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*  *  * ある所に2人の女の人と1人の少年がいました。3人はひたすら北に向って歩いていました。 3人の内の1人、空条徐倫の親である空条承太郎を探すためです。 徐倫は、生まれつき親の居場所がぼんやりとわかる特技があります。3人はそれを頼りに北に進んでいました。 ある時、正午から少し時間がたった頃でしょうか。3人の前に1人の男が現れました。 「徐倫! 良かった……ぶ、無事だったんだな」 男はナルシソ・アナスイと名乗り、徐倫達に優しく声をかけました。 ところが、徐倫はちっとも彼と出会った事を喜ぼうとはしません。 彼女はナルシソ・アナスイの事を知らなかったのです。 見ず知らずの男にいきなり声をかけられて、不審に思わないはずがありません。 ましてや、殺し合いが行われているこんな状況では。 どんなに説得しても徐倫は首をかしげるばかり。仲間だとは信じてもらえません。 アナスイが、自分は未来の時代から来た知人だと説明しても、それが直接仲間である証明にもなく……。 他の2人もアナスイに疑いの目を向けてしまいます。 「徐倫! き、君って奴はァ~~……」 アナスイは泣き崩れました。 徐倫を守れなくなった今、自分がどうすればいいのか迷っていたはずなのに。 その大好きな徐倫が……心から愛していた人が自分の事を認めてくれないのです。 『徐倫を生き残らせる為に他人を殺害することも出来ない』彼にとって、現実は非情でした。 *  *  * ある所にとても美しい夫人がいました。 彼女の名はエリザベス・ジョースター。人は彼女をリサリサと呼びます。 ある時、正午から少し時間がたった頃でしょうか。リサリサはとても不思議な家を見つけます。 周りは晴天なのに、その家の周りにだけ雨が降り続けているのです。 彼女はその家に入ろうかどうか迷いましたが、用心して近くの家の中から様子を見ることにしました。 雨の降る家の窓を覗いてみると、そこには何つかの人影が見えました。 リサリサは彼らは『スタンド使い』で、あの家の周りは『スタンド』の力で雨が降っているのだと思いました。 彼らが良い人ならば自分の仲間になってもらい所ですが、全員が初めて見る顔ばかり。 自分の子孫である空条承太郎の仲間もいないようなので、リサリサはそれ以上彼らに近づけませんでした。 それから幾ばくか時間がたったころでしょうか。 リサリサが家の中で時間を持て余していると、いつの間にか外が騒がしくなってきました。 窓から外を見ると、帽子を被った男達が話し合っています。 ――お前……出会……死人が……―― 何を話しているのかはわかりませんでしたが、余り良い話をしていたわけではないようで、 男達はそのまま別れてしまいました。 しかし、そんな様子をリサリサが不審に思う暇もなく更に不思議な事がおこりました。 雨の降る家から男性(?)が飛び出し、駅に向かって走っていきました。 そしてその何分後かには……あの不思議な家に降っていた雨がピタリと止んだのです。 連続で起こる奇妙な出来事にリサリサは呆然とします。 一体何がどうなっているのか、彼らに何が起こったのか……全ては謎のままでした。 流石のリサリサも、あの家に近づくのは止めようと思ったようです。 波紋を練りながら、慎重に自分の隠れたいた家から出ようとしますが、その時彼女は思いもよらぬモノを発見します。 リサリサはまるで吸い寄せられるかのように、さっきまで雨が降っていた家の中へと入っていきました。 *  *  * ある所に2人の女の人と2人の男がいました。4人はひたすら北西に向って歩いていました その内の1人、ミドラーはとても悪い女でした。 彼女は『殺し』を生業としているスタンド使いで、空条承太郎に出会う為に空条徐倫を利用しようと企んでいました。 承太郎を殺すかどうかはまだ決めあぐねていますが、生き残る為なら彼女はなんでもやるつもりでした。 ところが、ここ何時間かは彼女の思い通りにはいかなくなってきました。いや正確には流されていると言うべきでしょうか。 