「( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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278 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:31:18.38 ID:e5U/hMe20
パラレルワールド―――もしかしたらあったかもしれない未来。
これはとある世界の、一つのパラレルワールドのお話。
特殊な“力”をその身に宿す人間―――異能者達。
奪われた世界を取り戻す為に、DATを探していくつもの世界を巡る者。
これは、その二つの運命が交差した時に発生したパラレルワールドのお話。
287 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:33:20.15 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです
【 IN ( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです 】
293 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:36:30.50 ID:e5U/hMe20
街外れの大きな美しい公園。
よく手入れされた植物が多数存在し、その上では鳥達が楽しげに戯れている。
中心には大きな噴水があり、その公園はまるでそれを引き立てるかのように展開している。
公園には誰もいない。鳥の鳴き声と、噴水の音だけがその公園の中の音だった。
一陣の風が吹き抜け、緑が揺れる。
その時。
音もなく、噴水の横に突如“扉”が現れた。
光り輝いて、どこか輪郭がはっきりとしない。
まもなくその“扉”が開いて、中から一人の少年が顔を出した。
(主^ω^)「……ここが、今回の世界かお」
穏やかな顔をした少年が、扉から完全に身体を出す。
それと同時に、“扉”は音もなくふっと消えた。
299 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:38:52.94 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「何だか平和そうな世界だおー」
きょろきょろと、その少年は柔らかい表情で周りを見渡す。
だがその表情はすぐに引き締まった物へと変わった。
(主^ω^)「実際の所、この世界はどんな世界だお……?
ま、どこでもする事は変わらないお」
言いつつ、ごそごそと懐を探る。
まもなくそこから取り出した物は、掌くらいの大きさの石のような物質―――DATの欠片。
(主^ω^)「……お。まったく反応なしかお。
となると、この世界のDATはかなり遠くにある事になるお。探しに行かないと」
溜め息を一つ吐いて、再度DATを懐にしまう。
(主^ω^)「とりあえずは何か目印になる物の周辺……そうだお、あの建物の周辺を探してみるかお」
彼の視線の先には、かなり遠くに存在している、街の中心に建っている背の高い建物。
ゆっくりと、名前を奪われた“彼”は歩き出す。
己の世界を救う為に。
301 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:39:31.82 ID:e5U/hMe20
――――― ここから(主^ω^)を“彼”と表記します ―――――
307 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:41:49.31 ID:e5U/hMe20
歩き出してから、数十分後。
やがて“彼”は、とある十字路を越した辺りで足を止めた。
まだ目印としている建物には着いていない。だが、すでに眼と鼻の先の距離だ。
では、何故“彼”はそんな所で足を止めたのか?
_, ,_
(主^ω^)「……何だお、あれ」
( )「…………………」
“彼”の視線の先には、道の真ん中で直立している不審な少年。
そこで何かをするでもなく、ただそこに存在しているだけ。しかも妙に良い姿勢で。
“彼”はその少年のあまりの不自然さに、思わず足を止めてしまったのだ。
少年の顔は“彼”には見えない。ちょうど背を向けている形だ。
(主^ω^)「……ま、良いかお。もしかしたらこの世界ではああいうのが普通なのかもしれないお。
変にトラブルを起こすのも面倒だし、ここは一つ、放置プレイでいくお」
“彼”は止めていた足を再び動かす。
あくまでも不審な少年には関わらないと心に決めて。
310 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:44:10.77 ID:e5U/hMe20
だが、“彼”と少年の距離が狭まった時。
( )「何だか嫌な予感はしてたんだお」
少年が唐突に言葉を発し、
( ^ω^)彡クルッ「予感はまた当たったようだお」
“彼”を振り返った。
_, ,_
(主;^ω^)「お?いきなり君は何を言ってr」
その時。
“彼”の言葉を遮るように、“彼”の目の前―――少年の足元で、音がした。
『ゴキリ』、骨をへし折っているかのような、不快で異様な連続した音。
(主;^ω^)「お?な、何だお、この音は……」
異様な音の音源、少年の足に眼を落とす。
そして、驚きに眼を見開いた。
(主;゚ω゚)「……お?」
“彼”の視線の先にあるのは、人間の足ではない。
白銀に輝き、かろうじて人間の足の輪郭を残すだけの異形だった。
314 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:46:34.46 ID:e5U/hMe20
(主;゚ω゚)「お、お、おぉぉぉっ!?」
叫んで、大きく後ろに飛び下がる。
そして、後ろにあった電柱に後頭部を強打して倒れ込んだ。
(主;゚ω゚)「――――――ッ!!」
ガバッ、とすぐに上半身を起こす。
だが足がすくんでしまったのか、立ち上がれない。
“彼”は腕の力だけで少年から離れようと、ずりずりと後退した。
(主;゚ω゚)「なっ……何だお!?君は人間じゃないのかお!?化け物なのかお!?」
( ^ω^)「あんた何言ってるんだお?僕は異能者……人間だお。化け物じゃないお」
少年はゆっくりと“彼”に歩み寄っていく。
(主;゚ω゚)「うぁっ!来んなおっ!こっち来んなおっ!!」
( ^ω^)「何の真似だお?……まぁ良いお」
少年は“彼”とそれなりの距離を取ったまま会話する。
その眼に油断はなく、体もいつでも攻撃出来る体勢だ。
319 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:48:47.75 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「どっかで見たような顔だけど……あんた、誰だお?僕に何の用だお?」
そんな少年の問いに、“彼”は半ば叫ぶように言う。
(主;゚ω゚)「何の用か聞きたいのはこっちだおっ!何のつもりだおっ!?
君は何なんだお!?人間じゃないのかお!?やっぱり化け物かお!?何だお、その足は!?」
(;^ω^)「おっ?……も、もしかして、君は異能者じゃないのかお?」
(主;゚ω゚)「何だお、その『異能者』って!意味が分からんお!」
(;^ω^)「……何だお、僕の思い違いかお。怯えさせて悪かったお」
それからまもなく、また少年の足から異音が爆ぜる。
その数秒後には、少年の足は元の人間の足に戻っていた。
“彼”はその光景を、信じられないと言った表情で見詰めていた。
(主;^ω^)「…………………」
(;^ω^)「本当に悪かったお。僕が勝手に敵だと思い込んでただけだったお。許して欲しいお」
言いつつ、少年はしりもちを突いたままの“彼”に手を差し伸べる。
一瞬躊躇したが、“彼”はその手を借りて立ち上がった。
322 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:51:10.24 ID:e5U/hMe20
(主;^ω^)「……お」
( ^ω^)「落ち着いた所で、君は誰だお?僕に何の用だお?」
(主;´ω`)「……さっき言った通り、そう聞きたいのはこっちだお。
僕は君の横を通り抜けようとしただけで、君に用はないお……」
(;^ω^)「……えーっと、あのですね」
(主^ω^)「お?」
そこで、少年はいきなり土下座した。
(;´ω`)「本っ当にすいませんでしたお……」
(主;^ω^)「いや、いきなり何してんだお!?ほら、立って!」
(;´ω`)「でも……」
(主;`ω´)「良いから!」
慌てて、無理矢理少年を立ち上がらせる。
325 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:53:22.93 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「さっきの事については良いお。思い違いだったんだから、仕方ないお」
( ^ω^)「でもそれじゃ何だか悪いお……。
……そうだお!何か僕に出来る事はないかお?」
(主;^ω^)「……はい?」
( ^ω^)「僕はブーンっていうお!贖罪として、僕に出来る事があれば申し付けてくれお!
