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 * * * 残虐非道な相手を目の前に、自分の感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのが分かる。 目には目、歯には歯、残虐には残虐だ。 冷酷! 残忍! 貧民街時代と同じ感覚に戻った今の俺なら、躊躇い無くこの外道を葬る事が出来る。 俺のする事はこの怒りをぶち込むだけだ! 「ぶっ殺す!!!」 俺は奴に飛び掛ろうとし、 「やってみろ」 奴はそれを受けようと構え、 ―――シーザー。 「「!!!」」 声が聴こえた。 俺と奴は対峙するのも忘れ、声がする方を向く。 其処には、死んだと思っていた女性が、息も絶え絶えに言葉を紡いでいた。  * * * ここは………何処だろう。 あたしは確か、ドッピオの野郎に腹をブチ抜かれて…。 でも、今の“あたし”に特に外傷は見当たらない。 誰かが傷を治してくれた? ―――あぁ、そうじゃなかった。 “あたしの体が眼下にある” やっぱりあたしは死んじゃったんだ。 今のあたしは“魂”というか、“幽霊”というか、そんなところ。それが理解出来た。 そんな事をぼんやりと考えている間にも、あたしの魂はどんどん上へと昇って行く。 でも、どこへ行くんだろう?あたし。 ううん。どこへ行くかなんて事は大して重要じゃない。 気になるのは、あたしの行く場所にあの人は居るのだろうかという事。 最愛のあの人の居る場所に、あたしは行けるのだろうか。 そんな事を考えているあたしに、 「君も………来てしまったのか」 あたしの捜し求めていた人の声が掛けられる。 私は振り返る。その先には…    あぁ………ようやく会えた。 …そこには、命懸けであたしを守ってくれた最愛の人――の魂――が少し憂いを帯びた表情であたしを見ていた。 「うん。ごめんね。貴方が…アナスイが、それこそ自分の身を挺して救ってくれたのに…」 悔しくて、申し訳なくて震えながらも紡ぎ出すアタシの言葉を、アナスイは左手を前に出してやんわり遮った。 「いいんだ。地上でのしがらみを“ココ”に持ち出す必要は無い。“ココ”はもうそんな事とは関係ない場所なんだから」 そう言って、アナスイは振り返る。 その先には、この世界に放り込まれた人が――人達の魂が――居た。 一人でのびのびとくつろいでいる者、談笑している者、様々な人が其処に居た。 ただ、みんな一つの共通点があった。………みんな、穏やかな表情を湛えていた。 「そう…。こんなに沢山の人が…」 「あぁ。まだ一日と経っていないのにな」 そう、ココに居るのは、あたしと同じ、このゲームで命を散らした人達。 そして… 「どうやら君も、気付いたようだね」 「えぇ」 アナスイの言葉にあたしは肯く。 …そう、気付いていた。 あたしは、出会った事も無い人達を知っている。 ココに来てから、あたしは知らない筈の全てを――どちらかというと頭ではなく心で――理解していた。 そして、あたし自身の事も。 父親のあたしへの愛。あたしから全てを奪った敵、大切な仲間、そして… 「そうか。元の世界でも貴方はあたしに告白してくれていたのね。そして、あたしも受け容れて…」 「でも、君の父親には認めて貰えなかったようだが」 「その時は駆け落ちでもしていたわ」 そんなやり取りをして、二人でクスクスと小さく笑い合う。 『貴様アアアァァァ!!!』 その時だった。“耳元”から声がしたのは。 驚いて“下”を確認しようとする。 もう随分と高い所まで来てしまったようだ。 “下”の確認が困難になっていた。 目を暮らすが、霞んでもう良く見えない。 「…大丈夫。彼なら心配ないわ」 そして、突然背後から声を掛けられた。 