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神への挑戦(後編)~菩提樹~」(2007/10/15 (月) 21:13:34) の最新版変更点

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「さて、僕の能力について何か質問は?」 僕は、荒木のスタンド能力とは別の事を考えていた。 即ち、この状況を打開する方法を。 はっきり言って、状況は絶望的だ。しかし望みを捨てる訳には行かない。 だから僕は荒木へ訊ねた。荒木の謎を解くために。 そして、時間を稼ぎ荒木打倒の糸口を見つけるために。 「お前はそのスタンド能力を使って皆をここに集めたのか」 「その通り」 「現在、過去、未来の人間をこの1999年の杜王町に…」 「ん?いや、待て。君は何か勘違いをしているぞ」 「勘違い…だと?」 「まるで君の言い分じゃ、僕は1999年の人間で、 現在、過去、未来の人間を、時間を超えて集めたように聞こえる」 「…違うのか?」 「覚えておくと良い。“過去”や“未来”を“現在”に置き換える事は出来ないんだよ。 “未来”とは、今は存在せずこれから存在する時間で、 “過去”は既にその存在を終えた時間なのだから」 「『“現在”の一瞬しか存在するものは無い』と言いたいのか」 僕の言葉を受け、荒木は嬉しそうに肯く。 「そうそう。例えば僕は、ゲーム開始時に君たちにディバッグを渡した。 しかしそれは、もう存在を終えた時間だ。 だから今の僕が、ディバッグを受け取った時の君に何かをするなんて事は出来ないんだ。 ましてや、その時の君をここに連れて来る事など」 !!! 見えた! 成程、コイツが操れるのは空間のみという事か。 ならば時間を駆使した攻撃に対し、荒木のスタンドは無力。 これが弱点だ! 例えばディアボロのような能力を使えば、荒木を打倒出来る可能性があるのだ。 しかし、僕にはその弱点を突く事が出来ない。 まだ時間を稼ぐ必要がある。 「しかし実際、ここは1999年の杜王町でないのか」 だから僕は質問を続けた。 そしてそれに、荒木はひとしきり肯いてから答える。 「確かにこの空間を切り離したのは1999年だったね」 「!」 この一言でピンと来た。 「まさか、今の年代は…!」 「君の居た時より、遥かに先の時代だよ」 僕の言葉に奴が続ける。 そして、この“ゲーム”というものが、 どれほどの長い準備期間を経たのか思い知った。 「つまり、こういう事だ」 荒木がそう言って、空間を指差す。 そこに、一瞬にして年表が現れる。 昔々   荒木誕生 昔    荒木、ゲームを思い付く 1900年 ジョナサン達を“この空間”へ連れ込み、固定 1940年 ジョセフ達を“この空間”へ連れ込み、固定 1980年 承太郎達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 杜王町を隔離し、“この空間”の場とする      仗助達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 ジョルノ達を“この空間”へ連れ込み、固定 2010年 徐倫達を“この空間”へ連れ込み、固定 現在   固定解除。ゲームスタート 「…で、今に至る、と。 いやぁ、長い道のりだった」 「…」 「あ、ついでだから“固定”について説明しようか。 基本、僕の能力の効果は一瞬なんだ。こんな風にね。」 「!!」 荒木がそう言った直後、 僕は荒木の座っている長椅子の逆端に座らせられていた。 慌てて間合いを取る僕に対し、荒木は悠然と話し続ける。 「な。僕が君に対して行なった能力は一瞬で、その後は自由に動けるだろ? と・こ・ろ・が」 「!!」 荒木が喋り続けると同時に、急に僕の体が動かなくなる。 「時間的に連続に能力を使用すれば、こういう風に君を固定する事も出来る。 連続してそこへそのポーズで瞬間移動させているようなものと思ってくれ。 