何かの手伝いでも、家の掃除でも、僕に出来る事であれば何でもするお!」
(主;^ω^)「い、いや、でも……」
「それは悪いから良い」と言いかけて、“彼”は口を閉じる。
|
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ `´ \
(^ω^主) 良い事思いついたお!
ノヽ ノヽ
く く
331 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:56:07.28 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)(手伝う、というなら手伝ってもらえば良いじゃないかお!
一人でDATを探すよりも二人で探した方が絶対早いし、この世界のナビとしても役立つお!)
(主^ω^)(それに、さっきの強そうな足に、「敵かと思った」発言!これは戦い慣れてる人間の発言だお!
よって、フォックス側がDATを持ってても戦ってもらえるお!
僕とブーンの間に特別な絆があるとでも思わせておけば、きっとそうしてくれるお!)
(主*^ω^)(おっおっお!僕は天才だお!それに運も良いお!)
(;^ω^)「何で笑ってるんだお?」
その言葉に、“彼”は緩んでいた表情を引き締める。
騙して協力させる、という形とは言え、自分の世界の命運がかかっている事だからだ。
(主^ω^)「……君はブーンっていうのかお?
だったら、君に是非頼みたい事があるお」
( ^ω^)「お?何だお?」
(主^ω^)「……僕の世界を救う手助けをしてほしいんだお」
(;^ω^)「お?」
(主^ω^)「何を言っているのか分からないと思うお。
でも、真面目な話なんだお……話だけでも聞いてくれないかお?」
338 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:58:12.56 ID:e5U/hMe20
ブーンは“彼”が何を言っているのか分からない。
「僕の世界?まるで世界がいくつもあるみたいじゃないか」
そう思ったのだ。
それでも、ブーンは“彼”の話を聞いてみようという気持ちになった。
何故かは本人にも分からない。
“彼”の本気の眼を見た瞬間、彼の中の何かが、「この男の話を聞け」と叫んだのだ。
(主^ω^)「聞いて、くれるかお?」
( ^ω^)「……良いお。聞くお」
(主^ω^)「ありがとうお」
それから、“彼”は己の身に起こっている全てをゆっくりと話し始めた。
自分の世界を構成するDATという物質がフォックスという男に奪われた事。
自分は世界を救う為に、各世界に散らばったDATを各世界を渡りながら集めているという事。
この世界にもDATがあるのだが、この世界について何も分からないから、一緒に探して欲しいという事。
そこにDATの説明を加えて、もしかしたら戦う事になるかもしれないという事も伝えた。
(主^ω^)「―――という事だお」
342 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:00:12.91 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「……信じられないけど、何となく把握したお。でも……」
(主^ω^)「お?」
(;^ω^)「何でそんな大変な話を、僕に?」
その質問を待ってた、と“彼”は内心でガッツポーズを取る。
(主^ω^)「……僕は君で、君は僕だからだお」
(;^ω^)「……な、何ぃ?」
(主^ω^)「さっき、君の名前を聞いて思い出したお。
僕と君の世界は平行世界。僕達は住む世界が違うだけで、同じ存在なんだお。
別れ際に、トーチャンが言ってたんだお。お前と同じ存在の『ブーン』って人を頼れと!」
(;^ω^)「なるほど……よく分からないけど、何となく把握したお」
(主^ω^)(良かった、騙せたお)
内心で胸を撫で下ろした。
“彼”は深呼吸をする。
(主^ω^)「お願いだお……。僕の世界を救う為に、手を貸してくれお!」
“彼”はブーンに向けて手を差し出す。
ブーンにはその手が少し震えているのが見えた。
348 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:01:44.24 ID:e5U/hMe20
対するブーンの答えは、決まっていた。
( ^ω^)「……君の話は正直信じられないような内容だったお。
それに、迷惑をかけたとは言え、何でそんな大変な事を僕が?」
(主;´ω`)「…………………」
( ^ω^)「そう思ったお」
「でも」、とブーンは続ける。
( ^ω^)「君の眼が、本気だったんだお。嘘を吐いている眼じゃなかったんだお。
君の世界が大変だっていうのが本当なら、それは見過ごせない事だお」
「それに」、と更にブーンは続ける。
( ^ω^)「君は他人とは思えないんだお。そりゃ同じ存在だっていうんだから当たり前なんだけど。
例えるなら……そう、鏡を見ている気分だお。君を放っておけないお」
そう言って、ブーンは“彼”の手を強く握った。
( ^ω^)「良いお。君のお願い、聞いてあげるお」
その言葉に、“彼”は本当に嬉しそうに顔をぱっと輝かせた。
(主^ω^)「本当かお!?ありがとうお!恩に着るお!」
350 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:03:09.94 ID:e5U/hMe20
(*^ω^)「別に良いおー。人助けってのは、する側も気持ち良い物だおー。
んで、僕は具体的にどうすれば良いんだお?」
(主^ω^)「お、それよりも先に聞きたい事があるお。この世界では戦いという物はあるかお?
あるなら、どんな武器で戦ってるお?どんな力を用いて戦ってるお?」
(;^ω^)「物騒な事を聞くお……まぁ、良いお。
まずこの世界では、銃や刃物、火薬なんかを使っての戦いがあるお。
銃とか剣とか、そういうのは分かるかお?」
(主^ω^)「お。その辺は分かるお」
( ^ω^)「それは良かったお。
で、もう一つの戦いの“力”が、さっきの僕の足みたいなやつ―――『異能者』の力だお」
(主^ω^)「さっきの人間離れしたあれかお?」
( ^ω^)「そうだお。この世界には『異能者』っていう、特殊な“力”を持った人がいるんだお。
僕のような肉体を強化・変化させる“力”を持った人間もいれば、炎とかを出せる異能者もいるお」
(主^ω^)「要するに、この世界には『異能者』っていう人間離れしたすごい力を持つ人達がいるって事だお?」
(;^ω^)「めちゃくちゃ短縮されたけど、まぁそんな感じだお。他に知りたい事はないかお?」
(主^ω^)「お。とりあえず今の所はないお。ありがとうお」
354 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:04:36.21 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「どういたしまして。で、話を戻すけど、僕は何をすれば良いんだお?」
(主^ω^)「まずは僕と一緒にDATを探してほしいお」
( ^ω^)「DATってどんなんだお?」
(主^ω^)「基本の形は石ころみたいなもんだお。でも、もしかしたらその形状を変えてるかもしれないお」
(;^ω^)「そんなん見付かるわけないと思うお?」
(主^ω^)「その辺は心配ないお」
( ^ω^)「お?どうしてだお?」
(主^ω^)「多分、DATを見れば直感的に分かるからだお」
(;^ω^)「……お?」
(主^ω^)「良いからまずは探してみるお。見付かれば分かるお」
( ^ω^)「……お!」
それからブーン達は、街を回る。
色々な所を練り歩くだけで、施設の中には入らない。入る必要がないからだ。
DATの近くに寄れば、“彼”の持つDATが何かしら反応を示すのだという。
358 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:06:04.95 ID:e5U/hMe20
三時間ほど休みもなくブーン達はDATを探し続ける。
