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『箱庭の開放』(後編)~神を討つ者~」(2009/09/20 (日) 11:44:13) の最新版変更点

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「ジョ…ジョルノ?」 俺は、カーズの攻撃を止めたその男の姿に、我を失った。 「漸く会えましたね。ブチャラティ」 生きてくれていたのか。 ジョルノが生きてくれていたと云う事実に、安堵の息をつく。 …良かった。 「積もる話もあるでしょうが、その前にこの目の前に居る怪物を片付けましょう」 そうだ。 今の俺達の状況は切迫しているんだった。 だが、ジョルノはあくまで毅然としている。 ジョルノの奴、何か策があるな。 「ブチャラティ。済みませんが、少しだけ時間を稼いで下さい。 その間に、奴を倒す算段を整えます」 「勝算はあるのか?」 「はい」 「分かった。3分なら持ち堪えられるだろう」 「御願いします」 そしてジョルノは、アヴドゥルさんの下へ向かう。 「さて…。ナランチャ、行くぞ」 「おう!ボラボラボラボラァ!!!」 ナランチャが掃射するが、カーズに効いている節は全く見えない。 だが、それでも俺達は攻撃しなくちゃならない。 防御に回ったら、10秒で全滅する。 息をつく暇も無く攻撃を仕掛け、奴に攻撃させる隙を与えてはならないのだ。 「そんな攻撃が効くかァ!喰らえ!」 「スティッキー・フィンガーズ!!」 カーズが飛ばしてきた無数の羽を、地面をくり抜いて盾にする。 「シャボン・ランチャー!」 「ボラボラボラボラ!」 カーズの両脇から、シーザーとナランチャが攻撃する。 だが、 「無駄だと言ったろうがァ! WRRYYYYYY!!!」 さっきとは比較にならない量の羽を全方位に飛ばし、シャボン・ランチャーとエアロスミスの銃撃を全て叩き落す。 「くそっ」 「死ねえええい!!!」 カーズがエアロスミスを叩き落す。 「ぐっ!」 エアロスミスに攻撃を喰らったナランチャは倒れた。 間髪いれず、ナランチャに突進するカーズ。 「スティッキー・フィンガーズ!」 俺は右腕にジッパーをつけて伸ばし、ナランチャを捕まえて俺の下へ引き寄せる。 「小賢しい!二人揃って死ねえええぇぇぇい!!!」 今度は俺の下へ突進して来る。 そして、 「お待たせしました」 俺達とカーズの間に、ジョルノとアヴドゥルさんが立ち塞がった。 「今更貴様らに何が出来る!? 纏めて殺してくれるわぁ!」 カーズは構わず突進して来る。 それに対し、アヴドゥルさんは 「皆、目を閉じてくれ」 と言って、カーズの前に何かを掲げた。 「そんなものぶち破って………え?」 不意に、カーズの突進が停止する。 『はぁ〜。久しぶりにブ男の背中から離れたと思ったら、今度はバケモノの背中とはねッ』 「な、何だ? 背中に何か居るのか?」 『当ったり〜〜〜♪だねッ』 「何者だ!?貴様は!」 『ボク?ボクはチープ・トリック。 誰かの背中にとり憑き、そいつが誰かに背中を見られたら、そいつの生命力を全て吸い取って背中を見た奴の背中へ移るスタンドさ。 キミ、気をつけてねッ。 背中を誰かに見られたら、死んじゃうよ?』 チープ・トリック!? さっきまでアヴドゥルさんの背中に取り付いていた奴が、何故あそこに? 「何だと、この俺が、背中を見られたくらいで死ぬなんてことが有る筈が無かろう!」 『だったら誰かに背中を見せれば良いじゃないか。 キミは自分の事を究極生命体だって言ってたけど、逆にいえばキミは生命体であることを超越してないってこと。 生命体である限り、ボクの能力は有効なんだよねッ』 「…くっ」 歯軋りするカーズに向かって、アヴドゥルが事の次第を説明する。 「実はそいつは、さっきまで俺の背中にとり憑いていたんだがな。 スタンドはスタンドで掴める。 ジョルノ君のゴールドエクスペリエンスで、チープトリックを掴んで無理矢理引っぺがした」 『まあ、そんなことしたからブ男の背中もひっぺがれちゃったんだけどねッ』 「其処はジョルノ君のゴールド・エクスペリエンスが失った背中を補ってくれた。 そして、チープ・トリックが憑いたままの“俺の背中だったもの”を、今お前に見せたのだ」 『剥がれちゃったら、“ブ男の背中”と認識できないみたいだねッ。 