まあ、今は僕の話を聞いてもらうために、頭は働くようにしているけど、 君を完全に固定したら…」 後遺症無しのコールド・スリープの出来上がり、か。 なるほど、そうやってゲームが始まるまで 僕達を“保存”していたって訳か。 「ちなみにそれを応用すれば」 「!!」 僕の右手が、僕の意思とは関係なく持ち上がる。 「こんな具合に相手を好きに操る事が出来るし…」 「…っ!」 突然解放され、僕は長椅子に座り込んだ。 「僕のような不老不死の体を作る事も出来る」 そんな僕に、荒木は自分を指差して言った。 そうか。つまりコイツは自分の体を不老不死とし、何百年もの間生きてきたのだ。 荒木の話を聴けば聴くほど、策は無いように思えてくる。 「ならばお前は嘘をついたのか?」 「え?嘘?」 荒木にしては珍しく(僕にしてみれば初めて)薄ら笑いが消え、 鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしていた。 「お前は『ゲーム優勝者を元の世界に返す』と言っていた。 しかし、お前はそんな事出来ないじゃないか」 「あぁ、成程。そういう事ね」 納得したらしい、荒木は再び口元を緩める。 「嘘じゃない。元の世界にはきちんと返すさ。 “元の時代じゃない”んで、ちょっとした浦島気分になるだろうけど」 それは詐欺以外の何者でも無いだろう、と 僕は心の内で毒づいた。 「まだ訊きたい事がある」 「ん?何だい?」 「僕がここへ来る前に、ブチャラティやナランチャは死んでいた。 今生きているブチャラティ達は、お前が生き返らせたのか?」 「いや、死者を生き返らせる事など僕には出来ない。 簡単な事だよ。 君をここへ連れて来た時間と彼らを連れて来た時間が違う、それだけの事だ」 「…」 「例えば、ブチャラティの場合、ここへ連れて来たのはサンジョルジョで ディアボロと闘う直前なんだ」 「じゃあ、その後僕と一緒に居たブチャラティは誰なんだ」 その問いに対する荒木の回答は、 もう何度目になるか分からない、僕の予想を超えるものだった。 「本人と入れ替えた、ダミーだよ。僕が作った、ね」 「何だと!?」 青天の霹靂とは、正にこの事を言うのでは無いだろうか。 「じゃあ、コロッセオで一緒に居たブチャラティやナランチャは…」 偽者だったのか! 「理解出来たようだね。 僕の『バトル・ロワイアル』が作った人形を、君たちと入れ替えたんだ。 肉体からスタンドまで全て複製して。 それらを『バトル・ロワイアル』で操っていた。 君と入れ替わった後、元の世界では君のダミーが立派に“ジョルノ”していたよ」 「…そんな…事が」 「ただ、プッチを手に入れた時点でこのゲームに必要な要素は全て揃えられてね。 そのまま『バトル・ロワイアル』で色々なダミーを操り続けるのも面倒になったんで、 ダミープッチに適当なアドリブを入れて…」 「…」 今まで数知れぬ驚愕の事実を耳にした。 しかし、次の荒木の言葉の前には、それらも霞んでしまう。 それほどの衝撃、いや衝撃と言う表現すら生ぬるい反応をしてしまうような事を荒木は口にした。 荒木はこう言ったのだ。 「一度、世界を終わらせた」 「世界を終わらせた、だと…?」 「あぁ。でも安心したまえ。世界は新しくやり直しているよ。 じゃないと、優勝者の帰る所が無くなるからね。 実の所、新しい世界でも興味を引くネタはあってね。 ダミーを操るのは面倒なんで、残念ながらその世界の人間をゲームに参加させるのは諦めたのだけど、 面白そうなものは、支給品として幾つか入れておいた」 荒木はそう言っていたが、僕にはそれよりも、 今の話で荒木がどれほど超越した存在であるか漸く理解出来た。 世界すらも終わらせたり、新たに創造したりする事が出来るのか、コイツは。 それはまるで、神の領域ではないか。 僕は神を殺そうとしている。果たしてそんな事が可能なのだろうか。 混乱気味の頭で、辛うじてその疑問を口にする。 「お前は………人間なのか?」 荒木に対する謎は、ほぼ全て解けた。 後知るべきは、こいつの正体だけだ。 