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「てめぇ、どういうつもりか知らねぇが、事と次第によっちゃあただじゃあ置かねぇぞ!
 こちらと虫の居所が悪いんでな! ……って……!」
「いやいや、そう怒らないで。話せば分かるから、って……!」

――杜王町の住宅街の一角、東方仗助の家。
互いの素性を知らず出会った2人は……そしてすぐに気がついた。
それぞれの首元に、きっちり嵌った忌まわしい装身具。彼らにこの状況を強いる『荒木』の強制力。
『首輪』。
仗助の険悪な表情が、一種また異質なものに変わる。
と、いうことは……目の前のコイツも、スタンド使いということか? 仗助は警戒しつつも一歩踏み出す。

「……てめぇも『参加者』か。
 だが、だからって、土足で他人の家を漁っていい理由にはならねぇよなァ……!
 いや、俺がおめーをボコボコにしてやっていい理由にはなるか……!?」
「あー、いや失礼。僕ちゃんホラ、気がついたらいきなりコノ部屋の中にいてさァ~!
 悪気は無かったんだって! いやホント!」

ジョセフはおどけながら謝る。謝りながら頭をフル回転させる。
なんだか知らないが……コイツは、『ヤバい』。
見たところ武器も持ってないただのガキだが、何と言うか、全身から『ヤバい』雰囲気を漂わせている。
ましてや、コイツがこの家の住人だと言うのなら、ここは奴のホームグラウンドであるわけで……
マズい。家の裏口を確認してない。目の前の青年が入ってきた玄関方向しか、出口らしい出口を知らない。
すなわちジョセフの最後にして究極の策、『逃げる』ができない!
作り笑いを浮かべながらも焦りまくるジョセフに、仗助はポキポキと拳を鳴らしながら。

「ほぉ~~。すると何か?
 お前さんはこの部屋に『飛ばされた』後、ワザワザ靴脱いで家から出て、靴履いて入り直したってのか?」
「……!!」

東方仗助。頭に血が昇っているように見えて、案外冷静。否、頭に血が昇っている時こそ頭の回る男。
しっかり気付いている。家の中、玄関から入っていく足跡しか無いことに、気付いている。
ジョセフの口からでまかせの嘘を、見抜いている。大股で歩を進める仗助は、そのまま拳を振り上げて。

「覚悟はできてるんだろうなァ、この嘘つきドロボウ野郎ッ! その顔面、変形させてやるぜ!」
「……あッ! 窓の外に、変な生き物が飛んでるっ!?」
「っ!?」

ここまでの緊張を全て無視した素っ頓狂な声に、一瞬注意を逸らされて
ジョセフの視線を追ってチラリと窓の外を見た仗助は、次の瞬間、相手の拳が迫ってくるのを見る。
あまりに下らな過ぎる、しかし効果的な策。避けきれない、と見た仗助は、咄嗟に自分も拳を突き出す。
相打ちのように、ジョセフのパンチと仗助の拳が互いを打って――!

「「!?」」

パシンッ!
ほぼ同時に、互いに互いを殴りあい……しかしこれは偶然の一致と言うべきか。
それとも偶然ではない、血筋に由来する「発想の一致」とでも言うべきか。
2人の拳がそれぞれに捉えたのは――相手の顔面ではなく、支給品の入った、デイパックだった。
2人が2人とも、右の拳を突き出すと同時に、左手に持っていたデイパックでガードをし、そして……

「なっ!? 何だぁっ!? 今、ピリッと来たぞっ!?」
「ちょっ……おめー、俺のカバンに何しやがったっ!?」

デイパック越しに流れた電気のような刺激に、僅かによろめく仗助。
あり得ない形に変形したデイパックを手に、驚くジョセフ。
2人は共に目の前の相手を改めて凝視する。改めて警戒して身構える。
やっぱり『ヤバい』。コイツは『ヤバい』。何か得体の知れない、変わった力を持っている……!

