笑みを浮かべながら呟いた。 ( -∀・)「――速度、が欲しいね」 キィン、という何かが鳴り響く音。 同時にラバンの正拳突が腰から飛び出す。 高速かつ破壊的。 直撃を受ければ内臓が潰れ、骨が砕け、皮膚はその衝撃に耐え切れずに破れるだろう。 118 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:14:42.42 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」 それほどの迫力を醸し出す拳は、しかしモララーを捉えなかった。 ありえない、と咄嗟に思う。 あの速度とタイミングの攻撃を回避するなど、それこそ神速を生み出す身体を持っていなければ―― ( ・∀・)「これが神の速度か」 真横。 突き出した右腕のせいで死角になっているが、右側面にモララーがいる。 独特な静寂から判断するに、既に攻撃体勢に入っている状態で、だ。 ( ・∀・)「次は……腕に力が欲しいね」 またしても応えるように音が響く。 想いを力に変換する音。 そしてそれは、彼の想いを忠実に具現化した。 音は無い。 その速度故に、音が音として発せられる時間さえ与えられないのだ。 それほどの一撃がラバンの脇腹に突き刺さる。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐふぉ……!?」 信じられない一撃だった。 まるで拳が身体内部に入りこみ、直接暴れているような感覚。 123 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:16:16.81 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「は――はは、ははははは! これぞ『ずっと私のターン』だね!」 音、具現化、攻撃。 その三連事象が流れるようにラバンに襲い掛かる。 ( ・∀・)「あぁ! 何と素晴らしきことだろう!      己を抑える必要を消去するDAT、また面白い玩具だと思わないか!?」 ノ(!i† ゝ゚ノ「馬鹿な……! 想い程度で、そんな力を――」 ( ・∀・)「理由は簡単、私の想いは常識外というわけだよ!」 ク、と喉を震わせて笑う。 ( ・∀・)「気持ちが良いものだね……これが自在の力か。      笑いが止まらない。      さて、次は……指が鋭く硬くなったら嬉しいね」 音、具現化。 指が硬質化したモララーは、一足飛びでラバンの顔面へ跳ぶ。 そのまま左手で彼の後頭部を固定し ( ・∀・)「まず、その目が気に入らない」 ラバンの両目に、指を根元まで突き刺した。 131 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:17:49.17 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ ノ「お、おぉぉぉっぁぁぁぁ!!?」 そのまま指を折り曲げ、内部を蹂躙。 粘着質な音が響く中で ( ・∀・)「おや、だいぶ深い。      少々人間のそれとは違うようだね」 引き抜く。 血液が付着した指を、ラバンの服で拭って距離をとった。 ノ(!i† ゝ ノ「き、貴様ぁ! 貴様はぁぁぁぁ!!」 ( ・∀・)「その声も気に入らない」 再度接近。 モララーの姿を視認出来ないラバンは、ただただ呻きながら位置を探すだけだ。 彼の技量を持ってすれば、音と気配で充分に割り出せたはず。 しかし、両目からくる激痛のせいで集中力が失われていた。 ノ(!i† ゝ ノ「ガッ……ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!?」 叫声。 声として発せられる予定だったそれは、喉を文字通り潰されたことにより異音として奏でられた。 ( ・∀・)「ジェイル君を突き抜いた、その拳が気に入らない」 更なる激音。 骨が割れ砕ける音だ。 モララーの右足が、地に着いたラバンの右拳を踏み砕いている。 136 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:19:06.86 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「何の理由も無いが、君の腕が気に入らない」 その右足を軸に回転し、回し蹴りを叩き込んだ。 鋭い軌跡を描くそれは、ラバンの右上腕部を真っ二つに粉砕。 同時に右踵が砕けた拳の上で捻られ、粉々になった骨肉が混ぜ込まれる。 ( ・∀・)「くく、くは……はは、はははははは!!」 声を無くし、そして尚も苦痛にもがくラバンを睥睨しながら ( ・∀・)「さて、次は何を潰そうか」 腕を組み ( ・∀・)「耳? いや、私の美声が聞こえなくなるなど可哀想過ぎるね」 146 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:20:20.15 ID:eAqpFNCs0 ふむ、と思考の声を出しながら、視線は苦しむラバンの一部分を捉える。 それは、股間と呼ばれる部位だった。 ( ・∀・)「君は異世界の人間……いや、人間ですらないようだが――やはり睾丸はあるのかね?」 ノ(!i† ゝ ノ「げヴぁ!?」 ( ・∀・)「何を言っているのか解らん。      まぁいい……実際に潰してみれば解る」 硬質な床を蹴る音。 つまり接近。 ノ(!i† ゝ ノ「ばべッ……ぶるあぁぁぁぁ!!」 ( ・∀・)「もがき苦しみ死にたまえよ阿呆」 グシャリ、という耳障りな音が、一際大きく響いた。 155 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:21:32.09 ID:eAqpFNCs0 「――――」 首から上を無くしたラバンが、そのまま地面に崩れ落ちる。 ( ・∀・)「冗談だよ、冗談。      やはり人間はユニークを失ったら駄目だね」 ラバンの頭があった場所には、ロステックの槌頭が叩き込まれていた。 砕かれ、細分化した骨肉は周囲にぶちまけられている。 しかしすぐに黒色の砂となって消滅した。 (  ∀ )「ッ……」 表情が歪む。 顔を伏せ、口元を引き攣らせながら (  ∀ )「……下らない、私は本当に下らない人間だ。      やはり復讐などという感情的な行為は、どうしても好きになれない……」 風に吹かれて消えていくラバンの死体。 取り出した煙草を口にくわえながら、ポツリと呟いた。 162 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:23:03.19 ID:eAqpFNCs0 と、そこで屋上の西側入り口が開かれた。 飛び込むように出現したのは、三つの人影。 (主^ω^)「屋上キター!!」 ( ^ω^)「わーい」 川 ゚ -゚)「む、もしかしてもう終わったのか?」 耳で、入ってきた人間を判別。 片手で顔を押さえつけ、浮かばせていた表情を無理矢理潰す。 一瞬で落ち着きを戻した彼は顔を上げ ( ・∀・)「……あぁ、こちらはもう終わったよ」 (主;^ω^)「アウチ、僕らが一生懸命走ってきた意味がなかったお」 ( ・∀・)「もう一つ言わせてもらえば、先ほどからエレベーターは動いている」 (;^ω^)「鼻折り損のくちびる儲けだお」 川 ゚ -゚)「意味が解らない」 この時点で、皆の意識は『安堵』へと向けられていた。 これから起こる『危険』を、誰もがまったく感じ取れていない状態。 167 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:24:36.62 ID:eAqpFNCs0 そこでモララーの目が見開かれた。 煙草を落としつつある口が動いたのは直後。 ( ・∀・)「何、だと……?」 ( ^ω^)「え――」 (主;^ω^)「えぇ!?」 立ち尽くしていたモララーが前のめりに倒れる。 