日がかなり傾いてきた頃、二人の肉体にはかなりの疲労が溜まり始めていた。
(;^ω^)「……まだDATの存在は感じないかお?」
(主;^ω^)「おー、残念ながら、だお」
(;^ω^)「もうすぐ夕方だおー。どうするんだおー?」
(主;^ω^)「おー、本当に……」
「どうしようか」、“彼”がそう言おうとした時。
“彼”のDATが、光を放ちつつ大きく振動した。
そして、ブーンの足に強い痺れが走る。
二人は顔を見合わせ、そして一斉に自分達の目の前の建造物を見る。
そこにはそれなりの大きさがある、五階建ての廃ビル。
ところどころに落書きがあり、ほとんどの窓ガラスが割られている。明かりがない不気味な場所だった。
360 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:07:31.70 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「……今、何か感じたお?」
(主;^ω^)「めちゃめちゃ感じたお。君は異能者とやらの力かお?」
(;^ω^)「力っていうよりか、特性だお。異能者は異能者同士を感知出来るんだお」
(主;^ω^)「となると、この中には……」
(;^ω^)「DATを持った人間と異能者。または、DATを持った異能者、かお」
(主;^ω^)「おそらく」
二人の背中に、同時に冷たい物が走った。
(;^ω^)「……行くかお?」
(主;^ω^)「行くしかないお。もしかしたら、DATのある場所に偶然異能者がいただけかもしれないお」
(;^ω^)「DATを取りに来たって理由以外に、こんな場所にわざわざ来る理由なんてないと思うお?」
(主;^ω^)「……どちらにせよ、行くしかないんだお。もしもの時は護って欲しいお」
(;^ω^)「おk、把握」
362 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:09:07.93 ID:e5U/hMe20
二人同時に、廃ビルの中に足を踏み入れる。
“彼”が見ると、ブーンの足は既に戦闘体勢―――異能者の足へと変わっていた。
“彼”はもう、その足に怯えない。むしろ心強さを感じていた。
一階を探索。誰もいないし、何も無い。
二階、三階、四階も同じ。ただ乱雑としたホコリっぽい空間が広がっているのみ。
残るは、最後の階―――五階のみ。
五階への階段を上ると、まず目の前にドア。今までの階層と造りが違うようだ。
(;^ω^)「……ここかお?」
(主;^ω^)「間違いないお。僕のDATが今までになく強く反応してるお」
(;^ω^)「じゃあ、行くお?」
(主;^ω^)「把握。心の準備は出来てるお」
その言葉を合図に、ブーンはドアに白銀の足をかける。
そして、そのドアを勢いよく蹴り飛ばした。
ガゴッ、という金具の外れる音。同時にドアは大きく吹っ飛ぶ。
だがそのドアは、地面に落ちる前に何者かに粉砕された。
367 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:10:44.63 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「やっぱ誰かいたかお……」
険しい顔をするブーン。その視線の先には―――
( ゚ ゚)「…………………」
―――ブーン達の方向に紫の異形の腕を向けた男がいた。
ブーン達と同じような体型。ブーン達と似たような顔。
黒いジーパン、前を開けた黒いレザージャケット、黒地のシャツと、見事に黒で固められている服装。
濁った眼をしていて、冷たい殺気をブーン達に放っている。
ブーン達に向いた男の右腕は、毒々しい紫色の異形。間違いなく異能者の腕だった。
そして、開いたその掌には、ビーダマほどの大きさの謎の穴。
(主^ω^)「……君はフォックスの手先かお?」
“彼”は警戒しながら、男に問う。
対する男は低く冷たい声で答えた。
( ゚ ゚)「その通り、だお。お前の事はフォックス様から聞いているお……名無しの子」
(;^ω^)「そのフォックスの手先とやらが、何で異能者なんだお?
異能者はこの世界にしかいないと聞いたお」
( ゚ ゚)「ここで見付けたDATを、『異能者』とやらを真似た武器にしただけだお。
フォックス様からこの世界の情報を細部まで聞いておいて正解だったお」
369 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:12:18.76 ID:e5U/hMe20
男はそこで、紫色の異形の右腕を誇るように掲げ上げる。
( ゚ ゚)「中々に使い勝手が良いお。それに攻撃能力もかなりのものだお。
銃や刀剣などとは比べ物にならない扱いやすさで、この破壊力。気に入ったお」
(;^ω^)「?……どういう事だお?」
(主;^ω^)「DATは己を行使する者の想いによってその形状・能力を変える……って言ったはずだお。
僕の話をちゃんと話を聞いてたかお?ブーン」
そんな事よりも、と、“彼”は男を睨む。
(主^ω^)「何でお前はDATを手に入れた後、すぐにフォックスに持って行かなかったんだお?
何を考えているんだお?やっぱり僕のDATも一緒に持って帰ろうって魂胆かお?」
( ゚ ゚)「それもあるけど、本当の理由は違うお」
(主^ω^)「だったら何で残ったんだお?」
( ゚ ゚)「簡単な事だお。僕はお前を殺す為に残ったんだお」
(主;^ω^)「なっ……!?」
373 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:13:45.55 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「……殺す前に、お前に僕の事を教えとくお。僕はクリテロ。
お前を闇に引きずり込む、お前の“影”として、フォックス様に闇から創られた存在だお」
表情も変えずに、「っは」と皮肉に笑う。
( ゚ ゚)「誰かの“影”として存在する事がどれだけ辛いか―――お前に分かるかお?
誰かを殺す為だけに生み出された強化クローン、そういう存在として生きる事が」
(主;^ω^)「そ、そんな……」
( ゚ ゚)「……お前を殺せば、僕はお前の“影”じゃなくて、“僕”という存在になれるんだお……!
だから、僕はお前を―――殺させてもらうおっ!!」
声の調子を一変させて、叫ぶ。
そして、男―――クリテロは、その右腕を再度ブーン達に向けた。
(;^ω^)「お?あの人、何やってんだお?」
ただ右腕をこちらに向けるだけで何もしないクリテロに、ブーンは疑問を抱く。
だが、その眼はクリテロのわずかな変化を見逃さなかった。
こちらに向けて伸ばし、開いた掌。
その中央にある穴が、ぐぐっとわずかに広がったのだ。
それが何を意味する変化なのかは分からない。
だが、ブーンの『嫌な予感』が全力で警報を鳴らしていた。
377 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:15:22.93 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「おぉっ!!」
クリテロが叫ぶのと同時。
クリテロの右掌の穴から、『何か』が異速で発射された。
その『何か』は、“彼”の頭蓋目掛けて飛び行く。
(主;゚ω゚)「―――っ!?」
“彼”は動けない。予想外過ぎる攻撃だった。
それでも『何か』は待ってくれない。ただ“彼”の頭蓋を破壊せんと異速で進む。
(;゚ω゚)「危ないおっ!!」
動けない“彼”の体を押し倒すように、ブーンが“彼”に飛びかかる。
飛ばされた『何か』はブーンの体をかするように飛び過ぎ、ブーンの後ろの壁に音を立てて突き刺さった。
ブーンはすぐに立ち上がり、今の飛来物の正体を確かめる。
そして驚愕した。
(;゚ω゚)「な……何だお、これは」
壁に突き刺さっているものは、紫色の杭。
二十センチほどの長さで、さほど太くはない。だがその硬度は金属並。
