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ゲーム開始以来ずっと拠点にしていたこの家のリビングで、俺はさっきからずっとこの男と遊んでいる。
いや、楽しんでいる俺が言えることではないが、遊んでいると言っても実際のところはただの餌付けだ。
相手の名はセッコ。初めて会話した時に「殺しまくって乗り切る」と宣言した人間と同一人物とは到底思えないほど、遊んでいて楽しい男だ。
しかし、ずっと遊んでいる訳にもいかない。俺はここで定期的に角砂糖を投げていた手を止める。それに気が付きセッコが怒りの声を上げる。
「おい!ウェザーよぉ~てめぇなんで急に角砂糖投げんのやめんだよぉ!」
まあ当然だろう。しかし、こいつの怒りに触れるような言動は今は控えなくてはならない。出来るだけ落ち着いて声にする。
「作ったそばから投げてちゃあこっちも疲れるさ。だからこれから少し角砂糖を作り置きしておきたいんだが。そうすればお前が欲しい時にすぐにあげられるだろ?」
これはあながち嘘ではない。常に同じ形の角砂糖を作り、それを風に乗せて打ち出しているのだ。もっと言えば俺のスタンド-ウェザー・リポート-は精密な動作には向いていない。
これ以上続けていたらセッコの納得する角砂糖の精製が出来なくなることは目に見えている。そうすれば同盟の決裂にもなりかねない。そしてなにより、砂糖の量が心配だ。
「あぁ~そういう事なら理解可能だぜぇ。じゃあ俺はお前が作ってんの見てるからよ。ちゃっちゃと作ってくれよォ~」
どうやら怒りは収まっているようだ。しかし俺のスタンドを解除させて休ませてくれるほどは気は長くはないらしい。
俺はもう随分と慣れてしまった手順で角砂糖を作り始める。もちろん、セッコの目の前でだ。セッコは楽しそうな目で角砂糖が出来るところを眺めている。
当初は中を空洞にした角砂糖にして極力砂糖を消費しないようにとも考えていたが、こんなに見られていてはそれも無理だろう。そう考えていた矢先、セッコから声がかかる。
「なぁ~ウェザーよお~。さっきからなんで1個づつしか角砂糖作らねぇんだよ」
――時間稼ぎをしている訳ではない。俺は本当の事を口にする。もちろん、怒りを誘わないように。
「俺のスタンドはそこまで精密な動きが出来ないからな。1個づつ丁寧に作らないとお前だって嫌だろう?」
「なァるほどなぁ~。だったらいいぜ。許してやるよ。サボってるんだったら許さねぇけどなぁ~」
許す、許さない、と言う単語に少しだけ反応たが、これはどうやら本心で疑っているわけでもなさそうだ。正直言って、こいつは頭も悪そうだから、会話で出てくるこういった言葉もその場のみの感情でしかないだろう。
「俺が1個づつしか作らない理由が分かったろ?まだ全部作るのには時間がかかるからそんなに…―――!?」
ずっと見ていなくてもいいぞ、と言おうとした時だ。部屋にあるテレビのスイッチが入ったのだ。セッコも驚いている。
反射的に家中の風の動きを探る。しかし、反応はなかった。テレビに映っている男――荒木は話し始める。これもヤツのスタンド能力だろうか…
『えー皆聞こえてるかな?それじゃあただいまから一回目の放送を行いま~す。』