その背後には ノ(!i† ゝ゚ノ「まだだ……! まだ終わらん!!」 巨躯の男がモララーの後頭部目掛けて拳を突き出していた。 その腕や目、身体の輪郭は闇に揺らいでいる。 (主;^ω^)「無理矢理に復活した……!?」 ノ(!i† ゝ゚ノ「我が身は元々は闇!       意思さえ残ればこの程度の復活は容易い……!」 川 ゚ -゚)「だが、その身体もボロボロだな」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ハッ! そんなものコレがあれば――」 その手にはモララーが持っていたはずのDATの欠片が握られている。 173 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:25:49.62 ID:eAqpFNCs0 (;^ω^)「な、なんだってー!!」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふははは! これがあれば勝ったも同然……!」 DATが闇に染まり、その波動がラバンに力を与える。 消えかけていた身体がはっきりと浮き上がり、更に存在感を増す。 ノ(!i† ゝ゚ノ「は、はははは! ははははははは!!」 轟、とラバンを中心に風が唸る。 その迫力たるや、かつてのハインリッヒに匹敵するほどだ。 (;^ω^)「これは負けたかも解らんね」 川 ゚ -゚)「諦めが早いぞ。 とはいえ、相手が悪過ぎるが」 (主^ω^)「まだだお!」 内藤二号がDATの欠片を取り出す。 (主^ω^)「力を貸してくれお! アイツに対抗出来る力が欲しいお!」 彼の願いを、DATの欠片は忠実に具現した。 ラバンの闇色とは対象の、まさに光色と呼べる神々しい光が展開。 内藤二号だけではく、それはブーンとクーの身体も包み込んだ。 178 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:27:03.75 ID:eAqpFNCs0 川 ゚ -゚)「こ、れは……」 ( ^ω^)「凄いお……何か力が湧いてくるお!」 機械音が響く。 限界突破命令を出していないにも関わらず ブーンの持つ8th-W『クレティウス』が巨大手甲へと姿を変えていた。 変化はそれだけに留まらない。 川;゚ -゚)「!?」 クーの持っていた透明色の刀である14th-W『ハンレ』。 本来、限界突破が無いはずのそれも光と共に姿を変える。 それは『十三本の刀』だった。 それぞれが鞘に収められ、何かが書かれた符によって一つにまとめられている。 川;゚ -゚)「何だこれは……こんなモノ、見たことがないぞ……!?」 直後、クーの視界が白に染まる。 まるで時間を止めたかのように彼女の身体が止まった。 (;^ω^)「クー……?」 ブーンの心配そうな声に引き戻されたかのように、ビクリと身体が震える。 182 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:28:25.79 ID:eAqpFNCs0 川;゚ -゚)「今のは……」 ありえない。 しかし確かに今、自分の心の中に現われたのはハンレの擬似精神だった。 そして彼女は間違いなく、クーに自分の使用方法を教えてくれた。 何故―― ノ(!i† ゝ゚ノ「行くぞッ!」 (主^ω^)「おっしゃ来いお!!」 闇色と光色が、同時に地を蹴り駆け出す。 互いに拳を構え―― 「――――!!」 一瞬で距離を無にしてぶつかり合う。 最初から全力だ。 衝撃波が巻き起こり、屋上にあるものを吹き飛ばす。 (主#^ω^)「おぉぉぉぉ!!」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぁぁぁぁぁ!!」 連打――いや、瞬打といえるほどの速度で放たれる拳。 それぞれが相手の身体を穿つも、しかし互いに一歩も退かない。 186 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:29:40.69 ID:eAqpFNCs0 (主;^ω^)「おっ!?」 衝突は互角に見えるも、押され始めたのは内藤二号だ。 互いが同等の力を持つ場合、勝敗を決するのは『速度』と『体格』と『経験』である。 そのどれもが劣っている内藤二号が押されているのは、当然の結果といえるだろう。 しかし ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」 今度はラバンが押される。 しかも横に、だ。 その方向から向かってくる力は『白色』の力。 (#^ω^)「二号だけに良い格好はさせないお!!」 ブーンだ。 手甲を全展開し、至る所に強化符を撒き散らしながらの連撃。 踏み込み、腰の捻り、肩の力動、拳の速度、身体の筋力。 強化符が攻撃挙動をサポートし、威力速度を底上げする。 そこから発せられるのは限界突破の四文字。 1+1=2。 単純計算で二倍の力がラバンに襲い掛かる。 190 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:31:03.34 ID:eAqpFNCs0 そして更に一が足された。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐっ……!?」 逆方向からの一撃。 それは光を発する透明の刀。 川 ゚ -゚)「これでどうだ……!!」 十三本の刀を束ねて持つクーだ。 初撃に続いて二連、三連、四連とコンビネーションアタックを仕掛ける。 その全てに特色があった。 一本目は引力を操り、二本目は粉砕力を持ち、三本目は刀身が伸び、四本目は自然を操る。 そう、ハンレが変化したこの武器の能力とは 川 ゚ -゚)「全ウェポン能力の同時使用――!!」 何故、この能力が開花したのかは見当がついていた。 内藤二号が発したDATの欠片、それが各々の能力全てを増強させたのだ。 これを言葉にするならば、14th-W『ハンレ』の擬似的限界突破。 全十三の力が、一斉にラバンへと牙を剥く。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ガッ……ぐぉ……!?」 三倍の攻撃がラバンに襲い掛かり、その身を砕いていった。 そして遂に攻撃の手が失せる。 すぐさまクーの十三本刀がラバンの足を貫き、位置を固定。 192 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:32:45.76 ID:eAqpFNCs0 ( ^ω^)「今だお! 二号!」 (主^ω^)「解ったお! 一号!」 二人同時に右足を引き、左手を前へ。 右拳を限界まで握り締め、思い切り振りかぶる。 そして腹の底から思い切り声を発した。 (主#^ω^)「「こ の 世 界 か ら 出 て 逝 け ぇ ぇ ぇ ぇ !!!」」(^ω^#) 神速轟撃。 衝撃波が発生する暇も無いほどの一撃、いや二撃が炸裂した。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐあぁあぁぁぁぁぁ!!?」 一号の拳が腹を、二号の拳が胸を穿つ。 拳を纏っていた光がラバンの身体を蹂躙し、内部で荒れ狂った。 ラバンの目、口、鼻、耳、亀裂が入った皮膚……その他至る場所から光が漏れる。 ノ(!i† ゝ゚ノ「も、うしわけ――ま、せん――ふぉっくs――」 言葉が終わる前に身体が光に包まれる。 一陣の突風と、一柱の光と共に闇色が消滅。 (主^ω^)「……やったお」 落ちたDATの欠片を手に取り、内藤二号は歓喜の溜息を吐く。 今度は、残りカスさえも残らなかった。 198 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:34:23.15 ID:eAqpFNCs0 (主^ω^)「ありがとうございましたですお」 全てが終わり、既に夜の時間が来ている屋上。 そこに十名近い人間が集っていた。 彼らに向けて、内藤二号は頭を下げる。 ( ^ω^)「とりあえず事が収まって良かったお」 川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな……色々と被害は少なくないが」 (´<_` )「ま、結局こうやってDATの欠片は得られたんだ。       ここは愚痴を抑えて内藤二号を見送ろう」 ちなみに彼らの隣では、全裸の兄者が横たわっている。 ('A`)「……邪魔くせぇから蹴飛ばしていい?     っていうか、何で記憶が一部だけ無いんだろ……」 从;゚∀从「ささささぁ? 何ででしょーね?」 (主;^ω^)b(ハインリッヒさん、GJだお) 冷や汗を拭った内藤二号は、モララーの方へ向き直る。 (主^ω^)「あの、ジェイルさんのこと……すいませんでしたお」 ( ・∀・)「いや、君の責任ではないから謝る必要はない。      とりあえず修復は可能だと連絡はあったから、安心して良いよ。      その後を伝えられないことが少しだけ心残りだが……」 206 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:35:36.50 ID:eAqpFNCs0 ちなみに戦意喪失したリリオルとノリルメリーは、既にこの世界にはいない。 リリオルはトランプで遊んだ後、闇となって消えた。 ノリルメリーも、弟者の話す兄者珍妙伝を散々聞かされ、泣きながら消えていったらしい。 前者はともかく、後者には同情を隠せない。 (´<_` )「……そういえば、お前はこれからどうするんだ?」 (主^ω^)「別の世界へ行くんだお。        DATの欠片は、まだ全部集まってないから」 川 ゚ -゚)「何か支援出来ると良いのだがな……流石に世界を渡る術は持っていない」 ('A`)「でも、応援してるぜ」 从 ゚∀从「頑張って下さい!」 (主^ω^)「おっおっ、嬉しいお。 頑張るお」 突如、彼の持っているDATが光を発する。 それは世界を越える合図だ。 ( ・∀・)「では、これで御別れだが……君の目論見の成功を願っているよ」 ( ^ω^)「また来れたら来るお! 今度は一緒に遊ぶお!」 川 ゚ -゚)「今回は色々と騒がしかったからな。      また次に来れたら、観光案内でもしたいところだ」 (主^ω^)「おk、把握したお!」 214 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:37:12.63 ID:eAqpFNCs0 光が強くなる。 それはまるで内藤二号を包み込むように展開された。 風が渦巻き、空間が震える。 (主^ω^)ノシ「ありがとうだお! さよならだお!」 手を振る内藤二号。 そのままの姿勢で、光の中へ包まれていった。 直後、その光は収束しながら消滅。 光の残滓を残しながらも、内藤二号は別世界へと旅立った。 (´<_` )「ふぅ……何気に貴重な体験だったような」 从 ゚∀从「とにかく疲れましたね……帰ってお風呂に入りたいです。       今日のことは絶対に日記に書きますよ! 友達も出来ましたし!」 ( ^ω^)「それは良いことだお。       ……ところで、兄者さんはどうするお?」 ('A`)「放っておきゃいいんじゃね? 面倒だし」 川 ゚ -゚)「だが、風邪をひいてしまうぞ」 (´<_` )「馬鹿は風邪をひかない、という名言を昔の人は残してくれた」 というわけで、寒空の下に置いていかれる兄者であった。 ( ・∀・)「…………」 224 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:38:46.02 ID:eAqpFNCs0 二週間後。 事後処理が大部分終わったFC。 修理などの作業に追われていた日々も過ぎ去り、いつもの雰囲気が戻ってきていた。 とはいえ、未だ部下の一部は都市ニューソクへ派遣されている。 バーボンハウスの修理のためだ。 ギコ達に何とか取り押さえられたショボンは、鬼と化していた時の記憶を失っていたため 周囲の人間が適当な事情を話したらしい。 よって責任はジェイルへ向けられることは無かったのだが、それでも破壊した事実は変わらない。 というわけでFCが、特別サービスという名目で修復しているのである。 ( ・∀・)(ま、もちろんそれ以外にも理由はあるがね) 社長室にあるデスク。 大きな椅子を軋ませ、モララーは思う。 そう、まだバーボンハウスの工事は終わっていない。 主であるショボンでさえも知り得ぬ、ある秘密工事が。 ちなみに最近、夜の社内に全裸の幽霊が出るとの噂がある。 そういえば弟者が、帰ってこない兄の心配をしていたが何処で何をしているのやら。 231 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:40:12.36 ID:eAqpFNCs0 と、そこで社長室の扉が開く。 入ってきた人物は音も無く扉を閉め、そのまま一直線に歩いてくる。 両手で盆を持ち、その上には湯気が立ち上るコーヒーカップ。 「モララー様、コーヒーをお持ちしました」 モララーは答えた。 ( ・∀・)「『モララー様』ではなく、『御主人様』と呼んで欲しいと言ったはずだが?」 彼女も答える。 爪゚ -゚)「申し訳ございません。     未だに指定言語がシステムに着床していないので」 ( ・∀・)「ま、私は心が異常に広いので五月蝿くは言わない。      のんびりと慣れたまえ」 爪゚ -゚)「ありがとうございます……しかし」 ( ・∀・)「しかし?」 爪゚ -゚)「このやり取り、以前にもしたような記憶が微かに残っております。     記憶素子に異常があるのでしょうか」 234 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:41:34.87 ID:eAqpFNCs0 それを聞いたモララーが、少しだけ口元を歪ませた。 ( ・∀・)「いや、それは異常なんかじゃない。      大切なものだから、ずっと大切に保存しておきたまえよ」 主人の言葉の意味が解らなかったのか、彼女は無表情に首を傾げる。 爪゚ -゚)「どういう意味か、詳しく御願いします」 ( ・∀・)「今の君が知っても意味を持たぬモノだ」 爪゚ -゚)「以前の私などあるのでしょうか。     それならば、何処から何処までが私なのでしょうか」 モララーは、彼女の言葉が可笑しくて仕方ないような様子で笑い始める。 ( ・∀・)「君は君だよ……かつてもこれからも何処から何処までも、ね」 尚も首を傾げるジェイル。 しばらくの間、社長室に嬉しそうな笑い声が響き続けた。                 ―終― 247 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:42:57.57 ID:eAqpFNCs0                   ξ゚⊿゚)ξつ===【次回予告】)´_ゝ`)                        次回予告出演者審議中                          川 ゚ -゚)(^ω^ )                       ( ,,゚Д゚) U) ( つと ノ(´<_` )                       | U (  ・∀)(・`   ) と ノ                        u-u (l    ) (   ノ u-u                             `u-u'. `u-u' 257 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:44:31.84 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「さて、明日の投下作者さんは誰かね?」 