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『死亡したのは――――』


* *



ブチャラティの連中の新入り、ジョルノ・ジョバーナ!
ボスの娘、トリッシュ・ウナ!
そして暗殺チームのリーダー、リゾット・ネェロ!

グヘッ!グヘヒハホッ!
俺の脳裏に浮かんだのは、聞き慣れている、あの落ち着き払った、静かな――
しかし、その内に殺意への歓喜を、聞き心地の良いドス黒さを秘めた声。
『――弱い奴は、放って置いても勝手に死んで行く。
 最終的に行き残るのは、我々強者のみだ――』
グヘッヘッ、ヘッ……チョコラータの言葉通り。
三人は、その弱さゆえに死んだ。弱ければ淘汰される。殺される。至極尤もな、当然の話だ。
エ―――ッと、何て言ったっけか……『弱肉ナントカ』って奴だ。グヘッ、ヘッ、実に愉快じゃねーかよ。
あの荒木のオヤジ、殺し合いの『ゲーム』なんて、実に愉快なアイデア実践してくれるよなァ。
野性味タップリ、殺意と殺意の真っ向勝負、俺にピッタリの舞台だ。
よし、俺も暴れまくるぜ。他の連中に負けてられネェ。『殺しまくって乗り切るッ!』

まぁ、今は角砂糖に目が離せねぇけどな……ああ、ウェザーはどうしようかな……。
ウェザーが死んだら角砂糖も食えないだんよな……?
角砂糖くれなくなったら殺すかな……。

ところで、リゾットって俺がこの街に来る前に、もう死んでなかったっけか……アレ……?




* *



あたし個人としては、今回の放送の中に特に気になる内容は無かった。
徐倫、F・F。あたしの仲間と言える人間の名前は、幸い一つも並ばなかったからな。

だが……私の横で、腕を組んで座っている東方仗助。
こいつは、どうやら……。
放送が終わってから、椅子に座ったまま、ピクリとも動きやしない。
珍妙な髪型が隠しているせいで、表情は窺い知れないが。
今の荒木のフザケた放送で、決定的な『誰か』を失った事は、その様子から嫌でも伝って来る。
奴に掛けてやる言葉を、あたしは持ち合わせていなかった。
仲間が死んだ奴に、どんな言葉を掛けろと言うんだ?
ただ、あたしは待つ事しか出来なかった。仗助が顔を上げ、どんな表情を見せるか。それを待つ事しか。



ふと壁際を見ると、注意深くメモの内容を書き綴っていたウェザーがあたしに近寄って来た。
奴はあたしの後頭部に顔を寄せ、小声で囁く。
だが、その様子は、ウェザーの持つ癖の為のものでは無さそうだ。
つまり奴も、うなだれる仗助の心情を察していた、と言う事だ。
「……向こうの部屋で、少し話す事がある。来るんだ……」
あたしは視線だけでウェザーに振り向き、小声で奴に訊いた。
「放送のメモは終わったのか」
「……取り敢えずは、な。気になる事が幾つかある。いずれも重要な問題だ。検証をしたい……」
「検証? 何のだ?」
「……この状況、謎が多過ぎる。情報の整理をしたい。
 仗助君も話に加えたかったが、あの様子を見るに……」
「ああ、分かったよ」
あたしは奥の部屋に向け歩き出した。ウェザーは周囲を一瞥する。
振り返ると、仗助はやはり机の上で微動だにしない。
多少心配だが、今はウェザーに従う事にする。
セッコの野郎は床に横になり、ガリガリ音を立てて角砂糖を貪り食っている。
他の物は全く眼中にナシって感じだ。
横にウェザーが製造した角砂糖が幾つか置いてある。これから時間を掛けて食い潰すつもりらしい。
『ここでじっとしていろ』と命令したウェザーに、奴は忠実に従っているのだ。
寝惚けた様な表情で、黙々と白色の物体を齧り続ける、奇怪なスーツに身を包んだ男。
それにしても、何て不気味な奴なんだよ……コイツは。




