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悲劇」(2008/03/03 (月) 12:20:56) の最新版変更点

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運命は歪んだ。 その結果生まれるのが悲劇か喜劇か、それは歪み方によるだろう。 但し、仗助の場合、生み出すのは悲劇以外無かった。 絶望の中に希望を見出す今、その真実はそれ以上の絶望に叩き落すという物だというのに、 待ち受ける結果が悲劇以外の何に成り得るのだ。 しかし、運命は更に過酷だった。 悲劇が此れほど早く仗助を迎えようとは、一体誰が予想出来ただろう。 悲劇が生じた原因は誰にあるのだろうか。 仗助をウェザー達の下へ連れ出したエルメェスか? 仗助に打ち明けず裏工作を行なっていたウェザーか? 何も考えず、欲望の赴くまま飛び掛ったセッコか? それとも…3人を信じる事の出来なかった、仗助本人か? ここは、当事者達の視点から事実を記すだけに止める。 判断は読者の皆さんに委ねよう。 但し、僅かなすれ違いが仗助を新たなる悲劇に持ち込んだ。 それは覆しようの無い事実なのだ。 そしてもう一つ、読者の皆さんに判断を委ねる事がある…。  * * * 「アレは…」 不意に兄貴が声を上げたのは、暫く歩き始めてのことだ。 あれから俺とエルメェスの兄貴は、再び俺の家に向かう事にした。 俺ん家に億泰や康一が来てるかも知れねぇし、億泰ン家に戻っている可能性もあるからだ。 兄貴の視線を追うと、そこは局地的に雨が降っていた。 「おい、仗助。あそこ、雨が降っているだろう?」 「えぇ。明らかに不自然ッスね。 スタンド使いがいるんじゃないスか?」 「あたしもそう思う。で、そのスタンド使いは多分あたしの知り合いだ」 「!あれが兄貴の知り合いのスタンド能力なんスか?」 「あぁ。“ウェザー・リポート”っていってな。天候を自由に操る能力なんだ」 「へぇ。でもそいつ、何であんなトコ雨降らしているんスかね? あれで敵と戦ってるなんてワケねーだろーしよぉ~」 「あたしは、多分合図だと思う」 「え?合図?」 「あたしや徐倫達に居場所を知らせるため、あぁやって雨を降らせているんじゃないかな」 「なるほど。そういうことッスか」 「何にせよ、あそこにあたしの味方、ウェザーがいるはずだ。 あそこへ寄りたいけど、構わないか?」 「勿論ッスよ。そいつが怪我してたなら、治してやらなきゃなんねぇし」 「よし。じゃあ行こう」 そして俺は、エルメェスの兄貴と一緒に雨の降る場所へ向かった。  * * * 「…!」 南方から誰かが近付いて来る。 俺は雨を降らせている間、その周囲数十mを霧により近付く者の気配を探っていた。 そして今、2人の人間がこちらに近付いて来ている。 それを察知した俺はセッコを呼んだ。 セッコはこの家にあった紙風船で遊んでいたが、呼ばれて素直にこちらへ来た。 「なんだぁ?そろそろ出発するのか?」 「いや、今この家に近付いて来ている者がいる。 そいつを確かめに行くから、お前はここでじっとしていてくれ」 「あぁ、いいぜぇ~。じっとしてるから、また角砂糖くれよ」 「分かった。2個だな」 「えぇ~っ!もっともっともっとぉ~!!」 「…4個だ」 「俺、じっとする!」 そう言って、セッコは宣言通りビデオを一時停止したかのように動かなくなった。 それを確認した俺は扉を開け、外の2人組を確認しに表へ出る。 しかし、俺が確認するより先に向こうの方が俺を呼んでいた。 「おい!ウェザーだろ!?返事をしてくれ。あたしだ。エルメェスだ!」 「エルメェス?」 一旦雨を止めて視界を開く。 目の前に居たのは確かにエルメェスと、もう1人は見知らぬ男だった。 「やっぱりウェザーだ!良かった、お前に会えて」 エルメェスが駆け寄って来る。 そして俺の元へ辿り着いた彼女と俺は、がっちり握手を交わした。 「エルメェス。無事でよかった」 「あぁ。アンタもな」 「ところで、そちらの少年は?」 俺は、エルメェスに少し遅れてやってきた少年が誰なのか尋ねた。 「こいつは東方仗助。あたしの命の恩人だ」 「恩人?」 「敵にやられて死に掛けていたあたしを助けてくれたんだ」 「そうか…。仗助君。俺の名はウェザー・リポート。エルメェスの仲間だ。 彼女の命を救ってくれて有難う」 「いや、大した事してないッスよ。 てか、エルメェスの兄貴。ウェザーさんにも『女扱いしろ』って言ってるんスか?」 「?」 仗助君がエルメェスに言った言葉の意味が分からず、俺はエルメェスへ目を向ける。 エルメェスは溜め息混じりに言った。 「そうなんだよ。コイツ、あたしが幾ら『あたしは女だ』って言っても、ちっとも聞きゃしねぇ。 “女の振りしている男だ”って、ずっと勘違いしてんだ」 「あぁ。そういう事か。仗助君、ちょっと良いか?」 「え?ハイ。何スか?」 「彼女、エルメェスは女だ。女の振りしてる男じゃない」 「え?でもこんな女の人が…」 「確かめた訳じゃないんだろ?何ならコイツの裸見て確認するか?」 「なっ!」 俺の言葉にエルメェスが驚きの声を上げる。 が、仗助君の方が過剰な反応を示した。 「イイイイイイイイイヤ、いいッスよ。そそそ、そんな、ハ、裸、なんて…」 顔を真っ赤にして慌てふためく。 見掛けによらず、純情そうな子だ。 「で、でも、そうなんスか。 エルメェスの兄貴、いや、エルメェスさん。