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時刻は午後3時を周る。
1時間ほど前に起きた抗戦のあおりを受けた体に手をかけて、ワムウは考える。
第三回放送まで……すなわち日没まで時間にしてあと3時間。
日の光を気にしなければならなかった12時間に別れを告げる事に、ワムウは奇妙な寂寥感を味わっていた。

「タルカス、準備運動を欠かすな。先ほどの戦闘で温まった体を怠けさせてはいかん。
 脆弱な屍生人の肉体は不死以外に誇れる要素は無い。人間時代に培った貴様の怪力こそが重要なのだ」
「ハッ! このタルカス、調子は磐石でございます。夜が近づいているせいか体も昂ぶっておりますゆえ」

駅の奥内で鍛錬をしているタルカスの返事を聞くと、ワムウは駅の東入り口に向って歩いてゆく。
彼はちょっと前から駅の外から感じる気配と視線について考えていた。
誰かが駅の様子を観察している、こちらの出方を伺っている、という事を。
ワムウには、何となくだがそれがわかっていた。東から流れてくる……好戦的で敵意溢れる『空気』。

「………風の流れが激しくなってきたな」

ワムウは歩き続ける。無論日光には当たらぬように。
彼が駅の東改札口付近まで進んだ先には、一頭の吸血馬がいた。
深夜の町並みを共に行動した忠実な『足』。ワムウは来たる夜に備えて、これまでずっと駅内で休ませていたのだ。

「どうだ? 体調は優れているか? 夜になったらまた一働きしてもらうぞ」

胴をさすられた吸血馬は答えるように鼻息をブルルと鳴らす。
その反応を見たワムウはフッと笑いながら踵を返し、再びタルカスの所まで戻る。
そしてワムウはタルカスに向って何かを放り投げたのであった。


「食え。先ほど我々に戦いを挑んできた人間の死骸だ。腹の足しにはなるだろう」
「ワ、ワムウ様! ありがたき幸せ! 頂きます!」

ワムウはがつがつと食い漁るタルカスをじっと見て、更に続けて別の何かを渡した。
それは自分自身の支給品である手榴弾と、リキエルのディバッグであった。

「貴様は武器がないと戦えぬのだろう? 鎖とまではいかないが、爆弾とこのディバッグをやる。
 ディバッグには何か支給品が入っているようだ。無いよりはマシだろう」
「お……おお~~! ワムウ様! とんでもございません! ワシには先ほどの食事だけで充分でございます! 」
「私がやる、と言ってるのだ。逆らうのならここで殺してやっても構わんのだぞ」

ワムウの態度にタルカスはハッとする。
よほど凄まじい殺気だったのか、彼はそのまま頭を垂らし何も言わずに受け取った。
しかしタルカスはどこか納得がいかない表情をしている。
これまでただの下僕としてしか見なされていないと考えていた彼にとって、このほうな施しは異様に感じたのだろう。
タルカスは頭を上げて、ワムウに無言のメッセージを目で伝えた。
ワムウはタルカスの疑念の視線を見ると、黙ったまま駅の入り口を眺めた。

「……タルカス、今この瞬間から俺はお前を破門にする。もう貴様は自由だ」
「な、なんですと! ワムウ様――」
「先から東の方より、何か強大な戦意を感じるのだ。一体どれほどの人数なのかはわからんが、
 『それ』は近い内……おそらく日没前にやってくる。流れる『風』が私にそれを教えているのだ。
 きっとジョースケや、あの神父達に勝るとも劣らないな熾烈な戦いがおこるだろう。
 この駅もただでは済まい。私も貴様も無事で済むとは思えん……」
「な、ならば何故ワシを追放するのです! 今こそあなた様の為に腕を振るいたき存じ――」
「私は全力で迎え撃つつもりだ。形振り構わぬ戦いをするだろう。だから、そこにお前はいらない。
 他人という概念が不要。助太刀という概念が不要。共闘という概念が不要。俺は自分自身だけに意識を注いで戦う。
 貴様は貴様で好きにしろ、だが俺はお前を何とも思わない。ゴミクズのように敵や障害物もろともなぎ払わせてもらう。


