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 * * *

突如、襲い掛かってくるダイアーに、儂は完全に虚を突かれた。
いや、その表現は正しくないかも知れない。
ダイアーの行動は十分予測出来たのだ。
予測は出来た。ただ、信じる事が出来なかった。
ダイアーがゲームに乗ったなどとは、ダイアーと死合わねばならないという事が。
其の為、迎撃態勢が一瞬遅れ、次の瞬間
…ダイアーが吹き飛んでいた。
「!?」
何時の間にか、儂とダイアーの間にジョジョが割り込んでいた。
何というスピード。
儂の目でも追う事が出来なかった。
「コイツが敵である事がよく解った。ちと再起不能になってもらうぜ」
儂の方へ目を向け、確認するように呟くジョジョ。
一方、ダイアーは
「邪魔立てするか。ならば2人纏めて相手してやる!」
と、立ち上がりながら叫んでいた。
「やれやれだぜ」
そう言ってダイアーに立ち向かおうとするジョジョの肩に手を置く。
「?」
振り返るジョジョに向かって、儂は告げた。
「此処は手出しせんでくれ。儂がコイツに引導を渡す」
「だが…」
「この男がダイアーでなくお主の仲間だったら、お主は儂がそいつと戦うのを見ていられるか?」
「…」
「ジョジョは予定通り、拡声器を使って仲間に呼び掛けてくれ。
其の間に、儂はダイアーと決着を着けとるよ」
ダイアーを警戒しながらも、儂の目を見据えるジョジョ。
そして1つだけ条件を付けてきた。
「テメェが奴に勝つ以外の結果は認めねぇぞ」
「安心せい。儂も認めん。先に東へ向かってくれ。儂も直ぐに後を追う」
其の返事を受け、軽く口元を緩めたジョジョは、ヨーヨーマッに拡声器を持たせた。
「先に行く」
そう言って、ジョジョは先に東へ向かった。


 * * *

ジョジョと呼ばれる男はこの場を去って行った。
直ぐにでも斃しに行きたいが、ツェペリさんがそれを許してくれそうに無い。
ならば、先ずは目の前の相手に全力を傾けよう。
俺はツェペリさんに向かって突進した。
対するツェペリさんも既に戦闘態勢に入っている。
互いの攻撃が届くまでに間合いが近付いた時、同時に拳を繰り出した。
バチイッ
互いの拳が触れ、相手の波紋に弾かれる。
「むっ」
「ぐっ」
態勢を立て直したのは僅かに俺の方が先。
だが、先に2撃目を放ったのはツェペリさんの方だった。
ドガガガッ
く、こいつ…
波紋を込めずに拳だけで攻撃して来ている!
波紋のように、一撃で相手を昏倒させられる威力こそ無いが、
溜めが不要なので、途切れないラッシュが襲い掛かってくる。
波紋の一撃を喰らわそうと一瞬でも溜めようものなら、
その隙を突かれて、拳の乱打に巻き込まれる。
こうなったら、俺も応戦だ!
ツェペリさんの攻撃の一瞬の間を突いて、逆にショートストレートをかます。
丁度ツェペリさんの顔面にカウンターを叩き込む形になり、ツェペリさんは仰け反った。
ダメージを与える攻撃にはならなかったが、其処により生じた隙を俺は見逃さなかった。
「ウオオオォォォ!!!」
ツェペリさんに向かって放てるだけの拳を放つ。
「ぐっ」
ツェペリさんは吹き飛び、俺は奴に止めを刺すべく拳に波紋を練る。
そして地面に倒れたツェペリさんに向かって波紋の一撃を喰らわそうと突進し、
ドゴッ
「ぐはっ!」
俺の腹にツェペリさんの足が食い込んでいた。
寝た状態で放ったツェペリさんの蹴りが、カウンターで入ってしまった。
急所は外れたものの、呼吸が乱れてしまった。
其処へ、ツェペリさんが起き上がりながら拳を繰り出し、
俺もツェペリさんに向かって再度攻撃をし…

「「波紋疾走!!!」」
ドガッ!!!

ツェペリさんの拳が俺の顔面に、俺の拳がツェペリさんの胸部に叩き込まれ、2人は共に後方へ弾き飛ばされた。
ツェペリさんは不安定な態勢とダメージの為、俺は乱れた呼吸の為、互いに決定打を与えるには至らなかった。


