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放送を聴き終え、暫くの間は御互い無言だった。
第二放送の死者の名にそれぞれ思う所があったのだ。
トリッシュが殺された。
片鱗を見せたとはいえ、スタンドも何も無い、普通の少女と何ら代わりの無いトリッシュが、
このようなゲームに巻き込まれ、そう長い間無事で居られる筈が無かったのだ。
直ぐにでも保護すべきだった。
悔恨の念が湧き上がるが、時既に遅し。もう、手遅れなのだ。
トリッシュ、済まない。
そして、ジョルノ…。
アイツが死んだ?

『謎を解けるんですね?御願いしますよ』

常人離れした知識と発想を持ち、

『ここを動くべきでないと思います』

常に大局を見据え、

『このジョルノ・ジョバーナには夢がある』

常に其の身に黄金の精神を宿していた、誇り高き少年が…
死んだ、だと?
しかも、荒木に殺された?
心の底から怒りが湧き上がる。
今直ぐにでもジョルノの仇を討ちたい。
荒木の下へ向かい、スティッキー・フィンガーズを叩き込みたい。
併し、唇を噛み締め、ぎりぎりの所で感情に振り回されるのを押さえる。
口元から血が流れている様だが、そんな事はどうでも良い。
此処で考え無しに暴れ回っても、何にもならないのだ。
ジョルノは唯死んだ訳では無い。荒木の下へ辿り着いたと言っていた。
つまり、ジョルノは荒木への道を切り開く事が出来たのだ。

荒木の下へ辿り着く事が出来る。ジョルノは身をもって其れを証明してくれた。
ならば荒木打倒の為に俺のすべき事は、
“ジョルノがどうやって荒木の下へ辿り着いたか調べる”“荒木を斃す算段を考える”
此の2点だ。
怒り、悲しみをぶつける前に、俺にはすべき事がある。
其れに何より、悲しいのは俺だけでは無い。
第二放送で大切な人を失ったのは俺だけでは無いのだから…。

「億泰は…」
第二放送後、ずっと黙っていた形兆が、呟く様に声を洩らす。
億泰とは、恐らく第二放送で死亡者の名に上がっていた“虹村億泰”の事だ。
やはりそうか。
その名を聴いた瞬間から形兆の様子がおかしかったが、姓が同じ事を考えても、多分血縁者なのだろう。
家族の1人を失ってしまったのだ、形兆は。
形兆は話を続ける。
「とにかく頭が悪くて、俺が居ないと何も出来ない奴だった。
物事を決めさせようとする時は、大抵『兄貴に任せた』とか言って、考える事を放棄してよ。
何時だったか、『ちっとはテメェで考えろ』っつったら、
『俺、考えると頭痛がするんだよ』って言ってきた事があったな。その後ぶん殴ったが」
「………」
本来なら、こんな思い出話をしている暇は無い。
併し、今の形兆にそう言う事が出来なかった。
感傷的になっている間に敵の襲撃があるかも知れない、其れは十分に解っているのだが、
其れでも尚、俺は形兆の話を聴いてやりたかった。
「そんな億泰が、何度も俺に言っていた事があるんだよ」
「…」
「俺は今まで沢山の人間を殺して来た。
そんな俺に『このままじゃ兄貴もロクな死に方しねぇ。罪は巡り巡って兄貴自身の身に降り掛かる』って」
「!」
流石に此の言葉には驚いた。
確かに此の男には凡人とは異なるオーラ、云うなれば業のようなものを背負っているように見えたが、
まさか殺人を重ねているとまでは思わなかった。
何故かは解らない。
だが、一つだけ云える事は、形兆の殺人は殺人鬼の其れとは全く異なるものだと云う事。
俺の職業柄、殺人鬼やその類の人種は何度もお目に掛かった事がある。
だが形兆は、ややどす黒い一面こそ感じられたものの、俺達ゴロツキほどじゃ無い。
少なくとも、俺はコイツをゲスで無いと断言出来る。
形兆の告白は続いていた。
「俺も、それは解ってたんだ。俺はいつか誰かに殺される。
因果応報で、俺のような殺人鬼に殺されるかも知れないし、
俺が殺した人間の遺族が、無念を晴らしに来るかも知れない。
散々人殺しをしておきながら、自分だけ大往生しようなんて都合の良い事は考えてねぇ。
解っていたんだ………だが」
あぁ、そうなのか。
コイツは殺人を自分の手で行い、弟である億泰には…
「億泰は違った!
『いつか兄貴が殺されるから』と、俺が人を殺すのを止めようとしてたんだ!
俺自身引き返せない所まで来てたのが解っていたのに、
アイツは俺が普通の生活を送れるといつまでも信じていた!
そしてアイツは誰一人殺さなかった!
なのに、その億泰が何で殺されなくちゃならねぇんだ!
死ぬのは俺じゃ無かったのかよ!!!」
堰を切ったように叫び出す形兆の言葉を、俺は地平線を見ながら聴き入れていた。
形兆へは目を向けなかった。目を向けると其の姿を見てしまう事になるから。
そして形兆は、其の姿を見られたくない筈だ。
声で解る。
………今、形兆は涙を流している。

