「お早う」
私が階段を下りると、既に皆席に着いていた。
承太郎、仗助、ジョルノ。
皆、私の養子として四人でこの家に住んでいる。
「おはよう御座います」
「おはよっス」
一通り挨拶を交わし、早速朝食を頂く。
食事の用意は仗助の担当だ。
「美味い。仗助、此の頃料理の腕が上がってないか?」
「実は最近、エルメェスさんに料理教わってるんスよ」
「ほう。彼女は料理上手だからな」
「顔に似合わず、な」
「コラ、承太郎。そういう失礼な事を口にするんじゃない」
「そういえばジョージさん。
失礼で気になったんスけど、ジョージさんの時代って、こういう風に喋りながら食べるのはマナーがなってないんスか?」
「あぁ。ジョースター家ではそうだった。
だが、時代の流れや国柄には合わせたいからね。
これはこれでよいものと思っているよ。
とはいえ、だ。ジョルノ」
「はい?」
「食事中に本を読むのは流石に行儀が悪い」
「あ、ごめんなさい」
「今回は一度目だから良いが、二度は許されないぞ」
「はい」
「ジョルノ。その本、何?」
好奇心でモノを訊ねる仗助。
だが、それに対するジョルノの返事は、想像を絶するものだった。
「荒木の日記です」
「「「!!!」」」
「まあ、日記と云っても毎日じゃないですが。
1000年くらい平気で間隔があいてますし」
「どうしたんだ?それ」
「昨日、いつものメンバーで調査しに行った時に発見しました。
覚えてますか?あのゲームで、一つだけ放置されているディバッグがあった事を」
「あぁ。確か、DIOの奴が放り投げた奴だな」
「えぇ。そのランダム支給品がこれでした」
ジョルノは昨日、境界にある地下の探索をしていと言っていたが、こんな物があったのか。
「僕が荒木に“殺された”時、死体置き場のような場所に放り込まれました。
昨日、その場所を発見したんです。
教会の奥の燭台の一つに、隠し扉のスイッチがあって、その奥に死体置き場はありました。
そしてその部屋に、重清さんの死体と、このバッグがあったんです。
重清さんの死体はシーザーさんに丁重に葬って頂きました」
「そうか…」
やはり、あの時の傷はまだ癒えていないのだな。
箸を置く。
「ご馳走様」
「お粗末様っス」
丁度、皆も食事を終えていた。
「さて。皆の準備が終わったらそろそろ出ようか」
「あぁ」
そして準備を終えた私達は、家を出た。

* *


「お早う御座います、校長。承太郎と仗助も」
家を出ると、丁度花京院君とナランチャ君、虹村君が家を出て来る所だった。
「おはよう。今日は早いんだね」
「ブチャラティの朝漁が早かったんでな」
「後でブチャラティさんが校長の所にも魚のおすそ分けに行くと思うぜ」
「有難う」
向かいの虹村家には虹村君、花京院君、ブチャラティ君、ナランチャ君が住んでいる。
虹村君達はぶどうヶ丘高校に通っていて、ブチャラティ君はこの町で漁師として働いていた。
「花京院。今日も家に来いよ。昨日やられっぱなしだったんで、むしゃくしゃしてんだよ、俺」
「リベンジ?」
「勿論ッ!今日こそお前のカートに亀をぶつけるっ!」
「お前、昨日は30回位喰らってたからな…」
そんな学生達の談笑を聞きながら、私達はぶどうヶ丘高校へ着いた。

