* * *

「私は承太郎の支給品、ヨーヨーマッです。
花京院、ポルナレフ、アブドゥルに連絡です。
承太郎は4時から5時まで
運命の車輪戦の休憩所、ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます」
「もっと大きな声を出せ」
「私は承太郎の支給品、ヨーヨーマッです!
花京院、ポルナレフ、アブドゥルに連絡です!
承太郎は4時から5時まで
運命の車輪戦の休憩所、ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!」
「もっとだ」
「私は!!!承太郎の支給品!!!ヨーヨーマッです!!!
花京院!!!ポルナレフ!!!アブドゥルに連絡です!!!
承太郎は!!!4時から5時まで!!!
運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!!」
コレ位の声なら、結構な距離聴こえるだろう。
「そのまま予定通り東へ向かうぞ。テメェは言われた事以外の事は何もするな」

―――そう言って、ヨーヨーマッの20m後ろを東へ向かって歩き始めたのが30分ほど前。
そして今、そのまま何事も無く、この“広瀬康一の家”まで辿り着いた。
この先は禁止エリアだ。
取り敢えずヨーヨーマッを静かにさせ、どうしようか迷っている所へ、
「少々遅刻気味じゃったかな。申し訳ない」
と、後ろから声が掛けられた。
声を掛けられる前から気配には気付いていたが、
何だかんだで無事合流出来た事に安堵した。
「無事だったか」
そう言って振り返ると、ツェペリはあのダイアーとかいう男を担いでいた。
「おい、その男どうした?」
「ちょいと目が曇っていたようなのでな、喝を入れてやった。
命に別状は無い」
「目を覚ました途端襲って来るなんてのはゴメンだぜ」
「大丈夫。儂が保証する」
ツェペリがそう言うなら信じよう。

そんな遣り取りをしている内、
「………う」
ダイアーが目を覚ました。
「目が覚めたか」
「ツェペ…リ…さん?俺は………」
呆けた表情で呟いていたダイアーは
「!」
ハッと飛び起き、
「ツェペリさん!済まない!!!」
いきなりツェペリに謝った。
どうやらツェペリの言う通りだったようだ。
「儂は構わんよ。間違いに気付いたのなら、これからやり直せば良いだけの事じゃろ?」
ツェペリがそう言っても、ダイアーの顔は腫れなかった。
そしてダイアーは、懺悔をするかのように呟く。
「しかし、俺は2人、いや、1人と1匹を殺してしまった…。
この罪は購える物では…」
ダイアーのその言葉を聴いた時、俺は“それ”に気付いてしまった。
「ダイアー」
俺が声を掛ける事で、奴は漸く俺の存在に気付いたようだ。
「何だ?」
そのダイアーに向かって、俺は杞憂であって欲しい疑問を口にする。
「お前が殺した奴の名を教えろ」
俺の質問に、ダイアーは躊躇いつつ答える。
多分、自責の念がそうさせているのだろう。
「億泰と…」
出来れば外れて欲しい勘。だがしかし…
「…イギー」
「!!!」
現実は残酷だった。

瞬時に抑え切れないほどの怒りが湧き上がる。
「おや、旦那様の仲…」
ドガッ!!!
ヨーヨーマッの耳障りな発言を無言で吹き飛ばす。
「モット、モットォ~~~」などと悶えるヨーヨーマッを無視し、ダイアーの胸倉を掴む。
「…お前の仲間を殺したのか、俺は」
「口を開くな」
今の俺は、目の前の男の全てが気に入らなかった。
口を開けばそれに殺意が湧くし、黙ったら黙ったで癇に障る。
「いいか、テメェが殺したのは俺の仲間だ。
俺はイギーの敵を討ちたくてたまらねぇ。だが、今は辛うじて堪えられる。
その時の過ちにお前は気付いたようだし、テメェの命を奪った所でスッキリする訳でもねぇからな」
俺の言葉に、ダイアーは胸倉をつかまれたまま無抵抗に耳を傾ける。
「だが、このやり場の無い怒りがいつ爆発するか分からねぇ。
だからテメェは何もするな。
今の俺は、テメェが口を開きゃ耳障りだと殺しかねないし、身動きすりゃ目障りだと殺しかねねぇ。
俺が怒りを抑えられそうになるまで勝手に動くんじゃねぇ。分かったか」
俺の命令に、ダイアーは無言で肯いた。
「旦那様。早目に殺「黙ってろ!!!」
ドガアァッ!!!
ヨーヨーマッをありったけの怒りを込めて吹き飛ばす。
最悪の召使いは、2部屋ほどぶち抜いて吹き飛んで行った。
「ジョジョよ。ならばお主とダイアーは別行動をとった方が良いのかも知れんぞ」
ツェペリの提案は、言われるまでも無く考えていた事だ。
下手にこいつにうろつかれたら、いつダガが外れてコイツを殺すか分からねぇ。
「そのつもりだ。だが、その前に情報を聴かなくちゃならんからな」
「そうか…」
俺の返事に、ツェペリはそう一言返す。
俺は漸くダイアーの胸倉を掴んでいた手を離し、こいつを解放した。