380 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:16:48.56 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「僕の“力”だお。右腕の中で杭を形成し、発射する。まぁ、銃みたいなもんだお。
どういった原理かは分からないが……中々に使い勝手が良いお」
(;゚ω゚)「……何だかすごく厄介な気がするお」
言いつつ、ブーンは横目で“彼”を確認。
“彼”はブーンが押し倒した時に頭を打ってしまったのか、気を失っていた。
(;^ω^)「……あんたが気を失ってどうすんだお」
苦々しくブーンは呟く。
( ゚ ゚)「そいつを殺す邪魔をするなら、お前も殺すお」
冷たく言い放ち、間髪入れず再度杭を撃ち放つ。
ブーンは大きく左に跳び、それを回避。すぐにクリテロに攻撃せんと大きく飛び出した。
だが。
( ゚ ゚)「甘いお」
接近したブーンに合わせるように、クリテロは右足を大きく前に突き出す。
それはブーンの腹を捉え、ブーンは飛び出した分だけ吹っ飛んだ。
(;^ω^)「う……うぇっ……!」
( ゚ ゚)「僕は奴を殺す為に創られた兵隊だお。戦闘の素人のお前とは違うお」
383 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:18:10.64 ID:e5U/hMe20
右腕を構え、倒れたままのブーンに杭を撃ち放つ。
ブーンはそれを転がるように回避し、立ち上がる。
(;゚ω゚)「おぉっ!!」
すぐにまた飛び出す。飛び出す事しか出来ない。
クリテロは遠距離でも攻撃が可能だが、ブーンは足が届く距離まで近寄らないと攻撃出来ないからだ。
( ゚ ゚)「攻撃パターンが少ないお」
高速で走り寄って来たブーンに、至近距離で杭を撃ち放つ。
ブーンはそれをギリギリで回避。すぐにクリテロの脇腹を狙って左足を思いきり振り抜いた。
( ゚ω゚)「おおぉっ!!」
だが、そこで響くは金属音。
振るわれたブーンの足は、クリテロの右腕に止められていた。
( ゚ ゚)「威力はあるけど、攻撃も短調だお。お前つまらないお」
(;゚ω゚)「勝手にそう思ってろおっ!!」
ブーンは叫ぶと、彼の右腕を思いきり蹴り飛ばす。
間髪入れず、反動で跳ねた左足をもう一度叩き込もうと足を振るった。
だが、それでもブーンの足が彼を捉える事はなかった。
385 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:20:19.83 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「素人にしては中々に考えたけど、やっぱり甘いお」
その声と同時。クリテロを捉えかけていた左足が大きく弾かれる。
驚いてブーンは己の足を見る。その左足のふとももには、紫色の杭が刺さっていた。
クリテロは右腕が弾かれた瞬間、すぐにブーンの左足に向けて杭を撃ち放ったのだ。
痛みに、ブーンは顔をしかめる。
( ゚ ゚)「銃は短距離でも撃てるお。一度弾いたくらいで安心するなお。それと……」
冷徹に言い放ち、クリテロは右足を軽く引く。
そして―――
( ゚ ゚)「教えてやるお。蹴りってのはこうやるもんだお」
―――ブーンの腹に、ムチのような蹴りを叩き込んだ。
(;゚ω゚)「おぶっ!!」
またもブーンは吹き飛ばされ、地面をごろごろと転がる。
止まった場所は、己と同じ存在だという“彼”の隣だった。
386 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:21:51.95 ID:e5U/hMe20
(;゚ω゚)「ぐっ……おぉ……!」
“彼”を護ろうと、立ち上がろうとする。
だが、立ち上がれない。クリテロの蹴りは良くない所に入ったようだ。
それでも立ち上がろうとする。“彼”を護ろうとする。
ブーンは、何故自分がこんなにも“彼”を護ろうとするのか分からなかった。
ただ『護らなくては』という気持ちだけが力強く燃え盛っていた。
( ゚ ゚)「一人で逃げれば死なずに済むのに……馬鹿じゃないかお?」
クリテロは呆れたように言いながら、ブーンに歩み寄る。
ブーンは倒れたままその足を蹴り飛ばそうとする。しかし、それもクリテロは軽く避けた。
( ゚ ゚)「ふん。まぁ、良いお。そんなに死にたければ殺してやるお」
でも、その前に―――と、クリテロは“彼”を見る。
そして、その口端を邪悪に吊り上げた。
(;゚ω゚)「おい……何するつもりだお?おい!?」
( ゚ ゚)「少し考えれば分かるお?お前の先にこいつを殺すだけだお」
390 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:23:13.21 ID:e5U/hMe20
言って、クリテロは声を荒げる。
自分の中の怒りや憎しみなどを全てぶちまけるように。
( ゚ ゚)「こいつを始末して、僕は“僕”になるんだお。
こいつの影ではなく、“僕”として生きるんだお!!」
叫んで、右腕を“彼”に向ける。
そして、その掌の中央にある穴が少しだけ広がって―――
(#゚ω゚)「お、お、お、おおぉぉぉ!!」
―――杭が放たれる瞬間、その右腕は気力で立ち上がったブーンに大きく蹴り上げられた。
標準を大きくズラされた杭は、灰色の天井に勢いよく突き刺さるのみ。
(;゚ ゚)「お前っ……!!」
(#゚ω゚)「“僕”を殺させるわけにはいかねぇんだおっ!!」
叫んで、ブーンは思いきり足を振るう。
クリテロはその足を、すんでの所で右腕で防御。
だが、それでもブーンの足は勢いを止めなかった。
(;゚ ゚)「――――――っ!?」
右腕だけで抑えたはずのブーンの足に、ぐ、と更に力がこもる。
クリテロはその力に耐えられず―――その体は大きく吹っ飛んだ。
その勢いは相当の物で、クリテロの体はかなり遠くまで飛ばされ、床を転がった。
392 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:24:49.11 ID:e5U/hMe20
すぐさまクリテロは起き上がる。
その眼に映ったのは、“彼”を担いで出口に駆け込むブーンの姿だった。
( ゚ ゚)「ふざけんなお。ここまで来て逃がすかお。ここまで来て、ここまでして……」
今まで変化の少なかった彼の表情が、鬼のような顔に豹変する。
(#゚ ゚)「 さ せ る か お ぉ ぉ ! ! 」
杭を撃ち放つ。だがそれは壁に突き立っただけで終わった。
(#゚ ゚)「おぉおぉおぉおぉ!!」
クリテロは叫びながら走り出し、ブーンを追う。
対するブーンは全力で逃げる事だけを考えていた。
(;`ω´)「おぉおぉおぉおぉ!!」
396 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:27:01.15 ID:e5U/hMe20
ブーンの足取りは、速くない。
彼の左ももには杭が刺さったままだ。抜く暇もない。
その痛みに耐えながら、ブーンは階段を下る。下る。下る。半ば転げ落ちるように。
クリテロは怒り狂いながら、階段を下る。下る。下る。彼も半ば、転げ落ちるように。
叫び、杭を撃ち放つ。走る。走る。飛び降りる。
歯を食いしばり、杭を避ける。走る。走る。飛び降りる。
杭が頭をかする。恐怖で壊れそうになるが、“彼”を護らねばと足を進める。
出来る限り杭を連射する。当たらない。当たらない。焦りと怒りが内で爆発する。
398 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:28:12.05 ID:e5U/hMe20
先に一階に辿り着いたのはブーン。
間髪入れずクリテロが辿り着くが、その時にはブーンは走り出していた。
階段であればともかく、ただの道となればブーンの方が速い。例え怪我していようとも。
それを悟ったのか、クリテロはその廃ビルの出口で足を止めた。
そして、叫ぶ。
全てを呪うように。全てを憎むように。全てを闇に染めてやろうと言わんばかりに。
(#゚ ゚)「ブーンと言ったな!良いお!お前の命も、僕が刈り取ってやるお!
殺すお!その男も、お前も!絶対に殺すお!!跡形もなくなるほどに殺してやるお!!
