Buona Sera。実にいい夜だ。
嘘だ。本当はまだ日没前の午後5時半過ぎぐらいだろう。
もうすぐ第三回放送が流れる。俺にとっては非常にまずい状況だ。

まず原因①。それはこの6時間で誰にも遭遇出来なかったこと。
『不慮の事故』で虹村形兆に別れを告げたのはいいが……この町は“広すぎ”た。
第二回放送で生き残っていた参加者の数はおよそ30人。たかだかそれだけの人数では出会うべき奴とも出会えない。
現在生存が確認されている俺の唯一のチームメイト、ナランチャ・ギルガ。
そして離別してから丸々12時間が経とうとしている自称宇宙人、ヌ・ミキタカゾ・ンシ。
このままでは彼らとの再会をすることなく、時が過ぎてしまいそうだ。

次に原因②。これから町は夜になってしまうという事。
俺が【I-6】で打倒を決意したワムウ達。奴らが大手を振って活動できる時間がやってくる。
奴らが嫌いだと言っていた日光が、この世から一時的に無くなるからだ。
あれだけ強力な攻撃手段を持つ者共を、俺のステッキィ・フィンガースだけで始末する事は可能か?
自信はある。あわよくば相討ちになる覚悟も出来ている。だがそれだけではダメだ。
『ワムウ達も参加者の1人に過ぎない』という事を忘れてはいけない。
奴らはTVゲームで言う、ステージ半ばに立ち塞がる敵。いわば『中ボス』に過ぎない。
最も重要なことはこの町の支配者、つまり『大ボス』である『荒木飛呂彦』の打倒だ。
ワムウ達から勝利しても、最終的に奴に敗北してしまっては意味が無い。
2、3時間前に荒木を出し抜く為の重要な『ピース』を1つ作ってはみたが……1つだけではちょっと、な。

そして最後の原因③。それは先ほど話したヌ・ミキタカゾ・ンシ。
彼は今、自分の変身能力を使って……おそらく『鎖』に化けて『ある場所』に隠れている。
それは……即ち『ワムウ達のいる場所』だろう。
現在俺が辿っているこの点々と続く血の道標のスタート地点は、彼の行方不明時とほぼ同時期、同座標に発見された。
それからというもの、この血痕はひたすら北西に向って続いている。
十中八九ミキタカと同じく……俺達の前から姿を消したワムウ達が連れ去ったものだと考えられる。
つまり、彼を救出するためにはどの道ワムウ達と接触しなければばらないという事だ。
彼は無事なのだろうか? あの変身能力はワムウ達を半日も騙しきれる程の物なのか?

とはいえミキタカはこの町で出会った貴重な貴重な賛同者だ。見捨てるわけにはいかない。
ここまで生き残ってきた連中は少なくとも1度や2度の修羅場を潜り抜けてきたはず。
今更初対面の相手に易々と協力してくれるとは思えない。なまじ此の町での知り合いが少ない俺なんかには、な。
ワムウ達が荒木打倒に賛同してくれる可能性は……いいや。奴らはそんな『穏健派』じゃあない。
命がけの闘いを純粋に楽しみたいと奴らは、催し物を反古にする事は無いだろう。
橋で聞いた奴らの会話を判断する限り(正確に聞いたわけではないが)、『賛同』はあっても『協力』はあり得ない。

ナランチャが誰かと行動してくれていればまだ可能性があるのだが……いや、不確定要素に頼りすぎるのは止めよう。
ナランチャはナランチャで色々と苦労しているかもしれない。
何よりアイツは俺を頼りにしてくれている。それなのに、もし俺が奴に甘えてしまったら……。

*  *



(お~い!ブチャラティー! 無事で良かったぁ~!!)
(再会出来て嬉しいよナランチャ。ところで相談があるんだが、この町で知り合いは出来たか?)
(もちろんさー!紹介するよぉ~おーいみんな来てくれー!)
(な、こんなに沢山……!ってお前はワムウ!?)
(貴様がナランチャ君の上司か。よろしく、私はワムウ。ナランチャ君の友達だ!)
(同じく友人のタルカス!)(あたしエルメェス!)(私はジョージ!)(俺はDIO!それ、友情の血管針攻撃ッ!)
(……す、すごいなナランチャ。まさか俺以外のすべての参加者と仲間になったのか?)
(ああ! みんな俺をリーダーと認めてくれたんだぜ! それだけじゃないぜ…… おい、こっちに来いよ!)
(はぁ……こ、こんにちは。荒木飛呂彦といいます。ナランチャ君の上司であるあなたに会えるなんて感激です!)
(あ、ああ。こちらこそよろし……な!?)
(すまねぇブチャラティ。コイツこの町のリーダー的存在の癖に、ちょっと人見知りが激しいんだ!)
(え、あ、そ、そのようだな……)
(ブチャラティ君、こっちに来て我々とダンスしよう! ラジカセは荒木君が炭酸こぼしちまったから使えないが………)