爪゚ -゚)「◆HGGslycgr6氏です」 ミ,,"Д゚彡「『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を筆頭に       数々の素晴らしい作品を書いている方ですね」 ノハ#;゚⊿゚)「あ、あの……何で私まで引っ張り出されたの? 私、戦護には出てないよ?」 ( ;∀;)「ヴぉぇあぁぁぁ」 (´<_` )「どうしたジョルj……って誰だお前モララーの亜種かよ気持ち悪いな」 ( ;∀;)「だってブーンがぁぁぁぁツンがぁぁぁぁ」 (´<_` )「すごいキモイんですけど」 (´・ω・`)「あぁ、僕が『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を読むように言ったんだ。       最初はニョロニョロ読んでたんだけど、途中からまったく返事さえ寄越さなくなってね。       読み終わったらこれさ」 川 ゚ -゚)「ふむ、それほどのパワーを持つ作品というわけだな」 ( ^ω^)「これは期待するしかないお」 从 ゚∀从「◆HGGslycgr6さんは一体どのような感動を僕達にもたらしてくれるのでしょーか!       次回、( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです第七回! 問答無用でお楽しみに!!」 ノハ#;゚⊿゚)「えっと、個人的にはGさんが好きでした、はい……何か出てきてすいません……」
67 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 21:57:44.53 ID:eAqpFNCs0 屋上。 本来、空戦隊以外はあまり使わない場所だ。 ヘリの発着場も兼ねているので、障害物にあたる物はほとんどない。 夕日が落ち、夜が闇を引っ張ってくる時間が近付く。 中央部に、一人の人間が立っていた。 ( ・∀・)「……やれやれ」 モララーだ。 正面から来る風をものともせず、彼は自身の中で思考を続ける。 今回の件の原因は明確だ。 DATの欠片という妙な力を持つ物質が、ジェイルを中途半端に暴走させている。 それは部下も仲間も知って、更には納得しているはずだ。 しかし。 怪我人が出た。 建物が壊された。 階下で暴れている襲撃者は、DATを求めているらしい。 だから、これから死人が出る可能性もある。 それらの要素が出ているというのに、ジェイルを止めて終わり、などと出来るのだろうか? ( ・∀・)「……出来ないだろう、ね」 暴走状態だったとはいえ、ジェイルという個体が被害を生み出したのは事実。 今回の原因はDATだったが、また違う理由で暴走しないという保証は何処にもない。 71 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 21:59:10.59 ID:eAqpFNCs0 廃棄処分、という言葉が頭に浮かぶ。 ( ・∀・)「……せっかく『御主人様』を憶えてもらったというのに、勿体ない」 背後へ振り向く。 ( ・∀・)「そうは思わないかね?」 屋上の東側出入り口。 そのドアの傍らに、一人の大男が立っていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「……はて、何の話か解らんなぁ」 ( ・∀・)「あぁ、マジレスの必要は無い。      どうせ解るまいと思っていたからね」 両者、静かに睨み合う。 ノ(!i† ゝ゚ノ「DATの欠片を持つ女……お前を狙っていると聞いたが」 ( ・∀・)「間違いない」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふぅむ……では、漁夫の利を狙おうか」 その視線はモララーを見ていなかった。 彼がいる空間を通り過ぎ 爪゚ -゚)「……ここにいましたか」 77 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:01:12.74 ID:eAqpFNCs0 ジェイルだ。 屋上の西側出入り口から現れた彼女は、そのまま立ち尽くすようにこちらを見ている。 ( ・∀・)「遅かったね」 東側には巨躯の男、西側にはジェイル。 出入り口は東西二つしか存在しない。 どうするか。 思った瞬間、モララー以外の二人が同時に足を踏み出した。 ノ(!i† ゝ゚ノ「漁夫の利も良い……が、我は待つことを好まぬ」 爪゚ -゚)「御主人様ピンチ」 ( ・∀・)「言動が噛み合っていないということが、どれだけ怖面白いか解ったよ」 言いながら考える。 男はジェイルを、ジェイルはモララーを狙っているはずだ。 ならば、自分はどうするべきか。 ( ・∀・)「流れ的にあの男、か……だが男を狙うのは性的に面白くない……うぅむ」 直後、風が動いた。 巨躯の男が地を蹴り飛ばし、こちらに接近を仕掛けてきたのだ。 ノ(!i† ゝ゚ノ「遅延も好かんなぁ! さっさと殺させてもらうぞ!」 80 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:02:49.78 ID:eAqpFNCs0 狙いはジェイルではなくモララーだった。 彼を殺した後で、悠々とDATを回収するつもりらしい。 それに気付いたモララーが、指輪を取り出しながら構える。 目の前に、金の色が広がった。 爪゚ -゚)「危険と判断します」 色の正体はジェイルの後姿。 まるでモララーを護ろうとしているかの如く、大男の前に立ちはだかった。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぅぅん!!」 強烈かつ豪胆な気合の声。 それはジェイルによって視界が阻まれたモララーでさえ、一つの汗を浮かべるほど。 一瞬、彼女の背中が震えた。 爪゚ -゚)「――ッ!!」 それは本当に一瞬だった。 直後、ジェイルの背中から男の拳が突き出される。 数々の小さな部品を、モララーに向かって飛び散らせた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「脆い、な」 拳を収める。 支えを失ったジェイルは、そのまま崩れ落ちるように伏す。 85 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:04:11.57 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ジェイル君……?」 爪゚ -゚)「暴走していたとはいえ、システムは正常に動いておりました」 火花を散らす身体。 しかし、彼女の声はまったく濁っていない。 爪゚ -゚)「おそらく、敵接近による『主人防衛』という最優先行動が――」 ガクン、と彼女の身が跳ねた。 そのまま動かなくなる。 ( ・∀・)「……これは」 貫かれた腹部。 内部から、光る物体が見えた。 DATの欠片。 思っていたよりも小さな石だ。 それを右手に握りながら、モララーは少しだけ目を瞑る。 ( ・∀・)「……案外、呆気ない御別れになったね」 騒ぎが終われば、彼女は廃棄されることだろう。 せっかく、FCの技術レベルでは作れない貴重な機械を手に入れたと思っていたのだが。 しかしこうなってしまったのだから、今更何を言っても仕方ない。 とりあえず、目の前でニヤニヤしている男をどうにかせねば。 89 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:05:47.86 ID:eAqpFNCs0 そこまで思った時だ。 「あぁ!?」 西側出入り口から、幾つのも悲鳴ともいえる叫びが聞こえる。 視線を向ければ、唖然と口を広げているFCの部下達。 彼らはジェイルの姿を見るや、すぐさま駆け出してきた。 「ジジジ、ジェイルさんがぁぁぁぁ!!」 「とりあえず運べ運べ! 部品も全部だ!」 「地下の爺さん達に連絡入れろ! エレベーター動かせ! 速攻で運ぶぞ!」 巨躯の男やモララーが見えていないかのように、彼らはジェイルの身体を抱きかかえる。 「社長!」 ( ・∀・)「……何か?」 