『その時に、また私の声が聞けるといいね―――』

……私、ジョージ・ジョースターはホテルのロビーにあるソファーに座っている。
どこから流れているのかわからないが、荒木による『放送』というものが終わったらしい。
なんという事だ。ここにいた者の3分の1が既に犠牲になっている……正気の沙汰ではない。
私はがっくりとうなだれる。
神よ……ここで死んでしまった全ての者に……安らぎを与えたまえ。

ひとしきり黙祷を終えると、私は隣に座っていたF・F君の方へ顔を向ける。
我々の中で唯一女性である彼女は、新たに加わった禁止エリアと犠牲者の欄にペンで斜線をいれていた。
知り合いの名前が挙がらなかった故か、実に落ち着いている。
花京院君の話によると、彼女は人間ではなくプランクトンという小さな生物が集まった生命体らしい。
何が何だかサッパリわからないのだが、おそらく未来の技術が使われているのだろう。

「……思いつめてもしょーがねぇーぜ、ジョージさん。アンタはなんでも背負い込み過ぎだ。
 どんなに頑張っても全員を救うなんて不可能だよ……だからもうこれ以上『犠牲』は増やさない。
 アタシ達がすべきなのはソコだろ?  赤の他人にまで一々反応してたら身が持たねぇ……。
 こいつ……ジョンガリ・Aの野郎を見てみろよ。顔色一つ変えやしねぇ」

F・Fくんの言葉に私はハッとする。どうやら私の視線に気づいていたらしい。
彼女にありがとう、と一声かけて私はF・Fくんの隣にいるジョンガリ・Aという男へ視線をやった。
元軍人で、狙撃手。盲目だが体はガッシリしている。
F・Fくんの話によると。彼は気流で周りの様子を探ることが可能だそうだ。
今は危険人物ということで我々が拘束している。見れば見るほど不気味な男だが……見捨てるわけにはいかない。
F・Fくんにも再起不能にはさせないでくれと、約束させておいた。
なぜなら彼は我が息子ディオ・ブランドーの……いや、未来の世界のディオ・ブランドーの、部下の1人だからだ。
ディオやジョンガリ・Aにとって、ジョースターの血統である私は目の上のたんこぶらしい。
だから私は、彼らにこの身を捧げるフリをして接触する作戦をいずれ実行しようと思いたった。
皆に内緒でこの作戦を実行するうえでは、ディオの部下である彼がいたほうがよりスムーズに行くだろう。

「お~い、旦那。屋上に行ったが、ホテル周りの道路には誰も見あたらなかったぜ」
「来たか……ポルナレフ……てめーちゃんと調べたのか? 」
「当たり前だろ……ところがどっこいで人っ子1人いなかったんだなこれが。
 もしいたとすればの話だが建物の影に隠れてたのかもしれねーがな……」
「ハァ……やっぱり花京院かナランチャに頼むんだったぜ」
「ケッ、奴らがホテル内部の捜索に出たっきりだから俺に頼んできたのはどこのどいつだよ」

F・F君に悪態をつくこの男はJ・P・ポルナレフ。この世界で私と一番付き合いが古い男だ。
カウボーイのガンマンのような出で立ちで、拳銃使いらしい。何故か私のことを旦那と呼ぶ。

「ジョースター卿、今戻りました。ナランチャ君も一緒です」
「ああ、ご苦労だったね花京院君、そしてナランチャ君…………二人とも、大丈夫かね」

私は最後に現れた二人の少年に声を出迎える。名は花京院典明とナランチャ・ギルガという。
……共に先程の放送で仲間を失った者同士だ。
私の問いに花京院君は黙ってうなづくだけだが、ナランチャ君は汗だくになって私に寄りかかった。