――互いにほぼ同じ考えを抱いた、まさにその時だった。
唐突に、家を揺るがすような巨大な振動が響いてきたのは。
膨大な質量が落下するような衝撃。ちょっとした地震のような揺れ。
そして何事か、と窓の外を見た2人は、家々の隙間から閃光が届くのを確認した。

 *  *  *

……ペット・ショップは、苛立っていた。
気絶した状態で見つけた1人目の獲物、楽に殺せるかと思いきや。
割り込んできた2人目の獲物に、掻っ攫われてしまった。
余計なことした2人目は片腕を破壊してやったわけだが、しかしあと一歩のところで目晦ましを使われて。
そうして標的を見失ったペット・ショップは、夜の街の上空を旋回しながら標的を探している。
1人目の獲物を抱えている以上、そう遠くには行ってないハズなのだ。必ず見つけ出してやる……!

と、グルリと大きな円を描いて、元の場所に戻ってきた彼は。
そして眼下の街に、新たな人影を見つける。それも2つ。
先ほど破壊した建物の傍に、駆けて来る人間が2人。最初の2人とは別の人間たちのようだ。
ペット・ショップはしばし考えを巡らせた後、どこかに隠れたらしい最初の2人を後回しにすることを決めた。
彼らの無防備な頭上目掛けて、翼を広げて急降下する。『ホルス神』のスタンドを発動する……!

 *  *  *

「お……億泰の家が……っ!? 何がどーなってんだよッ!」
「な、なんじゃこりゃぁ~~!?」

仗助の家から、深夜の住宅街の中。閃光が起こった辺りを目指し駆けてきた2人は、そしてしばし絶句する。
家が一軒、倒壊していた
それも小さな家ではない。ボロ屋と言えばボロ屋だったが、しかししっかりした造りの古い洋館。
それが巨大な氷の塊に、潰されていた。まるで子供の作った積み木の城を、大人げない大人が踏み潰したような格好。
そりゃ遠くまで音も響こうというものである。地図上では隣のエリアだが、同じ町内なのだ。
ついでに言えば、この夜の闇の中、閃光弾の光はかなり目立つ。
ケンカじみた戦いを一旦やめ、急ぎ現場の様子を見に来た2人は、そして頭上に羽音を聞いて……

「あ、あぶねぇっ!」
「う、うぉっ!?」

反応は、ほぼ同時だった。
咄嗟に転がるようにその場を飛びのいた2人。さっきまで立っていた位置に、連続して氷の槍が突き刺さる!
2人はそして、この大破壊劇を演じた者の正体を見る。

それは奇妙な髪飾りをした一羽の鳥。首元に巻かれたマフラーの下には、確かに『首輪』。
そしてその鳥の上に、恐竜にも似た『ホルス神』のヴィジョンが重なって映り……!

「ほれ見ろ、本当に居たじゃねーか! ってか、なんだありゃ!? 吸血鬼ならぬ、吸血鳥か何かよ!?」

ジョセフが最初の一瞬に考えたのは、生ける屍の可能性だった。
吸血鬼ディオが使ったという、気化冷凍法。同じく吸血鬼が使う、空裂眼刺驚。
その2つを組み合わせれば、ツララを撃つ、などという非常識な技も可能かもしれない。
信じられない敵の技にジョセフは驚きつつも、しかしニヤリと笑う。
この鳥は恐るべきパワーを持つが……『波紋』さえ流してやれば。どうせケダモノ程度の知性しかないことだろうし。
彼は素早く周囲を見回す。何か使えるものは無いか?!
そうだ、この変形させられた歪んだデイパックの中に、支給品が……!

「氷を使うスタンド使い、ってとこか……! あのネズミみてーなモンか!?」

同じ瞬間。仗助が咄嗟に思い浮かべたのは、肉を溶かすスタンドを持っていたドブネズミのことだった。
動物のスタンド使い。本能で自分の能力を完璧に把握してしまう彼らは、下手な人間のスタンド使いより手強い。
ましてやこの鳥、鳥ならではの飛行能力と、飛び道具となるスタンド能力の組み合わせ。厄介極まりない。
『クレイジー・ダイヤモンド』の拳を打ち込むことができれば、簡単にKOできるのだろうが……まず、触れることも難しい。
どうやって捕まえる!? 仗助もまた、素早く周囲を見回す。
何か使えるものは……そうだ、確認する間もなかったこのデイパックの中に、支給品とやらがあるはず……!

