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『誤解』と『信頼』」(2007/09/11 (火) 21:47:36) の最新版変更点

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『誰にも出会いたくない』。 その一心で延々と北に進み続けた結果、この俺、噴上裕也はとある場所に辿り着いた。 杜王町北東の別荘地帯。時刻は午後三時頃だろうか? 辺りは静寂が支配し、何者の姿も見えない。 立ち止まり、幾度も、幾度も深呼吸する。 この一日間で、俺は心身ともに疲弊し切っていた。 だが――少し思考を巡らせて見れば、自然に笑いが零れ出して来る。 この状況。食らったダメージが大きければ大きい程、『養分』を求め強力になる俺のスタンド、 『ハイウェイ・スター』は絶好調だろうぜ。 俺は一つの屋敷に歩み寄った。 立ち並ぶ家々の中で、その古風の屋敷だけが『奇妙な』臭いを発散していたからだ。 いや待てよ、この家は……! いつか見たその屋敷の記憶を探り出し、遂に俺は思い出した。 こいつは、『吉良吉影』の家じゃねえか! 間違いねえ。以前、仗助の野郎に教えられた屋敷だ。 まさか、吉良が潜んでるなんて事は……。 俺は咄嗟にその場から逃げ出しそうになったが、落ち着いて考え直す。 そういえば、奴は第一放送前に死んでいたのだ。 誰が殺ったのか知らないが、この街に潜み続けていた恐るべき殺人鬼を始末したのが 凶悪な『スタンド』の持ち主である事は確実。 そんな奴とは、絶対に出会いたくねえな。 鼻から外気を吸い込む。慎重に、空気中の成分を嗅ぎ分ける。 ……それにしても、奇妙な臭いだ。 吉良邸の内部に発生源がある事は分かっている。恐らく人間だろう。 初めて出会う臭いの筈なのに、いつかどこかで嗅いだような……妙な違和感のある臭い。 屋敷に侵入するのは、非常に危険な行為である事は分かっていた。 だが、その不思議な臭いに導かれるかのように、俺の足が勝手に動きやがる。 誰が襲って来ようが、始末してやれば良い、と言う楽観的な考えが心の奥底にあったのかも知れない。 玄関を潜ると、内部は酷い有様だった。 滅茶苦茶に荒らされ、まるで爆弾でも炸裂したかの様だ。 焦げ臭さが鼻に付く。やはり火薬の類が使われたらしい。 何者かが屋敷に侵入し、戦闘した結果なのだろう。 注意深く周囲を観察し、嗅覚を行使する。 例の臭いは一層濃くなったが、視界には何者の姿も無い。 屋敷の奥を探索させる為に、俺は『ハイウェイ・スター』を発現させた。 ……その時だった。 「誰か……来ているな」 何者かの声。 何故だろうか、酷く柔からかな語調に聞こえた。 「だ、誰だッ」 俺は反射的に『ハイウェイ・スター』を臨戦態勢にする。 吉良だろうが誰だろうが、来やがれ。速攻で『養分』奪って始末してやるぜ……! ――だが、攻撃どころかその存在に気付く事さえ出来ない内に、 何時の間にだろうか、俺の目の前には一人の男が屹立していた。 何の気配も無かった筈のその場所に、まるで最初から居たかのように。 愕然とする俺に男は微笑み、穏やかな様子で語り掛けて来た。 「……なんて『焦燥』した表情なんだろう。  酷い……とても酷い事があったのだろうな。  私と戦う必要は無い……私は君の味方になりたいんだ。  出来る事ならば、話をしたい。向こうの部屋に来てくれないかな」 俺は、その男に言われるがままに付いて行った。 奴の顔を見て、一目で理解した。こいつは敵じゃない。 こいつは、俺のような人間を重んじる男だ。  * * * 「偽者……だと?」 空条承太郎は、モハメド・アヴドゥルを前に、訝しげな表情で呟いた。 場所は杜王町の東部を南北に走る幹線道路。 炎を操る占術師は数メートル先で、承太郎達の側を向いて佇んでいる。 肩を負傷しているが、スタンドは自由に動かせるだろう。 『星の白金』を叩き込むにはもう少しだけ距離が必要だが、眼前の男は即座に戦闘に応じる気は無いらしい。 平然とした態度で、アヴドゥルは自分の見解を語り始めた。 「その通りだ……承太郎。お前は、結局私が体験している幻覚に過ぎない。  私を倒す為に、荒木に作り出された偽者の人形。そうだろう?」 相手の揺ぎ無い態度に、承太郎は戦慄した。 確かに異常な事態だが、まさか彼がこのような歪んだ思考を構築していたとは。 「……何を言ってやがる。俺は、本物だ。死んだジジイも、花京院も――」 アヴドゥルは苦笑し、承太郎の言葉を遮った。 「ハッ、もう良い。どうせ、そう答えるだろうと思っていたよ。  私を始末しようと企む荒木のスタンドの一部であるお前が、真実を言う筈が無いだろうが」 「お前は大きな『誤解』をしている、アヴドゥル」 承太郎は即座に反論する。 この戦場の街で闘い続けた末に、如何なる捩くれた結論に辿り着いていたとしても、 必ずこの男の暴走は止められる。彼はそう信じていた。 アヴドゥルはエジプトへの旅路で共に闘った仲間だ。理解してくれる筈だ、と。 「俺達は、偽者なんかじゃあねえ。  『ゲーム』の参加者も、この街も――確かに信じ難いが――全て本物の、実体だ」 ……しかし、その『信頼』こそが彼の心の間隙であり、命取りだったのだ。 既にモハメド・アヴドゥルの、哀れなまでの『誤解』は、 承太郎の想像を遥かに超えるまでに生長していたのだ。 「アヴドゥル。冷静に、俺の話を良く聞いて――」 パチリ。 