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「………遅い」 ブチャラティを待ち続ける俺は、痺れを切らし始めていた。 ブチャラティの連絡を待ち、そろそろ10時間近くになる。 なのに、一向連絡が無い。 「ブチャラティからの連絡が無いと、荒木を暗殺しにいけないじゃねぇか」 焦りを含んだ独り言。 まさかこれを聴いている者が居るとは思わなかった。 「…そう云う作戦を立ててたのか」 「なっ!」  * * * 23時55分。 漸く荒木に立ち向かう為のメンバーが揃った。 私達がC-4に辿り着いた時、其処にはダイアー君が居た。 其処でポルナレフ君、ワムウの死を知る。 その後暫くして、シーザー君が到着。 リサリサ君、シュトロハイム君、ドッピオの死を知る。 この時点で、C-4に居るもの以外、生存者は承太郎君とアヴドゥル君のみになった。 そして、承太郎君が真東に居る事を感じ取っていた私は、その場にいるもの全員引き連れ、東へ進んだ。 そして承太郎君と再会し、アヴドゥル君の改心を知った私達は、C-8へ向かった。 そして今、全員がC-8、吉良吉影宅前に揃っていた。 「では、作戦を説明する」 私の言葉に、全員が私の方へ注目する。 その視線を受け、私は作戦船内容を話した。 「先ず、チームを二部隊に分ける。 一番隊は承太郎君、仗助君、エルメェス君、私 二番隊はブチャラティ君、ダイアー君、シーザー君、ナランチャ君、ミキタカ君だ。 一番隊は荒木討伐へ行き、二番隊は後方支援を行なう」 「了解」 具体的な打倒方法は此処では話題にしない。 首輪から私達の発言は盗聴されているし、 仮に首輪が無くとも荒木のスタンドで私達の行動を監視している可能性は大いに有り得るからだ。 だから口にする事はおろか、筆談すらしていない。 「ではブチャラティ君、そちらは頼む。 エルメェス君。ウェザー君の舌のシールを剥がしてくれ。 荒木の下へ…」 「その必要は無いよ」 「「「!!!」」」 突然の荒木の声に全員して振り返る。 そこには、荒木飛呂彦がいた。 「ジャスト12時。それでは僕も参戦させてもらうとしよう。 とはいっても、君たちは皆一丸となって僕を倒す事を目的としているようだから、 遂にこのゲームもクライマックスを迎えたと考えるべきだろうね。 放送はいるかい? あぁ、しまった。支給品を置いてきてしまった」 「荒木…!!!」 しまった、先手を打たれた。 全員、荒木に首から下を固定されているようだ。 首だけをキョロキョロと動かしている。 !!! 何!? 今、この場には荒木の他、承太郎君、仗助君、エルメェス君、私しか居ない。 そう、二番隊の人間が、一瞬にして消えてしまっていた! これはどう云う事だ!? 「さすがに君ら全員を操るのは面倒なんでね」 私の疑問を読み透かしたかのように答える荒木。 「君ら全員を操るより、強大な手駒を一つ創った方が楽なんだよね。 だから、こんな舞台を用意してみた。 観客は君達だ。 是非愉しんでくれたまえ」 そう言って荒木が「パチン」と指を鳴らすと、俺達の前に巨大なスクリーンが現れた。 * * * 「SYYYAAAAAA!!!」 「何だ!?コイツは!」 突如、周りの風景が変わったかと思うと、突然何者かが俺達を襲って来た。 「コイツは…カーズ!!」 シーザーが叫ぶ。 カーズ!? その名は第一放送で呼ばれていたじゃないか。 「フフフ。俺をかつてのカーズと思うな。シーザー。 俺は究極生命体となったのだアアアァァァ!!!」 「何!?」 カーズの言葉に、シーザーは動揺を隠せないようだ。 が、俺はその事よりも周囲の状況の確認に気を取られていた。 この場所には覚えがある。 「H-5」 俺達が、鉄を操る敵と戦った場所だ。 何故此処に飛ばされたか分からないが、飛ばされた先が此処だったと云うのはこの上ない幸運! 形兆が居る場所のすぐ近くだからだ。 