「ジョージさん……俺、怖いよ……ビビっちゃならねぇ、てのはわかってるんだが……正直アラキが怖ぇ。
 ジョルノの野郎もトリッシュもそんなに仲良くなかったけどよぉ……仲間だったんだ」
「ジョルノ君は、荒木が直接始末したなんて言っていたね……君の悔しい気持ちは痛いくらいわかる」
「……ジョルノは15のガキだったけど頭はフーゴみたいに良かった。だからアラキに勝てる『何か』があったと思うんだ。
 でも……死んじまった。そこがヤベェんだよ!
 ジョルノが『何か』をやろうとしたって事は、今生き残っているブチャラティにだってそれが出来ると思うんだッ!
 このままだとブチャラティもヤられちまうッ! そうなったら……俺は、1人ぼっちになっちまう」
「ナランチャ君、このままだと仲間が全滅してしまうだって?
 それは君が『この世界にいる全ての者が荒木に絶対勝てない』と思っているからだよ。
 逆に考えるんだ。『ブチャラティ君なら、ジョルノ君がやった「何か」でアラキを打倒出来る』と考えるんだ。
 勝機は必ずどこかにある。私はブチャラティ君……そしてここにいる皆を信じるよ」
「ジョージさん………………」

ナランチャ君は私に抱きつき、むせび泣いた。
この一筋縄ではいかない状況……一刻も早く打破せねばなるまい。

*  *


ナランチャの野郎が泣き止んだ後、アタシ達6人はホテルを出た後の拠点について話し合った。
アタシとジョンガリが午前中に歩いた道が誰とも遭遇しなかった事を考慮し、
進行方向は比較的安全な西へ、拠点は中腹地点となる【E-5】が選ばれた。
ジョンガリは手と上半身を縛ったままにして、一緒に連れて行くことになった。
逃げられないように縄を持つ係りはアタシだ。
ホントは置き去りにしたかったんだが……ジョージさんの願いなら断れねぇしな。
まぁ第二放送前の30分くらいの尋問で全てを吐かせたとは思えねぇし。
早朝の時、アタシに言った事ばかり話しやがって……「ほとんど真実だ」なんて誰が信じるかよ。

こうして、方針が定まったアタシ達はホテルを後にした。
――そして今、アタシ達は突如現れた1人の男と対峙している。

「ごめん……まだCO2レーダーを発動させてなかった。見ようとしたら既にあそこにいたんだ」

ナランチャが申し訳なさそうに皆を見る。
だが皆はナランチャの方を見ようとはしない。それどころじゃねぇからだ。
あの男が何者で、何を企んでいるかは知らねーが……こうゆう睨み合いは目を逸らしたら負けだからな。
だが、そうこうしている内に、男が人型のスタンドを出してきた。野郎ヤる気かッ!

「法皇の緑!」「エアロスミス!」「フー・ファイターズ!」
「そして皇帝ッ!……おい、妙な真似しやがったら4丁の『スタンドの銃』がテメーを蜂の巣にするぜッ!」
「ポルナレフ君! さっき話しただろう。攻撃は最低限、防御はしっかり、だ。 余り挑発しないように」

こちら側も負け時とスタンドを出して構えるが、ジョージさんの言葉を危うく忘れる所だったぜ。
こっちからの必要以上の干渉は自重しなきゃな。
しかし……同じタイプのスタンドがこうも4つ揃うと、流石に壮観だな。

「ヒッ…ヒッ……! ヒィィィィィ……!」

男は流石に旗色が悪いと思ったのか、慌てふためいて逃げ出した。
花京院が逃がすまいと『法皇の触手』で男のスタンドを捕まえようとしたが、
男のスタンドは細切れになって一目散にいなくなった。一体何を考えてるんだ?