「で、何の話なんだ?」
部屋に入るなり、あたしは早速ウェザーに尋ねた。
だが奴は質問を質問で返してきた。それも、かなりイカレた質問で。

「唐突に思われるかも知れないが、最初に訊かせて貰う。
 お前は“何年何月何日に荒木に連れて来られた?”」

その余りの意味不明さに、思考が纏まらない。
「は……?何言ってるんだ?」
「質問を変えようか。お前は“G.D.stに居たのか?”
 まだ刑務所の中だったか?最後に戦ったスタンド使いは誰だ?」
さらに意味不明だ。こいつは何を言ってる?どうなってるんだ?
「そんな、当たり前の質問を――」
だが、あたしの言葉を遮る様にウェザーの口から出た言葉は、
驚愕に十分に足るものだった。
「俺は……既に脱獄している。俺がこの場に連れて来られたのは『脱獄後』だ」
もう訳が分からない。疑問がそのまま言葉になる。
「そんな、馬鹿な話が……脱獄、だと?」
「口ぶりから察するに……やはり俺の推測通りだ。
 エルメェス、お前はまだ脱獄していないのだな。
 まだ、徐倫と共に刑務所を出ていない時点」
「え……えッ!?」
あたしの反応と対照的に、ウェザーは落ち着いた口調で語り始めた。



「いいか。良く聞け。今、推測は確信に変わった。
 俺達の時間軸はバラバラなんだ。荒木に呼び出された時間が、ズレている。
 どういう事か? つまり、俺は『オーランドから、脱獄後に』お前は『刑務所から、脱獄前に』
 この場所に連れて来られたと言う事だ。薄々おかしいとは思っていた。
 既に死んでいる筈の『ジョンガリ・A』そして『スポーツ・マックス』。
 何故この場所で参加者として存在しているのか、疑問だった。
 『F・F』も、この街では生きているが……時間軸の錯綜で、全て説明が付く」
「今、何て言った……!?」
ウェザーはやはり淡々とした口調で語った。
「特に隠す理由も無いから、ハッキリと言わせて貰う。
 俺が呼び出された時間軸……『脱獄後』の時点で、フー・ファイターズは既に消滅している」
「F・Fが――死んだだと!?」
「エンリコ・プッチ神父――『ホワイトスネイク』の手によってな」
「神父だと!? 誰だよ、そいつは!」
「これから順を追って話す。二人の時間の間隙を埋めよう。まずは、それからだ」


* *



『未来人』ウェザーから聞かされた話一つ一つに、あたしは驚き、感心してしまった。
奴から話された話は、要約すればこんな所だ。

  • 二人がこの街に呼び出された時間軸は数週間程ズレている
  • 原因は恐らく荒木のスタンド能力
  • 死んだ筈の人間が存在しているのは『死ぬ前の時点』でこの街に連れて来られたから
  • 他の参加者が過去の人間、或いは未来の人間である可能性がある
  • 殺人鬼ナルシソ・アナスイについて
  • 『ホワイトスネイク』の本体、プッチ神父について
  • 懲罰房での戦闘とF・Fの死亡
  • 徐倫、エルメェス、エンポリオ少年、そしてウェザーとアナスイの脱獄



驚くべき事実を、淡々とした様で語るウェザー。
この沈着さは、奴が『記憶の無い人間』だから成せるものなのだろうか?
「大体、こんな所か」
ウェザーは一通りの話を終えたらしい。あたしは奴に頷いた。
「ああ、大まかだが、事情は分かったぜ。
 F・Fは、本当に死んじまったのか。
 『ホワイトスネイク』……プッチ神父か……許せねえ」
「“脱獄した”お前も、その考えだったろう」
ウェザーはデイパックから一枚の紙を取り出して、あたしに見せた。
「では、次だ。
 言い忘れていたか? 俺に渡された特殊支給品は『顔写真付き名簿』。
 先程の荒木の放送を真実と仮定し、死者のリストと照らし合わせる」

ウェザーは名簿を開くと、メモを片手にペンを走らせ、死亡者の名前の隣にチェックを付けて行く。
「エルメェス、この街に連れられてから、誰と知り合った?
 今からこの名簿を見せるが、俺の知らない、お前の知人や受刑者の顔は無いか?
 これは『名前だけの名簿』に書かれた、参加者全員の顔写真が掲載されている。
 顔さえあれば、名前を知らない奴の生死が確認出来るし、偽名等の意味は無くなる。
 この街で、お前が見聞きした事を全て話すんだ」
「そうだな……じゃあ、まずは……」