…………いかん。今日はロクに寝ていないせいか、疲れているな。俺は何を考えてるんだ。
話を元に戻そう。
つまり、俺は『ミキタカ』と『ワムウ』と『荒木』に対して早急な決断を迫られているわけだ。
どうする? このまま何のアイディアも思い浮かばないまま、駅に到着してしまう。
そのころには第三放送で新たなる死者の名が呼ばれるだろう。もしその時にミキタカの名が呼ばれてしまったら……。

「……けました! あれはブチャ……」
「……お~い! そこのアンタ~聞こえてるッスかぁ……」

…………ん?あれは……?

*  *



物事というものには、ある日突然解決する場合もあるらしい。
そういう意味では俺は幸運だった。まさかミキタカとこうして再び会える時がやってくるとは。
ワムウと戦うことなくッ! しかも向こうから、こんなにも容易くッ!

「ブチャラティさん! 何ボーっとしてるんですか? こっちですよッ! 」
「あ、ああ……すまない」

――そんなわけで俺は【F-4】にある靴のムカデ屋の前に来たのだ。
そういえばこの場所は形兆がタルカスがカーチェイスをしたルートの一つだった。

「そいで俺達は一旦ミキタカの血の跡を辿って南東目指して歩いてたんスけど、ミキタカが気がついたんスよ。
 『自分がブチャラティさんと別れたのは早朝だから、時間的に駅の周辺にもう到着してるかもしれない。
 ひょっとしたら入り違いになるんじゃないか』とね。だから慌てて引き返したわけで……」

彼……少し不良っぽいナリの男の名は東方仗助。
スタンドは治癒能力を備えているクレイジー・ダイヤモンド。かなり万能らしい。
彼はミキタカと同じくこの町の住人で町の地理にも慣れているらしく、今日1日で色んな参加者と同盟を結んできたようだ。
そして更に驚いたことに、彼らは先ほどまでワムウ達と一戦を交えてきたというのだ。
彼は俺にその経緯を説明してくれた。
ワムウ達は想像を絶する化け物でありとても自分達では手に負えないとの事。
あくまで逃亡に成功したのではなく、彼らの気まぐれで生きながらえたという事。
ワムウ達はあくまで再戦を前提に仗助達を逃がしたという事。

なるほど。早い話が“ワムウ達とは関わるべきではない”んだな。
どうやら彼らは素晴らしい状況判断能力を持ち合わせているようだ。
ワムウ達が自分達よりも格上と判断し、なるべく接触を避けるという結論を選ぶ慎重さは実にいい。
……整理してみるか。


①ミキタカは無事合流完了。
②東方仗助の同盟のラインを通じて、協力者を集めることが可能。
③ワムウ達の戦闘力は尋常ではないので、とりあえず後回し。

こんなところか。実にあっけなく解決してしまったな。
仗助達に無理を言って3on2でワムウ達を襲撃することも可能だが、
『回復役』と『変身能力者』という大事なメンバーを危険に晒すリスクを考えると、デメリットのほうが大きい。
あのジョルノがあっさりと荒木に敗れたという事実を考えれば、彼らは大事にしたい。
なぜならジョルノのゴールド・エクスペリエンスは『治療』も『物質変化』も兼ね揃えていた万能型だ。
荒木はジョルノの能力を厄介だと判断して早急にに手を下したのかもしれない。
東方仗助は自分の治療は出来ないらしいし、ミキタカは他者を変化させることは出来ない。
ジョルノほど脅威ではない、と判断されたのかもしれない。

「仗助さんッ! 見てくださいッ! 子犬が一匹倒れていますッ! 」
「おう、どれどれ……ダメだな。もう息はねぇ」

仗助とミキタカが店の入り口の脇で倒れている犬を調べている。おそらくアレも参加者の1人だろう。
形兆の自宅周辺で出会った『鳥の死体』の首に付いていた首輪のタイプが同じだからな。
最も、これは俺達3人の首に付いている首輪とも同タイプなんだがな。
つまり荒木は『この町にいる全ての者に首輪を付けて束縛させている』というわけだ。
推測だが教会での奴の会話を聞く限りでは、首輪の機能は幾つかあるようだ。