残念だけど、キミの背中に乗り移る時、ブ男の養分を奪えなかったし』 「この状況に陥れば、究極生命体の肩書きも無いも同然だな。 そして、此方はお前の背中を見る奴も用意してある。 命令する。 『カーズの背中を見ろ』」 「了解しました。旦那様」 そしてカーズに向かって歩き出したのは、ヨーヨーマッ。 確かに、奴ならこの役に最適だ。 「来るなァ!!!」 カーズはヨーヨーマッに向かって、無数の羽を飛ばす。 だが、 「モット〜〜〜〜〜〜♪」 ヨーヨーマッは平然として(寧ろ喜びながら)カーズへ向かって行く。 「くっ」 カーズは羽ばたこうとした。 しまった!空へ逃れるつもりか! だが… 「何ぃ!?」 地面から生えた手が、カーズの足を掴んでいた。 「バァカ。ここでテメェを逃すかよ」 「良いぞ、セッコ。そのまま身動きが取れないようにしてしまえ」 地中にいる人間に、ジョルノが命令する。 「言われなくても分かってんだよオオオォォォ!!!」 そして、手はカーズを地中へと引き摺り込み、下半身を地中に埋めた。 「この、下等生物共がアアアァァァッ!!!」 そして、ヨーヨーマッがカーズの背後へと回り、 「GYAAAAAAAAAAHHHHH!!!」 …カーズは背中を破壊され、死んだ。  * * * 「…くっ」 忌々しげに顔を顰めるオレに向かって、花京院は声を掛ける。 「どうやらお前の操り人形は、ジョルノ君達に駆逐されたと云う事か」 「だまれ!!! バトルロワイアルなら、カーズをもう一度作る事が出来る! いや、もっと強力な部下を作ることだって出来るんだ!」 「ジョルノ君達の方ばかり気にしている暇は無いぞ? 今度はこっちが攻撃に出る番だからな」 「攻撃だと?身動きの取れないお前がどうやって攻撃…を………」 言い終える前に、辺りが深い霧に包まれる。 こんな芸当が出来る人を、オレは一人だけ知っていた。 「まさか…」 その間にも、雨が降り始め、時々刻々と勢いを増し、豪雨となる。 一寸先も見えないほどの豪雨。 こいつは、 「ウェザー・リポート…だと!?」 ジョルノ、セッコに次いで、ウェザー・リポートまで蘇って来やがった。 「この、死に損ないどもがァ!」 オ…オレはキレた。 さっきから全く思い通りに行かないじゃないか。 何なんだ?こいつらは! 兎に角、雨の中でも承太郎達は全く動いていない(バトルロワイアルで固定しているんだから当然だ)。 という事は、オレに攻撃を仕掛けて来るのはウェザーだ。 ならば、バトルロワイアルで周りの様子を探って、ウェザーの位置を見つけ出して… キランッ 「…ん?」 前方で何かが光った。 何だ? 良く目を凝らして見てみると、そこに居たのは… 「バッド・カンパニー!!?」 何だと!? 形兆まで生きていたのか!? 一体、どれだけの人間が死んだふりしているというんだ。 何はともあれ、バッド・カンパニーなら、雨に隠れて俺を殺すにはうってつけだ。 「だが、形兆の几帳面な正確から、そこに綺麗に隊列が揃っている事はバレバレ………なっ!!!」 俺の視線の先、其処には確かにバッド・カンパニーの歩兵が居た。 だが、バトルロワイアルで確認すると、其処には“歩兵1人しか居ないのだ。” 隊を成す事はおろか、是認が別々の行動をとっている。 これでは、バッド・カンパニー全てを操る事が出来ない! 「一斉掃射ァ!」 形兆の高らかな声と共に、オレは全方位からバッド・カンパニーの砲撃を喰らった。  * * * 霧が晴れた。 「撃ち方、止めッ!!!」 何所からか声が聴こえ、小人達の攻撃が止む。 さっきまで荒木が立っていた場所は、爆煙が立ち上っていた。 だが私達は、未だ動く事が出来なかった。 と云う事は、荒木はまだ死んでいないと云う事だ。 そして、煙が晴れ… 「………………」 怒りの形相を顕わにした荒木が立っていた。  * * * オレは腸が煮えくり返っていた。 ったく、どいつもこいつも、どうしてオレが何かしようとする所に邪魔を入れるんだ。 全く、気に入らねぇ。 ウェザーと形兆の姿は見えない。 俺の前に姿を現すと何も出来なくなるのが分かっているから、隠れているんだろう。 フン。ならば奴らは後回しだ。 まずは目に見えている奴から殺す。 