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「なんで起きねえんだ!さっさと起きろよォォォォォ!」  リーゼントの男、東方仗助は死んだかのように眠る彼の父親(もっとも父親だとは気づいていないが)  ジョセフ・ジョースターの胸倉を掴み悲痛の声を上げる。  クレイジー・ダイヤモンドは確かにジョセフの傷を治した。そう、仗助は治したのだ。  ジョセフを魂をも焼き尽くす残酷な傷みから救ってやったのだ。ジョセフの肉体は全くの無傷。健康的で雄雄しい筋肉が盛り上っている。  見たところ彼はまさに健康、今すぐ立ち上がってもおかしくはない。     しかし、現実は非情である。仗助が治してから三十分経つ。  ジョセフは仗助の嘆きに何の反応も示さず、硬く目を閉じ押し黙っている。 「億泰だって!億泰だって治ったんだッ!てめえが死ぬわけがねえッ!殴ってやるからさっさと起きろォォォォォ」  仗助の悲しき慟哭が夜の杜王町に響き渡る。彼の目は涙で腫れあがっていた。 「起きろォォォォ!クレイジー・ダイヤモンドに治せないモノはねえッ!」  仗助はもう何度目かもわからない叫びを上げる。彼をここまで必死にさせるモノは何なのだろうか。  仗助とジョセフが出会ってからまだ一日も経っていない。さらにジョセフは仗助の大切なリーゼントをけなした。  ジョセフがしたことは、仗助にとって見捨てるに値する行いである。  しかし、仗助はこの自分の髪型をバカにするふざけた男に奇妙な愛情を抱いていた。  血でも繋がっているかのような親近感を感じていた。    そんな思いからか、仗助はいまだにジョセフの復活をあきらめきれないのだ。  仗助の心中には治してからかなりの時間が過ぎた今でも、『この男だけは死なせない』という確固な思いがあった。 (死なせてたまるかッ!できることは何でもやってやる!石に噛り付いてでもこいつを治してやるッ)  必死に頭を働かせる。  仗助はクレイジー・ダイヤモンドを発現させる。 「承太郎さん、あんた、たしか前に言ってたな。  『死んでしまった者を生き返らせることはどんなスタンドにもできない』そんなことねえッ!俺はその概念を乗り越えるッ!  こんなことやったことねえが生き返らせるためならッ!二回、三回、何十、何百、何千回とよぉ」  クレイジー・ダイヤモンドが拳を構える。 「何度でも繰り返し治してやるッ!いけ!クレイジー・ダイヤモンドォォォォォォ」   そして、彼の一縷の希望を乗せた拳を放つ。 「てってめーは!」  仗助は思わず目を疑う。ジョセフが目を開きゆっくりと立ち上がっている。   (こいつ起き上がった。ついに!ついに!復活したんだ。クレイジー・ダイヤモンドは治したんだ) 「おまえッ!生き返ったのかよォ」 「しっかしよぉー不思議に思うんだぜェ~~  てめえのよォ~クレイジー・ダイヤモンドだっけか?どんな仕組みで治してんだろう?ってな~~~っ」  ジョセフはしっかりと立ち上がり仗助の目を見据える。  完璧に治っている。クレイジー・ダイヤモンドはついに治したのだ。  クレイジー・ダイヤモンドはついに『死んでしまった者を生き返らせることはどんなスタンドにもできない』という概念を乗り越えた!  これで荒木という名の狂人が仕組んだバトル・ロワイヤルは破綻せざるを得ないだろう。  仗助はついに、失われた命を取り戻すことに成功したのだから……  もう一度言っておこう。現実は非情である。  空が白み始めてきたころ仗助は『一人』、虹村邸跡の前に腰を下ろしていた。  目の前には、仗助にとって名も知らぬ大男が地に伏し死んでいた。 『まっ!オレ頭悪いから深く考えると頭痛おきるけどよォ~~っ』 (やめろ!こいつをあの時の億泰に重ねて考えるんじゃねェー!空しいだけじゃねえか)    仗助は雑念を振り払い、よろよろと立ち上がる。もう涙は流れていない。 「死んじまった。