薄ら笑いを浮かべたまま何も返事しない荒木に向け、もう一度訊ねる。 「お前は何者なんだ」 再度の質問に、荒木は例の(いい加減僕にも耐性が出来たようだが)おぞましい笑みを浮かべ、 僕をじっと見据えながら答えた。 「さっきは少し脱線してしまったが、答えるのはスタンドについてだけだ。 僕の正体を知った所でこれからの闘いに意味があるのかい?」 「今までの話を聴いていたら、お前が人間で無い可能性が出て来た。 『バトル・ロワイアル』で姿形を変え、人間の真似をしているだけの別の生物である可能性が。 いや、お前は生命体で無い可能性すらある」 「大丈夫。今の僕は人間と同じだ。人間が死ぬような状況に追い込まれれば、僕も死ぬ。 安心してかかってきたまえ」 「…」 「さて…。そろそろ始めようか。 これ以上話し込んでしまうと、第二放送に遅れてしまうのでね」 「…くっ」 おもむろに立ち上がる荒木に、僕は必死になって考える。 この状況を打開出来る方法を。 荒木を斃すか、この場を逃れるか、今得た情報を誰かに伝えるか…。 いずれにせよ、やることは一つしかない。 荒木にスタンドを使われたら僕に打つ手は無い。 ならば、スタンドを使われる前に先手を打つ! 「ゴールド・エクスペリエンス!」 そして僕は、神へと挑んで行った…。  * * * 僕は込み上げる笑いに肩を震わせていた。 いやいやいや。中々に面白い余興ではないか。 「いや、楽しかったよ。ジョルノ君」 僕は、今まで僕と死闘を演じた相手に向かって呟く。 …もう二度と動く事の無い、死骸に向かって。 まぁ、死闘というには一方的過ぎたが。 僕に襲い掛かるジョルノ君を固定し、心臓をぶち抜いて終わり。あっけないものだ。 しかし、ただゲームを観戦している時には無かったスリルが、ここにはあった。 負けたら死。その“命を賭ける”という状況に僕は興奮した。 うん。ただゲームを眺めているより、断然面白い。 「そういえば、ジョルノ君は真っ向勝負を挑んできたな…」 ふと思い当たった事が、口から零れる。 珍しい、というか知性派のジョルノ君らしくない猪突猛進ともいえる攻撃だった。 もしかして、あの闘いは何かの目くらましだったのかも。 「…まあいい」 そうだとして、これから何か起きるのならそれもまた一興。 存分に愉しもうじゃないか。 そうだ。第二放送の時にこの事を放送してやろう。 『ジョルノ君は僕の元へ辿り着き、果敢に立ち向かった結果、天へ召されました』 とでも。 「クックック…」 押し殺していても漏れてしまう笑い声は、 教会内を低く木霊していた。  * * * 菩提樹が枯れ、消滅してゆくその姿を、 俺は涙混じりに眺めていた。 まだわからねぇ。 もしかしたら、ジョルノは何らかの理由で 能力の発現を止めただけかも知れねぇ。 第二放送でジョルノの名が呼ばれない可能性だってあるんだ。 そう思いたいのに、そう思おうとしているのに 涙は止まってくれなかった。 俺にはわかっちまったんだ。 ―――ジョルノは死んだ、と。 タタタッ… その時だった。 こちらへ何かが向かって来る音がしたのは。 音がする方を振り向くと…犬が俺の方へ走って来ていた。 いや、ジョルノのスタンドで作られた生命だ。 能力が切れかけているのか、胴体部分は元の姿、ディバッグに戻りかけている。 まるでバッグに入った犬が、四本足と首だけバッグを突き破ったような姿だ。 そして俺の元へ辿り着くなり、完全にバッグへと戻った。 「ジョルノ…」 又湧き上がる涙を、必死になって押さえる。 今は泣いている時じゃねぇ。 やるべきことをやらなくちゃいけないんだ。 恐らくジョルノは、荒木の目を欺きこのバッグを俺の元へ届けたのだろう。 バッグをここへ戻した理由は明白だ。この中にあるんだ。荒木への手掛かりが。 その意志を継ぐ事が出来るのは、他でもねぇ、俺だけだろうが! 自分の頬をグーで殴りつけ、気合を入れる。 そしてバッグの中を開け、手掛かりを探る。 すると、地図の裏にジョルノの伝言が書いてあった。 『荒木のスタンド:バトル・ロワイアル 能力:空間を自由に操る。