 * * *

儂達はそのまま一先ず近くの家(康一の家)に入り、ダイアーの話を聴いた。
ダイアーの話を要約すると、アブドゥル、億泰と行動を共にし、億泰を殺し、アブドゥルに手傷を負わせた、
その後、康一とイギーに会い、イギーの捨て身の行動により康一を逃がした。
そして儂達に会った、とこのような経緯を辿って来たらしい。
「で、お主これからどうする気だ?」
「波紋戦士としての役割を果たす。
タルカスやディオといった吸血鬼を斃す」
「そうか。目を覚ましてくれたか。ならばジョジョ、儂はダイアー共一緒に行動したいと…」
「…」
「ジョジョ?」
暫く黙ったままのジョジョを不思議に思った儂は、ジョジョに呼び掛けた。
最初はダイアーへの怒りを抑えているのかと思ったが、どうやら違うようだ。
なにやら深く考え込んでいる。
「ジョジョ」ともう一度儂が呼び掛け、ジョジョは漸く顔を上げた。
「ん?あぁ、ちょっとダイアーに聴きたい事がある」
「何だ?」
「アブドゥルはF-5に居るのか?」
「恐らく居ない。あの時アブドゥルは逃げ出した筈だが、その方角までは解らなかった」
「もう一つ。タルカスという奴は、DIOと同じ吸血鬼なのか?という事は、DIOの仲間なのか?」
「吸血鬼だ。ディオの配下だな」
「…」
「ジョジョ。どうかしたのか?」
儂の質問に、ジョジョは意外な返答をした。
「タルカスなら、今は駅に居る」
「「何っ!!!」」
ジョジョの発言内容に、ダイアーと2人で驚いてしまった。
「それは確かなのか!?」
息巻いて訊ねる私に、ジョジョは肯く。
「あぁ。今も動いていないのなら、その場に留まっている筈だ」
「その心配は無い。太陽光により灰になる奴らが移動する手段は無い筈じゃ。
ダイアー。一刻も早く駅前に向かわねば。
夜になったら奴らは動き始める筈。其の前に倒すぞ」
儂の言葉にダイアーは目だけを向けて同意する。
肯かないのは、ジョジョとの約束を護っている為じゃろう。
「ジョジョ、儂はダイアーと其処へ向かう事にする。4時にカフェ・ドゥ・マゴで落ち合おう」
そう言って儂達は立ち上がった。
その時、
「待ちな」
ジョジョに呼び止められる。
「何じゃ」
振り向く儂達にに掛けられた申し出は、又も意外なものだった。
「俺も行く」

「!」
「良いのか!?」
まさかの提案に、又も2人して驚く。
そんな儂達に、ジョジョは帽子を被り直しながら説明する。
「これ以上東に行こうにも、ココから先は禁止エリアだからな。
アブドゥルの居場所も分からんし」
「…」
「それに駅には2人居た。もしかしたら他にもいるかも知れねぇ。
だからこっちも人数が必要だろう。
…ダイアーの事も、少しは怒りが収まって来たしな」
ジョジョなりに色々と思う所があるようだ。
まあ何にしても、儂にとってはジョジョの申し出は願っても無い事。
タルカスを討つ為に、ジョジョは貴重な戦力になる。
「解った。ならば一緒に行こう。ダイアーも構わないな?」
「…」
儂の確認に、ダイアーはやはり目線だけで肯定の意を返してきた。
「よし、じゃあ此れから3人で駅前へ急ぐとしよう」
「あぁ。ヨーヨーマッ!」
「ハイ。何でしょう、旦那様」
「俺は目の前の道を禁止エリアぎりぎりまで近付くから、お前は禁止エリアに入って更に20mばかし東へ行け。
そこから東に向かって、ありったけの声で…そうだな、このボヨヨン岬に届く位の声が出れば理想的だ。
取り敢えずそれだけの声でさっきと同じく拡声器で紙の通り叫べ。
それを終えたら、今度は俺の許可が出るまで何も喋るな」
「了解しました、旦那様」
そしてジョジョとヨーヨーマッは家を出て行った。
そして、外から声が聴こえてくる。
『私は!!!承太郎の支給品!!!ヨーヨーマッです!!!
花京院!!!ポルナレフ!!!アブドゥルに連絡です!!!
承太郎は!!!4時から!!!5時まで!!!
運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!!』


其の時、ダイアーがポツリと呟いた。
「…俺は、あの少年にどう償えば良いのだろう」
まるで独り言のようだが、そうではない。明らかに儂へ向けられた言葉だ。
だから儂は斯う返事をする。
「お主が考え、出来る事をせい」
「…」
儂の返事が答えになるか答えにならないかはダイアー次第。
其の言葉を噛み締めるように、ダイアーは暫く黙っていた。
そして、
「…そうだな」
と一言だけ、やはり呟くように言った。

