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324 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:54:21.98 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (´・ω・`)『ふぅ』 僕は小さく溜息をついて目の前の金網を握り締めた。 金網の向こうのグラウンドでは体操着姿の女子生徒がバレーボールを楽しんでいる。 (´・ω・`)『……ハズレだったか』 そう呟いて缶コーヒーを一口。 僕は今、クーの母校である【難杉高】に来ていた。 学校の周囲をグルリと一周してみたのだけれど、クーは影も形も見えなかった。 僕なりに確信を持ってココに来たのだけれど……。 いや。 冷静に考えればココは僕とクーが初めて出会った場所だ。 個人的な思い入れが強すぎたのかもしれない。 僕はもう一度考えを整理しなおす。 ……。 (´・ω・`)『やっぱりここしか考えられないや。もう少しここで待ってみよう。      行き違いになった可能性だってあるしね』 そう結論を出した僕。 その時…背後から僕に声をかける者がいた。 327 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:55:40.87 ID:E2RE4V3X0 竹刀マッチョ『君。こんなトコで何をしているのかね?』 (´・ω・`)『ウホッ』 竹刀マッチョ『ウホッじゃねーよ。質問に答えなさい』 その、いかにもタフガイな感じのする男は威嚇するように竹刀をもてあそびだした。 (;´・ω・)『あの…人を探しているんです』 竹刀マッチョ『あ? ここの生徒?』 (;´・ω・)『いえ…違いますけど…』 竹刀マッチョ『じゃ、どっか行ってくれませんかね?        最近この辺で変質者が多くてね。生徒が脅えてるんだよ』 (;´・ω・)『…僕、変質者に見えますか?』 竹刀マッチョ『見えるね』 (´・ω・`)『…ふぅ』 僕はもう一度溜息をつくと、その場を後にした。 329 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:56:48.70 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『難しいもんだね』 【難杉高】そばの公園のベンチで僕は禁煙パイプを揺らしている。 人探しがこんなに大変とは思わなかった。 どうやら僕には探偵は務まりそうにない。 (´・ω・`)『そう言えば…』 僕はハッと気がつく。どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう? 全く。自分がどうかしていたとしか思えない。 厨房で培った冷静さもこんな時には無意味かと思うと悲しくなる。 (´・ω・`)『ここは内藤君にそっくりな彼を見つけた公園じゃないか!!』 つまり、いい男専用ベンチがある公園でもある。 (´・ω・`)『もしかして、学校の人はいい男さんを変質者と勘違いしたのかも!!       あの人誤解されやすいからなぁ…教えてあげればもう少し近辺を探索できるかもしれない』 僕はそう考えてベンチから腰を上げようとして 突然目隠しをされた。 (´つω⊂`)『ウ、ウホッ!?』 高くも低くもない。美しく響く声で尋ねられる。 ???『だ~れだ?』 334 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:58:21.50 ID:E2RE4V3X0 (´つω⊂`)『……!!』 懐かしい。 僕は思い出していた。 そう言えばあの頃も、こうしてここで毎日待ち合わせたっけ。 仕事。学校。夢。ファッション。最近出来たケーキ屋。車。 話題は何でもよかった。 何時間も語り合った。 完全なアルコール中毒だった僕が禁酒するか? ベッドを共にするか? そんな賭けをして深夜に飲み比べ対決をしたこともあったっけ。 結局負けたけど。 あの時、すでに僕は恋に落ちていたんだ。 半開きの口から禁煙パイプが落ちた。 その声を聞いただけで僕の瞳からは涙が溢れる。 その柔らかい手のひらを濡らしてしまうのは本当に申し訳なかった。 僕は麻痺したように動かない舌を必死に動かし、ようやく言葉を口にする。 (´つω⊂`)『あ……』 ???『……あ?』 (´つω⊂`)『阿部さん?』 340 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:01:18.75 ID:E2RE4V3X0          違 う ! ! ! ! ! その怒声とともに僕の頭は強引に背後に向けられた。 そこにはあの頃よりも成長して大人っぽくなっている… 見慣れた。 でもずっと会いたかった美しい女性の顔。  川 ゚ ー゚)『……このやり取りも懐かしいな』 (´・ω・`)『違うのはお互いに年を取った事と、僕の手に酒瓶が握られてない事だけだ』 川 ゚ ー゚)『代わりに裏ポケットに入ってるみたいだがな。中身は…ローゼス?』 (´・ω・`)『参ったな。ギコから連絡は受けていたけど本当に全てお見通しなんだね』 僕は降参とばかりにポケットタンブラーを取り出し、あの頃と同じようにクーに手渡す。 クーはキャップをひねると、それを一息に飲み干した。 川 ゚ ー゚)『美味い。まさに命の水【スピリッツ】だな』 僕らはまじまじとお互いの顔を見つめる。 クーは満面の笑みで。 僕は涙でくしゃくしゃになった顔で笑った。 342 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:02:55.31 ID:E2RE4V3X0 ひとしきり笑いあってから僕らは並んでベンチに腰を下ろした。 クーは生前に一緒に原宿に買いに行ったお気に入りのゴスロリ風メイド服。 背中ではどう見ても玩具の羽が意思を持つように揺れている。 ただその服の色は好んで購入していた黒ではなく、 かすかに光沢のある白でそれだけが少し残念だった。 川 ゚ -゚)『すまないな。お前が買ってくれた服を着たかったのだが、      【欠片】が天使のイメージにそぐわないと言って白以外認めてくれなかったのだ』 (;´・ω・)『え? え? 何で分かっちゃうの!?』 思わず口にしてから気付く。 (´・ω・`)『そうか…君には隠し事は出来ないんだったね』 川 ゚ -゚)『あぁ。ある程度接近する必要はあるがな。正直、お前の心の内を知った時戸惑ったぞ。      こんな状況でなければ何日か時間が欲しかったほどだ』 (´・ω・`)『うん。ごめん』 川 ゚ -゚)『謝るな。わたしだって嫌なら姿を見せたりせんさ』 (´・ω・`)『…うん』 その言葉を最後に僕らは続く言葉を失った。 僕はそよ風に揺れる花をなんとなく見つめる。 僕らの手はどちらから求めるわけでもなく固くつながれていた。 344 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:04:30.28 ID:E2RE4V3X0 じろじろ。ひそひそ。 そんな効果音が聞こえてきそうなほど、 目の前を歩く人達は僕らを物珍しそうに眺めつつ去っていく。 (´・ω・`)『…なんか僕達注目されてるね』 川 ゚ -゚)『あぁ。珍獣になった気分だ』 (´・ω・`)『珍しいってのは否定しないよ。ここはBLの聖地だからね。       男女が並んで座ってるなんて一年に一度あるかないかだよ』 川 ゚ -゚)『いや、下っ腹が弛んできた中年男と美女の組み合わせが珍しいのだろう』 (;´・ω・)『ぼ、僕はまだ中年じゃない!! それに自分で美女とか言っちゃうのはどうかと思うよ』 僕の必死の否定にクーは楽しそうに声をあげて笑い出す。 それが嬉しくて僕も釣られて笑い出した。 しばらくの沈黙を忘れるように笑う僕達。 しかし、やがてそれはまた沈黙に変わった。 川 ゚ -゚)『…どうしてだろう。あの頃みたいに笑えないな』 (´・ω・`)『…うん。君が死んで落ち込んでる時…ギコに言われた言葉を思い出したよ』 川 ゚ -゚)『……』 (´・ω・`)『人生は一期一会。過ぎ去った時は戻らない。       後悔したくなかったらそれだけは忘れるなって…ね』 345 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:05:31.49 ID:E2RE4V3X0 ・  川 ゚ -゚)『…重い…重い言葉だな』 (´・ω・`)『…うん。ギコは親父さんのお店を乗っ取られて追い出されて…。       僕らと会うまでは相当荒れた生活だったみたいだからね。       自分の経験から感じとった事も多いんだろうね』 僕は片手で禁煙パイプをクルクルと回しながら言う。 川 ゚ -゚)『そう…だな』 過ぎ去った時は戻らない。 彼女に想いを告げても、その想いが叶う事はない。 僕は留まる者で、彼女は明日にはこの世界を立ち去る者。 あの頃とは…何もかもが違いすぎている。 変わらないようで違いすぎているんだ。 それじゃ、また言葉に出さずに終えるのか? そして、また明日【今日】言葉にしなかったことを後悔しながら生きるのか? 川 ゚ -゚)『ショボン!!』 僕は…僕はどうすればいい? この後悔の連鎖を止める為には…どうすればいい? いっそ、クーと同じ世界の住人になれば楽に 川 ゚ -゚)『ショボン!!』 叫ぶやいなや、クーは僕の首にしがみついた。 346 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:06:32.63 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『バカな事を考えるな!! わたしは【欠片】を持っているんだぞ!!      もし、万が一、【欠片】が君の願いに反応してしまったら…!!』 クーは強くしがみつき叫ぶ。僕も負けじと、その細い腰に両手を回し叫んだ。 (´;ω;`)『バカなのは十分承知さ!!』 そして、心の奥底に隠していた自責の念を曝け出す。 (´;ω;`)『僕は…!! あの時の内藤君の苦しみは…僕の苦しみだ!!       あの日から何度も考えた…       もし、僕が君に想いを打ち明けていたら…       何があっても君を護ると言えていたのなら…       君はもしかしたら死ななかったんじゃないかって…』 川 ; -;)『もしかしたらの…仮定の話にすぎないじゃないか…!!』 (´;ω;`)『それでも…僕は可能性を捨ててしまった…       こんな終末が待っていると知っていたなら…どんな事をしてでも君を護ってみせたのに…       あの時…生涯を懸けて君を護ると誓ったのに…       それでも…時は戻らない…過ぎ去った時は戻らないんだ…』 川 ; -;)『…それならっ!!』 クーが翼を広げ、僕らを包み込む。 川 ; -;)『わたしが…君の願いを叶えてやるっ!!』 その翼が白く輝き、一瞬にして僕は光の濁流に押し流された。 350 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:07:56.50 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『…いい気持ちだなぁ』 僕は今、光の中を流されている。 春に草原の木陰で昼寝しているような。 夏に母なる海に一人浮かんでいるような。 秋に紅葉降り注ぐ街道を歩いているような。 冬に雪を眺めながら程よく酔っているような。 それらを全て1つにしたような気分だ。 (´-ω-`)『…一生このままでいたい気分になるね』 そう言って僕はすぐそばにあった【モノ】に抱きつく。 柔らかくて…。 暖かくて…。 いい匂いがして…。 何かが鼻をくすぐる。 (´-ω-`)(…ここは本当に天国なのかなぁ) そんな事を考えた瞬間 ???『こぉのぉっ!! バカショボンっ!!!!!』 僕は罵声とともに地獄に叩き落された。 354 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:09:16.31 ID:E2RE4V3X0 (;´・ω・)『痛っ!! な、なんだなんだ!?』 僕は尻餅をついて辺りを見渡す。 そこには、草原も海も街道も雪も存在しない。 あるのは見慣れたベンチ。大時計。誰も乗らない錆びたブランコ。 (;´・ω・)『ここは…』 間違いない。 毎日のようにクーと話しこんだ。さっきまでクーと抱き合っていた公園だ。 (;´・ω・)『…夢…だったのかな?』 俯き、地面を見つめる僕の視界に誰かの足が映った。 踵を潰したローファーと、明らかに校則違反の短いスカート。ルーズソックス。 ???『…夢…ならよっぽど幸せな夢だったんだろうね』 (´・ω・`)『……』 僕はその足の持ち主の顔を見上げる。 o川*゚ー゚)o『女子高生と抱き合って夢を見られるなんて普通ないわよ。       ほら。いつまで座り込んでるのよ!!』 懐かしい。 なんて懐かしいんだろう。 僕の前に立っていたのは…【難杉高】の制服を着た。 出合った頃の姿のクーだった。 356 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:10:43.86 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『よいしょーーー』 僕はセーラー服姿のクーの手を借りて立ち上がった。 クーは艶やかな黒髪を大きなリボンでオサゲにしている。 o川*゚ー゚)o『あ~あ。泥だらけ』 クーはそう言って僕の尻についた泥を叩き落とした。 (;´・ω・)『あの…ちょっと痛いんだけど』 o川#*゚ー゚)o『…痛くしてるのよっ!! もう2度とあんな事しないでよねっ!!』 これでお終いっ!!と言って最後に思い切り強く叩かれる。 (´・ω・`)『え…あんな事って?』 o川#*゚ー゚)o『…もう忘れたのっ!! バカショボンっ!!』 言うやいなや彼女は僕の鼻先にその幼さが残る顔をずいと近づける。 その柔らかい髪の毛が僕の頬を撫でた。 o川*゚ー゚)o『君、話してたら突然抱きついてきたんだよっ!! びっくりしたじゃないかっ!!』 (´・ω・`)『え…?』 僕は理解できないまでも何とか思考を整理しようとする。 でも…何だか…何かを思い出せそうな気がするのは何故だろう。 361 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:12:19.01 ID:E2RE4V3X0 ペンキが剥がれかけたベンチに座るクーに促されながら僕は隣に座った。 o川*゚ー゚)o『さっきの話の続きだけど、勝負は0時スタートだからねっ!!       遅刻しないでよ!!』 (´・ω・`)『勝負?』 o川*゚ー゚)o『…君、覚えてないのっ!!』 クーは『あちゃ~』と言いながら手の平を額にあて、首を横に振る。 o川#*゚ー゚)o『飲み比べ勝負の事だよっ!! 負けた方が勝った方の言う事を何でも聞く。       わたしが勝ったら君のアル中が治るまで完全禁酒してもらうからねっ!!』 あぁ、なるほど。 僕はその言葉で全てを思い出した。 デジャブを感じるのも当然。 あの時、クーは僕の願いを叶えてくれたんだ。 審判はギコが務めてくれるとか、お酒はあらまッチが準備してくれるとか 一人話し続けるクーを余所に僕は必死に当時の事を思い出す。 (´・ω・`)『…ここは…初めてクーとあった頃の…10年前のあの場所だ』 366 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:13:49.36 ID:E2RE4V3X0 過ぎ去った時は戻らない。 戻らない筈だった。 でも、僕は戻ってきた。 戻してくれたんだ。 クーが。【欠片】の力で。 o川#*゚ー゚)o『…ちょっと!! 聞いてるのっ!!』 クーは僕の両頬を掴み、自分の方に強引に向かせる。 そう言えば、この勝負はクーが何度も禁酒の約束を破る僕を心配して企画考案したものだった。 口調や行動に若さゆえの勢いこそあるが、 仲間思いな性格はこの時から変わっていなかった事を再確認して僕は嬉しくなる。 (´・ω・`)『そう言えば…』 【今】のクーの制服の背中にもおもちゃの羽が揺れている。 教師がうるさいってボヤいてたっけ。 o川*゚ー゚)o『む~。で、ちゃんと罰ゲームは考えてきたんでしょうねっ!?』 (´・ω・`)『罰ゲーム?』 反射的に答えつつも、僕の脳裏には当時の苦々しい思い出が甦ってきた。 368 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:15:24.29 ID:E2RE4V3X0 『僕と付き合ってほしい』 あの頃は…いや、この頃と言うべきなのだろうか? とにかく、僕は何度もその言葉を口にしようとした。 でも、出来なかった。 酒に酔わなければ包丁も握れない料理人には彼女は眩しすぎたから。 この時も僕は言おうとしていたんだ。 言おうとして彼女を抱きしめた。 『僕が勝ったら僕と付き合ってほしい』って。 それなのに…いざとなって口から出た言葉は 『僕が勝ったらそこのラブホテルで一晩僕のモノになれ』だった。 クーは顔を真っ赤にし、散々文句を言いながらもそれを了解した。 勝負の結果。 僕は負けた。 正直に言うと、まだまだ体はアルコールを受け入れる余地はあった。 でも、未熟な体に青ざめながらも無理矢理酒を流し込んでいるクーを見ていると このまま勝ったら自分が二度と立ち直れないような気がして…。 負けたフリをして寝てしまったんだった。 そして、僕は今。あの頃に戻ってきた。言うのは今しかない。 そう考えたから、クーは僕をこの時間に戻してくれたのだろう。 僕は決意を込めて口を開いた。 (´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』 369 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:17:11.23 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー( ゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーー舞台はバーボンハウスに戻る。 業務用冷蔵庫のモーター音が鳴り響くスタッフルームに俺様はいた。 【団長】と書かれた三角錐の置かれたスチール机に足を乗せ、 自慢の太い腕を組み目を閉じ座っている。 ときおり、安物の椅子が尻の下でミシミシと不平そうな声を上げた。 消滅する前にクーが必ず訪れる場所はどこか? それはココ、バーボンハウスしかありえないと言うのが俺様が出した結論だった。 直情型の内藤・天然暴走女・ギコの3人はただ静かに待つなんてのは絶対に出来ないだろうし、 この3人が動けば自然にまな板娘・ドクオ・Fカップの3人も動く。 ショボンは本来どんな時も冷静沈着な男だが、過去にクーさんと何かあったのか (まぁ、興味ねぇがな)今回ばかりは熱くなってたみてぇだ。 つまり、留守番役は自然と俺様の役目となるわけだ。 元々俺様は俺様自身と愛する家族の事。 それにスイーツの事しか興味がない。 そりゃ、クーさんが生き返ったと聞いた時は驚いたし嬉しかった。 会って礼の1つでも言いたいと思う。 だが、全てを忘れて走り出すまでに…?、と質問されればそうでもねぇ。 自分を見失わない程度に冷静さは保っているつもりだ。 374 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:19:09.71 ID:E2RE4V3X0 ( ゚∀゚)『……ハイン…』 俺様の口から無意識に愛する妻の名が漏れ出す。 初めてハインと出会ったのは、俺様がまだパティシエ修行中のパリ。 彼女は科学者になる為に大学に通いながら小さなカフェでアルバイトをしていて、 偶然俺様がその店に入った時豊かな胸をピアノの鍵盤に乗せて休んでいた。 その表情。雰囲気。声。 全てに惚れこんだ。 『おっぱいよりも君が好き』 気付いた時には気持ちを伝えていた。 今では愛する彼女との間に9人もの宝物に恵まれ、騒がしいながらも幸せな毎日を送っている。 何一つ憂い事などない。 …いや。 1つだけある。 子供を産むたび、ハインの豊かな胸は小さくなっていった。 俺はおっぱいも好きだが、ハインの全てを愛しているから不平などない。 だが、【衝撃!! AAカップが一週間でDカップに!!】と書かれた広告を見て 溜息をついているハインを見ていると、何とかしてやりたいと思う。 その願いも【欠片】の力を借りれば簡単に叶える事が出来るだろう。 