指が鳴らされ発生した良く響く音が、呼び掛けを再度塞ぐ。 それと同時に、承太郎の全身から鮮烈な炎が現出する。 「何ィッ!」 轟々と燃え盛る火炎が、承太郎の五体を包み込む。 「そんな嘘に騙されるとでも思っていたのかッ!  隙だらけだぞッ! この偽者がッ!」 勝ち誇った笑顔を露にし、アヴドゥルは『魔術師の赤』より追撃を加える。 嘴より伸び上がった灼熱の舌が、承太郎を覆い隠す猛火に注ぎ込まれる。 「既に発火の準備を仕掛けていた事に気が付かなかったのかッこの阿呆がッ!  『誤解』だとォッ!? 笑わせるのも大概にしろッ!  本物の承太郎は、DIOの館に居るのだッ! それが唯一の真実ッ!  抜け抜けと、凝った芝居を行いおってッ!  燃え尽きろォォッ! 『魔術師の赤』ッ!」 モハメド・アヴドゥルは、止めの一撃を食らわせようと、『魔術師の赤』の脚を振り上げ――。  * * * 屋敷に潜んでいたその男は、『DIO』と名乗った。 その名に俺は妙な既視感を覚えたが、いつ誰に語られた名だったかどうしても思い出せない。 取り敢えず俺は状況に従う事にした。DIOは頼れる人間だ――俺の直感はそう判断していた。 DIOは紙とペンを俺に渡すと、荒木による盗聴の可能性を吹き込んで来た。 俺は驚愕した――盗聴されていると言う事実に、では無く、 その可能性を一度も考慮していなかった自分の馬鹿さと、DIOの賢さに。 俺達は筆談で意見を交換し合った。 我々が殺し合う必要は無い。そう語るDIOに、俺は当然反論した。 これは殺戮ゲームだ。生き残った一人だけが助かるのだ。暫定的に協力し合おうが、 最後に救われるのは、結局一人だけなのだ――と。 しかしDIOは、再び驚くべき話を俺に持ち掛けた。 『荒木を倒す策がある』。彼は確かにそう書いたのだ。 そんな馬鹿な、と思った。何かが妙なこの杜王町に五十人近い参加者を呼び寄せて殺し合いを強制させ、 高みの見物を続けているあの男を倒す方法だって? 少々、信じ難い。 『どんな方法なんだ?』 『残念ながら、それはまだ教える事が出来ない。  私のスタンド能力が必要、とだけ言って置こう』 『何故、教えられない?』 俺の当然の疑問に、DIOは微笑みながら答えた。 『いいかい噴上。この現状において、私が一番大切にしたいものは一体何だと思う……?  答えは『信頼』だ。人が人を選ぶに当たって最も大切なものは『信頼』なんだ。  君は強い。スタンド能力も中々のものだ。だが、残念ながら『信頼』が足りていない』 DIOはまだ俺を信用していない、と言う事か。 敵かも知れない相手に秘密は吹き込めない。 俺が十分に『信頼』出来る仲間だと認識される必要がある訳だ。 『どうすれば、DIOの『信頼』を得られる?』 『簡単な事さ……君が私への『信頼』を証明してくれれば良い。  具体的に教えようか?  何人かの――少なくとも一人の――参加者が、南の方角からこの屋敷に向かっている。  奴らの目的は只一つ。私の殺害だ』 DIOを殺そうとしている連中? 何者だろう? 俺が知っている人間だろうか? 『何故そいつらはDIOを狙うんだ?』 『彼らは私の存在が許せないらしい。馬鹿な連中だよ。  私が死ねば『策』も実行不能になると言うのに。  最後には殺し合い、自分の命を危険に晒す事になるのに……ね』 『そいつらを、始末すれば良いのか?』 『いや、それが最善だが……無理強いはしないさ。  返り討ちにされたら、それこそお終いだからな。  私が君に頼みたいのは『護衛』だ。  南から来る連中を、君のスタンドで襲撃し、追い払って欲しいんだ。  第三放送……日が沈むまでで良い。  そうすれば、私が動く準備が整うから』 『第三放送まで……だな』 『奴らを追い払えたなら、この屋敷に戻って来てくれ。  放送の内容にも拠るが……私の『策』を教えよう』 屋敷の外に出る準備を始めようとした時に、 俺は以前に『DIO』の名を何処で聞いたかを、やっと思い出した。 『そうだ、DIO。最後に一つ、訊きたい事がある』 『何だい、噴上』 もう思い出したくも無いアイツが言っていたのだ。 ……『自分は、DIOの血を受け継いだ息子である』、と。 『病院で、リキエルと言う男と出会った。  奴は、自分はDIOの息子だと言っていた。本当なのか?』 解答は、実に単純なものだった。 DIOは、おどけた様な表情で俺を見た。 『いや、全く知らない名前だ。  その男、イカれてるんじゃあないか?』 やはり。リキエルは単なる嘘吐きの狂人だったのだ。 何故そんな嘘を付く必要があったのか少々疑問だが、奴の事はもうどうでもいい。 願わくば、次の放送で死んでいて欲しい。 『じゃあ、行って来るぜ』 『君の健闘を祈るよ』 俺は、これからはDIOに従い行動する事にした。 この異常事態に付いて行けない俺に取って、彼は非常に頼もしい存在だった。 何故だろうか? 彼の為なら何の惜し気も無く、この命を掛けられる――そう思う。 そして、俺は理解していた。 DIOの放つ臭いの奇妙さの正体は……『カリスマ』なのだ、と。  * * * 「――オラオラオラオラオラオラァ、オラァッ!!」 一つ一つが激烈な威力を誇る拳の雨を直に受けたモハメド・アヴドゥルの身体は、 宙にぶわりと浮き上がり、直後、近隣のビルの壁に激突した。 背部から壁に減り込み、コンクリートの破片が周囲に飛散する。 刹那で終結した戦い。一瞬の決着。 