だが――標的の2人に考える時間をやるほど、ペット・ショップは甘くない。荷物を確認する間も与えない。
間髪入れずにつららの矢が、路上の2人目掛けて降り注ぐ。
2人は慌てて避けるが、何本も身体を掠める。ジョセフの歪んだデイパックが直撃を受け、中身が道路に散らばる。
転がり出てきた『猫のぬいぐるみと 血糊の入った血袋』は、ジョセフの支給品だろうか?
トリックやペテンを得意とするジョセフには使い道があったかもしれない品物だが、残念、この状況では意味がない。
敵は手の届かぬ空の上、敵だけが持っている飛び道具……。

「……おい、役立たず。この場を凌ぐ、いい策思いついたぜ」
「このコソ泥野郎、あとでぜってーぶっ飛ばす! ……で、いい策ってのは?」
「そりゃもちろん…… 三十六計逃げるに如かず、 逃 げ る ん だ よ ~ ~ ッ ! 」
「や……やっぱりそーなるのかよぉッ!」

クルリと背を向け全力疾走を始めるジョセフ。呆れつつも後を追う仗助。荷物が残っている分、仗助の方が遅い。
だが、機動力では圧倒的にペットショップの方が速く。すぐに上空を追い抜かれ、進路を遮るように翼を広げ。
慌てて急ブレーキをかけた2人に、浴びせるような氷のツララの6連射。
景観のためにケーブル類の多くが地中に埋められた杜王町、しかしその数少ない例外である虹村邸付近。
すんでのところでかわした流れ弾が、電柱を破壊する。千切れた電線がヘビのように地面をのたうつ。
いや、流れ弾ではない。ジョセフたちの進路を遮るように、倒れた電柱が道路を塞ぐ。完全に狙っての攻撃。
2人の背筋に、冷たいものが走る――この『鳥』、知性もかなりのものだ! そして彼らを逃がす気は、全くない!

なおも氷のミサイルは連射される。サディスティックに、獲物をなぶるように連射される。
ジョセフは這うような無様な格好で逃げ続ける。仗助も逃げ続ける。
逃げる中で再び虹村億康たちの家の前まで戻ってきてしまう。ツララと、デイパックの残骸と、その中身が散らばる場所。

「て、てめー、偉そうなこと言っておいて、逃げるしか芸ねーのかよッ!」
「まあ待て、今、『十分な本数が揃った』。こんなもんで届くか? ……いくぜッ!」

ジョセフの叫びと同時に、その手が「何か」を振り上げる。
手に握っているのは1本のツララ。しかし持ち上げられたのはその1本「だけ」ではない。
長い。やたらと長い。物干し竿よりなお長い! ジグザグに折れ曲がってはいるが、とにかく長い!
ペット・ショップが乱射し地面に散らばったツララの矢の残骸。這うように逃げ回りながら、さりげなく集めていた『武器』!
それが『波紋』の力で何本も繋がって、歪に折れ曲がった氷の棒となり。
上空に浮かぶペット・ショップに、襲い掛かる!
巨漢のジョセフとカーズ、2人分の体重を支えられるような氷のロープだ、強度は十分! 振り回した程度では壊れない!

「この俺が、ただ逃げるだけのはずがねぇだろォ~~ッ!
 ツララ表面の僅かに解けた水が、効果的に『波紋』を流すッ……! くらえ吸血鳥! 『波紋疾走』ッ!」

ジョセフ渾身の力で振り上げられた氷の長竿は、ペット・ショップにとっても完全に予想外。
強力な飛び道具を備えたスタンド『ホルス神』、しかしその射程そのものはそう長くもない。本体の機動力で補っている格好。
つまり、ペット・ショップが攻撃できる距離なら、このしなる氷の鞭も、また届く。
振り上げられた長い棒が翼の先端を掠める。『波紋』が流れる。
痺れるような不思議な衝撃に、ペット・ショップの動きが一瞬止まる。