そうだった。我ながら情けないところだったが…セッコとの角砂糖遊びに夢中で放送を聞き逃すところかもしれなかったのだ。
しかし、今こうしてはっきりと放送を聞いている。聞き漏らす訳にはいかない。セッコは……どうやら彼も放送に真剣なようだ。食い入るようにテレビを見つめている。
『……じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね―――』
プッツリと放送が切れた。俺自身が心をひどく動かされるような人間は死んではいないようだ。徐倫も…エルメェス、F・Fも無事か。アナスイは俺が心配しなくても大丈夫だろう。
禁止エリアも俺たちがいる地点とは遠く、移動の強制はなさそうだな。顔写真の入った名簿と地図にそれぞれチェックを入れる。
放送中は沈黙が流れていたが、すぐにセッコが話し始める。
「――…おいウェザー、角砂糖つくらねぇのかよお」
やはり角砂糖のほうが放送よりも重要らしい。現に、放送の途中からセッコは画面こそ見ているものの集中力が途切れているのが見て取れていた。
だがここで「そうだな」と作業に戻るわけにはいかない。多少なりセッコの意見を聞いておきたい。
「ああ。だがちょっと待て。なに、すぐ作ってやるよ。だから少し、話をしないか?」
「はあ?…まぁいいか。だけど絶対ぇーにサボるんじゃあねえぞ」
どうやら了承してくれたようだ。ああ、とだけ短く答え、俺が切り出す。
「お前は、今の放送をどう感じた?誰か知っているやつとかが呼ばれたりしたか?」
「どう感じた?あー…よくわかんねぇな。俺が知ってるやつは、プロシュートとギアッチョだけだ。」
どうやら素直に話をしてくれるらしい。角砂糖に注意が向く前に話し続ける。
「そうか。そいつらは知り合いなのか?仲間だったりしたのか?」
下手に同情してもセッコは反応しないだろう。ここは情報を得ることに集中した。後でもう一度名簿の写真を見ておこうと考えているとセッコから答えが返ってくる。
「いや、俺も知ってるのは名前と顔くらいだ。あいつらは暗殺チームで周りから嫌われてたからな。俺も好きじゃない」
暗殺、チーム…ギャングか何か、こいつがいた環境はどうやらまともな連中はいなさそうだな。最も、刑務所にい続けた俺も他人の事は言える立場ではないが…俺は続ける。
「そうか。それじゃあ禁止エリアについてはどう思う?俺たちとは関係なさそうなところばかりだよな?これじゃあ意味がないと思わないか?」
「……おめぇ質問しすぎだよ。教師かなんかかぁ~!?」
質問に飽きたのか、セッコが怒り交じりで反論する。すかさず答えた。
「悪かったな。じゃあ角砂糖を2個やるよ。最後まで話したらもう3個やろう。」
「うおぉっ!!分かってんじゃないか!」
机の上に置きっぱなしだった角砂糖を早くも、しかし律儀に言いつけどおりの2個だけ手に取りセッコは浮かれている。
「ほら、角砂糖食ったら答えろよ?」
「…あぁ、そういやぁ禁止エリアなんて言ってたな。別に俺にゃあ関係ねぇな」
さっき集中力がなさそうだったが、ここまで話を聞いていなかったのか…これ以上放送やゲームの本質に関わる質問は無駄かもしれないな。
いや、遊んでいた俺自身、このゲームの本質をじっくりと考えている時間も、一緒に推測してくれるような頭脳を持つ相手も…持ち合わせていなかった。
本当は首輪や荒木について誰かと話しておきたかったが――訪れたのがセッコだったことが不幸だったかもしれない。考えをめぐらせつつも最後の質問をする。
「そうか。じゃあ最後の質問だ。これ答えたらあと3個食っていいぞ」
「おう!早く何でも聞け!」
セッコは怒っている口ぶりではないものの、じれったそうにしている。もったいぶった言い方は出来なさそうだ。
「よし。 …お前の支給品は何だった?まだ見せてもらってないぞ。」
役に立てるものがあることは期待していなかった。だが聞かない訳にもいかなかった。
使えるものなら使っておきたいし、支給品が受け渡してもらえるということは信頼の証にもなる。セッコがデイバッグを手元に引き寄せ、中からひとつの石を取り出し、投げてよこした。
「これだ。齧っても美味くねぇからしまってた。」
その宝石は朝日を受け、キラキラと不思議な光を放っている。手にとって少し眺めた後セッコにそれを返した。
「そうか。まぁ使えなくともお前に支給されたものだ。持っているといい。じゃあ約束どおりそこの3個食っていいぞ」
「まぁな~。綺麗だしよぉ~。」
セッコは残る3個を口に頬張りながら窓越しに差す朝日に石をかざしていた。その一瞬だった。
どんなタイミングでか、朝日と石の角度がピタリと重なった瞬間、石の中心からまるで太陽を凝縮したような光線が―ほんの一瞬だけだったが―発射されたのだ。


