※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 確かにさぁ、自分でも、馬ッ鹿じゃない?とか、思うわけよ。
 瀕死の自分を救ってくれたとはいえ、見ず知らずのオトコにくっついて行くなんてさ。

「だから、そのあたしをやったドッピオってやつは相当ヤバイ!っつーかさ」

 おまけにさっきから、あたしが独りで喋りまくってるって、この状況よ。
 死体を背負ったそのオトコは、初めに言葉を交わしたきり、口を閉ざして歩き続けている。

「だからさ、みんなで協力して、その、なんつーかさ、そいつを・・・」

 でもさ、よく見たらコイツ、案外イケてるじゃない? 東洋人?だと思うんだけど。
 なんつーか、つまり、あたしの『タイプ』ってゆうかさ、きゃっ!(髪型は変だけど)

「ブッ倒すってゆーかさ・・・せめて、無力化できれば・・・」

 にしてもコイツ、あたしの話なんか聞く耳もたないってワケ?
 エルメェスって名前がそんなに変? だったら正直にそう言いなよ。

「それに、あたしはアンタに助けられたって『恩』もあるし・・・ねえ」

 気まじぃ~! つうか、ホント馬鹿みたいじゃない? くそっ、いい加減ムカついてきた。
 だけどそのとき、あたしは妙なことに気がついた。あれ、コイツ、何かオカシくない?

「あんたさ、その足の『傷』・・・すげぇ『痛そう』なんだけど」

 オトコの右足には、血のにじんだ布切れが巻きついている。
 すっごく!ってわけじゃぁないけど、死体一つ背負った状況では、歩くのが辛くないわけがない。
 あたしの傷を治したコイツの能力! それさえ使えばこんな傷くらい簡単に直せるんじゃない?



「なんで、『治さない』わけ? あ! あんた、ひょっとしてマゾ? マゾヒスト?
 痛いの大好き? ・・・な~んちゃって!」

「治せねぇのさ、それが俺のスタンドの限界だ」

 うおっ、やっと喋った! 自分で話しかけといてなんだけど、ちょっとビビッちまったぜ。
 しかもこいつ! あたしの『話』を聞いてやがった! 聞いてないフリしやがって!
 そうじゃなきゃなんで、あたしに『スタンド』の話なんかフツーにしちゃってるわけ?

 とはいえ・・・この『冷静さ』はむしろ、ありがたい要素だ。コイツずっと泣きっぱなしだから、
てっきり純情系のお坊ちゃんかと思ったけど。『冷静』じゃなきゃ、この先の戦力にはならない。

「自分の受けた傷は、たとえカスリ傷でも治せねえ。
 それから・・・死んじまったもんは、たとえ無傷でも元には戻せねぇ。」

 オトコは、まるで自分を責めるかのように、小声でつぶやいた。

「へぇ~、そうなんだ。でもさ、他人の傷を治せるってだけでも、十分すっごい能力だと思うわ。
だから、是非あんたに、チカラになって欲しいのよ、ドッピオを倒すために!」

「それは、分からねえな」

「へ、なんで? だってそいつは、すっげえ危ないヤツなのよ? アンタの仲間だって・・・」

「もちろん、俺の仲間に手を出したなら話は別だぜ。だが俺は、理由のない戦いはしねえ。さっき、
オメェに会うまえに、そう決めたんだからよ。これからもしほかの『参加者』に会ったら、そして
そいつが『傷ついて』いたら、俺はそいつを『治す』! さっきのオメェと同じようにな・・・。
たとえそれが、オメェの言う『ドッピオ』であったとしてもだ」

な、ナニ言いだしてんだコイツ!?



 *********

 時間は・・・1時間ほどまえにさかのぼる。

 見知らぬ男の遺体を背負って自宅を出た仗助は、霊園へと向かうべく西へと歩いていた。
 足の痛みは気にならなかった。そんなことより、自分の不甲斐なさに打ちのめされていた。

「あのとき・・・もっと『冷静に』鳥公の攻撃を『分析』してればよォ・・・
最初っからC・ダイヤモンドで撃ち返してやれたんじゃねえのか?」

 独り言のようにつぶやきながら、仗助は背中に担いだ遺体のことを思った。

「そうすりゃあ、コイツも死なせずに済んだんだ・・・」

 もう死者は出したくない・・・特に自分の目のまえで人が死ぬのはまっぴらだ。

「俺に足りねえのはよォ、『冷静さ』ってやつだ・・・泣いてる場合じゃねえ・・・」

 背中の男の埋葬を済ませたら、まずは父親であるジョセフ、そして友人の億泰や康一を探さなくて
はならない。そしてその後は、『アラキ』を見つけることだ。この『ゲーム』を作り出した『アラキ』
を探しだしてブチのめす! そうすれば、この『クソゲーム』からも脱出できるだろう。

 行動方針が決まるにつれて、仗助の心は少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。しかし、

「えーミンナ聞こえてるかナ?」

「な、なんだってエぇぇぇぇぇぇ!?」

 仗助の背中で、死んだはずの男が喋りだした!