…………じゃあ次は順を追って、首輪について今まで考えてきた事を整理・確認するか。

*  *



①首輪には爆弾が本当に仕込まれているのか?
荒木自身は強引に外そうとすれば爆発すると最初に言っていたが、これは本当か。
形兆が黒尽くめの男の首輪をバッド・カンパニーの爆弾で破壊しているが、
  • バッド・カンパニーの爆弾の爆発で首輪が破壊し、首輪の爆弾にも誘爆した→首輪は脆い・爆弾アリ
  • バッド・カンパニーの爆弾の爆発の振動によって、首輪の爆弾が誤作動(爆破)を起こした→首輪は固い・爆弾アリ
  • バッド・カンパニーの爆弾が単純に首輪もろとも爆破しただけ→首輪は脆い・爆弾ナシ
ま……爆弾ナシはおそらく無いな。
バッド・カンパニーの爆弾の威力ぐらいは几帳面な虹村形兆ならしっかり調べてあるだろう。
首輪に爆弾が無い場合、黒尽くめの男を殺した爆撃は『隊の爆弾のみの威力』だ。
首輪の爆弾との混合爆発が無い、つまり威力の変化の有無が無いなんて事実は奴なら気づきそうだ。
『爆弾は有る』な。

②首輪は(VSリゾットで)どうやって壊れたのか?
次に首輪の強度……これはどうだろうな。
スタンド使い同士の戦闘においては、生半可な強度の物質では簡単に破壊・損傷される。
外部からの衝撃にしろ内部からの破壊にしろ、形兆のしかけたスタンドの爆弾でも破壊or誤作動が生じるのならば、
ほとんどのパワータイプのスタンドでも衝撃を与えて外部or内部破壊できることになる。
正直なところ、あまり重要な事項ではないな。
『とにかく首輪の破壊は可能』のようだ。

③形兆の自宅周辺で見つけた鳥(ペット・ショップ)の首輪における調査。
問題はこれだ。
俺があの鳥から首輪をステッキィ・フィンガースで外した時……『何も起こらなかった』。
首輪についてるであろう爆弾も作動せず、今もこうして俺の手荷物の一つとしてここにある。
黒尽くめの男、そして形兆との戦闘でよく誤作動を起こさなかったな。
形兆との戦闘が終わった後に首輪の調査をした時も思ったが、もし爆発していたかと思うとゾッとする。
しかし……不思議だ。
鳥の首にジッパーを付けて首輪を取り出した時に何も起こらなかった事実も去ることながら、
取り外した首輪を解体なりして調査しても爆発どころか何も起こらないとは……正直意外だった。
いくら導火線がない、装置が作動しないとはいっても首輪に爆弾が仕掛けられている事は①より明白。
爆弾の素がそこにあるのは間違いないのだから、取り扱いを間違えれば爆発するおそれはいくらでもある。
しかし慎重に取り扱ったとはいえ、首輪は爆発しなかった――――これは極めて重要な事項だ。
どういうわけか死体から回収した首輪は完全に爆破装置、爆破物含めて機能停止する。
違和感はあるが『死体の首輪は絶対に誤作動を起こさない。爆弾も爆発しない』というわけだ。
いくら何でも……と思う所もあるが、『首輪の爆破装置』がそれだけ『ザル』という事なのだろうか。
それとも、それだけ高性能の生体反応装置が内臓されているという事か。かなり苦しいがとりあえず良しとしよう。

④首輪による俺たちの位置把握について。
そろそろややこしくなってきたがこれも重要事項だ。『首輪による位置把握の機能はあるのかどうか』。
荒木の発言及びこれまでの経緯より、位置把握に関係のある事項を列挙してみる。

<1>タルカスとカーチェイス中、俺の運転していた車のラジオから放送が流れた事実。
車は形兆に支給されたもの。元より内臓されていた物と考えるのが妥当だな。

<2>首輪は俺達がルール違反をした時に爆破による制裁を担ってくれる。
 一、この空間から逃げだそうとすると爆発。
 一、放送された禁止区域に侵入したとき爆発。
 ※自分のいる場所が数分後に禁止エリアになる場合、参加者にその事実が知らされる。