376 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:20:09.05 ID:E2RE4V3X0 『あの素晴らしい乳をもう一度』 そんな事を考えながら、俺様はクーを待つ。 果報は寝て待て。 昔の人は本当に良い事を言った。 某団じゃあるまいし、足を棒にして捜すなんてのは意味がない。 ちょっと頭を回転させれば、果報なんてもんは葱と鍋背負って歩いてくるもんだ。 うはwww俺様天才wwwっうぇwwwww …もし、この完璧すぎる作戦に穴があるとすればーーーーーー。 ( ,,゚Д゚)『…こいつ、なにやってやがるんだ?』 (*゚ー゚)『…さぁ?』 俺様が待ちくたびれて寝てしまった事だけだろう。 ( ゚∀゚)『むにゃむにゃ…ハイン…愛してるぜ…』 379 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:21:22.79 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』 決意を込めた僕の言葉は想像していたよりも はるかにさらりと口から流れ出た。 自分が今どんな顔をしているか自分で見る事は出来ないけれど、 クーは目を点にして僕の顔を凝視している。 やがて、ようやく言葉の意味を脳が理解したのか一瞬にして赤面した。 o川*///)o『な、なに言ってんのよ!! バカショボン!!      罰ゲームの内容を言いなさいって言ってるでしょ!!      からかうの止めてよね!!』 (´・ω・`)『からかってなんかいないよ。それに飲み比べ勝負なんか意味がないんだ』 一度堰を切った僕の言葉は止まらない。 (´・ω・`)『君がそばにいてくれさえすれば、僕はいつだって禁酒してみせるよ。       お酒に逃げる必要がないからね』 o川*///)o『でも…でも…』 クーは俯き、困った様につま先で足元の小石を突付いている。 (´・ω・`)『僕は本気だよ。君を護りたい。…君を襲う不幸から君を護りたいんだ』 380 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:22:47.70 ID:E2RE4V3X0 o川*゚ー゚)o『で、でも、例えばさっ!!』 クーは思いもよらなかったであろう僕の告白に流されそうになる自分を 押し留めるように声を上げる。 o川*゚ー゚)o『例えばだよっ!! わたしが急な事故とか病気で死んじゃったらどうすんのさっ!!       そしたら今度はわたしを護れなかった事を後悔するんだよっ!!』 (´・ω・`)『それでも、可能性を捨ててしまうよりはるかにマシだ』 o川*゚ー゚)o『わ、わたしおばけになって出てくるかもよっ!!       枕元に立って毎晩お皿数えるかもよっ!!』 (´・ω・`)『それでも構わない。それならおばけの君を愛してみせる』 o川*゚ー゚)o『ででで、出切るワケないじゃない!! おばけと人間じゃ立場が違いすぎるよ!!』 クーは緊張しているのか回らない舌を必死に動かし、荒唐無稽な反論をしてきた。 (´・ω・`)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえだ』 僕はクーの両肩を掴み、真正面からその紫水晶色の瞳を見据えて言った。 ( `・ω・)『例え、君が幽霊でも幻でも関係ない。                             ('A` )       例え、明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない。                  (゚∀゚*)       クー。僕は君が好きだ。       この想いだけは伝えなければいけないんだ』 386 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:25:33.36 ID:E2RE4V3X0 ( ´・ω・)『……』                               ('A` )(゚∀゚*) (´つω⊂)ゴシゴシ ( ´・ω・)『……』                               ('A`*)(゚∀゚*)               ねぇ、クー。 o川*゚ー゚)o『な、なによバカショボン!!』               僕、目がおかしくなっちゃったのかなぁ。幻覚が見えるんだ。 僕の言葉にクーは背後を振り返る。そこに頬を赤らめる2人の姿を認めるとぷっと吹き出した。 o川*゚ー゚)o『あ~ぁ、バレちゃったか』 悪戯を見つかった子供のようにペロリと舌を出すと、クーは一歩僕から下がり離れる。 同時に背中のおもちゃの羽が白鳥のような翼に変わり、その場で身を翻すと 彼女の姿はルーズソックスの女子高生から純白のメイド服姿に【戻った】。 ( ´・ω・)『…クー』 川 ゚ -゚)『言いたい事は分かるが…なんだ、ショボン』 ( ´・ω・)『…時間を戻してくれたんじゃなかったの?』 僕の問いにクーは照れくさそうに答える。 川 ゚ -゚)『本当はそうしたかったのだが、流石に【欠片】でもそこまでは無理なようだ。      よって、私自身の姿をあの頃に戻して一芝居うたせてもらった。で、自分がバーボンを喰らった感想はどうだ?』 392 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:26:56.90 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『そ…そんな…』 その場にガックリ膝をつく僕に、ドクオとツーが駆け寄ってくる。 (*'A`)『あの…その…なんだか…フヒヒ、スイマセン』 (*゚∀゚)『それにしてもビックリだよっ!!      ショボンさんがクーさんの事をねぇ…。      なかなか熱い告白だったよっ!!      お姉さん見ててキュンとなっちゃったさっ!!』 (´;ω;`)『いやぁぁぁぁ!! 言わないで!! 聞きたくない!!』 僕は両手で耳を塞ぎ大声をあげる。そこにクーが割って入った。 川 ゚ -゚)『全くだ。2人とも、あーゆー場合はせめて隠れて見ているものだぞ』 その言葉で2人は僕をからかっている場合ではない事にようやく気がついたようだ。 揃って直立不動の姿勢をとり、クーに向き直る。 ('A`)『あ…クーさん…スイマセン、失礼しました』 (*゚∀゚)『それに…朝もゴメンなさい…まさか、また会えるなんて思ってなくて…      ブーちゃんがまた変な妄想始めたのかとばっかり…』 川 ゚ -゚)『気にするな。わたしも短絡的過ぎたと思っている。      本当なら今すぐ君達に抱きつきたい所なのだが、それより今は…』 そこでクーは言葉を遮った。 395 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:28:14.70 ID:E2RE4V3X0  (´・ω・`)川 ゚ -゚)('A`)(*゚∀゚)『……』 4人の間に不自然な沈黙が流れる。 しばらくしてドクオが胸ポケットから煙草の箱を取り出し、舌打ちとともにそれを握りつぶした。 ('A`)『くそ…タバコきれちまってるわ。ちょっと買いに行って来る』 そう言ってツーの手を引いて歩き出す。 (*゚∀゚)『ちょ…ドッ君!! こんな時に煙草なんてどうでもいいじゃないかっ!!      そんなに行きたければ一人で…』 ドクオはその言葉を無視して僕らに言った。 ('A`)『10分!! ぴったり10分で帰ってきますからね!!     どこにも行かないでくださいよ!!』 (*゚∀゚)『あ…そっか…』 ツーはそれでドクオの言葉の真意を理解したのか、素直にドクオに従った。 (´・ω・`)川 ゚ -゚)『……』 やがて2人の姿が見えなくなると、クーは僕の前に膝をつき肩に顔を乗せるようにして抱きついてきた。 先ほどとは全く異なる、ただひたすらに優しい抱擁だった。 396 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:28:58.51 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『ショボン…騙すようなマネをしてすまなかった』 耳元で囁くように言う。 (´・ω・`)『…いや。僕のほうこそありがとうを言わないといけないよね。       君がああしてくれなかったら、僕はいつまでたってもウジウジ悩んでいるだけだっただろうし』 答えながら僕はクーの腰にそっと手を回す。 川 ゚ -゚)『全くだ。君は考えすぎるんだよ。あの頃もそれが祟ってアル中になってたんじゃないか      考える必要なんてないんだよ。君はちゃんと言ってくれたじゃないか?』 (´・ω・`)『…そうだっけ。実は興奮しすぎて自分でなんて言ったか覚えてないんだ』 川#゚ -゚)『…この、バカショボン』 クーはそう言って僕の頭に軽い頭突きを当てる。 川 ゚ -゚)『アル中だから…立場が違うから告白できない。      過ぎ去った過去は戻らないから告白できない。      わたしが明日にはこの世にいない者だから告白できない。      そう言っていたのは君自身だぞ』 (´・ω・`)『…うん』 川 ゚ -゚)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえ。       わたしがが幽霊でも幻でも関係ない。       明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない…か。       嬉しかったぞ。これで安心して死ねそうだ』  398 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:30:05.18 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『…悲しくなる事言わないでくれよ       僕はこれから心の中でしか会えない君を愛し続けながら生きなきゃならないんだぞ』 川 ゚ -゚)『…すまない。      しかし、逆に言えば何時でも君の心の中でわたしは君に会えるという事だな?』 (´・ω・`)『ふふ…そうだね』 川 ゚ -゚)『…わたしは死んでいる間、ずっと寂しい思いをしてきたと【欠片】は教えてくれた。      しかし、皆の心の中にわたしがいて。