「シーザー。今はアイツは後回しだ。急いで“この場を離れなければ”ならない。 南へ逃げるぞ!」 俺の言葉に、シーザーは肯く。 「ブチャラティ!ダイアー!ナランチャ!アヴドゥル!このシャボンに乗れ!」 シーザーの言葉に、俺とダイアー、ナランチャはシーザーが作ったシャボン玉の上に乗る。 シャボン玉。 ココ・ジャンボに入っていた一見役に立たないシャボン液は、シーザーにとっては強力無比な武器だった。 シーザーは“波紋”と云う特殊能力によりシャボン玉を自在に操れるのだ。 「すっ飛ばすぜ!シャボンカッター・グラディン!」 そしてシャボン玉は、俺達を乗せたまま“あの場所”へ一直線に(と云っても道なりだが)向かう。 そして、当のシーザーは、 「では、シーザーさん。これで貴方の脚力は二倍になりました。思いっ切り走っちゃって下さい」 「解った。うおおおぉぉぉ!!!」 ミキタカがシューズに化け、俺達を追っていた。 そしてそれを更に追い掛けるカーズ。 ………………? 妙だ。 シャボン玉に乗って滑走しながら振り返り、カーズの様子を見て俺は不思議に思った。 あいつ、どう考えても全力を出していない。 有り余るほどの余裕がある。 “何故、奴は俺達に追いつこうとしない?” 何か訳がある筈だ。 先ず、何がおかしい? カーズが俺達を追い掛けながらも、追いつこうとしない事。 そして、カーズが第一放送で呼ばれたと云う事実。 カーズが実は生きていた、と云う可能性もある。 似たような事を俺もしているのだから。 だが、俺達に襲い掛かってくるタイミングが絶妙過ぎる。 俺達が荒木打倒に向けて動き始めた瞬間にあわせての襲来とは、コイツが荒木の配下としか思えない。 !!! そう云う事か! コイツは荒木が創ったダミーだ! 荒木はジョースター卿達と対峙しながらも、こいつを通して俺達の情報も入手していると云う訳だ。 つまり、荒木は俺達の作戦に気付いていると云う事だ。 厳密には形兆の存在が気付かれた訳じゃないが、“俺達が何かをする”程度には感付いていると云った所か。 ジョースター卿達が荒木を引き付け、その間に俺達が形兆に呼び掛ける。 そして、唯一荒木の目を掻い潜れる形兆が暗殺する手筈だった。 だが、荒木が俺達の行動を読み取っている以上、下手に形兆に接触出来ない。 くそっ。どうする? 「ブチャラティ!」 考え込んでいる俺に、突如声を上げるナランチャ。 「どうした?」 「ねぇんだ!」 「何が!?」 「二酸化炭素の反応が!!!」 !!!!!! 何!? ナランチャのレーダーに反応しないだと? ナランチャの言ってる『反応しない』と云うのは、勿論形兆の事だ。 “アイツは何処に行った?” 「ブチャラティ!こうなったら応戦しかないんじゃねぇ?」 ナランチャの言葉に、俺は思考から引き戻される。 ナランチャの云う事も尤もだ。 形兆の行方が分からない以上、目の前の敵を斃すしかない。 「仕方ない。奴を斃すぞ!」 俺の言葉に、全員が肯いた。 * * * 「おぉ。遂に逃げる事を断念したようだね。 さぁ、これから楽しくなるよ」 悦に入っている荒木の隙を、俺達はひたすら窺っていた。 俺達は身動きが取れない。誰一人として。 だが、全く手も足も出ない訳では無い。 “スタンドは動かせるのだ” 理由は単純。 ココに荒木に連れられ束縛された時、俺達はスタンドを出現させていなかった。 幾ら荒木でも、無い物を固定する事は出来ない。 だから荒木は、スタンドを固定していないのだ。 だが、スタンドを出した瞬間固定されてしまっては、本当に打つ手が無くなる。 だから、奴に一撃を与えるチャンスを虎視眈々と狙っていた。 荒木は首から下しか固定していない。 画面を見せる為か、首から上は自由に動かす事が出来た。 !!! エルメェスが俺に目線で訴える。 大体の所は読めた。 エルメェスの奴、荒木に何か仕掛ける気だ。 ただ、エルメェス自身は荒木に攻撃する事は適わない。 