対象物を固定したり、形状を変えたり、隔離したり出来る 弱点:時間を操れない。時間に作用する能力を用いれば、荒木を斃せる可能性あり 経緯: 昔々   荒木誕生 昔    荒木、ゲームを思い付く 1900年 ジョナサン達を“この空間”へ連れ込み、固定 1940年 ジョセフ達を“この空間”へ連れ込み、固定 1980年 承太郎達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 杜王町を隔離し、“この空間”の場とする      仗助達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 ジョルノ達を“この空間”へ連れ込み、固定 2010年 徐倫達を“この空間”へ連れ込み、固定 現在   固定解除。ゲームスタート その他: ・こちらに人間を連れ込んだ時、ダミーを入れ替えていた ・ダミーは荒木のスタンドが操っていた ・荒木は一度、元の世界を終わらせている ・荒木本体は、今は人間と同じ存在。人間が死ぬような状態に追い込めば、荒木も死ぬ』 意味の分からない所も幾つかあるが、荒木の正体がだいぶ見えた。 特に荒木打倒の方法を見付けていたのは大きい。 今俺に出来る事は、ジョルノのいう打倒方法を実践出来る仲間を見付ける事だ。 俺は立ち上がった。ジョルノの意志を継ぐために。 …俺が歩き始めた時、既に菩提樹は消滅していた。 【金と銀】 チーム解散 【D-2とD-3の境目付近の湖のほとり(D-3)1日目・昼(11~12時)】 【J・P・ポルナレフ】 [スタンド]:シルバー・チャリオッツ [時間軸]:ヴァニラ・アイスを倒した後。DIOに出会う前 [状態]:自分で殴った頬が少し腫れている。服はまだ湿っている [装備]:本人は確認したがこのドサクサで詳細不明 [道具]:(支給品一式、缶詰等の追加の食料品)×2、詳細な杜王町の地図、荒木の放送での発言をまとめたメモ 露伴のバイク、黒騎士ブラフォードの首輪、大型スレッジ・ハンマー [思考・状況]: 1)ジョルノを護れなかった悲しみ。自分と荒木への怒り。 2)荒木の打倒。ジョルノの敵を必ず討つ!!! 3)ジョルノの意志を継ぎ、荒木打倒の仲間を捜す 4)仲間にジョルノの手紙を見せ、荒木打倒の手段を一緒に考える 5)仲間の犠牲者は出さない 6)DIOとディアボロに対する警戒感。(何があっても共闘など真っ平) 7)心の底で、第二放送でジョルノの名が呼ばれない事を切実に望んでいる [補足1]:ポルナレフは盗聴の可能性に気付いています [補足2]:ポルナレフは、ジョルノの支給品を全て持ち歩いています 【教会(?―?)/一日目/昼】 【荒木飛呂彦】 [スタンド]:バトル・ロワイヤル [時間軸]:??? [状態]:健康。命のやり取りに興奮&歓喜 [装備]:??? [道具]:??? [思考・状況]: 1)ただ観戦するより、自分の命も危険に晒した方が全然面白い 2)第二放送で、ジョルノ君の最期を伝えてあげよう 3)引き続きゲームを観戦する。また僕を倒そうという輩が来てくれないかな 4)DIO君の支給品…。どうするかな 5)優勝者に『プレゼント』の存在を示唆 【ジョルノ・ジョバーナ 死亡】 *投下順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>その者共、同様につき その①]] *時系列順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>相思となり真実を隠す]] *キャラを追って読む |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|J・P・ポルナレフ|96:[[4(フォー)プラス1(ワン)]]| |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|ジョルノ・ジョバァーナ|| |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|荒木飛呂彦|89:[[ゲドー開催者~第2回放送~]]|