わたしはいつでも皆に会える。      そう考えると次の死は寂しくなさそうだ』 (´・ω・`)『…うん』 川 ゚ -゚)『想う心は力になる。      不可能を可能にし、可能を不可能にするほどの力だ。      それを忘れないでくれよ』 それから。僕ら2人の間に言葉は要らなかった。 僕はただ、ただクーを抱きしめた。 この感触を忘れぬように。 この温もりを忘れぬように。 程なくしてクーが名残を惜しむようにそっと僕から離れる。 立ち上がると、すぐそばの茂みを睨みつけ言った。 川#゚ -゚)『ぴったり10分経ったぞ。そこで隠れている2人出てこい』 400 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:31:35.22 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(*゚∀゚)('A`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ('A`)『ほら、言ったじゃねーか。やっぱり見つかった』 (*゚∀゚)『にょろ~ん』 わたしはクーさんの真似をしてペロリと舌を出してみせる。 ドッ君はそんなわたしにはすでに慣れっこなのか…半分諦めたのか。 溜息を1つ吐き出して立ち上がった。 ('A`)『…もしかしてバレバレでした?』 川 ゚ -゚)『うむ。今のわたしは【欠片】の力で全能に近い力があるからな。      (…それに茂みの影からドクオのガイルヘアーが丸見えだ)』 (*゚∀゚)『すごいねぇ。生きてた時も凄かったけど…      昔のクーさんがツイストサーブなら今のクーさんは波動球って感じさっ!!』 (;´・ω・)'A`)『……?』 全国80万人の腐女子大爆笑モノのわたしの例えは どうやら男2人には伝わらなかったらしい。 1人クーさんは首を縦に振って納得していた。 ('A`)『そんな事はどうでも良いんだけどよ…。 ショボンさん、クーさん。話は終わりましたか?』 そうだよ!! それが一番大事なんじゃないかっ!! ドッ君、話がすぐ脱線するのは君の悪いクセだよっ!! 川 ゚ -゚)『あぁ。おかげさまで全部終わったよ』 402 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:32:56.57 ID:E2RE4V3X0 ('A`)『そうッスか…』 (*゚∀゚)『そう…』 …。 う…。 うぅ…。 川 ゚ -゚)『?』 ( ;A;)(*:∀;)『うぇぼおぇあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ』 川;゚ -゚)『!?』 これ以上我慢する必要がないと分かった途端。 突然涙が溢れ出してきた。 『日本語で(ry』と言われそうな奇声を漏らしながらクーさんの胸に飛び込む。 ( ;A;)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……クーさん…俺…俺…』 (*;∀;)『クーさぁぁぁぁぁぁん…本物のクーさんだぁぁぁぁぁぁぁぁ…』 涙と鼻水と涎でべったりと染みを作りながら、わたし達はクーさんに抱きつく。 ひたすら泣きじゃくるわたしの髪をクーさんは優しく撫で続けてくれた。 406 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:33:58.92 ID:E2RE4V3X0 どれ程の時間そうしていたか全く分からない。 ちょうどクーさんの胸に顔を埋めていたわたしは、クーさんのおっぱい柔らかいなぁとか考えていた。 昔、どっかのおっぱいバカが     ( ゚∀゚)『高速道路を走ってる時、窓から手ぇ出すわけよ。          そん時に感じる風圧はおっぱいの感触と一緒なんだぜ』 とか、自慢げに語っていたっけ。 いつまでも流れ続けていると思っていた涙は 泣きじゃくる子供をあやす様なクーさんの優しさのおかげで少しづつ止まっていった。 ドッ君はとっくに泣き止んでいたみたいで、 わたしに背を向けるようにしてタバコを吸っている。 きっと、その顔は酷い様になっている事だろう。 川 ゚ -゚)『ようやく泣き止んでくれたか。      このままわたしの時間が終わったらどうしようかと思ったぞ』 (*;∀;)『へへ…申し訳ないっさ…』 川 ゚ ー゚)『うん。やっぱりツーは笑顔が一番だ。      怒り顔や泣き顔にも魅力はあるが、わたしが一番見たかったのはその笑顔だからな。      見れてよかったよ』 その他愛もない一言に、わたしの涙腺はこれでもかと緩む。 でも、わたしはクーさんに自分の笑顔を出来るだけ見てほしくて必死にそれを堪えた。 クーさんは、いつも見せていた静かな微笑みでわたしを見ていてくれていたけど、 急に真顔になると申し訳なさそうに口を開いた。 川 ゚ -゚)『…すまない。お前達とこのまま話していたいが…わたしの時間もそろそろ残り少ないようだ』 410 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:35:18.53 ID:E2RE4V3X0  (*゚∀゚)('A`)『え!?』 その言葉を聞いたドッ君は手から煙草を落とし、振り返った。 やっぱりその目は限界異常に涙を搾り出したせいか、真っ赤になっている。 (*゚∀゚)『いや!! このまま一緒にいてくれなきゃ嫌さっ!!』 クーさんがどこかに行ってしまう。 ここじゃない何処か。わたし達じゃない誰かのところに行くのか? それとも、【欠片】の力が消滅しようとしているのか? 分からないけど、とにかくわたしは駄々っ子のようにクーさんの言葉を否定した。 (*゚∀゚)『…ずるいさっ!! ショボンさんの時はあんなに長い時間一緒にいたのに、      わたし達の時はこんなに早く打ち切りなんてあんまりさっ!!      一緒に遊ぼう!! 帰りの鐘が鳴るまで一緒に遊ぼうよっ!!』 ('A`)『…ツー。駄目だ…駄目なんだ…』 ドッ君がすっとクーさんの翼を指差す。 (*゚∀゚)『何が駄目なんだいっ!! ドッ君はクーさんと一緒にいたk…』 そこでわたしの言葉は止まった。 クーさんの真っ白な翼。それは今では色を失いつつある。 ぼんやりとそれに隠れて見えないはずのブランコを見る事が出来た。 川 ゚ -゚)『すまない…わたしの時間もそろそろ残り少ないようなんだ…』 クーさんはもう一度そう言った。 413 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:37:35.89 ID:E2RE4V3X0 (*゚∀゚)『でも…でもっ!!』 わたしだってここは簡単に引き下がる事は出来ないよ。 この機会を逃したら、クーさんとはもう二度と…もう二度と…。 (*゚∀゚)『わたしはもっと…もっとクーさんと一緒にいたいんだよっ!!      一緒にお話したいんだよっ!! それ位…それ位いいじゃないかっ!!』 ('A`)『…ツー。クーさん自身の事はクーさんが一番よく分かってる筈だろ?     俺ももっとクーさんと一緒にいたい…でも駄目なんだ…』 (#*゚∀゚)『駄目なんかじゃないさっ!!      そんならショボンさんにあげた時間を少しわたし達にくれればよかったじゃないかっ!!      そんじゃ何かいっ!? クーさんはわたし達よりショボンさんが大事だったとでも…』 川 ゚ -゚)『それは違う!!!!!』 一喝。 それまで聖母の様に優しかったクーさんのいきなりの大声にわたしの頭は一瞬で覚める。 川 ゚ -゚)『お前達2人との関係は…死んでからも何一つ悔いの残るものではなかった。      上司と部下。年齢も離れているにも関わらずこのような関係を築けた事をわたしは誇りに思っている。      だが、世の中には死んでからも心配で目が離せないお子様がいるんだ。      そこにいるショボクレ眉毛や…』 クーさんはちらとベンチに座って一人空を見上げているショボンさんを見てから言葉を続けた。 川 ゚ -゚)『…今もわたしを探してこの街のどこかを走り回っている男のような、な』 418 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:39:53.44 ID:E2RE4V3X0 (*゚∀゚)『……!!』 悔しい。 ただひたすらに悔しい。 こんな事なら、クーさんが生きている間にもっと困らせてやればよかった。 ('A`)『…』 川 ; -;)『すまない…本当にすまない…。      わたしだってお前達と一緒にいたい。      この稀有な力を使って、お前達が考えている【世界中の男が全員ドクオになる計画】や      【透明人間になって女湯突撃】なんて遊びが出来たら楽しかったと思う…。      でも…わたしは行かなくてはいけないんだ。      この限りある命を…一度きりの奇跡を失うわけにはいかないんだ…』 悔しい。 ただひたすらに悔しい。 でも。 (*;∀;)『…分かったよ、クーさん』 川 ; -;)『……!! ツー…』 ( ;A;)『…行って下さい、クーさん。こいつには俺がいます。     でも、クーさんを必要としている奴がいるんです』 クーさんは頷き、今や半透明になるつつある翼を大きく広げると ふわりと空に羽ばたいた。 421 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:41:19.18 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『ツー!! 1つ言い忘れていた事がある!!』 この公園で一番高い木と同じくらいまで上昇したクーさんが叫んだ。 川 ゚ -゚)『この機会を失ったら、わたしとは2度と会うことは出来ない。      お前はそう思ったようだが、それは違う!!      わたし達はこれから何時でも会う事が出来るんだ!!      ショボンに聞け!! ショボンが全て知っている!!』 そう言うとクーさんは再び上昇を開始する。 その姿が点のように小さくなっても、ついに後ろを振り返る事はなかった。 (´・ω・`)『…行っちゃったね』 いつの間にかわたしの後ろに立ったショボンさんが言う。 (´・ω・`)『…僕らも行こう。       クーは必ず最後にはあそこに来てくれる筈だ』 わたしは青空を見上げながら頷く。 そして、愛しいダーリンに振り返り言った。 (*゚∀゚)『心配かけてごめんさっ!! …ところで【透明人間になって女湯でウハウハ計画】って何?』