エルメェスが気を引いて、俺達が止めを刺すって寸法か。 「…」 俺は目で肯く。 「キッス!」 「ん?」 エルメェスの声に荒木が反応する。 『キッス』を発現させ、小石を投げた。 「おっと」 荒木は避ける。 だが、当然その小石にはシールが張り付いていて…。 「なっ」 エルメェスは、いや、キッスはシールを剥がさなかった。 その表現は間違っているか。 剥がさないのではなく剥がせない、それどころか身動き一つ出来ないのだ。 「『キッス』が…動かなねぇ」 動揺するエルメェスにかぶさるように響く荒木の笑い声 「ハハハ。エルメェス君の事だから、さっき投げた小石にもシールが貼っているのだろう? でも、そうは問屋が卸さないよ。 君のスタンドを固定させて貰った。 ずっと待ってたんだよね。君達がスタンドをだすのを」 「くっ」 これでエルメェスは、スタンドを含めて完全に捕らわれた。 エルメェスの作戦は失敗だったか。 「!」 落胆するのは早かったようだ。 「クレイジー・ダイヤモンド!」 仗助がスタンドを出す。 そして何かをエルメェスに向かって投げつける。 「今のは俺の学ランの袖だ。 それを“学ランが袖に向かって”直す。 すると…」 仗助がエルメェスに向かって引っ張られる。 どがっ。 そして仗助とエルメェスはぶつかり、その衝撃でシールは剥がれた。 「なるほどね。でも、そこまでしても、小石が飛んでくる軌道はバレバレ………なっ」 荒木から初めて余裕の表情が消える。 シールを剥がして飛んできたのは小石ではない。 小石を掴んだ『スタープラチナ』、そして俺だったのだ。 「スタープラチナ・ザ・ワールド!」 時を止める。 時を止めたとはいえ、俺の体は固定されたまま。 だが、スタープラチナは動く。 エルメェスのシールにより、一瞬にしてスタープラチナの射程距離まで近づいた俺のやる事は、後は荒木を殴り飛ばすだけだ。 「オラオラオラオラオラオラオラオラ オラオラオラオラオラオラオラオラ オラアアアァァァッ!」 そして時は動き出す。 ドゴオオオォォォン!!! 「「やったっ!!!」」 荒木が吹き飛ぶのを見て、ジョージ達が声を上げる。 だが… 「馬鹿な」 俺の、いや、俺達の束縛は解けていなかった。 つまり… 「クセって恐ろしいね。 こんな時に致命的なミスを犯してしまう」 荒木は斃していないって事だ 「バトルロワイアルの空間操作能力を用いれば、傷を治すことくらい容易い。 自分の体を、無傷なように作り変えれば良いだけなんだから。 瞬殺しなくちゃ僕を殺せないってのに、よりによっていつものクセでオラオラをしてしまうとはね」 しまった! こいつの能力を甘く見ていた。 エルメェスや仗助が作ってくれたチャンスを、俺は不意にしてしまった。 「おや、どうやら向こうも決着がつきそうだよ?」 そう言って、荒木がスクリーンを指差す。 その先の映像は…。 * * * アヴドゥルさんが背中につけているチープ・トリックの所為で身動きが取れない為、 残りの5人でカーズに立ち向かう。 「シャボン・ランチャー!!!」 シーザーの必殺技が、カーズに襲い掛かる。 だが、 「こんな貧弱な波紋では、猫一匹殺せんぞォ!」 カーズは平然とシャボン玉の群れを叩き落とす。 「ボラボラボラボラ!!」 エアロスミスが機銃掃射を仕掛ける。 更に、 「クロスファイアー・ハリケーン!!!」 壁を背にして、アヴドゥルさんが炎を以ってカーズに攻撃し、ナランチャのフォローをする。 が、カーズはそれを避けようとすらしない。 「下らん。貧弱過ぎる、ヌル過ぎるわぁ!」 銃弾が当たった傍から、傷口があっという間に再生してゆく。 どうやら、奴に物理攻撃は効きにくく、すぐに回復してしまうようだ。 ならば、 「ヘブンズ・ドアー!」 そう、物理的でない攻撃をすれば良い。 が、 「下らんッ」 カーズは一羽の鳥を生み出し、ヘブンズ・ドアーの攻撃を防御していた。 くっ。何とかして奴に通じる攻撃方法を見つけ出さないと。 