「生きていたか」 オレが無事だった事にさほど驚いた様子も無く、花京院が言ってくる。 「あの程度の攻撃なんざ、バリアを張れば簡単に無効化出来る」 「その割には、苦虫を噛み潰したような表情だが」 「だまれ!!!!!!」 花京院の澄ました声が癇に障る。 何で奴はこうも余裕で居られるんだ。 オレの指先一つで瞬殺されるんだぞ? もっとおびえろよ。泣いて縋り付けよ。 こんな奴を一瞬で殺しても、オレのストレスは晴れないだろうが。 オレは、オレに一杯喰わせたこいつらを、どうにかして恐怖のどん底に叩き落したかった。 !!! そうだ! 「フン。いいことを思いついたぞ。 ならばテメェは苦虫に噛み潰されるが良いさ」 オレはパチンと指を鳴らす。 そして… ゾゾゾゾゾ… 背後に現れる鬼蜘蛛の大群。 「簡単には死なせねぇからな。足元からじわりじわりと食い殺されろ。 …と、そうだ。どうせなら泣き喚いて命乞いしながら逃げ回る姿が見てみたいしな。 特別サービスだ」 そしてオレは、花京院の本体のみを動けるようにした。 キシャアアアアァァァ!!! 眼光を光らせながら、蜘蛛は花京院目掛けて襲い掛かる。 さあ、おびえろ!わめけ! だが、花京院は、 「…」 ピチャン。 いつの間にか水溜りの出来ていた地面を、一歩踏み出した。 「花京院君!やめろ!君はスタンドを動かせないんだぞ!」 背後からジョージの声が掛かる。 しかし花京院はジョージの言ってる事は杞憂だとばかりに返事をする。 「お言葉ですが、ジョースター卿。荒木討伐隊はまだ全貌を見せていない。心配には及びません…」 そして蜘蛛が襲い掛かろうとした瞬間… 「舞い上がれ。漆黒の蝶」 バササササッ!!! 花京院の足元から、 無数の蝶が舞い上がっていた。 * * * 「何………だと?」 眼前の光景にオレは茫然自失としていた。 “蜘蛛が蝶に喰われたのだ”。 無数の蜘蛛は、それを遥かに上回る数の蝶に覆われ、消失していた。 「こ、これは…」 蝶の正体、それは… 「これはーーーっ!!!フー・ファイターズ!!!?」 「そうだ」 そう言いながら、背後から何者かが現れる。 現れたのは一人の女、 ——F・Fだった。 「ウェザーさんが雨を降らした理由は、バッド・カンパニーの攻撃の煙幕にするためだけでは無かった。 フー・ファイターズが十分に繁殖出来るだけの環境作りが目的だったのだ」 花京院がそこまで喋ると、その後をF・Fが継ぐ。 「水さえあれば、アタシのフー・ファイターズは幾らでも増殖する。 今、この空間をフー・ファイターズが満たしている。 お前の攻撃は、もう通用しない。お前の能力では全てのフー・ファイターズをコントロール出来ないだろう」 「通用しない、だと?たったそれだけの事で? オレは今すぐにでもお前ら全員を弾け飛ばす事も出来るんだぞ」 「だとしても、お前は攻撃出来ないさ。何故なら…」 「お前が死ぬからな」 「何を言って………、ッ!?」 どういう事だ!? 体が………動かない!!! 「最後に教えてやろう。僕がお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだ本当の目的を。 そして、ジョルノ君の作戦を」 「アタシは花京院にハイエロファント・グリーンの触角を使って連絡する事を教えた。 だが逆に、花京院から学んだ事もあるんだ」 「F・Fさんは僕とジョンガリ・Aの闘いから学習していた。 “スタンドを相手に潜り込ませ、相手を操る”と云う戦法を」 !!! まさか………!!! 「さっきお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだのは、お前を斃す為じゃない。 お前の体内にフー・ファイターズを侵入させる為だった」 「エメラルドスプラッシュの中にフー・ファイターズ弾を幾つか紛れ込ませておいた。 まあ、花京院のように相手の意識を乗っ取る事は出来ないが、 お前の血で増殖したフー・ファイターズが、お前を内側から食い破る事は出来る。 漸くフー・ファイターズがお前の全身に行き渡った様だな」 そうか、コイツらがぺらぺらと喋っていたのは時間稼ぎで…! ヤバイ!!! その直後、三つの声が同時に響き渡った。 「フー・ファイターズ!荒木の体を弾き飛ばせ!!!」 「うわあああぁぁぁ!!!