324 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:54:21.98 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (´・ω・`)『ふぅ』 僕は小さく溜息をついて目の前の金網を握り締めた。 金網の向こうのグラウンドでは体操着姿の女子生徒がバレーボールを楽しんでいる。 (´・ω・`)『……ハズレだったか』 そう呟いて缶コーヒーを一口。 僕は今、クーの母校である【難杉高】に来ていた。 学校の周囲をグルリと一周してみたのだけれど、クーは影も形も見えなかった。 僕なりに確信を持ってココに来たのだけれど……。 いや。 冷静に考えればココは僕とクーが初めて出会った場所だ。 個人的な思い入れが強すぎたのかもしれない。 僕はもう一度考えを整理しなおす。 ……。 (´・ω・`)『やっぱりここしか考えられないや。もう少しここで待ってみよう。      行き違いになった可能性だってあるしね』 そう結論を出した僕。 その時…背後から僕に声をかける者がいた。 327 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:55:40.87 ID:E2RE4V3X0 竹刀マッチョ『君。こんなトコで何をしているのかね?』 (´・ω・`)『ウホッ』 竹刀マッチョ『ウホッじゃねーよ。質問に答えなさい』 その、いかにもタフガイな感じのする男は威嚇するように竹刀をもてあそびだした。 (;´・ω・)『あの…人を探しているんです』 竹刀マッチョ『あ? ここの生徒?』 (;´・ω・)『いえ…違いますけど…』 竹刀マッチョ『じゃ、どっか行ってくれませんかね?        最近この辺で変質者が多くてね。生徒が脅えてるんだよ』 (;´・ω・)『…僕、変質者に見えますか?』 竹刀マッチョ『見えるね』 (´・ω・`)『…ふぅ』 僕はもう一度溜息をつくと、その場を後にした。 329 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:56:48.70 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『難しいもんだね』 【難杉高】そばの公園のベンチで僕は禁煙パイプを揺らしている。 人探しがこんなに大変とは思わなかった。 どうやら僕には探偵は務まりそうにない。 (´・ω・`)『そう言えば…』 僕はハッと気がつく。どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう? 全く。自分がどうかしていたとしか思えない。 厨房で培った冷静さもこんな時には無意味かと思うと悲しくなる。 (´・ω・`)『ここは内藤君にそっくりな彼を見つけた公園じゃないか!!』 つまり、いい男専用ベンチがある公園でもある。 (´・ω・`)『もしかして、学校の人はいい男さんを変質者と勘違いしたのかも!!       あの人誤解されやすいからなぁ…教えてあげればもう少し近辺を探索できるかもしれない』 僕はそう考えてベンチから腰を上げようとして 突然目隠しをされた。 (´つω⊂`)『ウ、ウホッ!?』 高くも低くもない。美しく響く声で尋ねられる。 ???『だ~れだ?』 334 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 22:58:21.50 ID:E2RE4V3X0 (´つω⊂`)『……!!』 懐かしい。 僕は思い出していた。 そう言えばあの頃も、こうしてここで毎日待ち合わせたっけ。 仕事。学校。夢。ファッション。最近出来たケーキ屋。車。 話題は何でもよかった。 何時間も語り合った。 完全なアルコール中毒だった僕が禁酒するか? ベッドを共にするか? そんな賭けをして深夜に飲み比べ対決をしたこともあったっけ。 結局負けたけど。 あの時、すでに僕は恋に落ちていたんだ。 半開きの口から禁煙パイプが落ちた。 その声を聞いただけで僕の瞳からは涙が溢れる。 その柔らかい手のひらを濡らしてしまうのは本当に申し訳なかった。 僕は麻痺したように動かない舌を必死に動かし、ようやく言葉を口にする。 (´つω⊂`)『あ……』 ???『……あ?』 (´つω⊂`)『阿部さん?』 340 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:01:18.75 ID:E2RE4V3X0          違 う ! ! ! ! ! その怒声とともに僕の頭は強引に背後に向けられた。 そこにはあの頃よりも成長して大人っぽくなっている… 見慣れた。 でもずっと会いたかった美しい女性の顔。  川 ゚ ー゚)『……このやり取りも懐かしいな』 (´・ω・`)『違うのはお互いに年を取った事と、僕の手に酒瓶が握られてない事だけだ』 川 ゚ ー゚)『代わりに裏ポケットに入ってるみたいだがな。中身は…ローゼス?』 (´・ω・`)『参ったな。ギコから連絡は受けていたけど本当に全てお見通しなんだね』 僕は降参とばかりにポケットタンブラーを取り出し、あの頃と同じようにクーに手渡す。 クーはキャップをひねると、それを一息に飲み干した。 川 ゚ ー゚)『美味い。まさに命の水【スピリッツ】だな』 僕らはまじまじとお互いの顔を見つめる。 クーは満面の笑みで。 僕は涙でくしゃくしゃになった顔で笑った。 342 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:02:55.31 ID:E2RE4V3X0 ひとしきり笑いあってから僕らは並んでベンチに腰を下ろした。 クーは生前に一緒に原宿に買いに行ったお気に入りのゴスロリ風メイド服。 背中ではどう見ても玩具の羽が意思を持つように揺れている。 ただその服の色は好んで購入していた黒ではなく、 かすかに光沢のある白でそれだけが少し残念だった。 川 ゚ -゚)『すまないな。お前が買ってくれた服を着たかったのだが、      【欠片】が天使のイメージにそぐわないと言って白以外認めてくれなかったのだ』 (;´・ω・)『え? え? 何で分かっちゃうの!?』 思わず口にしてから気付く。 (´・ω・`)『そうか…君には隠し事は出来ないんだったね』 川 ゚ -゚)『あぁ。ある程度接近する必要はあるがな。正直、お前の心の内を知った時戸惑ったぞ。      こんな状況でなければ何日か時間が欲しかったほどだ』 (´・ω・`)『うん。ごめん』 川 ゚ -゚)『謝るな。わたしだって嫌なら姿を見せたりせんさ』 (´・ω・`)『…うん』 その言葉を最後に僕らは続く言葉を失った。 僕はそよ風に揺れる花をなんとなく見つめる。 僕らの手はどちらから求めるわけでもなく固くつながれていた。 344 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:04:30.28 ID:E2RE4V3X0 じろじろ。ひそひそ。 そんな効果音が聞こえてきそうなほど、 目の前を歩く人達は僕らを物珍しそうに眺めつつ去っていく。 (´・ω・`)『…なんか僕達注目されてるね』 川 ゚ -゚)『あぁ。珍獣になった気分だ』 (´・ω・`)『珍しいってのは否定しないよ。ここはBLの聖地だからね。       男女が並んで座ってるなんて一年に一度あるかないかだよ』 川 ゚ -゚)『いや、下っ腹が弛んできた中年男と美女の組み合わせが珍しいのだろう』 (;´・ω・)『ぼ、僕はまだ中年じゃない!! それに自分で美女とか言っちゃうのはどうかと思うよ』 僕の必死の否定にクーは楽しそうに声をあげて笑い出す。 それが嬉しくて僕も釣られて笑い出した。 しばらくの沈黙を忘れるように笑う僕達。 しかし、やがてそれはまた沈黙に変わった。 川 ゚ -゚)『…どうしてだろう。あの頃みたいに笑えないな』 (´・ω・`)『…うん。君が死んで落ち込んでる時…ギコに言われた言葉を思い出したよ』 川 ゚ -゚)『……』 (´・ω・`)『人生は一期一会。過ぎ去った時は戻らない。       後悔したくなかったらそれだけは忘れるなって…ね』 345 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:05:31.49 ID:E2RE4V3X0 ・  川 ゚ -゚)『…重い…重い言葉だな』 (´・ω・`)『…うん。ギコは親父さんのお店を乗っ取られて追い出されて…。       僕らと会うまでは相当荒れた生活だったみたいだからね。       自分の経験から感じとった事も多いんだろうね』 僕は片手で禁煙パイプをクルクルと回しながら言う。 川 ゚ -゚)『そう…だな』 過ぎ去った時は戻らない。 彼女に想いを告げても、その想いが叶う事はない。 僕は留まる者で、彼女は明日にはこの世界を立ち去る者。 あの頃とは…何もかもが違いすぎている。 変わらないようで違いすぎているんだ。 それじゃ、また言葉に出さずに終えるのか? そして、また明日【今日】言葉にしなかったことを後悔しながら生きるのか? 川 ゚ -゚)『ショボン!!』 僕は…僕はどうすればいい? この後悔の連鎖を止める為には…どうすればいい? いっそ、クーと同じ世界の住人になれば楽に 川 ゚ -゚)『ショボン!!』 叫ぶやいなや、クーは僕の首にしがみついた。 346 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:06:32.63 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『バカな事を考えるな!! わたしは【欠片】を持っているんだぞ!!      もし、万が一、【欠片】が君の願いに反応してしまったら…!!』 クーは強くしがみつき叫ぶ。僕も負けじと、その細い腰に両手を回し叫んだ。 (´;ω;`)『バカなのは十分承知さ!!』 そして、心の奥底に隠していた自責の念を曝け出す。 (´;ω;`)『僕は…!! あの時の内藤君の苦しみは…僕の苦しみだ!!       あの日から何度も考えた…       もし、僕が君に想いを打ち明けていたら…       何があっても君を護ると言えていたのなら…       君はもしかしたら死ななかったんじゃないかって…』 川 ; -;)『もしかしたらの…仮定の話にすぎないじゃないか…!!』 (´;ω;`)『それでも…僕は可能性を捨ててしまった…       こんな終末が待っていると知っていたなら…どんな事をしてでも君を護ってみせたのに…       あの時…生涯を懸けて君を護ると誓ったのに…       それでも…時は戻らない…過ぎ去った時は戻らないんだ…』 川 ; -;)『…それならっ!!』 クーが翼を広げ、僕らを包み込む。 川 ; -;)『わたしが…君の願いを叶えてやるっ!!』 その翼が白く輝き、一瞬にして僕は光の濁流に押し流された。 350 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:07:56.50 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『…いい気持ちだなぁ』 僕は今、光の中を流されている。 春に草原の木陰で昼寝しているような。 夏に母なる海に一人浮かんでいるような。 秋に紅葉降り注ぐ街道を歩いているような。 冬に雪を眺めながら程よく酔っているような。 それらを全て1つにしたような気分だ。 (´-ω-`)『…一生このままでいたい気分になるね』 そう言って僕はすぐそばにあった【モノ】に抱きつく。 柔らかくて…。 暖かくて…。 いい匂いがして…。 何かが鼻をくすぐる。 (´-ω-`)(…ここは本当に天国なのかなぁ) そんな事を考えた瞬間 ???『こぉのぉっ!! バカショボンっ!!!!!』 僕は罵声とともに地獄に叩き落された。 354 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:09:16.31 ID:E2RE4V3X0 (;´・ω・)『痛っ!! な、なんだなんだ!?』 僕は尻餅をついて辺りを見渡す。 そこには、草原も海も街道も雪も存在しない。 あるのは見慣れたベンチ。大時計。誰も乗らない錆びたブランコ。 (;´・ω・)『ここは…』 間違いない。 毎日のようにクーと話しこんだ。さっきまでクーと抱き合っていた公園だ。 (;´・ω・)『…夢…だったのかな?』 俯き、地面を見つめる僕の視界に誰かの足が映った。 踵を潰したローファーと、明らかに校則違反の短いスカート。ルーズソックス。 ???『…夢…ならよっぽど幸せな夢だったんだろうね』 (´・ω・`)『……』 僕はその足の持ち主の顔を見上げる。 o川*゚ー゚)o『女子高生と抱き合って夢を見られるなんて普通ないわよ。       ほら。いつまで座り込んでるのよ!!』 懐かしい。 なんて懐かしいんだろう。 僕の前に立っていたのは…【難杉高】の制服を着た。 出合った頃の姿のクーだった。 356 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:10:43.86 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『よいしょーーー』 僕はセーラー服姿のクーの手を借りて立ち上がった。 クーは艶やかな黒髪を大きなリボンでオサゲにしている。 o川*゚ー゚)o『あ~あ。泥だらけ』 クーはそう言って僕の尻についた泥を叩き落とした。 (;´・ω・)『あの…ちょっと痛いんだけど』 o川#*゚ー゚)o『…痛くしてるのよっ!! もう2度とあんな事しないでよねっ!!』 これでお終いっ!!と言って最後に思い切り強く叩かれる。 (´・ω・`)『え…あんな事って?』 o川#*゚ー゚)o『…もう忘れたのっ!! バカショボンっ!!』 言うやいなや彼女は僕の鼻先にその幼さが残る顔をずいと近づける。 その柔らかい髪の毛が僕の頬を撫でた。 o川*゚ー゚)o『君、話してたら突然抱きついてきたんだよっ!! びっくりしたじゃないかっ!!』 (´・ω・`)『え…?』 僕は理解できないまでも何とか思考を整理しようとする。 でも…何だか…何かを思い出せそうな気がするのは何故だろう。 361 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:12:19.01 ID:E2RE4V3X0 ペンキが剥がれかけたベンチに座るクーに促されながら僕は隣に座った。 o川*゚ー゚)o『さっきの話の続きだけど、勝負は0時スタートだからねっ!!       遅刻しないでよ!!』 (´・ω・`)『勝負?』 o川*゚ー゚)o『…君、覚えてないのっ!!』 クーは『あちゃ~』と言いながら手の平を額にあて、首を横に振る。 o川#*゚ー゚)o『飲み比べ勝負の事だよっ!! 負けた方が勝った方の言う事を何でも聞く。       わたしが勝ったら君のアル中が治るまで完全禁酒してもらうからねっ!!』 あぁ、なるほど。 僕はその言葉で全てを思い出した。 デジャブを感じるのも当然。 あの時、クーは僕の願いを叶えてくれたんだ。 審判はギコが務めてくれるとか、お酒はあらまッチが準備してくれるとか 一人話し続けるクーを余所に僕は必死に当時の事を思い出す。 (´・ω・`)『…ここは…初めてクーとあった頃の…10年前のあの場所だ』 366 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:13:49.36 ID:E2RE4V3X0 過ぎ去った時は戻らない。 戻らない筈だった。 でも、僕は戻ってきた。 戻してくれたんだ。 クーが。【欠片】の力で。 o川#*゚ー゚)o『…ちょっと!! 聞いてるのっ!!』 クーは僕の両頬を掴み、自分の方に強引に向かせる。 そう言えば、この勝負はクーが何度も禁酒の約束を破る僕を心配して企画考案したものだった。 口調や行動に若さゆえの勢いこそあるが、 仲間思いな性格はこの時から変わっていなかった事を再確認して僕は嬉しくなる。 (´・ω・`)『そう言えば…』 【今】のクーの制服の背中にもおもちゃの羽が揺れている。 教師がうるさいってボヤいてたっけ。 o川*゚ー゚)o『む~。で、ちゃんと罰ゲームは考えてきたんでしょうねっ!?』 (´・ω・`)『罰ゲーム?』 反射的に答えつつも、僕の脳裏には当時の苦々しい思い出が甦ってきた。 368 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:15:24.29 ID:E2RE4V3X0 『僕と付き合ってほしい』 あの頃は…いや、この頃と言うべきなのだろうか? とにかく、僕は何度もその言葉を口にしようとした。 でも、出来なかった。 酒に酔わなければ包丁も握れない料理人には彼女は眩しすぎたから。 この時も僕は言おうとしていたんだ。 言おうとして彼女を抱きしめた。 『僕が勝ったら僕と付き合ってほしい』って。 それなのに…いざとなって口から出た言葉は 『僕が勝ったらそこのラブホテルで一晩僕のモノになれ』だった。 クーは顔を真っ赤にし、散々文句を言いながらもそれを了解した。 勝負の結果。 僕は負けた。 正直に言うと、まだまだ体はアルコールを受け入れる余地はあった。 でも、未熟な体に青ざめながらも無理矢理酒を流し込んでいるクーを見ていると このまま勝ったら自分が二度と立ち直れないような気がして…。 負けたフリをして寝てしまったんだった。 そして、僕は今。あの頃に戻ってきた。言うのは今しかない。 そう考えたから、クーは僕をこの時間に戻してくれたのだろう。 僕は決意を込めて口を開いた。 (´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』 369 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:17:11.23 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー( ゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーー舞台はバーボンハウスに戻る。 業務用冷蔵庫のモーター音が鳴り響くスタッフルームに俺様はいた。 【団長】と書かれた三角錐の置かれたスチール机に足を乗せ、 自慢の太い腕を組み目を閉じ座っている。 ときおり、安物の椅子が尻の下でミシミシと不平そうな声を上げた。 消滅する前にクーが必ず訪れる場所はどこか? それはココ、バーボンハウスしかありえないと言うのが俺様が出した結論だった。 直情型の内藤・天然暴走女・ギコの3人はただ静かに待つなんてのは絶対に出来ないだろうし、 この3人が動けば自然にまな板娘・ドクオ・Fカップの3人も動く。 ショボンは本来どんな時も冷静沈着な男だが、過去にクーさんと何かあったのか (まぁ、興味ねぇがな)今回ばかりは熱くなってたみてぇだ。 つまり、留守番役は自然と俺様の役目となるわけだ。 元々俺様は俺様自身と愛する家族の事。 それにスイーツの事しか興味がない。 そりゃ、クーさんが生き返ったと聞いた時は驚いたし嬉しかった。 会って礼の1つでも言いたいと思う。 だが、全てを忘れて走り出すまでに…?、と質問されればそうでもねぇ。 自分を見失わない程度に冷静さは保っているつもりだ。 374 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:19:09.71 ID:E2RE4V3X0 ( ゚∀゚)『……ハイン…』 俺様の口から無意識に愛する妻の名が漏れ出す。 初めてハインと出会ったのは、俺様がまだパティシエ修行中のパリ。 彼女は科学者になる為に大学に通いながら小さなカフェでアルバイトをしていて、 偶然俺様がその店に入った時豊かな胸をピアノの鍵盤に乗せて休んでいた。 その表情。雰囲気。声。 全てに惚れこんだ。 『おっぱいよりも君が好き』 気付いた時には気持ちを伝えていた。 今では愛する彼女との間に9人もの宝物に恵まれ、騒がしいながらも幸せな毎日を送っている。 何一つ憂い事などない。 …いや。 1つだけある。 子供を産むたび、ハインの豊かな胸は小さくなっていった。 俺はおっぱいも好きだが、ハインの全てを愛しているから不平などない。 だが、【衝撃!! AAカップが一週間でDカップに!!】と書かれた広告を見て 溜息をついているハインを見ていると、何とかしてやりたいと思う。 その願いも【欠片】の力を借りれば簡単に叶える事が出来るだろう。 