あたしは、荒木によって教会に呼び出されてからの出来事をウェザーに語った。
ドッピオとの出会い。謎のスタンド使いとの戦闘。
第一放送後にドッピオに攻撃され、逃げられた事。
仗助に傷を治され、彼の抱えていた男の埋葬を手伝った事。

ウェザーは死者の名のチェックを終えた名簿をあたしに見せる。
「『第一放送前に戦ったスタンド使い』、『仗助が背負っていた男』の名を調べるんだ。
 後、間違い無く『ドッピオ』も偽名だ。そんな名は参加者名簿に存在しない」



「……そうだったのか」
迂闊だった。参加者全員に配られていた名簿。ドッピオの名を調べすらしなかった。
この突然の異常事態に、気が動転していたのだろう。

ドッピオ……あたしはあいつに致命傷を食らわされた。
仗助が居なければ、間違いなくあの場で死んでいただろう。
あいつは絶対に許せねえ存在だ。……しかも、偽名を名乗っていたとはな。
あたしは手渡された名簿上の写真を、一つ一つ入念に見ていった。
奴の、あのおどけた野郎の顔の在り処を見つけ出す為に。
最も期待する可能性は、奴の本名が先の放送で呼ばれている事だが……。

……しかし、事態は奇妙な方向へズレて行く。
名簿の写真を全てを確認した後に、
予想だにしない問題があたしに降り掛かって来たのだ。

「……あれ?」
「どうした、エルメェス?何か問題でも?」
ウェザーが訝しげな表情で尋ねて来る。
「おかしい……ぞ」
「全参加者に対応した顔写真が載っている事は既にチェックしている。
 その名簿に不備は無い筈だ」
「いや、載ってねえんだ」
「何?」
「載ってねえんだよ。あたしを殺そうとして来た、ドッピオが。
 奴の顔が、この名簿の何処にも無い」



「載っていない……だと?」
ウェザーが身を乗り出す。あたしは名簿を奴に返した。
「どうなってるんだよ、一体?
 奴の名前が嘘でも、ここに顔写真はある筈だろ?
 『ドッピオ』は一体、何者なんだよ?」
「待て……つまり」
ウェザーは飽くまでも落ち着いた表情で、思考を始めた。
額に手を当てて、呟くように語る。奴も相当、解釈に苦しんでいるらしい。
「これは俺の推測に過ぎないが……。
 例えば、そいつ……ドッピオは『顔面を自由自在に変形できる』スタンド使いなのかも知れない。
 変身能力ならば、この顔写真さえ無効になるな。
 あるいは『ドッピオと言う少年自体が具現化したスタンド』である可能性。
 つまり、奴は人間でなく、本体が別に存在していたと言う事だ。
 何にせよ、この問題には更なる判断材料が必要だろう。
 証拠無き確信は極めて危険だからな」

「成る程ね。確かに、お前の言う通りだな」
ドッピオ自身がスタンド、か……十分に起こり得る話だ。
この家にいる四人を見るに、街に集められた参加者はスタンド使いが少なくないらしい。
名簿から姿を眩ます方法なんて、幾らでもあるのだろう。

ウェザーが間髪入れずに訊いて来る。
「他の二人はどうだ? 『夜間、お前とドッピオが出会ったスタンド使い』、
 『仗助が背負っていた死人』の顔はあるか?」
「ああ……今、探す」
あたしはもう一度名簿に目を通した。
一人は――『第一放送前にあたしとドッピオを襲撃した奴』はすぐに見つかった。
名はプロシュート。既に第一放送時点で死んでいた。
あたしがこいつの能力に倒された時、あたしの身体はドッピオに抱えられ、奴から逃げ出したらしいが……。
本当はあの時点でドッピオが殺したんじゃないのか? あのガキの謎がさらに深まる。
あたしは『プロシュート』の名をウェザーに伝えた。
積極的に殺しに掛かる参加者であったとしても、
もう死人ならば害になる事も無い、とウェザーは語った。