「俺、見てました! あのデカブツがジェイルさんをやっちまうとこ!  だから、絶対に絶対に絶対にアイツをブッ飛ばして下さい!」 ( ・∀・)「しかし……彼女は君達に牙を剥いていたよ?」 「それが何だって言うんですか!?  彼女は俺達の仲間だ! それを傷付けたあのデカブツは万死に値する!」 そうだそうだ、と全員が首を振る。 「だから社長! 俺達の怒りの分まで、アイツにかましてやって下さい!」 93 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:07:18.95 ID:eAqpFNCs0 真っ直ぐな瞳が幾つもモララーを見つめる。 彼は少しだけ黙った後、 ( ・∀・)「……解った」 それを聞いた彼らは安堵した様子で、しかし急ぎ足で退散していった。 ジェイルを複数人で抱え、地下の研究施設まで持っていくつもりだろう。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふン、御涙頂戴の陳腐な話にもならん……下らんな」 ( ・∀・)「あぁ、確かにそうだね……私も笑いを堪えるのが大変だったよ。      しかし私は少々、難しく考え過ぎていたようだ」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ほぅ?」 ( ・∀・)「廃棄処分は確かに必要なのかもしれない。      だが私は忘れていたよ……この私こそがFCのルールだということを」 ノ(!i† ゝ゚ノ「上に立つ人間として、その意見は最悪だと解っておるか?」 ( ・∀・)「私は元より底辺に属する最低人間だよ……『彼女』が死んだその日から、ね」 103 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:08:42.98 ID:eAqpFNCs0 懐から煙草のケースを取り出し、一本だけ指に挟む。 ( -∀-)「――――」 目を瞑り、何かの呟きを吐く。 音は吹き込む風によって掻き消されていたが、口の形は女性の名を表していた。 ( -∀-)(……もう顔さえも憶えていない君に願おう) 指先に力を流し込みながら ( -∀-)(今だけは――今だけで良いから、これからの行動を許して欲しい) 力の限りを籠めて煙草を握り潰した。 粉々になったそれを風に流しながら、もう片方の手に力を入れる。 その手の中には、DATの欠片。 ( ・∀・)(DATは想いを力に具現する、か……) ノ(!i† ゝ゚ノ「その力を以ってしても我は倒せんよ」 大男は格闘の構えをとった。 ノ(!i† ゝ゚ノ「我が名は『ラバン』。       貴様のような人間が、想いの力を得た程度で太刀打ち出来るわけがない」 殺気が発せられる。 それは如何なる鈍感を持つ者であっても、はっきりと感じ取れるほど禍々しい。 107 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:10:03.74 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ふむ」 対して、モララーは腕を軽く掲げる。 一瞬の発光後、その手には2nd-W『ロステック』が握られていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「武器を使うか……弱者には御似合いだな」 ( ・∀・)「否定はしないし、出来ない。      だが要は勝てば良いのだよ、勝てば」 ノ(!i† ゝ゚ノ「何故戦う? DATの欠片さえ渡せば、我は貴様らに手を出すことは無い」 ( ・∀・)「可愛い部下に頼まれたからね。      私の考えが無駄だった、ということを知らせてくれた礼もしなければなるまい」 モララーが突如として姿勢を低下させ、音も無く走り出す。 ( ・∀・)「ふっ!」 身を立ち上げる力を利用してロステックを叩き上げる。 豪速のそれは、的確にラバンの顎を捉えようとするが ノ(!i† ゝ゚ノ「むぅん!」 首を上げていたラバンが、いきなり頭を下げた。 それは槌頭へ向かっての頭突き。 撃音が、その場に大きく響く。 113 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:11:33.22 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「ッ……」 ノ(!i† ゝ゚ノ「我に接近戦を挑むとは愚か也ッ!」 ラバンの周囲に風が収束。 腰を軽く落とし、腕を引き、体重を背後へ傾けた。 ――来る。 ゾクリ、と前方から冷気の壁を感じた。 それは錯覚ではあるが、情報として真実を伝えてくる。 今、モララーの体勢は崩れていた。 つまり、ラバンの攻撃を身に受けることは必至。 予想は現実となった。 形容し難い音が腹から響き、内部を通って脳に『直撃』を伝える。 全身の神経が麻痺したかのような感覚。 モララーの腹部を抉りこんだ拳は、そのまま勢いを止めることなく更に押し進む。 (  ∀ )「――くぁっ」 苦悶の声を残しながら背後へと弾け飛んだ。 低空飛翔し、推進力を失った身体は地を滑走する。 (  ∀ )「……げほっ、がはっ」 激痛に耐え切れず、身を折るようにして悶える。 その口の端から一筋の血液が流れ出ていた。 115 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:13:04.15 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ゚ノ「弱いのぉ」 ( -∀・)「ッ……あぁ、私は……弱いさ」 痛みが脳を揺さぶるも、しかしモララーはゆっくりと身を起こした。 ( -∀・)「強い人間なんて、この世にはいない……誰しも心の支えを必要とする。      この私も同じく……しかしその人は、もうこの世にはいないがね」 荒い息が、段々と整えられていく。 ( -∀・)「……これは、ジェイル君や部下を裏切ろうとしていた分の痛みだ。      そして『彼女』との約束を一時的に破る罰でもある……」 少しだけ足を震わせながら立ち上がった。 腹部への一撃とはいえ、その衝撃は全身に影響を与えているらしい。 それほどの力を、ラバンという男は持っていた。 ノ(!i† ゝ゚ノ「戯言を……今すぐに殺してやろう」 モララーにトドメを刺すため、地を蹴る。 満身創痍で迎撃するには分が悪過ぎる相手。 そんな状況下で、彼は笑みを浮かべながら呟いた。 ( -∀・)「――速度、が欲しいね」 キィン、という何かが鳴り響く音。 同時にラバンの正拳突が腰から飛び出す。 高速かつ破壊的。 直撃を受ければ内臓が潰れ、骨が砕け、皮膚はその衝撃に耐え切れずに破れるだろう。 118 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:14:42.42 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」 それほどの迫力を醸し出す拳は、しかしモララーを捉えなかった。 ありえない、と咄嗟に思う。 あの速度とタイミングの攻撃を回避するなど、それこそ神速を生み出す身体を持っていなければ―― ( ・∀・)「これが神の速度か」 真横。 突き出した右腕のせいで死角になっているが、右側面にモララーがいる。 独特な静寂から判断するに、既に攻撃体勢に入っている状態で、だ。 ( ・∀・)「次は……腕に力が欲しいね」 またしても応えるように音が響く。 想いを力に変換する音。 そしてそれは、彼の想いを忠実に具現化した。 音は無い。 その速度故に、音が音として発せられる時間さえ与えられないのだ。 それほどの一撃がラバンの脇腹に突き刺さる。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐふぉ……!?」 信じられない一撃だった。 