 例え貴様が危機に陥ったとしても、俺は絶対にお前を助けることはしない。お前も俺を助けるような真似はするな。
 この世界……最後に生き残ったものこそが勝者なのだ。貴様は生き残ることだけを考えておけ」

いつもの倍以上に多弁なワムウに、タルカスは心底驚いた。
タルカスは、ワムウが自分に対してここまで意見する事を想定したことはなかった。
それがかつて王国護衛騎士として生きてきたタルカスにとっての常識であったからだ。
―――――『兵隊は何も考えなくていい』。
タルカスは妙な胸騒ぎを覚えたのか、目を瞑り考える素振りを見せる。
一体これから何が自分達を巻き込んでいくのか、と言わんばかりのしかめっ面だ。
そんなタルカスの姿を見て、ワムウは笑いながら演説を続ける。

「そう弱気になるな。そうだな……もし万が一にでも貴様が生き残ることが出来たら、何か褒美をやろう。
 部下としてではなく、ただの1人の他人としてだ。それなら俄然やる気が出るだろう」
「……ワムウ様、無礼を承知で申し上げます。それならば奴にも褒美をお願い出来ないでしょうか? 」

タルカスは駅の東の入り口の方を指差す。
そこには、今か今かと発車を待ち構えている吸血馬の姿があった。

「……こやつめ。ハッハッハッ……」

ワムウはそのまま笑い声と共に、駅の奥の闇に姿を消えていく。
その姿を見送りながら、タルカスは吸血馬の下に行き馬の頭をなでた。

「吸血馬よ、日没になったら直ぐにここを出るぞ。最悪ワムウ様だけでもここからお連れするのだ。
 お前にはそれが出来る。チャンスは私が作るから貴様は西の入り口で好機を待っていろ……よいな」

吸血馬はタルカスの言葉に応えるように首を振るわせ、蹄の音を鳴らしながら西の入り口の方へ歩いてゆく。
それに安心したのか、タルカスはそのまま駅の東の入り口付近にどっしりと座り込んだ。
日光があたるかどうかギリギリのラインである。

「……このタルカス、ワムウ様の最後の命令、『自分の好きに行動する』を遂行いたします。
 ワシは、あなたの為に全身全霊を尽くす! 神であろうと……決してここは通さぬぞッ! 」



立ち往生ならぬ座り往生のようにどっしりと構えるタルカスの姿は、
はたから見れば、かの豪傑武蔵坊弁慶よりも荘厳かつ豪胆さがあったように感じ取れる。
果たしてタルカスはワムウを守りきれるのか。


この話は、この後激戦に巻き込まれていく者たちへの……プレリュードに過ぎない。




【杜王駅内部(E-3)1日目 午後(3時)】

【ワムウ】
[モード]:『風』
[時間軸]:首だけになり、ジョセフが腕を振り下ろした瞬間
[状態]:服が爆風でけっこう焦げたが体は治った
[装備]:無し。
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1) 駅の中で休憩。いずれ来るであろう『何か』の為に戦闘態勢。
2) 戦いを楽しみつつ、優勝を目指す。ただ深追いはしない。
3) タルカスはもう眼中にない。
4) でも、もしタルカスが生き残った時は褒美をあげる(何かは考えていない)。


【タルカス】
[種族]:屍生人(ゾンビ)
[時間軸]:ジョナサンたちとの戦いの直前。ディオに呼ばれジョナサンたちと初めて対面する前。
[状態]:軽い全身火傷と全身打撲。
[装備]:なし(爆発の拍子にミキタカを手放してしまいました)
[道具]:支給品一式(自分、プッチ、リキエル)
    手榴弾×6、リキエルの支給品(詳細不明)、ヘヴンズ・ドアーのDISC、植物図鑑、ディアボロのデスマスク
[思考・状況]:
1)東の駅の入り口を守る。
2)日没になったら馬にのって駅から脱出。
3)自分よりワムウの命を優先。
4)取り逃した虹村形兆、ブチャラティ、ミキタカへの僅かな執着心(ワムウの命に背いてまで追う気はないが)


[補足1]吸血馬1頭+チャリオットは駅の西の入り口付近で待機中。
[補足2]杜王駅の東入り口は治されたため通行可能になりました。

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95:Judgment Day ワムウ 119:全力疾走
95:Judgment Day タルカス 110:その一撃は緋の色