次から次へと現れる身元不明の男達が勝手に自分の行動指針を決めてゆくからです。 「もうすぐだ! このまま真っ直ぐ行けばエルメェス達がいる家に着くぜ! 」 アナスイが目を腫らした間抜け面で先導し、ミドラー達もそれにしぶしぶ後を追いてゆきます。 今、彼らが向っているのはエルメェス・コステロがいるという家です。 アナスイの話によると、エルメェスはスタンド使いになっており、徐倫の未来の仲間と一緒に、とある家にいるそうです 。 ミドラーは考えます。 どんなに断ってもアナスイはしつこく追いてくるので、徐倫は追い払うのを諦めてしまった。 おまけにアナスイがエルメェス・コステロの話をしたせいで、徐倫は少なからず彼を信頼し始めている。 罠の可能性だってあるのに、『あたしが親父以外で唯一知ってる人間だから案内してもらう』と一点張り。 でも自分が追い払おうとすれば、徐倫に自分のスタンド能力がバレる可能性があるので手が出せない。 これ以上『コブ』が増えたら迂闊に行動が出来なるかもしれないのに。 『徐倫を始末したら12時間後にトラサルディーでジョンガリ・Aと合流する作戦』も当分無理じゃないか、と……。 「着いたぜ! おいウェザー! エルメェス! 徐倫を連れて来た……お前達で匿ってくれないだろうかッ!」 アナスイがぶっきらぼうに扉を開け、徐倫が家の中に入ります。 しかしどうしたことでしょう。中はもぬけの空だったのです。 ミドラーたちはアナスイを責め立てました。 やっぱりアナスイは嘘つきだ。 自身の安全の為に、少しでもアタシ達と行動しようと企んで、その場しのぎの嘘ついたんだ、と。 アナスイも反論します。 自分がいた家はウェザーが雨を降らせていたのだが、この家には降っていない。家を間違えたんだ、と。 しかしそんなアナスイの言葉を誰も信じようとはしません。周りを見渡してもそんな家はどこにもなかったからです。 とうとうアナスイは、ミドラーにエルメェスの事も嘘ではないかとつけ込まれてしまいました。 その執拗な尋問に観念したのか、アナスイはひたすら土下座をして謝罪をしました。 自分が見たものは幻だったのかもしれないが、全ては徐倫の為であり自分の為では無いと訴えました。 ミドラーは呆れ果てましたが、彼にそっと手を差し伸べる者が現れました。 「アナスイ、もし良かったら探してみる? あんたの言うその……ウェザーっていう男たちを。  その代わりといってはなんだけど、あなたにも協力して欲しい。私の父……空条承太郎を探すのを」 *  *  * ある所に4人2組の男女がいました。4人は更に北に向って進みます。 その4人の中に1人、とても大人しそうな少年がいます。彼の名はヴィネガー・ドッピオ。ギャングのボスの腹心です。 ボスをこの状況で無事に生還させるのが彼の役目であり、彼はそのために使えそうな仲間を探していたのでした。 しかし彼はミスを犯しました。 『まずいぞドッピオ……私が始末したはずのエルメェスがなぜか生きている。第二放送でも名前が呼ばれていない。  奴はおそらくお前のことを警戒しているはずだ。いいか……そこにいる空条徐倫はエルメェスの仲間だ。2人が出会ってしまってはマズ イ。一刻も早く徐倫を始末するか、その場から逃げるんだ』 第二放送直後、ドッピオはボスからこのような指令を受け取りました。 そう、第二回放送直前で知り合った2人組は、絶対に関わってはいけない人間だったのです。 しかし、ドッピオは彼女達から逃げることが出来ませんでした。 何故ならドッピオのスタンド能力である『未来を予知するエピタフ』には……いつも同じ映像ばかり映るからです。 それは――『自分が彼女達とずっと行動を共にする』映像。 エピタフの見せる未来はほぼ絶対。 つまりドッピオはこの先どんなに逃げようとしても『徐倫たちと一緒にいる』結果が待ち受けているのです。 なんだかよくわからないけど、この未来のせいでドッピオはしばらく自重するしかありませんでした。 それからは冷や汗の連続です。アナスイや徐倫がエルメェスの文字を口走る度にドッピオは頭を抱えるのでした。 恐怖で震える彼をミドラーがたまに背中を叩いて冷やかしたりしますが、ドッピオにとってはそれどころじゃあありません。 