スミマセンでした! 俺、ひどい勘違いしてました!」 「まぁいいさ、解ってくれたんなら」 丁寧に頭を下げる仗助君の謝罪を、エルメェスは寛容に受け止める。 この仗助君、純情なだけでなく礼節もきちんとわきまえ、しっかりしているし素直だ。 きっと家族を大切にし大切にされ、愛情豊かな環境で育ってきたのだろう。 俺には仗助君が眩しく見え、少し羨ましかった。 「それより2人共、実はもう一人連れ添いがいる。あの家に居るから、付いて来てくれ」 「え?徐倫か誰かか?」 「いや、ここに来て初めて知り合った者だ」 「へぇ」 「こっちだ」 そして俺は、セッコの待つ家へ向かった。 「セッコ。戻ったぞ」 扉を開けるなり、俺が出て行く時と同じ格好をしたままのセッコが出迎え… 「何だよ、遅かったじゃねぇかぁ…ぁあああああああぁぁぁっ!!!テメーはあああぁぁっっ!!!」 「あああああ!?コイツはっ!!!」 セッコと仗助君が同時に叫び声を挙げた。 「何でこいつがいるんだよおぉ~~っ!?」 セッコが俺の後ろに隠れ、 「まだ殴り足りねぇぞ!コラァ~~~ッ!!!」 仗助君がセッコに殴りかかろうとする。 「待て、仗助君。セッコがどうかしたのか?」 「うるせぇ!そいつ殴らせろ!!」 「おい、仗助!取り敢えず落ち着けって。この男と何かあったのか!?」 「邪魔するなぁ!!」 セッコに会うなり見境なくなる仗助君を相手に、 俺とエルメェスは戸惑いながらも、取り敢えず仗助君を落ち着かせるよう取り計らった。  * * * 「成程、セッコが仗助君の髪型をけなした、と」 「そういう事ッス。あああぁぁ!思い出すだけでも腹立つ!」 結局、仗助がセッコとかいう男を殴る前にあたしとウェザーで取り押さえ、 仗助の怒りが収まるのを待ち、事情を説明してもらった。 「まぁ、仗助君の怒りが過剰な気もするが。セッコ、仗助君に謝れ」 ウェザーがセッコに向かって謝るよう促す。 が、当のセッコは不満タラタラだ。 「ええぇぇ~っ?何でだよぉ~っ。俺、そいつに殴られたんだぜ?」 「非はお前にあるだろう。悪い事をしたら謝るのが当然だ」 「でもよぉ~…」 「どうやら角砂糖は要らないらしいな」 「…おい、仗助。悪かったな、お前の髪型をバカにして。もう二度としねぇよ」 セッコは突然態度を改め、仗助に謝って来た。 余りに素直に謝ったので、仗助は驚いたらしい。 「わ、解った。あの事は水に流すぜ」 仗助はセッコにそう返していた。 あたしは肘で仗助をつつく。 「大人の対応見せるじゃないか」 「ま、まぁ、いつまでも根に持つのも人間としてどうかと思いますからね…」 そう返事する仗助は照れているみたいだった。  * * * 俺はウェザーさんがセッコに角砂糖みたいなものを投げて遊んでやっているのを眺めていた。 ホントならさっさと家に行きたいんだけど、セッコが駄々をこねるんで、ウェザーさんが相手している。 セッコはこうやって遊んでもらうのが好きらしい。 わざわざ付き合ってやるウェザーさんも人が良いよな。 が、実の所俺は、セッコとウェザーさんが一緒に居るのを確認したときから、妙な疑念が渦巻いていた。 よく考えたら、俺は3人の事を全く知らねぇ。 こいつらの正体を探ったら吉良の仲間だった、なんていうんじゃシャレにならねぇ。 一応行動は共にしているが、注意しなきゃな。 そう思いながら立ち上がり、奥の扉を開けようとした時、 「何をしているッ!!!」 ウェザーさんがいきなり声を荒げた。 ビビッたぜ、おい。 「え?いや、トイレに行こうかと…」 辛うじてそれだけ返事する。 「…トイレは上の階だ。その階段を上がって廊下の奥がそうだ」 「あ、ハイ。スミマセン」 俺はウェザーさんの剣幕に萎縮しながら、上へ上がった。  * * * 「どうしたんだよ?ウェザー。 あんなに声を荒げるなんて、あんたらしくも無い」 仗助が上に上がってから、あたしはウェザーに尋ねた。 セッコは紙風船で遊び、今はあたしとウェザーで話し合っている所だ。 「あぁ、いや、何でもない」 「んなワケねぇだろ。それとも、あたしにも言えないような隠し事をしてんのか?」 「…」 ウェザーは返事しなかった。 無言の示す意味、それは肯定。 あたしはもう一度尋ねた。 「話してくれ。でないと気になって落ち着かねぇ」 「…分かった。だが、くれぐれも他の人間に気付かれるな。 気付かれた時点で俺の計画が破綻する」 「計画?」 「あぁ、先ずは…」  * * * 「何ィ?お前、そんな事してたのか?」 「しっ、声が大きい」 「あ、あぁ。それで…」 「…」 俺が用を済ませた後、下に降りようとしていた所へ、下から声が聞こえてきた。 どうやらコソコソ話をしているようだ。 さっきのウェザーさんの態度やこれまでの疑念から、俺はそっと階段を降り、聞き耳を立てることにした。 「じゃあ、さっきの行動はヤバかったんじゃねぇか?」 「そうか、少し焦り過ぎた様だな」 話しているのはエルメェスさんとウェザーさんの二人のようだ。 さっきの行動って…。 思い当たる事が一つある。そう、ウェザーさんの豹変振りだ。 「まぁ、バレて無いとは思うが」 「いや、いきなり仗助に怒鳴り散らして、バレている可能性はあるぜ。 もしそうならどうするんだ?」 「処分するしか無いだろう」 !! この会話で大体の推測がついた。 この二人は、俺を何かの計画に利用しようとしている。 そして、それに俺が感付いているなら消す、って事だ。 やはりこいつら、信用ならねぇ。 ならば俺のとる行動は一つ! 