「!!?」 突如、カーズの姿が掻き消える。 何処だ?やつはどこに消えた!? 「フハハハハハ!!」 「!!!」 声のする方を仰ぎ見る。 其処——空中に、羽を生やしたカーズが飛んでいた。 「貴様ら如き、ひねり潰すなど造作もないことよ! 死ねえぃ!」 カーズが羽ばたき、無数の羽が俺達に向かって飛んでくる。 「波紋疾走!」 「エアロスミス!」 「クロスファイアー・ハリケーン!」 俺達は一斉に、羽攻撃を迎撃しようとして… 「グワアアア!」 「何ぃ!?」 いつの間にか徘徊していたワニに襲い掛かられた。 「くっ」 そして俺達が一瞬ワニの方に気を取られた隙に… ズドドドド!!! 雨のように無数に遅い来る羽が、俺達に突き刺さった。 「フン。雑魚共が」 傷つき倒れた俺達の前に、カーズが降り立つ。 「まぁ、究極生命体の前には、人間などクズである、という事だな。 ココまでだ。死ね」 そして、カーズは掲げた腕を振り下ろした。  * * * 「二番帯は全滅…か。まぁ、究極生命体相手に頑張った方じゃないかな? じゃ、こっちもそろそろ決めるとするか。 僕に楯突こうとした愚か者に死んで貰おうかね。 先ずはこの僕に汚らしい拳を浴びせた承太郎君、キミからだ」 「野郎…」 「それが君の最期の言葉になる。じゃあ、これからじわじわと嬲り殺してあげよう」 余裕の笑みで俺を見下ろす荒木。 俺は成す術がなかった。 そして荒木は、俺に何かを仕掛けるために指を鳴らそうとし… 「それは違うぞ。承太郎」 ——————奇跡が起きた。 *投下順で読む [[前へ>戦士たちの戦い]] [[戻る>ゲーム終了まで ]] [[次へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]] *時系列順で読む [[前へ>(題名未定)  ]] [[戻る>ゲーム終了まで(時系列順) ]] [[次へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]]
「………遅い」 ブチャラティを待ち続ける俺は、痺れを切らし始めていた。 ブチャラティの連絡を待ち、そろそろ10時間近くになる。 なのに、一向連絡が無い。 「ブチャラティからの連絡が無いと、荒木を暗殺しにいけないじゃねぇか」 焦りを含んだ独り言。 まさかこれを聴いている者が居るとは思わなかった。 「…そう云う作戦を立ててたのか」 「なっ!」  * * * 23時55分。 漸く荒木に立ち向かう為のメンバーが揃った。 私達がC-4に辿り着いた時、其処にはダイアー君が居た。 其処でポルナレフ君、ワムウの死を知る。 この時点で、C-4に居るもの以外、生存者は承太郎君とアヴドゥル君のみになった。 そして、承太郎君が真東に居る事を感じ取っていた私は、その場にいるもの全員引き連れ、東へ進んだ。 そして承太郎君と再会し、アヴドゥル君の改心を知った私達は、C-8へ向かった。 そして今、全員がC-8、吉良吉影宅前に揃っていた。 「では、作戦を説明する」 私の言葉に、全員が私の方へ注目する。 その視線を受け、私は作戦船内容を話した。 「先ず、チームを二部隊に分ける。 一番隊は承太郎君、仗助君、エルメェス君、私 二番隊はブチャラティ君、ダイアー君、シーザー君、ナランチャ君、ミキタカ君だ。 一番隊は荒木討伐へ行き、二番隊は後方支援を行なう」 「了解」 具体的な打倒方法は此処では話題にしない。 首輪から私達の発言は盗聴されているし、 仮に首輪が無くとも荒木のスタンドで私達の行動を監視している可能性は大いに有り得るからだ。 だから口にする事はおろか、筆談すらしていない。 「ではブチャラティ君、そちらは頼む。 エルメェス君。ウェザー君の舌のシールを剥がしてくれ。荒木の下へ…」 「その必要は無いよ」 「「「!!!」」」 突然の荒木の声に全員して振り返る。 そこには、荒木飛呂彦がいた。 