 * * *

起き上がりつつダイアーの方を見ると、ダイアーも起き上がろうとしている所だった。
「ハァ…ハァ…」
「ゼィ…ハァ…」
互いに呼吸は乱れ、波紋もベスト・コンディションの時と比べると、殆ど無力とも云える効果しか得られそうに無い。
但し、間合いが離れる事で互いに手の出しにくい状況となった。
此れを機に、ダイアーに訊ねる。
儂にとって最も重要な疑問を。
「…なぁ、ダイアーよ…。お主は何故その手を血に染める」
「…言った筈だ。…貴様の質問に答える必要は…無いと」
にべも無く回答を拒否するダイアー。
併し儂は、ダイアーの返答を諦める訳には行かなかった。
何故ダイアーがこんな事をしているのか、どうしても其の原因を知りたかったから。
「儂の知るダイアーは…、このゲームに乗るような人間では無い。
何か…理由が有るのじゃろう?
たった1つの質問じゃ…。此れだけは…答えて欲しい」
「…」
荒い息を吐いたまま暫く押し黙っていたダイアーは、やがて口を開いた。
「…億泰、アブドゥル、スタンド使いの奴らは波紋を愚弄した」
「愚弄?」
「人間を吸血鬼から護る為、師、トンペティが編み出した波紋を、
護られている奴らが見下したのだ」
「…」
「スタンドなどという天賦の才に溺れ、ロクに自らを高める努力をしない。
それでいて、人を護る為にそれこそ死ぬ思いで修行をし、吸血鬼との死闘を繰り広げる我々を愚弄する。
その様な者共を捨て置けるか!」
其処まで話を聴いて、儂は全てを理解した。
成程。ダイアーは目を曇らせていたのか。
納得は出来ないが、理解は出来た。
ならば儂のする事は1つ。ダイアーの目を覚ますのみ!
儂はダイアーに向かって語り掛けた。


「…自分で言って、気付かんのか」
「何?」
「波紋は何の為に生み出された?
人を護る為じゃ。人を殺める為のものではない。
今お主がやっているのは、波紋戦士の教えと対極に位置するじゃろうが」
儂の一言に明らかに動揺するダイアー。
「…っ!違う!
俺は奴らに波紋を侮辱されたから…」
「お主の誇りの高さは良く知っておるよ。
しかし、『バカにされたから殺す』など、子供でもせんぞ、そんな事。
だからこそ、お主に忠告しよう。
波紋戦士としての真の誇りを取り戻せ。
波紋が、手当たり次第人を殺める様な陳腐な能力で無い事を思い出せ」
「う、うるさいうるさい!
波紋を愚弄する輩を見逃せというのなら…
貴様も粛清する!」



 * * *

ツェペリさんの話を聴く度、俺の頭は混乱していった。
これ以上、奴の話を聴いてはいけない!
乱れた呼吸は整った。今なら最大の波紋を込め、奴を殺せる!
併しツェペリさんは喋り続けた。
「成程、儂を殺す気か。併し、お主に儂は殺せんよ。
何故なら…」
「!!!」
ツェペリさんが何を言わんとしているのか、俺は気付いた。
併し、それを口にさせる訳にはいかない。
その前に、口を封じねば…!
「だ、黙れ…」
奴が言おうとしているのは…
「お主の其れは、只の殺人拳。其れは決して…」
…俺にとって最大の侮辱。



「波紋では無い!!!」
「黙れと言ってるんだあああぁぁぁ!!!!!!」



ドガッ!!!
渾身の力を込め、最高の波紋を練った拳を、ツェペリさんの額に叩き付ける。
波紋疾走の手応えと共に、ツェペリさんの帽子が吹き飛ぶ。
今までの俺の中で、間違いなく最強の拳だ。
死んだ!!!
俺はそう確信した。
なのに…


「………っ」
「なっ!!!」
ツェペリさんはよろけながらも、その場に踏み止まった。
「ば…馬鹿な」
俺の全身全霊と最高の波紋を込めた俺の最強の拳を、ツェペリさんは耐えた。
何故だ?何故耐えられる?
ツェペリさんの額に叩き込んだままだった俺の腕は、力が抜けてだらんと垂れ下がる。
額から血を流しながらも、ツェペリさんは直立不動の態勢を崩さない。
そして静かに口を開いた。
「ダイアーよ。お主の拳には渾身の力が込められていた。最高の波紋も練れていた。
併し、只1つ抜け落ちていたものがあった。其れが何か、分かるか?」
「…」
「心じゃよ」
!!!
ツェペリさんの其の一言を耳にした時、俺の最強の拳をツェペリさんが耐えた理由に漸く気付いた。
答はこの上なく単純だった。
“あの一撃は、俺の最強の拳ではなかったのだ”。
「黄金の精神をその身に宿す者にこそ、波紋は真の力を開放する。
心を失ったお主の波紋は、紛い物じゃ」
そこまで話し、ツェペリさんは拳に波紋を集中させ始める。
だが全てを悟った俺は、この拳をよけようという気がなかった。
気が抜けた訳じゃない。寧ろ逆だ。
俺は理解したのだ。今からツェペリさんが放つのは、俺の目を覚ます為の一撃。
波紋戦士としての真の誇りを取り戻す為、俺はこの一撃を受けなくてはならないという事に。
「その身に刻み込むが良い。そして思い出せ。
此れが師の教え…」
ツェペリさんは一旦拳を引き…



「此れが   波紋じゃあああぁぁぁ~~~っ!!!」



真の波紋の一撃を、俺に叩き込んだ。
力、波紋、そして心も込めたその一撃を受けた俺の体は、宙に舞った。

あぁ…
…思い出したよ。


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90:師の教え(前編)~兄弟弟子の再会~ ダイアー 90:師の教え(後編)~捨てるのではなく…~
90:師の教え(前編)~兄弟弟子の再会~ ウィル・A・ツェペリ 90:師の教え(後編)~捨てるのではなく…~
90:師の教え(前編)~兄弟弟子の再会~ 空条承太郎 90:師の教え(後編)~捨てるのではなく…~