「や、止めろォ……来るなッ! もう、沢山だ……来ないでくれェーッ! 」

西部劇のゴロツキがわめくような捨て台詞を吐いて男も退散する。
アイツは何の罪もないただの一般人だったのだろうか……だとしたら悪い事しちまったな。
てっきり敵かッ!、と息巻いちまったぜ。ジョージさんも少し怒ってるようだ。
そりゃそうだよな。せっかく仲間に出来たかもしれねぇ弱者を助ける事が出来たかもしれねぇのに。

「み、皆……まだだ。まだ、レーダーが……1人探知してるッ!」

* *


ナランチャ君の指示に従って、僕とポルナレフは慎重に足を運ぶ。
F・Fさんとナランチャ君はジョースター卿の護衛を任せている……今度は誰だ……誰が現れる!
出来れば同じ世界の知り合いのほうがありがたい……“本物のポルナレフ”がならば文句なしだ。
僕の隣にいる男、ホル・ホースにいい加減“ポルナレフ”なんて名乗らせるのは正直我慢の限界だからな。
とはいえ、贅沢は言ってられない。せめて先程の男のように躊躇して逃がす様な事は避けたい。
ゆっくりと……中国人のする太極拳の動きのように……進むんだ。

(そこの角を曲がった所にいるぜ花京院……影が見える。1、2の3で行くぜ)

ホル・ホースが建物の角から見える影を指差している。僕も相槌を打ちながら『法皇の緑』を構える。
さあ、行くぞ……1、2の3!

「オラァーッ!動くんじゃあねーゼッ……てウオオ!?」
「!……お前達か。ゾッとしたぞ花京院……そしてホル・ホース。何故お前達がここで……」
「わぁーッ! わぁーッ! ちょっと黙れアヴドゥル! 」
「や、止めろッ! 背中を見るんじゃあないッ! 」

……なんだろうか。せっかく仲間に遭遇出来たのに、この空しい気持ちは。
いい歳をしたムサイ男2人が慌てふためいて縺れ合っている。
イギーの死で受けた悲しみも色あせていくように感じた。すまない、イギー。

「2人とも落ち着いてください。まずはアヴドゥルさん……ご無事で何よりです。
 まず最初に言っておきますが、コイツの事は“ポルナレフ”と呼んでやってください。
 理由はその内わかります。くれぐれも本名で呼ばないでやってください」
「……よくわからんがわかった。よろしくな、“ポルナレフ”。
 あぁ、そうだ。こちらも説明したい事がある。理由はその内わかるが……私の背中を決して見ないで欲しい」
『いいよー見てッ! アヴドゥルの背中を見てくれ! ねっ!』

突然のことに僕とホル・ホースは互いを見合わせた。
何だ今の声は? アヴドゥルさんの背中の方から聞こえたぞ。
アヴドゥルさんはアヴドゥルさんで、背中を壁にピッタリくっつけて蟹のように僕達から離れてゆく。

『ハハハハーッねっ……アヴドゥルは背中を見せられないのさ……見せたら養分を吸い取られて死ぬんだからねっ!
 これがボク、『チープ・トリック』のスタンド能力なのさッ! 最も、ボクはただ相手に囁く事しか出来ないけれどね。
 あ~そうそう……本体を倒そうなんて考えないほうがいいよ。取り憑いている人間こそがボクの本体なのさ。
 つまりボクを背中から引き剥がそうとしたり攻撃しようものならダメージは全てこのアヴドゥルに返ってくるの。
 だから一度取り憑かれたらもうアウトってわけ!ねっ! 』

僕は唖然として、アヴドゥルさんを見る。
この世にこんな恐ろしいスタンドがあっていいのか……背中を見られただけで再起不能どころか死亡してしまうなんて!
今まで色んなタイプのスタンドと遭遇してきたが……あまりにも、特殊すぎる。

『そうそう、背中を見られたらアウトって言ってたけど背中を見た奴もアウトだからねっ……なんでかって? 
 背中を見られた人間の養分を吸い取り終えたら、今度は背中を見た人間にボクは取り憑いちまうのさ。
 つまりっ!対抗手段はただ一つ。ボクが取り憑いてる人間を殺せばいいんだよねっ! 
 そうすればボクはもう誰にも取り付けずに消滅しちまうのさっ……!』