バトルロワイアル!俺の体内のフー・ファイターズを消滅させろぉ!!!」 「スタープラチナ・ザ・ワールド!!!」  * * * 「荒木を斃せる人間は現在生き残っている中で一人。空条承太郎さんだけです」 荒木打倒の方法を説明する時、ジョルノは先ずこう言った。 「他の人間では、奴に攻撃を加えてから死ぬまでに、必ず幾許かの時間を要します。 ですが、荒木ならば、一瞬でも時間があれば再生してしまいます。 攻撃から荒木を死に追いやるまで、時間を必要とせずに行なえる人間は、承太郎さん一人だけです」 「なら俺達にはやる事はないのか?」 ウェザーの言葉に、ジョルノは静かに首を振る。 「いえ。その状況を作り出すために僕達がバックアップする必要があります。 『承太郎さんが攻撃可能な距離に荒木を十分近づける』『承太郎さんに僕達の狙いを伝える』主にこの2点を。 厄介なのは後者です。 僕達が戦場に辿り着いた時、承太郎さんと荒木は既に対峙している筈。 つまり、承太郎さんはバトル・ロワイアルの支配下にある訳です。 承太郎さんが見たものは荒木も知覚し、承太郎さんが聞いた事は荒木も聞き入れてしまいます」 「それじゃあ、伝える手段が無いんじゃないか?」 「一つだけあります」 「?」 「以心伝心です。そしてこの中でそれが出来る人は一人か居ません」 そしてジョルノは花京院の方を向いた。 「花京院さん。貴方です」 「!」 その場に居る全員が、花京院の方を振り向く。 「DIO打倒の下、何十日と云う旅を共にし、心を通わせた貴方しか居ません」 「…」 「御願い………出来ますか?」 ジョルノの依頼に花京院は………静かに肯いた。 「だが、どうやって荒木を仕留めるんだ? はっきりいって、荒木ほど1対多数に向いているスタンドもない。 荒木の目を盗んで、承太郎の射程距離に近づけるなんて事出来るのか?」 「そうだな。恐らく荒木は、同時に10個のテレビが点いていても、全て同時に観る事が出来るような男だ。 俺達を相手にしながら承太郎の事も把握するなど、奴にとっては朝飯前だろう」 「えぇ。でも、それは平静でいられる間は、です」 「「「?」」」 「同時にテレビを10個見る事が出来る人間でも、 突然銃を撃ち込まれた時に“テレビ10個を同時に把握しながら銃声の方を確かめる”なんて事は普通出来ないでしょう?」 「「「!」」」 どうやら皆、僕の言いたい事が伝わったようだ。 「成程な。だが、どうやって奴を斃す?」 「はい。僕なりの打倒法を考えました。それをこれから説明します…」 そしてジョルノが説明した内容は、簡単に纏めれば以下の通りだった。 ①花京院が承太郎さんの前に姿を現し、アイコンタクトを取る ②アタシのフー・ファイターズを荒木の体内に潜り込ませる ③荒木の体内にフー・ファイターズが行き渡った所で、荒木にその事実を説明 ④荒木は動揺する。その時、自分の事に気をとられた一瞬を突き、承太郎さんが荒木を斃す  * * * 『僕達が隙を作る。だから承太郎が止めを刺してくれ』 あの時花京院は、目でそう伝えていた。 そして遂に得られた一瞬。 伏線に次ぐ伏線のおかげで、一瞬だけだが、荒木は自分の事に気を奪われ、俺達の拘束を、バリアを解いた。 その一瞬をつき、俺は時を止めた。 正真正銘、最後のチャンス。 猛然と、俺は荒木の元へ向かって走る。 後2秒。 「…やれやれ、何とか間に合ったようだな」 俺は呟く。 そして… 後1秒。 「スター………フィンガー!!!」 ザンッ!!! 荒木を脳天から荒木を真っ二つにする。 ザンッ!!! 次は横一文字に。 斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬っっっ!!!!!! そのまま何度も荒木を切り刻み…、    時は動き始めた 凍えた時から開放された荒木は、その肉片を地面にばら撒いた。 確認するまでも無い。 荒木は死んだ。 「お前の敗因はたった一つだ。 たった一つの…シンプルな理由だ」 最後に俺は、荒木に手向けの言葉を贈る。 「テメェは俺達を敵に回した」 &color(red){【荒木飛呂彦   完全敗北 —死亡】}