ボスの存在を彼らに気づかれていないのが不幸中の幸いなのですが……。 「足音が聞こえる。近いわ、それもかなり……いたッ! そこの先……女の人? 」 そうこうしている内に徐倫が何者かを発見したようです。 彼女の体から出ている糸のスタンド……『ストーン・フリー』が数メートル先からの足音を捕らえています。 そう、徐倫はスタンドを糸状にして遠くの音を糸電話の要領で傍受していたのです。 徐倫が見つけた人物はドッピオからでも充分見える位置にいました。どうやらエルメェスではないようです。 ドッピオは内心ホッとしました。徐倫が先に佇む謎の人物と面識がないとわかったからです。 ところが、謎の人物は思いもよらぬ一言を述べたのです。 「そこのアナタ、空条徐倫かしら? 」 ある所に4人1組の男女と1人の婦人がいました。 その内の1人、ナルシソ・アナスイは哀れな男でした。 最初は徐倫の為に人殺しを企てようとしたのですが、無情にも『殺人は出来ない』体にされてしまったのです。 おまけにようやく出会えた徐倫は自分の事を知らない有様。 徐倫を護ることすら出来ない自分に徐倫に会う資格は無い……そんな事はとっくにわかっていたのに。 徐倫に出会えたことでほんの少し期待をしていた彼の心は踏んだり蹴ったりにされたのでした。 そんな彼に対して母性本能が働いたのか、徐倫は行動を共にする事を許してはくれたのですが……。 「つまり、あなた達は違う時代からここに招かれたのよ……荒木飛呂彦に」 徐倫が発見した婦人・リサリサの説明を聞いても、彼の心が晴れる事はありませんでした。 なぜならリサリサの話によって、彼はますます疑惑の念が浮かんだからです。 時空を越えて徐倫の先祖、ひいては過去の人物がここに存在しているということ。 同時代から招かれていても、人によっては違う時間軸から呼び出されたこと。 徐倫の先祖が忌わしき二人組みに、この町の北の病院で殺害されたこと。 その二人への復讐の為に、空条承太郎を始めとした自分の仲間が第4放送までに北の病院に集結すること。 ウェザー・リポートという人物は見ていないということ……様々な情報交換がなされました。 確かに彼女の言うことが真実ならば、死んだはずのウェザー・リポートと出会った理由も説明が着きます。 しかしアナスイは素直にウンとは納得出来ませんでした。 いくらリサリサがジョースター家の先祖とはいえ、彼女には星のアザが無かったからです。 空条承太郎や徐倫にあったものを持っていない彼女の言う事をまるっと信じるのは不用心過ぎると判断したのでした。 「ところでリサリサさん。スタンド使いじゃあないのに……あなたはスタンドが見えるの? 」 「ええ。一般人にはスタンドは見えないルールは……この世界では当てはまらない。あなたの父にも確認をとったわ」 「じゃあさ、アタシの親父はアタシの事を知らない……つまり過去からここに来たんでしょ?  どうしてアタシが空条徐倫だってわかったの?」 「この“顔写真入り名簿”でわかったわ。ほら、あなたの名前と顔よ……あなた以外の写真も載っているわ」 「本当だ。リサリサ、アナスイ、ミドラー……親父は相当若い頃からここに連れてこられたってわけね」 「へぇ~~徐倫、アタシにもちょっと見せてよ……ムキャッ! 名簿いっただきーッ!」 姦しくミドラーが徐倫達から名簿を取り上げました。 ミドラーは承太郎はやっぱりカッコいい、等とバカ笑いをしています。 たまらず徐倫がアナスイの名簿を取り返すようにお願いをします。 ミドラーは余り信用出来ないと徐倫から聞いていたので、アナスイは彼らから名簿を取り挙げようとします。 その時でした……アナスイは自分の背後に、何か大きな物が落ちてきたような気配を感じたのです。 恐る恐る振り向いてみると……そこには――自動車の下敷きになっている徐倫とリサリサがいました。 「徐リィィいィ井伊ィィィいィィィIィィeインッッ!? 」 徐倫とリサリサのぐったりとした様子を心配しながらも、アナスイはミドラーを睨み付けます。 突然自動車が降ってくるなんて事はありえない、これはミドラーが何かしたに違いない、と目で訴えます。 