「溶けやがれ、吸血鳥めッ……って、アレ? き、効いてねぇッ! 吸血鬼じゃねぇのかッ!?」
「いや……それで十分だ」

もちろん吸血鬼ではないペット・ショップには、『波紋』はさほどの効果を持たない。少しの間、麻痺させるのが精一杯。
そしてその間に、「仗助の方の」準備が整っていた。いつの間に拾っていたのか、手にしたボロクズを放り投げる。

「てめーの落としたこの『デイパック』を、俺が『直した』。すると……!」

空中に放り上げられるデイパックの破片。それに引き寄せられるように、地面に散らばった他の破片も舞い上がって。
ビデオの逆戻しを見ているかのように、空中でデイパックが再生される。そして、そのデイパックの修復された場所は。
『波紋』に痺れ、フラフラと落下しかけたペット・ショップのいる、まさにその座標!
ペット・ショップの身体が、クレイジー・ダイヤモンドに『直された』デイパックの中に閉じ込められる!

「この俺・東方仗助のスタンド、『クレイジー・ダイヤモンド』。コイツで殴ったモノは、元の姿に『直される』。
 怒ってたりすると、手元が狂うこともあるけどなァ~~ッ!」
「す、すげぇ……! やるじゃねーか、ヘンテコ頭!」

デイパックの大きさは、ペット・ショップを無理やり押し込めるギリギリのサイズ。
ピチピチに張った鞄の中、羽ばたくことなどもちろんできるはずもなく。
鞄はそして、かなりの高さから石のように落下して……
グシャリ、と嫌な音を上げると、それっきり動かなくなった。

 *  *  *

……『彼』は、苛立っていた。
訳が分からない。身体が痺れたかと思ったら、いきなり暗く狭い袋の中に閉じ込められ。
そして落下の衝撃による骨折と打撲。
自慢の翼は折れ、歪み、もはや二度と空を舞うことはできないだろう。
たかが人間如きに。
許さない。許さない。許さない。許さない。絶対にこいつら、許さない。
ペット・ショップは、『ホルス神』は、執念深いのだ。
彼は狭い袋の中、瀕死の重傷を負ったまま。
それでも渾身の力で、マフラーの下に隠し持っていた『支給品』を嘴でつまんで……!

 *  *  *

「いやー、ひでー目にあったぜ。何が『今日の天秤座の運勢はサイコー!!やることなすこと全てうまくいくでしょう』だ。
 まァこれはこれで結果オーライだったかもしれねーけどよぉ~。『ラッキーアイテムはかわいいペット』、だと!?
 あんな可愛くねー鳥なんぞいるかってんだ~~ッ!」
「……おい」
「やー、しかし今の何? 『スタンド』? 『クレイジー・ダイヤモンド』?
 おめーの身体に、もう1つ人影みてーなのが重なってたようだが……そういや、あの鳥もそうだったような……??」
「……おい!」
「なあ、何なわけ、おたくら?
 そういや最初に『荒木』とやらにケンカ売った奴も火ィ出してたし、『荒木』に殺された奴もちっこいの出してたし……
 ひょっとして、あの『荒木』とかゆーのが使った『力』も、その『スタンド』とやらなわけか? なぁ?」
「……てめぇ、コッチを向きやがれッ!」
「ん?」

戦闘を終え、ブツブツと考えを巡らすジョセフに、仗助は。
何度も呼びかけ、ようやく相手が振り返った所で……いきなり殴りかかった。すんでのところで、飛びのくジョセフ。
そう、ジョセフはすっかり忘れていたのだ。
成り行き上、目の前の鳥相手に共闘したとはいえ――2人の「ケンカ」は、決着することなくまだ続いているのだ。

「ちょ、ちょっとタンマ! 待ってってばよお坊ちゃんッ! 一緒に戦った仲じゃないの~ぉ!」
「てめーは俺を怒らせた……! ドサクサ紛れに、俺の髪をけなしやがってよォ~~!
 『波紋』とか言ってたな……ジジイの関係者か何かか? 俺も承太郎さんからチラっと聞いただけだけどよォ~~ッ!
 だが、だからって容赦はしねぇがな!」