「とにかく感付かれないよう行動を…」 「何が感付かれたらマズいんスかねぇ~」 「「!!」」 俺の言葉に、二人が俺の方を振り向く。 「じょ、仗助!」 「いつからそこに!?」 どこぞの悪役のような反応をする二人に、俺は言ってやった、 「やっぱ、あの扉の向こうに何かあるんスね? なら、確かめなきゃよぉ~」 「バカ、止めろ!!」 慌てふためきながら止めようとするエルメェスの声を無視し、扉を開けようとする。 その時…。 グオンッ!! 「!!」 背後から観葉植物が飛んできた。 多分攻撃して来るだろうと読んでいた俺は、難なくそれをかわす。 そして植物は扉にぶつかり「ガチャン!!」と盛大な音を立てて砕け散った。 飛んできた方を確認すると、投げたのはウェザーだった。 「うぉっ!なんだぁ!?」 音を聞きつけ、セッコが顔を上げる。 「…その扉を開けるな」 圧倒的な威圧感と共に、ウェザーは静かにそう言った。 が、俺を『始末する』なんて言ってるヤローのいう事なんて聴けるワケがねぇ。 「バレたらまずいんスか?」 「あぁ、その通りだ。だから開けるな」 バカ正直に俺の質問に返事するウェザー。だが、俺は 「アンタの言う事なんか聞けっかよぉ」 と言って、扉を開けた。 そしてその奥が明かされた時、 「うおぉぉぉ!!」 セッコが俺に向かって突進して来た。そして、 「ちっ、やはりか!」 「この野郎!」 二人それぞれ悪態をつきながら、ウェザーとエルメェスが続く。 だが、奴らが襲い掛かって来るだろう事は百も承知。 こいつらが敵だと分かった以上、俺のやることは全員ぶちのめすだけだ。 俺は奴ら方へ向き直り、 「角砂糖おぉぉ~~~!!!」 と言って俺に飛び掛かるセッコを迎え撃とうと……… って、ちょっと待て。 「角砂糖?」 いきなり意味不明な単語に、俺は一瞬思考が停止した。体も一旦停止。 「バカ!仗助、そいつを止めねぇか!」 そんな俺に向かって、エルメェスが叫ぶ。 その間、セッコは俺の頭上を飛び越えようとしていた。 そしてその足をウェザーが掴む。 バタッ!! 結局、二人してもんどりうって倒れた。 「うおっ、うぉっ、うほっ」 もがくセッコの背中にエルメェスが馬乗りになり、羽交い絞めにする。 「あ~ぁ、バレちまったよ」 そして、セッコの上でエルメェスが溜め息混じりに呟いていた。 「なんだよぉ~。砂糖無いって言っておきながら、まだあんなにあんじゃんかよぉ~」 セッコはエルメェスの下でじたばた暴れながら、ウェザーを恨めしげに見つめる。 「…やれやれ」 ウェザーも嘆息していた。 その間、俺はただ混乱してボーっとしているだけ。 えっと…。コレ、どうなってんの???  * * * 「これからどうする気だ?」 角砂糖を作る俺にエルメェスが声を掛けてきた。 俺は作る手を休めず返事をする。 「仗助を含め、3人でこれからの事を話し合おうと思う。 だが…」 「?」 「後10分もすれば、第二放送が始まる。 それを聞き逃してはならないから、全ては第二放送を聴き終えてからだ」 俺の説明を聞いたエルメェスは、腕を組みながらひとしきり頷く。 そしてもう一つの疑問を口にした。 「成程。でも、何で話し合いにセッコを参加させないんだ?」 「…話が通じる相手じゃない」 身も蓋も無い言い方だが、エルメェスは 「確かにな」 と言って小さく笑っていた。 「OK。じゃあ、先ずは第二放送だな」 そう言ってエルメェスは台所を出て行った。 ―――10分後。 「つまり、これから出掛けるために角砂糖の用意をしてあった、ってことッスか?」 「あぁ。セッコは朝三暮四を地で行く男でな。 作るそばから『よこせ』と言って来るので、気付かれないよう準備する必要があったのだ。 丁度、セッコに気付かれないよう隣の家から砂糖袋をくすねたので、奥の部屋で密かに作っていたのだが」 「セッコに気付かれた以上、あれも処分するしか無いだろうな」 ウェザーさんの言葉をエルメェスさんが継ぐ。 「処分って…」 「早く砂糖くれよぉ~!俺、じっと待ってるじゃねぇかよぉ~」 「…って事だ」 「…」 もしかして俺、とんでもないボケかました? 「まぁ、5個位与えてやれば、奴も気が済むだろう。 仗助、俺の考えを御破算にしたんだから、お前が相手しろ」 ウェザーさんは俺に向かってそう命令する。 「え?あ、スミマセン!ホント悪かったッス!でも、俺が相手するんスか? (植木鉢投げるか?フツー)」 「当たり前だろう。これから俺はセッコに気付かれないよう角砂糖を作らなくてはならない。 幸いに、セッコは既に出来ている10数個しか目に入っていないようだからな」 「仗助。あたしもアンタに借りがあるし手伝いたいが、今回だけは別だ。 あれだけの忠告を無視したあんたの行動を、あたしはフォローしてやれん。 ちゃんと相手してやってくれ」 「…」 エルメェスさんからも見放された俺は、肩を落としてセッコのところへ向かった。 「セッコがキャッチしたら、ちゃんと頭撫でてやるんだぞ」 とぼとぼと歩く俺の背中に、ウェザーさんから声が突き刺さる。容赦ねぇ。  * * * 「ドララッ!」 カカカカッ! 俺が投げる角砂糖もどきを、セッコは全て口で受け止める。 あぁ、確か頭撫でてやるんだったっけな。 「よしよし………ハァ」 ガリガリ。 当のセッコは嬉しそうに角砂糖を齧ってやがる。 ちくしょ~、こいつ幸せそうにしやがって。 明らかに怪しい異変を察知して全てを暴こうとした俺の立場は? これじゃトニオさんの時と全く同じオチじゃねぇか。 