そう、『プロシュート』なんぞ、大した事ではなかった。
次の衝撃に比べれば、全くどうでもいい話だったと言える。

「……!?」
『仗助が背負っていた男』の顔と、その名前を見つけた時、あたしは自分の目を疑った。
信じられない、嘘だ。そう思った。
だが、この名簿に掲載されている『それ』は、紛れも無い真実なのだろう。

あたしはウェザーに尋ねた。事態の再確認をする為に。
「ウェザー。参加者が連れて来られた時間軸は、それぞれズレている……。
 確か、そう言っていたよな?」
「ああ。事実、俺とエルメェスの時間はズレていたんだ。
 ……それがどうかしたのか?」

「……ジョセフ・ジョースターだよ」
「何?」

あたしは判明した真実を告げた。
「……仗助の……親父だよ。
 『仗助が背負っていた死人』の正体は」
「……何だと?」
「仗助は……仲間を失ったショックで、気が動転している、あたしはそう思っていた。
 だが……あいつが言っていた事は本当だった。あの男こそが……ジョセフ・ジョースター」
ウェザーの語る時間のズレを、あたしは長くても数ヶ月程度のものだと解釈していた。
だが、あの青年は確かに仗助の父。
数十年の時を超えて、この場に招かれた人間だったのだ。

「話すのか?」
ウェザーは、唐突に訊いて来た。
「今の仗助君に、それを話すのか?
 お前が背負い埋葬した男は、父親、ジョセフ・ジョースターの過去の姿だったと」
「それは……」
戸惑うあたしに向けて、ウェザーは――この男にしては――余りにも意外な言葉を放った。
だから、あたしは面食らってしまった。
「俺は、この事実は隠して置くべきだと思う。
 知らなくても良い、知らない方が良い事が確かに存在する。
 俺には過去の記憶が無いが、
 戻らない方が本人に取って幸せであろう過去もあるとは思っている。
 神父が俺の記憶を奪い取った理由も、
 過去の忌まわしき悪夢を封印する為なのかも知れない。
 ……とにかく。話すべきでは無いだろう。少なくとも、仲間を失ったばかりの、今の仗助君には」

意外な程に情熱に溢れるウェザーの言葉に、あたしは驚いた。
そして、頷いた。
「ああ、分かったぜ。この事は、二人の秘密にして置こう」


ウェザーは写真付き名簿をデイパックに戻した。
「……では、最後の話だ。
 もう時間が無い。“奴”は、ここを観察している。
 理由は分かりかねるが、こちらに来る様子が見当たらない。
 情報交換するにも、襲撃するにも、近づく必要があると言うのにな」
「何を言ってるんだ?」

ウェザーは窓を仰ぎ見た。あたしもその側に視線を向ける。
窓の奥では、深い霧が外気を満たしていた。こちらまで届く、僅かな雨音。

「ナルシソ・アナスイが来ている。
 この家の近くで……観察している」

* *



白昼の街中、辺りを漂う不自然な濃霧。
一帯に降り続けたほんの微量の雨粒が凝結し、発生した靄。
進入したものを白に染め尽くすそれに埋まりながら、
ナルシソ・アナスイは、霧の中心部に位置する一つの民家の様子を伺っていた。
衣服が、新たに降注ぐ雨に濡れ続ける。

この場所には間違い無く、自分の仲間の一人がいる。
彼には、この殺人ゲームに参加する意思は無いらしい。
極力戦闘を避け、この街を脱出する為の、何かのチャンスを待ち構えている。

アナスイは行くべきなのか、決め兼ねていた。
数十分もの間、その場に止り続けていた。
彼を留めさせる原因は、漠然とした恐怖だった。
……この異世界にて仲間と出会った際に、
今の自分がそいつに対しどう行動すべきなのか、分からなかった。


だが、決定を下さなければならない瞬間は着実に迫り来る。
白に染まった空間の奥より、一つのシルエットが浮かび上る。
大柄の影は自分を目指し接近していた。
別段急ぐ様子も無いらしく、その動きは遅い。
アナスイは、影が自分に語り掛けるのを待ち続けた。

互いが一定の距離まで近づいた時、
その明細な形が、アナスイの眼に映った。

――ウェザー・リポート。
何時も通りの無表情が、自分を見つめている。

「……!?」
その時にアナスイは始めて、ある矛盾に気が付いた。一つの疑問が浮上した。
名だけを参加者名簿で見た時には、大して気にも留めなかった。
しかし、今、眼前に本人が、生きた彼が存在していると知覚した際に、
その疑念は現れざるを得ない。違和感を覚えざるを得ない。