この対決の片割れの少年は、既に己のスタンドヴィジョンを消し、 涼しげな眼で敵の最期を見つめているだけで―― 学生帽を目深に被り直し、ふう、と溜息。そして一言。 「やれやれだぜ」 空条承太郎が、自分の攻撃によって生じた粉塵の中に歩み寄り、アヴドゥルの様子を確認する。 口からどす黒い血を吐いているが、呼吸音は聞こえる。死んではいない。 「次に会った時に、まだ馬鹿な事をホザいてるのなら……お前を、殺すぜ」 もう動かない事を確認し終えると、承太郎は気を失ったアヴドゥルから離れた。 「止めを、刺さないのか」 両者より距離を置き、決闘を観測していたジョンガリ・Aが訊く。 承太郎は即答した。 「お前から見れば、只の敵なんだろうが……これでも奴は俺の大切な仲間の一人。  共にエジプトまで闘い続けて来た、同志だ。  ……それよりも」 次の瞬間、承太郎から発散された怒気を肌で感じ取り、盲目の狙撃手は息を飲み込んだ。 獣の咆哮の如き荒々しく、刺々しく、身の回りのありとあらゆる全てを喰い尽くしてしまうかのような――殺気。 湧き上がる溶岩の如きそのエネルギーは、 立った今、圧倒的な馬力を見せ付けたスタンド『星の白金』の持ち主に相応しいと言えた。 「俺には、倒さなきゃならねえ真の『敵』が居る。さっさと行くぜ」 ジョンガリは認識していた――アヴドゥルの火炎攻撃を受けた際、承太郎の位置は間違い無く『ズレた』。 “停止した時の中を移動し”、『星の白金』の射程距離内に入れ、敵にラッシュを叩き込んだのだ。 何時の間にやら路地に投げ捨てられていた彼の学ランが、時が停止した何よりもの証拠。 停止時間中に脱ぎ捨て、全身を包む炎を弱めたらしい。 立派な見掛けだった学生服は、最早単なるコゲの塊に変質してしまっていた。 ……尤も、本人が自らの能力を自覚しているか否かは不明だった。 ジョンガリには、今の時間停止は、承太郎の無自覚な行使に思えてならない。 憎き仇敵である空条承太郎が過去のどの時点からこの街に招かれたのか、 ジョンガリにはこれまで少々不明瞭だった。しかし、今の闘いで一つの事実がハッキリした。 奴がこの街に招かれたのは、少なくとも、己が主DIOのみに自由が許された『世界』に――入り込める時点。 停止した世界に巻き込み、ただただ蹂躙し破滅に追い込む事は難しいであろう、時点。 そして間違い無く、承太郎が今語った『敵』とは――。 『乗って下さい、ジョンガリ・A様』 これまで何処に居たのか、自立型スタンドのヨーヨーマッがジョンガリに呼び掛ける。 承太郎は既にバイクに乗り込んでいた。増幅するエンジン音。 「今、行く」 簡潔に答え、ジョンガリ・Aは大型バイクの後部に乗り込み―― ――彼の意識は遥か彼方に飛んだ。 「どうした?」 気配を背中から察していたのだろう、承太郎が振り向き訊いて来る。 ジョンガリ・Aは、呟く様に、正直に解答した。 「……何かが……今、動いた。北北東の方角……三百メートルの距離。  来るぞ……真っ直ぐ、飛ぶ様に近づいて来る。これは……“速い”」  * * * 南に進み、俺が発見した敵は二人。 バイクに乗り込み、北に発進しようとしていた。目的を持って、北の『何か』に向かおうとしているのだ。 奴らが、DIOの語っていた『敵』だろう。 DIOと対立する、DIOを殺そうとする『敵』。 俺は【C-7】に位置する住居の二階で奴らを見付けると、 『ハイウェイ・スター』を、奴らの方向に全速力で差し向けた。 この一帯は市街地から離れている為に視界は悪くない。 スタンドの遠隔操作には持って来いだし、奴らを見つけるのにも時間は掛からなかった。 そしてあの『敵』共には、この俺――本体の場所は分からない。一方的にいたぶれるって訳だ。 さらに奴らの『臭い』さえ記憶すれば、俺の『ハイウェイ・スター』は地の果てまで追い続けるッ! 思いっ切り吸収させてもらうぜェ、『養分』をッ! 生き延びられるのなら……死なずに済むのなら、 どんな事でもやってやるさ。あんたを『信頼』するぜ……DIO。  * * * フンッ! 噴上裕也。 奴から血液を奪い、我が飢えた喉を潤す。一瞬それも考えたが。 南から接近しているジョースターを夜まで邪魔する為に、暫く踊らせて置くのが良いだろう。 一目で直ぐ分かったさ、奴は私をとても『信頼』している。信用し切っている。 あの従順で愚鈍な『犬』を、使わぬ手は無い。 もう少し奴から情報を得たかったと言うのが本音だが、 ジョースターが私の位置を感じ取り、近づいている。細かい話をする時間は無かった。 あの阿呆が帰って来たら、我が『世界』で葬ってやるか。或いは、もう暫くの間遊んでやろうか。 何にせよ。夜が訪れさえすれば、私はこの狭い屋敷から解き放たれ、完璧なる、無敵の『帝王』となる。 全ての者がこのDIOに跪き、このDIOに屈服するのだ。 ジョースターよ。貴様ら眷族は一人残らず根絶やしにしてやる。必ずだ。  * * * 『失敗、だったねっ』 寄生スタンド『チープ・トリック』が今の本体に呟き掛けるが、反応は無い。 モハメド・アヴドゥルは『星の白金』の猛攻を叩き込まれ、 ビルの壁面に背中を減り込ませたままの姿勢で気絶していた。 『ちぇっ……どうせくたばるのなら、誰かに背中を見せてから死んでよねっ……!  僕を巻き添えなんかには、絶対にするんじゃねーよっ……!』 恐るべき自立型スタンドは、口調に怒りを含めてぶつぶつとぼやき続けた。  * * * 陽は西の地平線に近づき、空は赤みを刺しつつある。 主催者荒木による第三の放送まで、残り二時間。 