ク、クゥ~ッ。情けねぇ。  * * * …以上が、事の顛末である。 悲劇が生じた原因は誰にあるのだろうか。 仗助をウェザー達の下へ連れ出したエルメェスか? 仗助に打ち明けず裏工作を行なっていたウェザーか? 何も考えず、欲望の赴くまま飛び掛ったセッコか? それとも…3人を信じる事の出来なかった、仗助本人か? 判断は読者の皆さんに委ねよう。 但し、僅かなすれ違いが仗助を新たなる悲劇に持ち込んだ。 それは覆しようの無い事実なのだ。 そしてもう一つ、読者の皆さんに判断を委ねる事がある。 本当にこの一連を悲劇と呼んで良いのだろうか。 【角砂糖同盟 Lv.2】※仲間が増えた為に、チームは強化されました 【杜王駅近くの民家(F-3)/一日目/昼(11時50分)】 【セッコ】 [スタンド]:『オアシス』 [時間軸]:ブチャラティ達と闘う前 [状態]:右頬にエイジャの光線による切り傷(血は止まっている) [装備]:オアシスのスーツ [道具]:支給品一式 [思考・状況]: 1)遊んでくれる人間が増えて嬉しい 2)取り敢えず角砂糖と遊んでくれる人がいれば、後はどうでもいい 3)ウェザーと第四放送まで同盟(今の所裏切るつもりはない) 4)ウェザーは(チョコラータ程ではないが)好き。とりあえず従っていれば問題ないだろう 5)ゲームで優勝する 6)あァ?石?どうでもいいぜぇ~ 【ウェザー・リポート】 [スタンド]:『ウェザー・リポート』 [時間軸]:ヘビー・ウェザー習得直前 [状態]:健康、スタンドによる降雨(小雨程度) [装備]:簡易角砂糖、砂糖を入れた袋 [道具]:支給品一式・顔写真付き名簿・少量の塩・スーパーエイジャ(セッコからもらった) [思考・状況]: 1)第二放送を聞き終えた後、3人で今後の打ち合わせをする 2)角砂糖作りを続ける。幾つかはストックしておき、セッコに気付かれないようにする 3)角砂糖を使ってセッコを利用・見張る 4)スーパーエイジャの真の持ち主ともいえるべき人物を探したい。(使用目的を聞きたい) 5)徐倫達を探す(角砂糖製造が終わり次第この家を出て動こうと思っている) 6)『雨』によって注意深い人物との接近、その人物との会話をしたいと考えている。(出来ればエイジャの情報を優先的に知りたい) 7)セッコと第四放送まで同盟 8)プッチ神父を警戒 9)打倒荒木 【エルメェス・コステロ】 [スタンド]:『キッス』 [時間軸]:スポーツ・マックスとの決着後、体調が回復した頃(脱獄前) [状態]:良好 [装備]:ライフル [道具]:ドル紙幣等に加え、大量の石ころ [思考・状況]: 1)第二放送を聞き終えた後、3人で今後の打ち合わせをする。そこでディアボロの事を話す 2)仗助の行動を手助けする(ジョセフ捜索) 3)傷ついてる参加者がいたら、とりあえず助ける 4)徐倫、F・Fと合流したい 【東方仗助】 [スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド [時間軸]:四部終了時 [状態]:右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み・ 歩行に少し影響) [装備]:無し [道具]:支給品一式、小型時限爆弾、スコップ×2(エルメェスの『シール』で二つになっている) [思考・状況]: 1)何で俺、こんな事してんだよぉ!(セッコに角砂糖を与えながら) 2)敵じゃないようだし、ウェザー達と行動を共にする 3)どこかに隠れているジョセフを探す 4)傷ついている参加者がいたら、敵味方関係なくとりあえず『治す』 5)億泰たちや、シーザー、シーザーの仲間を探すのは後回し 6)打倒荒木! [補足1]:セッコは3)以降の思考は殆ど忘れてしまっています。 [補足2]:ウェザーは、エイジャに関してはあくまで真の持ち主から使用目的・方法を聞く事と、セッコの悪用を防ぐ事を目的とし、実際にウェザー自身がエイジャを使って何か行動を起こすつもりではありません。 [補足3]:仗助は「荒木は自分たちの声を聞くことができる」と推測しています。(根拠なし) [補足4]:仗助は、禁止エリアについての情報を聞きましたが、メモは取っていないようです。 [補足5]:仗助は過去に名簿を見ましたが、ドッピオの名前の有無はいまは意識にありません。 [補足6]:仗助もエルメェスも、埋葬した遺体がジョセフだとは気づいていません。 [補足7]:エルメェスは、ドッピオの二重人格に気付いていません。 *投下順で読む [[前へ>背負うもの/背負われるもの]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>発覚する疑惑]] *時系列順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>発覚する疑惑]] *キャラを追って読む |75:[[相思となり真実を隠す]]|東方仗助|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |75:[[相思となり真実を隠す]]|エルメェス・コステロ|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |65:[[その石の秘密と、希望]]|ウェザー・リポート|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |65:[[その石の秘密と、希望]]|セッコ|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]|