怒気を露わにジョセフに歩み寄る仗助。対するジョセフは、大いに慌てる。
仗助はジョセフのことしか見ていない。ジョセフだけが、「それ」に気づく。

「おい……髪のことなんてどうでもいいじゃねーかよ。それより、ケンカなんてしてる余裕はねぇぜ、ほら」
「また言いやがったなッ! それに、てめーの減らず口は聞き飽きたッ! 今度こそ叩きのめ……」

仗助の言葉は、しかし鈍い音に遮られ。
身体に受ける衝撃。何かが肉に突き刺さる嫌な音。彼は目の前の光景に息を飲む。

「て……てめー……ッ! 馬鹿野郎ッ、何してやが……!」
「な、なんでかなァ~~ッ。なんでか知らね~けど、『こうしなきゃいけない』気がしたんだ……。
 なんでか知らねーけど、おめーだけは、俺の目の前で、死なせるわけには……!」

突き飛ばされた仗助が、呆然と見上げる。突き飛ばしたジョセフの口元から、血が溢れる。
ジョセフの、若々しくも力強い胸板を貫通した、巨大なツララ。仗助を貫くはずだった凶器。
その向こうには……内側から大きく切り裂かれた、ジョセフのデイパック。凶鳥を閉じ込めたはずの檻。
束縛から自由になった、しかし負傷したままの鳥の嘴には、小さな折り畳みナイフが咥えられていて。
骨折した体でナイフを振るい、スタンドを発動させ。無理が祟って折れた肋骨が肺に食い込んでいくが、全くお構いなく。
死にかけてなお、『ホルス神』のスタンドは獰猛にして凶暴。死にかけてなお、他者への攻撃しか考えていない。
ヒビが入り崩れかけた『ホルス神』のヴィジョンが、手当り次第にツララを放つ。
狙いも定めずに、乱射する。周囲の路面に、ドスドスと刺さりまくる。地面に這いつくばったまま、ペット・ショップが吼える。

「グガガガガッ!」
「ま……まだ生きてたのかよッ、あの鳥公ッ!」
「一旦にげろ、仗助くんッ……! へへ、自慢の髪型、バカにして悪かったなッ……!」

そのまま崩れ落ちるジョセフ。仗助が彼を助け起こす間もなく、連射されたツララが2人に迫る。
マトモに当たれば仗助の命もない、ジョセフに当たればトドメにもなる、鋭い氷のミサイルの群れを前に仗助は。

「……らしくねぇ顔で、俺のこと『仗助くん』とか呼ぶんじゃねー。『あのジジイ』を思い出しちまうだろーが。
 奇遇だが、俺もワケもなく、てめーを死なせるわけにはいかねー気がするぜ……!
 そのためには、まずはこのクソ鳥にきっちりケジメつけてやらなきゃなんねーようだなッ!」

ドドドドドドッ! 仗助の拳が、逃げることなく振るわれる。
ジョセフの警告を無視し、仗助は前進する。ジョセフを『治す』余裕はない、ツララの弾幕が多すぎる。
倒れて動けぬジョセフの身体を守るようにツララを弾きながら、ペット・ショップに近づいていく。
前進しながら、嵐のように迫るツララを1つ残らずクレイジー・Dの拳で打ち払う。
一歩進むごとにツララの弾幕は密度を増す。捌き損ねた1本が、仗助の太股に突き刺さる。
そして、あと1歩でペット・ショップに手が届く……というところで、仗助の歩みが、止まる。
強制的に止められる。ペット・ショップがニヤリ、と笑う。この状況になってなお、未だ残しておいた切り札。

いつの間にか、地面に堕ちたペット・ショップを中心に……クモの巣のように氷が地面を伝って走っていて。
そして仗助の足もまた、地面に凍り付き、固まって!
歩みを止めざるを得なくなった仗助に、そしてペット・ショップは、特大の氷の塊を空中に浮かべ、動けぬ仗助に……!