こいつは死んだんだ……オレのクレイジー・ダイヤモンドは『死』に負けちまった」  彼は踏ん切りがついたようだ。男の死をしっかりと受け止めている。  もちろん悲しいことは悲しいのだが、先ほどまでの狂う程の悲しみはない。  彼は『やるだけやったんだし仕方ない』という風に諦めていた。  仗助はこれからどうしようと途方に暮れる。    思い返せば……オレはこのクソゲームが始まってからずっと厄介事に巻き込まれてるな。落ち着いた時間なんて全くなかった。  とにかく、これからどうすりゃいいんだ!  殺し合いだぜ!一人しか生き残れないんだぜ!脱出なんてこのうざったい首輪のせいで、できないかも。どうすりゃいいんだ……  何を考え何を目的に行動すればいい?アラキ打倒のため仲間を募るか?ゲームに乗って優勝を目指すか?  どのルートを選んでも終着点はこいつみてえな『死』しかないのかもしれない。『この状況で自分は何をすべきか』 「クソッ!」  仗助は持っていたデイパックを地面に叩きつけた。  この心のもやもやが晴れるまでクレイジーダイヤモンドで暴れてやろうかとも思ったが、仗助はランダム支給品のことを思い出し拳を抑える。  デイパックの中にはいろいろな物が入っていた。ランダム支給品である小型時限爆弾、食料、コンパス、地図、そして名簿。  これだけ残酷な事が起こりもう少々のことでは驚かないと高を括っていた仗助もこの名簿には驚かされた。      ・・・・・・・・・・・  たしかに死んだはずの吉良、友だちである億康や康一達、そして何より自分の親父であり、今はもうただの老いぼれであるジョセフ・ジョースター。  「アラキの野朗……億康やジジイまで!」  仗助は吉良がなぜ生き返ったか、という疑問はわきに置き、友達や父親までをもゲームに巻き込んだアラキへ、さらに激しい怒りを燃やす。  億康達はジジイよりかは生き残れるだろう。問題はジジイ!どう考えても生き残れるとは思えねえ。あいつはけっこうボケてるしな。  とにかくジジイを探さねえと……でもどこを探す?  ジジイが行きそうな所ってどこだ?見当もつかない。適当に歩き回ってたら会えるか~?  いや……探す前にオレがみすみす死なせちまったこいつをどうにかしてやらねえと。このまま道路に置いてきぼりっつうのは酷な事だしよぉ~  こいつはオレの頭をけなしはしたが、あの鳥公の攻撃からオレを守ってくれたんだ。  オレには、死んじまったからといってこいつをこのままほっておく、なんて事はできねえよ  賢いとはお世辞にも言えない頭で仗助は考える。 「霊園……だな。こいつを埋葬してやらねえと。どうやって運ぶかが問題だけど、とにかく動いてりゃジジイに会えるかもしれねえし」     心身の疲労のせいで震える足をゆっくりと前に出し、仗助は男を埋めるためのスコップを探しに自分の家へ向かっていく。  すべきことを決めることができたという安堵からか、なんとも形容し難い感情が彼に襲い掛かってくる。  人が死んだ『悲しみ』、アラキへの『苛立ち』、そして自分への『怒り』。それら全てが奔流のように心中で渦巻く。  名も知らぬ男が死んだ直後のように、狂う程の『思い』の激流が再びやってきたのだ。   「仗助君……」    ……今、だれかオレを呼ばなかったか? 「誰だ!」  機敏な動きで振り向きクレイジー・ダイヤモンドを発現させる。  しかし振り向き見えたモノは名も知らぬ男の死体ひとつだけ。つまり、誰もいない。 「気のせいか……?」  これは何だ?幻聴ってやつか?とうとうオレはイカレてきたって事か?これ、いよいよやべぇんじゃねえの~~ 「気のせいなんかじゃねえぜ。もっともぉ~っと近づいて来てみな」  またしても声がする。仗助は気味悪く感じたが、どこか懐かしい気持ちにもなった。 (この声……小さくてわかりずらいが確かに死んでしまったあいつの声。声はあいつの死体がある辺りから聞こえてくる。)  仗助は死体へ向けて警戒しつつもゆっくりと歩を進める。  