ぶどうヶ丘高校。
あの戦いを終えた私達は、元の世界へ辿り着いた。
荒木が死んだ瞬間、荒木の作り上げたものは全て消滅し、町を覆っていた障壁も消えた。
だが、辿り着いた場所は1999年の日本、杜王町だった。
だが、荒木が処分したと思われる、町の人間は行方知れずのままだった。
私達のまず行った事は死者の埋葬。
そして現在、荒木の謎を調査しつつ、町の復興を続けている。
この死んでしまった町を甦らせようと、全員で頑張っているのだ。
そんな中、私は学校を再建する事にした。
この町に住む若者達の未来の為に、教育は欠かせないと思ったから。
私のこの考えに、町の人間全員が賛同し、ぶどうヶ丘高校は新たに開校した。
「ミキタカ凄いな!満点だ!」
「これでも216歳ですから」
一つしか使われていない教室を廊下から覗くと、F・F君が授業を行なっていた。
ナランチャ君達や、承太郎達等、ミキタカ君と一度に3つのペースの授業を一人で行なっている。
廊下から教室を覗く限り、上手くやっているようだ。
そう云えば、重清君の死体が埋葬されたといっていたな。
丁度時間が出来ているし、墓参りをさせて貰おう。
そして私は学校を出て、霊園に向かってのんびりと歩き出した。

* *


「ジョージさん」
学校を出た所で突然声を掛けられる。
「おや。アヴドゥル君にダイアー君。
こんな所でどうしたんだね?」
「いえ、ダイアーの修行に付き合おうと思って」
「店の方は?」
「臨時休業とさせて頂きました」
「そうか。お客さん達は残念がっているかも知れないね。
君の占いは当たると、町でも評判だからね。
修行とは、波紋のかね?」
「メインはそうですが、此の頃ダイアーは波紋戦士としての修行に独自の要素を加えました。
それが私にも必要と感じまして」
「一体何の修行を?」
「心のですよ」
ダイアー君の返事に、私は成程と思った。
「私とアヴドゥルの亀裂は、お互いの心の弱さが発端でした。
ですから物事の本質を見極め、信じるべきものと疑うべきものを見誤らないよう修行しているのです。
それに“俺の波紋には心が足りない”と、ツェペリが教えてくれたのですから」
「そうか…」
「では、これで」
2人は一礼し、去って行った。

* *


「おや?」
霊園に向かう途中の畑で、局地的に雨が降っている。
あれは、ウェザー君か。
少し挨拶に行くか。
「御機嫌よう。ウェザー君、セッコ君」
「ジョージさん。こんにちは」
「何だぁ?ジョージじゃねぇか」
「こら、セッコ。『こんにちは』だろう?」
振り返ったウェザー君達は、私の姿を確認すると挨拶を返してきた。
「精が出るね」
「えぇ。今年は雨量が少ないらしいので、少し雨降らしてました」
「ハハ。君が居れば、杜王町は雨に悩まされる事は無さそうだ」
「ジョージさんはどうしてココへ?珍しいですよね」
「あぁ、ちょっと霊園に用事があってね。寄り道させて貰ったのだよ」
「昼食は?」
「エルメェス君の店で採ろうと考えてる」
「なら一緒に行きませんか?丁度俺もエルメェスの所に野菜届けに行く所だったんで」
「そうなのか。ならばそうしよう」
「セッコ。後を頼むぞ」
「あぁ。そん代わり、後で角砂糖くれよ?」
「あぁ。4個だな」
そしてウェザー君と私は畑を出た。
* * *