「それジャアただいまカラ一回目の放送を行いマ~ス」

 ときおり喉がつっかえたように声を裏返らせながら、男は喋り続ける。

「てめ~! この野郎! ふざけてんじゃねえぇぇぇぞおぉぉぉ!」

 仗助は男の胸ぐらをつかむと、ありったけの声で叫んだ。

 男はやはり生きていたのか? いや、それはありえない。自分の背中でだんだん冷たくなっていく
遺体の重さを、仗助は痛いほどに感じていた。男はすでに死んでいる、それは間違いない。

「ふざけんじゃねえっつってもよおぉぉぉ! それは『アラキ』!テメェのコトだぜえぇぇぇ!
 ひとの死体をもてあそぶような真似しやがってよおぉぉぉ・・・!」

 ひとたび抱いた『希望』が砕かれるとき、人は『絶望』に襲われる。
 たとえそれが、ほんのつかのまの『希望』であったとしてもだ。

 男の遺体が喋り始めたとき、仗助は一瞬『希望』を抱いた。
『ほんのちょっぴり』だが、「こいつまだ生きてたんじゃねーか」と思った。
 その一瞬の『希望』が、仗助の心に致命的な『絶望』を植えつけた。

 だが、仗助の精神は絶望を『怒り』に変えた。しかもそれは、さきほどまでの自分を責め続けるよ
うな捩れた怒りではなく、もっと真っ直ぐに憎むべき相手へと向けられた『激情』だった。

「なんでか分かんねえけどよー、この男の声ならはっきり覚えてるぜ。懐かしく耳の奥に残って離れ
ねぇっつーかよー。それに『アラキ』!テメェのそのドブネズミみてぇな声もな!」

 しかし、衝撃はそれだけに留まらなかった。



「・・・ゴン、黒騎士ブラフォード、ジョセフ・ジョースター、ストレ」

「な、なにっ! まさかっ!」

 驚愕のあまり仗助は、もう少しで男の遺体を取り落とすところだった。

「いま並べてんのは死人の名前・・・テメェ確かそう言ったよなぁ!」

 嘘であってほしい、あるいは自分の聞き間違いであってほしい、と仗助は思った。

「ホントに死んだのか!?・・・ジジイは・・・ジョセフ・ジョースターは!
 本当なのか!? どうなんだ! どうせ聞えてんだろ!? 答えやがれ『アラキ』!」

「・・・られることはないから、ゆっくり眠ってほしい」

 激しい怒りから、奈落のような悲しみへ。仗助の心は耐え難い振幅で揺り動かされた。
 なぜ自分は、この男を助けられなかったのか? なぜ自分は、父親を守れなかったのか?
 答えなどあるはずもない絶望的な問いかけが、彼の心をかきむしる。

「『冷静さ』だ・・・重要なのはよぉ・・・そこんとこだぜ・・・」

 事実、仗助は自分でも驚くくらい『冷静』だった。激情の果てに心を打ち砕かれ、『絶望』の底に
投げ込まれた者だけが得ることのできる、氷のように冷たい『冷静さ』が彼を支配していた。

 いや、それはむしろ『冷徹さ』と呼ぶべきものだろうか。

「・・・ず、この3箇所にしました」

「俺はよおぉぉぉ・・・テメェの『ゲーム』には乗らねえぇぇぇぜ・・・今後一切、だ」

 喋り続ける遺体に向かって、仗助は言った。

「テメェの『企み』が俺たちを『殺し合わせる』ことだってんならよおぉぉぉ! 
 俺はその『企み』を打ち砕く! テメェを『絶望』のまっだなかでブッ倒すためにな!」

「・・・台無しにしようとしたり、ね」

「無意味な殺し合いをしねえのは当然として、ほかのヤツらにもそれをさせねえ。・・・もちろん、
テメェの『ゲーム』に乗ってるヤツらはブチのめすがな・・・それも、殺さねえ程度にだ。そして
なにより・・・傷ついて死にかけてるヤツがいたら、その場で俺がすべて『治す』! 俺の目の前
で誰かが死ぬのは、もうまっぴらだからよおぉぉぉ」

 仗助の顔は蒼白だった。再び流れだした涙も、彼の心にうるおいをもたらすことはなかった。

「じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね―――」







 *********

「ちょっと待てオマエ! もしそいつがオマエに『敵意』をもったヤツだったらどうすんのよ!」

「そんときはよぉ、改めてブチのめすまでだぜ」

 オトコはまた、独り言のようにうつむき加減のまま続ける。

「『相手かまわずブチのめす』ってことはよぉ、この『ゲーム』に乗るってことだろ? それはでき
ねえ。俺は、この『ゲーム』には絶対に乗らねぇ。その『ドッピオ』ってヤツが、この『ゲーム』に
『乗ってる』ってんなら、オシオキしなきゃならねえが・・・いまんトコその証拠はねえしな」