まるで拳が身体内部に入りこみ、直接暴れているような感覚。 123 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:16:16.81 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「は――はは、ははははは! これぞ『ずっと私のターン』だね!」 音、具現化、攻撃。 その三連事象が流れるようにラバンに襲い掛かる。 ( ・∀・)「あぁ! 何と素晴らしきことだろう!      己を抑える必要を消去するDAT、また面白い玩具だと思わないか!?」 ノ(!i† ゝ゚ノ「馬鹿な……! 想い程度で、そんな力を――」 ( ・∀・)「理由は簡単、私の想いは常識外というわけだよ!」 ク、と喉を震わせて笑う。 ( ・∀・)「気持ちが良いものだね……これが自在の力か。      笑いが止まらない。      さて、次は……指が鋭く硬くなったら嬉しいね」 音、具現化。 指が硬質化したモララーは、一足飛びでラバンの顔面へ跳ぶ。 そのまま左手で彼の後頭部を固定し ( ・∀・)「まず、その目が気に入らない」 ラバンの両目に、指を根元まで突き刺した。 131 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:17:49.17 ID:eAqpFNCs0 ノ(!i† ゝ ノ「お、おぉぉぉっぁぁぁぁ!!?」 そのまま指を折り曲げ、内部を蹂躙。 粘着質な音が響く中で ( ・∀・)「おや、だいぶ深い。      少々人間のそれとは違うようだね」 引き抜く。 血液が付着した指を、ラバンの服で拭って距離をとった。 ノ(!i† ゝ ノ「き、貴様ぁ! 貴様はぁぁぁぁ!!」 ( ・∀・)「その声も気に入らない」 再度接近。 モララーの姿を視認出来ないラバンは、ただただ呻きながら位置を探すだけだ。 彼の技量を持ってすれば、音と気配で充分に割り出せたはず。 しかし、両目からくる激痛のせいで集中力が失われていた。 ノ(!i† ゝ ノ「ガッ……ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!?」 叫声。 声として発せられる予定だったそれは、喉を文字通り潰されたことにより異音として奏でられた。 ( ・∀・)「ジェイル君を突き抜いた、その拳が気に入らない」 更なる激音。 骨が割れ砕ける音だ。 モララーの右足が、地に着いたラバンの右拳を踏み砕いている。 136 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:19:06.86 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「何の理由も無いが、君の腕が気に入らない」 その右足を軸に回転し、回し蹴りを叩き込んだ。 鋭い軌跡を描くそれは、ラバンの右上腕部を真っ二つに粉砕。 同時に右踵が砕けた拳の上で捻られ、粉々になった骨肉が混ぜ込まれる。 ( ・∀・)「くく、くは……はは、はははははは!!」 声を無くし、そして尚も苦痛にもがくラバンを睥睨しながら ( ・∀・)「さて、次は何を潰そうか」 腕を組み ( ・∀・)「耳? いや、私の美声が聞こえなくなるなど可哀想過ぎるね」 146 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:20:20.15 ID:eAqpFNCs0 ふむ、と思考の声を出しながら、視線は苦しむラバンの一部分を捉える。 それは、股間と呼ばれる部位だった。 ( ・∀・)「君は異世界の人間……いや、人間ですらないようだが――やはり睾丸はあるのかね?」 ノ(!i† ゝ ノ「げヴぁ!?」 ( ・∀・)「何を言っているのか解らん。      まぁいい……実際に潰してみれば解る」 硬質な床を蹴る音。 つまり接近。 ノ(!i† ゝ ノ「ばべッ……ぶるあぁぁぁぁ!!」 ( ・∀・)「もがき苦しみ死にたまえよ阿呆」 グシャリ、という耳障りな音が、一際大きく響いた。 155 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:21:32.09 ID:eAqpFNCs0 「――――」 首から上を無くしたラバンが、そのまま地面に崩れ落ちる。 ( ・∀・)「冗談だよ、冗談。      やはり人間はユニークを失ったら駄目だね」 ラバンの頭があった場所には、ロステックの槌頭が叩き込まれていた。 砕かれ、細分化した骨肉は周囲にぶちまけられている。 しかしすぐに黒色の砂となって消滅した。 (  ∀ )「ッ……」 表情が歪む。 顔を伏せ、口元を引き攣らせながら (  ∀ )「……下らない、私は本当に下らない人間だ。      やはり復讐などという感情的な行為は、どうしても好きになれない……」 風に吹かれて消えていくラバンの死体。 取り出した煙草を口にくわえながら、ポツリと呟いた。 162 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:23:03.19 ID:eAqpFNCs0 と、そこで屋上の西側入り口が開かれた。 飛び込むように出現したのは、三つの人影。 (主^ω^)「屋上キター!!」 ( ^ω^)「わーい」 川 ゚ -゚)「む、もしかしてもう終わったのか?」 耳で、入ってきた人間を判別。 片手で顔を押さえつけ、浮かばせていた表情を無理矢理潰す。 一瞬で落ち着きを戻した彼は顔を上げ ( ・∀・)「……あぁ、こちらはもう終わったよ」 (主;^ω^)「アウチ、僕らが一生懸命走ってきた意味がなかったお」 ( ・∀・)「もう一つ言わせてもらえば、先ほどからエレベーターは動いている」 (;^ω^)「鼻折り損のくちびる儲けだお」 川 ゚ -゚)「意味が解らない」 この時点で、皆の意識は『安堵』へと向けられていた。 これから起こる『危険』を、誰もがまったく感じ取れていない状態。 167 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:24:36.62 ID:eAqpFNCs0 そこでモララーの目が見開かれた。 煙草を落としつつある口が動いたのは直後。 ( ・∀・)「何、だと……?」 ( ^ω^)「え――」 (主;^ω^)「えぇ!?」 立ち尽くしていたモララーが前のめりに倒れる。 その背後には ノ(!i† ゝ゚ノ「まだだ……! まだ終わらん!!」 巨躯の男がモララーの後頭部目掛けて拳を突き出していた。 その腕や目、身体の輪郭は闇に揺らいでいる。 (主;^ω^)「無理矢理に復活した……!?」 ノ(!i† ゝ゚ノ「我が身は元々は闇!       意思さえ残ればこの程度の復活は容易い……!」 川 ゚ -゚)「だが、その身体もボロボロだな」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ハッ! そんなものコレがあれば――」 その手にはモララーが持っていたはずのDATの欠片が握られている。 173 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:25:49.62 ID:eAqpFNCs0 (;^ω^)「な、なんだってー!!」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ふははは! これがあれば勝ったも同然……!」 DATが闇に染まり、その波動がラバンに力を与える。 消えかけていた身体がはっきりと浮き上がり、更に存在感を増す。 ノ(!i† ゝ゚ノ「は、はははは! ははははははは!!」 轟、とラバンを中心に風が唸る。 その迫力たるや、かつてのハインリッヒに匹敵するほどだ。 (;^ω^)「これは負けたかも解らんね」 川 ゚ -゚)「諦めが早いぞ。 とはいえ、相手が悪過ぎるが」 (主^ω^)「まだだお!」 内藤二号がDATの欠片を取り出す。 (主^ω^)「力を貸してくれお! アイツに対抗出来る力が欲しいお!」 彼の願いを、DATの欠片は忠実に具現した。 ラバンの闇色とは対象の、まさに光色と呼べる神々しい光が展開。 内藤二号だけではく、それはブーンとクーの身体も包み込んだ。 178 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:27:03.75 ID:eAqpFNCs0 川 ゚ -゚)「こ、れは……」 ( ^ω^)「凄いお……何か力が湧いてくるお!」 機械音が響く。 限界突破命令を出していないにも関わらず ブーンの持つ8th-W『クレティウス』が巨大手甲へと姿を変えていた。 変化はそれだけに留まらない。 川;゚ -゚)「!?」 クーの持っていた透明色の刀である14th-W『ハンレ』。 本来、限界突破が無いはずのそれも光と共に姿を変える。 それは『十三本の刀』だった。 それぞれが鞘に収められ、何かが書かれた符によって一つにまとめられている。 川;゚ -゚)「何だこれは……こんなモノ、見たことがないぞ……!?」 直後、クーの視界が白に染まる。 まるで時間を止めたかのように彼女の身体が止まった。 (;^ω^)「クー……?」 ブーンの心配そうな声に引き戻されたかのように、ビクリと身体が震える。 182 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:28:25.79 ID:eAqpFNCs0 川;゚ -゚)「今のは……」 ありえない。 しかし確かに今、自分の心の中に現われたのはハンレの擬似精神だった。 そして彼女は間違いなく、クーに自分の使用方法を教えてくれた。 何故―― ノ(!i† ゝ゚ノ「行くぞッ!」 (主^ω^)「おっしゃ来いお!!」 闇色と光色が、同時に地を蹴り駆け出す。 互いに拳を構え―― 「――――!!」 一瞬で距離を無にしてぶつかり合う。 最初から全力だ。 衝撃波が巻き起こり、屋上にあるものを吹き飛ばす。 (主#^ω^)「おぉぉぉぉ!!」 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぁぁぁぁぁ!!」 連打――いや、瞬打といえるほどの速度で放たれる拳。 それぞれが相手の身体を穿つも、しかし互いに一歩も退かない。 186 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:29:40.69 ID:eAqpFNCs0 (主;^ω^)「おっ!?」 衝突は互角に見えるも、押され始めたのは内藤二号だ。 互いが同等の力を持つ場合、勝敗を決するのは『速度』と『体格』と『経験』である。 そのどれもが劣っている内藤二号が押されているのは、当然の結果といえるだろう。 しかし ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」 今度はラバンが押される。 しかも横に、だ。 その方向から向かってくる力は『白色』の力。 (#^ω^)「二号だけに良い格好はさせないお!!」 ブーンだ。 手甲を全展開し、至る所に強化符を撒き散らしながらの連撃。 踏み込み、腰の捻り、肩の力動、拳の速度、身体の筋力。 強化符が攻撃挙動をサポートし、威力速度を底上げする。 そこから発せられるのは限界突破の四文字。 1+1=2。 単純計算で二倍の力がラバンに襲い掛かる。 190 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:31:03.34 ID:eAqpFNCs0 そして更に一が足された。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐっ……!?」 逆方向からの一撃。 それは光を発する透明の刀。 川 ゚ -゚)「これでどうだ……!!」 十三本の刀を束ねて持つクーだ。 初撃に続いて二連、三連、四連とコンビネーションアタックを仕掛ける。 その全てに特色があった。 一本目は引力を操り、二本目は粉砕力を持ち、三本目は刀身が伸び、四本目は自然を操る。 そう、ハンレが変化したこの武器の能力とは 川 ゚ -゚)「全ウェポン能力の同時使用――!!」 何故、この能力が開花したのかは見当がついていた。 内藤二号が発したDATの欠片、それが各々の能力全てを増強させたのだ。 これを言葉にするならば、14th-W『ハンレ』の擬似的限界突破。 全十三の力が、一斉にラバンへと牙を剥く。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ガッ……ぐぉ……!?」 三倍の攻撃がラバンに襲い掛かり、その身を砕いていった。 そして遂に攻撃の手が失せる。 すぐさまクーの十三本刀がラバンの足を貫き、位置を固定。 192 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:32:45.76 ID:eAqpFNCs0 ( ^ω^)「今だお! 二号!」 (主^ω^)「解ったお! 一号!」 二人同時に右足を引き、左手を前へ。 右拳を限界まで握り締め、思い切り振りかぶる。 そして腹の底から思い切り声を発した。 (主#^ω^)「「こ の 世 界 か ら 出 て 逝 け ぇ ぇ ぇ ぇ !!!」」(^ω^#) 神速轟撃。 衝撃波が発生する暇も無いほどの一撃、いや二撃が炸裂した。 ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐあぁあぁぁぁぁぁ!!?」 一号の拳が腹を、二号の拳が胸を穿つ。 拳を纏っていた光がラバンの身体を蹂躙し、内部で荒れ狂った。 ラバンの目、口、鼻、耳、亀裂が入った皮膚……その他至る場所から光が漏れる。 ノ(!i† ゝ゚ノ「も、うしわけ――ま、せん――ふぉっくs――」 言葉が終わる前に身体が光に包まれる。 一陣の突風と、一柱の光と共に闇色が消滅。 (主^ω^)「……やったお」 落ちたDATの欠片を手に取り、内藤二号は歓喜の溜息を吐く。 今度は、残りカスさえも残らなかった。 198 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:34:23.15 ID:eAqpFNCs0 (主^ω^)「ありがとうございましたですお」 全てが終わり、既に夜の時間が来ている屋上。 そこに十名近い人間が集っていた。 彼らに向けて、内藤二号は頭を下げる。 ( ^ω^)「とりあえず事が収まって良かったお」 川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな……色々と被害は少なくないが」 (´<_` )「ま、結局こうやってDATの欠片は得られたんだ。       ここは愚痴を抑えて内藤二号を見送ろう」 ちなみに彼らの隣では、全裸の兄者が横たわっている。 ('A`)「……邪魔くせぇから蹴飛ばしていい?     っていうか、何で記憶が一部だけ無いんだろ……」 从;゚∀从「ささささぁ? 何ででしょーね?」 (主;^ω^)b(ハインリッヒさん、GJだお) 冷や汗を拭った内藤二号は、モララーの方へ向き直る。 (主^ω^)「あの、ジェイルさんのこと……すいませんでしたお」 ( ・∀・)「いや、君の責任ではないから謝る必要はない。      とりあえず修復は可能だと連絡はあったから、安心して良いよ。      その後を伝えられないことが少しだけ心残りだが……」 206 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:35:36.50 ID:eAqpFNCs0 ちなみに戦意喪失したリリオルとノリルメリーは、既にこの世界にはいない。 リリオルはトランプで遊んだ後、闇となって消えた。 ノリルメリーも、弟者の話す兄者珍妙伝を散々聞かされ、泣きながら消えていったらしい。 前者はともかく、後者には同情を隠せない。 (´<_` )「……そういえば、お前はこれからどうするんだ?」 (主^ω^)「別の世界へ行くんだお。        DATの欠片は、まだ全部集まってないから」 川 ゚ -゚)「何か支援出来ると良いのだがな……流石に世界を渡る術は持っていない」 ('A`)「でも、応援してるぜ」 从 ゚∀从「頑張って下さい!」 (主^ω^)「おっおっ、嬉しいお。 頑張るお」 突如、彼の持っているDATが光を発する。 それは世界を越える合図だ。 ( ・∀・)「では、これで御別れだが……君の目論見の成功を願っているよ」 ( ^ω^)「また来れたら来るお! 今度は一緒に遊ぶお!」 川 ゚ -゚)「今回は色々と騒がしかったからな。      また次に来れたら、観光案内でもしたいところだ」 (主^ω^)「おk、把握したお!」 214 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:37:12.63 ID:eAqpFNCs0 光が強くなる。 それはまるで内藤二号を包み込むように展開された。 風が渦巻き、空間が震える。 (主^ω^)ノシ「ありがとうだお! さよならだお!」 手を振る内藤二号。 そのままの姿勢で、光の中へ包まれていった。 直後、その光は収束しながら消滅。 光の残滓を残しながらも、内藤二号は別世界へと旅立った。 (´<_` )「ふぅ……何気に貴重な体験だったような」 从 ゚∀从「とにかく疲れましたね……帰ってお風呂に入りたいです。       今日のことは絶対に日記に書きますよ! 友達も出来ましたし!」 ( ^ω^)「それは良いことだお。       ……ところで、兄者さんはどうするお?」 ('A`)「放っておきゃいいんじゃね? 面倒だし」 川 ゚ -゚)「だが、風邪をひいてしまうぞ」 (´<_` )「馬鹿は風邪をひかない、という名言を昔の人は残してくれた」 というわけで、寒空の下に置いていかれる兄者であった。 ( ・∀・)「…………」 224 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:38:46.02 ID:eAqpFNCs0 二週間後。 事後処理が大部分終わったFC。 修理などの作業に追われていた日々も過ぎ去り、いつもの雰囲気が戻ってきていた。 とはいえ、未だ部下の一部は都市ニューソクへ派遣されている。 バーボンハウスの修理のためだ。 ギコ達に何とか取り押さえられたショボンは、鬼と化していた時の記憶を失っていたため 周囲の人間が適当な事情を話したらしい。 よって責任はジェイルへ向けられることは無かったのだが、それでも破壊した事実は変わらない。 というわけでFCが、特別サービスという名目で修復しているのである。 ( ・∀・)(ま、もちろんそれ以外にも理由はあるがね) 社長室にあるデスク。 大きな椅子を軋ませ、モララーは思う。 そう、まだバーボンハウスの工事は終わっていない。 主であるショボンでさえも知り得ぬ、ある秘密工事が。 ちなみに最近、夜の社内に全裸の幽霊が出るとの噂がある。 そういえば弟者が、帰ってこない兄の心配をしていたが何処で何をしているのやら。 231 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:40:12.36 ID:eAqpFNCs0 と、そこで社長室の扉が開く。 入ってきた人物は音も無く扉を閉め、そのまま一直線に歩いてくる。 両手で盆を持ち、その上には湯気が立ち上るコーヒーカップ。 「モララー様、コーヒーをお持ちしました」 モララーは答えた。 ( ・∀・)「『モララー様』ではなく、『御主人様』と呼んで欲しいと言ったはずだが?」 彼女も答える。 爪゚ -゚)「申し訳ございません。     未だに指定言語がシステムに着床していないので」 ( ・∀・)「ま、私は心が異常に広いので五月蝿くは言わない。      のんびりと慣れたまえ」 爪゚ -゚)「ありがとうございます……しかし」 ( ・∀・)「しかし?」 爪゚ -゚)「このやり取り、以前にもしたような記憶が微かに残っております。     記憶素子に異常があるのでしょうか」 234 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:41:34.87 ID:eAqpFNCs0 それを聞いたモララーが、少しだけ口元を歪ませた。 ( ・∀・)「いや、それは異常なんかじゃない。      大切なものだから、ずっと大切に保存しておきたまえよ」 主人の言葉の意味が解らなかったのか、彼女は無表情に首を傾げる。 爪゚ -゚)「どういう意味か、詳しく御願いします」 ( ・∀・)「今の君が知っても意味を持たぬモノだ」 爪゚ -゚)「以前の私などあるのでしょうか。     それならば、何処から何処までが私なのでしょうか」 モララーは、彼女の言葉が可笑しくて仕方ないような様子で笑い始める。 ( ・∀・)「君は君だよ……かつてもこれからも何処から何処までも、ね」 尚も首を傾げるジェイル。 しばらくの間、社長室に嬉しそうな笑い声が響き続けた。                 ―終― 247 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:42:57.57 ID:eAqpFNCs0                   ξ゚⊿゚)ξつ===【次回予告】)´_ゝ`)                        次回予告出演者審議中                          川 ゚ -゚)(^ω^ )                       ( ,,゚Д゚) U) ( つと ノ(´<_` )                       | U (  ・∀)(・`   ) と ノ                        u-u (l    ) (   ノ u-u                             `u-u'. `u-u' 257 名前: 銭湯経営(大分県) 投稿日: 2007/03/15(木) 22:44:31.84 ID:eAqpFNCs0 ( ・∀・)「さて、明日の投下作者さんは誰かね?」 爪゚ -゚)「◆HGGslycgr6氏です」 ミ,,"Д゚彡「『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を筆頭に       数々の素晴らしい作品を書いている方ですね」 ノハ#;゚⊿゚)「あ、あの……何で私まで引っ張り出されたの? 私、戦護には出てないよ?」 ( ;∀;)「ヴぉぇあぁぁぁ」 (´<_` )「どうしたジョルj……って誰だお前モララーの亜種かよ気持ち悪いな」 ( ;∀;)「だってブーンがぁぁぁぁツンがぁぁぁぁ」 (´<_` )「すごいキモイんですけど」 (´・ω・`)「あぁ、僕が『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を読むように言ったんだ。       最初はニョロニョロ読んでたんだけど、途中からまったく返事さえ寄越さなくなってね。       読み終わったらこれさ」 川 ゚ -゚)「ふむ、それほどのパワーを持つ作品というわけだな」 ( ^ω^)「これは期待するしかないお」 从 ゚∀从「◆HGGslycgr6さんは一体どのような感動を僕達にもたらしてくれるのでしょーか!       次回、( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです第七回! 問答無用でお楽しみに!!」 ノハ#;゚⊿゚)「えっと、個人的にはGさんが好きでした、はい……何か出てきてすいません……」 [[戻る>( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです]]

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