「エルメェス。野菜届けに来たぞ」
「ウェザーか。サンキュー。あれ?」
エルメェス君は、ウェザー君の後に続く私に気付いたらしい。
「エルメェス君。調子はどうだい?」
「ジョースターさん。どうしたんですか?」
「いや、少し霊園に用事があってね。昼食を頂こうと思ったのだが、満席のようだね」
店内を覗くと、2つしかないテーブルは埋まっていた。
まぁ、この町でエルメェス君の店は結構評判になり始めているから、当然か。
「いえ、大丈夫ですよ。今用意しますんで」
エルメェス君はそう言って、新たにテーブルを一つ引っ張り出す。
「良いのかね?」
「えぇ。さっきブチャラティが持って来たばかりの活きの良い魚があるんですよ。それでいいですか?」
「あぁ。御願いしよう」
その魚うちの夕食にも出そうだな。
「じゃあ、俺はこれで」
店の奥に野菜を置いたウェザー君が戻って来る。
そのまま店を出ようとした所を、エルメェス君が引き止める。
「何だ。ウェザーも食ってけよ。野菜のお礼だ」
「いや、セッコを畑においてるんでな。日を改めて食べに来る」
「そうか。なら、是非そうしてくれ」
「では、ジョージさんも」
「あぁ。さようなら。仕事、頑張ってくれたまえ」
そして一礼し、ウェザー君は店を出て行った。
更に暫くして、料理がやって来る。
「お待たせしました」
「有難う。では、頂きます」
霊園そばの料理店。
元々イタリア料理だったらしいのだが、エルメェス君が改装して、此処でレストラン経営を始めたのだ。
「相変わらず美味しいね」
「へへ。姉貴直伝ですから」
「そう云えば、仗助に料理を教えてくれているらしいね。有難う」
「礼を言われるほどの事じゃないですよ。アタシも楽しいし。
…それにしても、この町も随分立ち直りましたね」
水のお代わりを注ぎながら、窓の外を眺めて呟くエルメェス君。
「…そうだな」
私も呟くように返事した。
今はまだ復興途中。
町の殆どの人間が消失してしまったという事で日本中が騒ぎ立て、未だその熱も引いていないのだ。
だが、未だ傷は癒えていないものの、人も増え、かなり持ち直すようになった。
「後一歩…だな」
「ですね」
二人して窓の外の杜王町を眺めながら呟きあい、
「御馳走様」
「有難う御座いました」
私は店を後にした。

* *



杜王町南西部。霊園—
「あ、ジョージさん」
掃除をしていたシーザー君が振り返る。
そう、シーザー君は、霊園の管理を住み込みで行なっていた。
「こんにちは、シーザー君」
「どうしたんですか?こんな時間に」
「昨日は矢安宮君の埋葬をしてくれたそうだね。有難う。
彼等に花を手向けようと思ってね。
一束頂けるかな?」
「えぇ。こちらへどうぞ」
案内されるシーザー君の後を付いて行く。
「毎日この霊園を1人で管理するのは大変じゃないかね?」
「そうかも知れませんが、俺達はこの人達の屍の上に成り立っています。
彼らの御蔭で生きているんです」
「だから感謝の心を忘れてはならない………か」
シーザー君は無言で肯く。
「解った。本当に有難う。
あのゲームで生き残った皆がすべき事を君が一身に担ってくれている事に、本当に感謝している」
「何か、面映いですね。ではこれを」
「あぁ」
シーザー君が用意してくれた花を受け取る。
「では、失礼します」
そしてシーザー君は掃除の続きを始め、私はその場所へ向かう。
あの凄惨なゲームの前に命を散らした、彼らの眠る場所へと………。
 〜ジョジョの奇妙なバトルロワイアル〜(『ジョジョの奇妙な冒険』二次創作作品)


空条承太郎、東方仗助、ジョルノ・ジョバーナ
…ジョージ・ジョースター一世の養子となり、ぶどうヶ丘高校に通いつつ、他の者達と荒木の調査と町復興に尽力する。


      ○SS執筆者
      4l.TA6RRCU  4WwFMz1GCc  5wj0BqMF4l  6zsldeDOfM  7G5l3kP69w
      7oDmo.PP/w  BRxsUzTn5A  C0P3wFTVN2  C9UOxHGVmM  djqm.YbjcQ


虹村形兆、花京院典眀、ナランチャ・ギルガ
…虹村家に住まい、ぶどうヶ丘高校の生徒として通い始める。


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      ltRege70EY  MLRANUp0cQ  QMkX1in0/k  RxcwC9FkSo  tAKM6DkvGg
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ブローノ・ブチャラティ
…虹村家に住まい、漁師として暮らし始める。


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ヌ・ミキタカゾ・ンシ
…ぶどうヶ丘高校に通う。今まで住んでいた所で生活しているらしいが…?