安心しろお!僕はお前達を殺すまで、フォックス様の所へは帰らないお!殺すお!殺すお!絶対に!!」
紅く染まり始めた空に、クリテロの声は邪悪に響く。
夕焼け空はその殺意に答えるかのように、だんだんと暗くなっていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
278 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:31:18.38 ID:e5U/hMe20
パラレルワールド―――もしかしたらあったかもしれない未来。
これはとある世界の、一つのパラレルワールドのお話。
特殊な“力”をその身に宿す人間―――異能者達。
奪われた世界を取り戻す為に、DATを探していくつもの世界を巡る者。
これは、その二つの運命が交差した時に発生したパラレルワールドのお話。
287 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:33:20.15 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです
【 IN ( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです 】
293 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:36:30.50 ID:e5U/hMe20
街外れの大きな美しい公園。
よく手入れされた植物が多数存在し、その上では鳥達が楽しげに戯れている。
中心には大きな噴水があり、その公園はまるでそれを引き立てるかのように展開している。
公園には誰もいない。鳥の鳴き声と、噴水の音だけがその公園の中の音だった。
一陣の風が吹き抜け、緑が揺れる。
その時。
音もなく、噴水の横に突如“扉”が現れた。
光り輝いて、どこか輪郭がはっきりとしない。
まもなくその“扉”が開いて、中から一人の少年が顔を出した。
(主^ω^)「……ここが、今回の世界かお」
穏やかな顔をした少年が、扉から完全に身体を出す。
それと同時に、“扉”は音もなくふっと消えた。
299 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:38:52.94 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「何だか平和そうな世界だおー」
きょろきょろと、その少年は柔らかい表情で周りを見渡す。
だがその表情はすぐに引き締まった物へと変わった。
(主^ω^)「実際の所、この世界はどんな世界だお……?
ま、どこでもする事は変わらないお」
言いつつ、ごそごそと懐を探る。
まもなくそこから取り出した物は、掌くらいの大きさの石のような物質―――DATの欠片。
(主^ω^)「……お。まったく反応なしかお。
となると、この世界のDATはかなり遠くにある事になるお。探しに行かないと」
溜め息を一つ吐いて、再度DATを懐にしまう。
(主^ω^)「とりあえずは何か目印になる物の周辺……そうだお、あの建物の周辺を探してみるかお」
彼の視線の先には、かなり遠くに存在している、街の中心に建っている背の高い建物。
ゆっくりと、名前を奪われた“彼”は歩き出す。
己の世界を救う為に。
301 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:39:31.82 ID:e5U/hMe20
――――― ここから(主^ω^)を“彼”と表記します ―――――
307 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:41:49.31 ID:e5U/hMe20
歩き出してから、数十分後。
やがて“彼”は、とある十字路を越した辺りで足を止めた。
まだ目印としている建物には着いていない。だが、すでに眼と鼻の先の距離だ。
では、何故“彼”はそんな所で足を止めたのか?
_, ,_
(主^ω^)「……何だお、あれ」
( )「…………………」
“彼”の視線の先には、道の真ん中で直立している不審な少年。
そこで何かをするでもなく、ただそこに存在しているだけ。しかも妙に良い姿勢で。
“彼”はその少年のあまりの不自然さに、思わず足を止めてしまったのだ。
少年の顔は“彼”には見えない。ちょうど背を向けている形だ。
(主^ω^)「……ま、良いかお。もしかしたらこの世界ではああいうのが普通なのかもしれないお。
変にトラブルを起こすのも面倒だし、ここは一つ、放置プレイでいくお」
“彼”は止めていた足を再び動かす。
あくまでも不審な少年には関わらないと心に決めて。
310 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:44:10.77 ID:e5U/hMe20
だが、“彼”と少年の距離が狭まった時。
( )「何だか嫌な予感はしてたんだお」
少年が唐突に言葉を発し、
( ^ω^)彡クルッ「予感はまた当たったようだお」
“彼”を振り返った。
_, ,_
(主;^ω^)「お?いきなり君は何を言ってr」
その時。
“彼”の言葉を遮るように、“彼”の目の前―――少年の足元で、音がした。
『ゴキリ』、骨をへし折っているかのような、不快で異様な連続した音。
(主;^ω^)「お?な、何だお、この音は……」
異様な音の音源、少年の足に眼を落とす。
そして、驚きに眼を見開いた。
(主;゚ω゚)「……お?」
“彼”の視線の先にあるのは、人間の足ではない。
白銀に輝き、かろうじて人間の足の輪郭を残すだけの異形だった。
314 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:46:34.46 ID:e5U/hMe20
(主;゚ω゚)「お、お、おぉぉぉっ!?」
叫んで、大きく後ろに飛び下がる。
そして、後ろにあった電柱に後頭部を強打して倒れ込んだ。
(主;゚ω゚)「――――――ッ!!」
ガバッ、とすぐに上半身を起こす。
だが足がすくんでしまったのか、立ち上がれない。
“彼”は腕の力だけで少年から離れようと、ずりずりと後退した。
(主;゚ω゚)「なっ……何だお!?君は人間じゃないのかお!?化け物なのかお!?」
( ^ω^)「あんた何言ってるんだお?僕は異能者……人間だお。化け物じゃないお」
少年はゆっくりと“彼”に歩み寄っていく。
(主;゚ω゚)「うぁっ!来んなおっ!こっち来んなおっ!!」
( ^ω^)「何の真似だお?……まぁ良いお」
少年は“彼”とそれなりの距離を取ったまま会話する。
その眼に油断はなく、体もいつでも攻撃出来る体勢だ。
319 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:48:47.75 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「どっかで見たような顔だけど……あんた、誰だお?僕に何の用だお?」
そんな少年の問いに、“彼”は半ば叫ぶように言う。
(主;゚ω゚)「何の用か聞きたいのはこっちだおっ!何のつもりだおっ!?
君は何なんだお!?人間じゃないのかお!?やっぱり化け物かお!?何だお、その足は!?」
(;^ω^)「おっ?……も、もしかして、君は異能者じゃないのかお?」
(主;゚ω゚)「何だお、その『異能者』って!意味が分からんお!」
(;^ω^)「……何だお、僕の思い違いかお。怯えさせて悪かったお」
それからまもなく、また少年の足から異音が爆ぜる。
その数秒後には、少年の足は元の人間の足に戻っていた。
“彼”はその光景を、信じられないと言った表情で見詰めていた。
(主;^ω^)「…………………」
(;^ω^)「本当に悪かったお。僕が勝手に敵だと思い込んでただけだったお。許して欲しいお」
言いつつ、少年はしりもちを突いたままの“彼”に手を差し伸べる。
一瞬躊躇したが、“彼”はその手を借りて立ち上がった。
322 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:51:10.24 ID:e5U/hMe20
(主;^ω^)「……お」
( ^ω^)「落ち着いた所で、君は誰だお?僕に何の用だお?」
(主;´ω`)「……さっき言った通り、そう聞きたいのはこっちだお。
僕は君の横を通り抜けようとしただけで、君に用はないお……」
(;^ω^)「……えーっと、あのですね」
(主^ω^)「お?」
そこで、少年はいきなり土下座した。
(;´ω`)「本っ当にすいませんでしたお……」
(主;^ω^)「いや、いきなり何してんだお!?ほら、立って!」
(;´ω`)「でも……」
(主;`ω´)「良いから!」
慌てて、無理矢理少年を立ち上がらせる。
325 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:53:22.93 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)「さっきの事については良いお。思い違いだったんだから、仕方ないお」
( ^ω^)「でもそれじゃ何だか悪いお……。
……そうだお!何か僕に出来る事はないかお?」
(主;^ω^)「……はい?」
( ^ω^)「僕はブーンっていうお!贖罪として、僕に出来る事があれば申し付けてくれお!
何かの手伝いでも、家の掃除でも、僕に出来る事であれば何でもするお!」
(主;^ω^)「い、いや、でも……」
「それは悪いから良い」と言いかけて、“彼”は口を閉じる。
|
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ `´ \
(^ω^主) 良い事思いついたお!