【別荘地帯への道(D-7)/1日目/夕方】 【波紋の達人と幽波紋の達人 B班】 【空条承太郎】 [スタンド]:『スタープラチナ』 [時間軸]:ロードローラーが出て来る直前 [状態]:全身に軽い火傷 [装備]:無し(学ランを脱いでいる) [道具]:支給品一式 [思考・状況]: 1)打倒DIO。 2)北から現れた敵に警戒。 3)DIOを斃した後、カフェ・ドゥ・マゴに戻る。(第四放送になりそうな時は病院へ) 4)打倒荒木。 5)アヴドゥルが再度自分に襲い掛かった際には殺害する。 [補足1]:承太郎はマンハッタン・トランスファーを『気流を読んで情報収集する能力』と思っています。 【ヨーヨーマッ(支給品)】 [現在の主人]:空条承太郎 [装備]:マスク [持ち物]:拡声器、マンハッタン・トランスファー(腹の中) [任務]: 1)承太郎を“助ける” [補足] 1)ヨーヨーマッは攻撃出来ない。能力も完全に封じられている(主人がヨーヨーマッ自体を利用して攻撃というの は可能かも知れない)。 2)主人の命令には絶対服従、しかし命令を曲解して受け取る事もあるかも知れない(ヨーヨーマッを殺すような 命令には従えない)。 3)ヨーヨーマッは常に主人の半径20m以内に居なければならない。 4)ヨーヨーマッの主人が死んだ時、又はヨーヨーマッが規則を破ったならヨーヨーマッは消滅。 5)主人変更の命令があれば主人は変わる。但し変更対称人物の同意が必要。 6)主人変更の命令をされた時、次の主人がヨーヨーマッの視界に入っていなければ命令は無効化される。 【ジョンガリ・A】 [スタンド]:『マンハッタン・トランスファー』 [時間軸]:徐倫にオラオラされた直後 [状態]:胴にF・F弾の傷 [装備]:無し [道具]:『ライク・ア・ヴァージン』子機(右手首装着) [思考・状況]: 1)承太郎と共にDIO様の下へ向かい、共に承太郎を殺す。 2)北から現れた敵に警戒。 3)マンハッタン・トランスファーをどうしよう。 【モハメド・アヴドゥル】 [スタンド]:『魔術師の赤』 [時間軸]:DIOの館突入前 [状態]:気絶。胴体にダメージ。両肩にダメージ。両腕が辛うじて動かせる程度 [装備]:背中に『チープ・トリック』 [道具]:支給品一式(食糧のみ2人分) [思考・状況]: 1)目に付いた者は皆倒す。 2)打倒荒木。荒木の思い通りには動かない。 3)チープ・トリックをどうにかしたい。 4)噴上裕也を斃す(余り重要ではない)。 5)花京院の言った言葉が少し気になっている。 [補足1]:アヴドゥルはチープ・トリックの存在に気付いています。 [補足2]:アヴドゥルはマンハッタン・トランスファーを『気流を読んで情報収集する能力』と思っています。 【別荘地帯近くの住居(C-7)/一日目/夕方】 【噴上裕也】 [スタンド]:『ハイウェイ・スター』 [時間軸]:四部終了後 [状態]:無傷。疲労。全身に返り血。 [装備]:無し [道具]:無し [思考]: 1)DIOに服従心。南の敵を追い払い、可能なら始末する。 2)第三放送後に吉良の屋敷に戻り、DIOに『荒木を倒す方法』を聞く。 3)死への不安は和らぎつつある。 [補足1]:噴上はDIOの臭いを記憶しました。 【吉良吉影の家(C-8)/1日目/夕方】 【DIO】 [スタンド]:『ザ・ワールド』 [時間軸]:ポルナレフ達対ヴァニラ・アイスの直前 [状態]:完全回復 [装備]:包丁を1本にナイフ2本。フォーク1本 [道具]:支給品一式(ただしランダムアイテムは無し) [思考・状況] 1)放送を待つ。夜までは『大人しく』ここにいる。 2)噴上を利用し、南のジョースターの気配(承太郎)を始末する。 3)ナランチャを利用する。第三放送から第四放送までの間に杜王グランドホテルに行き、プッチ達と合流するつ もり。 4)もしナランチャがプッチ達と共にホテルにきた時、ザ・ワールドで暗殺する。 5)優勝してアラキを始末したい。 6)そのためには帝王の誇りを傷つける首輪の解除は必須ッ! 7)ワムウ(柱の男の肉体が欲しい)、ジョースター家の連中、首輪解除に役立つ者を探す。 8)噴上が戻った際に、彼を始末するかどうか検討中。 ※【D-7】に『黒コゲの学ラン』が放置されています。 *投下順で読む [[前へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]] *時系列順で読む [[前へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]] *キャラを追って読む |98:[[因果]]|空条承太郎|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |98:[[因果]]|ジョンガリ・A|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |98:[[因果]]|モハメド・アヴドゥル|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |94:[[《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その①]]|噴上裕也|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |80:[[飢エタ野犬ノ慟哭]]|DIO|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]|