「さて、僕の能力について何か質問は?」 僕は、荒木のスタンド能力とは別の事を考えていた。 即ち、この状況を打開する方法を。 はっきり言って、状況は絶望的だ。しかし望みを捨てる訳には行かない。 だから僕は荒木へ訊ねた。荒木の謎を解くために。 そして、時間を稼ぎ荒木打倒の糸口を見つけるために。 「お前はそのスタンド能力を使って皆をここに集めたのか」 「その通り」 「現在、過去、未来の人間をこの1999年の杜王町に…」 「ん?いや、待て。君は何か勘違いをしているぞ」 「勘違い…だと?」 「まるで君の言い分じゃ、僕は1999年の人間で、 現在、過去、未来の人間を、時間を超えて集めたように聞こえる」 「…違うのか?」 「覚えておくと良い。“過去”や“未来”を“現在”に置き換える事は出来ないんだよ。 “未来”とは、今は存在せずこれから存在する時間で、 “過去”は既にその存在を終えた時間なのだから」 「『“現在”の一瞬しか存在するものは無い』と言いたいのか」 僕の言葉を受け、荒木は嬉しそうに肯く。 「そうそう。例えば僕は、ゲーム開始時に君たちにディバッグを渡した。 しかしそれは、もう存在を終えた時間だ。 だから今の僕が、ディバッグを受け取った時の君に何かをするなんて事は出来ないんだ。 ましてや、その時の君をここに連れて来る事など」 !!! 見えた! 成程、コイツが操れるのは空間のみという事か。 ならば時間を駆使した攻撃に対し、荒木のスタンドは無力。 これが弱点だ! 例えばディアボロのような能力を使えば、荒木を打倒出来る可能性があるのだ。 しかし、僕にはその弱点を突く事が出来ない。 まだ時間を稼ぐ必要がある。 「しかし実際、ここは1999年の杜王町でないのか」 だから僕は質問を続けた。 そしてそれに、荒木はひとしきり肯いてから答える。 「確かにこの空間を切り離したのは1999年だったね」 「!」 この一言でピンと来た。 「まさか、今の年代は…!」 「君の居た時より、遥かに先の時代だよ」 僕の言葉に奴が続ける。 そして、この“ゲーム”というものが、 どれほどの長い準備期間を経たのか思い知った。 「つまり、こういう事だ」 荒木がそう言って、空間を指差す。 そこに、一瞬にして年表が現れる。 昔々   荒木誕生 昔    荒木、ゲームを思い付く 1900年 ジョナサン達を“この空間”へ連れ込み、固定 1940年 ジョセフ達を“この空間”へ連れ込み、固定 1980年 承太郎達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 杜王町を隔離し、“この空間”の場とする      仗助達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 ジョルノ達を“この空間”へ連れ込み、固定 2010年 徐倫達を“この空間”へ連れ込み、固定 現在   固定解除。ゲームスタート 「…で、今に至る、と。 いやぁ、長い道のりだった」 「…」 「あ、ついでだから“固定”について説明しようか。 基本、僕の能力の効果は一瞬なんだ。こんな風にね。」 「!!」 荒木がそう言った直後、 僕は荒木の座っている長椅子の逆端に座らせられていた。 慌てて間合いを取る僕に対し、荒木は悠然と話し続ける。 「な。僕が君に対して行なった能力は一瞬で、その後は自由に動けるだろ? と・こ・ろ・が」 「!!」 荒木が喋り続けると同時に、急に僕の体が動かなくなる。 「時間的に連続に能力を使用すれば、こういう風に君を固定する事も出来る。 連続してそこへそのポーズで瞬間移動させているようなものと思ってくれ。 まあ、今は僕の話を聞いてもらうために、頭は働くようにしているけど、 君を完全に固定したら…」 後遺症無しのコールド・スリープの出来上がり、か。 なるほど、そうやってゲームが始まるまで 僕達を“保存”していたって訳か。 