ノヽ ノヽ
く く
331 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:56:07.28 ID:e5U/hMe20
(主^ω^)(手伝う、というなら手伝ってもらえば良いじゃないかお!
一人でDATを探すよりも二人で探した方が絶対早いし、この世界のナビとしても役立つお!)
(主^ω^)(それに、さっきの強そうな足に、「敵かと思った」発言!これは戦い慣れてる人間の発言だお!
よって、フォックス側がDATを持ってても戦ってもらえるお!
僕とブーンの間に特別な絆があるとでも思わせておけば、きっとそうしてくれるお!)
(主*^ω^)(おっおっお!僕は天才だお!それに運も良いお!)
(;^ω^)「何で笑ってるんだお?」
その言葉に、“彼”は緩んでいた表情を引き締める。
騙して協力させる、という形とは言え、自分の世界の命運がかかっている事だからだ。
(主^ω^)「……君はブーンっていうのかお?
だったら、君に是非頼みたい事があるお」
( ^ω^)「お?何だお?」
(主^ω^)「……僕の世界を救う手助けをしてほしいんだお」
(;^ω^)「お?」
(主^ω^)「何を言っているのか分からないと思うお。
でも、真面目な話なんだお……話だけでも聞いてくれないかお?」
338 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 19:58:12.56 ID:e5U/hMe20
ブーンは“彼”が何を言っているのか分からない。
「僕の世界?まるで世界がいくつもあるみたいじゃないか」
そう思ったのだ。
それでも、ブーンは“彼”の話を聞いてみようという気持ちになった。
何故かは本人にも分からない。
“彼”の本気の眼を見た瞬間、彼の中の何かが、「この男の話を聞け」と叫んだのだ。
(主^ω^)「聞いて、くれるかお?」
( ^ω^)「……良いお。聞くお」
(主^ω^)「ありがとうお」
それから、“彼”は己の身に起こっている全てをゆっくりと話し始めた。
自分の世界を構成するDATという物質がフォックスという男に奪われた事。
自分は世界を救う為に、各世界に散らばったDATを各世界を渡りながら集めているという事。
この世界にもDATがあるのだが、この世界について何も分からないから、一緒に探して欲しいという事。
そこにDATの説明を加えて、もしかしたら戦う事になるかもしれないという事も伝えた。
(主^ω^)「―――という事だお」
342 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水)20:00:12.91 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「……信じられないけど、何となく把握したお。でも……」
(主^ω^)「お?」
(;^ω^)「何でそんな大変な話を、僕に?」
その質問を待ってた、と“彼”は内心でガッツポーズを取る。
(主^ω^)「……僕は君で、君は僕だからだお」
(;^ω^)「……な、何ぃ?」
(主^ω^)「さっき、君の名前を聞いて思い出したお。
僕と君の世界は平行世界。僕達は住む世界が違うだけで、同じ存在なんだお。
別れ際に、トーチャンが言ってたんだお。お前と同じ存在の『ブーン』って人を頼れと!」
(;^ω^)「なるほど……よく分からないけど、何となく把握したお」
(主^ω^)(良かった、騙せたお)
内心で胸を撫で下ろした。
“彼”は深呼吸をする。
(主^ω^)「お願いだお……。僕の世界を救う為に、手を貸してくれお!」
“彼”はブーンに向けて手を差し出す。
ブーンにはその手が少し震えているのが見えた。
348 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:01:44.24 ID:e5U/hMe20
対するブーンの答えは、決まっていた。
( ^ω^)「……君の話は正直信じられないような内容だったお。
それに、迷惑をかけたとは言え、何でそんな大変な事を僕が?」
(主;´ω`)「…………………」
( ^ω^)「そう思ったお」
「でも」、とブーンは続ける。
( ^ω^)「君の眼が、本気だったんだお。嘘を吐いている眼じゃなかったんだお。
君の世界が大変だっていうのが本当なら、それは見過ごせない事だお」
「それに」、と更にブーンは続ける。
( ^ω^)「君は他人とは思えないんだお。そりゃ同じ存在だっていうんだから当たり前なんだけど。
例えるなら……そう、鏡を見ている気分だお。君を放っておけないお」
そう言って、ブーンは“彼”の手を強く握った。
( ^ω^)「良いお。君のお願い、聞いてあげるお」
その言葉に、“彼”は本当に嬉しそうに顔をぱっと輝かせた。
(主^ω^)「本当かお!?ありがとうお!恩に着るお!」
350 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:03:09.94 ID:e5U/hMe20
(*^ω^)「別に良いおー。人助けってのは、する側も気持ち良い物だおー。
んで、僕は具体的にどうすれば良いんだお?」
(主^ω^)「お、それよりも先に聞きたい事があるお。この世界では戦いという物はあるかお?
あるなら、どんな武器で戦ってるお?どんな力を用いて戦ってるお?」
(;^ω^)「物騒な事を聞くお……まぁ、良いお。
まずこの世界では、銃や刃物、火薬なんかを使っての戦いがあるお。
銃とか剣とか、そういうのは分かるかお?」
(主^ω^)「お。その辺は分かるお」
( ^ω^)「それは良かったお。
で、もう一つの戦いの“力”が、さっきの僕の足みたいなやつ―――『異能者』の力だお」
(主^ω^)「さっきの人間離れしたあれかお?」
( ^ω^)「そうだお。この世界には『異能者』っていう、特殊な“力”を持った人がいるんだお。
僕のような肉体を強化・変化させる“力”を持った人間もいれば、炎とかを出せる異能者もいるお」
(主^ω^)「要するに、この世界には『異能者』っていう人間離れしたすごい力を持つ人達がいるって事だお?」
(;^ω^)「めちゃくちゃ短縮されたけど、まぁそんな感じだお。他に知りたい事はないかお?」
(主^ω^)「お。とりあえず今の所はないお。ありがとうお」
354 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:04:36.21 ID:e5U/hMe20
( ^ω^)「どういたしまして。で、話を戻すけど、僕は何をすれば良いんだお?」
(主^ω^)「まずは僕と一緒にDATを探してほしいお」
( ^ω^)「DATってどんなんだお?」
(主^ω^)「基本の形は石ころみたいなもんだお。でも、もしかしたらその形状を変えてるかもしれないお」
(;^ω^)「そんなん見付かるわけないと思うお?」
(主^ω^)「その辺は心配ないお」
( ^ω^)「お?どうしてだお?」
(主^ω^)「多分、DATを見れば直感的に分かるからだお」
(;^ω^)「……お?」
(主^ω^)「良いからまずは探してみるお。見付かれば分かるお」
( ^ω^)「……お!」
それからブーン達は、街を回る。
色々な所を練り歩くだけで、施設の中には入らない。入る必要がないからだ。
DATの近くに寄れば、“彼”の持つDATが何かしら反応を示すのだという。
358 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:06:04.95 ID:e5U/hMe20
三時間ほど休みもなくブーン達はDATを探し続ける。
日がかなり傾いてきた頃、二人の肉体にはかなりの疲労が溜まり始めていた。
(;^ω^)「……まだDATの存在は感じないかお?」
(主;^ω^)「おー、残念ながら、だお」
(;^ω^)「もうすぐ夕方だおー。どうするんだおー?」
(主;^ω^)「おー、本当に……」
「どうしようか」、“彼”がそう言おうとした時。
“彼”のDATが、光を放ちつつ大きく振動した。