近づくに連れてぼんやりと見えてきた。死体の上で半透明のあいつがゆっくりと天へ向かって浮上している。  スタンドも月まで吹っ飛ぶこの衝撃!なるほど、杉本鈴美みたいな幽霊ってわけか……オレなんかが最後の別れを言う相手でいいのかよ。  オレはおまえを死なせちまったんだぜ。もっと、大事な人がいるだろうが。どうせ化けて出るんだったらその人の所へ行けよな。 「化けて出てまでオレなんかに会いたいか?どうしてオレの所になんて来るんだ?おまえを治せず死なせちまった男だぞ。オレとおまえは全くの他人だ。  会ってから一日も経っていない。もっと大事な人いるだろうが!」  ありったけの思いを言葉にする。名も知らぬ男は光に包まれ微笑んでいる。 「ちょっとぉ仗助君、しばらく見ないうちにずいぶんとネガティブになってんじゃないの」 「真面目に答えろよッ!」  激しい言葉に男は少しだけ驚いていたが、すぐにまた、優しい笑みを浮かべて仗助の質問に答えた。 「おまえが一番大事だぜ。理屈とかじゃねえ。『ここ』でわかる。」  男は胸を指差し言う。仗助の目に枯れたはずの涙が溢れてくる。   「お……おまえはこの杜王町に埋葬してやるから……オレが生まれ育ったいい町だよ」 「ありがとよ仗助君。わりいな、こんな簡単に死んじまって……『もうちょっと粘れるかなぁ~』とも思ったんだけどよぉ。無理だったぜ」  仗助はいよいよ涙で話すことも困難になってきた。喘ぎながらも話す。 「何でだよ。死……死ぬなよ。逝かないでくれぇ……おまえのことまだ……まだ全然知らないのに。逝かないでくれよぉ」 「わかるだろ?もう、時間ねえんだよ。仗助君、髪型……馬鹿にして悪かったな。死ぬんじゃ…ねえぞ」  男が溶けて行くかのように消えていく。  まてッ!まだッ!後少しだけ……  泣くのを堪えこれで最後になるであろう言葉を放つ。 「『名前』ぐらい聞かせろッ!勝手に……勝手に消えんじゃねえッ!」  男は仗助の問いに答えることなく満足げな笑みのまま満天の星空に溶けていった。  仗助はしばらく空虚だった。何も考えることなく突っ立っていた。  そして地に横たわる亡骸を見て再び大粒の涙を流し悲痛の叫びを上げた。  首に巻きついた冷たい鉄の感触だけが妙にリアルだった。 【虹村邸跡の前の路上(Gー5) 一日目 早朝】 【東方仗助】 [スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド [時間軸]:四部終了時 [状態]:悲しみと荒木への強い怒り。右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み)歩行に少し影響。 [装備]: 無し [道具] 支給品一式、小型時限爆弾 [思考・状況]   1:とりあえず『2』を実行するため自分の家にスコップを取りに行く。   2:目の前の男(ジョセフ)を霊園に埋葬する。     (霊園へ運ぶ手段をこれから考える。手段がなければ背負ってでも連れて行く)   3:霊園へ向かう道中でジョセフ・ジョースターを探す。   4:億康たちを探す。   5:吉良を警戒(なぜ生き返ったかについてはまだ深く考えていません)   6:打倒荒木! [備考]:仗助はとうとうジョセフの名前を確認できていません。『波紋』という単語が引っかかっている程度。 【ジョセフ・ジョースター 死亡】 *投下順で読む [[前へ>《運命》の使徒]] [[戻る>1日目 第1回放送まで]] [[次へ>帝王の『引力』]] *時系列順で読む [[前へ>《運命》の使徒]] [[戻る>1日目 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>帝王の『引力』]] *キャラを追って読む |30:[[ダイヤモンドは凍らない]]||ジョセフ・ジョースター| |30:[[ダイヤモンドは凍らない]]||東方仗助|54:[[ドッピオ、兄貴から逃げる]]|