その理由は過去。その理由は記憶。
「ウェザー……お前……」
疑問を、口に出さずには居られなかった。
いとも自然と、しかし同時に喉の奥から声を搾り出すような苦悶を伴い、アナスイは問うた。



「何故、生きてるんだ?」


* *



「……!」
ウェザー・リポートは、家屋の陰から身体を覗かせたアナスイが発した言葉の意味する事実を、
数秒掛けて漸く理解した。
エルメェス・コステロの逆。アナスイは『未来』だったのだ。
数ヵ月後か、数日後か、それともたったの数時間後のものだったのか。
何時の事にせよ、この男はウェザーの『死』を知っているのだから。
合衆国、フロリダでの、もう一人の自分の、明確なる『死』を。

今は動揺して良い時ではなかった。
溢れ出る感情を必死に押し殺し、ウェザーは眼前の未来人の質問に対し、
冷静な態度を保ちながら応じた。
「――いいか? 良く聞け、アナスイ。この俺は、お前から見れば『過去の人間』だ。
 お前が見た俺の死。ここにいる俺は、『それ』以前から連れて来られた」

アナスイは暫く考えていた様だったが、やがて理解に達すると言葉を返した。

「何を言ってるのか、良く分からんが……。
 つまりお前は、死ぬ以前のウェザー、と言う訳か」
「そういう事だ」
頷くと、アナスイは鼻で笑った。
「ハッ。訳が分かんねえぜ。じゃあなんで『過去の人間』が俺の前に居るんだよ?
 つーか、ココは何処だよ?
 俺は神父と戦闘中だったってのに、どうなってやがる?」
ウェザーは確かに感じ取った――相手の語調には、自嘲の含みがあった。

霧の中で、二人の間で、冷たい風が吹き荒んだ。
鋭い光を帯びたウェザーの瞳が、アナスイのそれを射た。
アナスイは、憔悴し切っていた。


暫しの沈黙を破ったのはウェザー。
「お前はこれから、どうするつもりなんだ?」
アナスイは首を横に振り、問うたウェザーに対してでなく、
自分自身に言い聞かせる様に、語り始めた。
内に秘めた本心の吐露だった。
「さあね……。最初の頃は、張り切っていたんだがな。
 彼女――徐倫――を優勝させる為に、実際一人殺した。
 だがな……やっぱり、俺は駄目さ、ウェザー。
 誰と戦っても、勝てる気がしない。すっかり怖気づいちまってるらしい。
 おかしいだろ?こんな所で何十分も待って……震えてるんだぜ。 
 今の俺は、虫ケラ一匹も殺せない。こんな俺に……徐倫を護る資格が……」
「アナスイ」
ウェザーは強い語調で、相手の言葉を遮る。
「お前と、これから殺し合うつもりは無い。
 荒木の語る『ゲーム』に乗る気も俺には無い。
 今、あの家には三人の仲間がいる。
 お前の能力は強大だ。俺達と共に行動しないか」

ウェザー・リポートは尋ねながら、答えを既に知っていた。
アナスイの様子から見て取れた。彼は、疲れ果てていた。
自分達と共闘する気力さえ、もう無いのだろう。

「いや、遠慮するね」
ぎこちない動きで、アナスイは振り返った。
一歩、また一歩。ウェザーより離れ、霧の奥へと消え去って行く。

「ククッ。なぁウェザー。俺はな……。
 あんな切羽詰った状況で。お前が既に死んでいると言うのに。
 徐倫に結婚を申し込んじゃったりしてな。クク、ハハッ……。

 ……イカれてるのさ、この状況で。承太郎さんが言っていた通りだ。
 お前と出会えて良かったぜ。死人が」


ナルシソ・アナスイの姿は、白霧より立ち去った。
デイパックを担いだその背中が完全に消失するまで、ウェザーは見据え続けていた。

* *



家に戻ったウェザーを迎えたのは、エルメェスの焦燥した声だった。
「ウェザー! 仗助が、行っちまった!」

ウェザーがアナスイと会話する為に家から離れた後、
仗助は屋内に残ったエルメェスに、先の放送に三人の仲間の名があった事を告げた。
この場で待機しているだけでは、死人はこれからも増え続けるだけだと彼は言った。
家に留まり続ける事を拒んだ彼は、街の中心部――駅へと向かう準備を始めた。
エルメェスは全力で説得したが、既にその意志は強く、
半ば逃げ出す様にして仗助は行ってしまった。
……エルメェスはそう語った。