当のミドラーは相変わらず名簿をじっくりと見ているばかりで、こちらにはまるで興味がなさそうな素振り。 しかしアナスイはミドラーをこらしめる事は出来ません。なぜなら今の彼は殺人が出来ないからです。 どの程度の暴力が使えるのかわからないので、彼は徐倫達の救出を優先することにしました。 ディバッグに入れていた剣を使って自動車を切ってかかろうとします。 しかしどうしたことでしょう。 あんなに大きかった自動車が突然、海底の獲物をモリで突き刺す……『水中銃』に変わったのです。 アナスイが頭で理解する間もなく、水中銃は長い『モリ』を彼の胸部に撃ちこみます。 血を口から吐いて倒れるアナスイを遠目に、ミドラーは嘲笑を浮かべました。 「だらしないねェ……」 *投下順で読む [[前へ>ヒトとハトのコンビネーション]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] *時系列順で読む [[前へ>因果]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] *キャラを追って読む |85:[[疑心暗鬼]]|ミドラー|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |85:[[疑心暗鬼]]|空条徐倫|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |85:[[疑心暗鬼]]|ディアボロ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |92:[[イカれてるのさ、この状況で]]|ナルシソ・アナスイ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |82:[[邂逅、曾祖母と曾孫]]|リサリサ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]|
*  *  * ある所に2人の女の人と1人の少年がいました。3人はひたすら北に向って歩いていました。 3人の内の1人、空条徐倫の親である空条承太郎を探すためです。 徐倫は、生まれつき親の居場所がぼんやりとわかる特技があります。3人はそれを頼りに北に進んでいました。 ある時、正午から少し時間がたった頃でしょうか。3人の前に1人の男が現れました。 「徐倫! 良かった……ぶ、無事だったんだな」 男はナルシソ・アナスイと名乗り、徐倫達に優しく声をかけました。 ところが、徐倫はちっとも彼と出会った事を喜ぼうとはしません。 彼女はナルシソ・アナスイの事を知らなかったのです。 見ず知らずの男にいきなり声をかけられて、不審に思わないはずがありません。 ましてや、殺し合いが行われているこんな状況では。 どんなに説得しても徐倫は首をかしげるばかり。仲間だとは信じてもらえません。 アナスイが、自分は未来の時代から来た知人だと説明しても、それが直接仲間である証明にもなく……。 他の2人もアナスイに疑いの目を向けてしまいます。 「徐倫! き、君って奴はァ~~……」 アナスイは泣き崩れました。 徐倫を守れなくなった今、自分がどうすればいいのか迷っていたはずなのに。 その大好きな徐倫が……心から愛していた人が自分の事を認めてくれないのです。 『徐倫を生き残らせる為に他人を殺害することも出来ない』彼にとって、現実は非情でした。 *  *  * ある所にとても美しい夫人がいました。 彼女の名はエリザベス・ジョースター。人は彼女をリサリサと呼びます。 ある時、正午から少し時間がたった頃でしょうか。リサリサはとても不思議な家を見つけます。 周りは晴天なのに、その家の周りにだけ雨が降り続けているのです。 彼女はその家に入ろうかどうか迷いましたが、用心して近くの家の中から様子を見ることにしました。 雨の降る家の窓を覗いてみると、そこには何つかの人影が見えました。 リサリサは彼らは『スタンド使い』で、あの家の周りは『スタンド』の力で雨が降っているのだと思いました。 