「うおぉっ!!?」
とっさに顔面をよけたセッコの頬に血が流れた。傷は深くはないようだがセッコの怒りを買うにはちょうど良かったのかも知れない。
「何だぁこの変な石はよおォ!!ぶっ壊してやる!!『オアァァァ―――――……!!』」
「止めろっ!その石を壊すなッ!!」
とっさにセッコを抑える。本能というか勘というか、その石は壊してはいけない気がしたのだ。
「何でだ!!俺は怪我したんだぞ!痛くはねぇけどよぉ!この怒り!このムカツキ!止めらんねぇ!」
「落ち着け、俺はその石の使い道が分かったんだ」
とっさに口を開く。セッコは肩で息をしながらも聞いてくる。
「この石の使い道だと!?」
とっさに開いた口が迷わないうちに俺は自分の推測を話す。どこまで理解してもらえるだろうか…
「あぁ。今…俺の位置から見ていて分かったんだがその石は光を吸収だか反射だかして光線のように出来るみたいなんだ。」
セッコに動きはない。少し落ち着きを取り戻しているようだ。
「と、言うことはだぞ?俺の天候を操る能力があれば、晴れ間を作ることも出来る。つまり、自由自在にその光線を撃てるって事になる。」
「――…何が言いてぇのかよくわかんねぇ」
セッコは落ち着いてはいるものの、頭の中ではいまだに理解不能らしい。
「ピーン、と来いよセッコ。今それを壊したら俺たちは強力な武器を失うんだ。」
「……なァるほどなぁ~。お前やっぱ頭いいぜぇ」
ぽん、と手を打ち深くうなずくセッコ。どうやらやっと理解してもらえたようだ。しかし俺の心には違和感が残る会話だった。
――セッコに最も分かるように軽々しく『武器』と呼んでしまった『それ』はもっと何か、重要な使い道があるのではないのかと。
もしかしたらこの世界の中に『この石』を必要としている人物がいるのではないのか。そうしたらこの『石』は、渡すべきなのでは…?
この事をどうにかしてセッコに伝えたい。しかしどう伝えればいい?あくまでも今現在俺はゲームに乗るつもりはないが、セッコは違う。
うっかり「信頼できる人物にその石を託してみよう」なんて言ったら今この場で同盟が決裂してしまうかもしれない。
そうしたら取れる方法はひとつ。俺がこの石を自分の所有にすることだ。慎重に言葉を選ぶ。
「なあセッコ。お前はこの石に武器意外に使い道はあると思うか?」
すぐに返事が返ってくる。もう石は机の上に置いてあり、セッコは角砂糖を口の中で転がしていた。
「いや、武器としか思わねぇ」
「おいおい、それは俺が武器だと言ったからだろ?支給されたのはお前だ。セッコ、君の意見を聞こう」
「…後で角砂糖よこせよ。 俺が最初見たときは美味そうに見えた。だけど齧ったら硬くて食えねぇ。捨てようかと思ったけど綺麗だからとっといた。それ以外は別に興味ねぇなあ」
興味がない……これはいい返答かも知れない。この石を俺が持っていれば、同盟の決裂などで別々に行動することになっても俺の好きなように石を扱える。
それに、この返答ぶりからして、セッコは俺に石をよこしたことも忘れてしまうだろう。
「そうか、じゃあ…その石俺にくれないか?がっつくようだが、俺はそういう綺麗なものが好きなんだ。角砂糖と交換してくれよ。な?」
「ホントだな?じゃあ早く角砂糖くれよ!!」
どうやら角砂糖に勝るものはセッコの価値概念にはないようだ。
「そうだな…いくつほしい?2個か?」
――ここでわざと少なめに言っておく。ちょっとした駆け引きだ。
「えぇ~!!もっとくれよぉお~!」
当然ながら駄々をこねるセッコ。やはりこいつがゲームに乗ろうとしている事自体信じられない言動だ。そして、この返事なら――
「嘘だよ。5個やろう!」
ここで懐柔できるだろう。たかだか角砂糖で良いのならこの『石』は安いものだ。
「うおぉう!!うおっ!!」
今まで5個同時にもらっていないセッコは子供のように浮かれている。そして、この反応の良さから、了承だと直感で理解した。
「よしッ!!じゃあ投げるからな。手は使うなよ!!」
スタンドで風を起こす。セッコが歯で受けるところもどことなく見飽きてきた。それでもつくづく感心してしまう程の動きだ。
「よ~しよし、いいだろう」
さすがに頭を撫でるような事はしなかったがセッコを褒める。セッコも嬉しそうだ。だが会話を切らないで俺は続けた。
「…じゃあ、これからどうするかを考えようか、セッコ」