そして、ブーンの足に強い痺れが走る。
二人は顔を見合わせ、そして一斉に自分達の目の前の建造物を見る。
そこにはそれなりの大きさがある、五階建ての廃ビル。
ところどころに落書きがあり、ほとんどの窓ガラスが割られている。明かりがない不気味な場所だった。
360 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:07:31.70 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「……今、何か感じたお?」
(主;^ω^)「めちゃめちゃ感じたお。君は異能者とやらの力かお?」
(;^ω^)「力っていうよりか、特性だお。異能者は異能者同士を感知出来るんだお」
(主;^ω^)「となると、この中には……」
(;^ω^)「DATを持った人間と異能者。または、DATを持った異能者、かお」
(主;^ω^)「おそらく」
二人の背中に、同時に冷たい物が走った。
(;^ω^)「……行くかお?」
(主;^ω^)「行くしかないお。もしかしたら、DATのある場所に偶然異能者がいただけかもしれないお」
(;^ω^)「DATを取りに来たって理由以外に、こんな場所にわざわざ来る理由なんてないと思うお?」
(主;^ω^)「……どちらにせよ、行くしかないんだお。もしもの時は護って欲しいお」
(;^ω^)「おk、把握」
362 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:09:07.93 ID:e5U/hMe20
二人同時に、廃ビルの中に足を踏み入れる。
“彼”が見ると、ブーンの足は既に戦闘体勢―――異能者の足へと変わっていた。
“彼”はもう、その足に怯えない。むしろ心強さを感じていた。
一階を探索。誰もいないし、何も無い。
二階、三階、四階も同じ。ただ乱雑としたホコリっぽい空間が広がっているのみ。
残るは、最後の階―――五階のみ。
五階への階段を上ると、まず目の前にドア。今までの階層と造りが違うようだ。
(;^ω^)「……ここかお?」
(主;^ω^)「間違いないお。僕のDATが今までになく強く反応してるお」
(;^ω^)「じゃあ、行くお?」
(主;^ω^)「把握。心の準備は出来てるお」
その言葉を合図に、ブーンはドアに白銀の足をかける。
そして、そのドアを勢いよく蹴り飛ばした。
ガゴッ、という金具の外れる音。同時にドアは大きく吹っ飛ぶ。
だがそのドアは、地面に落ちる前に何者かに粉砕された。
367 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:10:44.63 ID:e5U/hMe20
(;^ω^)「やっぱ誰かいたかお……」
険しい顔をするブーン。その視線の先には―――
( ゚ ゚)「…………………」
―――ブーン達の方向に紫の異形の腕を向けた男がいた。
ブーン達と同じような体型。ブーン達と似たような顔。
黒いジーパン、前を開けた黒いレザージャケット、黒地のシャツと、見事に黒で固められている服装。
濁った眼をしていて、冷たい殺気をブーン達に放っている。
ブーン達に向いた男の右腕は、毒々しい紫色の異形。間違いなく異能者の腕だった。
そして、開いたその掌には、ビーダマほどの大きさの謎の穴。
(主^ω^)「……君はフォックスの手先かお?」
“彼”は警戒しながら、男に問う。
対する男は低く冷たい声で答えた。
( ゚ ゚)「その通り、だお。お前の事はフォックス様から聞いているお……名無しの子」
(;^ω^)「そのフォックスの手先とやらが、何で異能者なんだお?
異能者はこの世界にしかいないと聞いたお」
( ゚ ゚)「ここで見付けたDATを、『異能者』とやらを真似た武器にしただけだお。
フォックス様からこの世界の情報を細部まで聞いておいて正解だったお」
369 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:12:18.76 ID:e5U/hMe20
男はそこで、紫色の異形の右腕を誇るように掲げ上げる。
( ゚ ゚)「中々に使い勝手が良いお。それに攻撃能力もかなりのものだお。
銃や刀剣などとは比べ物にならない扱いやすさで、この破壊力。気に入ったお」
(;^ω^)「?……どういう事だお?」
(主;^ω^)「DATは己を行使する者の想いによってその形状・能力を変える……って言ったはずだお。
僕の話をちゃんと話を聞いてたかお?ブーン」
そんな事よりも、と、“彼”は男を睨む。
(主^ω^)「何でお前はDATを手に入れた後、すぐにフォックスに持って行かなかったんだお?
何を考えているんだお?やっぱり僕のDATも一緒に持って帰ろうって魂胆かお?」
( ゚ ゚)「それもあるけど、本当の理由は違うお」
(主^ω^)「だったら何で残ったんだお?」
( ゚ ゚)「簡単な事だお。僕はお前を殺す為に残ったんだお」
(主;^ω^)「なっ……!?」
373 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:13:45.55 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「……殺す前に、お前に僕の事を教えとくお。僕はクリテロ。
お前を闇に引きずり込む、お前の“影”として、フォックス様に闇から創られた存在だお」
表情も変えずに、「っは」と皮肉に笑う。
( ゚ ゚)「誰かの“影”として存在する事がどれだけ辛いか―――お前に分かるかお?
誰かを殺す為だけに生み出された強化クローン、そういう存在として生きる事が」
(主;^ω^)「そ、そんな……」
( ゚ ゚)「……お前を殺せば、僕はお前の“影”じゃなくて、“僕”という存在になれるんだお……!
だから、僕はお前を―――殺させてもらうおっ!!」
声の調子を一変させて、叫ぶ。
そして、男―――クリテロは、その右腕を再度ブーン達に向けた。
(;^ω^)「お?あの人、何やってんだお?」
ただ右腕をこちらに向けるだけで何もしないクリテロに、ブーンは疑問を抱く。
だが、その眼はクリテロのわずかな変化を見逃さなかった。
こちらに向けて伸ばし、開いた掌。
その中央にある穴が、ぐぐっとわずかに広がったのだ。
それが何を意味する変化なのかは分からない。
だが、ブーンの『嫌な予感』が全力で警報を鳴らしていた。
377 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:15:22.93 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「おぉっ!!」
クリテロが叫ぶのと同時。
クリテロの右掌の穴から、『何か』が異速で発射された。
その『何か』は、“彼”の頭蓋目掛けて飛び行く。
(主;゚ω゚)「―――っ!?」
“彼”は動けない。予想外過ぎる攻撃だった。
それでも『何か』は待ってくれない。ただ“彼”の頭蓋を破壊せんと異速で進む。
(;゚ω゚)「危ないおっ!!」
動けない“彼”の体を押し倒すように、ブーンが“彼”に飛びかかる。
飛ばされた『何か』はブーンの体をかするように飛び過ぎ、ブーンの後ろの壁に音を立てて突き刺さった。
ブーンはすぐに立ち上がり、今の飛来物の正体を確かめる。
そして驚愕した。
(;゚ω゚)「な……何だお、これは」
壁に突き刺さっているものは、紫色の杭。
二十センチほどの長さで、さほど太くはない。だがその硬度は金属並。
380 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:16:48.56 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「僕の“力”だお。右腕の中で杭を形成し、発射する。まぁ、銃みたいなもんだお。
どういった原理かは分からないが……中々に使い勝手が良いお」
(;゚ω゚)「……何だかすごく厄介な気がするお」
言いつつ、ブーンは横目で“彼”を確認。