彼らが良い人ならば自分の仲間になってもらい所ですが、全員が初めて見る顔ばかり。 自分の子孫である空条承太郎の仲間もいないようなので、リサリサはそれ以上彼らに近づけませんでした。 それから幾ばくか時間がたったころでしょうか。 リサリサが家の中で時間を持て余していると、いつの間にか外が騒がしくなってきました。 窓から外を見ると、帽子を被った男達が話し合っています。 ――お前……出会……死人が……―― 何を話しているのかはわかりませんでしたが、余り良い話をしていたわけではないようで、 男達はそのまま別れてしまいました。 しかし、そんな様子をリサリサが不審に思う暇もなく更に不思議な事がおこりました。 雨の降る家から男性(?)が飛び出し、駅に向かって走っていきました。 そしてその何分後かには……あの不思議な家に降っていた雨がピタリと止んだのです。 連続で起こる奇妙な出来事にリサリサは呆然とします。 一体何がどうなっているのか、彼らに何が起こったのか……全ては謎のままでした。 流石のリサリサも、あの家に近づくのは止めようと思ったようです。 波紋を練りながら、慎重に自分の隠れたいた家から出ようとしますが、その時彼女は思いもよらぬモノを発見します。 リサリサはまるで吸い寄せられるかのように、さっきまで雨が降っていた家の中へと入っていきました。 *  *  * ある所に2人の女の人と2人の男がいました。4人はひたすら北西に向って歩いていました その内の1人、ミドラーはとても悪い女でした。 彼女は『殺し』を生業としているスタンド使いで、空条承太郎に出会う為に空条徐倫を利用しようと企んでいました。 承太郎を殺すかどうかはまだ決めあぐねていますが、生き残る為なら彼女はなんでもやるつもりでした。 ところが、ここ何時間かは彼女の思い通りにはいかなくなってきました。いや正確には流されていると言うべきでしょうか。 次から次へと現れる身元不明の男達が勝手に自分の行動指針を決めてゆくからです。 「もうすぐだ! このまま真っ直ぐ行けばエルメェス達がいる家に着くぜ! 」 アナスイが目を腫らした間抜け面で先導し、ミドラー達もそれにしぶしぶ後を追いてゆきます。 今、彼らが向っているのはエルメェス・コステロがいるという家です。 アナスイの話によると、エルメェスはスタンド使いになっており、徐倫の未来の仲間と一緒に、とある家にいるそうです 。 ミドラーは考えます。 どんなに断ってもアナスイはしつこく追いてくるので、徐倫は追い払うのを諦めてしまった。 おまけにアナスイがエルメェス・コステロの話をしたせいで、徐倫は少なからず彼を信頼し始めている。 罠の可能性だってあるのに、『あたしが親父以外で唯一知ってる人間だから案内してもらう』と一点張り。 でも自分が追い払おうとすれば、徐倫に自分のスタンド能力がバレる可能性があるので手が出せない。 これ以上『コブ』が増えたら迂闊に行動が出来なるかもしれないのに。 『徐倫を始末したら12時間後にトラサルディーでジョンガリ・Aと合流する作戦』も当分無理じゃないか、と……。 「着いたぜ! おいウェザー! エルメェス! 徐倫を連れて来た……お前達で匿ってくれないだろうかッ!」 アナスイがぶっきらぼうに扉を開け、徐倫が家の中に入ります。 しかしどうしたことでしょう。中はもぬけの空だったのです。 ミドラーたちはアナスイを責め立てました。 やっぱりアナスイは嘘つきだ。 自身の安全の為に、少しでもアタシ達と行動しようと企んで、その場しのぎの嘘ついたんだ、と。 アナスイも反論します。 自分がいた家はウェザーが雨を降らせていたのだが、この家には降っていない。家を間違えたんだ、と。 しかしそんなアナスイの言葉を誰も信じようとはしません。周りを見渡してもそんな家はどこにもなかったからです。 とうとうアナスイは、ミドラーにエルメェスの事も嘘ではないかとつけ込まれてしまいました。 その執拗な尋問に観念したのか、アナスイはひたすら土下座をして謝罪をしました。 自分が見たものは幻だったのかもしれないが、全ては徐倫の為であり自分の為では無いと訴えました。 