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 まもなく杜王駅、という所でセッコは微かな違和感を感じた。
 セッコの原始的で鋭い聴力を持ってしても聞き逃してしまいそうな小さな音。
(一応警戒しながら移動してラッキーだったぜェ。これって気のせいかなぁ~前の方で微かに物音がしてるだよなぁ~。行ってみるか)
 セッコは音源に向かって地面の下を慎重に泳ぐ。

 音源の真下に辿り着いたセッコはさらに深い違和感を覚えた。
 今、セッコが感じている違和感は、先ほどから聞こえるの『音』に対してのモノではない。
 この『音』は今までに何度も聞いた事があるので『音』の正体も予想できる。
 奇妙なのはこの『音』の『範囲』がいやに狭いことなのだ。

 セッコは考えるよりもさきに行動する原始的な男。音の正体が掴めないまま、無用心にも地面から顔を出してしまった。

「やっぱり雨か……だけど変な雨だなぁ。この家の敷地にしか降ってない。敷地外は晴れてやがる」
 セッコが顔を出した場所、そこは極一般的な民家の庭だった。
 シトシトとかなり弱い雨が降っている。奇妙なのは雨の範囲、家の敷地内という極狭い範囲にしか雨は降っていない。
 敷地外は雲一つなく星が瞬いている。

「セッコ……見たところ、地面に潜る能力か」
 何者かに名前を呼ばれた。玄関の方からだ。

「誰だッ」
 玄関の前には男がいた。形容し難い妙な頭(帽子か?)には角が生えている。
「ウェザー・リポートと呼んでくれ」
「……そんな奴知らねえぞ、そッ組織の野郎かあ?なんでオレの名前知ってんだ」

 ウェザー・リポートと名乗る男は無言でオレに一枚の紙を差し出した。
 『紙なんておもしろくねえしいらねえよ』と思いつつ紙を見てみる。
 なるほど、疑問は全て解決だ。

「オレの支給品、顔写真付き名簿だ。さっ、見たなら返してくれ」
「誰が返すかよ。こんな便利なもん」
 オレとウェザーの間に不穏な空気が流れる。
 そりゃあ返すのが当然だろうよ。オレだってそれぐらいのことはわかるぜえ。だけど欲しいんだよ。
 便利じゃねえかこれ。
 ウェザーの野朗が睨んでいるが、知るか!殺してやるぜ。

 しばらく続いた一触即発の沈黙の中、ウェザーは静かに話し出した。

「オレがなぜこの家の敷地だけに雨を降らしているかわかるか?
 ほかの参加者と接触したかったからだ。おまえのような注意深く賢い人間にこの奇妙な雨を発見させてな……
 オレはこの状況で最も危険なことは、一人で行動するということだと思っている。
 だからこそゲームが始まってからずっとこの家に引きこもって接触を待っていたんだ……わかるか?何事においても共闘者は必要だ。
 そしてオレは賢いおまえに意見を聞きたい。この異常事態、君ならどう乗り切る?」

 このオレ、セッコは呆然としていた。こいつそこまで考えていたのか。
 しかし、最後の質問は馬鹿だ。そんなもん決まってるだろ!そこまで深く考えることじゃねえ。

「殺しまくって乗り切るッ!」
 ウェザーは再び沈黙した。苦い顔をしている。

「どうした。ウェザー、もう言うことないのか?じゃあ殺すぞ?」

「仮に今からオレとおまえが戦うとしよう。おまえはもちろん自分が勝つと思っているみたいだが、オレだってそう思っている。
 単純に考えて、相手を殺して生き残る可能性は、つまり勝つ可能性は、お互い二分の一ってとこだ。
 しかし、仮にオレと君が一時的に仲間になり互いに協力し合うとしよう。この場で生き残る可能性はもちろんのこと、
 ゲームを乗り切る可能性だって上がると思わないか?」

「話長いんだよッてめえはよぉ!……何が言いたいんだよおッ?」
「戦うのは止めた方がいい。同盟を結ぼう。ただし、第四放送までの同盟だ」

 ……同盟か。えっと、どうすればいいかな?ウェザーの言う事にも一理あるような気がする。
 それにこいつはチョコラータ並に賢そうだし、強そうだ。こいつの言う事聞いていれば安心かも……。

「一つ質問するぜえ。第四放送が終わったらオレはおめえを殺してもいいんだな。同盟終了ってことだな?」
「そうだ」
「それともう一つ質問、角砂糖持ってるか?」 

 ウェザーが不審がっている。
「角砂糖はないが、普通の砂糖ならあるぞ。この家の物をくすねたんだ。塩もある。両方とも量は余りないが……」
「角砂糖持ってないなら同盟の話はなしだ」

 ウェザーは驚いている。信じられないという目付きだ。
 ほっとけよお。角砂糖好きなんだよ。

「じゃあな。おまえ、賢いし強そうだから気に入った。だから見逃してやるよ。この写真付き名簿はもらうがな」
 オレはウェザーに背を向け家の敷地を出た。空がかなり白んできているのに気づいた。もうすぐ放送かな?