運命は歪んだ。 その結果生まれるのが悲劇か喜劇か、それは歪み方によるだろう。 但し、仗助の場合、生み出すのは悲劇以外無かった。 絶望の中に希望を見出す今、その真実はそれ以上の絶望に叩き落すという物だというのに、 待ち受ける結果が悲劇以外の何に成り得るのだ。 しかし、運命は更に過酷だった。 悲劇が此れほど早く仗助を迎えようとは、一体誰が予想出来ただろう。 悲劇が生じた原因は誰にあるのだろうか。 仗助をウェザー達の下へ連れ出したエルメェスか? 仗助に打ち明けず裏工作を行なっていたウェザーか? 何も考えず、欲望の赴くまま飛び掛ったセッコか? それとも…3人を信じる事の出来なかった、仗助本人か? ここは、当事者達の視点から事実を記すだけに止める。 判断は読者の皆さんに委ねよう。 但し、僅かなすれ違いが仗助を新たなる悲劇に持ち込んだ。 それは覆しようの無い事実なのだ。 そしてもう一つ、読者の皆さんに判断を委ねる事がある…。  * * * 「アレは…」 不意に兄貴が声を上げたのは、暫く歩き始めてのことだ。 あれから俺とエルメェスの兄貴は、再び俺の家に向かう事にした。 俺ん家に億泰や康一が来てるかも知れねぇし、億泰ン家に戻っている可能性もあるからだ。 兄貴の視線を追うと、そこは局地的に雨が降っていた。 「おい、仗助。あそこ、雨が降っているだろう?」 「えぇ。明らかに不自然ッスね。 スタンド使いがいるんじゃないスか?」 「あたしもそう思う。で、そのスタンド使いは多分あたしの知り合いだ」 「!あれが兄貴の知り合いのスタンド能力なんスか?」 「あぁ。“ウェザー・リポート”っていってな。天候を自由に操る能力なんだ」 「へぇ。でもそいつ、何であんなトコ雨降らしているんスかね? あれで敵と戦ってるなんてワケねーだろーしよぉ~」 「あたしは、多分合図だと思う」 「え?合図?」 「あたしや徐倫達に居場所を知らせるため、あぁやって雨を降らせているんじゃないかな」 「なるほど。そういうことッスか」 「何にせよ、あそこにあたしの味方、ウェザーがいるはずだ。 あそこへ寄りたいけど、構わないか?」 「勿論ッスよ。そいつが怪我してたなら、治してやらなきゃなんねぇし」 「よし。じゃあ行こう」 そして俺は、エルメェスの兄貴と一緒に雨の降る場所へ向かった。  * * * 「…!」 南方から誰かが近付いて来る。 俺は雨を降らせている間、その周囲数十mを霧により近付く者の気配を探っていた。 そして今、2人の人間がこちらに近付いて来ている。 それを察知した俺はセッコを呼んだ。 セッコはこの家にあった紙風船で遊んでいたが、呼ばれて素直にこちらへ来た。 「なんだぁ?そろそろ出発するのか?」 「いや、今この家に近付いて来ている者がいる。 そいつを確かめに行くから、お前はここでじっとしていてくれ」 「あぁ、いいぜぇ~。じっとしてるから、また角砂糖くれよ」 「分かった。2個だな」 「えぇ~っ!もっともっともっとぉ~!!」 「…4個だ」 「俺、じっとする!」 そう言って、セッコは宣言通りビデオを一時停止したかのように動かなくなった。 それを確認した俺は扉を開け、外の2人組を確認しに表へ出る。 しかし、俺が確認するより先に向こうの方が俺を呼んでいた。 「おい!ウェザーだろ!?返事をしてくれ。あたしだ。エルメェスだ!」 「エルメェス?」 一旦雨を止めて視界を開く。 目の前に居たのは確かにエルメェスと、もう1人は見知らぬ男だった。 「やっぱりウェザーだ!良かった、お前に会えて」 エルメェスが駆け寄って来る。 そして俺の元へ辿り着いた彼女と俺は、がっちり握手を交わした。 「エルメェス。無事でよかった」 「あぁ。アンタもな」 「ところで、そちらの少年は?」 俺は、エルメェスに少し遅れてやってきた少年が誰なのか尋ねた。 「こいつは東方仗助。あたしの命の恩人だ」 「恩人?」 「敵にやられて死に掛けていたあたしを助けてくれたんだ」 「そうか…。仗助君。俺の名はウェザー・リポート。エルメェスの仲間だ。 彼女の命を救ってくれて有難う」 「いや、大した事してないッスよ。 てか、エルメェスの兄貴。ウェザーさんにも『女扱いしろ』って言ってるんスか?」 「?」 仗助君がエルメェスに言った言葉の意味が分からず、俺はエルメェスへ目を向ける。 エルメェスは溜め息混じりに言った。 「そうなんだよ。コイツ、あたしが幾ら『あたしは女だ』って言っても、ちっとも聞きゃしねぇ。 “女の振りしている男だ”って、ずっと勘違いしてんだ」 「あぁ。そういう事か。仗助君、ちょっと良いか?」 「え?ハイ。何スか?」 「彼女、エルメェスは女だ。女の振りしてる男じゃない」 「え?でもこんな女の人が…」 「確かめた訳じゃないんだろ?何ならコイツの裸見て確認するか?」 「なっ!」 俺の言葉にエルメェスが驚きの声を上げる。 が、仗助君の方が過剰な反応を示した。 「イイイイイイイイイヤ、いいッスよ。そそそ、そんな、ハ、裸、なんて…」 顔を真っ赤にして慌てふためく。 見掛けによらず、純情そうな子だ。 「で、でも、そうなんスか。 エルメェスの兄貴、いや、エルメェスさん。スミマセンでした! 俺、ひどい勘違いしてました!」 「まぁいいさ、解ってくれたんなら」 丁寧に頭を下げる仗助君の謝罪を、エルメェスは寛容に受け止める。 