空間とはこの町の地図でエリア分けされている地域だろう。つまり町の外は最初から禁止エリアということか?
しかし放送で指定される禁止エリアが、単純計算して10×10の100マス。
海、川、湖を省いても70マスはある。しかも1マス辺りの広さは決して狭くない。
ここまで広大な町に禁止エリアという罠を仕掛けるには、この町の全てを毎時間毎分毎秒チェックしなければならない。
水面を仕切るような目測では識別不能なラインの把握もしなければならない。能率が悪すぎる。
だがそれを簡単に解決出来る方法がある。『首輪のほうに禁止エリア識別機能をつければいい』。
任意の禁止エリアに誰が入るかを待つより、誰が今禁止エリアに入ろうとしているかをチェックしたほうが楽だ。
やはり『位置認識機能はある』。そして禁止エリア侵入における首輪爆発のペナルティは、
『首輪が無いと成立しない。目測不能なラインも存在するのでおそらく爆破装置は手動ではなく自動(オート)。
 逆に首輪が無ければ禁止エリアも通過可能、即ち町の外にも脱出可能』ということだ。
まぁ……町の外に脱出出来たとしても元の世界に返るには荒木の力を借りるか、
荒木を打倒して元の世界に還る手段を洗いざらい吐いてもらうしかなさそうだが。
誰かが禁止エリアに入ってしまった時の事前アナウンスはあらかじめ録音されたものでも流せばいい。
アラームかスピーカーぐらいは取り付けているだろう。

⑤盗聴について。

荒木の第二回放送での発言を思い出す限り、奴は俺たちの会話内容を把握しているようだ。
ただのハッタリの可能性もあるが、無いと決め付けて行動するのは不用心だろう。
万が一首輪が何かのキッカケで外れてしまったしたら、その参加者の状況を判別する手立てが無くなってしまう。
禁止エリアと首輪の爆弾という制約が形骸化してしまう。
その不足の事態に対応する為にも、参加者の状況はリアルタイムで追う必要があるはず。
つまり……盗聴だ。勿論首輪にしかけてな。
④でも述べたが、こんなに広い町に盗聴機をしかけて傍受するなんてのは不可能に近いし能率が悪い。
『よく聞き取れませんでした』なんて事になれば実にお粗末だろう。
つまり『盗聴はある。首輪に装置がある』が妥当だな。


*  *


さて、首輪についてまとめてみよう。
①『爆弾は本当に有る』
②『首輪の破壊は可能』
③『死体の首輪は絶対に誤作動を起こさない(完全機能停止)』
④『位置把握機能があり、禁止エリアを感知した場合自動的に爆発する』
⑤『首輪に盗聴機がある』

そして推測だが、それによりわかった事実だ。
①『禁止エリアは首輪が禁止エリアと識別して成立する』
②『首輪が無ければ禁止エリアも通過可能、即ち町の外にも脱出可能?』
③『首輪が無いor首輪が外れた者の識別は出来ない』
※この場合直前までの盗聴機能が生きる。うまく首輪を外したとしても、
 外した者が直前に不穏な行動を見せていれば、荒木はその人物に対して警戒を強めればいい。
 外した奴の『演技力』に全てが掛かっていると言えなくもない。

……ここまでまとめてみるとわかる事がある。

*  *


それは一見完璧のようで、所々綻びが目立つという点だ。
偶然であれ故意であれ首輪が外れた者へのその後の対処が何もない(これは俺が知らないだけかもしれないが)。
そして『スタンドによって首輪が外されるという事態をまるで考慮していないということ』だ。
ただの一般人ならば、これだけでも充分だろう。しかしスタンド使いが相手ならばどうか?
例えばミキタカが自分を糸のような細い物に変身したら簡単に首輪をとりはずす事が可能だ。
仗助がいれば無理やり首輪を外した人間をすかさず治療するという事態もありえる(さすがにリスクが大きすぎるが)。
何より俺のスティッキィ・フィンガースは『天敵』とも言える存在のはず。
しかし、現に何事も無く俺は『アイツ』を『処理』することが出来たのだ。
この調子でいけば、残りの参加者全員を同様に『処理』をする事が可能だろう。

…………………………いくらなんでも順調すぎではないだろうか?