「ちなみにそれを応用すれば」 「!!」 僕の右手が、僕の意思とは関係なく持ち上がる。 「こんな具合に相手を好きに操る事が出来るし…」 「…っ!」 突然解放され、僕は長椅子に座り込んだ。 「僕のような不老不死の体を作る事も出来る」 そんな僕に、荒木は自分を指差して言った。 そうか。つまりコイツは自分の体を不老不死とし、何百年もの間生きてきたのだ。 荒木の話を聴けば聴くほど、策は無いように思えてくる。 「ならばお前は嘘をついたのか?」 「え?嘘?」 荒木にしては珍しく(僕にしてみれば初めて)薄ら笑いが消え、 鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしていた。 「お前は『ゲーム優勝者を元の世界に返す』と言っていた。 しかし、お前はそんな事出来ないじゃないか」 「あぁ、成程。そういう事ね」 納得したらしい、荒木は再び口元を緩める。 「嘘じゃない。元の世界にはきちんと返すさ。 “元の時代じゃない”んで、ちょっとした浦島気分になるだろうけど」 それは詐欺以外の何者でも無いだろう、と 僕は心の内で毒づいた。 「まだ訊きたい事がある」 「ん?何だい?」 「僕がここへ来る前に、ブチャラティやナランチャは死んでいた。 今生きているブチャラティ達は、お前が生き返らせたのか?」 「いや、死者を生き返らせる事など僕には出来ない。 簡単な事だよ。 君をここへ連れて来た時間と彼らを連れて来た時間が違う、それだけの事だ」 「…」 「例えば、ブチャラティの場合、ここへ連れて来たのはサンジョルジョで ディアボロと闘う直前なんだ」 「じゃあ、その後僕と一緒に居たブチャラティは誰なんだ」 その問いに対する荒木の回答は、 もう何度目になるか分からない、僕の予想を超えるものだった。 「本人と入れ替えた、ダミーだよ。僕が作った、ね」 「何だと!?」 青天の霹靂とは、正にこの事を言うのでは無いだろうか。 「じゃあ、コロッセオで一緒に居たブチャラティやナランチャは…」 偽者だったのか! 「理解出来たようだね。 僕の『バトル・ロワイアル』が作った人形を、君たちと入れ替えたんだ。 肉体からスタンドまで全て複製して。 それらを『バトル・ロワイアル』で操っていた。 君と入れ替わった後、元の世界では君のダミーが立派に“ジョルノ”していたよ」 「…そんな…事が」 「ただ、プッチを手に入れた時点でこのゲームに必要な要素は全て揃えられてね。 そのまま『バトル・ロワイアル』で色々なダミーを操り続けるのも面倒になったんで、 ダミープッチに適当なアドリブを入れて…」 「…」 今まで数知れぬ驚愕の事実を耳にした。 しかし、次の荒木の言葉の前には、それらも霞んでしまう。 それほどの衝撃、いや衝撃と言う表現すら生ぬるい反応をしてしまうような事を荒木は口にした。 荒木はこう言ったのだ。 「一度、世界を終わらせた」 「世界を終わらせた、だと…?」 「あぁ。でも安心したまえ。世界は新しくやり直しているよ。 じゃないと、優勝者の帰る所が無くなるからね。 実の所、新しい世界でも興味を引くネタはあってね。 ダミーを操るのは面倒なんで、残念ながらその世界の人間をゲームに参加させるのは諦めたのだけど、 面白そうなものは、支給品として幾つか入れておいた」 荒木はそう言っていたが、僕にはそれよりも、 今の話で荒木がどれほど超越した存在であるか漸く理解出来た。 世界すらも終わらせたり、新たに創造したりする事が出来るのか、コイツは。 それはまるで、神の領域ではないか。 僕は神を殺そうとしている。果たしてそんな事が可能なのだろうか。 混乱気味の頭で、辛うじてその疑問を口にする。 「お前は………人間なのか?」 荒木に対する謎は、ほぼ全て解けた。 後知るべきは、こいつの正体だけだ。 薄ら笑いを浮かべたまま何も返事しない荒木に向け、もう一度訊ねる。 「お前は何者なんだ」 再度の質問に、荒木は例の(いい加減僕にも耐性が出来たようだが)おぞましい笑みを浮かべ、 僕をじっと見据えながら答えた。 