この仗助君、純情なだけでなく礼節もきちんとわきまえ、しっかりしているし素直だ。 きっと家族を大切にし大切にされ、愛情豊かな環境で育ってきたのだろう。 俺には仗助君が眩しく見え、少し羨ましかった。 「それより2人共、実はもう一人連れ添いがいる。あの家に居るから、付いて来てくれ」 「え?徐倫か誰かか?」 「いや、ここに来て初めて知り合った者だ」 「へぇ」 「こっちだ」 そして俺は、セッコの待つ家へ向かった。 「セッコ。戻ったぞ」 扉を開けるなり、俺が出て行く時と同じ格好をしたままのセッコが出迎え… 「何だよ、遅かったじゃねぇかぁ…ぁあああああああぁぁぁっ!!!テメーはあああぁぁっっ!!!」 「あああああ!?コイツはっ!!!」 セッコと仗助君が同時に叫び声を挙げた。 「何でこいつがいるんだよおぉ~~っ!?」 セッコが俺の後ろに隠れ、 「まだ殴り足りねぇぞ!コラァ~~~ッ!!!」 仗助君がセッコに殴りかかろうとする。 「待て、仗助君。セッコがどうかしたのか?」 「うるせぇ!そいつ殴らせろ!!」 「おい、仗助!取り敢えず落ち着けって。この男と何かあったのか!?」 「邪魔するなぁ!!」 セッコに会うなり見境なくなる仗助君を相手に、 俺とエルメェスは戸惑いながらも、取り敢えず仗助君を落ち着かせるよう取り計らった。  * * * 「成程、セッコが仗助君の髪型をけなした、と」 「そういう事ッス。あああぁぁ!思い出すだけでも腹立つ!」 結局、仗助がセッコとかいう男を殴る前にあたしとウェザーで取り押さえ、 仗助の怒りが収まるのを待ち、事情を説明してもらった。 「まぁ、仗助君の怒りが過剰な気もするが。セッコ、仗助君に謝れ」 ウェザーがセッコに向かって謝るよう促す。 が、当のセッコは不満タラタラだ。 「ええぇぇ~っ?何でだよぉ~っ。俺、そいつに殴られたんだぜ?」 「非はお前にあるだろう。悪い事をしたら謝るのが当然だ」 「でもよぉ~…」 「どうやら角砂糖は要らないらしいな」 「…おい、仗助。悪かったな、お前の髪型をバカにして。もう二度としねぇよ」 セッコは突然態度を改め、仗助に謝って来た。 余りに素直に謝ったので、仗助は驚いたらしい。 「わ、解った。あの事は水に流すぜ」 仗助はセッコにそう返していた。 あたしは肘で仗助をつつく。 「大人の対応見せるじゃないか」 「ま、まぁ、いつまでも根に持つのも人間としてどうかと思いますからね…」 そう返事する仗助は照れているみたいだった。  * * * 俺はウェザーさんがセッコに角砂糖みたいなものを投げて遊んでやっているのを眺めていた。 ホントならさっさと家に行きたいんだけど、セッコが駄々をこねるんで、ウェザーさんが相手している。 セッコはこうやって遊んでもらうのが好きらしい。 わざわざ付き合ってやるウェザーさんも人が良いよな。 が、実の所俺は、セッコとウェザーさんが一緒に居るのを確認したときから、妙な疑念が渦巻いていた。 よく考えたら、俺は3人の事を全く知らねぇ。 こいつらの正体を探ったら吉良の仲間だった、なんていうんじゃシャレにならねぇ。 一応行動は共にしているが、注意しなきゃな。 そう思いながら立ち上がり、奥の扉を開けようとした時、 「何をしているッ!!!」 ウェザーさんがいきなり声を荒げた。 ビビッたぜ、おい。 「え?いや、トイレに行こうかと…」 辛うじてそれだけ返事する。 「…トイレは上の階だ。その階段を上がって廊下の奥がそうだ」 「あ、ハイ。スミマセン」 俺はウェザーさんの剣幕に萎縮しながら、上へ上がった。  * * * 「どうしたんだよ?ウェザー。 あんなに声を荒げるなんて、あんたらしくも無い」 仗助が上に上がってから、あたしはウェザーに尋ねた。 セッコは紙風船で遊び、今はあたしとウェザーで話し合っている所だ。 「あぁ、いや、何でもない」 「んなワケねぇだろ。それとも、あたしにも言えないような隠し事をしてんのか?」 「…」 ウェザーは返事しなかった。 無言の示す意味、それは肯定。 あたしはもう一度尋ねた。 「話してくれ。でないと気になって落ち着かねぇ」 「…分かった。だが、くれぐれも他の人間に気付かれるな。 気付かれた時点で俺の計画が破綻する」 「計画?」 「あぁ、先ずは…」  * * * 「何ィ?お前、そんな事してたのか?」 「しっ、声が大きい」 「あ、あぁ。それで…」 「…」 俺が用を済ませた後、下に降りようとしていた所へ、下から声が聞こえてきた。 どうやらコソコソ話をしているようだ。 さっきのウェザーさんの態度やこれまでの疑念から、俺はそっと階段を降り、聞き耳を立てることにした。 「じゃあ、さっきの行動はヤバかったんじゃねぇか?」 「そうか、少し焦り過ぎた様だな」 話しているのはエルメェスさんとウェザーさんの二人のようだ。 さっきの行動って…。 思い当たる事が一つある。そう、ウェザーさんの豹変振りだ。 「まぁ、バレて無いとは思うが」 「いや、いきなり仗助に怒鳴り散らして、バレている可能性はあるぜ。 もしそうならどうするんだ?」 「処分するしか無いだろう」 !! この会話で大体の推測がついた。 この二人は、俺を何かの計画に利用しようとしている。 そして、それに俺が感付いているなら消す、って事だ。 やはりこいつら、信用ならねぇ。 ならば俺のとる行動は一つ! 「とにかく感付かれないよう行動を…」 「何が感付かれたらマズいんスかねぇ~」 「「!!」」 