「ジャスト12時。それでは僕も参戦させてもらうとしよう。とはいっても、君たちは皆一丸となって僕を倒す事を目的としているようだから、遂にこのゲームもクライマックスを迎えたと考えるべきだろうね。放送はいるかい?あぁ、しまった。支給品を置いてきてしまった」 「荒木…!!!」 しまった、先手を打たれた。 全員、荒木に首から下を固定されているようだ。 首だけをキョロキョロと動かしている。 !!! 何!? 今、この場には荒木の他、承太郎君、仗助君、エルメェス君、私しか居ない。 そう、二番隊の人間が、一瞬にして消えてしまっていた! これはどう云う事だ!? 「さすがに君ら全員を操るのは面倒なんでね」 私の疑問を読み透かしたかのように答える荒木。 「君ら全員を操るより、強大な手駒を一つ創った方が楽なんだよね。だから、こんな舞台を用意してみた。観客は君達だ。是非愉しんでくれたまえ」 そう言って荒木が「パチン」と指を鳴らすと、俺達の前に巨大なスクリーンが現れた。 * * * 「SYYYAAAAAA!!!」 「何だ!?コイツは!」 突如、周りの風景が変わったかと思うと、突然何者かが俺達を襲って来た。 「コイツは…カーズ!!」 シーザーが叫ぶ。 カーズ!? その名は第一放送で呼ばれていたじゃないか。 「フフフ。俺をかつてのカーズと思うな。シーザー。俺は究極生命体となったのだアアアァァァ!!!」 「何!?」 カーズの言葉に、シーザーは動揺を隠せないようだ。 が、俺はその事よりも周囲の状況の確認に気を取られていた。 この場所には覚えがある。 「H-5」 俺達が、鉄を操る敵と戦った場所だ。 何故此処に飛ばされたか分からないが、飛ばされた先が此処だったと云うのはこの上ない幸運! 形兆が居る場所のすぐ近くだからだ。 「シーザー。今はアイツは後回しだ。急いで“この場を離れなければ”ならない。南へ逃げるぞ!」 俺の言葉に、シーザーは肯く。 「ブチャラティ!ダイアー!ナランチャ!アヴドゥル!このシャボンに乗れ!」 シーザーの言葉に、俺とダイアー、ナランチャはシーザーが作ったシャボン玉の上に乗る。 ココ・ジャンボに入っていた一見役に立たないシャボン液は、シーザーにとっては強力無比な武器だった。 シーザーは“波紋”と云う特殊能力によりシャボン玉を自在に操れるのだ。 「すっ飛ばすぜ!シャボンカッター・グラディン!」 そしてシャボン玉は、俺達を乗せたまま“あの場所”へ一直線に(と云っても道なりだが)向かう。 そして、当のシーザーは、 「では、シーザーさん。これで貴方の脚力は二倍になりました。思いっ切り走っちゃって下さい」 「解った。うおおおぉぉぉ!!!」 ミキタカがシューズに化け、俺達を追っていた。 そしてそれを更に追い掛けるカーズ。 ………………? 妙だ。 シャボン玉に乗って滑走しながら振り返り、カーズの様子を見て俺は不思議に思った。 あいつ、どう考えても全力を出していない。 有り余るほどの余裕がある。 “何故、奴は俺達に追いつこうとしない?” 何か訳がある筈だ。 先ず、何がおかしい? カーズが俺達を追い掛けながらも、追いつこうとしない事。 そして、カーズが第一放送で呼ばれたと云う事実。 カーズが実は生きていた、と云う可能性もある。 似たような事を俺もしているのだから。 だが、俺達に襲い掛かってくるタイミングが絶妙過ぎる。 俺達が荒木打倒に向けて動き始めた瞬間にあわせての襲来とは、コイツが荒木の配下としか思えない。 !!! そう云う事か! コイツは荒木が創ったダミーだ! 荒木はジョースター卿達と対峙しながらも、こいつを通して俺達の情報も入手していると云う訳だ。 つまり、荒木は俺達の作戦に気付いていると云う事だ。 厳密には形兆の存在が気付かれた訳じゃないが、“俺達が何かをする”程度には感付いていると云った所か。 ジョースター卿達が荒木を引き付け、その間に俺達が形兆に呼び掛ける。 