実におかしい。こんな『事態』になるのを荒木が予測できないはずがない。
俺をこの殺し合いに参加させた時点で遅かれ早かれこうなる事はわかっていたはずだ。
奴の口ぶりから察すれば、奴は俺たちがスタンド使いであること。個々の能力が何なのか位は知っていてもおかしくない。
最悪、俺たちが徒党を組んで一斉に攻め込んできた時、どうするつもりだったのか。
最初の教会を見る限り、手下と呼べるような人物は見当たらなかった。
あの時荒木の襲いかかった男達を荒木自身が直接手を下したことからもその可能性が高い。しかし実際はどうだ?

――やれやれ…くれぐれも僕を殺そうなど滅多なことは考えないほうがいいっと言おうとしたのに…――
――君たちは私に一泡吹かせようと色々考えているみたいだけどね……!あまり私を怒らせないほうがいいぞ――

思い出せ……思い出すんだ……奴の言動を……。

――あんまり調子に乗られると、私自身が手を下さなければならなくなるんだ――
――こちらとしても、君たちへ罰を与えたという「報告」は今回限りにしたい――

奴の言葉から捉えられる人物像を読み取るんだ……。

――『ジョルノ君は僕の元へ辿り着き、果敢に立ち向かった結果、天へ召されました』……なんて「報告」はねッ! ――

……『辿り着いた』、か。
ジョルノは荒木の居場所を見つけた。だから始末された。あの時の俺のショックは……それなりにでかかったな。
将来の有望ある人物だったのは間違いない。俺が本格的に荒木打倒の決意を固めた瞬間でもあ――





       !?



これは……どういうことだ。奴はなぜジョルノの敗北を放送でわざわざ流したんだッ!?
第二回放送はトリッシュも死んでいる。
偶然かどうかは別にして、大事な仲間が2人も死んだ結果を流せば俺は一刻も早くこの状況の打破に勤しむ事は当然。
ましてやその仲間を葬ったのが主催者自身だとしたら俺は間違いなく参加者達と同盟を結び、例の『処理』を断行。
最後には荒木の討ち取りへと一直線に向うはずだ。いくら荒木が自己顕示欲の強い人間だとしても軽率すぎるッ!
警告どころか、これではまるで『自分の所に攻めてきてください』と煽っているようなものだ。

――今から君達には"殺し合い"をしてもらいます!これはゲームです――
――                     これはゲームです――
――                        ゲーム  ――

……『ゲーム』か。 主催者である奴にとって、この状況の何が『ゲーム』だろうか。
俺たちが殺しあう様を上から眺めるという事だけだろうか。
奴の挑発からは『貴様らもっと殺し合え』という意味は余り感じられない。
さっき言ったとおり『反逆したい奴はかかってこい』という意識が見て取れる。
つまり……いささか妄想の飛躍も禁じえないが……、
荒木の真の狙いは


『ゲームとして俺たちを戦わせ、(最後に生き残った者=最強の人物)と戦うこと』なのか?




だとしたらジョルノは荒木にとって差し詰め『中ボス』といった所か。
そして大勢の仲間を引き連れて襲撃しようとしている俺は『大ボス』の1人とも言える。
『大ボス』の『仲間』は所詮経験値稼ぎの雑魚……これは言い過ぎだが、奴にとっては大差ないだろう。
ひょっとしたら最初から51人全員と戦うつもりだったのかもしれないな。
『最後に生き残った者は元の世界に返ることが出来る』という奴の言葉も合点がいく。
『最後に生き残った者』は『参加者』とは言っていない。
つまり『荒木本人』が『51人の生き残り』と戦い、結果最後の生き残りになったとしても嘘はついていない。
自分が元の世界に帰ればいいだけのこと。

これでようやく首輪に関するいくつかの疑問も払拭できる。
『首輪にいくつかの欠陥が在る理由』、それは『首輪を**する人間が現れるようにする為』だ。
首輪に存在する数々の欠点は、俺たち51人の誰にも首輪を**するチャンスを生み出している。
もし俺がこのまま全員の首輪を**し、勝つ気満々で荒木を打倒しようとすれば、それこそ奴の思う壺だったわけだ。

スタンド使い対策が不十分でぱっと見ると、粗悪品としか思えぬ首輪。
しかしその実態は俺たちが自らの手によって**した勘違いし、そのまま勢いに乗って荒木を出し抜いたと思い込み、
結局奴と直接一戦を交える為の近道切符だったわけだ。