『誰にも出会いたくない』。 その一心で延々と北に進み続けた結果、この俺、噴上裕也はとある場所に辿り着いた。 杜王町北東の別荘地帯。時刻は午後三時頃だろうか? 辺りは静寂が支配し、何者の姿も見えない。 立ち止まり、幾度も、幾度も深呼吸する。 この一日間で、俺は心身ともに疲弊し切っていた。 だが――少し思考を巡らせて見れば、自然に笑いが零れ出して来る。 この状況。食らったダメージが大きければ大きい程、『養分』を求め強力になる俺のスタンド、 『ハイウェイ・スター』は絶好調だろうぜ。 俺は一つの屋敷に歩み寄った。 立ち並ぶ家々の中で、その古風の屋敷だけが『奇妙な』臭いを発散していたからだ。 いや待てよ、この家は……! いつか見たその屋敷の記憶を探り出し、遂に俺は思い出した。 こいつは、『吉良吉影』の家じゃねえか! 間違いねえ。以前、仗助の野郎に教えられた屋敷だ。 まさか、吉良が潜んでるなんて事は……。 俺は咄嗟にその場から逃げ出しそうになったが、落ち着いて考え直す。 そういえば、奴は第一放送前に死んでいたのだ。 誰が殺ったのか知らないが、この街に潜み続けていた恐るべき殺人鬼を始末したのが 凶悪な『スタンド』の持ち主である事は確実。 そんな奴とは、絶対に出会いたくねえな。 鼻から外気を吸い込む。慎重に、空気中の成分を嗅ぎ分ける。 ……それにしても、奇妙な臭いだ。 吉良邸の内部に発生源がある事は分かっている。恐らく人間だろう。 初めて出会う臭いの筈なのに、いつかどこかで嗅いだような……妙な違和感のある臭い。 屋敷に侵入するのは、非常に危険な行為である事は分かっていた。 だが、その不思議な臭いに導かれるかのように、俺の足が勝手に動きやがる。 誰が襲って来ようが、始末してやれば良い、と言う楽観的な考えが心の奥底にあったのかも知れない。 玄関を潜ると、内部は酷い有様だった。 滅茶苦茶に荒らされ、まるで爆弾でも炸裂したかの様だ。 焦げ臭さが鼻に付く。やはり火薬の類が使われたらしい。 何者かが屋敷に侵入し、戦闘した結果なのだろう。 注意深く周囲を観察し、嗅覚を行使する。 例の臭いは一層濃くなったが、視界には何者の姿も無い。 屋敷の奥を探索させる為に、俺は『ハイウェイ・スター』を発現させた。 ……その時だった。 「誰か……来ているな」 何者かの声。 何故だろうか、酷く柔からかな語調に聞こえた。 「だ、誰だッ」 俺は反射的に『ハイウェイ・スター』を臨戦態勢にする。 吉良だろうが誰だろうが、来やがれ。速攻で『養分』奪って始末してやるぜ……! ――だが、攻撃どころかその存在に気付く事さえ出来ない内に、 何時の間にだろうか、俺の目の前には一人の男が屹立していた。 何の気配も無かった筈のその場所に、まるで最初から居たかのように。 愕然とする俺に男は微笑み、穏やかな様子で語り掛けて来た。 「……なんて『焦燥』した表情なんだろう。  酷い……とても酷い事があったのだろうな。  私と戦う必要は無い……私は君の味方になりたいんだ。  出来る事ならば、話をしたい。向こうの部屋に来てくれないかな」 俺は、その男に言われるがままに付いて行った。 奴の顔を見て、一目で理解した。こいつは敵じゃない。 こいつは、俺のような人間を重んじる男だ。  * * * 「偽者……だと?」 空条承太郎は、モハメド・アヴドゥルを前に、訝しげな表情で呟いた。 場所は杜王町の東部を南北に走る幹線道路。 炎を操る占術師は数メートル先で、承太郎達の側を向いて佇んでいる。 肩を負傷しているが、スタンドは自由に動かせるだろう。 『星の白金』を叩き込むにはもう少しだけ距離が必要だが、眼前の男は即座に戦闘に応じる気は無いらしい。 平然とした態度で、アヴドゥルは自分の見解を語り始めた。 「その通りだ……承太郎。お前は、結局私が体験している幻覚に過ぎない。  私を倒す為に、荒木に作り出された偽者の人形。そうだろう?」 相手の揺ぎ無い態度に、承太郎は戦慄した。 確かに異常な事態だが、まさか彼がこのような歪んだ思考を構築していたとは。 「……何を言ってやがる。俺は、本物だ。死んだジジイも、花京院も――」 アヴドゥルは苦笑し、承太郎の言葉を遮った。 「ハッ、もう良い。どうせ、そう答えるだろうと思っていたよ。  私を始末しようと企む荒木のスタンドの一部であるお前が、真実を言う筈が無いだろうが」 「お前は大きな『誤解』をしている、アヴドゥル」 承太郎は即座に反論する。 この戦場の街で闘い続けた末に、如何なる捩くれた結論に辿り着いていたとしても、 必ずこの男の暴走は止められる。彼はそう信じていた。 アヴドゥルはエジプトへの旅路で共に闘った仲間だ。理解してくれる筈だ、と。 「俺達は、偽者なんかじゃあねえ。  『ゲーム』の参加者も、この街も――確かに信じ難いが――全て本物の、実体だ」 ……しかし、その『信頼』こそが彼の心の間隙であり、命取りだったのだ。 既にモハメド・アヴドゥルの、哀れなまでの『誤解』は、 承太郎の想像を遥かに超えるまでに生長していたのだ。 「アヴドゥル。冷静に、俺の話を良く聞いて――」 パチリ。 指が鳴らされ発生した良く響く音が、呼び掛けを再度塞ぐ。 それと同時に、承太郎の全身から鮮烈な炎が現出する。 「何ィッ!」 轟々と燃え盛る火炎が、承太郎の五体を包み込む。 