「……無理も無い話だ」
ウェザーはセッコに角砂糖を放り投げながら、猛るエルメェスに冷静に応じた。
「死者の中に、仲間は三人もいたのか。
 一人、もしくは二人程度だと考えていた。
 確かに人間が死んでいる――仗助君のその行動も、当然と言えるのかも知れない。
  『あの事実』を伝えるまでも無く、彼は動き始めた訳だ」

「おい、ウェザー!」
エルメェスは納得が出来ない。
角砂糖をガリガリと齧り捲るセッコを、無表情に見下ろしているウェザーに向けて怒号を上げる。
「いいのかよ、あいつを追わないで!
 外には、どんな敵が待ち構えてるか分からねえんだぞ!
 危険な場所にみすみす行かせるってのか!?
 仗助は、あたし達の仲間だろうが!?」


ウェザーはエルメェスに視線を返す。強靭な冷徹さが宿る眼光。
「俺は、彼の感情を重んじたい。
 干渉すべきではないし、止められるとも思えない。
 少なくとも俺達は、まだここから動くべきではない」
「だからって、ウェザー、お前……!」
仲間との決別に感情が揺れるエルメェスを横目に、
ウェザーは新たな角砂糖の製造に取り掛かり始めた。

* *



「……」
少々厳しい言葉を選んでしまったとは自覚している。
自分の気が立っている事も判っている。
内に留める激情の渦が、冷静な判断を奪っていた。
ウェザーは思考した。何処で。何故。どうやって。

――自分は、死んだのか。

アナスイに聞きたい事は、本当は山程あった。
多すぎて数が把握出来ない程に疑問は存在していた。
自分の記憶は結局、戻ったのか?
戻ったのなら、自分はどのような人物だったのか?
自分が死んだのなら、やはり神父に殺されたのか?
ならば、何故神父は記憶を奪っただけで自分を殺さなかったのか?

分からない。分からない。何もかも――。
ウェザー・リポートは、近い将来に絶命する筈だった自分が、
この街で戦い続ける意味があるのかと、自らの心に問うた。


* *



……ガリガリガリガリガリガリガリガリ。

なーんか、大変な事になってるみてェだな。
まあ、俺を殴って来やがったジョースケが居なくなるのは歓迎だし、
角砂糖さえ貰えれば、どーだって良いんだけどよォ。
グヘヘヘヘェッ。

……ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ。

【角砂糖同盟 Lv.2】

【杜王駅近くの民家(F-3)/一日目/日中】

【ウェザー・リポート】
[スタンド]:『ウェザー・リポート』
[時間軸]:ヘビー・ウェザー習得直前
[状態]:健康、スタンドによる降雨(小雨程度)、冷静を装っているが非常に動揺している
[装備]:簡易角砂糖、砂糖を入れた袋
[道具]:支給品一式・顔写真付き名簿・少量の塩・スーパーエイジャ(セッコからもらった)
[思考・状況]:
1)自分が死んだと言う事実に、深い衝撃を受けている。戦い続ける事に疑念
2)角砂糖作りを続ける。幾つかはストックしておき、セッコに気付かれないようにする
3)角砂糖を使ってセッコを利用・見張る
4)スーパーエイジャの真の持ち主ともいえるべき人物を探したい。(使用目的を聞きたい)
5)徐倫達を探す(角砂糖製造が終わり次第この家を出て動こうと思っている)
6)『雨』によって注意深い人物との接近、その人物との会話をしたいと考えている。(出来ればエイジャの情報を