「ジョ…ジョルノ?」 俺は、カーズの攻撃を止めたその男の姿に、我を失った。 「漸く会えましたね。ブチャラティ」 生きてくれていたのか。 ジョルノが生きてくれていたと云う事実に、安堵の息をつく。 …良かった。 「積もる話もあるでしょうが、その前にこの目の前に居る怪物を片付けましょう」 そうだ。 今の俺達の状況は切迫しているんだった。 だが、ジョルノはあくまで毅然としている。 ジョルノの奴、何か策があるな。 「ブチャラティ。済みませんが、少しだけ時間を稼いで下さい。 その間に、奴を倒す算段を整えます」 「勝算はあるのか?」 「はい」 「分かった。3分なら持ち堪えられるだろう」 「御願いします」 そしてジョルノは、アヴドゥルさんの下へ向かう。 「さて…。ナランチャ、行くぞ」 「おう!ボラボラボラボラァ!!!」 ナランチャが掃射するが、カーズに効いている節は全く見えない。 だが、それでも俺達は攻撃しなくちゃならない。 防御に回ったら、10秒で全滅する。 息をつく暇も無く攻撃を仕掛け、奴に攻撃させる隙を与えてはならないのだ。 「そんな攻撃が効くかァ!喰らえ!」 「スティッキー・フィンガーズ!!」 カーズが飛ばしてきた無数の羽を、地面をくり抜いて盾にする。 「シャボン・ランチャー!」 「ボラボラボラボラ!」 カーズの両脇から、シーザーとナランチャが攻撃する。 だが、 「無駄だと言ったろうがァ! WRRYYYYYY!!!」 さっきとは比較にならない量の羽を全方位に飛ばし、シャボン・ランチャーとエアロスミスの銃撃を全て叩き落す。 「くそっ」 「死ねえええい!!!」 カーズがエアロスミスを叩き落す。 「ぐっ!」 エアロスミスに攻撃を喰らったナランチャは倒れた。 間髪いれず、ナランチャに突進するカーズ。 「スティッキー・フィンガーズ!」 俺は右腕にジッパーをつけて伸ばし、ナランチャを捕まえて俺の下へ引き寄せる。 「小賢しい!二人揃って死ねえええぇぇぇい!!!」 今度は俺の下へ突進して来る。 そして、 「お待たせしました」 俺達とカーズの間に、ジョルノとアヴドゥルさんが立ち塞がった。 「今更貴様らに何が出来る!? 纏めて殺してくれるわぁ!」 カーズは構わず突進して来る。 それに対し、アヴドゥルさんは 「皆、目を閉じてくれ」 と言って、カーズの前に何かを掲げた。 「そんなものぶち破って………え?」 不意に、カーズの突進が停止する。 『はぁ〜。久しぶりにブ男の背中から離れたと思ったら、今度はバケモノの背中とはねッ』 「な、何だ? 背中に何か居るのか?」 『当ったり〜〜〜♪だねッ』 「何者だ!?貴様は!」 『ボク?ボクはチープ・トリック。 誰かの背中にとり憑き、そいつが誰かに背中を見られたら、そいつの生命力を全て吸い取って背中を見た奴の背中へ移るスタンドさ。 キミ、気をつけてねッ。 背中を誰かに見られたら、死んじゃうよ?』 チープ・トリック!? さっきまでアヴドゥルさんの背中に取り付いていた奴が、何故あそこに? 「何だと、この俺が、背中を見られたくらいで死ぬなんてことが有る筈が無かろう!」 『だったら誰かに背中を見せれば良いじゃないか。 キミは自分の事を究極生命体だって言ってたけど、逆にいえばキミは生命体であることを超越してないってこと。 生命体である限り、ボクの能力は有効なんだよねッ』 「…くっ」 歯軋りするカーズに向かって、アヴドゥルが事の次第を説明する。 「実はそいつは、さっきまで俺の背中にとり憑いていたんだがな。 スタンドはスタンドで掴める。 ジョルノ君のゴールドエクスペリエンスで、チープトリックを掴んで無理矢理引っぺがした」 『まあ、そんなことしたからブ男の背中もひっぺがれちゃったんだけどねッ』 「其処はジョルノ君のゴールド・エクスペリエンスが失った背中を補ってくれた。 そして、チープ・トリックが憑いたままの“俺の背中だったもの”を、今お前に見せたのだ」 『剥がれちゃったら、“ブ男の背中”と認識できないみたいだねッ。 残念だけど、キミの背中に乗り移る時、ブ男の養分を奪えなかったし』 「この状況に陥れば、究極生命体の肩書きも無いも同然だな。 そして、此方はお前の背中を見る奴も用意してある。 命令する。 『カーズの背中を見ろ』」 「了解しました。旦那様」 そしてカーズに向かって歩き出したのは、ヨーヨーマッ。 確かに、奴ならこの役に最適だ。 「来るなァ!!!」 カーズはヨーヨーマッに向かって、無数の羽を飛ばす。 