……ホル・ホースが少し僕達から距離をとり始めた。さすが普段逃げ足が早いだけある。お前は厄介事が嫌いだものな。
アヴドゥルさんは話す事を『チープ・トリック』に全部言われてしまったせいか、お手上げのポーズをするだけだ。
取り合えず事情はわかった。ともあれようやく心を置ける仲間が出来てよかった。
チープ・トリックがここまでベラベラと自分の能力を説明するのには違和感があるが、今は黙っておこう。
アヴドゥルさんは信頼できる仲間だからな。ジョージさん達を呼んでも大丈夫だろう。

* *


どうやらレーダーに反応していた人物は花京院とポルナレフの仲間らしい。
背中にやっかいなスタンドが取り憑いちまってるみたいだけど、早速打ち解けている。
今はホテルで俺達がやった時みたいに、お互いの敵とか味方の情報交換をしてるな。
いいなぁ皆、知り合いがいてよ……そりゃ……今ここにいる奴らだって大事な仲間だけどな。
ジョージさんの言う事に異論はねえ。
でもよー……こうも見せ付けられちまうと……ちょっと、な。
俺にはもうブチャラティしかいねぇ。他の奴らには生きているかもしれない仲間もいるのに。
あのジョンガリ・AにだってDIOがいるし……なんだかなーって感じだぜ。

「なあ、そこの……ナランチャ・ギルガ君だったかな? モハメド・アブドゥルだ……少々不恰好な形だが握手しよう。
 これから共に荒木を打倒するんだ、という誓いの下に!」

俺の手を揺さぶった後、アヴドゥルさんはそのままジョージさん達とアラキの能力について色々話し合っている。
誰かの意見が出る度にオーバーなリアクションを取ったり……豪快に笑ったり……。
背中を見られたら死ぬかもしれないのに、随分テンションが高い。
花京院の話だと相当な修羅場をくぐってるらしいが……なんか暑苦しい人だな。
俺、こうゆうの苦手だぜ。

「ウワッハハハハー……」

楽しそうだよなぁ……俺も普段はあんな感じだったんだろうか。
フーゴ、アバッキオ、ミスタ、ジョルノ、トリッシュ……お前ら本当にアラキにやられちまったのかよ?
俺たちはそんなに弱っちぃのかよ? 修羅場なら……俺達だってそれなりにくぐり抜けてきたハズだぜッ!?
そうだ……俺は……俺達は、ギャングなんだ……ブッ殺すブッ殺す喚いてるチンピラとは違うんだッ!!

「ナランチャ君、そろそろ行こう。アヴドゥル君が自由に動けない以上……早く話していた拠点へ急ごう」
「え? 」

気がつけば、俺以外の全員が既に出発の準備を終えて先へ行き始めていた。
畜生、なんだよ……皆して置いてきぼりかよ。

「私は後から追いていきますよ……壁づたいに移動しなければいけませんからね。
 なぁーに自分の身は自分で守れます。私のスタンドの強さは既に説明した通りです。ご安心を。
 ジョースター卿とナランチャ君も急いで【E-5】に向かってください」
「さぁナランチャ君、我々も行こう」

――こうして、ジョージさんに連れられて俺もアヴドゥルさんに別れを告げた。
なんだか憂鬱だなぁ……確実に良い方向へ向かっているはずなのに。
何となくにレーダーを確認する。後方約数メートル……アヴドゥルさんの反応はちゃんとある。大丈夫のようだ。
それにしてもデカイ反応だな……豪快な性格の人は呼吸量もデカイのか?
CO2の量が半端な…………………………………

しまった……コイツ……こ の 野 郎 ォ…………!