「なんで起きねえんだ!さっさと起きろよォォォォォ!」  リーゼントの男、東方仗助は死んだかのように眠る彼の父親(もっとも父親だとは気づいていないが)  ジョセフ・ジョースターの胸倉を掴み悲痛の声を上げる。  クレイジー・ダイヤモンドは確かにジョセフの傷を治した。そう、仗助は治したのだ。  ジョセフを魂をも焼き尽くす残酷な傷みから救ってやったのだ。ジョセフの肉体は全くの無傷。健康的で雄雄しい筋肉が盛り上っている。  見たところ彼はまさに健康、今すぐ立ち上がってもおかしくはない。     しかし、現実は非情である。仗助が治してから三十分経つ。  ジョセフは仗助の嘆きに何の反応も示さず、硬く目を閉じ押し黙っている。 「億泰だって!億泰だって治ったんだッ!てめえが死ぬわけがねえッ!殴ってやるからさっさと起きろォォォォォ」  仗助の悲しき慟哭が夜の杜王町に響き渡る。彼の目は涙で腫れあがっていた。 「起きろォォォォ!クレイジー・ダイヤモンドに治せないモノはねえッ!」  仗助はもう何度目かもわからない叫びを上げる。彼をここまで必死にさせるモノは何なのだろうか。  仗助とジョセフが出会ってからまだ一日も経っていない。さらにジョセフは仗助の大切なリーゼントをけなした。  ジョセフがしたことは、仗助にとって見捨てるに値する行いである。  しかし、仗助はこの自分の髪型をバカにするふざけた男に奇妙な愛情を抱いていた。  血でも繋がっているかのような親近感を感じていた。    そんな思いからか、仗助はいまだにジョセフの復活をあきらめきれないのだ。  仗助の心中には治してからかなりの時間が過ぎた今でも、『この男だけは死なせない』という確固な思いがあった。 (死なせてたまるかッ!できることは何でもやってやる!石に噛り付いてでもこいつを治してやるッ)  必死に頭を働かせる。  仗助はクレイジー・ダイヤモンドを発現させる。 「承太郎さん、あんた、たしか前に言ってたな。  『死んでしまった者を生き返らせることはどんなスタンドにもできない』そんなことねえッ!俺はその概念を乗り越えるッ!  こんなことやったことねえが生き返らせるためならッ!二回、三回、何十、何百、何千回とよぉ」  クレイジー・ダイヤモンドが拳を構える。 「何度でも繰り返し治してやるッ!いけ!クレイジー・ダイヤモンドォォォォォォ」   そして、彼の一縷の希望を乗せた拳を放つ。 「てってめーは!」  仗助は思わず目を疑う。ジョセフが目を開きゆっくりと立ち上がっている。   (こいつ起き上がった。ついに!ついに!復活したんだ。クレイジー・ダイヤモンドは治したんだ) 「おまえッ!生き返ったのかよォ」 「しっかしよぉー不思議に思うんだぜェ~~  てめえのよォ~クレイジー・ダイヤモンドだっけか?どんな仕組みで治してんだろう?ってな~~~っ」  ジョセフはしっかりと立ち上がり仗助の目を見据える。  完璧に治っている。クレイジー・ダイヤモンドはついに治したのだ。  クレイジー・ダイヤモンドはついに『死んでしまった者を生き返らせることはどんなスタンドにもできない』という概念を乗り越えた!  これで荒木という名の狂人が仕組んだバトル・ロワイヤルは破綻せざるを得ないだろう。  仗助はついに、失われた命を取り戻すことに成功したのだから……  もう一度言っておこう。現実は非情である。  空が白み始めてきたころ仗助は『一人』、虹村邸跡の前に腰を下ろしていた。  目の前には、仗助にとって名も知らぬ大男が地に伏し死んでいた。 『まっ!オレ頭悪いから深く考えると頭痛おきるけどよォ~~っ』 (やめろ!こいつをあの時の億泰に重ねて考えるんじゃねェー!空しいだけじゃねえか)    仗助は雑念を振り払い、よろよろと立ち上がる。もう涙は流れていない。 「死んじまった。こいつは死んだんだ……オレのクレイジー・ダイヤモンドは『死』に負けちまった」  彼は踏ん切りがついたようだ。男の死をしっかりと受け止めている。  