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さっきからシーザーは放送前の騒がしさが抜けてすっかりうなだれてる。 静かなほうがいいんだけどね・・・なんか、あの口調、聞かないとそれはそれで物足りなく感じちゃう。 放送で親友のジョセフ・ジョースター・・・が死んでしまった、らしいけど――― でも・・・メソメソしすぎじゃあない?なんかこう・・・「彼のカタキ!」とか言うほうが男らしいわよ? また一発エルボーでも食らわせて気合い、入れてあげようかしら? 「ねぇ、シーザー??」 あれ、少し後ろで立ち止まってる。下向いて。 「ねぇ、シーザー!?」 こっちを向いた。少しは元気な顔してるじゃない。でも・・・返事が来ない。いつもみたいに。 「ねぇ、シーザー!!」 こっちに向かって歩いてきた。目はしっかり輝いてる。それなら、返事をしろってのよ! 「ねぇ、シー・・・・!?」 シーザーが私の口をふさぐ。手で、ね。でもコレって、殴れって言っているようなものでしょ? 殴るわよ!・・・ん?何か紙切れを持ってる。私に見せてきた。 《ジョジョ・・・ジョセフ・ジョースターは生きている》 「は?」 思わず聞き返しちゃったじゃない。シーザーは私の目から右手の紙に視線を移して文章のさらに先を指す。 《あいつはかつて死んだフリをしてまで敵を欺き俺を助けたことがある。  だから今もきっとアラキの野郎をハメてるんだ。そのことをアラキに知られたらまずい。だから声は出さないでくれ。  これからジョジョと連絡を取る》 なるほど・・・本当に生きているかどうかは別として、とにかく・・・そのジョジョと連絡を取れたらこの先の行動方針にもなるわね。 私はスパイスガールを発言させ(シーザーは少し驚いたみたい)地面の砂に文字を書き始めた。 《分かったわ。でも、どうやって?声には出せないんでしょ?その・・・盗聴とかって事?》 シーザーはひざを付き、地面に手を当てた。そしたら、何?勝手に砂が動いて文字を作ってる!? 《そうだ。きっとアラキは何らかの方法で俺らの行動を把握しているはずなんだ。  だからここで、あの“鳩”だよ。トリッシュ。手紙ならきっと大丈夫だ。  それと・・・君のその能力は何なんだい?教えてほしい。》 《それは私も聞きたいわよ。なに?そのスタンド?》 《スタンド、というものがよく分からないが。俺の力の名は、波紋だ》 《だから、それが何かって聞いてるの!》 《すまない。答えになっていなかったな。俺の“波紋法”は俺の呼吸法であるリズムをつくっている。  それが生命や物体に作用したり攻撃も出来る。これが俺の能力だッ!》 《なるほどね。さっき鳩に触ったときの電気みたいなやつね。  私のは、スパイス・ガールって言ってあらゆる物を柔らかくする事が出来るの》 《それはすごいな。どんな事があっても決して壊れないという、君の精神そのものだッ!》 《それはどうも。じゃあ、早くその・・・ジョジョに連絡する文章を書かないとね》 《ああ。ジョジョは俺の親友だから俺に手紙を書かせてくれ。君にはおれが手紙を書いている間、周囲の見張りをしていてほしい》 《あら?ナンパはしないの?・・・とも言ってられないわね。いいわ。早く書いちゃって》 《分かったよ、シニョリーナ》  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * ジョジョは絶対に生きている。 スピードワゴンさんやカーズも死者のリストにはあったが、仮に彼らが生きていても俺と共闘することはないだろう。 スピードワゴンさんは高齢だし、カーズにいたっては敵だものな。やはりジョジョに期待をするしかないな・・・ 何を書こう。簡潔に書かないといけないな・・・ ―――ジョセフ・ジョースター。お前が生きているのは俺がよく知っている。    サンタナと戦ったときのように、死んだフリをしてアラキをハメようってんだろ?協力するぜッ!    俺は今、トリッシュ・ウナと言う仲間とともにI5のエリアの川沿いを西に向かって歩いているところだ。    