だが、 「モット〜〜〜〜〜〜♪」 ヨーヨーマッは平然として(寧ろ喜びながら)カーズへ向かって行く。 「くっ」 カーズは羽ばたこうとした。 しまった!空へ逃れるつもりか! だが… 「何ぃ!?」 地面から生えた手が、カーズの足を掴んでいた。 「バァカ。ここでテメェを逃すかよ」 「良いぞ、セッコ。そのまま身動きが取れないようにしてしまえ」 地中にいる人間に、ジョルノが命令する。 「言われなくても分かってんだよオオオォォォ!!!」 そして、手はカーズを地中へと引き摺り込み、下半身を地中に埋めた。 「この、下等生物共がアアアァァァッ!!!」 そして、ヨーヨーマッがカーズの背後へと回り、 「GYAAAAAAAAAAHHHHH!!!」 …カーズは背中を破壊され、死んだ。  * * * 「…くっ」 忌々しげに顔を顰めるオレに向かって、花京院は声を掛ける。 「どうやらお前の操り人形は、ジョルノ君達に駆逐されたと云う事か」 「だまれ!!! バトルロワイアルなら、カーズをもう一度作る事が出来る! いや、もっと強力な部下を作ることだって出来るんだ!」 「ジョルノ君達の方ばかり気にしている暇は無いぞ? 今度はこっちが攻撃に出る番だからな」 「攻撃だと?身動きの取れないお前がどうやって攻撃…を………」 言い終える前に、辺りが深い霧に包まれる。 こんな芸当が出来る人を、オレは一人だけ知っていた。 「まさか…」 その間にも、雨が降り始め、時々刻々と勢いを増し、豪雨となる。 一寸先も見えないほどの豪雨。 こいつは、 「ウェザー・リポート…だと!?」 ジョルノ、セッコに次いで、ウェザー・リポートまで蘇って来やがった。 「この、死に損ないどもがァ!」 オ…オレはキレた。 さっきから全く思い通りに行かないじゃないか。 何なんだ?こいつらは! 兎に角、雨の中でも承太郎達は全く動いていない(バトルロワイアルで固定しているんだから当然だ)。 という事は、オレに攻撃を仕掛けて来るのはウェザーだ。 ならば、バトルロワイアルで周りの様子を探って、ウェザーの位置を見つけ出して… キランッ 「…ん?」 前方で何かが光った。 何だ? 良く目を凝らして見てみると、そこに居たのは… 「バッド・カンパニー!!?」 何だと!? 形兆まで生きていたのか!? 一体、どれだけの人間が死んだふりしているというんだ。 何はともあれ、バッド・カンパニーなら、雨に隠れて俺を殺すにはうってつけだ。 「だが、形兆の几帳面な正確から、そこに綺麗に隊列が揃っている事はバレバレ………なっ!!!」 俺の視線の先、其処には確かにバッド・カンパニーの歩兵が居た。 だが、バトルロワイアルで確認すると、其処には“歩兵1人しか居ないのだ。” 隊を成す事はおろか、是認が別々の行動をとっている。 これでは、バッド・カンパニー全てを操る事が出来ない! 「一斉掃射ァ!」 形兆の高らかな声と共に、オレは全方位からバッド・カンパニーの砲撃を喰らった。  * * * 霧が晴れた。 「撃ち方、止めッ!!!」 何所からか声が聴こえ、小人達の攻撃が止む。 さっきまで荒木が立っていた場所は、爆煙が立ち上っていた。 だが私達は、未だ動く事が出来なかった。 と云う事は、荒木はまだ死んでいないと云う事だ。 そして、煙が晴れ… 「………………」 怒りの形相を顕わにした荒木が立っていた。  * * * オレは腸が煮えくり返っていた。 ったく、どいつもこいつも、どうしてオレが何かしようとする所に邪魔を入れるんだ。 全く、気に入らねぇ。 ウェザーと形兆の姿は見えない。 俺の前に姿を現すと何も出来なくなるのが分かっているから、隠れているんだろう。 フン。ならば奴らは後回しだ。 まずは目に見えている奴から殺す。 「生きていたか」 オレが無事だった事にさほど驚いた様子も無く、花京院が言ってくる。 「あの程度の攻撃なんざ、バリアを張れば簡単に無効化出来る」 「その割には、苦虫を噛み潰したような表情だが」 「だまれ!!!!!!」 花京院の澄ました声が癇に障る。 何で奴はこうも余裕で居られるんだ。 オレの指先一つで瞬殺されるんだぞ? もっとおびえろよ。泣いて縋り付けよ。 こんな奴を一瞬で殺しても、オレのストレスは晴れないだろうが。 オレは、オレに一杯喰わせたこいつらを、どうにかして恐怖のどん底に叩き落したかった。 !!! そうだ! 「フン。いいことを思いついたぞ。 ならばテメェは苦虫に噛み潰されるが良いさ」 オレはパチンと指を鳴らす。 そして… ゾゾゾゾゾ… 背後に現れる鬼蜘蛛の大群。 「簡単には死なせねぇからな。足元からじわりじわりと食い殺されろ。 …と、そうだ。どうせなら泣き喚いて命乞いしながら逃げ回る姿が見てみたいしな。 特別サービスだ」 そしてオレは、花京院の本体のみを動けるようにした。 キシャアアアアァァァ!!! 眼光を光らせながら、蜘蛛は花京院目掛けて襲い掛かる。 さあ、おびえろ!わめけ! だが、花京院は、 「…」 ピチャン。 いつの間にか水溜りの出来ていた地面を、一歩踏み出した。 「花京院君!やめろ!君はスタンドを動かせないんだぞ!」 背後からジョージの声が掛かる。 しかし花京院はジョージの言ってる事は杞憂だとばかりに返事をする。 「お言葉ですが、ジョースター卿。荒木討伐隊はまだ全貌を見せていない。心配には及びません…」 そして蜘蛛が襲い掛かろうとした瞬間… 「舞い上がれ。漆黒の蝶」 バササササッ!!! 花京院の足元から、 無数の蝶が舞い上がっていた。 * * * 「何………だと?」 眼前の光景にオレは茫然自失としていた。 “蜘蛛が蝶に喰われたのだ”。 無数の蜘蛛は、それを遥かに上回る数の蝶に覆われ、消失していた。 「こ、これは…」 蝶の正体、それは… 「これはーーーっ!!!フー・ファイターズ!!!?」 「そうだ」 そう言いながら、背後から何者かが現れる。 現れたのは一人の女、 ——F・Fだった。 「ウェザーさんが雨を降らした理由は、バッド・カンパニーの攻撃の煙幕にするためだけでは無かった。 フー・ファイターズが十分に繁殖出来るだけの環境作りが目的だったのだ」 花京院がそこまで喋ると、その後をF・Fが継ぐ。 「水さえあれば、アタシのフー・ファイターズは幾らでも増殖する。 今、この空間をフー・ファイターズが満たしている。 お前の攻撃は、もう通用しない。お前の能力では全てのフー・ファイターズをコントロール出来ないだろう」 「通用しない、だと?たったそれだけの事で? オレは今すぐにでもお前ら全員を弾け飛ばす事も出来るんだぞ」 「だとしても、お前は攻撃出来ないさ。何故なら…」 「お前が死ぬからな」 「何を言って………、ッ!?」 どういう事だ!? 体が………動かない!!! 「最後に教えてやろう。僕がお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだ本当の目的を。 そして、ジョルノ君の作戦を」 「アタシは花京院にハイエロファント・グリーンの触角を使って連絡する事を教えた。 だが逆に、花京院から学んだ事もあるんだ」 「F・Fさんは僕とジョンガリ・Aの闘いから学習していた。 “スタンドを相手に潜り込ませ、相手を操る”と云う戦法を」 !!! まさか………!!! 「さっきお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだのは、お前を斃す為じゃない。 お前の体内にフー・ファイターズを侵入させる為だった」 「エメラルドスプラッシュの中にフー・ファイターズ弾を幾つか紛れ込ませておいた。 まあ、花京院のように相手の意識を乗っ取る事は出来ないが、 お前の血で増殖したフー・ファイターズが、お前を内側から食い破る事は出来る。 漸くフー・ファイターズがお前の全身に行き渡った様だな」 そうか、コイツらがぺらぺらと喋っていたのは時間稼ぎで…! ヤバイ!!! その直後、三つの声が同時に響き渡った。 「フー・ファイターズ!荒木の体を弾き飛ばせ!!!」 「うわあああぁぁぁ!!!バトルロワイアル!俺の体内のフー・ファイターズを消滅させろぉ!!!」 「スタープラチナ・ザ・ワールド!!!」  * * * 「荒木を斃せる人間は現在生き残っている中で一人。空条承太郎さんだけです」 荒木打倒の方法を説明する時、ジョルノは先ずこう言った。 「他の人間では、奴に攻撃を加えてから死ぬまでに、必ず幾許かの時間を要します。 ですが、荒木ならば、一瞬でも時間があれば再生してしまいます。 攻撃から荒木を死に追いやるまで、時間を必要とせずに行なえる人間は、承太郎さん一人だけです」 「なら俺達にはやる事はないのか?」 