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ガチャン! バリバリ! ガチャンガチャン!

飛び交う雑貨が襖や食器棚を散乱させる。時刻は午前八時を指していた。
オレは所構わず家の中をザ・ワールドに引っ掻き回させていた。
いくら漁っても、出てくるのは平凡な家庭にありがちな日用品ばかり。
武器に使用できそうなものは何も見つからない。
最初に見つけた包丁、ナイフ合わせてほんの数本。ここの家屋には携帯銃すら備えていない。
無用心にもほどがある。住人は一体どういった神経をしているのか。
この町はそれほど治安がある、ヌルい地域なのだろうか。
てっきり殺し合いを容易に進めるために用意された場所だと考えていた。
オレは勘違いしていたのか……?

このDIOが、地図を広げる。
今自分のいるエリア【C-8】は、この紙面でいうと端だ。
オレはこの町の都市部にはまだ行ったことがない。
この町の人口密度がどれほどかは知らないが、ざっと百人はくだらないはずだ。
隙あらばこの家に近づく人間からエネルギーを補給したかったが……。
ここで出会った人物は、『柱の男』カーズと『ヌケサク』のナランチャ……未だ二人だ。
まさか……町にはこの名簿に乗っている『参加者』という輩しか、いないのではあるまいな?
それは非常にまずい。このまま夜になるまでここで行動を制限されるのは、我慢がならん。
それにもしもここが、禁止エリアにされてしまおうものなら……

「クソッ! 忌々しい首輪だッ!」

首輪に手をかけ、オレは悪態をつく。
あの『ヌケサク』ナランチャはもうここには戻ってこない。
命令通りに動く人間は命令をこなすことに精一杯で、こちらの状況まで気がまわるほど有能ではない。
「気が向いたから、ちょっと主人の顔色を伺おうかな」なんて発想は浮かばないだろう。
実際ヤツはそれほど有能ではないからな。どの道殺すつもりの人間なのだから、これ以上期待をするのは止めるか。
だがこのままでは…………DIOが、このDIOが禁止エリアによる爆死などという、不名誉な烙印を押されてしまう。
さて、どうするか。

※  ※  ※

時計が刻々と針を動かす。長針は12、短針は10をそれぞれさしている。
やはり何も思い浮かばなかった。
この状況を槍のように突き破る、革新的な何かが。
土を掘って地下を進むこともできるだろう。
家具を工作して日除けを作り、脱出することも可能だろう。


だが、そうでは無いのだ。
それでは納得がいかなかった。

「この『ディオ・ブランドー』はッ! 『帝王』なのだッ! 」

策を弄すれば弄するほど物事には限界があるもの。
自分はその限界と決別を図るために人間をやめた。
今更あえてこの道を選ぶほど、このDIOは落ちぶれていないッ!                               
……日光に弱いのは代償として受け止めているつもりだ。
だが、もう時間がない……万が一放送でここが、禁止エリアに選ばれてしまえば、我が生命はここで絶たれる。
吸血鬼が首を刎ねただけで死ぬことはないはずだが、荒木がそれを知らぬはずがない。
何らかの手段を用いてオレを始末できるのだろう。
その為にこの首輪が……付けられたに違いない。
思えば目覚めた時から既に、荒木との絶対な優劣を、オレはつけさられていたのだ。
ヤツが真っ向から挑んでいれば、こんな首輪を装着させる暇など与えさせないというのにッ!
このDIOがァァァ……この、DIOがァァァ……。
もはや……これまでなのかッ!?
閉じこめられたこの陸の孤島で、オレがこの状況で全ての者から『勝利』をもぎ取る可能性はッ……!

※  ※  ※

カチ、コチ、カチ、コチ、カチ、コチ、カチ、コチ……


オレは椅子に座り、手を組み、足を組む。
見据える置時計の時刻は、午前11時55分。上出来だ。
今まで気にするのも忘れていたが、体の傷は大分癒えており、気がつけば心肺に流れる血脈も正常になっていた。
いい。ノロマな亀の足のごとく、着実に我が肉体は本来の力を取り戻しているようだ。
この6時間実に暇を持て余していたが、ついに半分まで「時」が来た。
あと6時間、あと6時間待てば私の時間がやってくる。
この指で肉を抉り、この掌で肉を潰し、この手で肉を引き裂き、この牙で肉を食い破る――吸血鬼の本能を生かす時が。
この口で罵倒し、この足で屈服させ、この靴を舐めさせてジョースター共に屈辱を与える――勝者となる時が。

さあ荒木、放送を流せ。ファンファーレのようにフーフー鳴らせ。
その下卑た声で、運命について講釈を垂れるがいい。
そして死者の報告をDIOに、このDIOに知らせるのだ

オレはここから逃げも隠れもしない。もう、あれこれと詮索するのは止めだ。
認めよう。あえて認めてやろう。

「この状況で、『脱出』という『勝利』は不可能だということをッ!」

聞こえたか荒木?
それがこの6時間で、オレが出した答えだ。
このDIOとしたことが、一時といえど、禁止エリアなどというふざけた事象に怯えたのは腹立たしかった。

だが、今は違う。


オレは帝王だ。
ここを禁止エリアに出来るものならやってみろ。
オレの死を聞いて調子にのったジョースター共が、貴様を殺しにゆくぞ?
オレの部下が、復讐のために立ち上がるぞ?
奴らの因縁を掌握し、断ち切れるのは後にも先にもこの私だけだ。

このオレを、現時点で殺して生じるメリットなど、歯カスにも満たないことはよくわかっているはずだ。
大人しく此処以外の場所を禁止エリアに指定するがいい。
もし、貴様がここを禁止エリアにしたのなら……そこに残るのは貴様の『敗北』だ。
このDIOの存在が生み出した恐怖に、貴様はひれ伏したことになるのだ。
わざわざこのDIOは、貴様のレールに『乗っている』のだよ。
まぁ……首輪をいつまでも付けたままにするつもりは、微塵もないがな。
『勝利』と『敗北』は、あくまでこの『時点』での段階の話だ。

貴様のような、好奇心でしか運命を語れない論者など、我が感情をかけるまでもない。
貴様のような、首輪をつけさせることでしか犬を屈服させれない飼い主など、他愛もない。
貴様のような、自分の領域でしか力を発揮できない安っぽい帝王など、下水に住むボスネズミ以下の存在でしかない。

『帝王』は他人への『支配』にしか興味を持たない。
だが、真の『帝王』は他者への『恐怖』を決して持たない。

負け惜しみかどうかは、貴様が判断することではない。




このDIO、自分の定めた『勝利』さえ得られれば――――それで満足よ。


【吉良吉影の家(C-08)/1日目/昼】
【DIO 】
[スタンド]:『ザ・ワールド』
[時間軸]:ポルナレフ達対ヴァニラ・アイスの直前
[状態]:ほぼ完全回復
[装備]:包丁を1本にナイフ2本。フォーク1本
[道具]:支給品一式(ただしランダムアイテムは無し)
[思考・状況]
1:放送を待つ。夜までは『大人しく』ここにいる。
2:ナランチャを利用する。第三放送から第四放送までの間に杜王グランドホテルに行き、プッチ達と合流するつもり。
3:もしナランチャがプッチ達と共にホテルにきた時、ザ・ワールドで暗殺する
4:優勝してアラキを始末したい。
5:そのためには帝王の誇りを傷つける首輪の解除は必須ッ!
6:ワムウ(柱の男の肉体が欲しい)、ジョースター家の連中、首輪解除に役立つ者を探す。

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59:帝王の逡巡 DIO 102:『誤解』と『信頼』