仲間はいるのか?ワムウやリサリサ先生には出会ったのか?そういったお前の現在位置や状況を教えてほしい。    返信用の手紙と封筒を一緒に入れておく。この手紙を運んでくれた鳩、サヴェジ・ガーデンに託してくれれば俺達のところに届けてくれる。    お前の返事を待っているぞ、ジョジョ。        ――― ・・・と。まぁ、こんなところだろう。 ―――ん?どうしたトリッシュ?  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 気がついたら私はさっきまで見張っていた方向と180度反対側を向いている。この感じ・・・まさかッ! 「ヤバいッ!今、時が飛んだッ!!あいつが、ボスが――!!」 シーザーはまだ手紙を書いている。 「シーザー!あなた今何か変な感じしなかった?」 「え?・・・確かに最後の署名が終わっているな・・・それがどうした?」 手紙は書き終えてるみたい。シーザーはいつの間にか自分の名前が書かれた手紙を眺めている。 でも今はそれどころじゃないッ!! 「私の“父”が来ているの!!彼の能力は、時を消し飛ばすッ!!」 「父親?ならいいじゃ――」 「私は父親に命を狙われているの!殺されるわッ!!」 「まて、とにかく・・・」         ――――――――――――!! 「またよ!また時が飛んでいる!その証拠にあなたは“すでに”鳩を飛ばし終えているッ!!」 「?本当だッ!・・・そうか、とにかくやばい状況なんだな?急ごう。手を貸すよ。」 「待ってシーザー!!危ないッ!私に近付かないでエェーーーーーッ!!」 立ち上がって私に手を伸ばすシーザーを、私は思いっきり突き飛ばした。いえ、殴り飛ばした。 そして―――また、時が飛ん・・・だみた・・・い、ね・・・  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 何が起こったのか訳がわからなかった。 今、俺の足元にはトリッシュが倒れている。大きな穴をその綺麗な腹のところにつくって。既に足元は水溜りが出来ている。 いや・・・水ではないか。赤い色が着いている。間違いなくトリッシュの血だ。 そして、十数メートル先に1人の男が立っていた。きっと、こいつがトリッシュの腹を―――!!! 「・・・・シ・・・・ザー・・・」 トリッシュが―いや、彼女の精神、スパイス・ガールが―俺の脚に触れた。 俺は飛びつくように彼女の隣に膝を着き、彼女の上体を抱き上げる。 「大丈夫かッ!?しっかりしろ!!」 叫び声をあげる事はこのゲームでは自殺行為に近い。しかし・・・叫ばずにはいられなかった。 彼女が喋る。いや、口は動いていない。スタンドで話をしているのだ。 「貴方だ・・・けでは、あの・・男を倒・・・・せない。  ・・・・・私の仲・・・間を、探して・・・ジョルノ・・・ブチャラティ・・・ナランチャ・・・彼らなら・・・貴方の力に・・・なれる。だから―――」 「もういいッ!それ以上喋るな!!死んじまうぞッッ!!」 俺は知らず知らずの内に泣いていた。目の前の男が次第に近付いてくる。 トリッシュが ふっ、と笑って目を瞑った。そして、もう一度その目を開けて俺のほうを見た。 彼女の瞳の輝きには―――なんてこった・・・完全に『死』の実感がある。トリッシュはここで死ぬ、のか・・・ それでもその表情には後悔や恐怖といったものは何一つ、感じられなかった。 そして、はっきりと、こう言った。 「ごめんね、最後まで殴りっぱなしで。嫌な女だったでしょ?だから、私が死んじゃっても悲しまないで。                                         ―――今までありがとう。シーザー。」 彼女はずっと俺の目を見ていた。目を瞑ることはしなかった。俺はそっと彼女の顔に手を当てて、その目を閉じた。 彼女の手を胸の前で組み合わせる。そこまでして、初めて俺はトリッシュを抱きかかえ、声を上げて泣いた。 