ミドラーは呆れ果てましたが、彼にそっと手を差し伸べる者が現れました。 「アナスイ、もし良かったら探してみる? あんたの言うその……ウェザーっていう男たちを。  その代わりといってはなんだけど、あなたにも協力して欲しい。私の父……空条承太郎を探すのを」 *  *  * ある所に4人2組の男女がいました。4人は更に北に向って進みます。 その4人の中に1人、とても大人しそうな少年がいます。彼の名はヴィネガー・ドッピオ。ギャングのボスの腹心です。 ボスをこの状況で無事に生還させるのが彼の役目であり、彼はそのために使えそうな仲間を探していたのでした。 しかし彼はミスを犯しました。 『まずいぞドッピオ……私が始末したはずのエルメェスがなぜか生きている。第二放送でも名前が呼ばれていない。  奴はおそらくお前のことを警戒しているはずだ。いいか……そこにいる空条徐倫はエルメェスの仲間だ。2人が出会ってしまってはマズイ。一刻も早く徐倫を始末するか、その場から逃げるんだ』 第二放送直後、ドッピオはボスからこのような指令を受け取りました。 そう、第二回放送直前で知り合った2人組は、絶対に関わってはいけない人間だったのです。 しかし、ドッピオは彼女達から逃げることが出来ませんでした。 何故ならドッピオのスタンド能力である『未来を予知するエピタフ』には……いつも同じ映像ばかり映るからです。 それは――『自分が彼女達とずっと行動を共にする』映像。 エピタフの見せる未来はほぼ絶対。 つまりドッピオはこの先どんなに逃げようとしても『徐倫たちと一緒にいる』結果が待ち受けているのです。 なんだかよくわからないけど、この未来のせいでドッピオはしばらく自重するしかありませんでした。 それからは冷や汗の連続です。アナスイや徐倫がエルメェスの文字を口走る度にドッピオは頭を抱えるのでした。 恐怖で震える彼をミドラーがたまに背中を叩いて冷やかしたりしますが、ドッピオにとってはそれどころじゃあありません。 ボスの存在を彼らに気づかれていないのが不幸中の幸いなのですが……。 「足音が聞こえる。近いわ、それもかなり……いたッ! そこの先……女の人? 」 そうこうしている内に徐倫が何者かを発見したようです。 彼女の体から出ている糸のスタンド……『ストーン・フリー』が数メートル先からの足音を捕らえています。 そう、徐倫はスタンドを糸状にして遠くの音を糸電話の要領で傍受していたのです。 徐倫が見つけた人物はドッピオからでも充分見える位置にいました。どうやらエルメェスではないようです。 ドッピオは内心ホッとしました。徐倫が先に佇む謎の人物と面識がないとわかったからです。 ところが、謎の人物は思いもよらぬ一言を述べたのです。 「そこのアナタ、空条徐倫かしら? 」 ある所に4人1組の男女と1人の婦人がいました。 その内の1人、ナルシソ・アナスイは哀れな男でした。 最初は徐倫の為に人殺しを企てようとしたのですが、無情にも『殺人は出来ない』体にされてしまったのです。 おまけにようやく出会えた徐倫は自分の事を知らない有様。 徐倫を護ることすら出来ない自分に徐倫に会う資格は無い……そんな事はとっくにわかっていたのに。 徐倫に出会えたことでほんの少し期待をしていた彼の心は踏んだり蹴ったりにされたのでした。 そんな彼に対して母性本能が働いたのか、徐倫は行動を共にする事を許してはくれたのですが……。 「つまり、あなた達は違う時代からここに招かれたのよ……荒木飛呂彦に」 徐倫が発見した婦人・リサリサの説明を聞いても、彼の心が晴れる事はありませんでした。 なぜならリサリサの話によって、彼はますます疑惑の念が浮かんだからです。 時空を越えて徐倫の先祖、ひいては過去の人物がここに存在しているということ。 同時代から招かれていても、人によっては違う時間軸から呼び出されたこと。 徐倫の先祖が忌わしき二人組みに、この町の北の病院で殺害されたこと。 その二人への復讐の為に、空条承太郎を始めとした自分の仲間が第4放送までに北の病院に集結すること。 ウェザー・リポートという人物は見ていないということ……様々な情報交換がなされました。 