「…済まねぇ。少しだけ時間が欲しい」
暫く聴こえていた嗚咽がやがて止まり、不意に形兆が静かにそう言って来た。
「あぁ」
俺は形兆に背を向け、辺りに異変が無いかどうかを確認した。
俺の目でしか確認出来ないが、どうやらこの付近に近付いて来る輩は皆無の様だ。
とは云え、スタンド使いの跋扈するこの街で、人間の目による安全の確認では心許無い。
だが、本来なら形兆に、『そんな時間は無い。周囲を警戒しろ』と言うべきなのだが、俺には出来なかった。
少しだけ時間を与えてやりたかった。
この男に、弟を想って泣く時間を…。
それにしても。
行動を共にしている内、少しずつ形兆と云う人間が見えて来た。
何らかの理由で殺人を執り行わなければならない時、形兆は自分で汚れ役を担い、弟に手を汚させなかった。
自分の罪に罰が下る事をしっかりと認め、覚悟していた。
そして今、億泰の死に涙を流している。
其処から分かる事。其れは…
こいつは人の痛みが分かる男だ。
そして、大切なものの為に鬼になれる男だ。
今、俺は形兆から、出会った当初感じていたコイツの中のどす黒い雰囲気は億泰の死を聴いた瞬間から成りを潜め、
代わりに崇高なオーラを纏い始めたのを感じた。
恐らく形兆は、億泰の死を通じ、吐き気のするような邪悪を許さないと云う気高い精神を覚醒させた。
俺は其れを単純に喜ぶ事は出来ない。
其の為に形兆は大切な者を失い、抑え切れない程の悲しみを背負ってしまったのだから。
形兆の覚醒の犠牲は余りにも大き過ぎると云うのに、何故其れを喜ぶ事が出来る?
だが、巻き込まれて以来碌な事が起きていないゲームだが、それでも少なくとも1つだけは良い事があった。



なぁ、形兆。俺は

お前に出会えて良かったと、そう思うよ





俺はディバッグから地図を取り出す。
俺は“勝負”に出る事にした。
最初は行動を起こすのはミキタカ救出後にしようと思っていたのだが、現状を考えると一刻を争う。
実は、今迄の情報から、俺はと或る可能性に気付いていた。
其の盲点を突けば、“奴”の鼻を明かす事が出来る。
逆に、俺が“其れ”に気付いていると“奴”に感付かれたら、此の手は打てなくなる。
その前に行動を起こしておかねば、手遅れになってしまう。
犠牲を抑える為に、今こそ勝負に出よう。
負けたら“死”。
併し、勝てば………。
俺は地図の裏に書き込み始めた。

 * * *

億泰。
お前はいっつも足手まといだったぜ。
俺の事をあ~だこ~だ言う癖して、自分の事になるとボーっとしてやがるから大抵皺寄せは俺に来る。
俺が尻拭いしてやらなきゃならない時も何度もあった。
今回もそうだったんじゃ無いのか?
考え無しの行動を取っちまって、死んじまったんじゃ無いのか?
大体の所は解るさ。
いつまで経っても成長しない奴だよ、お前は。
そう、解っている。