アナスイと一緒に振り向くと、其処にはピンク色の髪の美しい少女、トリッシュ・ウナが、 いつの間にかあの集まりの場を抜け、あたし達の側に居た。 “ココ”に来た時点で、あたしは彼女の事も理解していた。 父親の愛情を得られず、父親を愛する事の出来ない、本当に不運な少女。 彼女と比べると、あたしはなんて恵まれた、それでいてワガママな女だったんだろうって、軽い自己嫌悪に陥る。 トリッシュは続ける。 「彼ならきっと、『ボス』が相手でも大丈夫。 私を守ってくれた大切なあの人、シーザーなら」 「…えッ?ちょっと待ってッ!どういう事!?ボスってッ!?彼…シーザー、さん、は大丈夫なのッ?」 『ボス』とはドッピオの事。さっきの声がシーザー。二人は今、多分闘っている。 それはあたしも理解している。 でも、これからの事は分からない。 トリッシュは知っているの? これからシーザーがどうなるかを。そして、このゲームの結末を。 トリッシュはあたしの質問には答えず、ただ寂しげに微笑んだ。 「大丈夫。彼なら心配無いわ。問題は心の方」 「え?」 「私の死が、シーザーの目を曇らせてしまった。それだけが私の心残り」 そう。そういう事。 だから貴方はココでシーザーを見守っていたのね。 そうだ。今のあたしに出来るかどうか分からないけれど…。 「ねぇ」 「何?」 「貴方はシーザーさんに何か伝えたい事がある?」 「?」 「死に切っていないあたしなら、まだ体を動かせるかも知れない。 もし貴方が良ければ、伝えるわ。貴方の言葉を」 「………………」 暫く俯き、考え込むトリッシュ。 やがて顔を上げ、こう言った。 「有難う。御願いして良い?」 「えぇ。なんて伝えれば良いのかしら?」 そしてあたしは、トリッシュから受け取った言葉を伝える為、動かないはずの体を動かす為に体の中に残る僅かな力を注ぎ込んだ。 ―――シーザー。 ―――私の為に、今まで有難う。 ―――これからは貴方の為に、未だ失っていない貴方の大切な人達の為に戦って。 ―――もう、目を曇らせないで。 ―――シーザー。 ―――本当に、本当に有難う。 「徐倫。有難う。もう思い残す事は無いわ」 「貴方はこれからどうするの?」 「後は彼等に任せて………」 そう言ってトリッシュは、遠い目で天の更に上を見つめ… 「………ね」 あたしはトリッシュの言わん事を理解した。    “いきましょう” 「……そうね」 あたしの返事を受け、優しく微笑んだトリッシュは、あたし達からそっと離れ ………………昇っていった。 「………………」 アナスイと二人で見送る。そして、トリッシュが去ってしまってから、あたしはアナスイに向き直った。 「さあ、アナスイ。あたし達も行きましょうか」 「行くって?トリッシュを追いかけるのか?」 あたしの言ってる事の要領を得られないらしく、キョトンと聞き返すアナスイ。 「そうね…言い方が悪かったわ。“戻りましょう”」 そんなアナスイに、あたしは言い直す。 「だから行くとか戻るとか、一体どこへ?“ココ”の更に先に、行く場所なんてあるのかい?」 「ええ、あるわ。あたし達は…」 言いながらアナスイへ右手を差し出す。 「…そうなるべきだった所に…」 あたしの言葉に一瞬躊躇い、アナスイは伸ばした手を止める。 『“そうなるべきと所”はこの世界にもあるのだろうか』そんな疑問がよぎったのだろう。 「…戻るだけなのよ」 それでも最後まで言葉をつむぐあたしに、アナスイも思い直したのか、笑顔であたしの手を握り返す。 「元に戻るだけ…」 二人で上、今より更に高い天を見上げる。 まだ“下”でも気になるのだろうか、思いとどまっている人も居るようだ。 でも、あたし達二人には、もう関係が無かった。 「ただ、元に…」 二人。しっかりと手を握り合い、あたし達は――― あたし達の魂は――― ………昇って行った。  * * * 「…貴様、徐倫の仲間か」 女性の最後の言葉を聴き終え、男が俺に向かって話しかける。 が、俺はそんな事を気にする暇は無い。 今の女性の言葉。 俺には解っていた。 あれは徐倫という女性の言葉ではない。 今のはトリッシュが俺に向けて伝えた言葉だ。 詳しい事は解らない。 が、トリッシュは、俺に目を曇らせるなと、有難うと、俺に最後の言葉を託したんだ。 トリッシュ…。 「…解ったよ」 「?」 恐らく男の言葉の返事になっていないからだろう、男は俺の言ってる事が意味不明とばかりに首を傾げる。 だが、俺はトリッシュの伝えようとしている事を理解した。 目を曇らせて、このゲームに乗るなと。 本当の意味で、大切な者を護れと。 トリッシュはそれを、奇跡を起こしてまで俺に伝えた。 そこまでされたら、応えてやらなきゃな。 今は目の前の外道を………………斃す!!! トリッシュの仇を討つ為、そして大切な人達を護る為に!!!  * * * …目つきが変わった。 目の前の、シーザーとかいう男の目は、さっきまで我を失っているような目だった。 が、あの声を聴いてから、まるで自我を取り戻したかのように目に光が宿る。 …ジョルノ・ジョバーナやブローノ・ブチャラティのような光を。 徐倫の遺言の所為か。 何故か知らないが、生理的に嫌悪する響きだった。 まるで、徐倫の言葉では無いような…。 まあいい、今は目の前の男を殺すだけだ。 この手の目をする相手は厄介だと、今までの経験が告げている。 「貴様には、死んで貰う」 男――シーザーが一言、俺に向けてそう言う。 「トリッシュの仇、か?」 「それだけじゃねぇ。トリッシュは俺を護って死んで行った。 俺も大切なものを護る為、貴様のような外道をのさばらせない為に命を賭ける位の事をしないと、 カッコ悪くてあの世にも行けねぇからな。 あの世についた途端、俺の女神にまたエルボーを喰らっちまう」 「………フン」 この男、シーザーのスタンド能力が何か解らないのは不気味だが、 我がキング・クリムゾンの前には無力。 一撃で葬ってくれる。 「行くぞ!!!」 「来い!!!」  * * * そしてシーザーとディアボロの死闘は始まった。 命を賭した勝負の末、最後に立っているのは、果たして…。 【F-3とG-3の境にある住居(F-3)/1日目/夕方】 【シーザー・アントニオ・ツェペリ】 [能力]:波紋法 [時間軸]:ゲスラーのホテルへ突入直後 [状態]:健康。決意による精神力の安定 [装備]:無し [道具]:支給品一式。伝書鳩サヴェジ・ガーデン(現在リサリサの元へ飛行中)。専用の封筒残り6枚(使い捨て)。 [思考・状況]: 1)目の前の男を、何としても倒す! 2)トリッシュの言葉を受け取った以上、ゲームには乗らない。 3)C-4に向かい、リサリサ先生と合流 4)トリッシュとJOJOを生き返らせる為の方法を、リサリサ先生と相談 [補足1]: シーザーが仲間(の可能性あり)と認識している人間は、 ジョセフ、リサリサ、シュトロハイム、祖父ツェペリ、仗助、億泰、康一、露伴、噴上 保留にしている人物はDIO、ワムウ、ジョージ(シュトロハイムから聴きました)、仗助(JOJO殺害容疑) です。 【サヴェジ・ガーデン(支給品)】 サヴェジ・ガーデンは専用の封筒の宛名欄に書かれた人物に手紙を届けます。 手紙を届けた後送り主の下に戻ってくるかどうかも封筒に書く事によって指定可能です。 “手紙を届ける事”のみに関しては、天候その他どんな不測の事態にも影響を受けません。 手紙を送る事が出来る人物は此のゲームの参加者のみであり、同時に複数の人物に手紙を送る事は出来ません。 郵送時間は場所に因りますが封筒には小物程度なら何でも入ります。 