確かに彼女の言うことが真実ならば、死んだはずのウェザー・リポートと出会った理由も説明が着きます。 しかしアナスイは素直にウンとは納得出来ませんでした。 いくらリサリサがジョースター家の先祖とはいえ、彼女には星のアザが無かったからです。 空条承太郎や徐倫にあったものを持っていない彼女の言う事をまるっと信じるのは不用心過ぎると判断したのでした。 「ところでリサリサさん。スタンド使いじゃあないのに……あなたはスタンドが見えるの? 」 「ええ。一般人にはスタンドは見えないルールは……この世界では当てはまらない。あなたの父にも確認をとったわ」 「じゃあさ、アタシの親父はアタシの事を知らない……つまり過去からここに来たんでしょ?  どうしてアタシが空条徐倫だってわかったの?」 「この“顔写真入り名簿”でわかったわ。ほら、あなたの名前と顔よ……あなた以外の写真も載っているわ」 「本当だ。リサリサ、アナスイ、ミドラー……親父は相当若い頃からここに連れてこられたってわけね」 「へぇ~~徐倫、アタシにもちょっと見せてよ……ムキャッ! 名簿いっただきーッ!」 姦しくミドラーが徐倫達から名簿を取り上げました。 ミドラーは承太郎はやっぱりカッコいい、等とバカ笑いをしています。 たまらず徐倫がアナスイの名簿を取り返すようにお願いをします。 ミドラーは余り信用出来ないと徐倫から聞いていたので、アナスイは彼らから名簿を取り挙げようとします。 その時でした……アナスイは自分の背後に、何か大きな物が落ちてきたような気配を感じたのです。 恐る恐る振り向いてみると……そこには――自動車の下敷きになっている徐倫とリサリサがいました。 「徐リィィいィ井伊ィィィいィィィIィィeインッッ!? 」 徐倫とリサリサのぐったりとした様子を心配しながらも、アナスイはミドラーを睨み付けます。 突然自動車が降ってくるなんて事はありえない、これはミドラーが何かしたに違いない、と目で訴えます。 当のミドラーは相変わらず名簿をじっくりと見ているばかりで、こちらにはまるで興味がなさそうな素振り。 しかしアナスイはミドラーをこらしめる事は出来ません。なぜなら今の彼は殺人が出来ないからです。 どの程度の暴力が使えるのかわからないので、彼は徐倫達の救出を優先することにしました。 ディバッグに入れていた剣を使って自動車を切ってかかろうとします。 しかしどうしたことでしょう。 あんなに大きかった自動車が突然、海底の獲物をモリで突き刺す……『水中銃』に変わったのです。 アナスイが頭で理解する間もなく、水中銃は長い『モリ』を彼の胸部に撃ちこみます。 血を口から吐いて倒れるアナスイを遠目に、ミドラーは嘲笑を浮かべました。 「だらしないねェ……」 *投下順で読む [[前へ>ヒトとハトのコンビネーション]] [[戻る>1日目 第3回放送まで]] [[次へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] *時系列順で読む [[前へ>因果]] [[戻る>1日目 第3回放送まで(時系列順)]] [[次へ>擬似娚愛は嫐乱す(後編)]] *キャラを追って読む |85:[[疑心暗鬼]]|ミドラー|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |85:[[疑心暗鬼]]|空条徐倫|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |85:[[疑心暗鬼]]|ディアボロ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |92:[[イカれてるのさ、この状況で]]|ナルシソ・アナスイ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]| |82:[[邂逅、曾祖母と曾孫]]|リサリサ|101:[[擬似娚愛は嫐乱す(後編)]]|

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