そして、唯一荒木の目を掻い潜れる形兆が暗殺する手筈だった。 だが、荒木が俺達の行動を読み取っている以上、下手に形兆に接触出来ない。 くそっ。どうする? 「ブチャラティ!」 考え込んでいる俺に、突如声を上げるナランチャ。 「どうした?」 「ねぇんだ!」 「何が!?」 「二酸化炭素の反応が!!!」 !!!!!! 何!? ナランチャのレーダーに反応しないだと? ナランチャの言ってる『反応しない』と云うのは、勿論形兆の事だ。 “アイツは何処に行った?” 「ブチャラティ!こうなったら応戦しかないんじゃねぇ?」 ナランチャの言葉に、俺は思考から引き戻される。 ナランチャの云う事も尤もだ。 形兆の行方が分からない以上、目の前の敵を斃すしかない。 「仕方ない。奴を斃すぞ!」 俺の言葉に、全員が肯いた。 * * * 「おぉ。遂に逃げる事を断念したようだね。さぁ、これから楽しくなるよ」 悦に入っている荒木の隙を、俺達はひたすら窺っていた。 俺達は身動きが取れない。誰一人として。 だが、全く手も足も出ない訳では無い。 “スタンドは動かせるのだ” 理由は単純。 ココに荒木に連れられ束縛された時、俺達はスタンドを出現させていなかった。 幾ら荒木でも、無い物を固定する事は出来ない。 だから荒木は、スタンドを固定していないのだ。 だが、スタンドを出した瞬間固定されてしまっては、本当に打つ手が無くなる。 だから、奴に一撃を与えるチャンスを虎視眈々と狙っていた。 荒木は首から下しか固定していない。 画面を見せる為か、首から上は自由に動かす事が出来た。 !!! エルメェスが俺に目線で訴える。 大体の所は読めた。 エルメェスの奴、荒木に何か仕掛ける気だ。 ただ、エルメェス自身は荒木に攻撃する事は適わない。 エルメェスが気を引いて、俺達が止めを刺すって寸法か。 「…」 俺は目で肯く。 「キッス!」 「ん?」 エルメェスの声に荒木が反応する。 『キッス』を発現させ、小石を投げた。 「おっと」 荒木は避ける。 だが、当然その小石にはシールが張り付いていて…。 「なっ」 エルメェスは、いや、キッスはシールを剥がさなかった。 その表現は間違っているか。 剥がさないのではなく剥がせない、それどころか身動き一つ出来ないのだ。 「『キッス』が…動かなねぇ」 動揺するエルメェスにかぶさるように響く荒木の笑い声 「ハハハ。エルメェス君の事だから、さっき投げた小石にもシールが貼っているのだろう? でも、そうは問屋が卸さないよ。 君のスタンドを固定させて貰った。 ずっと待ってたんだよね。君達がスタンドをだすのを」 「くっ」 これでエルメェスは、スタンドを含めて完全に捕らわれた。 エルメェスの作戦は失敗だったか。 「!」 落胆するのは早かったようだ。 「クレイジー・ダイヤモンド!」 仗助がスタンドを出す。 そして何かをエルメェスに向かって投げつける。 「今のは俺の学ランの袖だ。 それを“学ランが袖に向かって”直す。 すると…」 仗助がエルメェスに向かって引っ張られる。 どがっ。 そして仗助とエルメェスはぶつかり、その衝撃でシールは剥がれた。 「なるほどね。でも、そこまでしても、小石が飛んでくる軌道はバレバレ………なっ」 荒木から初めて余裕の表情が消える。 シールを剥がして飛んできたのは小石ではない。 小石を掴んだ『スタープラチナ』、そして俺だったのだ。 「スタープラチナ・ザ・ワールド!」 時を止める。 時を止めたとはいえ、俺の体は固定されたまま。 だが、スタープラチナは動く。 エルメェスのシールにより、一瞬にしてスタープラチナの射程距離まで近づいた俺のやる事は、後は荒木を殴り飛ばすだけだ。 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアァァァッ!」 そして時は動き出す。 ドゴオオオォォォン!!! 「「やったっ!!!」」 