優先的に知りたい)
7)セッコと第四放送まで同盟
8)プッチ神父を警戒
9)打倒荒木


【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ブチャラティ達と闘う前
[状態]:右頬にエイジャの光線による切り傷(血は止まっている)
[装備]:オアシスのスーツ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]:
1)取り敢えず角砂糖と遊んでくれる人がいれば、後はどうでもいい
2)ウェザーと第四放送まで同盟(今の所裏切るつもりはない)
3)ウェザーは(チョコラータ程ではないが)好き。とりあえず従っていれば問題ないだろう
4)ゲームで優勝する
5)あァ?石?どうでもいいぜぇ~


【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックスとの決着後、体調が回復した頃(脱獄前)
[状態]:良好
[装備]:ライフル
[道具]:ドル紙幣等に加え、大量の石ころ
[思考・状況]:
1)ウェザー達と共に行動するか迷っている
2)家を出て行った仗助が気に掛かる
3)傷ついてる参加者がいたら、とりあえず助ける
4)徐倫、F・Fと合流したい
5)プッチ神父は倒す

【杜王駅近くの路上(F-3)/一日目/日中】

【東方仗助】
[スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド
[時間軸]:四部終了時
[状態]:右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み・ 歩行に少し影響)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、小型時限爆弾、スコップ×2(エルメェスの『シール』で二つになっている)
[思考・状況]:
1)町の中心部(駅方面)に向かう。戦闘を止めたい
2)どこかに隠れているジョセフを探す
3)傷ついている参加者がいたら、敵味方関係なくとりあえず『治す』
4)シーザー、シーザーの仲間を探すのは後回し
5)打倒荒木!


【杜王駅近くの路上(F-3)/一日目/日中】

【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド名]:ダイバー・ダウン
[時間軸]:対プッチ戦終盤、徐倫がプロポーズをOKした瞬間
[状態]:右前腕骨折治療完了(痛みはありますが普段通り動かせます)、疲労
[装備]:『幸運?』の剣 (柄に由花子の髪が絡みついて離れない。髪の下に「UN」の血文字が隠されている)
   *右腕にアイアンボールボウガンをバラバラに分解したパーツを埋め込んで補強しています。

[道具]:支給品一式×5(自分、由花子、ブラフォード、噴上、ジョナサン)。ただしバッグは一つです。 
[思考・状況]
1)徐倫を護るため、あえて『殺人鬼』になるつもりだったが、自信を失っている
2)徐倫以外を全て殺した後、自分も死ぬつもりだったが、気力は失せている
3)露伴の書き込みにより『殺人はできない』
※アナスイはとにかく『相手に殺意の攻撃が出来ない』と認識しています
4)(本人の意識には上ってないが、なんでも分解してしまう癖が再発中)


[補足1]:セッコは3)以降の思考は殆ど忘れてしまっています。
[補足2]:ウェザーは、エイジャに関してはあくまで真の持ち主から使用目的・方法を聞く事と、セッコの悪用を防

ぐ事を目的とし、実際にウェザー自身がエイジャを使って何か行動を起こすつもりではありません。
[補足3]:仗助は「荒木は自分たちの声を聞くことができる」と推測しています。(根拠なし)
[補足4]:仗助は、第一放送の禁止エリアについての情報を聞きましたが、メモは取っていないようです。
[補足5]:仗助は過去に名簿を見ましたが、ドッピオの名前の有無はいまは意識にありません。
[補足6]:仗助は埋葬した遺体がジョセフだとは気づいていません。
[補足7]:エルメェスは、ドッピオの二重人格に気付いていません。
[補足8]:ウェザー、エルメェスは『時間軸のずれ』を認識しています。
[補足9]:顔写真付き名簿に載っているのはディアボロの顔です。
[補足10]:ウェザー達、仗助、アナスイの座標は同じですが、それぞれ別の場所です。
[補足11]:露伴は死亡していますが、アナスイへの書き込みは持続しています。
      しかしそれが彼の現在の心理状態を形成している訳ではありません。



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キャラを追って読む

78:悲劇 東方仗助 93:T字砲火、果たして全員無事にいられるかなァ
78:悲劇 エルメェス・コステロ 97:神への挑戦2
78:悲劇 ウェザー・リポート 97:神への挑戦2
78:悲劇 セッコ 97:神への挑戦2
84:幸か不幸かの「世界」 ナルシソ・アナスイ 101:擬似娚愛は嫐乱す(前編)