しかしこれが本当だとすると、荒木自身のスタンド能力が気になるな。
自分の能力によほどの自信が無ければ……こんな事をしようとは思うまい。

*  *




これまでの流れをもう一度整理してまとめてみよう。

  • 首輪(爆弾付き=確定)
①『死体の首輪は絶対に誤作動を起こさない(完全機能停止)、しかし首輪は機能停止の如何に関わらず破壊可能』
②『位置把握機能があり、禁止エリアを感知した場合自動的に爆発する(首輪が禁止エリアと識別して成立する)。
  だが首輪が無ければ禁止エリアも通過可能、即ち町の外にも脱出可能?』
③『首輪が無いor首輪が外れた者の識別は出来ない』
※この場合直前までの盗聴機能が生きる。うまく首輪を外したとしても、
 外した者が直前に不穏な行動を見せていれば、荒木はその人物に対して警戒を強めればいい。
 外した奴の『演技力』に全てが掛かっていると言えなくもない。

  • 荒木の最終的な狙い(不確定だが可能性高し)
①『参加者の生き残りとの対戦?』
荒木の言う優勝者=51人の中の生き残り=最強の人間?
その生き残りとの戦いを望んでいる?
※最後に生き残った者は元の世界に帰れる→参加者とは限らない。荒木自身を指してる?)
※第二回放送でのジョルノを始末したという報告はブチャラティへの煽り?
 ブチャラティは首輪の**に最も近い存在。(例:首に****を付けて首輪を体から***)
 ブチャラティが仲間を集めて自分に戦いを挑んで来ることは狙い通り?
※従って荒木は自分の能力に相当な自信アリ?

……ふぅ。とりあえずこんな所か。
とりあえずこの仮説を仗助達に筆談で伝えてみるか。

*  *



「ブチャラティさん……本当にアナタが形兆さんを始末したんですか? 」
「問いただしても無駄だぜミキタカ。この人が形兆をヤッたっつーんならヤッたんだろーよ。
 冷たい事言うようだけどな、俺には反旗を翻すほうがアイツらしいと思ったぜ? 実際に会った俺が言うんだからな」
「そうですか……せめて本人なのかゾンビだったのか知りたかったです」
「どーだろなー。でもワムウの野郎はジジイの事を青年とか言ってたから……ワムウはゾンビの類かもしれねーぞ。
 あいつら1000年は生きてそうなカンジだったからな。ま、流石にもう一度会って聞くつもりはねーがな……」
「『ドッピオ』さんという人物に関して、仗助はどう考えていますか? 」
「わかんねーなぁ……名簿に名前は無いんだからエルメェスさんの勘違いかもしれねぇ……あ、名前の話な?」

白白しい会話をしながら、仗助達は俺に目で合図を送る。
とりあえず一通りの事は彼に話しておいた。
ついでに禁止エリアを始めとした彼らの知らない情報も伝えておいた。
もちろん彼らは既に『俺が形兆を処理した事』について全てを知っている。無論『筆談』でだ。
彼らも形兆の事については『乗り気』だったようだが、今は俺が説得をし、自重してもらっている。

そう、問題は彼らを『いつ、どのタイミング』で『虹村形兆』と同じように『処理』するかなのだ。

今、俺達がいる場所は【E-4】の杜王町商店街付近。時刻は……町の時計を見る限り午後5時50分。微妙だ。
『このあたりに禁止エリアは無い』し、街の中心だけに『人と遭遇しやすい、つまりにもつきやすい』からな。
その上放送が流れれば、ワムウ達が駅から飛び出してくるだろう。
『処理している最中』に『誰かが俺と遭遇すれば』計画は全部水泡に帰す。
そして何より……もしこれからナランチャを始めとする仲間と合流したときに、もし彼らが重傷を負っていたとしたら?
ミキタカにここぞという時に何かに変身してもらう必要があったとしたら?(彼は人間には変身出来ないようだが……)
2人を『処理』するタイミングは特に慎重に決めないとな。

まだまだ俺達は知らない事が多い。
①荒木自身の能力にはあとどれくらいの秘密がかくされているのか?
②荒木の居場所はどこか?(東方仗助曰く、荒木がいた教会は見た事が無いとのこと)
③果たして第三回放送で『アイツ』の名前は『ちゃんと』呼ばれるのか?(作戦の成否に大きく関わってくるので)

荒木打倒へのピースは確実に集まってはいる。
しかし、まだ足りない。表からも裏からも攻めなければ奴は倒せない。
『欠陥品』の『首輪』を用意する時点で、奴の余裕っぷりがみてとれる。