「どうしたナランチャ君。後ろを振り向いて…………!?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


「我がスタンド『魔術師の赤』は炎を操る……『標的』は『スタンド使いではないジョースター卿』ッ!
 スミクズになってもらおう……『C・F・H(クロスファイアーハリケーン)』ッ!! 」
「危ないナランチャ君ッ!」
「かばうのはアンタじゃねぇーーーーーーーーッ! 俺だッ!俺なん―――――」

ゴッバォンッ!

*  *


あ……ありのまま起こった事を話すぜ!
『爆音がしたと思って振り向いたらナランチャと旦那が倒れていた』
な……何を言ってるのかわからねーとは思うが俺も何が起こったのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだぜ。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

「ホル……いやポルナレフッ! アヴドゥルさんは周りにいるかッ!? 僕も法皇の緑で探しているが見つからない!」
「じょ……冗談じゃあねえ。お前が見つけられないのに俺が見つけれるかよ」

何をマヌケな返答してんだ俺は。これじゃポルナレフと変わんねーだろーがァッ!
旦那とナランチャは花京院たちに任せよう。今は周りの観察……もとい俺自身の安全の確保が先だぜッ!
クソッたれ……どうなってんだ? アヴドゥルの野郎があの2人をやったのか? 奴は最初から俺達を殺すつもりだったのか?
奴が次に狙ってくるのは俺か? それとも花京院か? 

「もういいポルナレフ! お前もコッチへ来い。さもないと全てを皆に話すぞッ!」

チッ……ここぞとばかりに付け上がりやがって。だが、嘘をバラされるのはゴメンだ。
しょうがねぇ……アヴドゥルが何をしてくるかわからねぇ以上付き合うしかねぇな。

「…………で、どうなんだ。旦那とナランチャの怪我は」
「2人とも死んじゃあいねー。命に別状があるかどうかはわかんねーけどな。
 それに火はもう消えてるしジョージさんは大丈夫だ。軽い火傷を負っただけ……アタシの治療でなんとかなる。
 けど酷いのはナランチャだ……上半身……というより顔の表面がモロに火を被っちまってる……!
 なんだってこんな厄介な火傷を負っちまうんだよ……皮膚は治療出来るかもしれねーが……。
 目は……マブタも燃えちまってるから駄目かもしんねぇ……」
「なんだって……うげっ!」

思わずゲロを吐いちまうところだった。ヒデェ……顔がグチャグチャにただれてるじゃねーか。
それにナランチャの目が……まるで腐った果物のように……おえっ。
F・Fのプランクトンが一生懸命治療しているが、こりゃ視力は手遅れかもな。

「う……む……」
「旦那!気がついたか!」
「わ……私は……ナラン……チャ君は……」
「旦那、あんたは大した事ねぇよ。だが……あんたをかばったナランチャが目をやられたらしい」
「わ、私を……彼が無理な体勢で私を庇った為に……こんな悲劇が……私のせいだ……」

旦那はすっかり滅入ってんな……そして花京院はまだアヴドゥルの野郎を見つけてないようだ。
周りの建物の中を移動してるから見つからないのか? 俺の『皇帝』は中距離だから役には立たねぇ。
こんな時こそ、ナランチャのレーダーがあれば一発なんだが…………レー……ダー……?

まさか、いくらなんでも……いや待てよ。さっき旦那達とアヴドゥルは仲良く喋ってたよな。
旦那はどこまで奴に話していた? まさか俺達のスタンド能力まで話してたんじゃあねぇよな!?
だから最初に『スタンド使いじゃあない旦那』と『二酸化炭素探知レーダーを持っているナランチャ』を叩いたのかッ!?
やべぇぜ……俺のスタンドは元々アヴドゥルに筒抜けだからいい。
だが『それ以外』はヤバイッ! 『今の俺達の戦力が全部』筒抜けなのがヤバイぜッ!
この仮定が事実ならば……やってくれたな旦那ァ…………ムカッ腹が立ってきたぜ!