男が、近付いてくる―――  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * ・・・よし、娘は私の手で確実に始末した。後はこのスケコマシ1人。コイツも私の正体を見たのだ。生かしてはおけない。 しかもコイツはスタンド使いではないようだ。先ほど娘の腹をぶち抜いてやった時に一瞬だけ見た砂に 「スタンド、というものがよく分からない」 と、そう書いてあった。それならば何の問題も無い。他の文章は後で読むとしよう。 早足で近付く。男は娘を抱きかかえ、血だまりの中心でうずくまっている。 これなら未来を読む必要も無いだろう。時を消し飛ばし、背後に回るだけでよいのだ。 「―――――キング・クリムゾンッ!!」 案の定だ。時を消し飛ばしている間にもこの男が動く気配は無い。 背後に回る。なんともガラ空きな隙だらけの背中ではないか。その背中をぴったり2メートルの距離で見下ろした。 「さて。止めをさそうか。時は再び刻み始める―――」 時間の流れが現実に引き戻された。それとほぼ同時に私はキング・クリムゾンを発現させた。 1歩近付く。これで全てが片付く。後はまたドッピオに任せてしばらくの間隠れていればいいのだ。 ――――そう思った瞬間だった。 踏み出した右足から電流のような火花のような独特な感触を味わい、私は5,6メートル後ろに吹っ飛ばされたのだ。 キング・クリムゾンで受身を取ったのでダメージは無いが・・・その一瞬で男に逃げられた。南に向かい走っている。 しかし、無駄だ。川に流されようとでも言うのか?それとも、あまりのショックで投身自殺でもする気か? 私も全力で走る。男が川に行き着いた。今度こそ――ッ!! ・・・・・・・な、なんだってエェ―――――!!!!!! 野郎、水の上を走りやがった。浅い川ではない。これがやつの能力かッ!恐らくセッコのように「着るスタンド」だろうか。 いや奴はスタンドの存在を知らない・・・無意識のスタンド使いか?いやそんな事は今はどうでも――― そんな一瞬の驚愕と思考の間に・・・スタンド射程距離外まで逃げられてしまった。 何ということだ。またしても逃げられた。ゲームの前にブチャラティ、先のエルメェス、そして今のシーザーとか言う男・・・ 私ともあろうものがここまでクズどもを逃がすことになるとは・・・ 奴は私の正体を他人にバラすかも知れない。それだけはまずい。 いや・・・ここまで来たのだ。私の“絶頂”を妨げる者はこの際全て排除すべきだろう。そのほうがスッキリとする。 そして、このゲームを優勝し、元の世界で何事も無く組織の『ボス』として君臨するのだ・・・  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 俺は川を渡り終えて後ろを振り向く。奴は追いかけてこない。何とか振り切ったようだ。 トリッシュ・・・君を向こう岸に置いてきてしまって本当にすまない。埋葬することさえも出来なかった・・・ しかも、君の血を使って波紋を流し奴にダメージを与えたなんて・・・ 俺は―――あれほど君を守ろうとして、結局守りきれなかった。 また・・・涙が出てくる。俺は悩んでいた彼女の力になりたかった。―――なれなかった。 「マンマ・・・・ミーヤ」 自分の無力さを呪いたくなる。 彼女は自分の運命に負けることなく、仲間を信じ、戦った。だが・・・それでもまだ年端もいかない少女。只の若者だった。 そんな彼女を死なせてしまったのだ・・・ 俺にはまだ力が足りないというのか・・・リサリサ先生のもとで修行し、磨きをかけた波紋でもあいつには勝てないというのか・・・ だからと言ってここでクヨクヨしている訳にもいかない。俺には目的が出来た。 トリッシュを死なせてしまった俺自身の罪を・・・償う。 そのためには―――ゲームで生き残り、優勝し・・・アラキに願いを叶えてもらうのだ。 「トリッシュ・ウナを、生き返らせてくれ」と。 その願いが叶えられるのなら、俺は元の世界に帰る事が出来なくても・・・構わない。 彼女が幸せにもとの世界で生きてくれればいいのだ。 