「な、なに言ってんだ! そいつはあたしを騙して殺そうとしたんだぜ!」

「それはよぉ、テメェにビビッて逃げだした、っつーふうにも取れるよなぁ」

 オトコは背中の死体を担ぎ直すと、地面だけを見て歩みを続けた。

「とにかくよぉ、俺はこのジジイを埋葬して、それから仲間を探すぜ・・・」

 コイツ・・・! 何かものすごく『思い詰めて』いやがる!
 背中の死体を『ジョセフ・ジョースター』(とかいう老いぼれの父親)と混同するくらいに!
 だがっ・・・! 『思い詰めて』はいるが、ものすごく『冷静』だ! 矛盾しているようだけど、
それは認めなくちゃならない。それに、コイツの全身から感じる『覚悟』の力強さ! この『冷静さ』
と『覚悟』には、ドッピオに対するあたしの『恐怖』を和らげてくれる『何か』がある!

 ドッピオがビビッて逃げだしたってのは、客観的に見れば、その可能性は十分にあった。
 あたしが磔にしたとき、ヤツは用を足し終えた『直後』だったのかもしれないし、スタンドを隠し
ていたのだって、『慎重さ』の現われと理解できなくはない。あたしが突然スタンドで攻撃しようと
したから、『反撃』しただけかもしれない。状況証拠だけなら、どちらとも判断できる。

 確かに、直接相対したときのあの変貌ぶり、それにあの『凶悪さ』は絶対にヤバイ!

 でも、たとえ主観的に感じた『恐怖』が本物でも、コイツの分析が的外れってワケじゃあない。
 むしろ重要なのは受け止めかただ・・・感情に流されず、かといって決め付けない。
 むしろあたしのほうが、致命傷を負わされて少しパニックになっていたのかもしれない。

 あたしはオトコの(正しくはオトコの背負った死体の)背中を見送って、しばらく立ち尽くした。
 コイツこそ、目の前で人が死に、身内を殺されてなお、ここまで『冷静』でいられるものなのか?

 正直、このままこのオトコに付いて行っても、仲間に引き入れるのは難しいかもしれない。
 だが、このオトコの『冷静さ』と『覚悟』・・・! それはこの先どんな状況に陥っても切り抜け
ていける『精神』の強さのあかしだ。『傷を治す』って能力だけじゃあない この馬鹿げた『ゲーム』
から脱出するために必要なのは、なによりもまずこのオトコのような『精神』の強さ!

 仲間になるにしろならないにしろ、こういう人間を死なせてはならない。
 だから、あたしはもう一度その男(たぶんナントカ・ジョースター)の後を追った。



「あたしは!アンタに命を救われたっていう『恩』がある!」

『恩』ってのはつまり、相手に借りがあるってことだ。『仇』とは別な意味でね。

「その『恩』を返すまでは、アンタのそばを離れるわけにはいかない!」

 コイツがどれだけ強いのか知らないが、太股に傷を負ったうえに死体を背負ったままでは、誰かの
標的にされる可能性が高い。だがどんな危機に陥ったとしても、コイツは『埋葬』を諦めないだろう。
『自分の傷は治せない』ってのが、コイツの『自己犠牲』的な性格を表している。

『恩』には必ず報いなくちゃならない!『仇』が復讐によって晴らされなければならないように!

 仲間になれるかどうかってのは、とりあえず後回しよ。
 コイツが背中の死体の埋葬を終えるまで、あたしがコイツを守る!

「勝手にしろ・・・」



【住宅地(G-02)/一日目/朝】
【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[状態]:良好
[装備]:ライフル
[道具]:ドル紙幣等に加え、大量の石ころ
[思考・状況]
1:霊園まで仗助を守る(その後、できれば仲間に引き入れたい)
2:ほかの誰かにもドッピオの秘密を伝える(二重人格であることは知らない)
3:2のためにも、ジョリーン、F・Fと合流する

【東方仗助】
[スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド
[時間軸]:四部終了時
[状態]:悲しみと荒木への強い怒り、右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み・
    歩行に少し影響)、ジョセフの遺体を担いでいる。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、小型時限爆弾、スコップ
[思考・状況]
  1:背負っている男(ジョセフ)を霊園に埋葬する
  2:億泰たちを探す
  3:打倒荒木!
  4:傷ついている参加者がいたら、とりあえず『治す』

[備考1]:仗助は「荒木は自分たちの声を聞くことができる」と推測しています。(根拠なし)
[備考2]:仗助は、禁止エリアについての情報を聞きましたが、メモは取っていないようです。
[備考3]:仗助は過去に名簿を見ましたが、ドッピオの名前の有無はいまは意識にありません。

投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

54:ドッピオ、兄貴から逃げる 東方仗助 74:相思となり真実を隠す
54:ドッピオ、兄貴から逃げる エルメェス・コステロ 74:相思となり真実を隠す