「そんな嘘に騙されるとでも思っていたのかッ!  隙だらけだぞッ! この偽者がッ!」 勝ち誇った笑顔を露にし、アヴドゥルは『魔術師の赤』より追撃を加える。 嘴より伸び上がった灼熱の舌が、承太郎を覆い隠す猛火に注ぎ込まれる。 「既に発火の準備を仕掛けていた事に気が付かなかったのかッこの阿呆がッ!  『誤解』だとォッ!? 笑わせるのも大概にしろッ!  本物の承太郎は、DIOの館に居るのだッ! それが唯一の真実ッ!  抜け抜けと、凝った芝居を行いおってッ!  燃え尽きろォォッ! 『魔術師の赤』ッ!」 モハメド・アヴドゥルは、止めの一撃を食らわせようと、『魔術師の赤』の脚を振り上げ――。  * * * 屋敷に潜んでいたその男は、『DIO』と名乗った。 その名に俺は妙な既視感を覚えたが、いつ誰に語られた名だったかどうしても思い出せない。 取り敢えず俺は状況に従う事にした。DIOは頼れる人間だ――俺の直感はそう判断していた。 DIOは紙とペンを俺に渡すと、荒木による盗聴の可能性を吹き込んで来た。 俺は驚愕した――盗聴されていると言う事実に、では無く、 その可能性を一度も考慮していなかった自分の馬鹿さと、DIOの賢さに。 俺達は筆談で意見を交換し合った。 我々が殺し合う必要は無い。そう語るDIOに、俺は当然反論した。 これは殺戮ゲームだ。生き残った一人だけが助かるのだ。暫定的に協力し合おうが、 最後に救われるのは、結局一人だけなのだ――と。 しかしDIOは、再び驚くべき話を俺に持ち掛けた。 『荒木を倒す策がある』。彼は確かにそう書いたのだ。 そんな馬鹿な、と思った。何かが妙なこの杜王町に五十人近い参加者を呼び寄せて殺し合いを強制させ、 高みの見物を続けているあの男を倒す方法だって? 少々、信じ難い。 『どんな方法なんだ?』 『残念ながら、それはまだ教える事が出来ない。  私のスタンド能力が必要、とだけ言って置こう』 『何故、教えられない?』 俺の当然の疑問に、DIOは微笑みながら答えた。 『いいかい噴上。この現状において、私が一番大切にしたいものは一体何だと思う……?  答えは『信頼』だ。人が人を選ぶに当たって最も大切なものは『信頼』なんだ。  君は強い。スタンド能力も中々のものだ。だが、残念ながら『信頼』が足りていない』 DIOはまだ俺を信用していない、と言う事か。 敵かも知れない相手に秘密は吹き込めない。 俺が十分に『信頼』出来る仲間だと認識される必要がある訳だ。 『どうすれば、DIOの『信頼』を得られる?』 『簡単な事さ……君が私への『信頼』を証明してくれれば良い。  具体的に教えようか?  何人かの――少なくとも一人の――参加者が、南の方角からこの屋敷に向かっている。  奴らの目的は只一つ。私の殺害だ』 DIOを殺そうとしている連中? 何者だろう? 俺が知っている人間だろうか? 『何故そいつらはDIOを狙うんだ?』 『彼らは私の存在が許せないらしい。馬鹿な連中だよ。  私が死ねば『策』も実行不能になると言うのに。  最後には殺し合い、自分の命を危険に晒す事になるのに……ね』 『そいつらを、始末すれば良いのか?』 『いや、それが最善だが……無理強いはしないさ。  返り討ちにされたら、それこそお終いだからな。  私が君に頼みたいのは『護衛』だ。  南から来る連中を、君のスタンドで襲撃し、追い払って欲しいんだ。  第三放送……日が沈むまでで良い。  そうすれば、私が動く準備が整うから』 『第三放送まで……だな』 『奴らを追い払えたなら、この屋敷に戻って来てくれ。  放送の内容にも拠るが……私の『策』を教えよう』 屋敷の外に出る準備を始めようとした時に、 俺は以前に『DIO』の名を何処で聞いたかを、やっと思い出した。 『そうだ、DIO。最後に一つ、訊きたい事がある』 『何だい、噴上』 もう思い出したくも無いアイツが言っていたのだ。 ……『自分は、DIOの血を受け継いだ息子である』、と。 『病院で、リキエルと言う男と出会った。  奴は、自分はDIOの息子だと言っていた。本当なのか?』 解答は、実に単純なものだった。 DIOは、おどけた様な表情で俺を見た。 『いや、全く知らない名前だ。  その男、イカれてるんじゃあないか?』 やはり。リキエルは単なる嘘吐きの狂人だったのだ。 何故そんな嘘を付く必要があったのか少々疑問だが、奴の事はもうどうでもいい。 願わくば、次の放送で死んでいて欲しい。 『じゃあ、行って来るぜ』 『君の健闘を祈るよ』 俺は、これからはDIOに従い行動する事にした。 この異常事態に付いて行けない俺に取って、彼は非常に頼もしい存在だった。 何故だろうか? 彼の為なら何の惜し気も無く、この命を掛けられる――そう思う。 そして、俺は理解していた。 DIOの放つ臭いの奇妙さの正体は……『カリスマ』なのだ、と。  * * * 「――オラオラオラオラオラオラァ、オラァッ!!」 一つ一つが激烈な威力を誇る拳の雨を直に受けたモハメド・アヴドゥルの身体は、 宙にぶわりと浮き上がり、直後、近隣のビルの壁に激突した。 背部から壁に減り込み、コンクリートの破片が周囲に飛散する。 刹那で終結した戦い。一瞬の決着。 この対決の片割れの少年は、既に己のスタンドヴィジョンを消し、 涼しげな眼で敵の最期を見つめているだけで―― 学生帽を目深に被り直し、ふう、と溜息。そして一言。 「やれやれだぜ」 空条承太郎が、自分の攻撃によって生じた粉塵の中に歩み寄り、アヴドゥルの様子を確認する。 