角砂糖をガリガリやっているセッコが振り返る。
「どういうことだよ?」
……まあ、セッコの反応にしては良い方だと思う。興味を示してくれるだけでもこちらとしてはありがたい。
「だから、せっかくこの石の使い道もわかったんだから、と外に出てみるか」
出来るだけ声の調子を下げる。仮にも「乗っている」宣言をした男を屋外に連れ出すのはまずい。
こいつのスタンドや、砂糖のやり取りで見たセッコ自身の動体視力や運動能力が屋外のほうが威力を増しそうだと言うことも理解している上での結論だ。
「それとも、もう少しこの家の中で待ってみるか。セッコ、お前はどっちがいい?」
さっきとは裏腹にやや決定の意思を強く押し出した口調で話を締める。最も、こんな話し方でもセッコに通じなければ意味がないのだが…
「…どっちでもいいなぁ~。」
どことなく無愛想ないつもの口調で返事が返ってきた。角砂糖以外は本当に興味がないのだろう。そして、これほどまでに自分の意見を言いやすい答えは――ない。
「なら、もう少しこの家で落ち着いていよう。さっきの放送の間俺は『雨』を降らせていなかったし」
そう、本当は遊びに夢中で放送と同様に雨なんか忘れていたのだ。これからもこの家に近付く者がいるかもしれない。そのためにも、もう一度雨を降らせておくことは重要だと感じたからだ。
そして――次に出会う人物がこの『石』について何か知っていれば…あるいは、このゲームの『希望』になりうるかも知れない。
「…それに、さっきお前にあげたから、また角砂糖作り置きしないとな。」
最後に角砂糖の話を付け加える。当然、セッコの反応も良くなる。
「そおぉ~だよォ~。てめ~話ばっかりで結局サボってやがったなァ~!?」
冗談のような本気のような怒り口調。角砂糖に関することでここまで怒る事が出来るのは世界中探してもセッコくらいだろう。
「悪かったな。急いで作るよ。じゃあ、とりあえず角砂糖が全部出来るまではこの家にいよう。いいな?」
「あぁ~。じゃあ作ってくれよ。また見てるからよォ~。」
……どうやら全てを了承してくれたようだ。最も、話の半分はまともに理解していないのだろうが。
俺はまた机に向き直り、角砂糖製造に取り掛かる。同時に屋外にも『雨』を降らせ始めた。状況は放送の前と同じに戻ったって訳だ。
―――…俺が、セッコと出会い、そして…この『石』の『力』を知った事以外は。


【角砂糖同盟】


【杜王駅近くの民家(F-3)/一日目/朝】
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ブチャラティ達と闘う前
[状態]:右頬にエイジャの光線による切り傷(深くはない、少し流血)仗助のラッシュの痛みは癒えた
[装備]:オアシスのスーツ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1)角砂糖製造を眺めることに夢中(でもやっぱり本物がいい)
2)ウェザーと第四放送まで同盟(今の所裏切るつもりはない)
3)会った奴は倒す
4)ウェザーは(チョコラータ程ではないが)好き。とりあえず従っていれば問題ないだろう。
5)仗助と会ったら決着をつけたい。
6)ゲームで優勝する
7)あァ?石?どうでもいいぜぇ~

 ※3以降の思考はほとんどウェザーの説得と角砂糖によって忘れてしまっています。

【ウェザー・リポート】
[スタンド]:『ウェザー・リポート』
[時間軸]:ヘビー・ウェザー習得直前
[状態]:健康、スタンドによる降雨(小雨程度)
[装備]:簡易角砂糖、砂糖を入れた袋(砂糖そのものの量は少ない。ほとんど角砂糖にしている)
[道具]:支給品一式・顔写真付き名簿・少量の塩・スーパーエイジャ(セッコからもらった)
[思考・状況]
1)角砂糖作りを続ける(全ての砂糖を角砂糖にするべきではないとは思っているがほとんど使っていくつもり)
2)角砂糖を使ってセッコを利用・見張る
3)スーパーエイジャの真の持ち主ともいえるべき人物を探したい。(使用目的を聞きたい)
4)徐倫達を探す(角砂糖製造が終わり次第この家を出て動こうと思っている)
5)『雨』によって注意深い人物との接近、その人物との会話をしたいと考えている。(出来ればエイジャの情報を優先的に知りたい)
6)セッコと第四放送まで同盟(セッコに裏切られる前に裏切る) 
7)プッチ神父を警戒
8)打倒荒木

 ※エイジャに関してはあくまで真の持ち主から使用目的・方法を聞くことと、セッコが悪用することを防ぐためで
   実際にウェザー自身がエイジャを使って何か行動を起こすつもりではありません。
   また、角砂糖完成後家を出ようとは思っていますがどこに向かうかなどは考えていません。

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47:角砂糖同盟 ウェザー・リポート 78:悲劇
47:角砂糖同盟 セッコ 78:悲劇