「オラッ! ナランチャッ! さっさと目を覚ましやがれッ! このボケがッ! 」
「怪我人をボコるんじゃねェェェェ治療中だぞォォォォォォポルナレフゥゥゥゥ!」
「うるせープランクトンッ! 花京院がアヴドゥル見つけられないのなら……コイツのレーダー使うしかねーだろがッ!」
「落ち着けポルナレフッ! 目を覚ました所でレーダーが使えるとは限らないだろうッ!」

「ごめん……駄目だ……レーダーはもう……使い物にならねぇ…………!」

……鶴の一声ってのはこうゆう事を言うんだろうな。
ここにいる全員が声を出そうとしねぇ。こいつに声を掛けようとしねぇ。
それだけ……ナランチャの一言は俺達に響いてるってことか。
俺がヤキ入れたから目を覚ましたとか、アヴドゥルの事とかがどうでもよく感じてしまう。
そんな気分にさせる位の現実が……コイツが視力を失ったという現実が……今、俺達を包んでやがる。

*  *


ナランチャの一言がアタシ達の心を揺さぶる。現実が突き刺さる。
畜生……こんなにも治療に全エネルギーを注いでるのに……治せないなんてアリかよ!
アタシの治療はそもそも薬でもなんでもねぇ。ただフー・ファイターズの一部詰め込むだけだ。
従来より人の回復力を高める効果はそれなりあるみたいだが……それはあくまで自然の治癒力を借りたものだ。
完璧に修復させるものとは決して言えねぇ……。

「ナランチャ……お前、体は大丈夫なのか?」
「勿論痛ぇー……だが大丈夫だ。目は見えねぇけどな」
「そうか……すまねぇ。ここぞとばかりに役に立てねぇ能力で」
「F・Fさん……アンタは既に一回俺の傷を治してるじゃあねぇか。俺はあれで充分だぜ。
 そんな事よりよ……なんか焦げ臭くねぇか」

そんな事、と言い返そうとしたアタシは周りの異変にようやく気がついた。
辺りが……一面火の海になってやがる! アヴドゥルの仕業か?このままアタシ達と火に飲み込むつもりなのかよ……!

「花京院、いつからこんな事になったんだッ!? 」
「いつから、なんて質問は無意味です。これがアヴドゥルさんの『魔術師の赤』。
 ……炎を操る彼にとってこんな事は朝飯前です。その気になったら一瞬でこの炎を消す事も出来ます」
「どうするよおめーら。あのブ男は間違いなく俺達を殺す気だぜ……旦那とナランチャを抱えて逃げ切れるだろうか」
「ポルナレフ……まるで二人が足手まといみてーな言い方だな。置き去りにするなんてアタシは反対だぜ」
「それなら二手に分かれるのはどうだ? 逃げ切れる確立がグッと上がるぜ」
「どうせジョースター卿を引き受ける代わりにナランチャを押し付けるつもりだろう……その手には乗らんぞ」

花京院とポルナレフが睨み合っている。なんなんだこの二人……仲間じゃあなかったのかよ。
まるで本当は仲が悪いみたいな雰囲気じゃあねーか。どうしちまったんだよ。
仲間ってのはこんな時こそ一致団結しなきゃいけねーんじゃねーのかよ……そうだよな徐倫?

「いいよ二人とも……俺が残る。ここに残って……奴とドンパチしてやるぜッ!」



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66:激戦(後編)~零れた笑い~ 花京院典明 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
66:激戦(後編)~零れた笑い~ ナランチャ・ギルガ 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
66:激戦(後編)~零れた笑い~ ホル・ホース 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
66:激戦(後編)~零れた笑い~ ジョージ・ジョースター1世 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
66:激戦(後編)~零れた笑い~ F・F 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
66:激戦(後編)~零れた笑い~ ジョンガリ・A 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
77:背負うもの/背負われるもの モハメド・アヴドゥル 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②
86:断末魔のエコーズ 噴上裕也 94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その②

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最終更新:2007年06月27日 06:20