俺の言葉に、二人が俺の方を振り向く。 「じょ、仗助!」 「いつからそこに!?」 どこぞの悪役のような反応をする二人に、俺は言ってやった、 「やっぱ、あの扉の向こうに何かあるんスね? なら、確かめなきゃよぉ~」 「バカ、止めろ!!」 慌てふためきながら止めようとするエルメェスの声を無視し、扉を開けようとする。 その時…。 グオンッ!! 「!!」 背後から観葉植物が飛んできた。 多分攻撃して来るだろうと読んでいた俺は、難なくそれをかわす。 そして植物は扉にぶつかり「ガチャン!!」と盛大な音を立てて砕け散った。 飛んできた方を確認すると、投げたのはウェザーだった。 「うぉっ!なんだぁ!?」 音を聞きつけ、セッコが顔を上げる。 「…その扉を開けるな」 圧倒的な威圧感と共に、ウェザーは静かにそう言った。 が、俺を『始末する』なんて言ってるヤローのいう事なんて聴けるワケがねぇ。 「バレたらまずいんスか?」 「あぁ、その通りだ。だから開けるな」 バカ正直に俺の質問に返事するウェザー。だが、俺は 「アンタの言う事なんか聞けっかよぉ」 と言って、扉を開けた。 そしてその奥が明かされた時、 「うおぉぉぉ!!」 セッコが俺に向かって突進して来た。そして、 「ちっ、やはりか!」 「この野郎!」 二人それぞれ悪態をつきながら、ウェザーとエルメェスが続く。 だが、奴らが襲い掛かって来るだろう事は百も承知。 こいつらが敵だと分かった以上、俺のやることは全員ぶちのめすだけだ。 俺は奴ら方へ向き直り、 「角砂糖おぉぉ~~~!!!」 と言って俺に飛び掛かるセッコを迎え撃とうと……… って、ちょっと待て。 「角砂糖?」 いきなり意味不明な単語に、俺は一瞬思考が停止した。体も一旦停止。 「バカ!仗助、そいつを止めねぇか!」 そんな俺に向かって、エルメェスが叫ぶ。 その間、セッコは俺の頭上を飛び越えようとしていた。 そしてその足をウェザーが掴む。 バタッ!! 結局、二人してもんどりうって倒れた。 「うおっ、うぉっ、うほっ」 もがくセッコの背中にエルメェスが馬乗りになり、羽交い絞めにする。 「あ~ぁ、バレちまったよ」 そして、セッコの上でエルメェスが溜め息混じりに呟いていた。 「なんだよぉ~。砂糖無いって言っておきながら、まだあんなにあんじゃんかよぉ~」 セッコはエルメェスの下でじたばた暴れながら、ウェザーを恨めしげに見つめる。 「…やれやれ」 ウェザーも嘆息していた。 その間、俺はただ混乱してボーっとしているだけ。 えっと…。コレ、どうなってんの???  * * * 「これからどうする気だ?」 角砂糖を作る俺にエルメェスが声を掛けてきた。 俺は作る手を休めず返事をする。 「仗助を含め、3人でこれからの事を話し合おうと思う。 だが…」 「?」 「後10分もすれば、第二放送が始まる。 それを聞き逃してはならないから、全ては第二放送を聴き終えてからだ」 俺の説明を聞いたエルメェスは、腕を組みながらひとしきり頷く。 そしてもう一つの疑問を口にした。 「成程。でも、何で話し合いにセッコを参加させないんだ?」 「…話が通じる相手じゃない」 身も蓋も無い言い方だが、エルメェスは 「確かにな」 と言って小さく笑っていた。 「OK。じゃあ、先ずは第二放送だな」 そう言ってエルメェスは台所を出て行った。 ―――10分後。 「つまり、これから出掛けるために角砂糖の用意をしてあった、ってことッスか?」 「あぁ。セッコは朝三暮四を地で行く男でな。 作るそばから『よこせ』と言って来るので、気付かれないよう準備する必要があったのだ。 丁度、セッコに気付かれないよう隣の家から砂糖袋をくすねたので、奥の部屋で密かに作っていたのだが」 「セッコに気付かれた以上、あれも処分するしか無いだろうな」 ウェザーさんの言葉をエルメェスさんが継ぐ。 「処分って…」 「早く角砂糖くれよぉ~!俺、じっと待ってるじゃねぇかよぉ~」 「…って事だ」 「…」 もしかして俺、とんでもないボケかました? 「まぁ、5個位与えてやれば、奴も気が済むだろう。 仗助、俺の考えを御破算にしたんだから、お前が相手しろ」 ウェザーさんは俺に向かってそう命令する。 「え?あ、スミマセン!ホント悪かったッス!でも、俺が相手するんスか? (植木鉢投げるか?フツー)」 「当たり前だろう。これから俺はセッコに気付かれないよう角砂糖を作らなくてはならない。 幸いに、セッコは既に出来ている10数個しか目に入っていないようだからな」 「仗助。あたしもアンタに借りがあるし手伝いたいが、今回だけは別だ。 あれだけの忠告を無視したあんたの行動を、あたしはフォローしてやれん。 ちゃんと相手してやってくれ」 「…」 エルメェスさんからも見放された俺は、肩を落としてセッコのところへ向かった。 「セッコがキャッチしたら、ちゃんと頭撫でてやるんだぞ」 とぼとぼと歩く俺の背中に、ウェザーさんから声が突き刺さる。容赦ねぇ。  * * * 「ドララッ!」 カカカカッ! 俺が投げる角砂糖もどきを、セッコは全て口で受け止める。 あぁ、確か頭撫でてやるんだったっけな。 「よしよし………ハァ」 ガリガリ。 当のセッコは嬉しそうに角砂糖を齧ってやがる。 ちくしょ~、こいつ幸せそうにしやがって。 明らかに怪しい異変を察知して全てを暴こうとした俺の立場は? これじゃトニオさんの時と全く同じオチじゃねぇか。 ク、クゥ~ッ。情けねぇ。  * * * …以上が、事の顛末である。 