もちろん悲しいことは悲しいのだが、先ほどまでの狂う程の悲しみはない。  彼は『やるだけやったんだし仕方ない』という風に諦めていた。  仗助はこれからどうしようと途方に暮れる。    思い返せば……オレはこのクソゲームが始まってからずっと厄介事に巻き込まれてるな。落ち着いた時間なんて全くなかった。  とにかく、これからどうすりゃいいんだ!  殺し合いだぜ!一人しか生き残れないんだぜ!脱出なんてこのうざったい首輪のせいで、できないかも。どうすりゃいいんだ……  何を考え何を目的に行動すればいい?アラキ打倒のため仲間を募るか?ゲームに乗って優勝を目指すか?  どのルートを選んでも終着点はこいつみてえな『死』しかないのかもしれない。『この状況で自分は何をすべきか』 「クソッ!」  仗助は持っていたデイパックを地面に叩きつけた。  この心のもやもやが晴れるまでクレイジーダイヤモンドで暴れてやろうかとも思ったが、仗助はランダム支給品のことを思い出し拳を抑える。  デイパックの中にはいろいろな物が入っていた。ランダム支給品である小型時限爆弾、食料、コンパス、地図、そして名簿。  これだけ残酷な事が起こりもう少々のことでは驚かないと高を括っていた仗助もこの名簿には驚かされた。      ・・・・・・・・・・・  たしかに死んだはずの吉良、友だちである億康や康一達、そして何より自分の親父であり、今はもうただの老いぼれであるジョセフ・ジョースター。  「アラキの野朗……億康やジジイまで!」  仗助は吉良がなぜ生き返ったか、という疑問はわきに置き、友達や父親までをもゲームに巻き込んだアラキへ、さらに激しい怒りを燃やす。  億康達はジジイよりかは生き残れるだろう。問題はジジイ!どう考えても生き残れるとは思えねえ。あいつはけっこうボケてるしな。  とにかくジジイを探さねえと……でもどこを探す?  ジジイが行きそうな所ってどこだ?見当もつかない。適当に歩き回ってたら会えるか~?  いや……探す前にオレがみすみす死なせちまったこいつをどうにかしてやらねえと。このまま道路に置いてきぼりっつうのは酷な事だしよぉ~  こいつはオレの頭をけなしはしたが、あの鳥公の攻撃からオレを守ってくれたんだ。  オレには、死んじまったからといってこいつをこのままほっておく、なんて事はできねえよ  賢いとはお世辞にも言えない頭で仗助は考える。 「霊園……だな。こいつを埋葬してやらねえと。どうやって運ぶかが問題だけど、とにかく動いてりゃジジイに会えるかもしれねえし」     心身の疲労のせいで震える足をゆっくりと前に出し、仗助は男を埋めるためのスコップを探しに自分の家へ向かっていく。  すべきことを決めることができたという安堵からか、なんとも形容し難い感情が彼に襲い掛かってくる。  人が死んだ『悲しみ』、アラキへの『苛立ち』、そして自分への『怒り』。それら全てが奔流のように心中で渦巻く。  名も知らぬ男が死んだ直後のように、狂う程の『思い』の激流が再びやってきたのだ。   「仗助君……」    ……今、だれかオレを呼ばなかったか? 「誰だ!」  機敏な動きで振り向きクレイジー・ダイヤモンドを発現させる。  しかし振り向き見えたモノは名も知らぬ男の死体ひとつだけ。つまり、誰もいない。 「気のせいか……?」  これは何だ?幻聴ってやつか?とうとうオレはイカレてきたって事か?これ、いよいよやべぇんじゃねえの~~ 「気のせいなんかじゃねえぜ。もっともぉ~っと近づいて来てみな」  またしても声がする。仗助は気味悪く感じたが、どこか懐かしい気持ちにもなった。 (この声……小さくてわかりずらいが確かに死んでしまったあいつの声。声はあいつの死体がある辺りから聞こえてくる。)  仗助は死体へ向けて警戒しつつもゆっくりと歩を進める。  近づくに連れてぼんやりと見えてきた。死体の上で半透明のあいつがゆっくりと天へ向かって浮上している。  スタンドも月まで吹っ飛ぶこの衝撃!