首輪を探知し相手の下へ向かう為、届け先の相手が死んでいても手紙を届けます。 首輪が爆発している場合は、手紙を届けません(届け主の下から飛び立とうとしません)。 [補足]: 1)サヴェジ・ガーデンは現在リサリサの首輪を探知して飛行中。到着迄目算5~10分程度 2)封筒使用状況:使用済5枚、使用中1枚(リサリサ宛)、残り4枚(サヴェジ・ガーデンに仕込み) 【F-3とG-3の境にある住居(F-3)/1日目/夕方】 【ディアボロ・ドッピオ(現在ディアボロ)】 [スタンド]:『キング・クリムゾン』 [時間軸]:リゾットに勝利後、ローマへ向かう途中 [状態]:無傷 [装備]:DIO様の投げナイフ、ミスタの拳銃 [道具]:支給品一式×3 [思考・状況](ディアボロの思考): 1)シーザーの殺害 2)ドッピオをどうする?(対処法が思い付くまでディアボロのままで居る予定) 3)ブチャラティ、ナランチャ、ポルナレフ、リサリサ、エルメェス、承太郎の始末。 4)支配される者の探索 5)荒木の打倒。その後自分が支配者となる。 【空条徐倫 死亡】 *投下順で読む [[前へ>仇敵(前編)~声~]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>享受]] *時系列順で読む [[前へ>仇敵(前編)~声~]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>享受]] *キャラを追って読む |107:[[仇敵(前編)~声~]]|シーザー|116:[[Io non sono solitario.(前編)]]| |107:[[仇敵(前編)~声~]]|空条徐倫|| |107:[[仇敵(前編)~声~]]|ディアボロ|116:[[Io non sono solitario.(前編)]]|
 * * * 残虐非道な相手を目の前に、自分の感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのが分かる。 目には目、歯には歯、残虐には残虐だ。 冷酷! 残忍! 貧民街時代と同じ感覚に戻った今の俺なら、躊躇い無くこの外道を葬る事が出来る。 俺のする事はこの怒りをぶち込むだけだ! 「ぶっ殺す!!!」 俺は奴に飛び掛ろうとし、 「やってみろ」 奴はそれを受けようと構え、 ―――シーザー。 「「!!!」」 声が聴こえた。 俺と奴は対峙するのも忘れ、声がする方を向く。 其処には、死んだと思っていた女性が、息も絶え絶えに言葉を紡いでいた。  * * * ここは………何処だろう。 あたしは確か、ドッピオの野郎に腹をブチ抜かれて…。 でも、今の“あたし”に特に外傷は見当たらない。 誰かが傷を治してくれた? ―――あぁ、そうじゃなかった。 “あたしの体が眼下にある” やっぱりあたしは死んじゃったんだ。 今のあたしは“魂”というか、“幽霊”というか、そんなところ。それが理解出来た。 そんな事をぼんやりと考えている間にも、あたしの魂はどんどん上へと昇って行く。 でも、どこへ行くんだろう?あたし。 ううん。どこへ行くかなんて事は大して重要じゃない。 気になるのは、あたしの行く場所にあの人は居るのだろうかという事。 最愛のあの人の居る場所に、あたしは行けるのだろうか。 そんな事を考えているあたしに、 「君も………来てしまったのか」 あたしの捜し求めていた人の声が掛けられる。 私は振り返る。その先には…    あぁ………ようやく会えた。 …そこには、命懸けであたしを守ってくれた最愛の人――の魂――が少し憂いを帯びた表情であたしを見ていた。 「うん。ごめんね。貴方が…アナスイが、それこそ自分の身を挺して救ってくれたのに…」 悔しくて、申し訳なくて震えながらも紡ぎ出すアタシの言葉を、アナスイは左手を前に出してやんわり遮った。 