もし―――もしアラキが俺達をハメて(すでにハメられてるがな)願い事を叶えてくれないか、または 「願い事なんて嘘だよ。そのほうがみんな頑張るだろうから」 なんて言おうというのなら・・・その時は、アラキをも―――俺が、斃す。 とにかく・・・移動しないと。あの男はどっちに向かうんだろうか・・・ ―――1人の女の死が、異なる2人の男の、異なる気持ちを呼び起こした。    彼らは、まったく対称の道を歩みながら、各々の目的のために、優勝を目指す――― 【エッレ・イタリアーノ シニョーラ エ シニョリーナ】 チーム解散 【杜王町南、川沿いの道【J-6北西側】/一日目/午前(10時前後)】 【シーザー・アントニオ・ツェペリ】 [能力]: 波紋法 [時間軸]:ゲスラーのホテルへ突入直後 [状態]:健康。決意による精神力の安定(悲しみはある) [装備]:なし [道具]: 支給品一式、伝書鳩サヴェジ・ガーデン(現在ジョセフの元へ飛行中)、専用の封筒残り8枚(使い捨て)。 [思考・状況] 1)トリッシュを生き返らせる。それこそが彼女を死なせてしまった償いだッ! 2)彼女を生き返らせる(=優勝する)ためなら何だってするぜッ! 3)サヴェジ・ガーデンがジョセフの元へいくこと、返事が来ることへの期待。 4)リサリサ(とジョジョ)と合流したいが自分の決意が揺らぎそうなのですぐには会いたくない ※シーザーは自分の知らない人間や、知っている人間でもトリッシュのために、また自分の弱さの償いのために戦うことへの躊躇はなくなりました。 ※サヴェジ・ガーデンは専用の封筒の宛名欄に書かれた人物に手紙を届けます。  手紙を届けた後、送り主の所に戻ってくるかも封筒に書くことによって指定可能。 【手紙を届けること】のみに関しては天候やどんな不測の事態でも影響を受けません。  手紙を送る事ができる人物はこのゲームの参加者のみであり、同時に複数の人物に手紙を送る事はできません。  郵送時間は場所によりますが、封筒には小物程度ならなんでも入ります。 ※サヴェジ・ガーデンは現在ジョセフの首輪を探知して飛行中。位置としてはジョセフ(=仗助)とは近いので  2~30分程度で届く模様。自分の書いた手紙と返信用封筒&手紙の合計2枚を持たせているのでシーザーの手持ちは残り8枚です。 【杜王町南、川沿いの道【I-5南東側】 【ディアボロ・ドッピオ(現在ディアボロ)】 [スタンド]:『キング・クリムゾン』 [時間軸]: リゾットに勝利後、ローマに向かう途中 [状態]:健康。疲弊、疲労はない。逃がしたことへの苛立ち [装備]:DIO様の投げナイフ、ミスタの拳銃 [道具]:支給品×2、またプロシュートの支給品から食料等をゲット [思考・状況] 1)またしても逃がしたッ!だがこの際だ、全員殺して優勝を目指す! 2)とりあえずトリッシュを始末できたので目的や行き先はなくなった 3)ブチャラティ、ジョルノ、ナランチャ、ポルナレフ、リゾットを始末する 4)空条承太郎を警戒する ※ディアボロは全部で4回、時を飛ばしました 【トリッシュ・ウナ 死亡】 *投下順で読む [[前へ>その者共、同様につき その①]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>相思となり真実を隠す]] *時系列順で読む [[前へ>その者共、同様につき その①]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>背負うもの/背負われるもの]] *キャラを追って読む |44:[[ブラックホールによろしく]]|シーザー・アントニオ・ツェペリ|87:[[死せる者の為死せる者に縋る希望]]| |44:[[ブラックホールによろしく]]|サヴェジ・ガーデン|75:[[相思となり真実を隠す]]| |44:[[ブラックホールによろしく]]|トリッシュ・ウナ|| |54:[[ドッピオ、兄貴から逃げる]]|ディアボロ|81:[[頂点に立つ者として]]|