「グゲゲゲゲ~ッ!」
「勝利の雄たけびのつもりか、鳥公? だがな……俺の『攻撃』は、既に終了してるんだよ」

ビシッ。ビシビシッ。
絶体絶命の状況の中。仗助の言葉とほぼ同時に。クレイジー・Dが殴り落としたツララの復元が、完了する。
『直された』ツララは、空中でペット・ショップの方向を向いていて。
瀕死のペット・ショップはハッとするが、もう遅い。『直された』ツララは、そして元来た進路を逆戻りして……

「グギャッ!」

ドスドスドスドスドスドスッ!
折れた翼では飛んで逃げることも叶わず、新たなツララでの迎撃も間に合わず。
自らが放った無数のツララに貫かれ。ペット・ショップは、今度こそ文句なく、完全に絶命した。

 *  *  *

「ふぅ……かなりグレートにヤバい鳥公だったぜ……。さて、あの馬鹿野郎を『治さ』ねーと……」

ペット・ショップの絶命と同時に、『ホルス神』によって作られた氷がゆっくりと消えていく。
仗助の足元を捕らえていた氷も、周囲に散らばっていたツララの残骸も、全て解けて消え失せる。
彼は大きく溜息をつくと、傷ついた右足を引きずりながら、倒れたジョセフの所まで戻る。
あらゆるものを『治す』スタンドの手でスッと撫でるだけで、ジョセフの胸に開いた大穴が消えて無くなる。

「おい、てめー起きやがれ! ドサクサ紛れに謝ってたようだが、俺はまだ納得してねーぜ!
 さっきの続きやるぞ! 傷治してやったから、正々堂々殴り飛ばしてやるぜ! おい、起きろって!」

仗助は完全に治されたジョセフの体をつま先で小突くが、彼が起きる気配は微塵もない。
苛立たしげにジョセフを何度も蹴っていた仗助だが……彼は「ある可能性」に思い至り、ハッとする。

「おい、てめぇ……まさか……!?
 嘘だろ、オイッ!? 起きろってばよォォォォッ! 勝手に死んでんじゃねぇぇぇッ!」

クレイジー・ダイヤモンドが治せないもの。それはこの世にたった2つのみ。
1つは自分自身の肉体。そしてもう1つは、既に失われた命!
仗助は目の前の状況を信じられず、夜の街で絶叫する――!

【時空を超えた親子ゲンカ、勝敗つかずにこのまま決着!?】

【虹村邸跡の前の路上(Gー5) 一日目 黎明】

【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋法
[時間軸]:スイスのサンモリッツ到着直後(シーザーとワムウが戦う直前)
[状態]: 臨死状態? (身体的には完全修復済み、しかし意識戻らず?)
[装備]: なし
[道具]:なし
[思考・状況]
  1:瀕死状態? 意識朦朧?
  2:仗助を守る。助ける。死なせない。
[備考]:ジョセフのランダム支給品、『猫のぬいぐるみと血糊の入った血袋』は、仗助の目の前の地面に落ちています。
     ジョセフの共通支給品は、デイパックも含め、その多くが使用不可能なまでに破損し、周囲に散らばっています。

【東方仗助】
[スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド
[時間軸]:四部終了時
[状態]:右太股にツララが貫通した傷。歩行に少し影響。目の前の状況に混乱。
[装備]: 無し
[道具] 支給品一式(武器はまだ未確認):
[思考・状況]
  1:目の前の男をとにかく助ける。死なせたくない。
  2:仲間を見つける。
  3:荒木をどうにかする。
[備考]:仗助はとうとうジョセフの名前を確認できていません。『波紋』という単語が引っかかっている程度。
     仗助の側は、名前だけは名乗っています。

【ペット・ショップ 死亡】

[備考]:ペット・ショップのランダム支給品は、『小型折り畳みナイフ』でした。
     (偶然なのか運命なのか、老ジョセフが透明の赤ちゃんを救うため、自分の手首を切った時に使用したものです)
     このナイフは仗助の目の前の地面に落ちています。
     ペット・ショップに与えられた他の共通支給品は同エリア(G-05)のどこかに隠してあります。

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17:ビッグファーザー・リトルボーイ 東方仗助 42:灯台もと暗し
17:ビッグファーザー・リトルボーイ ジョセフ・ジョースター 42:灯台もと暗し
22:虹村億泰の長い夜 ペット・ショップ