口からどす黒い血を吐いているが、呼吸音は聞こえる。死んではいない。 「次に会った時に、まだ馬鹿な事をホザいてるのなら……お前を、殺すぜ」 もう動かない事を確認し終えると、承太郎は気を失ったアヴドゥルから離れた。 「止めを、刺さないのか」 両者より距離を置き、決闘を観測していたジョンガリ・Aが訊く。 承太郎は即答した。 「お前から見れば、只の敵なんだろうが……これでも奴は俺の大切な仲間の一人。  共にエジプトまで闘い続けて来た、同志だ。  ……それよりも」 次の瞬間、承太郎から発散された怒気を肌で感じ取り、盲目の狙撃手は息を飲み込んだ。 獣の咆哮の如き荒々しく、刺々しく、身の回りのありとあらゆる全てを喰い尽くしてしまうかのような――殺気。 湧き上がる溶岩の如きそのエネルギーは、 立った今、圧倒的な馬力を見せ付けたスタンド『星の白金』の持ち主に相応しいと言えた。 「俺には、倒さなきゃならねえ真の『敵』が居る。さっさと行くぜ」 ジョンガリは認識していた――アヴドゥルの火炎攻撃を受けた際、承太郎の位置は間違い無く『ズレた』。 “停止した時の中を移動し”、『星の白金』の射程距離内に入れ、敵にラッシュを叩き込んだのだ。 何時の間にやら路地に投げ捨てられていた彼の学ランが、時が停止した何よりもの証拠。 停止時間中に脱ぎ捨て、全身を包む炎を弱めたらしい。 立派な見掛けだった学生服は、最早単なるコゲの塊に変質してしまっていた。 ……尤も、本人が自らの能力を自覚しているか否かは不明だった。 ジョンガリには、今の時間停止は、承太郎の無自覚な行使に思えてならない。 憎き仇敵である空条承太郎が過去のどの時点からこの街に招かれたのか、 ジョンガリにはこれまで少々不明瞭だった。しかし、今の闘いで一つの事実がハッキリした。 奴がこの街に招かれたのは、少なくとも、己が主DIOのみに自由が許された『世界』に――入り込める時点。 停止した世界に巻き込み、ただただ蹂躙し破滅に追い込む事は難しいであろう、時点。 そして間違い無く、承太郎が今語った『敵』とは――。 『乗って下さい、ジョンガリ・A様』 これまで何処に居たのか、自立型スタンドのヨーヨーマッがジョンガリに呼び掛ける。 承太郎は既にバイクに乗り込んでいた。増幅するエンジン音。 「今、行く」 簡潔に答え、ジョンガリ・Aは大型バイクの後部に乗り込み―― ――彼の意識は遥か彼方に飛んだ。 「どうした?」 気配を背中から察していたのだろう、承太郎が振り向き訊いて来る。 ジョンガリ・Aは、呟く様に、正直に解答した。 「……何かが……今、動いた。北北東の方角……三百メートルの距離。  来るぞ……真っ直ぐ、飛ぶ様に近づいて来る。これは……“速い”」  * * * 南に進み、俺が発見した敵は二人。 バイクに乗り込み、北に発進しようとしていた。目的を持って、北の『何か』に向かおうとしているのだ。 奴らが、DIOの語っていた『敵』だろう。 DIOと対立する、DIOを殺そうとする『敵』。 俺は【C-7】に位置する住居の二階で奴らを見付けると、 『ハイウェイ・スター』を、奴らの方向に全速力で差し向けた。 この一帯は市街地から離れている為に視界は悪くない。 スタンドの遠隔操作には持って来いだし、奴らを見つけるのにも時間は掛からなかった。 そしてあの『敵』共には、この俺――本体の場所は分からない。一方的にいたぶれるって訳だ。 さらに奴らの『臭い』さえ記憶すれば、俺の『ハイウェイ・スター』は地の果てまで追い続けるッ! 思いっ切り吸収させてもらうぜェ、『養分』をッ! 生き延びられるのなら……死なずに済むのなら、 どんな事でもやってやるさ。あんたを『信頼』するぜ……DIO。  * * * フンッ! 噴上裕也。 奴から血液を奪い、我が飢えた喉を潤す。一瞬それも考えたが。 南から接近しているジョースターを夜まで邪魔する為に、暫く踊らせて置くのが良いだろう。 一目で直ぐ分かったさ、奴は私をとても『信頼』している。信用し切っている。 あの従順で愚鈍な『犬』を、使わぬ手は無い。 もう少し奴から情報を得たかったと言うのが本音だが、 ジョースターが私の位置を感じ取り、近づいている。細かい話をする時間は無かった。 あの阿呆が帰って来たら、我が『世界』で葬ってやるか。或いは、もう暫くの間遊んでやろうか。 何にせよ。夜が訪れさえすれば、私はこの狭い屋敷から解き放たれ、完璧なる、無敵の『帝王』となる。 全ての者がこのDIOに跪き、このDIOに屈服するのだ。 ジョースターよ。貴様ら眷族は一人残らず根絶やしにしてやる。必ずだ。  * * * 『失敗、だったねっ』 寄生スタンド『チープ・トリック』が今の本体に呟き掛けるが、反応は無い。 モハメド・アヴドゥルは『星の白金』の猛攻を叩き込まれ、 ビルの壁面に背中を減り込ませたままの姿勢で気絶していた。 『ちぇっ……どうせくたばるのなら、誰かに背中を見せてから死んでよねっ……!  僕を巻き添えなんかには、絶対にするんじゃねーよっ……!』 恐るべき自立型スタンドは、口調に怒りを含めてぶつぶつとぼやき続けた。  * * * 陽は西の地平線に近づき、空は赤みを刺しつつある。 主催者荒木による第三の放送まで、残り二時間。 【別荘地帯への道(D-7)/1日目/夕方】 【波紋の達人と幽波紋の達人 B班】 【空条承太郎】 [スタンド]:『スタープラチナ』 [時間軸]:ロードローラーが出て来る直前 [状態]:全身に軽い火傷 [装備]:無し(学ランを脱いでいる) [道具]:支給品一式 [思考・状況]: 1)打倒DIO。 