さっきからシーザーは放送前の騒がしさが抜けてすっかりうなだれてる。 静かなほうがいいんだけどね・・・なんか、あの口調、聞かないとそれはそれで物足りなく感じちゃう。 放送で親友のジョセフ・ジョースター・・・が死んでしまった、らしいけど――― でも・・・メソメソしすぎじゃあない?なんかこう・・・「彼のカタキ!」とか言うほうが男らしいわよ? また一発エルボーでも食らわせて気合い、入れてあげようかしら? 「ねぇ、シーザー??」 あれ、少し後ろで立ち止まってる。下向いて。 「ねぇ、シーザー!?」 こっちを向いた。少しは元気な顔してるじゃない。でも・・・返事が来ない。いつもみたいに。 「ねぇ、シーザー!!」 こっちに向かって歩いてきた。目はしっかり輝いてる。それなら、返事をしろってのよ! 「ねぇ、シー・・・・!?」 シーザーが私の口をふさぐ。手で、ね。でもコレって、殴れって言っているようなものでしょ? 殴るわよ!・・・ん?何か紙切れを持ってる。私に見せてきた。 《ジョジョ・・・ジョセフ・ジョースターは生きている》 「は?」 思わず聞き返しちゃったじゃない。シーザーは私の目から右手の紙に視線を移して文章のさらに先を指す。 《あいつはかつて死んだフリをしてまで敵を欺き俺を助けたことがある。  だから今もきっとアラキの野郎をハメてるんだ。そのことをアラキに知られたらまずい。だから声は出さないでくれ。  これからジョジョと連絡を取る》 なるほど・・・本当に生きているかどうかは別として、とにかく・・・そのジョジョと連絡を取れたらこの先の行動方針にもなるわね。 私はスパイスガールを発言させ(シーザーは少し驚いたみたい)地面の砂に文字を書き始めた。 《分かったわ。でも、どうやって?声には出せないんでしょ?その・・・盗聴とかって事?》 シーザーはひざを付き、地面に手を当てた。そしたら、何?勝手に砂が動いて文字を作ってる!? 《そうだ。きっとアラキは何らかの方法で俺らの行動を把握しているはずなんだ。  だからここで、あの“鳩”だよ。トリッシュ。手紙ならきっと大丈夫だ。  それと・・・君のその能力は何なんだい?教えてほしい。》 《それは私も聞きたいわよ。なに?そのスタンド?》 《スタンド、というものがよく分からないが。俺の力の名は、波紋だ》 《だから、それが何かって聞いてるの!》 《すまない。答えになっていなかったな。俺の“波紋法”は俺の呼吸法であるリズムをつくっている。  それが生命や物体に作用したり攻撃も出来る。これが俺の能力だッ!》 《なるほどね。さっき鳩に触ったときの電気みたいなやつね。  私のは、スパイス・ガールって言ってあらゆる物を柔らかくする事が出来るの》 《それはすごいな。どんな事があっても決して壊れないという、君の精神そのものだッ!》 《それはどうも。じゃあ、早くその・・・ジョジョに連絡する文章を書かないとね》 《ああ。ジョジョは俺の親友だから俺に手紙を書かせてくれ。君にはおれが手紙を書いている間、周囲の見張りをしていてほしい》 《あら?ナンパはしないの?・・・とも言ってられないわね。いいわ。早く書いちゃって》 《分かったよ、シニョリーナ》  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * ジョジョは絶対に生きている。 スピードワゴンさんやカーズも死者のリストにはあったが、仮に彼らが生きていても俺と共闘することはないだろう。 スピードワゴンさんは高齢だし、カーズにいたっては敵だものな。やはりジョジョに期待をするしかないな・・・ 何を書こう。簡潔に書かないといけないな・・・ ―――ジョセフ・ジョースター。お前が生きているのは俺がよく知っている。    サンタナと戦ったときのように、死んだフリをしてアラキをハメようってんだろ?協力するぜッ!    俺は今、トリッシュ・ウナと言う仲間とともにI5のエリアの川沿いを西に向かって歩いているところだ。    仲間はいるのか?ワムウやリサリサ先生には出会ったのか?