      ○Wiki編集に携わって下さった皆様
      Wiki管理者様
      投下SSを編集して下さった方々


ダイアー、モハメド・アヴドゥル
…二人で暮らし始める。アヴドゥルは占い師として生計を立て、ダイアーは波紋戦士としての修行に余念の無い日々。


      死亡者名鑑作成者、編集者様
      地図編集者様
      その他、Wiki編集をして下さった方々


エルメェス・コステロ
…料理店を始め、F・Fと一緒に暮らし始める。ウェザーからちょくちょく食材を仕入れてもらっている。


      ○その他、この企画に御参加頂いた皆様
      各種設定(ルール、参加者選出等)に御意見下さった方々
      執筆者を応援して下さった方々
ウェザー・リポート、セッコ
…畑仕事を始める。畑では、ウェザーがセッコ相手に角砂糖で遊んでいる姿がよく目撃されるらしい。


      投下作品に御感想下さった方々
      投下作品の問題点を御指摘、御意見下さった方々
      投下作品の疑問に、執筆者の代わりに御考察、御回答下さった方々


F・F
…エルメェスと一緒に暮らし、ぶどうヶ丘高校臨時教師として雇われる。


      執筆者の各種御相談に対応下さった方々


シーザー・A・ツェペリ
…霊園の管理者として住み込み、死者を弔う。
そして…


      そして…

「………………」
私は墓石の前に立ち、じっと見つめた。
ジョナサン、ディオ、ロバート・E・O・スピードワゴン、ウィル・A・ツェペリ、ブラフォード、タルカス
ジョセフ・ジョースター、ルドル・フォン・シュトロハイム、エリザベス・ジョースター、ストレイツォ、ワムウ、カーズ
J・P・ポルナレフ、イギー、ホル・ホース、ミドラー、ペットショップ、ヴァニラ・アイス
広瀬康一、虹村億泰、岸辺露伴、山岸由花子、噴上裕也、吉良吉影、矢安宮重清
トリッシュ・ウナ、プロシュート、ギアッチョ、リゾット・ネェロ、ディアボロ
空条徐倫、ナルシソ・アナスイ、エンリコ・プッチ、ジョンガリ・A、スポーツ・マックス、リキエル
この争いで命を失った者達…
彼らに安らかに眠って貰う為、此処に来る度送る言葉を、今一度捧げよう。
「君達の事は、決して忘れない」
と———。

ジョージ・ジョースター一世
…承太郎達の保護者として東方家に住まい、杜王町復興のリーダーシップを発揮する。


      読者の皆様に感謝を
      執筆者代表  fk8qEzlLPk



      ジョジョの奇妙なバトルロワイアル
                 — 完 —












ザザ——————ン…
漸く白み始める空の下、俺と形兆は網を引き上げていた。
「おっ。中々上出来じゃねぇか」
「そうだな。…そろそろ帰るか」
「随分早いな、此の頃。この時間じゃ、朝飯は出来てないんじゃないか?」
「あぁ」
「久し振りに、俺が朝飯用意するか。いつも花京院とナランチャに任せっきりだからな」
「いや、俺がやろう。お前は学校へ行く準備をしてろ」
「何だ?ブチャラティ。お前、料理出来るのか?」
「母親が居なかったモンでな。父親の評判は悪くなかった」
「へぇ。じゃあ楽しみにさせてもらうか」
「済まないな、形兆」
「ん?」
「毎朝、漁に付き合って貰って」
「バカ。好きでやってんだから気にすんなよ。それに、俺はこの時間が好きだからな」
そう言って、舟を止め、東を仰ぎ見る形兆。
その顔が、日に照らされ始める。
そして、俺も形兆と同じ方角を——顔を覗かせる太陽を見る。
「…そうだな」
「………」
「………」
俺達は無言で眺め、

朝焼けの空はその色を徐々にスカイブルーへと変えて行き、

海の向こうに隠れていた太陽が顔を覗かせ、俺達を照らし始め

そして今日も、






杜王町に、日は昇る———。

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最終更新:2008年03月09日 15:57