ウェザーの言葉に、ジョルノは静かに首を振る。 「いえ。その状況を作り出すために僕達がバックアップする必要があります。 『承太郎さんが攻撃可能な距離に荒木を十分近づける』『承太郎さんに僕達の狙いを伝える』主にこの2点を。 厄介なのは後者です。 僕達が戦場に辿り着いた時、承太郎さんと荒木は既に対峙している筈。 つまり、承太郎さんはバトル・ロワイアルの支配下にある訳です。 承太郎さんが見たものは荒木も知覚し、承太郎さんが聞いた事は荒木も聞き入れてしまいます」 「それじゃあ、伝える手段が無いんじゃないか?」 「一つだけあります」 「?」 「以心伝心です。そしてこの中でそれが出来る人は一人か居ません」 そしてジョルノは花京院の方を向いた。 「花京院さん。貴方です」 「!」 その場に居る全員が、花京院の方を振り向く。 「DIO打倒の下、何十日と云う旅を共にし、心を通わせた貴方しか居ません」 「…」 「御願い………出来ますか?」 ジョルノの依頼に花京院は………静かに肯いた。 「だが、どうやって荒木を仕留めるんだ? はっきりいって、荒木ほど1対多数に向いているスタンドもない。 荒木の目を盗んで、承太郎の射程距離に近づけるなんて事出来るのか?」 「そうだな。恐らく荒木は、同時に10個のテレビが点いていても、全て同時に観る事が出来るような男だ。 俺達を相手にしながら承太郎の事も把握するなど、奴にとっては朝飯前だろう」 「えぇ。でも、それは平静でいられる間は、です」 「「「?」」」 「同時にテレビを10個見る事が出来る人間でも、 突然銃を撃ち込まれた時に“テレビ10個を同時に把握しながら銃声の方を確かめる”なんて事は普通出来ないでしょう?」 「「「!」」」 どうやら皆、僕の言いたい事が伝わったようだ。 「成程な。だが、どうやって奴を斃す?」 「はい。僕なりの打倒法を考えました。それをこれから説明します…」 そしてジョルノが説明した内容は、簡単に纏めれば以下の通りだった。 ①花京院が承太郎さんの前に姿を現し、アイコンタクトを取る ②アタシのフー・ファイターズを荒木の体内に潜り込ませる ③荒木の体内にフー・ファイターズが行き渡った所で、荒木にその事実を説明 ④荒木は動揺する。その時、自分の事に気をとられた一瞬を突き、承太郎さんが荒木を斃す  * * * 『僕達が隙を作る。だから承太郎が止めを刺してくれ』 あの時花京院は、目でそう伝えていた。 そして遂に得られた一瞬。 伏線に次ぐ伏線のおかげで、一瞬だけだが、荒木は自分の事に気を奪われ、俺達の拘束を、バリアを解いた。 その一瞬をつき、俺は時を止めた。 正真正銘、最後のチャンス。 猛然と、俺は荒木の元へ向かって走る。 後2秒。 「…やれやれ、何とか間に合ったようだな」 俺は呟く。 そして… 後1秒。 「スター………フィンガー!!!」 ザンッ!!! 荒木を脳天から荒木を真っ二つにする。 ザンッ!!! 次は横一文字に。 斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬っっっ!!!!!! そのまま何度も荒木を切り刻み…、    時は動き始めた 凍えた時から開放された荒木は、その肉片を地面にばら撒いた。 確認するまでも無い。 荒木は死んだ。 「お前の敗因はたった一つだ。 たった一つの…シンプルな理由だ」 最後に俺は、荒木に手向けの言葉を贈る。 「テメェは俺達を敵に回した」 &color(red){【荒木飛呂彦   完全敗北 —死亡】} *投下順で読む [[前へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]] [[戻る>ゲーム終了まで ]] [[次へ>『箱庭の開放』(エピローグ)~杜王町に日は昇る~]] *時系列順で読む [[前へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]] [[戻る>ゲーム終了まで(時系列順) ]] [[次へ>『箱庭の開放』(エピローグ)~杜王町に日は昇る~]]

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