そういったお前の現在位置や状況を教えてほしい。    返信用の手紙と封筒を一緒に入れておく。この手紙を運んでくれた鳩、サヴェジ・ガーデンに託してくれれば俺達のところに届けてくれる。    お前の返事を待っているぞ、ジョジョ。        ――― ・・・と。まぁ、こんなところだろう。 ―――ん?どうしたトリッシュ?  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 気がついたら私はさっきまで見張っていた方向と180度反対側を向いている。この感じ・・・まさかッ! 「ヤバいッ!今、時が飛んだッ!!あいつが、ボスが――!!」 シーザーはまだ手紙を書いている。 「シーザー!あなた今何か変な感じしなかった?」 「え?・・・確かに最後の署名が終わっているな・・・それがどうした?」 手紙は書き終えてるみたい。シーザーはいつの間にか自分の名前が書かれた手紙を眺めている。 でも今はそれどころじゃないッ!! 「私の“父”が来ているの!!彼の能力は、時を消し飛ばすッ!!」 「父親?ならいいじゃ――」 「私は父親に命を狙われているの!殺されるわッ!!」 「まて、とにかく・・・」         ――――――――――――!! 「またよ!また時が飛んでいる!その証拠にあなたは“すでに”鳩を飛ばし終えているッ!!」 「?本当だッ!・・・そうか、とにかくやばい状況なんだな?急ごう。手を貸すよ。」 「待ってシーザー!!危ないッ!私に近付かないでエェーーーーーッ!!」 立ち上がって私に手を伸ばすシーザーを、私は思いっきり突き飛ばした。いえ、殴り飛ばした。 そして―――また、時が飛ん・・・だみた・・・い、ね・・・  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 何が起こったのか訳がわからなかった。 今、俺の足元にはトリッシュが倒れている。大きな穴をその綺麗な腹のところにつくって。既に足元は水溜りが出来ている。 いや・・・水ではないか。赤い色が着いている。間違いなくトリッシュの血だ。 そして、十数メートル先に1人の男が立っていた。きっと、こいつがトリッシュの腹を―――!!! 「・・・・シ・・・・ザー・・・」 トリッシュが―いや、彼女の精神、スパイス・ガールが―俺の脚に触れた。 俺は飛びつくように彼女の隣に膝を着き、彼女の上体を抱き上げる。 「大丈夫かッ!?しっかりしろ!!」 叫び声をあげる事はこのゲームでは自殺行為に近い。しかし・・・叫ばずにはいられなかった。 彼女が喋る。いや、口は動いていない。スタンドで話をしているのだ。 「貴方だ・・・けでは、あの・・男を倒・・・・せない。  ・・・・・私の仲・・・間を、探して・・・ジョルノ・・・ブチャラティ・・・ナランチャ・・・彼らなら・・・貴方の力に・・・なれる。だから―――」 「もういいッ!それ以上喋るな!!死んじまうぞッッ!!」 俺は知らず知らずの内に泣いていた。目の前の男が次第に近付いてくる。 トリッシュが ふっ、と笑って目を瞑った。そして、もう一度その目を開けて俺のほうを見た。 彼女の瞳の輝きには―――なんてこった・・・完全に『死』の実感がある。トリッシュはここで死ぬ、のか・・・ それでもその表情には後悔や恐怖といったものは何一つ、感じられなかった。 そして、はっきりと、こう言った。 「ごめんね、最後まで殴りっぱなしで。嫌な女だったでしょ?だから、私が死んじゃっても悲しまないで。                                         ―――今までありがとう。シーザー。」 彼女はずっと俺の目を見ていた。目を瞑ることはしなかった。俺はそっと彼女の顔に手を当てて、その目を閉じた。 彼女の手を胸の前で組み合わせる。そこまでして、初めて俺はトリッシュを抱きかかえ、声を上げて泣いた。 男が、近付いてくる―――  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * ・・・よし、娘は私の手で確実に始末した。