376 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:20:09.05 ID:E2RE4V3X0 『あの素晴らしい乳をもう一度』 そんな事を考えながら、俺様はクーを待つ。 果報は寝て待て。 昔の人は本当に良い事を言った。 某団じゃあるまいし、足を棒にして捜すなんてのは意味がない。 ちょっと頭を回転させれば、果報なんてもんは葱と鍋背負って歩いてくるもんだ。 うはwww俺様天才wwwっうぇwwwww …もし、この完璧すぎる作戦に穴があるとすればーーーーーー。 ( ,,゚Д゚)『…こいつ、なにやってやがるんだ?』 (*゚ー゚)『…さぁ?』 俺様が待ちくたびれて寝てしまった事だけだろう。 ( ゚∀゚)『むにゃむにゃ…ハイン…愛してるぜ…』 379 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:21:22.79 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』 決意を込めた僕の言葉は想像していたよりも はるかにさらりと口から流れ出た。 自分が今どんな顔をしているか自分で見る事は出来ないけれど、 クーは目を点にして僕の顔を凝視している。 やがて、ようやく言葉の意味を脳が理解したのか一瞬にして赤面した。 o川*///)o『な、なに言ってんのよ!! バカショボン!!      罰ゲームの内容を言いなさいって言ってるでしょ!!      からかうの止めてよね!!』 (´・ω・`)『からかってなんかいないよ。それに飲み比べ勝負なんか意味がないんだ』 一度堰を切った僕の言葉は止まらない。 (´・ω・`)『君がそばにいてくれさえすれば、僕はいつだって禁酒してみせるよ。       お酒に逃げる必要がないからね』 o川*///)o『でも…でも…』 クーは俯き、困った様につま先で足元の小石を突付いている。 (´・ω・`)『僕は本気だよ。君を護りたい。…君を襲う不幸から君を護りたいんだ』 380 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:22:47.70 ID:E2RE4V3X0 o川*゚ー゚)o『で、でも、例えばさっ!!』 クーは思いもよらなかったであろう僕の告白に流されそうになる自分を 押し留めるように声を上げる。 o川*゚ー゚)o『例えばだよっ!! わたしが急な事故とか病気で死んじゃったらどうすんのさっ!!       そしたら今度はわたしを護れなかった事を後悔するんだよっ!!』 (´・ω・`)『それでも、可能性を捨ててしまうよりはるかにマシだ』 o川*゚ー゚)o『わ、わたしおばけになって出てくるかもよっ!!       枕元に立って毎晩お皿数えるかもよっ!!』 (´・ω・`)『それでも構わない。それならおばけの君を愛してみせる』 o川*゚ー゚)o『ででで、出切るワケないじゃない!! おばけと人間じゃ立場が違いすぎるよ!!』 クーは緊張しているのか回らない舌を必死に動かし、荒唐無稽な反論をしてきた。 (´・ω・`)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえだ』 僕はクーの両肩を掴み、真正面からその紫水晶色の瞳を見据えて言った。 ( `・ω・)『例え、君が幽霊でも幻でも関係ない。                             ('A` )       例え、明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない。                  (゚∀゚*)       クー。僕は君が好きだ。       この想いだけは伝えなければいけないんだ』 386 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:25:33.36 ID:E2RE4V3X0 ( ´・ω・)『……』                               ('A` )(゚∀゚*) (´つω⊂)ゴシゴシ ( ´・ω・)『……』                               ('A`*)(゚∀゚*)               ねぇ、クー。 o川*゚ー゚)o『な、なによバカショボン!!』               僕、目がおかしくなっちゃったのかなぁ。幻覚が見えるんだ。 僕の言葉にクーは背後を振り返る。そこに頬を赤らめる2人の姿を認めるとぷっと吹き出した。 o川*゚ー゚)o『あ~ぁ、バレちゃったか』 悪戯を見つかった子供のようにペロリと舌を出すと、クーは一歩僕から下がり離れる。 同時に背中のおもちゃの羽が白鳥のような翼に変わり、その場で身を翻すと 彼女の姿はルーズソックスの女子高生から純白のメイド服姿に【戻った】。 ( ´・ω・)『…クー』 川 ゚ -゚)『言いたい事は分かるが…なんだ、ショボン』 ( ´・ω・)『…時間を戻してくれたんじゃなかったの?』 僕の問いにクーは照れくさそうに答える。 川 ゚ -゚)『本当はそうしたかったのだが、流石に【欠片】でもそこまでは無理なようだ。      よって、私自身の姿をあの頃に戻して一芝居うたせてもらった。で、自分がバーボンを喰らった感想はどうだ?』 392 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:26:56.90 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『そ…そんな…』 その場にガックリ膝をつく僕に、ドクオとツーが駆け寄ってくる。 (*'A`)『あの…その…なんだか…フヒヒ、スイマセン』 (*゚∀゚)『それにしてもビックリだよっ!!      ショボンさんがクーさんの事をねぇ…。      なかなか熱い告白だったよっ!!      お姉さん見ててキュンとなっちゃったさっ!!』 (´;ω;`)『いやぁぁぁぁ!! 言わないで!! 聞きたくない!!』 僕は両手で耳を塞ぎ大声をあげる。そこにクーが割って入った。 川 ゚ -゚)『全くだ。2人とも、あーゆー場合はせめて隠れて見ているものだぞ』 その言葉で2人は僕をからかっている場合ではない事にようやく気がついたようだ。 揃って直立不動の姿勢をとり、クーに向き直る。 ('A`)『あ…クーさん…スイマセン、失礼しました』 (*゚∀゚)『それに…朝もゴメンなさい…まさか、また会えるなんて思ってなくて…      ブーちゃんがまた変な妄想始めたのかとばっかり…』 川 ゚ -゚)『気にするな。わたしも短絡的過ぎたと思っている。      本当なら今すぐ君達に抱きつきたい所なのだが、それより今は…』 そこでクーは言葉を遮った。 395 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:28:14.70 ID:E2RE4V3X0  (´・ω・`)川 ゚ -゚)('A`)(*゚∀゚)『……』 4人の間に不自然な沈黙が流れる。 しばらくしてドクオが胸ポケットから煙草の箱を取り出し、舌打ちとともにそれを握りつぶした。 ('A`)『くそ…タバコきれちまってるわ。ちょっと買いに行って来る』 そう言ってツーの手を引いて歩き出す。 (*゚∀゚)『ちょ…ドッ君!! こんな時に煙草なんてどうでもいいじゃないかっ!!      そんなに行きたければ一人で…』 ドクオはその言葉を無視して僕らに言った。 ('A`)『10分!! ぴったり10分で帰ってきますからね!!     どこにも行かないでくださいよ!!』 (*゚∀゚)『あ…そっか…』 ツーはそれでドクオの言葉の真意を理解したのか、素直にドクオに従った。 (´・ω・`)川 ゚ -゚)『……』 やがて2人の姿が見えなくなると、クーは僕の前に膝をつき肩に顔を乗せるようにして抱きついてきた。 先ほどとは全く異なる、ただひたすらに優しい抱擁だった。 396 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:28:58.51 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『ショボン…騙すようなマネをしてすまなかった』 耳元で囁くように言う。 (´・ω・`)『…いや。僕のほうこそありがとうを言わないといけないよね。       君がああしてくれなかったら、僕はいつまでたってもウジウジ悩んでいるだけだっただろうし』 答えながら僕はクーの腰にそっと手を回す。 川 ゚ -゚)『全くだ。君は考えすぎるんだよ。あの頃もそれが祟ってアル中になってたんじゃないか      考える必要なんてないんだよ。君はちゃんと言ってくれたじゃないか?』 (´・ω・`)『…そうだっけ。実は興奮しすぎて自分でなんて言ったか覚えてないんだ』 川#゚ -゚)『…この、バカショボン』 クーはそう言って僕の頭に軽い頭突きを当てる。 川 ゚ -゚)『アル中だから…立場が違うから告白できない。      過ぎ去った過去は戻らないから告白できない。      わたしが明日にはこの世にいない者だから告白できない。      そう言っていたのは君自身だぞ』 (´・ω・`)『…うん』 川 ゚ -゚)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえ。       わたしがが幽霊でも幻でも関係ない。       明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない…か。       嬉しかったぞ。これで安心して死ねそうだ』  398 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:30:05.18 ID:E2RE4V3X0 (´・ω・`)『…悲しくなる事言わないでくれよ       僕はこれから心の中でしか会えない君を愛し続けながら生きなきゃならないんだぞ』 川 ゚ -゚)『…すまない。      しかし、逆に言えば何時でも君の心の中でわたしは君に会えるという事だな?』 (´・ω・`)『ふふ…そうだね』 川 ゚ -゚)『…わたしは死んでいる間、ずっと寂しい思いをしてきたと【欠片】は教えてくれた。      しかし、皆の心の中にわたしがいて。わたしはいつでも皆に会える。      