「待てッ!」
「なんだよお。戦いたいのか?」
 オレはいかにもめんどくさそうに振り向いてやった。

 ウェザーが何かしている。大さじ一杯ぐらいのさらっさらの砂糖を玄関前のコンクリートの上に置いている。
「オレのスタンドは天候を操るスタンドだ」
 だから何だっつうの。さらさらの砂糖にもてめえのスタンドにも興味ねえっての。

「まずこの極普通の砂糖を霧雨で充分に濡らすッ!」
 ウェザーの野郎、何がしたいんだよ

「次に水で熔けてしまった砂糖を冷たくて乾燥した風で冷やし、カチッコチに凍らせるッ!」
 うおぉッ!何か、なんか分かってきた。

「最後に風を駆使して凍らせた砂糖を立方体に削るッ!」
「うおおう!うおっ!」
「角砂糖できたぞ。本物の角砂糖と比べるとやはり劣るだろうが、これで我慢してくれないか?」

 *  *  *


 奇妙な男だ。そんなに角砂糖が好きなのか。
 初めはこんな男と同盟なんてとても無理だ、とも思ったんだが、付け入る隙があって良かった。

 『殺しまくって乗り切るッ!』
 この発言からして、セッコは危険な男だ。根っからのマーダーだ。しばらくはオレが見張っていなければならない。
 第四放送まで協力関係でいられるだろうか。
 砂糖がなくなってしまえばじきに裏切りそうな気がする。そうなる前にオレがセッコを裏切り、殺す必要があるかもな……。

「行くぞッ!セッコッ!」
 スタンドが発生させた突風に乗せ簡易角砂糖を高速で打ち出す。
 セッコは超高速のライナーを、メジャーリーグの名ショートも驚愕する程見事にダイビングキャッチする。ただし口で。

 歯が折れるんじゃあないか?と心配したのだが、角砂糖をあげないといじけるし、あげた方が素直に言う事を聞くのであげ続けることにした。
 いや、実を言うと今は角砂糖をやる必要はない。
 角砂糖を使って顔写真付き名簿も返してもらったし、同盟についても硬く約束させたのだから。
 むしろ今は角砂糖をあげない方がいい、砂糖の量は限られているからだ。
 砂糖だけがオレとセッコを結び付けている、と考えた方がいいだろう。有効活用しないとな。

 ではなぜオレがセッコと角砂糖遊びをひたすら続けているのかと言うと、これまた奇妙なことなんだが……

「セッコッ!こいつは取れるかッ!手を使っちゃ駄目だぞ!」

 この角砂糖遊びが、なかなか楽しいからだ。セッコはどこに角砂糖を投げようが確実にキャッチする。
 なんだかセッコの角砂糖に固執する気持ちが分かってきたような気がする。

 それはともかくまもなく放送か?徐倫達は無事だろうか……



【角砂糖同盟】

【杜王駅近くの民家(F-3)/一日目/早朝】
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ブチャラティ達と闘う前
[状態]:仗助のラッシュの痛みをかすかに感じるが問題は無し
[装備]:オアシスのスーツ
[道具]:支給品一式・スーパーエイジャ
[思考・状況]
 1)角砂糖遊びに夢中(でもやっぱり本物の角砂糖の方がいい)
 2)ウェザーと第四放送まで同盟(今の所裏切るつもりはない)
 3)会った奴は倒す
 4)ウェザーは(チョコラータ程ではないが)好き
 5)仗助と会ったら決着をつける  
 6)ゲームで優勝する


【ウェザー・リポート】
[スタンド]:『ウェザー・リポート』
[時間軸]:ヘビー・ウェザー習得直前
[状態]:健康
[装備]:簡易角砂糖、砂糖を入れた袋(砂糖の量は少ない)
[道具]:支給品一式・顔写真付き名簿・少量の塩
[思考・状況]
 1)角砂糖遊びに夢中(砂糖を節約すべきだとは思っている)
 2)角砂糖を使ってセッコを利用する
 3)セッコと第四放送まで同盟(セッコに裏切られる前に裏切る)
 4)セッコを見張る
 5)徐倫達を探す 
 6)プッチ神父を警戒
 7)打倒荒木

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39:『オアシス』を求めて セッコ 65:その石の秘密と、希望
ウェザー・リポート 65:その石の秘密と、希望