「さっきは少し脱線してしまったが、答えるのはスタンドについてだけだ。 僕の正体を知った所でこれからの闘いに意味があるのかい?」 「今までの話を聴いていたら、お前が人間で無い可能性が出て来た。 『バトル・ロワイアル』で姿形を変え、人間の真似をしているだけの別の生物である可能性が。 いや、お前は生命体で無い可能性すらある」 「大丈夫。今の僕は人間と同じだ。人間が死ぬような状況に追い込まれれば、僕も死ぬ。 安心してかかってきたまえ」 「…」 「さて…。そろそろ始めようか。 これ以上話し込んでしまうと、第二放送に遅れてしまうのでね」 「…くっ」 おもむろに立ち上がる荒木に、僕は必死になって考える。 この状況を打開出来る方法を。 荒木を斃すか、この場を逃れるか、今得た情報を誰かに伝えるか…。 いずれにせよ、やることは一つしかない。 荒木にスタンドを使われたら僕に打つ手は無い。 ならば、スタンドを使われる前に先手を打つ! 「ゴールド・エクスペリエンス!」 そして僕は、神へと挑んで行った…。  * * * 僕は込み上げる笑いに肩を震わせていた。 いやいやいや。中々に面白い余興ではないか。 「いや、楽しかったよ。ジョルノ君」 僕は、今まで僕と死闘を演じた相手に向かって呟く。 …もう二度と動く事の無い、死骸に向かって。 まぁ、死闘というには一方的過ぎたが。 僕に襲い掛かるジョルノ君を固定し、心臓をぶち抜いて終わり。あっけないものだ。 しかし、ただゲームを観戦している時には無かったスリルが、ここにはあった。 負けたら死。その“命を賭ける”という状況に僕は興奮した。 うん。ただゲームを眺めているより、断然面白い。 「そういえば、ジョルノ君は真っ向勝負を挑んできたな…」 ふと思い当たった事が、口から零れる。 珍しい、というか知性派のジョルノ君らしくない猪突猛進ともいえる攻撃だった。 もしかして、あの闘いは何かの目くらましだったのかも。 「…まあいい」 そうだとして、これから何か起きるのならそれもまた一興。 存分に愉しもうじゃないか。 そうだ。第二放送の時にこの事を放送してやろう。 『ジョルノ君は僕の元へ辿り着き、果敢に立ち向かった結果、天へ召されました』 とでも。 「クックック…」 押し殺していても漏れてしまう笑い声は、 教会内を低く木霊していた。  * * * 菩提樹が枯れ、消滅してゆくその姿を、 俺は涙混じりに眺めていた。 まだわからねぇ。 もしかしたら、ジョルノは何らかの理由で 能力の発現を止めただけかも知れねぇ。 第二放送でジョルノの名が呼ばれない可能性だってあるんだ。 そう思いたいのに、そう思おうとしているのに 涙は止まってくれなかった。 俺にはわかっちまったんだ。 ―――ジョルノは死んだ、と。 タタタッ… その時だった。 こちらへ何かが向かって来る音がしたのは。 音がする方を振り向くと…犬が俺の方へ走って来ていた。 いや、ジョルノのスタンドで作られた生命だ。 能力が切れかけているのか、胴体部分は元の姿、ディバッグに戻りかけている。 まるでバッグに入った犬が、四本足と首だけバッグを突き破ったような姿だ。 そして俺の元へ辿り着くなり、完全にバッグへと戻った。 「ジョルノ…」 又湧き上がる涙を、必死になって押さえる。 今は泣いている時じゃねぇ。 やるべきことをやらなくちゃいけないんだ。 恐らくジョルノは、荒木の目を欺きこのバッグを俺の元へ届けたのだろう。 バッグをここへ戻した理由は明白だ。この中にあるんだ。荒木への手掛かりが。 その意志を継ぐ事が出来るのは、他でもねぇ、俺だけだろうが! 自分の頬をグーで殴りつけ、気合を入れる。 そしてバッグの中を開け、手掛かりを探る。 すると、地図の裏にジョルノの伝言が書いてあった。 『荒木のスタンド:バトル・ロワイアル 能力:空間を自由に操る。対象物を固定したり、形状を変えたり、隔離したり出来る 弱点:時間を操れない。