悲劇が生じた原因は誰にあるのだろうか。 仗助をウェザー達の下へ連れ出したエルメェスか? 仗助に打ち明けず裏工作を行なっていたウェザーか? 何も考えず、欲望の赴くまま飛び掛ったセッコか? それとも…3人を信じる事の出来なかった、仗助本人か? 判断は読者の皆さんに委ねよう。 但し、僅かなすれ違いが仗助を新たなる悲劇に持ち込んだ。 それは覆しようの無い事実なのだ。 そしてもう一つ、読者の皆さんに判断を委ねる事がある。 本当にこの一連を悲劇と呼んで良いのだろうか。 【角砂糖同盟 Lv.2】※仲間が増えた為に、チームは強化されました 【杜王駅近くの民家(F-3)/一日目/昼(11時50分)】 【セッコ】 [スタンド]:『オアシス』 [時間軸]:ブチャラティ達と闘う前 [状態]:右頬にエイジャの光線による切り傷(血は止まっている) [装備]:オアシスのスーツ [道具]:支給品一式 [思考・状況]: 1)遊んでくれる人間が増えて嬉しい 2)取り敢えず角砂糖と遊んでくれる人がいれば、後はどうでもいい 3)ウェザーと第四放送まで同盟(今の所裏切るつもりはない) 4)ウェザーは(チョコラータ程ではないが)好き。とりあえず従っていれば問題ないだろう 5)ゲームで優勝する 6)あァ?石?どうでもいいぜぇ~ 【ウェザー・リポート】 [スタンド]:『ウェザー・リポート』 [時間軸]:ヘビー・ウェザー習得直前 [状態]:健康、スタンドによる降雨(小雨程度) [装備]:簡易角砂糖、砂糖を入れた袋 [道具]:支給品一式・顔写真付き名簿・少量の塩・スーパーエイジャ(セッコからもらった) [思考・状況]: 1)第二放送を聞き終えた後、3人で今後の打ち合わせをする 2)角砂糖作りを続ける。幾つかはストックしておき、セッコに気付かれないようにする 3)角砂糖を使ってセッコを利用・見張る 4)スーパーエイジャの真の持ち主ともいえるべき人物を探したい。(使用目的を聞きたい) 5)徐倫達を探す(角砂糖製造が終わり次第この家を出て動こうと思っている) 6)『雨』によって注意深い人物との接近、その人物との会話をしたいと考えている。(出来ればエイジャの情報を優先的に知りたい) 7)セッコと第四放送まで同盟 8)プッチ神父を警戒 9)打倒荒木 【エルメェス・コステロ】 [スタンド]:『キッス』 [時間軸]:スポーツ・マックスとの決着後、体調が回復した頃(脱獄前) [状態]:良好 [装備]:ライフル [道具]:ドル紙幣等に加え、大量の石ころ [思考・状況]: 1)第二放送を聞き終えた後、3人で今後の打ち合わせをする。そこでディアボロの事を話す 2)仗助の行動を手助けする(ジョセフ捜索) 3)傷ついてる参加者がいたら、とりあえず助ける 4)徐倫、F・Fと合流したい 【東方仗助】 [スタンド]:クレイジー・ダイヤモンド [時間軸]:四部終了時 [状態]:右太股にツララが貫通した傷(応急手当済み・ 歩行に少し影響) [装備]:無し [道具]:支給品一式、小型時限爆弾、スコップ×2(エルメェスの『シール』で二つになっている) [思考・状況]: 1)何で俺、こんな事してんだよぉ!(セッコに角砂糖を与えながら) 2)敵じゃないようだし、ウェザー達と行動を共にする 3)どこかに隠れているジョセフを探す 4)傷ついている参加者がいたら、敵味方関係なくとりあえず『治す』 5)億泰たちや、シーザー、シーザーの仲間を探すのは後回し 6)打倒荒木! [補足1]:セッコは3)以降の思考は殆ど忘れてしまっています。 [補足2]:ウェザーは、エイジャに関してはあくまで真の持ち主から使用目的・方法を聞く事と、セッコの悪用を防ぐ事を目的とし、実際にウェザー自身がエイジャを使って何か行動を起こすつもりではありません。 [補足3]:仗助は「荒木は自分たちの声を聞くことができる」と推測しています。(根拠なし) [補足4]:仗助は、禁止エリアについての情報を聞きましたが、メモは取っていないようです。 [補足5]:仗助は過去に名簿を見ましたが、ドッピオの名前の有無はいまは意識にありません。 [補足6]:仗助もエルメェスも、埋葬した遺体がジョセフだとは気づいていません。 [補足7]:エルメェスは、ドッピオの二重人格に気付いていません。 *投下順で読む [[前へ>背負うもの/背負われるもの]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>発覚する疑惑]] *時系列順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>発覚する疑惑]] *キャラを追って読む |75:[[相思となり真実を隠す]]|東方仗助|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |75:[[相思となり真実を隠す]]|エルメェス・コステロ|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |65:[[その石の秘密と、希望]]|ウェザー・リポート|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]| |65:[[その石の秘密と、希望]]|セッコ|92:[[イカれてるのさ、この状況で]]|

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