………億泰は決して殺されるほどの事をした訳じゃねぇ、って事は。

俺にはもう護らなきゃいけない人間は居ない。
だからどんな手を使っても俺が優勝すれば良い。
…そのつもりだったんだが、どうやら軌道修正しなきゃならないようだ。
俺は決心した。
俺はこのとち狂ったゲームを止める。
はっ。こんな考えが頭をもたげるとは、俺もヤキが回ったか。
その原因は億泰と、他でもねぇ、このブチャラティとミキタカの所為だ。
俺を救う為に鎖に化けたり、俺が確実に敵を斃せるよう体を張ったり、
その、身を以って仲間を救うこいつらの行動に、俺も感化されちまったようだ。
だから俺は思う。ブチャラティやミキタカを、俺と同じ目に遭わせたくない。
この2人に死んで欲しくないし、仲間を失って悲しませるような事にさせたくない。
そして、その為の最短かつ確実な方法は…

「ブチャラティ」
さっきからずっと紙に何かを書いているブチャラティに向かって、俺は声を掛ける。
「何だ?」
顔を上げるブチャラティに向かい、俺は告げた。
「俺は許さなねぇ。億泰を殺した奴も」
「…」
ブチャラティは聡い。口にせずとも解っている筈だ。
『億泰を殺した奴も』の後に続く名を。
そして俺は決意を口にした。
「俺はそいつらを生かしてはおけない。だから殺す。必ず」
此れは事実上、



   ―――荒木への、宣戦布告だ。


「…」
ブチャラティは俺を見つめていた。
その目を見返す。俺は目で訴えた。
『力を貸して欲しい。億泰を殺した奴を、そして荒木を斃すために』
俺の真意を正確に読み取ったのであろう、
ブチャラティは
………静かに頷いた。
不意にブチャラティが紙を寄越してきた。
何かと思いブチャラティへ顔を向けると、口元に人差し指を当てている。
“喋るな”という事か。という事は、荒木に気付かれては困る内容だな。
紙を受け取ると、そこにはびっしりと文字が並んでいた。
紙に書かれた文を読んでいる所へ、ブチャラティが声を掛けてくる。
「お前は『億泰を殺した奴を殺す』と言っていたな。
その言葉に嘘は無いか?」
「あぁ」
紙に書かれた文に目を落としながら返事をする。
そんな俺に質問を続けるブチャラティ。
「お前が数々の人を殺してきた事も本当なのか?」
「…!!!」
そういう事か!
ブチャラティの真意に気付いた俺は紙から顔を上げ、奴を見つめる。
だが、俺の答えは一つしか無い。
俺は、運命の一言を口にした。
「…あぁ」
肯きながら、俺は立ち上がる。
そしてブチャラティから離れる様に2、3歩後ずさった。
既にブチャラティが何をしようとしているか分かっていた俺は、間合いを取る必要があったのだ。
「ならばお前がこのゲームで再び殺人鬼となるのを、俺が防ぐ」
俺に続くように、ブチャラティもゆっくりと立ち上がる。
その一言で、俺は確信した。
やはり俺の考えは正しかった。
「物は言いようだな。結局の所、俺を殺そうってんだろうが」
「そうとも云う」
「正気か?貴様」
「勿論だ。俺も第二放送で仲間を2人失った」
「!!!」
正直、この一言は予想していなかった。
ブチャラティも俺と同じだったのか。
そんな素振りは全く見せなかったというのに。
それでも悲しみを耐え、それどころか俺の慟哭を静かに聴いてくれていたブチャラティに対し、
一瞬攻撃を躊躇しそうになる。
しかし思い直す。やらなければやられるのだ。
今、俺のやるべき事は…。
「お前の様な輩を生かしておいては更なる犠牲者が出ると云うのなら、俺のやる事は一つ」
その間も、ブチャラティは俺に話し続けていた。そして…
「悪は元から絶つ!」
ブチャラティのスタンド、スティッキー・フィンガーズが奴の背後に現れる。
本気で“やる”気か。
ならばとことん付き合ってやろうじゃねぇか。
最後の確認をしながら、俺もバッド・カンパニーを出現させる。
「本当に俺がこのゲームに乗ると思っているのか、と訊いてるんだ」
「…愚問だ」
ブチャラティの返事に、俺は小さく溜め息を吐き、呟いた。
「そうか。ならココでチーム解散」
「だな」
そして互いに戦闘態勢を取り、

「「行くぞ!!」」

…俺達は、殺し合いを始めた。

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79:発覚する疑惑 虹村形兆 91:形兆死亡(後編)~解放~
79:発覚する疑惑 ブローノ・ブチャラティ 91:形兆死亡(後編)~解放~