後はこのスケコマシ1人。コイツも私の正体を見たのだ。生かしてはおけない。 しかもコイツはスタンド使いではないようだ。先ほど娘の腹をぶち抜いてやった時に一瞬だけ見た砂に 「スタンド、というものがよく分からない」 と、そう書いてあった。それならば何の問題も無い。他の文章は後で読むとしよう。 早足で近付く。男は娘を抱きかかえ、血だまりの中心でうずくまっている。 これなら未来を読む必要も無いだろう。時を消し飛ばし、背後に回るだけでよいのだ。 「―――――キング・クリムゾンッ!!」 案の定だ。時を消し飛ばしている間にもこの男が動く気配は無い。 背後に回る。なんともガラ空きな隙だらけの背中ではないか。その背中をぴったり2メートルの距離で見下ろした。 「さて。止めをさそうか。時は再び刻み始める―――」 時間の流れが現実に引き戻された。それとほぼ同時に私はキング・クリムゾンを発現させた。 1歩近付く。これで全てが片付く。後はまたドッピオに任せてしばらくの間隠れていればいいのだ。 ――――そう思った瞬間だった。 踏み出した右足から電流のような火花のような独特な感触を味わい、私は5,6メートル後ろに吹っ飛ばされたのだ。 キング・クリムゾンで受身を取ったのでダメージは無いが・・・その一瞬で男に逃げられた。南に向かい走っている。 しかし、無駄だ。川に流されようとでも言うのか?それとも、あまりのショックで投身自殺でもする気か? 私も全力で走る。男が川に行き着いた。今度こそ――ッ!! ・・・・・・・な、なんだってエェ―――――!!!!!! 野郎、水の上を走りやがった。浅い川ではない。これがやつの能力かッ!恐らくセッコのように「着るスタンド」だろうか。 いや奴はスタンドの存在を知らない・・・無意識のスタンド使いか?いやそんな事は今はどうでも――― そんな一瞬の驚愕と思考の間に・・・スタンド射程距離外まで逃げられてしまった。 何ということだ。またしても逃げられた。ゲームの前にブチャラティ、先のエルメェス、そして今のシーザーとか言う男・・・ 私ともあろうものがここまでクズどもを逃がすことになるとは・・・ 奴は私の正体を他人にバラすかも知れない。それだけはまずい。 いや・・・ここまで来たのだ。私の“絶頂”を妨げる者はこの際全て排除すべきだろう。そのほうがスッキリとする。 そして、このゲームを優勝し、元の世界で何事も無く組織の『ボス』として君臨するのだ・・・  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 俺は川を渡り終えて後ろを振り向く。奴は追いかけてこない。何とか振り切ったようだ。 トリッシュ・・・君を向こう岸に置いてきてしまって本当にすまない。埋葬することさえも出来なかった・・・ しかも、君の血を使って波紋を流し奴にダメージを与えたなんて・・・ 俺は―――あれほど君を守ろうとして、結局守りきれなかった。 また・・・涙が出てくる。俺は悩んでいた彼女の力になりたかった。―――なれなかった。 「マンマ・・・・ミーヤ」 自分の無力さを呪いたくなる。 彼女は自分の運命に負けることなく、仲間を信じ、戦った。だが・・・それでもまだ年端もいかない少女。只の若者だった。 そんな彼女を死なせてしまったのだ・・・ 俺にはまだ力が足りないというのか・・・リサリサ先生のもとで修行し、磨きをかけた波紋でもあいつには勝てないというのか・・・ だからと言ってここでクヨクヨしている訳にもいかない。俺には目的が出来た。 トリッシュを死なせてしまった俺自身の罪を・・・償う。 そのためには―――ゲームで生き残り、優勝し・・・アラキに願いを叶えてもらうのだ。 「トリッシュ・ウナを、生き返らせてくれ」と。 その願いが叶えられるのなら、俺は元の世界に帰る事が出来なくても・・・構わない。 彼女が幸せにもとの世界で生きてくれればいいのだ。 もし―――もしアラキが俺達をハメて(すでにハメられてるがな)願い事を叶えてくれないか、または 「願い事なんて嘘だよ。