其の時のダイアーの表情を目にした時、儂は得も知れぬ不安に駆られた。
「まさか、お主…!」
不安を口に仕様とした其の時、玄関の扉が開きジョジョ達が戻って来た。そして
「行くぞ」
と私達を促す。
ダイアーは無言で立ち上がった。
続いて儂も立ち上がる。
だが、ジョジョとヨーヨーマッが家を出て、ダイアーが続こうとした時、儂は其の肩を抑えた。
「?」
振り向くダイアーに、私は不安をそのまま口にする。
「贖罪の為に命を捨てようなんて真似は認めんぞ」
「…」
ダイアーは殺人を犯した。其れは許される事の無い事実だ。
しかし、どんな理由があるにせよ、ダイアーに死に走って欲しくなかった。
ダイアーは暫く無言で儂を見つめていたが、暫くして儂の手を払い、再び前を向いて
「そんな事はしない」
と言った。
しかし、儂の不安は拭える事はなかった。
何故なら、ダイアーは儂に背を向けたまま斯う付け加えたのだから。



「贖罪の為に命を賭けるだけだ」


【波紋の達人と幽波紋の達人】
【広瀬康一宅 (D-5)/1日目/日中】

【ウィル・A・ツェペリ】
[能力]:波紋法
[時間軸]:双首竜の間で天地来蛇殺の鎖に捕らえられた瞬間。胴体を両断される直前
[状態]:軽傷(打ち身と額の傷)、処置済み。
[装備]:ショットグラス×2。水入りペットボトル(共通支給品だが、波紋カッターや波紋センサーに利用可能)
[道具]:支給品一式×2。薬草少々(リサリサと分けました)。岸辺露伴の手紙
[思考・状況]:
1)承太郎、ダイアーと共に駅へ向かい、タルカス達を倒す。
2)承太郎とダイアーの事を懸念。
3)病院襲撃の為の仲間(リサリサの仲間、承太郎の仲間)を捜す。
4)参加者の中に居る吸血鬼、屍生人を斃す。
5)荒木の能力について自分なりの見解の説明や、御互いの情報の交換(タルカス打倒優先の為後回し)。

【ダイアー】
[能力]:波紋法
[時間軸]:次の書き手さんヨロ
[状態]:ツェペリとの闘いによるダメージ、処置済み。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(但し、水は無し)
[思考・状況]:
1)ツェペリ、承太郎と共に駅へ向かい、タルカス達を斃す。
2)波紋戦士としての使命を果たす(吸血鬼の殲滅)。
3)自らの過ちにより2名の命を奪ってしまった事への贖罪。
4)1)~3)の為に、此の身を盾にする事に躊躇いが無い。



【空条承太郎】
[スタンド]:『スタープラチナ』
[時間軸]:ロードローラーが出て来る直前
[状態]:ほぼ無傷(左腕は動かす事に支障は無い)。ダイアーへの怒り(プッツン寸前)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式。拡声器(ツェペリから譲り受けました)
[思考・状況]:
1)ダイアーへ怒り心頭だが、2)以降を優先すべきである為、抑えている。
2)ツェペリ、ダイアーと共に駅に向かい、タルカス達を斃す。
3)ヨーヨーマッと拡声器を用いて仲間へ呼び掛ける(まだ仲間の捜してなさそうな場所優先)。
4)3時30分にカフェ・ドゥ・マゴへ行き、仲間を待つ(待ち合わせの10分前到着は基本。余裕を持って30分前)。
5)打倒荒木、DIO。

【ヨーヨーマッ(支給品)】
[現在の主人]:空条承太郎
[装備]:マスク
[持ち物]:無し
[任務]:
1)承太郎を“助ける”
[補足]
1)ヨーヨーマッは攻撃出来ない。能力も完全に封じられている(主人がヨーヨーマッ自体を利用して攻撃というのは可能かも知れない)。
2)主人の命令には絶対服従、しかし命令を曲解して受け取る事もあるかも知れない(ヨーヨーマッを殺すような命令には従えない)。
3)ヨーヨーマッは常に主人の半径20m以内に居なければならない。
4)ヨーヨーマッの主人が死んだ時、又はヨーヨーマッが規則を破ったならヨーヨーマッは消滅。
5)主人変更の命令があれば主人は変わる。但し変更対称人物の同意が必要。
6)主人変更の命令をされた時、次の主人がヨーヨーマッの視界に入っていなければ命令は無効化される。



[補足1]:承太郎の言う『ババァ』とは、リサリサの事です。
[補足2]:承太郎は怒りは治まったといってましたが、全くの嘘です。
[補足3]:承太郎のダイアーへの怒りは殺意ではありません。

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90:師の教え(中編)~師の教え~ ダイアー 96:4(フォー)プラス1(ワン)
90:師の教え(中編)~師の教え~ ウィル・A・ツェペリ 96:4(フォー)プラス1(ワン)
90:師の教え(中編)~師の教え~ 空条承太郎 96:4(フォー)プラス1(ワン)

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最終更新:2008年02月05日 18:05