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「輪廻転生」(2007/08/31 (金) 08:31:21) の最新版変更点
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ここは・・・・・・どこだろう。
あたしは確か、ドッピオの野郎に腹をブチ抜かれたはずなのに。
なんで意識があるのかな?
―――ああ、そうじゃあなかった。
“あたしの体が眼下にある”。
やっぱりあたしは死んじゃったんだ。今は・・・あたしの魂が空に昇って行ってるところ・・・ってとこかな。
「なんてこった・・・・・・君も来てしまったのか・・・」
背後から声をかけられてあたしが振り向く。
そこには・・・命がけであたしを守ってくれた、最愛の人――の魂――が悲しげな顔でこっちを見ていた。
「うん・・・ごめんね。あなたが・・・アナスイが命がけで守ってくれたのにね。
しかも・・・あたし、あなたの体を・・・―――」
そう言いかけると彼は左手を前に出してあたしが続けるのを遮った。
「いいんだ。いいんだよ徐倫。それに・・・“ここ”ではもうそんなこと関係ないさ。ホラ」
アナスイが言うと同時に伸ばした手の先を見てあたしは驚いた。
こうやって話してる間にどこまで“昇って”来たかはわからないけど、そこには―――
そこには、この世界に放り込まれた人たちが――人たちの魂が――いた。
みんなは一人だったり、誰かと一緒だったりして、遠くにいる人、近くにいる人。それも様々だった。
でもみんなどこか穏やかな表情で、そう・・・母親と会話する息子のようにやすらいだ顔をしている。
そして・・・その身体は傷ひとつない綺麗なものだった。あたしの穴が開いているはずの腹もすっかり綺麗に治っている。魂だから“治っている”という表現で良いのかどうかはわからないけど・・・
「これは・・・こんなにたくさんの人が・・・」
そう言いかけるあたしをまたアナスイが遮った。
「そう。こんな世界に放り込まれてからまだまる一日も経ってないのにな・・・
そして・・・もう君も気付いたんじゃあないのか?」
――そう。気付いていた。
なんでかは知らないけど、あたしは“出会った事もない人間を知っている”。
その人がもともとどういう世界で生きていたのか、どういう生き様だったのか・・・
なんて言うか――頭じゃあなく精神が・・・心が、覚えてる。そんな感じがする。
皮肉なことに、あたしが倒そうとしていたホワイトスネイクの正体が神父だった事もここに来てやっとわかった。
これから出会うべきだった仲間たち―F・Fやウェザー―も、まさかこんな所で出会うなんて・・・
彼らの方に行こうとした、そのあたしの体をアナスイは手を掴んで止める。
「あいつらのところには行くことは出来ない。話すことも出来ない・・・」
「えっ・・・どうして?」
アナスイはゆっくりとあたしの質問に答えた。
「あいつらと俺達とじゃあ、“ここ”に来た時間も、場所も、一緒に来た相手も違う。
俺はたまたまここに来た時間や場所が君と近かったからこうして会話できる。しかし・・・・・・
あいつらとは今はこうして一緒にいるが・・・会話したり、近づいたりは決して出来ない。」
アナスイの答えは、どことなく分かっていた事だった。それは、“この世とあの世との境目では絶対に後ろを振り返ってはいけない”って事と同じような“ルール”なんだろう。
ひと呼吸おいて――と言っても魂だから呼吸も何もないのだけれど・・・――アナスイに言葉を返す。
「そう・・・でも、いいわ。会話ができなくてもみんな晴れ晴れとした顔をしてる。それは見ればわかるもの。」
そう言ってまわりをぐるっと見回してみる。周りの人の何人かはあたし達の方を見てるのがわかる。
あたしもそんな皆の顔を見ているうちにどことなく、アナスイへの謝罪や出会うべきだった仲間たちへの想いも薄れて穏やかな気分になっていた。
『―――貴様アアアァァァ!!!』
いきなりそんな咆哮が“耳元”で聞こえたからあたしは驚いて“下”をみた。
もう随分下の方だ。霞んでいてよくわからない。でも、誰かがあたしの“身体”の近くで叫んでいる。
誰だろう、と目を凝らして見ていたがよくわからない。
「――・・・大丈夫よ。彼なら心配ないわ。」
アナスイでもあたし自身でもない声に驚いて声のした方を向く。
それは決して近くではなかった。むしろ、かなり遠かった。近づくことのできない距離にいる相手の声だった。
アナスイの言う通りの“ルール”なら聞こえるはずのない声。
その声の持ち主は―――トリッシュ・ウナ。ピンクの髪の毛が美しい少女だった。
「大丈夫。彼ならきっと『ボス』が相手でも大丈夫。
・・・あなたの身体の近くで叫んでいるのはシーザー。私を、守ってくれた・・・大切な人。」
そう続けるトリッシュにあたしは思わず返す。
「えッ!ちょっと待ってッ!どういう事!?ボスってッ!?彼は・・・シーザー、さん、は大丈夫なのッ?」
彼女にあたしの声は聞こえているのだろうか・・・?それはあたしには分らなかった。
あたしの挙動を見ていた彼女が一方的に声をかけてきたのか。彼女はあたしに声が届いていることを知っているのか・・・?
それとも――あたしの“近く”にシーザーがいる事をここからずっと“見て”いたのだろうか・・・?
あたしの質問にトリッシュは答えずに小さく微笑んだ。
「大丈夫。彼なら心配ない。あとは――彼にまかせて・・・行きましょう」
そう言って遠い目で空の・・・天の、さらに上の方を見つめるトリッシュにあたしも小さく答えた。
「・・・・・・・・・そうね。」
先に“行って”しまったトリッシュを見送りアナスイの方に向きなおる。
「さあ、アナスイ。あたしたちも行きましょ。」
「行くって・・・どこへ?」
キョトンとして答えたアナスイにあたしは、
「そうね・・・言い方が悪かったわ。戻りましょう。」
と言い直した。
「だから・・・行くとか戻るとか、一体どこへ?“この先”にさらに行く場所なんてあるのかい?」
「ええ。あるわ。私たちは・・・」
言いながらアナスイの方に右手を伸ばす。
「――そうなるべきだったところに・・・」
あたしの言葉に一瞬ためらい、アナスイは伸ばした手を止めた。
“そうなるべきだったところ”はこの世界にも存在するのだろうか・・・そんな疑問が頭をよぎったのだろう。
「・・・戻るだけなのよ」
でも、アナスイも思い直したのか、すぐに笑顔であたしの手を握り返す。
「元に戻るだけ・・・・・・」
二人で上を見上げる。
他の多くの人たちはまだ“下”に気にかかる人がいるのだろうか、思いとどまっている人もいる。
でも・・・・・・それもあたしたち二人には、もう関係なかった。
「ただ元に・・・」
二人で、しっかりと手を握り合って、あたしたちは―――
あたしたちの魂は、天に昇っていった。
【空条徐倫 死亡】
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