「いいんだ。地上でのしがらみを“ココ”に持ち出す必要は無い。“ココ”はもうそんな事とは関係ない場所なんだから」 そう言って、アナスイは振り返る。 その先には、この世界に放り込まれた人が――人達の魂が――居た。 一人でのびのびとくつろいでいる者、談笑している者、様々な人が其処に居た。 ただ、みんな一つの共通点があった。………みんな、穏やかな表情を湛えていた。 「そう…。こんなに沢山の人が…」 「あぁ。まだ一日と経っていないのにな」 そう、ココに居るのは、あたしと同じ、このゲームで命を散らした人達。 そして… 「どうやら君も、気付いたようだね」 「えぇ」 アナスイの言葉にあたしは肯く。 …そう、気付いていた。 あたしは、出会った事も無い人達を知っている。 ココに来てから、あたしは知らない筈の全てを――どちらかというと頭ではなく心で――理解していた。 そして、あたし自身の事も。 父親のあたしへの愛。あたしから全てを奪った敵、大切な仲間、そして… 「そうか。元の世界でも貴方はあたしに告白してくれていたのね。そして、あたしも受け容れて…」 「でも、君の父親には認めて貰えなかったようだが」 「その時は駆け落ちでもしていたわ」 そんなやり取りをして、二人でクスクスと小さく笑い合う。 『貴様アアアァァァ!!!』 その時だった。“耳元”から声がしたのは。 驚いて“下”を確認しようとする。 もう随分と高い所まで来てしまったようだ。 “下”の確認が困難になっていた。 目を暮らすが、霞んでもう良く見えない。 「…大丈夫。彼なら心配ないわ」 そして、突然背後から声を掛けられた。 アナスイと一緒に振り向くと、其処にはピンク色の髪の美しい少女、トリッシュ・ウナが、 いつの間にかあの集まりの場を抜け、あたし達の側に居た。 “ココ”に来た時点で、あたしは彼女の事も理解していた。 父親の愛情を得られず、父親を愛する事の出来ない、本当に不運な少女。 彼女と比べると、あたしはなんて恵まれた、それでいてワガママな女だったんだろうって、軽い自己嫌悪に陥る。 トリッシュは続ける。 「彼ならきっと、『ボス』が相手でも大丈夫。 私を守ってくれた大切なあの人、シーザーなら」 「…えッ?ちょっと待ってッ!どういう事!?ボスってッ!?彼…シーザー、さん、は大丈夫なのッ?」 『ボス』とはドッピオの事。さっきの声がシーザー。二人は今、多分闘っている。 それはあたしも理解している。 でも、これからの事は分からない。 トリッシュは知っているの? これからシーザーがどうなるかを。そして、このゲームの結末を。 トリッシュはあたしの質問には答えず、ただ寂しげに微笑んだ。 「大丈夫。彼なら心配無いわ。問題は心の方」 「え?」 「私の死が、シーザーの目を曇らせてしまった。それだけが私の心残り」 そう。そういう事。 だから貴方はココでシーザーを見守っていたのね。 そうだ。今のあたしに出来るかどうか分からないけれど…。 「ねぇ」 「何?」 「貴方はシーザーさんに何か伝えたい事がある?」 「?」 「死に切っていないあたしなら、まだ体を動かせるかも知れない。 もし貴方が良ければ、伝えるわ。貴方の言葉を」 「………………」 暫く俯き、考え込むトリッシュ。 やがて顔を上げ、こう言った。 「有難う。御願いして良い?」 「えぇ。なんて伝えれば良いのかしら?」 そしてあたしは、トリッシュから受け取った言葉を伝える為、動かないはずの体を動かす為に体の中に残る僅かな力を注ぎ込んだ。 ―――シーザー。 ―――私の為に、今まで有難う。 ―――これからは貴方の為に、未だ失っていない貴方の大切な人達の為に戦って。 ―――もう、目を曇らせないで。 ―――シーザー。 ―――本当に、本当に有難う。 「徐倫。有難う。もう思い残す事は無いわ」 「貴方はこれからどうするの?」 「後は彼等に任せて………」 そう言ってトリッシュは、遠い目で天の更に上を見つめ… 「………ね」 あたしはトリッシュの言わん事を理解した。    “いきましょう” 「……そうね」 あたしの返事を受け、優しく微笑んだトリッシュは、あたし達からそっと離れ ………………昇っていった。 「………………」 アナスイと二人で見送る。そして、トリッシュが去ってしまってから、あたしはアナスイに向き直った。 「さあ、アナスイ。あたし達も行きましょうか」 「行くって?トリッシュを追いかけるのか?」 あたしの言ってる事の要領を得られないらしく、キョトンと聞き返すアナスイ。 「そうね…言い方が悪かったわ。“戻りましょう”」 そんなアナスイに、あたしは言い直す。 「だから行くとか戻るとか、一体どこへ?“ココ”の更に先に、行く場所なんてあるのかい?」 「ええ、あるわ。あたし達は…」 言いながらアナスイへ右手を差し出す。 「…そうなるべきだった所に…」 あたしの言葉に一瞬躊躇い、アナスイは伸ばした手を止める。 『“そうなるべきと所”はこの世界にもあるのだろうか』そんな疑問がよぎったのだろう。 「…戻るだけなのよ」 それでも最後まで言葉をつむぐあたしに、アナスイも思い直したのか、笑顔であたしの手を握り返す。 「元に戻るだけ…」 二人で上、今より更に高い天を見上げる。 まだ“下”でも気になるのだろうか、思いとどまっている人も居るようだ。 でも、あたし達二人には、もう関係が無かった。 「ただ、元に…」 二人。しっかりと手を握り合い、あたし達は――― あたし達の魂は――― ………昇って行った。  * * * 「…貴様、徐倫の仲間か」 女性の最後の言葉を聴き終え、男が俺に向かって話しかける。 が、俺はそんな事を気にする暇は無い。 今の女性の言葉。 俺には解っていた。 あれは徐倫という女性の言葉ではない。 今のはトリッシュが俺に向けて伝えた言葉だ。 詳しい事は解らない。 が、トリッシュは、俺に目を曇らせるなと、有難うと、俺に最後の言葉を託したんだ。 トリッシュ…。 「…解ったよ」 「?」 恐らく男の言葉の返事になっていないからだろう、男は俺の言ってる事が意味不明とばかりに首を傾げる。 だが、俺はトリッシュの伝えようとしている事を理解した。 目を曇らせて、このゲームに乗るなと。 本当の意味で、大切な者を護れと。 トリッシュはそれを、奇跡を起こしてまで俺に伝えた。 そこまでされたら、応えてやらなきゃな。 今は目の前の外道を………………斃す!!! トリッシュの仇を討つ為、そして大切な人達を護る為に!!!  * * * …目つきが変わった。 目の前の、シーザーとかいう男の目は、さっきまで我を失っているような目だった。 が、あの声を聴いてから、まるで自我を取り戻したかのように目に光が宿る。 …ジョルノ・ジョバーナやブローノ・ブチャラティのような光を。 徐倫の遺言の所為か。 何故か知らないが、生理的に嫌悪する響きだった。 まるで、徐倫の言葉では無いような…。 まあいい、今は目の前の男を殺すだけだ。 この手の目をする相手は厄介だと、今までの経験が告げている。 「貴様には、死んで貰う」 男――シーザーが一言、俺に向けてそう言う。 「トリッシュの仇、か?」 「それだけじゃねぇ。トリッシュは俺を護って死んで行った。 俺も大切なものを護る為、貴様のような外道をのさばらせない為に命を賭ける位の事をしないと、 カッコ悪くてあの世にも行けねぇからな。 あの世についた途端、俺の女神にまたエルボーを喰らっちまう」 「………フン」 この男、シーザーのスタンド能力が何か解らないのは不気味だが、 我がキング・クリムゾンの前には無力。 