なるほど、杉本鈴美みたいな幽霊ってわけか……オレなんかが最後の別れを言う相手でいいのかよ。  オレはおまえを死なせちまったんだぜ。もっと、大事な人がいるだろうが。どうせ化けて出るんだったらその人の所へ行けよな。 「化けて出てまでオレなんかに会いたいか?どうしてオレの所になんて来るんだ?おまえを治せず死なせちまった男だぞ。オレとおまえは全くの他人だ。  会ってから一日も経っていない。もっと大事な人いるだろうが!」  ありったけの思いを言葉にする。名も知らぬ男は光に包まれ微笑んでいる。 「ちょっとぉ仗助君、しばらく見ないうちにずいぶんとネガティブになってんじゃないの」 「真面目に答えろよッ!」  激しい言葉に男は少しだけ驚いていたが、すぐにまた、優しい笑みを浮かべて仗助の質問に答えた。 「おまえが一番大事だぜ。理屈とかじゃねえ。『ここ』でわかる。」  男は胸を指差し言う。仗助の目に枯れたはずの涙が溢れてくる。   「お……おまえはこの杜王町に埋葬してやるから……オレが生まれ育ったいい町だよ」 「ありがとよ仗助君。わりいな、こんな簡単に死んじまって……『もうちょっと粘れるかなぁ~』とも思ったんだけどよぉ。無理だったぜ」  仗助はいよいよ涙で話すことも困難になってきた。喘ぎながらも話す。 「何でだよ。死……死ぬなよ。逝かないでくれぇ……おまえのことまだ……まだ全然知らないのに。逝かないでくれよぉ」 「わかるだろ?もう、時間ねえんだよ。仗助君、髪型……馬鹿にして悪かったな。死ぬんじゃ…ねえぞ」  男が溶けて行くかのように消えていく。  まてッ!まだッ!後少しだけ……  泣くのを堪えこれで最後になるであろう言葉を放つ。 「『名前』ぐらい聞かせろッ!勝手に……勝手に消えんじゃねえッ!」  男は仗助の問いに答えることなく満足げな笑みのまま満天の星空に溶けていった。  仗助はしばらく空虚だった。何も考えることなく突っ立っていた。  そして地に横たわる亡骸を見て再び大粒の涙を流し悲痛の叫びを上げた。  首に巻きついた冷たい鉄の感触だけが妙にリアルだった。 【虹村邸跡の前の路上(Gー5) 一日目 早朝】 【東方仗助】 [スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド [時間軸]:四部終了時 [状態]:悲しみと荒木への強い怒り。右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み)歩行に少し影響。 [装備]: 無し [道具] 支給品一式、小型時限爆弾 [思考・状況]   1:とりあえず『2』を実行するため自分の家にスコップを取りに行く。   2:目の前の男(ジョセフ)を霊園に埋葬する。     (霊園へ運ぶ手段をこれから考える。手段がなければ背負ってでも連れて行く)   3:霊園へ向かう道中でジョセフ・ジョースターを探す。   4:億康たちを探す。   5:吉良を警戒(なぜ生き返ったかについてはまだ深く考えていません)   6:打倒荒木! [備考]:仗助はとうとうジョセフの名前を確認できていません。『波紋』という単語が引っかかっている程度。 &color(red){【ジョセフ・ジョースター 死亡】} *投下順で読む [[前へ>《運命》の使徒]] [[戻る>1日目 第1回放送まで]] [[次へ>帝王の『引力』]] *時系列順で読む [[前へ>《運命》の使徒]] [[戻る>1日目 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>帝王の『引力』]] *キャラを追って読む |30:[[ダイヤモンドは凍らない]]||ジョセフ・ジョースター| |30:[[ダイヤモンドは凍らない]]||東方仗助|54:[[ドッピオ、兄貴から逃げる]]|

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