そのほうがみんな頑張るだろうから」 なんて言おうというのなら・・・その時は、アラキをも―――俺が、斃す。 とにかく・・・移動しないと。あの男はどっちに向かうんだろうか・・・ ―――1人の女の死が、異なる2人の男の、異なる気持ちを呼び起こした。    彼らは、まったく対称の道を歩みながら、各々の目的のために、優勝を目指す――― 【エッレ・イタリアーノ シニョーラ エ シニョリーナ】 チーム解散 【杜王町南、川沿いの道【J-6北西側】/一日目/午前(10時前後)】 【シーザー・アントニオ・ツェペリ】 [能力]: 波紋法 [時間軸]:ゲスラーのホテルへ突入直後 [状態]:健康。決意による精神力の安定(悲しみはある) [装備]:なし [道具]: 支給品一式、伝書鳩サヴェジ・ガーデン(現在ジョセフの元へ飛行中)、専用の封筒残り8枚(使い捨て)。 [思考・状況] 1)トリッシュを生き返らせる。それこそが彼女を死なせてしまった償いだッ! 2)彼女を生き返らせる(=優勝する)ためなら何だってするぜッ! 3)サヴェジ・ガーデンがジョセフの元へいくこと、返事が来ることへの期待。 4)リサリサ(とジョジョ)と合流したいが自分の決意が揺らぎそうなのですぐには会いたくない ※シーザーは自分の知らない人間や、知っている人間でもトリッシュのために、また自分の弱さの償いのために戦うことへの躊躇はなくなりました。 ※サヴェジ・ガーデンは専用の封筒の宛名欄に書かれた人物に手紙を届けます。  手紙を届けた後、送り主の所に戻ってくるかも封筒に書くことによって指定可能。 【手紙を届けること】のみに関しては天候やどんな不測の事態でも影響を受けません。  手紙を送る事ができる人物はこのゲームの参加者のみであり、同時に複数の人物に手紙を送る事はできません。  郵送時間は場所によりますが、封筒には小物程度ならなんでも入ります。 ※サヴェジ・ガーデンは現在ジョセフの首輪を探知して飛行中。位置としてはジョセフ(=仗助)とは近いので  2~30分程度で届く模様。自分の書いた手紙と返信用封筒&手紙の合計2枚を持たせているのでシーザーの手持ちは残り8枚です。 【杜王町南、川沿いの道【I-5南東側】 【ディアボロ・ドッピオ(現在ディアボロ)】 [スタンド]:『キング・クリムゾン』 [時間軸]: リゾットに勝利後、ローマに向かう途中 [状態]:健康。疲弊、疲労はない。逃がしたことへの苛立ち [装備]:DIO様の投げナイフ、ミスタの拳銃 [道具]:支給品×2、またプロシュートの支給品から食料等をゲット [思考・状況] 1)またしても逃がしたッ!だがこの際だ、全員殺して優勝を目指す! 2)とりあえずトリッシュを始末できたので目的や行き先はなくなった 3)ブチャラティ、ジョルノ、ナランチャ、ポルナレフ、リゾットを始末する 4)空条承太郎を警戒する ※ディアボロは全部で4回、時を飛ばしました &color(red){【トリッシュ・ウナ 死亡】} *投下順で読む [[前へ>その者共、同様につき その①]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>相思となり真実を隠す]] *時系列順で読む [[前へ>その者共、同様につき その①]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>背負うもの/背負われるもの]] *キャラを追って読む |44:[[ブラックホールによろしく]]|シーザー・アントニオ・ツェペリ|87:[[死せる者の為死せる者に縋る希望]]| |44:[[ブラックホールによろしく]]|サヴェジ・ガーデン|75:[[相思となり真実を隠す]]| |44:[[ブラックホールによろしく]]|トリッシュ・ウナ|| |54:[[ドッピオ、兄貴から逃げる]]|ディアボロ|81:[[頂点に立つ者として]]|

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