“彼”はブーンが押し倒した時に頭を打ってしまったのか、気を失っていた。
(;^ω^)「……あんたが気を失ってどうすんだお」
苦々しくブーンは呟く。
( ゚ ゚)「そいつを殺す邪魔をするなら、お前も殺すお」
冷たく言い放ち、間髪入れず再度杭を撃ち放つ。
ブーンは大きく左に跳び、それを回避。すぐにクリテロに攻撃せんと大きく飛び出した。
だが。
( ゚ ゚)「甘いお」
接近したブーンに合わせるように、クリテロは右足を大きく前に突き出す。
それはブーンの腹を捉え、ブーンは飛び出した分だけ吹っ飛んだ。
(;^ω^)「う……うぇっ……!」
( ゚ ゚)「僕は奴を殺す為に創られた兵隊だお。戦闘の素人のお前とは違うお」
383 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:18:10.64 ID:e5U/hMe20
右腕を構え、倒れたままのブーンに杭を撃ち放つ。
ブーンはそれを転がるように回避し、立ち上がる。
(;゚ω゚)「おぉっ!!」
すぐにまた飛び出す。飛び出す事しか出来ない。
クリテロは遠距離でも攻撃が可能だが、ブーンは足が届く距離まで近寄らないと攻撃出来ないからだ。
( ゚ ゚)「攻撃パターンが少ないお」
高速で走り寄って来たブーンに、至近距離で杭を撃ち放つ。
ブーンはそれをギリギリで回避。すぐにクリテロの脇腹を狙って左足を思いきり振り抜いた。
( ゚ω゚)「おおぉっ!!」
だが、そこで響くは金属音。
振るわれたブーンの足は、クリテロの右腕に止められていた。
( ゚ ゚)「威力はあるけど、攻撃も短調だお。お前つまらないお」
(;゚ω゚)「勝手にそう思ってろおっ!!」
ブーンは叫ぶと、彼の右腕を思いきり蹴り飛ばす。
間髪入れず、反動で跳ねた左足をもう一度叩き込もうと足を振るった。
だが、それでもブーンの足が彼を捉える事はなかった。
385 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:20:19.83 ID:e5U/hMe20
( ゚ ゚)「素人にしては中々に考えたけど、やっぱり甘いお」
その声と同時。クリテロを捉えかけていた左足が大きく弾かれる。
驚いてブーンは己の足を見る。その左足のふとももには、紫色の杭が刺さっていた。
クリテロは右腕が弾かれた瞬間、すぐにブーンの左足に向けて杭を撃ち放ったのだ。
痛みに、ブーンは顔をしかめる。
( ゚ ゚)「銃は短距離でも撃てるお。一度弾いたくらいで安心するなお。それと……」
冷徹に言い放ち、クリテロは右足を軽く引く。
そして―――
( ゚ ゚)「教えてやるお。蹴りってのはこうやるもんだお」
―――ブーンの腹に、ムチのような蹴りを叩き込んだ。
(;゚ω゚)「おぶっ!!」
またもブーンは吹き飛ばされ、地面をごろごろと転がる。
止まった場所は、己と同じ存在だという“彼”の隣だった。
386 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:21:51.95 ID:e5U/hMe20
(;゚ω゚)「ぐっ……おぉ……!」
“彼”を護ろうと、立ち上がろうとする。
だが、立ち上がれない。クリテロの蹴りは良くない所に入ったようだ。
それでも立ち上がろうとする。“彼”を護ろうとする。
ブーンは、何故自分がこんなにも“彼”を護ろうとするのか分からなかった。
ただ『護らなくては』という気持ちだけが力強く燃え盛っていた。
( ゚ ゚)「一人で逃げれば死なずに済むのに……馬鹿じゃないかお?」
クリテロは呆れたように言いながら、ブーンに歩み寄る。
ブーンは倒れたままその足を蹴り飛ばそうとする。しかし、それもクリテロは軽く避けた。
( ゚ ゚)「ふん。まぁ、良いお。そんなに死にたければ殺してやるお」
でも、その前に―――と、クリテロは“彼”を見る。
そして、その口端を邪悪に吊り上げた。
(;゚ω゚)「おい……何するつもりだお?おい!?」
( ゚ ゚)「少し考えれば分かるお?お前の先にこいつを殺すだけだお」
390 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:23:13.21 ID:e5U/hMe20
言って、クリテロは声を荒げる。
自分の中の怒りや憎しみなどを全てぶちまけるように。
( ゚ ゚)「こいつを始末して、僕は“僕”になるんだお。
こいつの影ではなく、“僕”として生きるんだお!!」
叫んで、右腕を“彼”に向ける。
そして、その掌の中央にある穴が少しだけ広がって―――
(#゚ω゚)「お、お、お、おおぉぉぉ!!」
―――杭が放たれる瞬間、その右腕は気力で立ち上がったブーンに大きく蹴り上げられた。
標準を大きくズラされた杭は、灰色の天井に勢いよく突き刺さるのみ。
(;゚ ゚)「お前っ……!!」
(#゚ω゚)「“僕”を殺させるわけにはいかねぇんだおっ!!」
叫んで、ブーンは思いきり足を振るう。
クリテロはその足を、すんでの所で右腕で防御。
だが、それでもブーンの足は勢いを止めなかった。
(;゚ ゚)「――――――っ!?」
右腕だけで抑えたはずのブーンの足に、ぐ、と更に力がこもる。
クリテロはその力に耐えられず―――その体は大きく吹っ飛んだ。
その勢いは相当の物で、クリテロの体はかなり遠くまで飛ばされ、床を転がった。
392 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:24:49.11 ID:e5U/hMe20
すぐさまクリテロは起き上がる。
その眼に映ったのは、“彼”を担いで出口に駆け込むブーンの姿だった。
( ゚ ゚)「ふざけんなお。ここまで来て逃がすかお。ここまで来て、ここまでして……」
今まで変化の少なかった彼の表情が、鬼のような顔に豹変する。
(#゚ ゚)「 さ せ る か お ぉ ぉ ! ! 」
杭を撃ち放つ。だがそれは壁に突き立っただけで終わった。
(#゚ ゚)「おぉおぉおぉおぉ!!」
クリテロは叫びながら走り出し、ブーンを追う。
対するブーンは全力で逃げる事だけを考えていた。
(;`ω´)「おぉおぉおぉおぉ!!」
396 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:27:01.15 ID:e5U/hMe20
ブーンの足取りは、速くない。
彼の左ももには杭が刺さったままだ。抜く暇もない。
その痛みに耐えながら、ブーンは階段を下る。下る。下る。半ば転げ落ちるように。
クリテロは怒り狂いながら、階段を下る。下る。下る。彼も半ば、転げ落ちるように。
叫び、杭を撃ち放つ。走る。走る。飛び降りる。
歯を食いしばり、杭を避ける。走る。走る。飛び降りる。
杭が頭をかする。恐怖で壊れそうになるが、“彼”を護らねばと足を進める。
出来る限り杭を連射する。当たらない。当たらない。焦りと怒りが内で爆発する。
398 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:28:12.05 ID:e5U/hMe20
先に一階に辿り着いたのはブーン。
間髪入れずクリテロが辿り着くが、その時にはブーンは走り出していた。
階段であればともかく、ただの道となればブーンの方が速い。例え怪我していようとも。
それを悟ったのか、クリテロはその廃ビルの出口で足を止めた。
そして、叫ぶ。
全てを呪うように。全てを憎むように。全てを闇に染めてやろうと言わんばかりに。
(#゚ ゚)「ブーンと言ったな!良いお!お前の命も、僕が刈り取ってやるお!
殺すお!その男も、お前も!絶対に殺すお!!跡形もなくなるほどに殺してやるお!!
安心しろお!僕はお前達を殺すまで、フォックス様の所へは帰らないお!殺すお!殺すお!絶対に!!」
紅く染まり始めた空に、クリテロの声は邪悪に響く。
夕焼け空はその殺意に答えるかのように、だんだんと暗くなっていった。
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[[2>パンッ2]]