2)北から現れた敵に警戒。 3)DIOを斃した後、カフェ・ドゥ・マゴに戻る。(第四放送になりそうな時は病院へ) 4)打倒荒木。 5)アヴドゥルが再度自分に襲い掛かった際には殺害する。 [補足1]:承太郎はマンハッタン・トランスファーを『気流を読んで情報収集する能力』と思っています。 【ヨーヨーマッ(支給品)】 [現在の主人]:空条承太郎 [装備]:マスク [持ち物]:拡声器、マンハッタン・トランスファー(腹の中) [任務]: 1)承太郎を“助ける” [補足] 1)ヨーヨーマッは攻撃出来ない。能力も完全に封じられている(主人がヨーヨーマッ自体を利用して攻撃というの は可能かも知れない)。 2)主人の命令には絶対服従、しかし命令を曲解して受け取る事もあるかも知れない(ヨーヨーマッを殺すような 命令には従えない)。 3)ヨーヨーマッは常に主人の半径20m以内に居なければならない。 4)ヨーヨーマッの主人が死んだ時、又はヨーヨーマッが規則を破ったならヨーヨーマッは消滅。 5)主人変更の命令があれば主人は変わる。但し変更対称人物の同意が必要。 6)主人変更の命令をされた時、次の主人がヨーヨーマッの視界に入っていなければ命令は無効化される。 【ジョンガリ・A】 [スタンド]:『マンハッタン・トランスファー』 [時間軸]:徐倫にオラオラされた直後 [状態]:胴にF・F弾の傷 [装備]:無し [道具]:『ライク・ア・ヴァージン』子機(右手首装着) [思考・状況]: 1)承太郎と共にDIO様の下へ向かい、共に承太郎を殺す。 2)北から現れた敵に警戒。 3)マンハッタン・トランスファーをどうしよう。 【モハメド・アヴドゥル】 [スタンド]:『魔術師の赤』 [時間軸]:DIOの館突入前 [状態]:気絶。胴体にダメージ。両肩にダメージ。両腕が辛うじて動かせる程度 [装備]:背中に『チープ・トリック』 [道具]:支給品一式(食糧のみ2人分) [思考・状況]: 1)目に付いた者は皆倒す。 2)打倒荒木。荒木の思い通りには動かない。 3)チープ・トリックをどうにかしたい。 4)噴上裕也を斃す(余り重要ではない)。 5)花京院の言った言葉が少し気になっている。 [補足1]:アヴドゥルはチープ・トリックの存在に気付いています。 [補足2]:アヴドゥルはマンハッタン・トランスファーを『気流を読んで情報収集する能力』と思っています。 【別荘地帯近くの住居(C-7)/一日目/夕方】 【噴上裕也】 [スタンド]:『ハイウェイ・スター』 [時間軸]:四部終了後 [状態]:無傷。疲労。全身に返り血。 [装備]:無し [道具]:無し [思考]: 1)DIOに服従心。南の敵を追い払い、可能なら始末する。 2)第三放送後に吉良の屋敷に戻り、DIOに『荒木を倒す方法』を聞く。 3)死への不安は和らぎつつある。 [補足1]:噴上はDIOの臭いを記憶しました。 【吉良吉影の家(C-8)/1日目/夕方】 【DIO】 [スタンド]:『ザ・ワールド』 [時間軸]:ポルナレフ達対ヴァニラ・アイスの直前 [状態]:完全回復 [装備]:包丁を1本にナイフ2本。フォーク1本 [道具]:支給品一式(ただしランダムアイテムは無し) [思考・状況] 1)放送を待つ。夜までは『大人しく』ここにいる。 2)噴上を利用し、南のジョースターの気配(承太郎)を始末する。 3)ナランチャを利用する。第三放送から第四放送までの間に杜王グランドホテルに行き、プッチ達と合流するつもり。 4)もしナランチャがプッチ達と共にホテルにきた時、ザ・ワールドで暗殺する。 5)優勝してアラキを始末したい。 6)そのためには帝王の誇りを傷つける首輪の解除は必須ッ! 7)ワムウ(柱の男の肉体が欲しい)、ジョースター家の連中、首輪解除に役立つ者を探す。 8)噴上が戻った際に、彼を始末するかどうか検討中。 ※【D-7】に『黒コゲの学ラン』が放置されています。 *投下順で読む [[前へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]] *時系列順で読む [[前へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]] *キャラを追って読む |98:[[因果]]|空条承太郎|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |98:[[因果]]|ジョンガリ・A|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |98:[[因果]]|モハメド・アヴドゥル|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |94:[[《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その①]]|噴上裕也|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]| |80:[[飢エタ野犬ノ慟哭]]|DIO|103:[[帝王始動(前編)~快進撃 噴上裕也~]]|

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