時間に作用する能力を用いれば、荒木を斃せる可能性あり 経緯: 昔々   荒木誕生 昔    荒木、ゲームを思い付く 1900年 ジョナサン達を“この空間”へ連れ込み、固定 1940年 ジョセフ達を“この空間”へ連れ込み、固定 1980年 承太郎達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 杜王町を隔離し、“この空間”の場とする      仗助達を“この空間”へ連れ込み、固定 2000年 ジョルノ達を“この空間”へ連れ込み、固定 2010年 徐倫達を“この空間”へ連れ込み、固定 現在   固定解除。ゲームスタート その他: ・こちらに人間を連れ込んだ時、ダミーを入れ替えていた ・ダミーは荒木のスタンドが操っていた ・荒木は一度、元の世界を終わらせている ・荒木本体は、今は人間と同じ存在。人間が死ぬような状態に追い込めば、荒木も死ぬ』 意味の分からない所も幾つかあるが、荒木の正体がだいぶ見えた。 特に荒木打倒の方法を見付けていたのは大きい。 今俺に出来る事は、ジョルノのいう打倒方法を実践出来る仲間を見付ける事だ。 俺は立ち上がった。ジョルノの意志を継ぐために。 …俺が歩き始めた時、既に菩提樹は消滅していた。 【金と銀】 チーム解散 【D-2とD-3の境目付近の湖のほとり(D-3)1日目・昼(11~12時)】 【J・P・ポルナレフ】 [スタンド]:シルバー・チャリオッツ [時間軸]:ヴァニラ・アイスを倒した後。DIOに出会う前 [状態]:自分で殴った頬が少し腫れている。服はまだ湿っている [装備]:本人は確認したがこのドサクサで詳細不明 [道具]:(支給品一式、缶詰等の追加の食料品)×2、詳細な杜王町の地図、荒木の放送での発言をまとめたメモ 露伴のバイク、黒騎士ブラフォードの首輪、大型スレッジ・ハンマー [思考・状況]: 1)ジョルノを護れなかった悲しみ。自分と荒木への怒り。 2)荒木の打倒。ジョルノの敵を必ず討つ!!! 3)ジョルノの意志を継ぎ、荒木打倒の仲間を捜す 4)仲間にジョルノの手紙を見せ、荒木打倒の手段を一緒に考える 5)仲間の犠牲者は出さない 6)DIOとディアボロに対する警戒感。(何があっても共闘など真っ平) 7)心の底で、第二放送でジョルノの名が呼ばれない事を切実に望んでいる [補足1]:ポルナレフは盗聴の可能性に気付いています [補足2]:ポルナレフは、ジョルノの支給品を全て持ち歩いています 【教会(?―?)/一日目/昼】 【荒木飛呂彦】 [スタンド]:バトル・ロワイヤル [時間軸]:??? [状態]:健康。命のやり取りに興奮&歓喜 [装備]:??? [道具]:??? [思考・状況]: 1)ただ観戦するより、自分の命も危険に晒した方が全然面白い 2)第二放送で、ジョルノ君の最期を伝えてあげよう 3)引き続きゲームを観戦する。また僕を倒そうという輩が来てくれないかな 4)DIO君の支給品…。どうするかな 5)優勝者に『プレゼント』の存在を示唆 &color(red){【ジョルノ・ジョバーナ 死亡】} *投下順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>その者共、同様につき その①]] *時系列順で読む [[前へ>神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>相思となり真実を隠す]] *キャラを追って読む |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|J・P・ポルナレフ|96:[[4(フォー)プラス1(ワン)]]| |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|ジョルノ・ジョバァーナ|| |72:[[神への挑戦(前編)~早過ぎた対峙~]]|荒木飛呂彦|89:[[ゲドー開催者~第2回放送~]]|

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