そう考えると次の死は寂しくなさそうだ』 (´・ω・`)『…うん』 川 ゚ -゚)『想う心は力になる。      不可能を可能にし、可能を不可能にするほどの力だ。      それを忘れないでくれよ』 それから。僕ら2人の間に言葉は要らなかった。 僕はただ、ただクーを抱きしめた。 この感触を忘れぬように。 この温もりを忘れぬように。 程なくしてクーが名残を惜しむようにそっと僕から離れる。 立ち上がると、すぐそばの茂みを睨みつけ言った。 川#゚ -゚)『ぴったり10分経ったぞ。そこで隠れている2人出てこい』 400 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:31:35.22 ID:E2RE4V3X0 ーーーーーーーーーーーーーー(*゚∀゚)('A`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ('A`)『ほら、言ったじゃねーか。やっぱり見つかった』 (*゚∀゚)『にょろ~ん』 わたしはクーさんの真似をしてペロリと舌を出してみせる。 ドッ君はそんなわたしにはすでに慣れっこなのか…半分諦めたのか。 溜息を1つ吐き出して立ち上がった。 ('A`)『…もしかしてバレバレでした?』 川 ゚ -゚)『うむ。今のわたしは【欠片】の力で全能に近い力があるからな。      (…それに茂みの影からドクオのガイルヘアーが丸見えだ)』 (*゚∀゚)『すごいねぇ。生きてた時も凄かったけど…      昔のクーさんがツイストサーブなら今のクーさんは波動球って感じさっ!!』 (;´・ω・)'A`)『……?』 全国80万人の腐女子大爆笑モノのわたしの例えは どうやら男2人には伝わらなかったらしい。 1人クーさんは首を縦に振って納得していた。 ('A`)『そんな事はどうでも良いんだけどよ…。 ショボンさん、クーさん。話は終わりましたか?』 そうだよ!! それが一番大事なんじゃないかっ!! ドッ君、話がすぐ脱線するのは君の悪いクセだよっ!! 川 ゚ -゚)『あぁ。おかげさまで全部終わったよ』 402 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:32:56.57 ID:E2RE4V3X0 ('A`)『そうッスか…』 (*゚∀゚)『そう…』 …。 う…。 うぅ…。 川 ゚ -゚)『?』 ( ;A;)(*:∀;)『うぇぼおぇあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ』 川;゚ -゚)『!?』 これ以上我慢する必要がないと分かった途端。 突然涙が溢れ出してきた。 『日本語で(ry』と言われそうな奇声を漏らしながらクーさんの胸に飛び込む。 ( ;A;)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……クーさん…俺…俺…』 (*;∀;)『クーさぁぁぁぁぁぁん…本物のクーさんだぁぁぁぁぁぁぁぁ…』 涙と鼻水と涎でべったりと染みを作りながら、わたし達はクーさんに抱きつく。 ひたすら泣きじゃくるわたしの髪をクーさんは優しく撫で続けてくれた。 406 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:33:58.92 ID:E2RE4V3X0 どれ程の時間そうしていたか全く分からない。 ちょうどクーさんの胸に顔を埋めていたわたしは、クーさんのおっぱい柔らかいなぁとか考えていた。 昔、どっかのおっぱいバカが     ( ゚∀゚)『高速道路を走ってる時、窓から手ぇ出すわけよ。          そん時に感じる風圧はおっぱいの感触と一緒なんだぜ』 とか、自慢げに語っていたっけ。 いつまでも流れ続けていると思っていた涙は 泣きじゃくる子供をあやす様なクーさんの優しさのおかげで少しづつ止まっていった。 ドッ君はとっくに泣き止んでいたみたいで、 わたしに背を向けるようにしてタバコを吸っている。 きっと、その顔は酷い様になっている事だろう。 川 ゚ -゚)『ようやく泣き止んでくれたか。      このままわたしの時間が終わったらどうしようかと思ったぞ』 (*;∀;)『へへ…申し訳ないっさ…』 川 ゚ ー゚)『うん。やっぱりツーは笑顔が一番だ。      怒り顔や泣き顔にも魅力はあるが、わたしが一番見たかったのはその笑顔だからな。      見れてよかったよ』 その他愛もない一言に、わたしの涙腺はこれでもかと緩む。 でも、わたしはクーさんに自分の笑顔を出来るだけ見てほしくて必死にそれを堪えた。 クーさんは、いつも見せていた静かな微笑みでわたしを見ていてくれていたけど、 急に真顔になると申し訳なさそうに口を開いた。 川 ゚ -゚)『…すまない。お前達とこのまま話していたいが…わたしの時間もそろそろ残り少ないようだ』 410 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:35:18.53 ID:E2RE4V3X0  (*゚∀゚)('A`)『え!?』 その言葉を聞いたドッ君は手から煙草を落とし、振り返った。 やっぱりその目は限界異常に涙を搾り出したせいか、真っ赤になっている。 (*゚∀゚)『いや!! このまま一緒にいてくれなきゃ嫌さっ!!』 クーさんがどこかに行ってしまう。 ここじゃない何処か。わたし達じゃない誰かのところに行くのか? それとも、【欠片】の力が消滅しようとしているのか? 分からないけど、とにかくわたしは駄々っ子のようにクーさんの言葉を否定した。 (*゚∀゚)『…ずるいさっ!! ショボンさんの時はあんなに長い時間一緒にいたのに、      わたし達の時はこんなに早く打ち切りなんてあんまりさっ!!      一緒に遊ぼう!! 帰りの鐘が鳴るまで一緒に遊ぼうよっ!!』 ('A`)『…ツー。駄目だ…駄目なんだ…』 ドッ君がすっとクーさんの翼を指差す。 (*゚∀゚)『何が駄目なんだいっ!! ドッ君はクーさんと一緒にいたk…』 そこでわたしの言葉は止まった。 クーさんの真っ白な翼。それは今では色を失いつつある。 ぼんやりとそれに隠れて見えないはずのブランコを見る事が出来た。 川 ゚ -゚)『すまない…わたしの時間もそろそろ残り少ないようなんだ…』 クーさんはもう一度そう言った。 413 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:37:35.89 ID:E2RE4V3X0 (*゚∀゚)『でも…でもっ!!』 わたしだってここは簡単に引き下がる事は出来ないよ。 この機会を逃したら、クーさんとはもう二度と…もう二度と…。 (*゚∀゚)『わたしはもっと…もっとクーさんと一緒にいたいんだよっ!!      一緒にお話したいんだよっ!! それ位…それ位いいじゃないかっ!!』 ('A`)『…ツー。クーさん自身の事はクーさんが一番よく分かってる筈だろ?     俺ももっとクーさんと一緒にいたい…でも駄目なんだ…』 (#*゚∀゚)『駄目なんかじゃないさっ!!      そんならショボンさんにあげた時間を少しわたし達にくれればよかったじゃないかっ!!      そんじゃ何かいっ!? クーさんはわたし達よりショボンさんが大事だったとでも…』 川 ゚ -゚)『それは違う!!!!!』 一喝。 それまで聖母の様に優しかったクーさんのいきなりの大声にわたしの頭は一瞬で覚める。 川 ゚ -゚)『お前達2人との関係は…死んでからも何一つ悔いの残るものではなかった。      上司と部下。年齢も離れているにも関わらずこのような関係を築けた事をわたしは誇りに思っている。      だが、世の中には死んでからも心配で目が離せないお子様がいるんだ。      そこにいるショボクレ眉毛や…』 クーさんはちらとベンチに座って一人空を見上げているショボンさんを見てから言葉を続けた。 川 ゚ -゚)『…今もわたしを探してこの街のどこかを走り回っている男のような、な』 418 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:39:53.44 ID:E2RE4V3X0 (*゚∀゚)『……!!』 悔しい。 ただひたすらに悔しい。 こんな事なら、クーさんが生きている間にもっと困らせてやればよかった。 ('A`)『…』 川 ; -;)『すまない…本当にすまない…。      わたしだってお前達と一緒にいたい。      この稀有な力を使って、お前達が考えている【世界中の男が全員ドクオになる計画】や      【透明人間になって女湯突撃】なんて遊びが出来たら楽しかったと思う…。      でも…わたしは行かなくてはいけないんだ。      この限りある命を…一度きりの奇跡を失うわけにはいかないんだ…』 悔しい。 ただひたすらに悔しい。 でも。 (*;∀;)『…分かったよ、クーさん』 川 ; -;)『……!! ツー…』 ( ;A;)『…行って下さい、クーさん。こいつには俺がいます。     でも、クーさんを必要としている奴がいるんです』 クーさんは頷き、今や半透明になるつつある翼を大きく広げると ふわりと空に羽ばたいた。 421 名前: 美容師見習い(埼玉県) 投稿日: 2007/03/19(月) 23:41:19.18 ID:E2RE4V3X0 川 ゚ -゚)『ツー!! 1つ言い忘れていた事がある!!』 この公園で一番高い木と同じくらいまで上昇したクーさんが叫んだ。 川 ゚ -゚)『この機会を失ったら、わたしとは2度と会うことは出来ない。      お前はそう思ったようだが、それは違う!!      わたし達はこれから何時でも会う事が出来るんだ!!      ショボンに聞け!! ショボンが全て知っている!!』 そう言うとクーさんは再び上昇を開始する。 その姿が点のように小さくなっても、ついに後ろを振り返る事はなかった。 (´・ω・`)『…行っちゃったね』 いつの間にかわたしの後ろに立ったショボンさんが言う。 (´・ω・`)『…僕らも行こう。       クーは必ず最後にはあそこに来てくれる筈だ』 わたしは青空を見上げながら頷く。 そして、愛しいダーリンに振り返り言った。 (*゚∀゚)『心配かけてごめんさっ!! …ところで【透明人間になって女湯でウハウハ計画】って何?』 [[5>料理人5]]

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