一撃で葬ってくれる。 「行くぞ!!!」 「来い!!!」  * * * そしてシーザーとディアボロの死闘は始まった。 命を賭した勝負の末、最後に立っているのは、果たして…。 【F-3とG-3の境にある住居(F-3)/1日目/夕方】 【シーザー・アントニオ・ツェペリ】 [能力]:波紋法 [時間軸]:ゲスラーのホテルへ突入直後 [状態]:健康。決意による精神力の安定 [装備]:無し [道具]:支給品一式。伝書鳩サヴェジ・ガーデン(現在リサリサの元へ飛行中)。専用の封筒残り6枚(使い捨て)。 [思考・状況]: 1)目の前の男を、何としても倒す! 2)トリッシュの言葉を受け取った以上、ゲームには乗らない。 3)C-4に向かい、リサリサ先生と合流 4)トリッシュとJOJOを生き返らせる為の方法を、リサリサ先生と相談 [補足1]: シーザーが仲間(の可能性あり)と認識している人間は、 ジョセフ、リサリサ、シュトロハイム、祖父ツェペリ、仗助、億泰、康一、露伴、噴上 保留にしている人物はDIO、ワムウ、ジョージ(シュトロハイムから聴きました)、仗助(JOJO殺害容疑) です。 【サヴェジ・ガーデン(支給品)】 サヴェジ・ガーデンは専用の封筒の宛名欄に書かれた人物に手紙を届けます。 手紙を届けた後送り主の下に戻ってくるかどうかも封筒に書く事によって指定可能です。 “手紙を届ける事”のみに関しては、天候その他どんな不測の事態にも影響を受けません。 手紙を送る事が出来る人物は此のゲームの参加者のみであり、同時に複数の人物に手紙を送る事は出来ません。 郵送時間は場所に因りますが封筒には小物程度なら何でも入ります。 首輪を探知し相手の下へ向かう為、届け先の相手が死んでいても手紙を届けます。 首輪が爆発している場合は、手紙を届けません(届け主の下から飛び立とうとしません)。 [補足]: 1)サヴェジ・ガーデンは現在リサリサの首輪を探知して飛行中。到着迄目算5~10分程度 2)封筒使用状況:使用済5枚、使用中1枚(リサリサ宛)、残り4枚(サヴェジ・ガーデンに仕込み) 【F-3とG-3の境にある住居(F-3)/1日目/夕方】 【ディアボロ・ドッピオ(現在ディアボロ)】 [スタンド]:『キング・クリムゾン』 [時間軸]:リゾットに勝利後、ローマへ向かう途中 [状態]:無傷 [装備]:DIO様の投げナイフ、ミスタの拳銃 [道具]:支給品一式×3 [思考・状況](ディアボロの思考): 1)シーザーの殺害 2)ドッピオをどうする?(対処法が思い付くまでディアボロのままで居る予定) 3)ブチャラティ、ナランチャ、ポルナレフ、リサリサ、エルメェス、承太郎の始末。 4)支配される者の探索 5)荒木の打倒。その後自分が支配者となる。 &color(red){【空条徐倫 死亡】} *投下順で読む [[前へ>仇敵(前編)~声~]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>享受]] *時系列順で読む [[前へ>仇敵(前編)~声~]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>享受]] *キャラを追って読む |107:[[仇敵(前編)~声~]]|シーザー|116:[[Io non sono solitario.(前編)]]| |107:[[仇敵(前編)~声~]]|空条徐倫|| |107:[[仇敵(前編)~声~]]|ディアボロ|116:[[Io non sono solitario.(前編)]]|

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