荒木が吹き飛ぶのを見て、ジョージ達が声を上げる。 だが… 「馬鹿な」 俺の、いや、俺達の束縛は解けていなかった。 つまり… 「クセって恐ろしいね。こんな時に致命的なミスを犯してしまう」 荒木は斃していないって事だ 「バトルロワイアルの空間操作能力を用いれば、傷を治すことくらい容易い。自分の体を、無傷なように作り変えれば良いだけなんだから。瞬殺しなくちゃ僕を殺せないってのに、よりによっていつものクセでオラオラをしてしまうとはね」 しまった! こいつの能力を甘く見ていた。 エルメェスや仗助が作ってくれたチャンスを、俺は不意にしてしまった。 「おや、どうやら向こうも決着がつきそうだよ?」 そう言って、荒木がスクリーンを指差す。 その先の映像は…。 * * * アヴドゥルさんが背中につけているチープ・トリックの所為で身動きが取れない為、残りの5人でカーズに立ち向かう。 「シャボン・ランチャー!!!」 シーザーの必殺技が、カーズに襲い掛かる。 だが、 「こんな貧弱な波紋では、猫一匹殺せんぞォ!」 カーズは平然とシャボン玉の群れを叩き落とす。 「ボラボラボラボラ!!」 エアロスミスが機銃掃射を仕掛ける。 更に、 「クロスファイアー・ハリケーン!!!」 壁を背にして、アヴドゥルさんが炎を以ってカーズに攻撃し、ナランチャのフォローをする。 が、カーズはそれを避けようとすらしない。 「下らん。貧弱過ぎる、ヌル過ぎるわぁ!」 銃弾が当たった傍から、傷口があっという間に再生してゆく。 どうやら、奴に物理攻撃は効きにくく、すぐに回復してしまうようだ。 ならば、 「ヘブンズ・ドアー!」 そう、物理的でない攻撃をすれば良い。 が、 「下らんッ」 カーズは一羽の鳥を生み出し、ヘブンズ・ドアーの攻撃を防御していた。 くっ。何とかして奴に通じる攻撃方法を見つけ出さないと。 「!!?」 突如、カーズの姿が掻き消える。 何処だ?やつはどこに消えた!? 「フハハハハハ!!」 「!!!」 声のする方を仰ぎ見る。 其処——空中に、羽を生やしたカーズが飛んでいた。 「貴様ら如き、ひねり潰すなど造作もないことよ! 死ねえぃ!」 カーズが羽ばたき、無数の羽が俺達に向かって飛んでくる。 「波紋疾走!」 「エアロスミス!」 「クロスファイアー・ハリケーン!」 俺達は一斉に、羽攻撃を迎撃しようとして… 「グワアアア!」 「何ぃ!?」 いつの間にか徘徊していたワニに襲い掛かられた。 「くっ」 そして俺達が一瞬ワニの方に気を取られた隙に… ズドドドド!!! 雨のように無数に遅い来る羽が、俺達に突き刺さった。 「フン。雑魚共が」 傷つき倒れた俺達の前に、カーズが降り立つ。 「まぁ、究極生命体の前には、人間などクズである、という事だな。 ココまでだ。死ね」 そして、カーズは掲げた腕を振り下ろした。  * * * 「二番帯は全滅…か。まぁ、究極生命体相手に頑張った方じゃないかな? じゃ、こっちもそろそろ決めるとするか。 僕に楯突こうとした愚か者に死んで貰おうかね。 先ずはこの僕に汚らしい拳を浴びせた承太郎君、キミからだ」 「野郎…」 「それが君の最期の言葉になる。じゃあ、これからじわじわと嬲り殺してあげよう」 余裕の笑みで俺を見下ろす荒木。 俺は成す術がなかった。 そして荒木は、俺に何かを仕掛けるために指を鳴らそうとし… 「それは違うぞ。承太郎」 ——————奇跡が起きた。 *投下順で読む [[前へ>戦士たちの戦い]] [[戻る>ゲーム終了まで ]] [[次へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]] *時系列順で読む [[前へ>(題名未定)  ]] [[戻る>ゲーム終了まで(時系列順) ]] [[次へ>『箱庭の開放』(中編)~荒木討伐零番隊~]]

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