「ブチャラティさん、とりあえずジジィの捜索……手伝ってもらうッスよ」
「南はブチャラティさんが散々探検したんですよね。このまま北へ向かってみるのはどうでしょう? 」
「南を完全に調査し終えたとは言えねーけど……行ってみる価値はあるな。どうッスかね、ブチャラティさん」

自信はある。あわよくば相討ちになる覚悟も出来ている。だがそれだけではダメだ。
『荒木はまだ手の内を全部俺達に見せていない』という事を忘れてはいけない。


……そろそろ午後六時か。
放送が、流れるな。

【ギャングと学生と宇宙人 (遂に合流ゥ!)】
【杜王商店街(E-4)/1日目/夕方(放送直前)】
【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキー・フィンガーズ』
[状態]:無傷(かすり傷、右腕の袖の傷は仗助に治してもらいました)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、フォーク。首輪×2
[思考]:
1)北へ向う。
2)なるべく多くの人を救う。機会があれば仲間と合流
3)荒木の打倒。其の為の秘策アリ?(しかし荒木への警戒は怠らない)
4)『ゲーム』に乗った奴は容赦しないが、ワムウ達はスルー。

[補足1]:ブチャラティはトリッシュがスタンドを使えた事を知りません

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:四部終了時
[状態]:右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み・ 歩行に少し影響)、全身に軽い打撲
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]:
1)どこかに隠れているジョセフを探す為に、北へ向う。
2) 傷ついている参加者がいたら、敵味方関係なくとりあえず『治す』
3)シーザー、シーザーの仲間を探すのは後回し。ドッピオという人物への疑問。
4)打倒荒木! (時間軸のズレに気付いたかもしれない?)

[補足1]:仗助は首輪からの盗聴の可能性、禁止エリアの情報を知りました。
[補足2]:仗助は、荒木の能力(時空操作)に気付き始めました。
[補足3]:仗助は埋葬した遺体がジョセフだとは気づいていません。

【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイアー』
[時間軸]: 鋼田一戦後
[状態]:無傷(仗助に治してもらいました)
[装備]:支給品一式(地図無し)※ブチャラティに返してもらいました
[道具]:ポケットティッシュ
[思考]:
1)ジョセフを探すand味方を集めて多くの人を救いたいので、北に向かう
2)形兆ゾンビ説、というよりワムウの発言(ジョセフ関係)に疑問。

[補足1]:ミキタカは首輪からの盗聴の可能性、禁止エリアの情報を知りました。


【ブチャラティの推論のまとめ】
  • 首輪(爆弾付き=確定)
①『死体の首輪は絶対に誤作動を起こさない(完全機能停止)、しかし首輪は機能停止の如何に関わらず破壊可能』
②『位置把握機能があり、禁止エリアを感知した場合自動的に爆発する(首輪が禁止エリアと識別して成立する)。
  だが首輪が無ければ禁止エリアも通過可能、即ち町の外にも脱出可能?』
③『首輪が無いor首輪が外れた者の識別は出来ない』
※この場合直前までの盗聴機能が生きる。うまく首輪を外したとしても、
 外した者が直前に不穏な行動を見せていれば、荒木はその人物に対して警戒を強めればいい。
 外した奴の『演技力』に全てが掛かっていると言えなくもない。

  • 荒木の最終的な狙い(不確定だが可能性高し)
①『参加者の生き残りとの対戦?』
荒木の言う優勝者=51人の中の生き残り=最強の人間?
その生き残りとの戦いを望んでいる?
※最後に生き残った者は元の世界に帰れる→参加者とは限らない。荒木自身を指してる?)
※第二回放送でのジョルノを始末したという報告はブチャラティへの煽り?
 ブチャラティは首輪の**に最も近い存在。(例:首に****を付けて首輪を体から***)
 ブチャラティが仲間を集めて自分に戦いを挑んで来ることは狙い通り?
※従って荒木は自分のスタンド能力、もしくは戦闘能力に相当な自信アリ?



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キャラを追って読む

91:形兆死亡(前編)~覚醒~ ブローノ・ブチャラティ 114:荒木討伐隊①~合流~
95:Judgment Day 東方仗助 114:荒木討伐隊①~合流~
95:Judgment Day ヌ・ミキタカゾ・ンシ 114:荒木討伐隊①~合流~

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最終更新:2007年10月08日 16:35